★International news of last week(先週の国際ニュース8月12日号)
↓メルマガ「国際ニュース・カウントダウン 8月5-11日
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◆バングラ政権崩壊(5日)☆
・バングラデシュのハシナ首相が5日辞任。インドに脱出した。
・公務員採用の優遇枠への反発を契機に抗議活動が激化。軍も介入し政権崩壊した。
・シャハブディン大統領は6日議会を解散。軍などと協議し暫定政権樹立に動いた。
・ノーベル平和賞受賞者のユヌス氏を首席顧問とする暫定政権が8日発足した。
・ハシナ氏は建国の父と言われたムジブル・ラーマン大統領(1975年暗殺)の長女。
・亡命生活を経てアワミ連盟トップに。首相就任、下野を経て2009年から首相だった。
・製造業誘致などを通じて高度成長を実現。1人当たりGDPもインド並みになった。
・一方で野党弾圧など強権色を強め、2024年1月の選挙を主要野党はボイコットした。
・当面は暫定政権の運営、次期総選挙が焦点。同国の行方は地域情勢にも影響する。
◆米民主党、副大統領候補ワルツ氏、選挙戦の構図確定(6日)☆
・米民主党はハリス副大統領を大統領候補に正式決定した。代議員のオンライン投票。
・ハリス氏は副大統領候補にワルツ・ミネソタ州知事を選んだ。
・大統領選は民主党ハリスvs共和党トランプ前大統領で行われる。
・9月に行われる予定の大統領候補同士のTV討論などが焦点になる。
◆ハマスの指導者にシンワール氏、イラン、ヒズボラの報復焦点(6日)☆
・ハマスは6日、新たな最高指導者にガザ地区指導者のシンワール氏を選んだ。
・7月末にハニヤ最高指導者がイランで死亡(暗殺)したのを受けた措置。
・シンワール氏はガザにいると見られ、イスラエルが殺害を試みている。
・対イスラエルで強硬姿勢が強まりそうで、ガザの停戦は一層困難になる。
・イランはハニヤ氏の死亡を受けイスラエルへの報復を宣言。タイミングに関心が集まる。
・レバノンのヒズボラも同様に報復を宣言。戦闘がガザ→中東各地に広がる懸念がある。
◆英国で極右暴動、社会に動揺、偽情報が混乱を拡大 ☆
・英国で極右らの扇動による暴動が拡大し、社会を揺らしている。
・発端は7月29日に西部サウスポートで起きたダンス教室での女児3人の刺殺事件。
・容疑者は「昨年ボートで英国に来たイスラム教徒」という偽情報がSNSで拡散した。
・7月末-8月初旬にかけて英各地で反イスラムや反移民の暴動が広がり、被害が出た。
・これに対し英国各地で7日、極右に反対する大規模なデモが起きた。
・BBCによれば、英国でこのように大規模な暴動が起きたことは過去10年以上ない。
・暴動には現在は解散した極右EDL(イングランド防衛同盟)関係者が関与した模様。
・右派ポピュリズムのリフォームUKは7月の総選挙で14.3%を獲得。
・移民排斥や反イスラムを主張する極右や右派ポピュリズムが存在感を高めている。
◆ウクライナがロシア領に越境攻撃(6日)☆
・ウクライナはロシア西部のクルクス州に越境攻撃を開始した。
・数千人規模の軍による奇襲で、国境から15キロ程度侵入した様子だ。
・ゼレンスキー大統領は10日の国民向けメッセージで、越境攻撃を正式に認めた。
・攻撃には、ロシア軍が攻勢を続けるドネツク州から兵力を分散させる狙いがある模様。
・今後の停戦交渉をにらんで、戦果を挙げておく狙いもあるとみられる。
・ウクライナ戦争は膠着状態が続くが、局面転換に向け様々な試みが続く。
◎寸評:of the Week
【重要ニュース】
重要なニュースが相次いだ。米大統領選、中東情勢、ウクライナ戦争はそれぞれ節目の動きがあった。大統領選は民主党がハリス大統領候補を決め、副大統領候補にはワルツ・ミネソタ州知事を選んだ。
中東はハマスのハニヤ最高指導者がテヘランで殺害された(イランやハマスはイスラエルによる暗殺と主張)のを受け、イランによる報復などが焦点になっている。ハマスは後任の最高指導者にガザ地区指導者のシンワール氏を選んだ。イスラエルとハマスの対立が一段と厳しくなり、停戦は遠のいたとの見方が強い。ウクライナ戦争関連では、ウクライナ軍によるロシア領内への越境攻撃が始まり、情勢が動く可能性がある。
バングラデシュの政変で15年続いたハシナ政権が崩壊した。英国では極右が扇動した暴動が全土に広がった。タイでは憲法裁が最大野党に解党を命じた。軍の意向を受けて民主派弾圧が進む格好だ。
【英国の暴動】
英国で極右らの扇動による暴動が拡大し、社会を揺らしている。
発端は7月29日に西部サウスポートで起きたダンス教室での女児3人の刺殺事件。事件直後に、犯人は「昨年ボートで英国に来たイスラム教徒」という偽情報がSNSで拡散した。実際の容疑者はルワンダ系の両親から生まれた英国生まれの少年で、ルワンダは大多数がキリスト教徒だ。
偽情報に反応した一部の人々が7月末-8月初旬にかけて、英各地で反移民や反イスラムの暴動を起こし、被害が拡大した。BBCによれば、英国でこのように大規模な暴動が起きたことは過去10年以上ない。
英メディアによれば、偽情報の拡散や、暴動の扇動には極右関係者が関わっていた。たとえば現在は解散した極右EDL(イングランド防衛同盟)関係者の関与などが指摘される。
これに対し英国各地で7日、極右に反対する大規模なデモが起きた。人々の危機感を表している。
事件は極右・右派ポピュリズムの拡大や、偽情報の影響の増大を再認識させた。今年7月の総選挙でも、右派ポピュリズムのリフォームUKは7月の総選挙で14.3%を獲得している。偽情報は、2016年のEU離脱(Brexit)国民投票でも大きな問題になった。
米国では1960年代、多くの暴動が夏に起き「暑い夏」と呼ばれた。2024年は英国が熱い夏を経験している。
【グーグルの独禁法違反裁判】
インタ─ネットの検索サービスを巡り米司法省がグーグル(持株会社はアルファベット)を独禁法違反の疑いで提訴していた裁判で、米連邦地裁は5日、司法省側の訴えを認める裁判を下した。IT産業の行方に大きな影響を与える裁判として、世界の注目を集めている事案。グーグル側は上訴する方針だが、一つの節目として判断の意義は大きい。
司法省はグーグルの検索サービスが独占的であると主張。具体的な事例として、グーグルがアップルに対し巨額の手数料を支払ってiPhoneに自社の検索サービスを標準搭載してもらう契約が違法などと主張していた。ワシントン連邦地裁は、契約が競争を妨げた面があるとの判断を下した。
米国の情報・通信は独禁法の判断が業界の行方を左右してきた。1969年には当時汎用コンピューターで圧倒的な存在だったIBMを司法省が提訴。1984年には通信のATTが分割された。1998年には司法省がマイクロソフトを独禁法違反で提訴。2002年に和解した。米当局は近年、グーグル以外にメタやアマゾン、アップルの提訴に踏み切っている。また欧州ではEUがデジタル市場法で独占規制を強めている。
◎今週の注目(8月12-18日&当面の注目)
・ウクライナ戦争はウクライナによるロシアへの越境攻撃などで局面が動き出す可能性がある。要注目。
・中東ではイランやレバノンのヒズボラによるイスラエルへの報復攻撃の方法やタイミングなどが当面の注目点