★International news of last week(先週の国際ニュース7月22日号)
↓メルマガ「国際ニュース・カウントダウン 7月15-21日by INCD-club」
http://incdclub.cocolog-nifty.com/blog/
◆米共和党大会トランプ氏を正式指名、副大統領候補にバンス氏(15-18日)☆
・共和党派全国大会を開き、トランプ氏を大統領選候補に正式指名した。
・副大統領候補にバンス上院議員を選んだ。白人貧困層を描いたベストセラーで有名。
・トランプ氏は受諾演説を行い、米社会の分断修復を呼び掛けた。
・政策的には米国第1を強調。対中関税の引上げ、パリ協定離脱などを唱えた。
・外交ではウクライナやガザ戦争の早期終結を主張。同盟国への負担を求めた。
・直前の暗殺未遂事件で辛くも助かり、会場には同氏=神の恩恵のムードが高まった。
・一方民主党はバイデン大統領を候補者から降ろす動きが続く。
◆世界でシステム障害、航空機欠航など影響甚大(19日)☆
・世界各地で大規模なコンピューターのシステム障害が発生した。
・米欧日本などで航空機4000便が運航、4万便が遅延した。
・米国や欧州の銀行サービスが一部使えなくなり、外食のアプリが利用できなくなった。
・米テスラはテキサス州などの工場で生産ラインを停止した。
・米セキュリティ会社・クラウドストライクのソフトのオンライン更新が原因とみられる。
・MSのOSウィンドウズのシステムに影響が出た。
・システム障害→経済・社会に深刻な打撃のリスクが、顕在化した。
◆中国3中全会、経済停滞の中で開催(15-18日)
・中国共産党の3中全会が15-18日開かれ、中長期の経済方針を協議した。
・米欧と異なる「中国式現代化」を強調。国有企業を柱に成長を目指す方針を示した。
・当面の不動産リスクへの対応など、具体策は明確でなかった。
・3中全会は共産党の中央委員200人が集まる重要会議。
・中国は習近平1強体制下で、米中対立激化、欧米の供給網見直しなどに直面する。
・今年は不動産不況など経済減速の中での開催となり、世界的に注目された。
・15日に発表された2024年4-6月のGDPは、前年同期比4.7%成長だった。
◆ルワンダ虐殺30年、大統領選ではカガメ氏4選(15日)☆
・ルワンダで80-100万人が死亡した虐殺から30年が経過した。
・そうした中で15日に大統領選が実施。2000年から現職のカガメ氏が4選された。
・同国は1994年4-7月に虐殺が発生。フツ族過激派がツチ族やフツ穏健派を殺害した。
・ツチ族主体の解放戦線が全土を制圧。カガメ氏らが権力を把握した。
・同氏は大統領就任後、治安を安定。経済成長も実現し、IT産業なども育っている。
・一方で独裁色を強めているとの批判も多い。
・昨年は英国との協定で、不法移民を引き受け(対策費と引き換え)、話題になった。
・虐殺後、隣国コンゴではルワンダを含む関係国が関わって2度にわたり戦争を展開。
・大量の難民がいまだ帰還できないなど、混迷が続く。
◆ベトナム書記長が死亡(19日)
・ベトナム最高指導者のチョン共産党書記長が死亡した。80歳。
・2011年に書記長就任。2021年から異例の3期目に入っていた。
・汚職撲滅を掲げ、同氏在任中にナンバー2を含む多数の指導者が失脚した。
・序列2位のラム国家主席が代行業務に就いたが、権力闘争が激化するとの見方もある。
・ベトナムは2000年代以降経済成長が加速。
・2022年の1人当たりGDPは4100ドルと、フィリピンを上回る。
・政治はチョン氏をトップに集団指導制を敷いたが、権力構図には見えない部分も多い。
◎寸評:of the Week
【ほぼトラのムード】
米共和党大会が開かれ、トランプ氏が大統領候補に正式に選出された。直前の暗殺未遂事件で命をとりとめたこともあり、会場はトランプ氏=神の加護を受けた人物とのムードが高まり、熱狂的な様子だった。受諾演説も冒頭部分では米国の断絶修復を訴えるなど、これまでと違う面も見せた。政策的には従来同様、米国第1を強調し、バイデン政権を攻撃する内容だったが、政策の中身よりトランプ氏を盛り上げるムードがばかりが目立った。
同時期、民主党ではバイデン大統領に撤退を求める動きが続き、バイデン氏自身も新型コロナに感染し演説を取りやめた。民主党のゴタゴタは、共和党の盛り上がりと対照的だった。
世界も「ほぼトラ」に傾斜し対応しているフシが見える。前週のNATO首脳会議では、トランプ政権になってもウクライナ支援を順調に継続できるように新作戦本部制定などの決定をした。17-18日に英国で開いた欧州政治共同体首脳会議では、複数の首脳から欧州諸国が防衛面で負担増を急ぐ必要があるとの意見が出た。
11月までの4か月間に何があるかは分からないが、現時点では世界を「ほぼトラ」が覆っている。
【ルワンダ虐殺30年とアフリカ】
ルワンダで80-100万人が犠牲になった虐殺から30年を経過。大統領選が行われ、カガメ氏が4選を果たした。30年を経て同国や周辺のどう推移しているのだろうか。(→国際ニュースを切る)
◎国際ニュースを切る
◆ルワンダ虐殺30年とアフリカ
ルワンダで80-100万人が犠牲になった虐殺から30年を経過した。折りしも大統領選が行われ、カガメ氏が4選を果たした。30年を経て同国や周辺はどう推移しているのだろうか。
▼得票率99%で圧勝
大統領選は有力な対立候補もなく(事実上立候補を認められず)、現職のカガメ氏の信任投票のような形で行われた。選管によると得票率は99%以上で予想通り圧勝だった。
カガメ氏は前任者の辞任で2000年に副大統領から大統領に就任。その後2003年と2010年の大統領戦に勝利した後、2015年に国民投票で憲法を改正し3選以上を可能にした。2017年の選挙に続き、今回も圧勝した。
▼ルワンダ虐殺
1994年4-7月の虐殺では、80-100万人が犠牲になった。フツ族の大統領が乗った旅客機の爆撃事件をきっかけに、多数派フツ族の強硬派が少数派ツチ族やフツ穏健派を虐殺した。
当時隣国のウガンダンに拠点を置き、カガメ氏が率いていたルワンダ愛国戦線(RPF)が同国を制圧。カガメ氏は副大統領兼国防相になり権力を掌握した(大統領はフツ族)。当時カガメ氏は37歳前後だったが、それ以来権力を握っている。
▼社会の安定、経済成長を実現
副大統領、大統領としてカガメ氏は社会の安定や経済成長を実現した。軍を把握して社会の混乱を押さえ、虐殺で表面化した民族対立を押さえた。
汚職対策などを進めてビジネス環境を整え、外資導入を推進。ITインフラを整備した。また中国との関係を強めて中国企業の進出を促した。
こうした政策が奏功し、ルワンダは経済成長を実現。1人当りGDPは虐殺後の1997年の345ドルから2023年には1000ドルを超えた(IMF)。この期間中、平均7-10%程度の成長を実現した計算になる。中国のファーウェイやアリババなどが進出し、IT産業も育ち始めた。「ルワンダの軌跡」という言葉も使われた。
2009年には教育言語を従来のフランス語→英語に変更した。経済成長への影響なども考慮した。
▼独裁者との批判
一方でカガメ氏には独裁者との批判もある。国内の反対勢力への弾圧が指摘される。
虐殺の時に多くの市民を保護し、映画「ホテル・ルワンダ」のモデルになったルセサバギナ氏はその後海外に逃れ、カガメ氏への批判を繰り返していた。しかし2020年に滞在先のUAEからルワンダに戻ったところで逮捕され、有罪判決を受けた。同士の家族は、UAEで誘拐されたと主張する。
▼1990-2000年代のアフリカ大戦にも影響
ルワンダの虐殺や情勢は、周辺のコンゴ(民主共和国)、ウガンダ、ブルンジなどにも影響を与えた。
虐殺から間もない1996-97年には第1次コンゴ戦争が起きた。コンゴ東部では政府と反政府勢力の内戦が発生。この地域にはルワンダ系住民も多かった。カガメ氏のルワンダは反政府組織を創設・支援。コンゴ(当時はザイールと呼んでいた)で32年間独裁を続けてきたモブツ政権打倒を支援した。ルワンダのほかウガンダ、ブルンジ、アンゴラなどが参戦した。
その後コンゴの政権がルワンダ系を排除するようになると、今度は反政府組織を結成・支援し、第2次コンゴ戦争となった(1998-2003)。ルワンダは反政府組織を支援する形で参戦。そのほかウガンダ、ブルンジ、アンゴラ、チャド、リビア、ナミビア、ジンバブエ、スーダンなどが関与した。この戦争はアフリカ大戦とも呼ばれ、明確は勝者がないまま終息した。
▼戦争難民
第2次コンゴ戦争による死者は500-600万人とも推計される。死者は戦場より病気や飢えによる者が多く、推計数字は2008年頃までに死亡した人を含む。
コンゴの東部などには大規模な難民キャンプが多数設置され、現在も多くの難民が住む。
そもそもこの地域には多数の民族が済み、民族の攻防を繰り返して来た。加えて欧州列強の植民地支配で、情勢は一層複雑化し、新たな民族対立の原因が生まれた。今日の紛争は、こうした歴史を背景にしている。
▼英国の不法移民政策
国際社会では昨年、英国の不法移民のルワンダへの移送が大きな話題になった。両国の協定に寄れば、ルワンダは英国から不法移民を受け入れる。一方英国はルワンダに移民や難民の対策費などを支援するという内容だ。英国はルワンダが移送された不法移民の人権を尊重すると主張した。
英国や欧州ではこの政策に批判も多かったが、保守党政権は断行した。今年7月の英国の選挙で労働党が勝利しスターマー政権が発足すると、この政策は廃止された。
しかし英国の対応は、英国・ルワンダの2国関係のみならず、欧州(先進国)とアフリカの関係についても一石を投じた。ルワンダは人口1300万人程度の小国だが、様々な問いを世界に投げかけていると言っても良い。
▼アフリカの事情
足元ではロシアのウクライナ侵攻やガザ戦争を契機に世界の枠組みが変わり始め、欧米先進国はアフリカなどグローバル・サウスとの関係構築に躍起となっている。ロシアや中国はアフリカとの関係強化に余念がない。
アフリカの動向は、世界の動きの映し鏡でもある。急変する世界を見るうえで、アフリカからの視点も欠かせない。
◎今週の注目(7月22-28日&当面の注目)
・パリ五輪が28日に開幕する。8月11日まで。コンコルド広場やエッフェル塔前広場など、都市の空間を活用した大会になる。競技はもちろん、新しい都市型五輪の行方にも注目だ。テロやサイバー対策も気になる。
・ウクライナ、ガザ戦争は引き続き世界の最重要課題。