こんにちは、内科医 ひとちゃんです![]()
日中間の問題で、いきなり東京の街の賑わい(にぎわい)が消えてしまい、街はイルミネーションで彩られて(いろどられて)いるわけですが・・・少し、寂しい12月となりそうです。
イギリスの哲学者・作家である「ジェームズ・アレン」が
彼の著書『原因と結果の法則(AS A MAN THINKETH)』の中で、次のような言葉を述べています。
"The more tranquil a man becomes, the greater is his success, his influence, his power for good. Calmness of mind is one of the beautiful jewels of wisdom.
人は心が穏やか(おだやか)になればなるほど、その成功、影響力、そして善をなす力は大きくなる。
心の平安を保つことは、知恵が生み出す美しい宝石のひとつである。
彼の著書である「原因と結果の法則」は、ナポレオン・ヒル、デール・カーネギー、オグ・マンディーノなど、現代成功哲学の祖たちがもっとも影響を受けた伝説のバイブル、『AS A MAN THINKETH』。
聖書に次いで一世紀以上ものあいだ多くの人々や指導者に読まれつづけている驚異的な超ロング・ベストセラーなのですね。
皆さまの体調は、いかがでしょうか?
(AIを用いて作成)
さて、今回は「なぜ、加齢に伴い免疫力は低下していくのか?」という話題を掘り下げて、少し詳しく(くわしく)お話をしてみたいと思います。
現代医療の進歩により、私たちはかつてないほどの「長寿」を享受(きょうじゅ)していると言えますよね。
しかし、その一方で、臨床現場において厳然(げんぜん)として存在する事実があります。
それは「感染症による死亡リスクは、加齢とともに指数関数的に上昇する」という現実です。インフルエンザ、肺炎、そして記憶に新しいCOVID-19パンデミックにおいても、犠牲者の多くは高齢者でしたよね。
なぜ、若い頃なら数日で治る風邪(かぜ)が、高齢者にとっては命取りになるのでしょうか。
この現象(げんしょう)は、一般に言われる「体力の低下」という
言葉だけでは、この生命現象の本質を説明することはできないとされています。
しかしながら、細胞レベル、分子レベルで体内を観察すると、そこには「免疫システム全体の不可逆的な構造変化(Immunosenescence)」と、それに伴う「終わりのない微弱な炎症(Inflammaging)」**という、2つの大きな病態があるということに気がつくわけです。
ヒトの身体が持つ防衛システムを「国家の軍隊」になぞらえながら、老化に伴って免疫の現場で何が起きているのかをお話をしてみたいと思います。
まずは、兵器工場に変質(へんしつ)が起きる・・・つまり、「造血幹細胞」の老化が生じてくるわけです。
全ての「免疫細胞」という「兵士」は、すべて骨の内部にある「骨髄(こつずい)」という工場で作られます。
その源(みなもと)となるのが「造血幹細胞(ぞうけつかんさいぼう)」です。若く健康な造血幹細胞は、あらゆる種類の血液細胞をバランスよく生み出します。
しかし、「加齢」により、この工場である「造血幹細胞」そのものが経年劣化(けいねんれっか)を起こしてくるというわけですね。
そして、経年劣化した「造血幹細胞」の工場では、「精密兵器」よりも「暴徒」を生み出すという皮肉(ひにく)な運命を辿ります(たどります)。
若い造血幹細胞は、ウイルスを狙い撃ちにする「精密誘導兵器」のような「リンパ球(T細胞・B細胞)」を十分に生産します。
ところが、「老化」に伴い「幹細胞」の遺伝子プログラム(エピゲノム)が書き換わってしまうわけです。その結果、上に示したような
リンパ球を作る能力が著しく低下するとされています。
その代わりに何を作るかというと、「好中球」や「単球」といった、原始的な攻撃力を持つ細胞ばかりを過剰に生産するようになります。
あまり、好ましい例えではないかもしれませんが・・・これは、軍隊で言えば「特殊部隊や空軍(リンパ球)」の育成ができなくなり、指揮系統の乱れた「暴徒化した歩兵(好中球・単球)」ばかりが増員されるようなものです。
これが「感染症を防御できないのに、炎症だけは激しくなる」という高齢者特有の病態の根源となります(参考1)。
さらに深刻な問題として、加齢した「造血幹細胞」にはDNAの変異が蓄積していきます。
ときに、がんに関連する遺伝子変異を持った幹細胞が、骨髄の中で勢力を拡大してしまうことがあります。これを「クローン性造血(CHIP)」と呼びます。
この変異した「幹細胞」から生まれた白血球は、正常な細胞よりも過敏で、炎症を引き起こす物質(炎症性サイトカイン)を撒き散らす性質を持っています。この現象は動脈硬化や心疾患のリスクを高めるだけでなく、全身の炎症レベルを底上げしてしまうことが大規模な疫学調査で明らかになっています(参考2,3)。
さらにヒトの身体の中で、最も早く「老化」が進む臓器が関連して
悲劇的なストーリーが展開されるのですが・・・
お話の続きは、後日の話題にしたいと思います。
素敵な1週間をお過ごしください![]()
それでは、また![]()
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<ブログ後記> 12月2日
インフルエンザ感染者が、かなり多くなっているようですね。
皆さまは、もうインフルエンザワクチンを接種(せっしゅ)しましたか?
今回は「高齢者」が、なぜ、感染症に弱いのか?・・・について、お話をしているわけですが、本文の方で、免疫細胞という「兵士」を作り出す「造血幹細胞」であるわけですが、「老化」により、機能不全
を生じるわけですね。
これにより、精密な免疫機能を持つT細胞B細胞などを作れなくなることについて、本文でお話をさせていただきました。
しかしながら、加齢に伴う「免疫システム」の悲劇(ひげき)は・・・これだけではありません。
次の悲劇が「胸腺(きょうせん:Thymus)の老化」になります。
この「胸腺」の役割は、T細胞の教育ということになります。
どういうことかと言いますと・・・
骨髄で作られたT細胞の「卵」は、「胸腺(Thymus)」という臓器に移動し、そこで敵と味方を見分ける教育を受けるわけですね。
しかしながら、本文内でもお話をしたように・・・「胸腺」は人体の中で最も早く老化する臓器の一つとされています。
「胸腺」は思春期をピークに萎縮し、脂肪組織へと置き換わっていきます(Thymic involution)。
60代になる頃には、機能する「胸腺」の組織はほとんど残っていないと考えられています。
このことは、何を意味するのでしょうか?
ざっくりと言いますと・・・新しい敵に対応できる「新兵(ナイーブT細胞)」の供給が、ほぼストップすることを意味します(参考4)。
新兵が来なくなると、ヒトの身体(からだ)はどうするのでしょうか?
かつて、何らかの病原体と戦った経験のある「ベテラン兵(メモリーT細胞)」を維持することで「免疫の空白地帯」を必死に埋(う)めようとします。
その結果、高齢者の体内は、過去に戦ったことがあるウイルス(サイトメガロウイルスなど)に対応する老兵(T細胞)たちでいっぱいになり、「まだ見ぬ新しい敵(新型インフルエンザや未知のウイルス)」に対応できる兵士のスペースが物理的になくなってしまいます。
高齢者が、毎年のように流行株が変わるインフルエンザや、全く新しい感染症に極めて弱い理由はここにあります。彼らの手持ちのカードの中に、新しい敵に対する切り札が存在しないということになるわけですね(参考1)。
では、「ワクチン」を打っておけば、安心なのでしょうか?
「ワクチン」接種後に、遅れて登場する獲得免疫(B細胞・T細胞)もまた、老化の影響を免れません。
B細胞は、ウイルスを中和する「抗体」を作る工場ということになります。
しかし、加齢に伴い、より強力で高品質な抗体を作るためのプロセスがうまく回らなくなると考えられています。
そのため、高齢者にワクチンを接種したとしても
【1】抗体の量が十分に上がらない
【2】抗体の質(結合力)が低い
【3】効果が長続きしない
などという現象が起きやすくなります。
インフルエンザワクチンの有効率が、若年者に比べて高齢者で低いのは、B細胞自身の老化に加え、それを助けるT細胞の機能低下が原因であるといことも知られています。
長年にわたり慢性的な刺激を受け続けたT細胞は、「疲弊(ひへい:Exhaustion)」または「老化(Senescence)」と呼ばれる状態に陥り
(おちいり)ます。
これらの細胞は、ウイルスを殺す能力を失っているにもかかわらず、「炎症性物質」だけは出し続けるという、極めて有害な存在へと変貌します。働かないばかりか、現場の混乱(炎症)を助長(じょちょう)することが知られています(参考5)
T細胞などの「免疫細胞」も、しっかりと「老化細胞」かするわけですね。
このように、「免疫の老化」は単一の現象ではなく、造血、教育、実動、制御というシステム全体の多層的な崩壊であるとも考えられますね。
現時点での私たちにできる最善の策は、規則正しい生活と運動などで「老化」を最小限に抑えつつ、ワクチン接種によって少しでも多くの「訓練された兵士」を維持することとも言えますね。
後半は、やや感情的な文章になってしまいましたが・・・
中国の兵法書『孫子』にある有名な言葉に
「敵を知り、己を知れば百戦あやうからず」
というものがあります。その意味は、
敵の情勢と、自分自身(味方)の状況をよく理解した上で戦いに臨めば、何度戦っても敗れることはない・・・ということになりますね。
この言葉と同様に・・・「免疫老化のメカニズム」を知ることは、単に恐れることではなく、より良く老いるための戦略を立てる第一歩となるのですね(???)・・・という前向きな言葉で、最後は、お話を結んでおきたいと思います。
今回も最後までお付き合い頂きまして
誠にありがとうございました![]()
参考)
1) Nature Immunol. 2018 Jan;19(1):10-19.
The twilight of immunity: emerging concepts in aging of the immune system
Janko Nikolich-Žugichら
2)N Engl J Med.. 2017 Jul 13;377(2):111-121.
Clonal Hematopoiesis and Risk of Atherosclerotic Cardiovascular Disease
Siddhartha Jaiswalら
3)Nature. 2025 Jul;643(8071):478-487.
Clonal tracing with somatic epimutations reveals dynamics of blood ageing
Michael Schererら
4)Trends Immunol. 2009 Jul;30(7):366-73.
Thymic involution and immune reconstitution
Heather E Lynchら
5)Annu Rev Immunol. 2024 Jun;42(1):179-206.
T Cell Exhaustion
Andrew Baessler
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理事長・ 院長
小笠原 均 (Hitoshi Ogasawara)
医学博士, 内科医
(総合内科、リウマチ専門医)
(新潟大医学部卒)
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