こんにちは、内科医 ひとちゃんですニコニコ

 

いよいよ、夏本番といってよいのでしょうか。

「梅雨」に特有の湿気がなくなって、強い陽射し(ひざし)となっていますね。

 

3連休でお出かけをしている方も多いかもしれません。

 

イギリスの銀行家、政治家、生物学者、考古学者であったジョン・ラボックは、次のような言葉を残しています。

 

Rest is not idleness, and to lie sometimes on the grass on a summer day listening to the murmur of water, or watching the clouds float across the sky, is hardly a waste of time.

 

休息は怠惰ではない。夏の日に草の上で横になって水のせせらぎを聞いたり、雲が空を横切るのを眺めることは、ほとんど時間の浪費ではない。

 

ジョン・ラボックは、多くの研究業績を残し、多くの法律の制定に関わるなど。精力的に仕事をこなしたと伝えられていますが・・・

夏の「自然」の中で、過ごすことを格別な時間と考えていたのかもしれませんね。

 

皆さまの体調は、いかがでしょうか?

 

 

(AIで画像を作成)

 

前回は、癌に対する「細胞障害性T細胞(CTL)」の作用について、お話をさせていただきました。

 

「細胞障害性T細胞(CTL)」は、癌細胞の表面にある「MHC class I

抗原とともに表出された「癌の抗原」を認識し、破壊するわけですので、とても強い力で「癌細胞」を破壊することが可能である・・・と言えます。

 

しかしながら・・・弱点もあるわけです。

 

ひとつ目の弱点は、「MHC classI抗原」とともに表出されていた「癌の抗原」が変化してしまうことです。

 

これは、「癌細胞」が、「細胞障害性T細胞(CTL)」などで認識され、攻撃され始めると・・・特定の抗原を持つ癌細胞が攻撃され、破壊されます。

これであれば、「癌細胞」はすべて破壊されるということになるのですが・・・「癌細胞」の中には、この抗原が変化しているものが存在するわけです。

 

例えば・・・「癌細胞」の表面に「MHC class I」抗原が存在しても、

「癌細胞」の遺伝子が変化することにより、「MHC class I」抗原とともに表出される抗原も変化してしまうのですね。

 

最初の「癌抗原」をAとすると・・・当然、この時点の「細胞障害性T細胞(CTL)」は、「癌抗原A」を持つ「癌細胞」は確実に破壊できるわけですが、「癌抗原」がBに変化してしまいますと・・・

 

いくら「癌抗原A」を持つ「癌細胞」に対する「細胞障害性T細胞(CTL)」を多く投与しても、「癌抗原B」を持つ「癌細胞」を破壊はできないことになります。

 

こうした「癌抗原」の変化は、「癌細胞」のDNAの変化を生じる場合よりも、DNAのエピジェネチックな変化(アセチル化、メチル化、リン酸化など)によって変化し、癌に対する「免疫応答」に影響を与えると考えられています。

 

なので、癌の抗原変化のパターンは、無限であると考えてよいかもしれませんね。

そして、これらの抗原の変化は、常に生じており。治療の影響でも変化すると考えられています。

 

この癌の抗原の変化は、どの程度の頻度で起こるのでしょうか?

 

「癌の種類」にもよるのですが・・・その変化のスピードは速く(はやく)、癌発生の初期から数週間〜数ヶ月の間に観察されることが多いとされています。

 

「細胞障害性T細胞(CTL)」の投与を開始すると・・癌細胞は、この免疫から逃れるために・・・「癌抗原」の変化スピードは速くなっていく可能性が考えられます。

 

ただし、最初の抗原の完全な消失はまれで、ある程度のレベルで抗原は残存します。

 

つまり、当初の癌抗原Aが、突然、癌抗原Bに変わるというわけでなく、癌抗原A<癌抗原Bとなっていくクァ毛ですね。

しかしながら、当初の癌抗原Aを持つ癌細胞を破壊することが可能な「細胞障害性T細胞(CTL)」の破壊力は弱くなっていくことが予想されます・

 

    (AIで画像を作成)

 

「細胞障害性T細胞(CTL)」の2つ目の弱点とは、どのようなものなのでしょうか?

 

これは、これまで何度かブログ内でもご紹介している話ですが・・・

通常であれば、「癌抗原」と「MHC class I抗原」とが、「癌細胞」の表面に出ているわけです。

 

これらが「癌細胞」の表面に出ているために「細胞障害性T細胞(CTL)」は、「癌細胞」であると認識し、これを破壊することができるわけです。

 

しかしながら、時間が経過するうちに・・・「癌細胞」は、抗原提示に関わる分子(MHCクラスIなど)の発現をなくしたり

「抗原」の処理経路を変化させたりすることで、「免疫」から逃避しようとすることが知られています。

 

この現象は、「MHCクラスI抗原」の「ダウンレギュレーション(Daunregyurēshon)」と呼ばれています。

 

ヒトの「癌細胞」では、約40~90%でMHCクラスIのダウンレギュレーションが報告されています。

多くの固形がんでMHCクラスIの発現低下が見られ、これはCTLによる認識・攻撃を回避する主要な免疫逃避メカニズムであると考えられています。

 

「癌抗原」は、「MHC classI 抗原」とともに「癌細胞」表面に表出されますので、「癌抗原」も隠されて(かくされて)しまうわけです。

 

そのような状況になりますと・・「細胞障害性T細胞(CTL)」がどんなに多く存在しても、「癌細胞」を破壊できないjということになります。

 

 

このような「癌細胞」が、「癌抗原」は、「MHC classI 抗原」を表出しなくなってしまうような変化は、「癌」の進行とともに段階的に起こり、数週間から数ヶ月のスパンで進行するとされているのですね。

 

この状態になると・・・これは、「免疫細胞」を利用して、「癌細胞」

破壊するのは不可能なのか?・・・と言いますと、そうでもありません。

 

 

 

上記のように「MHCクラスI抗原」の「ダウンレギュレーション(Daunregyurēshon)」が生じていたとしても、「ナチュラル・キラー

(NK)細胞は、「癌細胞」を破壊することが可能であるのですね。

 

もちろん、「癌細胞」の「癌抗原」の変化や「MHCクラスI抗原」の「ダウンレギュレーション(Daunregyurēshon)」がなければ、

「細胞障害性T細胞(CTL)」の癌細胞の破壊力は、とても強いわけですが・・・ね。

 

では、「細胞障害性T細胞(CTL)」と「NK細胞」を使えば、癌細胞の立場からすると、これを回避(かいひ)するのは、難しいのでは・・・と考えられますね。

 

実際に「細胞障害性T細胞(CTL)」と「NK細胞」を同時に投与することで、相乗効果が期待できると報告されているのですが・・・続きは。後日の話題にしたいと思います。

 

素敵な休日を、そして、1週間をお過ごしくださいキラキラ

 

それでは、またバイバイ

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<ブログ後記 >7月22日

本格的な夏の季節が訪れたのは嬉しいのですが、
容赦なく(ようしゃなく)強い陽射し(ひざし)が照りつけているのは、少しだけ(?)・・・うんざりしてしまいますね。

今回は、前回のブログ内でもお話をした「細胞障害性T細胞(CTL)」についての特徴をお話をさせていただきました。


「細胞障害性T細胞(CTL)」が「癌細胞」の抗原の変化に弱いというお話をしますと・・・ならば、最初から「ナチュラル・キラー(NK)細胞」を用いた方がよいのではないか?・・・という疑問を持つ方も多いかもしれません。

しかしながら、「NK細胞」にも弱点はあります。

それは、本文内でもご紹介したように「NK細胞」の寿命の短さや「NK細胞」の活性、つまり「癌細胞」を破壊する力ですが・・・本文内にもご紹介をした「ドレス現象」が起こることで、
「NK細胞」の活性が低下してしまい、効率的に癌腫瘤全体に効果を及ぼす(およぼす)可能性が指摘されています。

ことから、癌の腫瘤の表面にダメージを与えるものの、癌腫瘤の深部までは達しにくい(たっしにくい)と考えられてもいるのですね。

「NK細胞」を大量に培養し、断続的に投与することが可能であれば、その有効性を充分に期待できると考える医学研究者もいまし、実際に効果が期待できると思います。

こうした癌に対して「細胞障害性T細胞(CTL)」や「NK細胞」などの「免疫細胞」を用いた治療は、韓国、中国、マレーシアなどで研究「がされており、今後、ベトナムでもその治療の実際的な方法が
検討されています。その中で、「韓国」で、GCリンフォテック社の主導で国として、治験が第3相試験までが施行されて、有効性が認められて、同国の「保険診療」となったそうです。

話を戻しますと・・・「細胞障害性T細胞(CTL)」や「NK細胞」の細胞を同時に投与すると、治療効果に「相乗効果(そうじょうこうか)」があることが、既に世界各国で報告されているのですね。 

 

次にまとめてみたいと思います。

1)相補的な腫瘍認識と攻撃

「細胞障害性T細胞(CTL)」は、抗原特異的に「癌細胞」を認識し、「NK細胞」は、抗原に依存しないで、異常細胞を排除できるため、「癌細胞」の多様性や免疫逃避に対応できるとされています。
(参考1,2)

「NK細胞」は、正常な細胞ではない細胞を破壊しようとしますので・・・例えば、ウイルス感染細胞
や「老化細胞」までも破壊することが可能でしたね。

この性質からしますと、「癌細胞」抗原がどんなに変化しても・・・「NK細胞」は「癌細胞」を破壊できることになりますね。

2)免疫応答の増強

「NK細胞」は、「樹状細胞」の腫瘍局所へのリクルートを促進し,「細胞障害性T細胞(CTL)」の細胞応答を強化することが報告されています。さらに「細胞障害性T細胞(CTL)」から放出される
「インターロイキン2(IL-2)」はNK細胞を活性化することも報告されています (参考1,3)

「樹状細胞」のお話は、ブログ内であまり触れてこなかったのですが、そのメカニズムを簡単にご紹介しますと、次のようなものになります。
「樹状細胞」が癌細胞の断片や死んだ細胞を「食べる」わけですね。これを「貪食(どんしょく)」
と呼びます。そして「抗原」処理をして、MHC class II抗原と一緒に表面に出し、「ヘルパーT細胞(CD4+T細胞)」→「細胞障害性T細胞(CTL)」を活性化するというプロセスをたどります。
このプロセスに10日〜14日程度の時間が必要であるとされています。

このプロセスのスタートは、「癌組織」部分に「樹状細胞」を早く集めるところから始まりますので
「NK細胞」が癌組織を攻撃すると同時に「樹状細胞」を呼び寄せるということになりますね。

3)癌細胞が「MHC class I抗原(HLAクラスI)」を喪失し「細胞障害性T細胞(CTL)」から逃避しても、NK細胞はそのような細胞を認識・排除できる

4)免疫チェックポイント阻害剤との併用効果の増強

PD-1/PD-L1阻害などの免疫チェックポイント治療は、「細胞障害性T細胞(CTL)」だけでなく
「NK細胞」の抗腫瘍活性も高める(参考5)

これらに加えて、癌幹細胞(Cancer Stem Cells, CSCs)は、腫瘍の再発や治療抵抗性の原因となる細胞ですが、「NK細胞」や「細胞障害性T細胞(CTL)」は、条件によっては、癌幹細胞を破壊することが可能です。
ただし、「癌幹細胞」は、免疫細胞からの攻撃を回避する多様な仕組みも持っていますので、
やはり、「NK細胞」と「細胞障害性T細胞(CTL)」を同時に投与した方よい可能性はありますね。

もちろん、これらの「免疫細胞」だけで「癌細胞」がなくなるとは、現時点では考えていません。


可能であれば、標準治療の「手術療法」や「化学療法」の補助として、用いるべきという私の基本的な考え方です。

それは、どんなに「化学療法」を施行しても、現状では「癌幹細胞」は残っている可能性があるということです。もちろん、経過中に自分自身の「免疫細胞」の力が強ければ、「癌幹細胞」は自然に消失する可能性は高いと考えます。


しかし、万が一、残っていますと、再発するリスクもあるわけですね。

「化学療法」の優れた(すぐれた)ところは、「癌細胞」を大量に破壊できることです。もし、手術が可能ならば、できるだけ「癌組織」を除去し、癌細胞の数を少なくした方が「免疫細胞」を用いた治療
は効果を示しやすいと言えますね。

ただし、化学療法には「プロトコール(レジメ)」と呼ばれる抗がん剤の投与方法がありまして、世界の中でも「超高齢化社会」である我が国では、このような「プロトコール(レジメ)」をすべて
施行できずに、副作用の出現で、中止せざるを得ない患者さんもいるとされています。

「NK細胞」や「細胞障害性T細胞(CTL)」を併用するとしても、あまり、副作用が出ないことが特徴なのですね。
 

しかしながら、「免疫細胞」を用いた治療にも弱点があります。
それは、「癌関連線維芽細胞(CARF)」の存在でしたね、「癌関連線維芽細胞」と「癌細胞」の混じりあった「がん微小環境(Tumor Microenvironment, TME)」でしたね。


この中には、血管内皮細胞や免疫細胞が「癌関連線維芽細胞」と同時に存在しているわけです。
この免疫細胞の中で、「マクロファージ」という細胞が、活性型のM1型から、免疫抑制型のM2型に変化しているために・・・
ひどい場合には、どんなに「免疫細胞」を投与しても、それらが「癌組織」を認識できずに通り過ぎる・・・という現象「も報告されているのですね。

今回のブログは、若干、踏み込んだお話をしましたので・・・また、叩かれる(たたかれる)かもしれませんねえーん

 

まあ、引退まじかの「老害医師」が、若い医療者たちに残した伝言と

考えてもらった方が良いかもしれません爆  笑

「常識にとらわれるな。そして、新しい考え方に乗り遅れるな!」というメッセージとともに・・・ね。

 

今回も最後までお付き合いいただきまして

ありがとうございましたお願い

 

参考)
1)Annu Rev Immunol. 2023 Apr 26:41:17-38.
 Designing Cancer Immunotherapies That Engage T Cells and NK Cells
Oleksandr Kyrysyuら

2)J Immunother Cancer. 2024 Oct 31;12(10):e009934.

Unlocking the therapeutic potential of the NKG2A-HLA-E immune  checkpoint pathway in  T cells and NK cells for cancer    immunotherapy
Yan Liら

 

3)Immune Netw. 2025 Apr 9;25(2):e17.
Cytokines in Focus: IL-2 and IL-15 in NK Adoptive Cell Cancer Immunotherapy
Bryan Marrら

 

4)Front Immunol. 2019 Dec 6:10:2836.
 Harnessing NK Cells for Cancer Treatment
Paola Minettoら

 

5)J Clin Invest. 2018 Oct 1;128(10):4654-4668.
 Contribution of NK cells to immunotherapy mediated by PD-1/PD-L1 blockade
Joy Hsuら

 

(麻布台ヒルズにて)
(筆者撮影)

 =================================

 院長  

小笠原  均  (Hitoshi Ogasawara)   

医学博士, 内科医

(総合内科、リウマチ専門医)

(新潟大医学部卒)

 

 

                (上差し 筆者がセレクトしたピアノJazzの曲)

 

                  (上差し 筆者がセレクトした夏の夜のJazzの曲)

 

 

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         <今週、なんとなく聞いてみたい曲>

 

 

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<JTKクリニックからのお知らせ>

 

◯外来診療は予約制をとり、待ち時間が生じないようにしています。

 

◯ ダイエット漢方製剤は、オンライン診療でも可能です。

◯ 線維筋痛症に対するノイロトロピン等の点滴療法、トリガーポイント注射を行なっております。(セカンドオピニオン診療も可)

 

○自分の皮下脂肪から組織を採取し、「間葉系幹細胞」を培養して、自分自身の組織内に投与する「幹細胞治療」を開始しました。

 

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〒102-0083

東京都千代田区麹町4-1-5麴町志村ビル2階

電話 03-6261-6386

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こんにちは、内科医 ひとちゃんですニコニコ

 

月日が経つのははやいもので、7月も半ばになろうとしていますね。

本格的な夏がきて・・・「夏を満喫(まんきつ)するぞ」と言いたいところではありますが・・・

 

耳に入ってくるニュースは、なんとも鬱陶しい(うっとおしい)ことばかりで、なかなか、夏を心から楽しもうという気にもならないのも事実です。

 

皆さまの体調は、いかがでしょうか?

 

(AIで画像を作成)

 

今回は、お隣の国「韓国」で「免疫細胞を用いた癌治療」が保険診療

として、実施可能になったという画期的(かっきてき)なニュースがありまして、それに関するお話をしてみたいと思います。

 

もちろん、日本国内のニュースでは一切(いっさい)報道されていませんが・・・ね。

 

その「免疫細胞」とは、主に「細胞障害性T細胞(CTL)」を用いた治療で、韓国に本社のある「GCリンフォテック社」が中心となり開発したものになります。

 

JTKクリニックの「免疫細胞」を用いた癌の補助療法は、この「GCリンフォテック社」の日本支社の協力により行っています。

 

「GCリンフォテック社」の情報によれば、韓国国内での第3相試験でも「有効性」が確認できるデータが得られ、保険診療で行える治療になったそうです。

 

各国の公的な保険診療で認められるのは「ナチュラル・キラー(NK細胞)」が先だろうと、私は考えておりましたので・・・見事に予想が外れてしまったわけです。

 

そこで、今回は遅ればせながら・・・「ナチュラル・キラー(NK細胞)」の話題を交える(まじえる)形で、「細胞障害性T細胞(CTL)」

とは、どのような「免疫細胞」であるのかを話題にしてみたいと思います。

 

    (AIで画像を作成)

 

まずは・・・「癌細胞」を排除できる細胞で、代表的なものをあげるとしますと・・・「ナチュラル・キラー(NK)細胞」と「細胞障害性T細胞(CTL)」となります。

「NK細胞」の話題は、これまでも、多くの話題をご紹介してきましたね。少しだけ、復習してみますと・・・

 

「NK細胞」は、生まれつき備わっている「自然免疫」を構成する細胞のひとつでありまして、「癌細胞」ばかりでなく、「ウイルス感染細胞」や「老化細胞」までも破壊することが報告されています。

現在では、身体を構成する「各種の臓器(ぞうき)」から「老化細胞」を除去することが可能となれば、ヒトの寿命が10~20年程度の延長をすることが可能である・・・という説も出てきているので、

 

で、「抗老化医療」の中でも、自己血由来の「NK細胞」を培養増殖(ばいようぞうしょく)させて、投与する「NK細胞」療法は、「抗老化医療」という側面からも期待されているわけですね。


「NK細胞」の破壊力は、とても強いわけですが、難点(なんてん)をいえば・・・「NK細胞」の生存期間の短さが問題となります。

ヒトやマウスの通常の「NK細胞」は、数日から数週間程度で寿命を迎えると考えられています。

 

もちろん、時間が経つと、その活性(免疫の強さ)は、次第に低下していきますので、「NK細胞」にその破壊力を期待できるのは、約3~5日間であると考えられます。
 

また、癌細胞を破壊する際には、「NK細胞」の「ドレス現象」
というものが認められることが、2013年に東北大学の研究グループによって報告されています。

「NK細胞」の「ドレス現象」とは、次のようなものになります。
最初に「癌細胞」を攻撃した「NK細胞①」は、「癌細胞」からNKG2DLを獲得することがあります。この結果、「NK細胞①」は、NKG2DLをまとった状態、つまり「ドレスを着た」ような状態になり、これが「NK細胞②」よって、攻撃され、破壊されてしまうという現象が起こるのですね。

 

           (図はお借りしました) 

 

このことは、「NK細胞」の能力を半減(はんげん)させると考えられているわけです。

一方で「細胞障害性T細胞(CTL)」は・・・と言いますと、「細胞障害性T細胞(CTL)」は、CD8+ T細胞とも呼ばれます。
 

これは、次のようなメカニズムにより、「癌細胞」を破壊します。

「癌細胞」は、内部のタンパク質(癌抗原)を分解して「ペプチド」の断片を作り、これをMHCクラスI分子と結合させて細胞表面に提示します。

「ペプチド」はアミノ酸が結合したものでしたね。

 

          (図はお借りしました)

 

 

自分自身が「癌細胞」であると「MHC class I抗原」といっしょに表面に出した「癌細胞」は、すぐに「細胞障害性T細胞(CTL)」の餌食(えじき)」になり、攻撃を受けることになります。

 

もう少し、詳細な流れをお話ししておきますと・・・

 

「細胞障害性T細胞(CTL)」の「T細胞受容体(TCR)」がこの複合体を認識することで、癌細胞を「異常な細胞」として識別します。


これは、次のようなメカニズムとなります。

「(細胞傷害性T細胞(CTL)」の細胞受容体(TCR)が、MHCクラスI分子に提示された「癌抗原ペプチド」を認識すると、以下の反応が起こると考えられています。

 




        (図はお借りしました)


1) T細胞が活性化される
             ↓
2)細胞毒性顆粒(パーフォリン、グランザイム)を放出
              ↓

3)癌細胞のアポトーシス(細胞死)を誘導する

というように癌細胞を破壊(アポトーシス)するわけですね。
-


上記のような「細胞障害性T細胞(CTL)」による癌細胞攻撃は、従来の理解を遙かに超えた精密で強力なな分子システムであると考えられているわけですね。

 

しかしながら、「細胞障害性T細胞(CTL)」の「癌」に対する免疫力には、弱点も存在するわけですが、続きは、後日の話題にしたいと思います。

 

素敵な1週間をお過ごしくださいキラキラ

 

それでは、またバイバイ

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<ブログ後記>7月15日

本文内で、ご紹介した「細胞障害性T細胞(CTL)」を用いる治療は、「活性リンパ球療法」というブランド名で呼ばれています。

その歴史を見てみますと、実に壮大(そうだい)な歴史(History)があるのが理解できます。

1980年代の初め、アメリカ国立衛生研究所の「ローゼンバーグ博士」が率いる研究チームは、がん患者さんから大量の「リンパ球」を採取して、一定量の「インターロイキン2(I L-2)」のサイトカインを加えるという方法を考え出しました。

「インターロイキン2(I L-2)」というサイトカインは、「リンパ球」を活性化させるますが、この活性化した「リンパ球」を点滴で体内に戻す方法を開発し、この治療は「LAK療法」と名付けられ、第4の癌治療として、大いに期待されたそうです。

この「LAK療法」は、治療が困難な「進行がん」であっても、大きな癌病変が消える症例が多く認められたそうですが、問題点も浮き彫り
(うきぼり)になったそうです。

その問題点は、「インターロイキン2(I L-2)」の副作用が強いことであり、癌の縮小は認められるものの、どうしても、それを克服(こくふく)することができなかったようです。

それに加えて、致命的(ちめいてき)であったのは、「LAK療法」では、活性を高めた「NK細胞」を増殖させることができないことが判明したそうです。

ブログ内でも度々(たびたび)お話をしていますが・・・「NK細胞」は、その数ではなく、その「活性」が重要であるというお話をしているわけですが・・・「NK細胞」の活性を高められても、それがある程度の増殖をしなければ、「癌の治療」には使えない・・・
ということになりますね。

注目すべきは、「ローゼンバーグ博士」の目指した「癌の免疫治療」
が、「細胞障害性T細胞(CTL)」と「NK細胞」を同時に投与することを目指していた点になります。

いずれにせよ、「ローゼンバーグ博士」らの作り出した「LAK療法」は、実用化は見送られたのだそうです。

「LAK療法」が衰退(すいたい)したあと、次の課題は、「リンパ球」の効率的な大量培養方法の開発、身体的な負担の軽減、高い治療効果と安全性が目的となっていきます。

そして、1980年代の後半になり、日本で新しい培養方法が開発されたのです。

当時の「国立がんセンター」の研究室長だった「関根暉彬博士」は、「LAK療法」の開発に携わった(たずさわった)経験を活かし(いかし)、少量の末梢血液(約30cc)から「リンパ球」を分離し、新たに「抗CD3抗体」と前述の「インターロイキン2(I L-2)」で刺激することにより、リンパ球を1,000倍以上に増殖させることに成功したのですね。

少し、解説をしますと・・・リンパ球の一部である「T細胞」の表面には、「CD3タンパク質」というものがありまして、T細胞の増殖に重要な役割を果たしているのですね。「抗CD3抗体」が「CD3タンパク質」を刺激して、「インターロイキン2(I L-2)」の刺激とは、

別の経路で、「T細胞」の増殖を促した(うながした)・・・ということになります。

さらに「関根先生」の開発した手法が画期的(かっきてき)であったところは、活性化した「リンパ球」を患者さんに投与する直前に「抗CD3抗体」や「インターロイキン2(IL-2)」を取り除くことで、投与した際に生じる重篤な(じゅうとく)な副作用も解消されたというわけですね。

これが、日本で生まれた『活性化自己リンパ球療法』の歴史となりますね。

関根先生の研究チームは、「活性化自己リンパ球療法」の効果を確認するため、「肝臓がん」の術後再発予防を目的とした臨床試験を行ないました。5年間の試験の結果、無再発生存率は改善され、統計学的にも明らかな有意差が認められました。

この結果は、2000年に世界的な医学雑誌「ランセット」に掲載され、「活性化自己リンパ球療法」は科学的根拠に基づいた初めての受動免疫療法として知られることになったというわけです。

関根先生の行った方法を少し検証してみますと・・・

「インターロイキン2( IL-2)」は、増殖・生存シグナルを促進するので、「細胞障害性T細胞(CTL, CD8+T細胞)が強力に増殖されることになります。

活性・増殖される細胞は、他にもありまして、「インターロイキン2( IL-2)レセプター」を発現しているために、「インターロイキン2( IL-2)」に応答して増殖する細胞に「ヘルパーT細胞(CD4+T細胞)」もあります。

また、抗CD3抗体を用いますと・・・- TCR/CD3複合体に結合し、「細胞障害性T細胞(CTL, CD8+T細胞)」と「ヘルパーT細胞(CD4+T細胞)」を強力に活性化させることが知られています。

解説が後になってしまいましたが・・・
「ヘルパーT細胞(CD4+T細胞)」とは、それ自体は細胞毒性はない(直接的な殺傷能力はない)わけですが、他の免疫細胞を活性化・調節する「司令塔」的役割を持つ細胞ということになります。

NK細胞の増殖・活性化には、「インターロイキン2( IL-2)」は共通なのですが、NK細胞は、CD3分子を発現していないため、抗CD3抗体による直接的な活性化・増殖は起こりません。

話を戻しますと・・・関根先生の研究チームの開発した「活性化自己リンパ球療法」の「抗CD3抗体」や「インターロイキン2(IL-2)」を用いる方法は、
ときどき、話題になる「CAR-T療法」の遺伝子改変前の「T細胞」の増殖にも応用されているそうです。

長くなってしまいましたので、「癌細胞」の抗原の変化について、後日の話題にしたいと思います。

今回も最後までお付き合いいただきまして
誠にありがとうございましたお願い

 

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              (筆者撮影)

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 理事長・院長  

小笠原  均  (Hitoshi Ogasawara)   

医学博士, 内科医

(総合内科、リウマチ専門医)

(新潟大医学部卒)

 

 

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こんにちは、内科医 ひとちゃんですニコニコ

 

夜の蒸し暑さで、夜によく眠れない方も多いのではないでしょうか?

 

夏の時期は仕方がない・・・というのも事実ですが・・・

「睡眠」は、昔よりも健康を維持するには、とても重要であると考えられているようです。

 

ロンドンの庶民生活を描いた作家て、『靴屋の休日』という喜劇の作家でも知られるトーマス・デッカー(Thomas Dekker)は、次のような名言を残しています。

 

Sleep is the golden chain that ties health and our bodies together  

 

「睡眠は健康と私たちの体を結び付ける黄金の鎖である」

 

皆様の体調は、いかがでしょうか?

 

(AIで画像を作成)

 

「睡眠」が健康に及ぼす影響は、最新の医学では次のように報告されています。

 

まず、「 睡眠時間」は、心血管疾患、糖尿病、免疫機能、認知機能に対して因果関係を持つことが明確に証明されているというのですね

(参考1)。

 

 特に注目すべきは、短時間睡眠(7時間未満)が心血管疾患の直接的な原因となることが実証されている・・・というのは、ちょっと驚きです(参考2)。

 

アメリカ心臓協会は、2022年に「睡眠」を「Life’s Essential 8(人生に必要不可欠な8項目)」に追加し、血圧、コレステロール、血糖値と同等の重要性を持つ「心血管健康指標」として位置づけたのですね。

 

このことは、「睡眠医学」において歴史的な転換点と考えられています。

アメリカ心臓協会の指針では、7-8時間の睡眠が最適であり、この範囲から逸脱すると心血管疾患リスクが段階的に上昇するというのですね(参考2)。

 

    (AIで画像を作成)

 

このような結果は、46万人を対象とした解析で「睡眠時間」と「心筋梗梗塞」の因果関係が実証されたそうです。

 

その結果は、次のようになります。

 

短時間睡眠(6時間未満)は心筋梗塞リスクを20%増加させたというのです(参考3)。
 

また、睡眠時間1時間増加当たり、冠動脈疾患リスクが26%低下することも報告され、これは従来の観察研究で見られたU字型関係とは異なり、短時間睡眠のみが因果的にリスクを増加させることも示されています。

 

それ以前の観察研究では、「睡眠時間」が長くても、心血管障害のリスクが高まる可能性が指摘されるというU字型のような関係があると

考えられていました。

 

しかし、これらの大規模試験の結果からは・・・

長時間の睡眠により、リスクが高まることはなく、短時間の睡眠のみが因果的にリスクを増加させることが示されたのだそうです。

 

これらの心血管障害の 病態生理学的メカニズムは、次のように報告されています。

 

 炎症経路の活性化が中心的役割を担うとされていまして・・・

 

「睡眠不足」により、C反応性タンパク質(CRP)、インターロイキン-6(IL-6)、TNF-αなどの炎症マーカーが上昇し、「動脈硬化」を促進(そくしん)するのだそうです。

 

 また、血管内皮細胞の機能障害を介して一酸化窒素(NO)産生が低下し、血管内皮依存性血管拡張能が障害されるのだそうです(参考4)

 

 

さらに自律神経系の失調により交感神経活性が亢進し、心拍変動性が低下し、(参考5), これにより血圧上昇リスクが高まり、長期的な心血管疾患発症につながるとも報告されているのですね(参考6)。

 

これだけの根拠が「睡眠時間」は7時間はとった方がよい・・・と

強く強調されるようになった背景なのですね。

 

睡眠不足による糖尿病、免疫機能への影響は、後日の話題にしたいと思います。

 

素敵な1週間をお過ごしくださいキラキラ

 

それでは、またバイバイ

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<ブログ後記> 7月8日

 

今朝は青空が広がり、皇居の近くを車で通った時に「蝉(せみ)」の鳴き声が聞こえていました。

蝉の声が聞こえてきますと・・・本格的な夏が到来したのかな〜などと思ったりします。

 

今回は「心筋梗塞」という、一見(いっけん)無関係な疾患の発症が「睡眠時間」に関係がある・・・というお話をさせていただきました。しかし、実は「心筋梗塞」ばかりでなく、他にも多くの疾患の発症が「睡眠」と関係があるのではないか・・・と報告されているのですね。

 

本文内でもご紹介しましたが、「睡眠時間」と「2型糖尿病」の発症の関係は、明確化されています。

「2型糖尿病」とは、生活していく中で、発症していく、通常の「糖尿病」ということになりますね。

 

48万人を対象とした大規模な解析で、5時間以下の睡眠で「糖尿病リスク」が37%増加することが示されています(参考7)。

この理由として、「睡眠時間と質」の低下は、インスリン抵抗性の増加、グルコース耐性の低下などの糖尿病リスクの増加と関連していることも報告されています(参考8)

さらに不規則な「睡眠」習慣は、2型糖尿病の発症リスクを高めることも報告されています(参考9)

では、短時間の睡眠が「免疫」に影響するかというと・・・答えは「Yes」となります。

短時間の「睡眠」が免疫力の低下を引き起こすという報告は、実は

多く存在します。睡眠不足や短時間睡眠は、「免疫システム」の働きを弱め、感染症のリスクを高めることが報告されています。

例えば、自然な短時間の睡眠は「ナチュラルキラー細胞(NK細胞)」の活性低下やT細胞機能の変化と関連し、免疫応答のバランスが崩れることが観察されています(参考10,11)。

さらに、睡眠不足は「炎症性サイトカイン」の増加や慢性的な低レベルの炎症状態を引き起こし、心血管疾患や代謝疾患などのリスクも高めると考えられています(参考12)。

では、睡眠時間の短いことは、「老化」の進行スピードには、影響を与えるのでしょうか?

短時間の「睡眠」が「老化」を早めてしまうことは、近年の研究で明確に報告されています。

 

特に、1日6時間未満の睡眠や不眠症状は、「エピジェネティック年齢(生物学的な老化指標)」の加速と密接に関連しており、実年齢よりも生物学的に高齢となる状態が観察されています(参考13)。

さらに睡眠時間が短い人は、脳の萎縮や認知機能の低下がより早く進行することも示されています。さらに、中年期からの短い睡眠は、後年の「認知症リスクの増加」とも関連していると報告されています(参考14)。
 

いかがでしょうか?「睡眠時間」を削ってでも、勉強をしたり、仕事を頑張ることが「美徳(びとく)」とされた時代が確かにあったのかもしれませんが・・・現在では、充分な睡眠をとる心がけが重要なのかもしれませんね。

 

今回も最後までお付き合いいただきまして

誠にありがとうございましたお願い


 

参考)

!)Physiol Rep ​​2017 Dec;5(23):e13498. 

Skeletal muscle insulin signaling and whole-body glucose metabolism following acute sleep restriction in healthy males

Emma Sweeneyら

 

2)Front Cardiovasc Med. 2022 Aug 11:9:930000.

Associations between sleep duration and cardiovascular diseases: A meta-review and meta-analysis of observational and Mendelian randomization studies

Shanshan Wangら

 

3)J Am Coll Cardiol. 2019 Sep 10;74(10):1304-1314

Sleep Duration and Myocardial Infarction

 Iyas Daghlasら

 

4)Am J Physiol Heart Circ Physiol. 2021 Jan 1;320(1):H29-H35. Sleep deprivation and endothelial function: reconciling seminal evidence with recent perspectives

Joshua M Cherubiniら 

 

5)Life(Basal). 2025 Jan 7;15(1):60.

The Effect of Sleep Disruption on Cardiometabolic Health

 SeokHyun Hongら

 

6)J Am Coll Cardiol. 2020 Mar 10;75(9):991-999.

Sleep Irregularity and Risk of Cardiovascular Events: The Multi-Ethnic Study of Atherosclerosis

Tianyi Huangら


7)Diabetes Care. 2015 Mar;38(3):529-37.
Sleep duration and risk of type 2 diabetes: a meta-analysis of prospective studies
Zhilei Shanら

 

8)Metabolism. 2018 Jul:84:56-66.
Sleep influences on obesity, insulin resistance, and risk of type 2 diabetes
Sirimon Reutrakulら

 

9)Sleep Med Rev. 2022 Apr:62:101594.
 Effects of sleep manipulation on markers of insulin sensitivity: A systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials
Nina Sondrupら

 

10)Commun Biol. 2021 Nov 18;4(1):1304.
Role of sleep deprivation in immune-related disease risk and outcomes
Sergio Garbarinoら

 

11)Brain Behav Immun. 2011 Oct;25(7):1367-75.
Short natural sleep is associated with higher T cell and lower NK cell activities
Elinor Fondellら

 

12) MedComm . 2023 Apr 30;4(3):e252.
Multiomics analysis of human peripheral blood reveals marked molecular profiling changes caused by one night of sleep deprivation
Chongyang Chenら

 

13)Psychosom Med. 2024 Jun 1;86(5):453-462.
Short Sleep and Insomnia Are Associated With Accelerated Epigenetic Age
Cynthia D J Kustersら

 

14)Sleep. 2014 Jul 1;37(7):1171-8.
Sleep duration and age-related changes in brain structure and cognitive performance
June C Loら

 

           (東京タワーのある風景)

              (筆者撮影)

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                (上差し 筆者がセレクトしたピアノJazzの曲)

 

                  (上差し 筆者がセレクトした夏の夜のJazzの曲)

 

 

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                <今週、なんとなく聞いてみたい曲>

 

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こんにちは、内科医 ひとちゃんですニコニコ

 

6月最後の休日の午後であるわけですが、梅雨明けをしたのでしょうか、夏の青空が広がっています。

 

夏の到来(とうらい)が早いな思うと同時に、2025年も

既に(すでに)半年が経って(たって)しまったことに少し驚いています。次のような言葉を思い出しました。

 

“Time is what we want most, but what we use worst.”

 

「時間は私たちが最も欲するものだが、最も下手に使ってしまうものでもある。」

 

これは、「ウィリアム・ペン」は、17世紀イギリスに生きた宗教家であり、彼は、自らの信念を貫き、誰もが「良心のままに自由に生きること」を目指した社会を築こうとした人物です。のちにペンシルベニア州創立の立役者であったとされています。

彼の名言には、他にも

 

「苦痛なくして勝利なし、いばらなくして王座なし」があります。これは、困難や苦難を乗り越えることなしに、成功や栄光は得られないという意味です。

 

その理念は、今日の民主主義や人権の土台にもつながったとも言われています。

 

一年の折り返し。6月最後の休日に、少しだけ立ち止まって、これまでの時間の使い方を振り返ってみたくなりました。

 

皆さまの体調は、いかがでしょうか?

 

(AIで画像を作成)

                

今回は、「ビタミンD3」についてのお話をしてみたいと思います。

 

 最近の研究で、私たちが日光を浴びた(あびた)時に作られる

「ビタミンD3」が、単に骨を丈夫にするだけでなく、細胞レベルで老化を遅らせる重要な働きをしていることが報告されています。

 

特に注目されているのは、細胞の「寿命時計」とも呼ばれる

「テロメア」を守る働きです。 

 

「テロメア」は、染色体の末端にある特殊なDNA構造でしたよね。

 

 その特徴は「TTAGGG」という6つの塩基配列が数千回繰り返された構造をしており、染色体の両端に存在します。

このDNA配列にはタンパク質が結合して、染色体の末端を保護するキャップのような役割を果たしているのでしたよね。

 

また、細胞分裂の際に重要な遺伝情報が失われることを防いでいます。

もし、染色体に「テロメア」がなかったとしますと、染色体同士が融合したり、遺伝子が損傷を受けたりする可能性があると考えられています。

 

一方で、「ビタミンD3」とは、どのようなものなのでしょうか?

 

その前に「ビタミンD」について、お話をしておこうと思います。

 

「ビタミンD 」は、脂溶性ビタミンの一種であり、カルシウムやリンの腸内吸収を促進することで骨の健康を維持するほか、多くの生物学的機能に関与することが知られています。

 

ヒトにおいて重要なビタミンDには、植物由来の「ビタミンD₂」と動物由来の「ビタミンD₃」があります。

 

 このうち。「ビタミンD3」は、皮膚で「紫外線」を浴びることで作られたり、食事から摂取されます。体内では段階的に変化し、最終的に最も活性の高い形になります。まず肝臓で第一段階の変化を受け、次に腎臓で最終的な活性型に変わります。

 

この活性型が、全身の細胞にある「ビタミンD受容体」という鍵穴に結合して、さまざまな遺伝子のスイッチを入れる役割を果たすわけですね。

 

興味深いことに、この「ビタミンD受容体」は骨や腸だけでなく、免疫細胞、心臓、血管、前立腺、乳腺など全身の様々な細胞に存在していることが示されています。

 

これは、ビタミンD3が骨の健康を超えた幅広い生理機能を持つと考えられているわけです。

 

「テロメア」に再び、話を戻しますと・・・「テロメア」は。細胞の寿命を決める重要な構造 でもあるわけです。

 

生まれたばかりの赤ちゃんでは、約10-15キロベースの「テロメア」の長さがあるわけですが、大人では約5-10キロベースと長さが短くなっているのですね。

 

なぜ、テロメアは、短くなっていくのか?・・・と言いますと、

 細胞が分裂するたびに、DNA複製の仕組み上の制約により、テロメアは少しずつ短くなっていくからですね。

1回の細胞分裂で、50-200塩基程度ということが知られています。

 

これは「末端複製問題」と呼ばれる現象で、DNAを複製する酵素の特性によって避けられません。

 

また、活性酸素や炎症などのストレスによっても短縮が加速されます。

「幹細胞」や「生殖細胞」など限られた細胞 では、「テロメラーゼ」という酵素(こうそ)があり、テロメアを延長することが可能なのですが、大部分の体の細胞では活性が低いため、ほとんど機能していません。

 

    (AIで画像を作成)

 

このために通常の体細胞亜h、細胞分裂が生じる度(たび)にテロメアの長さは短くなり、やがて、「限界(げんかい)に達すると

細胞は分裂を停止し、「老化細胞」になるわけです。

 

正常な体細胞が分裂できる回数に上限があることを示した重要な生物学的概念が、「ヘイフリック限界(Hayflick limit)」であることは、以前のブログでお話をさせていただいたと思います。

 

「老化細胞」は、増殖を停止するだけでなく、炎症性物質を大量に分泌するようになります。

 

これを「老化関連分泌表現型(SASP)」と呼びます。短期的には組織修復に役立ちますが、慢性的に続くと周囲の細胞にも悪影響を与えることから、「老化細胞」は「ゾンビ細胞」と呼ばれたりもするわけですね。

 

では、「ビタミンD3」は、上記に示したプロセスにどのような

「テロメア」を守る仕組みがあるのでしょうか。

 

 直接的な「テロメア」の保護メカニズム は、次のようなものになります。

 

大規模な調査研究により、血液中のビタミンD濃度が高い人ほどテロメアが長いことが一貫して報告されています。

 

ある研究では、ビタミンD濃度が最も高いグループと最も低いグループで、約5年分の老化に相当する差が認められたと報告するものもあります。 

 

この理由として、「ビタミンD受容体」がテロメラーゼ酵素の遺伝子を直接制御することが分かっています。

 

興味深いことに、正常な細胞では「テロメラーゼ」を活性化して細胞を守る一方、がん細胞では逆に抑制して増殖を止める働きする可能性が指摘 されています。

 

また、「ビタミンD3」は、マイクロRNAという小さな調節分子を通じて、遺伝子の発現を細かく調整するとされています。

これにより、細胞の状況に応じて適切に「テロメラーゼ」の活性を制御しています。 

 

また、活性酸素などの「酸化ストレス」からの保護作用があることも知られており、 性酸素は「テロメアDNA」を特に攻撃しやすい性質があるそうですが、「ビタミンD3」は、「Nrf2」という転写因子を活性化することで、細胞の抗酸化防御システムを強化します。

 

また、「ビタミンD3」は、ミトコンドリアの機能を改善し、効率的なエネルギー産生と活性酸素の除去を促進することも報告されているのですね。

 

素敵な1週間をお過ごしくださいキラキラ

 

それでは、またバイバイ

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<ブログ後記>7月1日
 

7月になりましたね。いつもでしたら「梅雨」の季節なわけですが、

いきなり、夏の暑さが始まりましたね、長い夏となりそうです。

 

今回は、近年の「老化研究」の進歩により、「ビタミンD3』が単なる骨代謝調節因子を超えて、細胞レベルでの「老化抑制」や「寿命延長」に重要な役割を果たしていることが明らかになってきたのですね。

「ビタミンD3」とは、どのようなものであったでしょうか?
この話題は、以前にもブログ内でお話をしたことがあるかもしれませんね。

「ビタミンD」には、D2とD3の2種類がありますが、ヒトの体内ではビタミンD3が主に利用されます。「ビタミンD3」は、日光を浴びることで皮膚で生成されるほか、魚介類や卵黄などに含まれています。
サプリもありますし、「骨粗鬆症」に対する薬剤としても用いられます。

「ビタミンD」は、「活性型ビタミンD3」になると、小腸からの

「カルシウム」の吸収を促進させ、骨量の減少を抑えるとされるのですが、これらの薬剤は体内で「活性型ビタミンD3」とほぼ同様の作用をあらわす薬剤とされているのですね。

そして、こうした「ビタミンD3」が「テロメア」の分解速度を低下させ、細胞老化の進行を遅延させる可能性があるということが報告され、注目されているのですね。

「テロメア」の短縮については、以下のようなことが知られています。

○短縮の程度 
ヒト体細胞では1回の分裂で約50-200塩基対短縮する

○生涯(しょうがい)で、体細胞は、約50-70回の分裂が可能であるとされています

○臨界(りんかい)の長さ(約4-6kb)に達した時点で「老化細胞」になるか、或いは、「細胞死(アポトーシス)」のどちらかになるわけですね。

ところで・・・通常の体細胞の「テロメア」を伸ばすことができるか?・・・という疑問を持つ方は多いと思います。この答えとしては、理論的には「可能」です。

例えば、体細胞内に「テロメラーゼ逆転写酵素(TERT)」を細胞に導入すると、「テロメア」を延長できることが研究で示されています。

しかし。この方法は確かに「テロメア」を延長できるわけですが・・・「癌細胞」が無限に増殖する能力獲得と同じメカニズムのため、細胞の「がん化リスク」が高まる可能性があると考えられています。

これらのことから寿命を伸ばすためには・・・「テロメア」を伸ばすのではなく「テロメア」が短縮するスピードを低下させることが重要であるということになりますよね。

実際にどのようなことが報告されているのでしょうか?

血中ビタミンD(25(OH)D)濃度が高い人は、白血球テロメア長(LTL)が長い傾向が複数の観察研究で示されています。

 

これは、ビタミンDの抗炎症作用や細胞老化抑制作用が関与している可能性があります239。(参考1)

また、女性を対象とした大規模研究では、ビタミンD濃度が高い群でテロメア長が有意に長く、5年分のテロメア老化抑制効果に相当する差が認めらたことを報告しています(参考2)

また、透析患者を対象とした研究では、活性型ビタミンD治療を受けている患者は、治療を受けていない患者よりもテロメア長が有意に長いことが示されています(参考3)

大規模な疫学研究では、以下のようなことが報告されています。
例えば、女性双生児コホート(2160人)研究で、「ビタミンD」濃度が高い群は、低い群よりもテロメア長が有意に長く、5年分のテロメア加齢に相当する差が認められたと報告されています(参考2)

さらに・・・D-Health Trial(オーストラリア、約1500人)試験:高齢者に月1回ビタミンDサプリメントを4~5年投与しても、「テロメア」の長さに有意な変化は認められなかったという報告もあります

(参考4)。

「ビタミンD」の血中濃度が高いとテロメア長が長い傾向が観察されていますが、活性型ビタミンDやサプリメントによる直接的な効果は一貫していません。関連性はあるものの、因果関係や臨床的意義については今後の研究が必要であるわけですが・・・オーストラリアの約1500人の高齢者に月1回ビタミンDサプリメントを投与しても、「テロメア」の長さに変化がなかった結果を見ますと・・・もちろん、今後の研究が必要であるわけですが・・・

その結果が出る頃には・・・残念⁉︎間に合わないんだよな〜なんて、考えてしまいますね。

まあ、その〜私は3年前に重い荷物を持った時に「圧迫骨折」をして、その際に「骨粗鬆症」と診断されて、「活性型ビタミンD」を処方されて、服用しているので・・・別に残念に思う必要はないかもしれませんね爆  笑

今後、「テロメア」を延長するという「抗老化治療」は主に研究段階にあるとされているので、将来的には可能になるかもしれません、


しかしながら、その臨床応用には、安全性の確立が必要ですので、その実用化には時間がかかることが予想されるのだそうで、・・・

こちらの方は、残念⁉︎ 間に合わないんだよな〜なんて、考えてしまいますね。

今回も最後までお付き合いいただきまして
ありがとうございましたお願い

 

参考)

1)1)J Frailty Aging. 2021;10(1):2-9.
The Relationship Between Vitamin D and Telomere/Telomerase: A Comprehensive Review
M Zareiら

 

2)Am J Clin Nutr. 2007 Nov;86(5):1420-5.
Higher serum vitamin D concentrations are associated with longer leukocyte telomere length in women
J Brent Richardsら

 

3)Clin Ther. 2012 Apr;34(4):849-56.
Assessment of the potential role of active vitamin D treatment in telomere length: a case-control study in hemodialysis patients
Mercè Borrasら

 

4)4)PLoS One.2022 Feb 24;17(2):e0264337.
Leukocyte telomere length as a compensatory mechanism in vitamin D metabolism
Deniz Agirbasliら

 

 (以前のphoto:  旧小笠原伯爵邸の中庭の風景)

              (筆者撮影)

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                (上差し 筆者がセレクトしたピアノJazzの曲)

 

                  (上差し 筆者がセレクトした夏の夜の3Jazzの曲)

 

 

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こんにちは、内科医 ひとちゃんですニコニコ

 

梅雨の季節は終わっていないのでしょうが、なんとも鬱陶しい(うっとうしい)気候に思えてしまいますね。

 

「地球温暖化」により、今後の気候は未知数である・・・という、いささか不気味(ぶきみ)な予想もありますが、そんな言葉は30年前にも誰かが言っていたような気もするのは、私だけでしょうかね。

 

皆さまの体調は、いかがでしょうか?

 

 

(AIで画像を作成)

                

 

さて、今回は「海馬(かいば)」についてのお話をしてみたいと思います。

「海馬」は、脳に入力された情報を一時的に保持し、その後、「大脳皮質」に長期記憶として保存する役割を担って(になって)いるというお話を以前にも、ブログ内で話題にさせていただきましたね。

 

もう少し詳しい(くわしい)お話をしますと・・・

「海馬」は確かに(たしかに)」「記憶の形成」において中心的な役割を果たしますが、実は、そのプロセスはもう少し複雑であると考えられています。

 

では、どのように複雑なのか・・・と言いますと、次のようなものになります。

 

日常の「短期記憶」の段階では、情報は主に「前頭前野(ぜんとうや)」などの「大脳皮質(だいのうひしつ)」という領域で一時的に保持されます。

例えば・・・先ほど、お湯を沸かし、コーヒーを淹れた(いれた)カップは、キッチンにあるといった情報でしょうか(あくまでも、例えですが・・・このような記憶は「海馬」に蓄積(ちくせき)しない可能性もあります。

 

本来の「海馬」の役割は、新しい情報を受け取り、それを既存の知識と関連付けて「記憶の統合」を行うことです。海馬は記憶の「インデックス」のような働きをするとされています。

 

例えば・・・今朝は「コーヒー」の入ったマグカップを私の部屋に持ち帰り、ソファーに座り、時間をかけて飲んだわけですが、豆の種類は「ハワイコナ」という豆でした。

もちろん、南国風のフルーティーなものでして、美味しいのですが

私としては、「軽い」イメージが残ったわけです。

もちろん、これは私の印象でして、「ハワイコナコーヒー」は、ハワイ島コナ地区で栽培されるアラビカ種のコーヒーで、世界三大コーヒーの一つとされているので、美味しいはずですが・・・

同じ南国風なら、「マンゴージュース」の方が良かったりしてなどと考えていたわけです。

 

まあ、数時間前のことなので、ここまでお話できるのですが・・・

おそらく、まだ、「大脳皮質」に記憶はあって、「ハワイコナコーヒー」は、南国風であり、世界三大コーヒーの一つではあるが、自分の味覚には、あまり合わなかった・・・という記憶が、「海馬」での処理を経て(へて)、情報が「大脳皮質」の様々な領域に分散して保存されるのだそうです。

 

つまり、正確なお話をするとすれば・・・「海馬」は記憶の「一時保管庫」ではなく、むしろ「記憶」を組織化し統合する「司令塔」的な役割を持っており、「長期記憶」は「大脳皮質」の複数の領域に分散して保存される・・・ということになります。

 

               (AIで画像を作成)

 

では、この重要な働きを持つ「海馬」が加齢とともに「萎縮(いしゅく)」していくと聞いたら・・・とても、不愉快(ふゆかい)に思う方も多いと思います。

 

実際には、年齢を重ねるにつれて、海馬の萎縮は自然に進行する可能性があります。

 

もちろん、「海馬」が萎縮(いしゅく)していくのは、加齢ばかりではありません、加齢以外に次のような要因があると考えられています。

 

1)アルツハイマー病

 

アルツハイマー病では、脳内にアミロイドβというタンパク質が蓄積し、神経細胞を破壊することで、「海馬」が萎縮すると考えられています。

 

2)血管性要因

 

高血圧、高脂血症、糖尿病などの血管系の病気は、脳の血管を傷つけ、「海馬」の萎縮を促進する可能性があるとされています。

 

3)ストレス

 

強いストレスは、「海馬」の神経細胞に悪影響を与え、萎縮を促進する可能性があると考えられています。

 

では、「海馬」の萎縮があると、「記憶」の保存は、本当に難しくなるのでしょうか?

 

残念ながら・・・「海馬の萎縮」は、記憶機能に深刻な影響を与えるとされています。

 

新しい記憶の形成への影響がメインとなるのですが・・・「海馬」が萎縮すると、新しい情報を「長期記憶」として定着させることが非常に困難になります。

これは「前向性健忘(ぜんこうせいけんぼう)」と呼ばれ、新しい出来事や学習内容を覚えられない状態を指します。

 

日常生活では、数分前の会話や昨日の出来事を思い出せないといった症状として現れます

 

比較的最近の記憶(数年以内)は失われやすくなるとされています。

 

一方で、子供時代や若い頃の古い記憶は比較的保たれることが多いのですが・・・これは、古い記憶はすでに「大脳皮質」に十分に統合されているためであると考えられています。

 

「海馬の萎縮」は加齢により、誰でも進行するもので、仕方がないものではあるわけですが・・・ただ、運命を受け入れて、ボオ〜と過ごすしかないのでしょうか?

 

日本は、世界の中でも「超高齢化社会」であるわけですから・・・

皆で、ボオ〜としているわけにもいきませんね。

 

実は、「海馬」の老化では、炎症・免疫応答、ストレス応答、代謝低下、シナプス機能障害など多様な分子変化が起こり、これが認知機能低下や神経変性疾患のリスク増大に直結する可能性が指摘されています。その結果として、「萎縮」してしまう可能性もあるということになります。

 

「iPS細胞由来エクソソーム」には、特定の遺伝子やタンパク質の変動を抑制し、いわゆる「老化脳」の新たな治療物資となる可能性があると考えられているのですね。

 

続きは、後日の話題にしたいと思います。

 

素敵な1週間をお過ごしくださいキラキラ

 

それでは、またバイバイ

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<ブログ後記 > 6月24日

 

記憶の定着には、脳の「海馬(かいば)」が重要であるというお話を

させていただきました。



(図はお借りしました)

 

私たちの生活に密接に結びついている「海馬」ですが、上の図に示すように20〜30代より萎縮が始まり、50代を過ぎると加速度的に体積が減少すると言われています(参考1)。

「海馬」は。脳の内側にある「側頭葉」に位置しており、左右の脳半球に一つずつ存在します。具体的には、側頭葉の奥深くにあり、

タツノオトシゴのような形状をしていることから「海馬」と
名付けらたことは、以前もブログ内でお話をしたことがあるかもしれませんね。

「海馬」の働きは、新しい情報を受け取り、それを既存の知識と関連付けて「記憶の統合」を行うことであるとお話をしましたが、例えますと、「海馬」は記憶の「インデックス」を作るような働きをしていると考えることもできます。

本文内で、コーヒーのお話をしましたが・・・「ハワイコナ」という銘柄(めいがら)の味のイメージが保存されるだけではなく、私の好きなコーヒーの銘柄「キリマンジャロ」の印象よりも、味は華やか(はなやか)であるが、私には甘ったるい感じがする・・・とか、ドリップではなく、「ハワイコナ」の豆をひいて、粉の状態のものをサイフォンでコーヒーを作った方が、素敵な味が出たかも・・・などと、多くの関連する記憶とともに、記憶が統合(とうごう)されて、「インデックス」化された状態で、大脳皮質に残るということになるわけです。

「海馬」の萎縮が進むと、新しい出来事を覚えることが困難になるというお話を本文内でお話をしたのですが、
その他には「空間認知」の障害というものが出現することが知られており、慣れ親しんだ場所でも
方向感覚を失ったりします。これは海馬が「空間記憶」にも重要な役割を果たしているからということになります。

ところで、「海馬」の萎縮は、なぜ、起こるのでしょうか?
これは、単に高齢になったから小さくなるというわけではなく、加齢に伴い海馬では、さまざまな老化関連遺伝子やタンパク質が活性化・変動することが知られています。
主に炎症、免疫応答、代謝、シナプス機能、ストレス応答に関わる分子が顕著に変化し、これが認知機能低下や神経変性疾患のリスクを増大させているわけですね。

例えば・・・「海馬」における加齢関連遺伝子およびタンパク質には、タンパク質キナーゼ、転写因子、および神経保護機能を持つ遺伝子の調節異常が含まれると報告されていますし(参考2)、

コルチゾンをコルチゾールに還元する酵素である「海馬」の「HSD11B1(HSD11B1)」タンパク質の発現が加齢に伴い増加することは、神経細胞の喪失や認知症を引き起こすというとされています(参考3)。
 

さらに加齢に伴い「海馬」に発現する遺伝子は、免疫応答、免疫グロブリンG結合、および細胞膜成分に関連していると報告
されています(参考4)。

このような病態が、加齢に伴う「海馬」の縮小があるわけですね。
では、この病態に対して、「iPS細胞由来エクソソーム」は、どのような効果を示す可能性があるのでしょうか?

「iPS細胞由来エクソソーム」の「海馬」に対する効果で、実際に証明された神経保護・新生効果は、次のようなものに
なります。

最新の研究では、「ヒトiPS細胞由来神経幹細胞(hiPSC-NSC)由来のエクソソーム」が海馬神経新生に対して「明確な有効性」を示しています。


例えば・・・炎症性モデル(LPS投与)で減少した海馬神経新生指標が、ヒトiPS細胞由来神経幹細胞(hiPSC-NSC)由来のエクソソーム」投与により、正常レベルまで回復したり、海馬神経新生の定量的改善いずれも有意に改複したことが報告されており、その効果は、鼻腔内投与により脳全体への効率的な分布で実現可能であったと報告されています(参考5)。

さらに複数の分子メカニズムによる神経保護作用や抗酸化・抗アポトーシス作用も確認され、以下の効果が示されています(参考6)。

- **miRNA-21-5p、miR-103a-3p**:抗アポトーシス効果
- **miRNA-148a-3p**:異常タウリン酸化の抑制
- **Hemopexin**:ミトコンドリア機能保護、ROS毒性軽減
- **Pentraxin 3(PTX3)**:神経保護・抗炎症作用

他にもミトコンドリア機能回復作用や脳内の炎症性サイトカインの産生を抑制**することで、神経新生に必要な成長因子の保護神経幹細胞にとって好適な微小環境を作り出す作用が報告されています。


他にもヒトiPS細胞由来のエクソソームに特徴的な優位性が報告されているのですが、詳細は、またの機会に詳しくお話をしてみたいと思います。

 

今回も最後までお付き合いいただきまして

誠にありがとうございましたお願い

 

参考)
1)Clinical Trial Cereb Cortex. 2005 Nov;15(11):1676-89. .
Regional brain changes in aging healthy adults: general trends, individual differences and modifiers
Naftali Razら

 

2)Front Aging Neurosci. 2018 May 23:10:153. 
Integrative Analysis of Hippocampus Gene Expression Profiles Identifies Network Alterations in Aging and Alzheimer's Disease
Vinay Lankeら

 

3)Front Aging Neurosci. 2024 Mar 15:16:1328543. 
Age-related increase in the expression of 11β-hydroxysteroid dehydrogenase type 1 in the hippocampus of male rhesus macaques
Alejandro Lomnicziら

 

4)Front Neurosci. 2022 May 25:16:915907. 

Gene Expression Profiles of the Aging Rat Hippocampus Imply Altered Immunoglobulin Dynamics
Panagiotis Giannosら

 

5)Journal of Neuroinflammation (2023) 20:297
Extracellular vesicles from hiPSC-NSCs canprevent peripheral infammation-induced cognitive dysfunction with infammasom inhibition and improved neurogenesisin the hippocampus
Gunel Ayyubovaら

 

6)Stem Cell Research & Therapy (2025) 16:191
Extracellular vesicles from hiPSC-derived NSCs protect human neurons against Aβ42 oligomers induced neurodegeneration, mitochondrial dysfunction and tau phosphorylation
Shama Raoら

 

 

         (麻布台ヒルズ 休日の風景)

              (筆者撮影)

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                (上差し 筆者がセレクトしたピアノJazzの曲)

 

 

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