こんにちは、内科医 ひとちゃんですニコニコ

 

9月に入りまして、最初の休日の午後になっています。

今朝は青空が広がり、気持ちがよいかもしれないと思いまして、少し散歩をしました。

 

陽射し(ひざし)は強かったのですが、空気は秋のように少しだけ爽やか(さわやか)なものに感じました。

 

米国の作家 「ルドルフォ・アナヤ」の言葉に次のような言葉があることを思い出しました。

 

There is a time in the last few days of summer when the ripeness of autumn fills the air.

 

夏の終わりの数日間の中には、秋の成熟が空気を満たす時期がある

 

というものなのですが、まさに慣れ親しんだ(なれしたしんだ)秋の空気に気がついたような気がしました。

 

 「ルドルフォ・アナヤ」の小説『祝福せよ、ウルティマよ』などをお読みになった方もいらっしゃるかもしれませんね。

 

皆さまの体調は、いかがでしょうか? 

 

        (AIで画像を作成)

 

今回は、「脂肪肝」が「老化」のスピードを加速する・・・というお話をしてみたいと思います。

 

「脂肪肝」とは、いったいどのような状態をいうのでしょうか?

 

「脂肪肝」とは・・・肝臓に過剰な脂肪(中性脂肪)が蓄積され、肝臓全体の約30%以上を脂肪が占めている状態のことです。現在、一般成人の20-25%、男性では約40%が脂肪肝を患っているとされており、非常に多くの方が罹患している現代の生活習慣病であると言えます。

 

いわゆる肝臓が「フォアグラ」状態になっているなどと・・・以前は笑い飛ばすこともあったかもしれません。

 

しかし、近年の研究により、「脂肪肝」は、単に肝硬変や肝がんへ進展する可能性あるばかりでなく、「老化」そのものを加速させるリスク因子であることが明らかになりつつあります (参考1)。

 

「脂肪肝」が「老化」のスピードを加速させる・・・と言われると、その深刻(しんこく)の度合いは・・・ある程度の確率(かくりつ)で、肝硬変や肝臓癌が起こるリスクがあると言われるよりも、より深刻な問題と感じる方も、ひょっとしたら多いかもしれませんね。

 

                        (AIで画像を作成)

 

では、どのようなメカニズムで、「脂肪肝」は、「老化」を加速させるのでしょうか?

 

脂肪肝が老化を促進(そくしん)する分子メカニズムとして、以下のようなものが挙げられます。

 

1.慢性炎症

 

肝細胞内に蓄積した脂肪は、TNF-α(ティーエヌエフ アルファ)やIL-6(インターロイキン6)といった「炎症性サイトカイン」の持続的放出を引き起こし、慢性低度炎症を形成します (参考2)。

 

この現象は老化の分子基盤とされるinflammagingに直結し、血管や筋肉、脳機能の加齢性変化を促進します。Inflammagingは、感染のない状態での慢性的な全身性炎症として定義され、加齢に伴う罹患率と死亡率の主要なリスク因子とされています (参考3)。
 

2.酸化ストレスとDNA損傷

 

「脂肪肝」では、ミトコンドリア機能障害が起こり、これにより「活性酸素種(ROS)」が過剰産生され、DNAやタンパク質、脂質が損傷します (参考4)。

 

「活性酸素種(ROS)」などの酸化ストレスは、「細胞老化」を促し(うながし)、炎症との悪循環を形成します。

また、「ミトコンドリア」の機能低下とATP産生能の減少が認められ、細胞のエネルギー代謝異常が「老化」のプロセスを加速させます。

 

3.NAD+NAD+代謝異常とエネルギー破綻

 

「脂肪肝」では「NAD⁺(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)の低下が認められ、「サーチュイン1遺伝子(SIRT1)」をはじめとするサーチュインファミリーの活性低下を介して細胞老化を促進します (参考5)。

「NAD⁺」は、細胞代謝やDNA修復機能の維持に必須(ひっす)であり、その枯渇は細胞の恒常性維持能力を著しく損ないます。

 

4.テロメア短縮

 

肝組織を用いた研究では、「脂肪肝」の患者において、同年代の対照群と比べてテロメア長が有意に短縮していることが報告されています (参考6)。

 

とくに、肝線維化の進行と「テロメア短縮」の間には独立した関連が認められ、年齢調整後もなお統計学的に有意な関連性が維持されています。「テロメア短縮」は細胞老化の分子時計として機能し、肝細胞の再生能力低下と炎症の持続化に寄与(きよ)するとされています。

 

5.エピジェネティックな変化

 

DNAメチル化やヒストン修飾の異常が、「脂肪肝」の患者で確認され、老化関連遺伝子発現異常に関与しています (参考7)。

特に、アセチル-CoA代謝の変化が「エピジェネティック修飾」を引き起こし、発がんリスクの増加にも関与することが報告されています (参考8)。

 

ここまでくると・・・これは、本当に「脂肪肝」を温存(?)しながらの「健康寿命」を伸ばすのは、無理かもしれないな〜と思われる方が多いのではないでしょうか。

 

ならば・・・どうすればよいのか?

それについては、後日の話題にしたいと思います。

 

素敵な1週間をお過ごしくださいキラキラ

 

それでは、またバイバイ

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<ブログ後記>9月9日

 

昨夜は、虫の声が聞こえる中で、満月の夜を堪能(たんのう)しました。暑い暑いと言っているうちに、いつの間にか秋の夜の特徴ともいえる「虫の声」を聞いて、少し驚き(おどろき)ました。

 

さて、今回は「脂肪肝」について、お話をさせていただきました。

 

本文では「脂肪肝」としましたが、これまではNAFLD(非アルコール性脂肪性肝疾患)とNASH(非アルコール性脂肪肝炎)と細分化されていました。
しかし、2023年に前者がMASLD(代謝機能障害関連脂肪性肝疾患)となり、
後者がMASH(代謝機能障害関連脂肪性肝炎)に変更され、それに伴い「脂肪肝」の新しい名称は、「脂肪性肝疾患(SLD)」と呼ばれるようになっています。


しかしながら、「脂肪肝」の名称は、いまだにポピュラーなので、こちらを使わせていただきました。

上記の命名変更の背景(はいけい)には、この疾患の概念(がいねん)として、より「代謝機能異常」に焦点を当てたものとなり、「老化関連疾患」としての側面がより明確になったといえるかもしれませんね、

今後は、単なる肝疾患としてではなく、全身の「老化プロセス」を加速させる代謝性疾患として包括的(ほうかつてき)にアプローチすることが求められる:・・と記載された文献もよく見かけるようになっています。

ところで、この「脂肪肝」を改善するには、どうすればよいのでしょうか?


これは、以下のようなことが推奨(すいしょう)されています。

1.体重減少


7-10%の体重減少で肝臓の脂肪化状態の改善、10%以上でMASH(代謝機能異常関連脂肪性肝炎)の改善や線維化の改善が期待できるとされています (参考9)。


体重減少は「炎症マーカー」の改善や「テロメア長」の安定化させることが示されています。

2.食事療法


いわゆる「地中海食」は、肝脂肪減少とインスリン感受性改善に有効であり、抗酸化物質と抗炎症成分の豊富な摂取が「老化プロセス」を遅延させるとされています (参考10)。

 

最新の研究では、地中海食と時間制限食を組み合わせた介入により、より顕著な代謝改善効果が報告されています (参考11)。

3. 時間制限食


間欠的断食や時間制限食による肝脂肪改善効果が複数のランダム化比較試験で報告されており、オートファジー活性化を介した細胞老化の遅延効果も期待されています (参考12)。

4.運動療法


週150分以上の中強度有酸素運動で肝脂肪が20-30%減少し、レジスタンス運動との併用でさらなる効果が得られます (参考13,14)。

 

運動は「テロメラーゼ活性」の向上と「NAD⁺レベル」の改善を通じて、細胞老化を遅延(ちえん)させると考えられています。

5.睡眠
 

睡眠時間や睡眠の質は、「脂肪肝」、とくにMASLD(代謝機能障害関連脂肪性肝疾患)の発症・進展リスクとの関連が示されており、適切な睡眠は概日リズムの正常化とサーチュイン活性の維持に重要であると報告されています (参考15)。

いかがでしょうか?「脂肪肝」が「老化のプロセス」を進行させるという報告が、これだけ報告されていると・・・肝臓のフォアグラ状態などと、笑ってばかりもいられない・・・かもしれませんよね。

 

今回も最後までお付き合いくださり

誠にありがとうございましたお願い

 

参考)

1) Hepatology. 2023 Dec 1;78(6):1966-1986. 

A multisociety Delphi consensus statement on new fatty liver disease nomenclature

Mary E Rinellaら

 

2)Hepatology. 2010 Nov;52(5):1836-46. 

Evolution of inflammation in nonalcoholic fatty liver disease: the multiple parallel hits hypothesis

Herbert Tilgら

 

3)Nat Rev Endocrinal.. 2018 Oct;14(10):576-590.

Inflammaging: a new immune-metabolic viewpoint for age-related diseases

Claudio Franceschiら

 

4)Mitochondrion. 2006 Feb;6(1):1-28. 

Mitochondrial dysfunction in NASH: causes, consequences and possible means to prevent it

Karima Begricheら

 

5)Br J Pharmacol. 2016 Aug;173(15):2352-68.

Hepatic NAD(+) deficiency as a therapeutic target for non-alcoholic fatty liver disease in ageing

Can-Can Zhouら

 

6)Sci Rep. 2021 Sep 9;11(1):18004.

Association between telomere length and hepatic fibrosis in non-alcoholic fatty liver disease

Hee Kyung Shinら

 

7)Curr Diab Rep. 2013 Apr;13(2):229-37.

Epigenetics of insulin resistance: an emerging field in translational medicine

 

8) Genome Med. 2022 Jun 23;14(1):67. 

Acetyl-CoA metabolism drives epigenome change and contributes to carcinogenesis risk in fatty liver disease

Gabriella Assabteら


9) Gastroenterology. 2015 Aug;149(2):367-78.

Weight Loss Through Lifestyle Modification Significantly Reduces Features of Nonalcoholic Steatohepatitis
Eduardo Vilar-Gomez ら

10)  J Hepatol. 2013 Jul;59(1):138-43. 

The Mediterranean diet improves hepatic steatosis and insulin sensitivity in individuals with non-alcoholic fatty liver disease
Marno C Ryan ら

11) Aliment Pharmacol Ther. 2025 Apr;61(8):1290-1309. 
Effects of a 12-Week Mediterranean-Type Time-Restricted Feeding Protocol in Patients With Metabolic Dysfunction-Associated Steatotic Liver Disease: A Randomised Controlled Trial-The 'CHRONO-NAFLD Project'
Sofia Tsitsou ら

12)JHEP Rep. 2021 Feb 17;3(3):100256. 
Treatment of NAFLD with intermittent calorie restriction or low-carb high-fat diet - a randomised controlled trial
Magnus Holmerら

13) J Hepatol. 2012 Jul;57(1):157-66.
 Exercise and non-alcoholic fatty liver disease: a systematic review and meta-analysis
Shelley E Keating ら

14)J Hepatol. 2017 Jan;66(1):142-152. 
Aerobic vs. resistance exercise in non-alcoholic fatty liver disease: A systematic review
Ryuki Hashida ら

15) Sleep Breath. 2023 Oct;27(5):1985-1996. 

Short sleep duration and the risk of nonalcoholic fatty liver disease/metabolic associated fatty liver disease: a systematic review and meta-analysis
Jie Yang ら

 

    (虎ノ門ヒルズからの夕刻の風景)

         (筆者撮影)

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 <今週、なんとなく聞いてみたい曲>

 

 

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こんにちは、内科医 ひとちゃんですニコニコ

 

8月も今日で最後になっていますね。

 

夏も終わり・・・と言いたいところではありますが・・・

9月も猛暑の予想らしく、まだまだ、熱中症の予防を心がけていく必要がありますね。

 

皆さまの体調は、いかがでしょうか? 

 

  (AIで画像を作成)

 

今回は「記憶」と脳の「海馬(かいば)」についてのお話をしてみたいと思います。

 

「加齢」に伴う認知機能低下は、現代社会における重要な健康課題ですよね。

つい最近のニュースでも、2022年に「認知症」で俳優を引退していたブルース・ウィルス(70歳)氏が翌年の2月には、行動や言語に問題を生じさせ、人格を変えるタイプの「認知症」である「前頭側頭型認知症(FTD)を患っていることが公表されていました。

その後、脳のダメージは、速い(はやい)スピードで進行し、今では言葉を通じなくなっているという話題がありました。

 

ブルース・ウィルス氏は、私が好きな映画俳優さんの一人です。それが言葉も通じない・・・というのは、とても不思議な気がします。

 

以前のブログで、過去の記憶、つまり、「長期記憶」は「大脳皮質」に記憶され、「海馬(かいば)」は、短期の記憶を処理して「大脳皮質」で記憶できるようにする役割がある・・・

 

というお話をしたのですが、ブルース・ウィルス氏の病態は、いったい、どのようなものになるのか?・・・と思っていました。

 

不思議に思って・・・調べていたところ、次のようなことが分かったのですね。

 

「海馬」の機能は「新しい記憶の形成(エピソード記憶・陳述記憶)」には、必須であると言えます。

 

「情報」は、まず「海馬」で一時的に統合され、その後「再生・再固定化」を繰り返すことで、大脳皮質へ徐々に長期保存されていきます。

 

この理論は、『システム統合記憶理論』と呼ばれています。

問題は、この過程にかかる時間なのですが・・・この時間が想像以上の長さで、数ヶ月から、数十年かかるとしている論文もあるわけですね。

 

さらに驚くのは・・・「大脳皮質」に保存された記憶も、すべて、「海馬」の正常な働きなしにはスムーズに取り出せない可能性が大きいのだそうです。

 

「海馬」は「記憶痕跡を大脳皮質へリンクするハブ」のような役割を果たしているそうで、具体的には次のようなことになります。

 

「大脳皮質」には、長期的な知識や過去の体験の記録が保存されています。

しかし、それらを呼び出すときに「索引(インデックス)」として「海馬」が使われることがあるのだそうです。

 

例えば、昔の出来事を思い出すとき、「海馬」が複数の皮質領域を同時に活性化させて「全体像」を再構成するという作業が、「脳内」では行われているというわけです。

 

                   (AIで画像を作成)

 

そうであるとすると・・・「海馬」の機能は、記憶全体にとって、極めて重要であるということになりますね。

 

しかしながら・・・「海馬」は年齢とともに萎縮(いしゅく)し、機能が低下していくことが知られています。

 

この時に「海馬」では、どのような変化が起きているのでしょうか?

 

「海馬」の萎縮の根本的原因として、「老化細胞(senescent cells)」の蓄積と「ミトコンドリア機能障害」による悪循環が起きていると考えられています。

 

「ミトコンドリア機能障害」は、細胞老化の原因であると同時に結果でもあり、両者は加齢関連機能低下の複合的フィードバックループを形成するというのですね。

 

「ミトコンドリア機能障害」は、個々のミトコンドリアあたりの呼吸能力低下とミトコンドリア膜電位(MMP)の減少を特徴とし、これに伴い「活性酸素種(ROS)」の産生が増大します。

 

ROSは酸化的リン酸化(OXPHOS)効率を低下させ、さらなるROS産生を誘発する。

 

このような「活性酸素種」の慢性的亢進は、DNA塩基酸化、一本鎖・二本鎖切断、テロメア短縮を引き起こし、p53およびpRb経路の活性化を通じて細胞周期停止(老化)を誘導するというわけです。

 

これが「老化細胞」の「SASP」現象を引き起こし、このことが「海馬」の正常細胞を「老化細胞」化させて、ミトコンドリアの機能障害を誘導する・・・というのですね。

 

このような「悪循環」を断ち切ることができない限り、「海馬」の萎縮傾向は続き、やがて、記憶障害が進行していくということになります。

 

この病態に対する対策として、「NAD+」の鼻腔内への投与やNMNサプリの摂取が有効とされています。

 

JTKクリニックでは、既に実施していますが、「NAD+」を鼻から直接、投与することで脳の中に入ることが可能となります。

 

「NAD+」の分子は、約50KDaと大きいので、血液内の投与では、「脳血液関門」という部分を通過できないので、脳内に入ることができないというのが、その理由となりますね。

 

最近の論文で、「海馬」のミトコンドリアの機能障害を回復させることで、記憶障害を改善させることに成功したという論文があるのですが、

 

これが本当であるとすると加齢に伴う「記憶障害」も改善できることになるわけですが・・・

 

続きは、後日の話題にしたいと思います。

 

 

素敵な1週間をお過ごしくださいキラキラ

 

それでは、またバイバイ

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<.ブログ後記  >9月2日

 

今回は「短期記憶」に関連するはずの「海馬(かいば)」が、大脳皮質に記憶されている「長期記憶」のインデックスになっており、その理由から「海馬」の障害にもかかわらず、昔の記憶が思い出せない可能性もあることについて、お話をしました。

 

もちろん、脳神経の疾患のすべてが、「海馬」の萎縮から始まるわけではありません。

 

「海馬」の萎縮が早期に起こる疾患としては、「アルツハイマー病」や

「軽度認知障害(MCI)」などがあるのですが、

それに対し、「血管性認知症」や「前頭側頭型認知症」では「海馬」領域は保たれる場合が多いとされます。


上記に挙げた疾患において、「海馬」の機能障害が「老化細胞」の増加によるものなのか?或いは、「ミトコンドリア」の異常によるものなのかは・・・

まるで、「鶏(にわとり)」が先か?「卵(たまご)」が先か?

という論争のように答えが明確には出せない・・・と考えられているわけですね。

「海馬」の障害は、「海馬萎縮」から始まることが多いとされていますが、これまでは「「海馬萎縮」について、各種の(海外)文献には以下のように記載されています。

 

「海馬萎縮」は、「老化細胞の蓄積」と「ミトコンドリア機能障害」の両方が複雑に絡み合った結果として起こります。

 

これらは独立した原因ではなく、相互に促進し合う悪循環を形成しています・・・というような感じです。

 

それぞれのストーリーは、以下のようなものになっており、どちらも

合理的なストーリーとなっています。

【1】ミトコンドリア機能障害が老化細胞を誘発する経路

1)活性酸素種(ROS)の増加:機能不全のミトコンドリアから過剰なROSが産生されます


2)ATP産生の低下:エネルギー産生効率が著しく減少します


3)DNA損傷の蓄積:ROSによりDNA損傷、テロメア短縮が起こり、

これにより、p53-p21経路が活性化され、細胞周期の回転が止まり

「老化細胞」が増加する。

【2】老化細胞がミトコンドリア機能をさらに悪化させる経路

1)損傷ミトコンドリアの除去の低下:老化細胞では自食作用が低下し、機能不全ミトコンドリアが蓄積します。
 

2)PGC-1α/β抑制:p53活性化によりミトコンドリア生合成が阻害されます
3)慢性炎症の促進:「SASP(老化関連分泌表現型)」により炎症性サイトカインが放出されます

もちろん、どちらの説であったとしても、JTKクリニックでは治療に困ることはないかもしれません。

 

以前にブログ内でお話をしたように・・・「老化細胞」については、「iPS細胞由来エクソソーム」の投与により「老化細胞」の数を減らすことができるわけです。

 

「iPS細胞由来エクソソーム」の大きさは、一般的に30-150nmの小さなサイズであり、「血液脳関門(けつえきのうかんもん)」を通過しやすいと考えられています。

 

この「血液脳関門」は、脳と血液の間にあるバリア機構で、脳に必要な物質のみを通過させ、有害物質や病原体の脳への侵入を防ぐ役割を持っています。ここを通過できれば、脳(のう)まで、物質は達することを意味しています。

 

一方、「ミトコンドリア」の機能障害については、

脳内でのNAD+増加とミトコンドリア機能の関係については、理論的には強い関連性があると考えられています。

 

どのような影響を当てるかをみてみますと、以下のようになります。

 

1.ATP産生の向上:NAD+は電子伝達系で必須の補酵素として機能し、効率的なATP合成を促進する

 

2.TCA回路の活性化:多くの酵素反応でNAD+が必要で、エネルギー代謝全体が向上する

 

ということになり、間接的な効果としては、

 

3.サーチュイン遺伝子の活性化:NAD+依存性脱アセチル化酵素が活性化され、ミトコンドリア生合成が促進

 

4.PGC-1αの活性化:ミトコンドリア生成の主要調節因子が活性化

5. 抗酸化防御の強化:酸化ストレスからミトコンドリアを保護

 

実際には、いくつかの課題もあると考えられているのですが・・・

クリアできない程の大きな問題ではないと考えられています。

 

このような「海馬」の萎縮による老化の過程は、その進行を戻すことはできないと考えられていました。


しかしながら、最近では、ひょっとして、これを戻せるのではないか・・と考える研究者が出てきたわけです。

 

実際に最近、発表された論文で面白い(おもしろい)知見が得られています。その一部を紹介しますと、以下のようなものになります。

アメリカのカリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)の研究チームは、「加齢によって脳内で特に増えているもの」の中に「老化」を引き起こす「真犯人」がいるのではないかと考えたのだそうです。

この研究では、若いマウス(生後3か月)と老齢マウス(18~20か月)を比べ、脳の中でも記憶に深く関係する「海馬」という場所で特に増えているタンパク質や遺伝子がないかを詳しく調べました。
 

さまざまな解析を行った結果、年老いたマウスの「海馬」で特に目立って増えているタンパク質をひとつ見つけることができました。
それが「FTL1(フェリチン軽鎖1)」というタンパク質でした。
 

「FTL1(フェリチン軽鎖1)」は、細胞内にある「フェリチン」という複合体を構成するタンパク質の一つで、もともとは細胞の中に鉄を蓄える役割を持っています。
 

「老齢マウス」の「海馬」では、「FTL1(フェリチン軽鎖1)」が異常に増えており、しかもFTL1が多ければ多いほど、記憶テストでの成績が悪くなるという関係が明らかになりました。

さらに「FTL1(フェリチン軽鎖1)」若いマウスで人工的に増やしたら、実際に脳が老化するか?という逆方向の検証を行いました。
 

するとその結果、「FTL1(フェリチン軽鎖1)」を増やした「若いマウス」の脳は、本来若いマウスが示すはずのシナプスの働きが弱くなり、記憶や学習の能力もはっきりと低下してしまいました。

一方で研究チームはを減らしたら逆に脳の働きを取り戻せるのかも検証しました。
老齢マウスの脳で「FTL1(フェリチン軽鎖1)」を減らすと、今度は神経ネットワークの働きがよくなり、シナプスの活動が再び活性化ししたそうです。「老化細胞」の数は変化していないことがポイントです。
その結果、記憶力のテストでの成績も明らかに改善し、「老いたマウス」の脳が若い脳に近づくような回復が認められたそうです。

では、なぜ、「FTL1(フェリチン軽鎖1)」が増えると脳が老化するのでしょうか?


研究チームがさらに詳しく調べると、「FTL1(フェリチン軽鎖1)」が増えることで神経細胞のエネルギー産生が低下することがわかりました。
「ミトコンドリア」がエネルギーである「ATP」を作り出すのは、ヒトもマウスも同じわけですが・・・


「FTL1(フェリチン軽鎖1)」が多くなりすぎると、「ミトコンドア」のエネルギー産生がうまくできなくなってしまったというのですね。


そこで研究者たちは、エネルギー不足を補うために細胞にエネルギーを供給する役割を持つ「NADH」という物質を投与する実験も行いました。すると、マウスの記憶に改善が認められたというのですね。

つまり、「老化細胞」の増加でなく、「ミトコンドリア」のエネルギー産生が低下することが、マウスの老化による記憶障害を引き起こした可能性を見出したわけです(参考1)。

 

ヒトとマウスは、まったく同じではないかもしれませんが、

マウスの「FTL1(フェリチン軽鎖1)」と同様に機能するタンパクがあるかどうかは別として、

「ミトコンドリア」のATP産生の異常が、「老化細胞」の増加より先に生じている可能性が高い・・・と考えても大きな矛盾(むじゅん)はないかもしれませんよね。

 

ならば・・・ヒトの「海馬」を含めた脳で「ミトコンドリア」の

ATP産生を増加させる「NAD+」を増加させることは、

先に挙げた「海馬」の萎縮を早期から示す「アルツハイマー病「や

「軽度認知障害(MCI)」などの発症予防や進行抑制には有効性が期待できるのではないか・・・という考え方は、大きな矛盾はないように

思えてきます。

 

論文の中では「NADH」であったわけですが・・・

 

実は、「NAD+」との関係をみてみますと

 

「NAD+」と「NADH」は、可逆的な酸化還元反応により変換される関係にあると考えられているのですね。

 

NAD+(酸化型)+ H⁺ + 2e⁻ ⇌ NADH(還元型)

NAD+ + NADH = 総NADプール(比較的一定)

 

ここは、私の苦手なところなのですが・・・

 

「NAD+補充療法」の目的は、総NADプールの増加とNAD+/NADH比の最適化の両方なのだそうで、

単純にNADHを増やすことではなく、代謝の柔軟性を高めることが重要とされています。

 

つまり、適度の「NAD+」の投与は、総NADプールの増加とNAD+/NADH比の最適化の両方を実現することが可能であるということになります。

 

では、「海馬」をはじめとする「NAD+」を増加させるか?・・・ということになります。

 

本文内でお話をしたように「血液脳関門」は分子量が大きいので、「血液脳関門」を通り抜けることは不可能であると考えられています。

では、どうするか?

 

ここで出てくるのが・・・「鼻腔内投与(intranasal delivery)」は、「血液脳関門」を迂回して薬物を直接脳内に送達する革新的手法である。この経路は、鼻腔と脳を結ぶ独特な解剖学的構造を利用する投与法となります。

 

この鼻腔内投与の「薬物動態学的な優位性」は以下のようなものになっています。

 

1)迅速な脳内到達: 投与後15-30分以内に脳内濃度ピークを達成

 

2)高い生体利用率: 血液脳関門迂回により10-100倍の脳内濃度向上

 

3)標的特異性: 脳組織への選択的送達により全身副作用軽減

 

4)非侵襲性: 外科的処置不要の患者にやさしい投与法

 

5)反復投与可能性: 長期治療への適用が容易

 

などが報告されているわけですが、さらに「NAD+」の鼻腔内投与の効果を最大化するためには、以下の統合的アプローチが重要であると

考えられています。

 

1.運動療法: 有酸素運動によるBDNF産生促進

2.食事療法: 抗酸化物質豊富な食品摂取

3.睡眠衛生: 記憶固定化促進のための良質な睡眠

4.認知トレーニング: 海馬-皮質ネットワーク強化

ここまできて、食事療法や運動療法が出てくることにニヤけてしまうのは、私だけかもしれませんが・・・

近い将来には「NAD+の鼻腔内投与」を含む、総合的な「認知症予防」のプログラムが出てくるかもしれませんね。

 

今回も最後までお付き合いいただきまして

誠にありがとうございましたお願い

 

参考)

1)Nat Aging. 2025 Aug 19. doi: 10.1038/s43587-025-00940z. Online ahead of print.

Targeting iron-associated protein Ftl1 in the brain of old mice improves age-related cognitive impairment

Jaura Remesalら

 

など

 

   (夏の陽射しの中の丸の内仲通り)

          (筆者撮影)

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理事長・ 院長  

小笠原  均  (Hitoshi Ogasawara)   

医学博士, 内科医

(総合内科、リウマチ専門医)

(新潟大医学部卒)

 

 

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こんにちは、内科医 ひとちゃんですニコニコ

 

8月も終盤(しゅうばん)になっていますね。

暦(こよみ)の二十四節気(にじゅうしせっき)では、

「処暑(しょしょ)」となっています。

 

「処暑(しょしょ)」という言葉の意味は、厳しい暑さが和らぎ(やわらぎ)、秋の訪れを感じ始める頃という意味であるそうですが・・・

まだまだ、厳しい暑さは続きそうですね。

 

皆さまの体調は、いかがでしょうか? 

 

        (AIで画像を作成)

 

さて、今回は「iPS細胞」からのエクソソームが「老化細胞」を

正常細胞にもどすというマジックのようなお話をしてみたいと思います。

 

とうとう、暑さで頭がやられてしまったのだなあ〜と私のことを気の毒に思われる方もいらっしゃるかもしれませんね笑い泣き

 

実は、これは本当のことなのですね。話を始める前に「iPS細胞由来のエクソソーム」、つまり、「iPS細胞」から放出されている「エクソソーム」には、そのような物質が含まれているのか?・・・をまず、ご説明しておきたいと思います。

 

在の研究により、iPS細胞由来のエクソソームには多様な生物学的活性分子が含まれていることが明らかになっています。

以下、主要な分子カテゴリーごとに分けて、書き出してみたいと思います。

 

1マイクロRNA(miRNA)

 

主要なマイクロRNA群

 

1)miR-302ファミリー

  • miR-302a-5p、miR-302b-3p、miR-302d-3p
  • 作用機序: 多能性維持、細胞周期制御、アポトーシス抑制
  • 標的遺伝子: TGF-β経路、PI3K/AKT経路の制御
  • 治療効果: 心筋保護、再生促進、炎症抑制 

2)miR-21-5p

  • 作用機序: SORBS2、PDLIM5を標的とした心筋肥大制御
  • 機能: 抗アポトーシス作用、血管新生促進
  • 臨床意義: 心筋梗塞後の心機能回復に寄与

3)miR-92a

  • 作用機序: 内因性抗アポトーシス経路、血管新生促進経路、抗線維化経路の活性化
  • 効果: 左室駆出率改善、心筋細胞生存率向上

miR-372-3p、miR-371a-5p

  • 特徴: hiPSC由来エクソソームで高発現
  • 機能: 細胞周期制御、代謝制御に関与

 

2.転写因子とタンパク質

 

多能性関連転写因子

 

OCT4、SOX2、NANOG:

  • 存在確認: iPS由来エクソソーム内でmRNA及びタンパク質として検出
  • 機能: 多能性維持シグナルの伝達
  • 作用機序: 受容細胞の分化可塑性向上
3.細胞周期制御タンパク質
 
1)MCM5、PCNA1、CDK1:
  • 発現パターン: iPS細胞由来エクソソームで高発現
  • 機能: DNA複製、細胞増殖促進
  • 臨床意義: 組織再生、損傷修復の促進 
4.熱ショックタンパク質
 
HSP20、HSP27、HSP60、HSP70、HSP90:
  • 作用機序: TLR4シグナリング活性化 → ERK1/2、p38MAPK経路活性化
  • 機能: 血管新生促進、細胞保護効果
  • 治療効果: 虚血再灌流障害に対する保護作用
5.成長因子とサイトカイン
 
VEGF、FGF、PDGF:
  • 機能: 血管新生、細胞増殖促進
  • 経路: PI3K/AKT、MAPK経路を介した細胞保護
6. エクソソーム特異的マーカータンパク質
 
1)CD9、CD63、CD81:
  • 機能: 標的細胞への特異的結合、取り込み効率向上
  • 作用機序: インテグリン介在性細胞接着

2)TSG101、Alix:

  • 役割: エクソソーム形成・分泌制御
  • 意義: エクソソームの品質管理
7. 代謝関連酵素とシグナル分子
 
1) 代謝制御酵素
  • 解糖系酵素群: グルコース取り込み促進、ATP産生向上
  • 作用機序: 虚血条件下での細胞エネルギー代謝改善
  •  

2(抗酸化酵素

  • SOD、カタラーゼ、GPX系酵素
  • 機能: 酸化ストレス軽減、ROS除去
  • 治療効果: 虚血再灌流障害の軽減
8 長鎖非コードRNA 
 
1)H19、HOTAIR:
  • 機能: miRNA-29b-3pとの結合による心筋リモデリング制御
  • 作用機序: エピジェネティック制御を介した遺伝子発現調節
9. 環状RNA(circRNA)
 
circ-Stt3b:
  • 作用機序: miR-15a-5p/GPX4軸を介したフェロトーシス抑制
  • 効果: 細胞死抑制、炎症軽減
10.脂質成分
 
スフィンゴミエリン、コレステロール:
  • 機能: エクソソーム膜安定性、細胞膜融合効率向上
  • 作用機序: 膜タンパク質機能の最適化
などとなるわけですね(参考1,2)
 

          (AIで画像を作成)

 

上記のような多くの物質を含むことから、IPS細胞は、以下のような

医療への応用が期待されているわけです。

 

【1】心血管疾患治療(参考3)

  1. 血管新生促進: VEGF/Angiopoietin経路活性化
  2. 抗炎症効果: NF-κB経路抑制
  3. 抗線維化作用: TGF-β経路調節

 

【2】神経保護効果(参考4)

  1. 神経栄養因子産生促進: BDNF、GDNF発現向上
  2. シナプス可塑性向上: CREB経路活性化
  3. 神経炎症抑制: ミクログリア活性化抑制

【3】組織再生促進

  1. 幹細胞活性化: 内因性幹細胞の動員・活性化
  2. 細胞分化誘導: 特異的分化因子の供給
  3. 細胞外マトリックス再構築: コラーゲン合成調節

 

さて、ここまでご説明したところで(少し長すぎましたが・・・)

 

なぜ、皮膚の真皮層に存在する「老化細胞」が「iPS細胞由来のエクソソーム」の投与により「正常細胞」に一部は戻る(もどる)ことができるのでしょうか?

 

「老化細胞」についての一般的な話題は、次のようなものでしたね。

 

細胞分裂をするたびに「テロメア」が短くなる。

ある時点で、それ以上は分裂ができない「ヘイフリックの限界」という状態まで「テロメア」が短くなることにより、細胞分裂は止まるわけです。

細胞分裂ができなくなった細胞は、一部は「アポトーシス(プログラムされた細胞死)」を起こしますが、残った細胞は「老化細胞」になる。

 

「老化細胞」は、炎症性サイトカインを放出する「SASP(老化関連分泌表現型)」となり、周囲の細胞を障害して、それらを「老化細胞」化するという性質を持つ。

 

このことから、「老化細胞」には「ゾンビ細胞」という異名(いみょう)もありましたね。

 

この話からすると・・・「老化細胞」を「正常細胞」に戻すことなど、「夢のまた夢」のお話に聞こえるかもしれませんね。

 

皮膚真皮層の「線維芽細胞」の「老化細胞」は、以下のように分類できることが知られています(参考5.6)

 

1) 複製老化(Replicative Senescence)

  • 原因: テロメア短縮によるヘイフリック限界到達
  • メカニズム:
    • テロメア長が臨界的短縮(約4-6kb以下)
    • ATM/ATR→p53→p21経路活性化
    • Rb経路による細胞周期停止
  • 特徴: 正常な生理的老化プロセス
2. 早期老化(Premature Senescence)
    「途中で遺伝子学的異常」に相当し、さらに細分化されます。
     
    a)ストレス誘導性老化(SIPS :Stress-induced Premature Senescence)
    • 原因:酸化ストレス、UV照射、化学物質暴露(ばくろ)
    • メカニズム: DNA損傷→p53/p21経路またはp16/Rb経路

    b)顔遺伝子誘導性老化(OIS ;Oncogene-induced Senescence)

    • 原因: RAS、MYC等の癌遺伝子活性化
    • メカニズム: 異常増殖シグナル→p16/Rb、p53/p21経路

    c) DNA損傷応答性老化

    • 原因: 電離放射線、化学変異原による直接的DNA損傷
    • メカニズム: ATM/ATR→Chk1/Chk2→p53経路
     
    3)エピジェネティック老化
    • 原因: ヒストン修飾、DNA メチル化パターンの異常
    • メカニズム: クロマチン構造変化による遺伝子発現制御異常
     
    以上のように「老化細胞」として、炎症性サイトカインを放出する「SASP(老化関連分泌表現型)」となっていることに変わりはないのですが、「老化細胞」となっている理由は、テロメア短縮による「ヘイフリック限界」に到達したものばかりではないというわけです、
     
    上記の「早期老化」や「エピジェネティック老化」のメカニズムで「老化細胞」になったものについては、「iPS細胞由来のエクソソーム」の投与により、「正常細胞化」できる可能性があるということになりますね。
     
    JTKクリニックでは、「NK細胞」を用いての「老化細胞」を除去する「抗老化医療」の施行を目指しているわけですが、
    あまり「老化細胞」を破壊しすぎると・・・以前にブログ内でもお話をしたように血行障害が出現したり、皮膚であれば、その構造を破壊しすぎてしまうことがネックになっています。
     
    今回、当院では米国でもがんに関連する第3相試験が行われている「リプロセル社」」のiPS細胞からのエクソソームを使用する機会を得ましたので、同社の「iPS細胞由来のエクソソーム」を用いて、「老化細胞」を可能な限り減らしてから、「NK細胞」で「老化細胞」を破壊しるという治療が、同社との協力のもと、確立できたらよいな〜と考えています。
     
    素敵な 1 週間をお過ごしくださいキラキラ
     
    それでは、またバイバイ
     
    -----------------------------------------------------------------

    <ブログ後記 > 8月26日

     

    8月も残りが少なくなってきましたね。

     

    夏もそろそろ、終わりか・・・なんて言葉も頭に浮かんだのですが

    実際には、東京都心の最高気温が35.1℃に達し、年間猛暑日(ねんかんもうしょび)の日数は22日目となったそうです。

     

    この年間猛暑日の日数は、2023年の過去最多記録に並んだそうです。これで猛暑日が終わるとは思えないので、今年は「過去最多の猛暑日があった」と記録されるかもしれません。

     

    今回は「老化細胞」が生じる原因は、テロメアの長さがそれ以上は分裂できなくなる理由ばかりではなく、複数のメカニズムが存在することについて、お話をさせていただきました。

    そのメカニズムの違い(ちがい)とは関係なしに、一旦(いったん)「老化細胞」に変化してしまえば・・・「SASP(老化細胞分泌表現型) 」という状態になります。

     

    「SASP」とは、「老化細胞」が分泌するタンパク質が変化し、「炎症性サイトカイン」、「成長因子」、「プロテアーゼ」などを大量に分泌するなど「老化細胞」に特有の現象となります。


    これらの「分泌物質」が、周囲に存在する「正常細胞」に以下の影響を与えることがわかっています。

    ◎慢性炎症の誘発

    IL-6、IL-8、TNF-αなどの炎症性サイトカインにより、組織の慢性炎症状態を引き起こします。


    この炎症性サイトカインは、「正常細胞」の機能低下や損傷を招き、周囲の正常細胞も老化細胞化させる「老化の伝播(でんぱ)」現象」を起こすとされていますよね。

    これにより組織全体の「老化」が加速されていくと考えられているわけです、

    「IPS細胞由来エクソソーム」の投与により、「老化細胞」が「正常細胞」に戻る可能性があるのではないか・・・ということになります。

     

    しかしながら・・・「老化細胞」のうち、テロメア短縮により「ヘイフリックの限界」となり、それ以上の分裂はできない「老化細胞」は難しいわけですが・・・。


    実は・・・厳密(げんみつ)にお話すると「正常細胞」に戻すというのは・・・かなりの「誇大表現(こだいひょうげん)」であるという研究者もいます。

     

    では、どのような表現が正しいのか?・・・と言いますと

    「老化細胞」の部分的な機能改善効果であるといった方が正確なのではないかというのですね。

     

    いったい、どのようなことかと言いますと・・・次のようになります。

     

    「ヒト皮膚線維芽細胞」について、具体的に検証してみると、次のようになります。


    「iPS細胞由来エクソソーム」が、「ヒト皮膚線維芽細胞」において、

    どのような効果を持つ可能性があるのか?

    というのは、2018年の論文で、次のように示されています(参考7)


     

    この論文では、iPS細胞由来のエクソソームが、加齢した「ヒト真皮線維芽細胞(HDF)」への影響を調べています。その結果、

     

    【1】「老化関連βガラクトシダーゼ(SA-β-Gal)」の発現レベルを有意に減少させることが確認できたというのですね。

     

     この論文の詳細な内容を確認しますと、次のような内容となります。「光老化」の実験もされているのですが・・・自然老化を誘導するため、真皮層の線維芽細胞30回以上の継代培養したという実験したのですね。

     

    特定のmRNA発現レベルは定量的リアルタイムPCR(qPCR)で評価した。自然老化のマーカーとして老化関連の「β-ガラクトシダーゼ(SA-β-Gal)活性」を測定しています。

     

    そして、「iPS由来のエクソソーム(iPSCs-Exo)」を加えて、老化した線維芽細胞の変化を確認したわけです。

     

    その結果、「iPS由来のエクソソーム(iPSCs-Exo)」老化した線維芽細胞において「SA-β-Gal」および「MMP-1/3」の発現レベルを著しく低下させ、「I型コラーゲン」の発現を回復させることを実証したというわけです。

     

    下の図の「A」の左の写真は、若い時の線維芽細胞を示しており

    中央が「老化」した「線維芽細胞」になるわけですが、青く染まっているのが「SA-β-Gal」という

    老化細胞の指標となります。右の写真は、中央の老化細胞の散在していたサンプルに「iPS由来のエクソソーム(iPSCs-Exo)」を加えて、培養した後のものです。

    右の写真では、わかりにくいかもしれませんが、青く染まっている細胞が減少しており、老化細胞が減少していることが確認できたという結果になっています。

     

    下の図の「B」の図は、黒く示されているのが「SA-β-Gal」が強く発現している「老化細胞」の割合を示しており、灰色の部分は、「SA-β-Gal」が中等度発現している「老化細胞」を示しています、

     

    そして、左の写真は、若い時の線維芽細胞を示しており、「SA-β-Gal」は発現しておらず、老化細胞」がないことが確認できます。

    中央が「老化」した「線維芽細胞」になるわけですが、「SA-β-Gal」が強く発現している「老化細胞」と「SA-β-Gal」が中等度発現している「老化細胞」が混在しているのが確認できます。

     

    そして、右のグラフは、右のグラフは、中央で示した「老化細胞」の散在していたサンプルに「iPS由来のエクソソーム(iPSCs-Exo)」を加えて、培養した後のものです。

     

    その結果、「iPS由来のエクソソーム(iPSCs-Exo)」を加えますと、驚くことに・・・

    「SA-β-Gal」が強く発現していた「老化細胞」と「SA-β-Gal」が中等度発現していた「老化細胞」の割合が減少することが示されています。

     

     

    その他のデータとして


    【2】MMP-1/3(マトリックスメタロプロテアーゼ)発現を抑制し、


    【3】「コラーゲンタイプI」の発現を回復させる

     

      ことが実証されています(参考7)。

     

    ここで、ちょっと復習(ふくしゅう)しておきますと・・・
    「ヒト皮膚線維芽細胞」が、「老化細胞」に変化した主要な指標は、

    1. SA-β-Gal(老化関連βガラクトシダーゼ)の上昇

    SA-β-Galは最も信頼性の高い細胞老化のマーカーです
    正常細胞では低発現ですが、老化細胞では著明に上昇します

    2. MMP-1/3(マトリックスメタロプロテアーゼ)の発現増加

    MMP-1:コラーゲンⅠ型・Ⅲ型を分解する主要酵素
    MMP-3:多様な細胞外マトリックス成分を分解

    老化細胞ではSASPの一環としてMMPが過剰産生され、周囲の組織構造を破壊することが知られています。

    3. コラーゲンタイプⅠの発現低下

    コラーゲンタイプⅠは皮膚の主要構造タンパク質(全コラーゲンの約80-90%)であり、
    老化に伴い合成能力が低下し、同時にMMPによる分解が亢進(こうしん)します。
    この結果、皮膚の弾力性と強度が失われるわけですね。

    ・・・ことになります。

    上記の事象は、「ヒト皮膚線維芽細胞」が確実に「老化細胞」化していることを示す確定的な証拠といえます。

     

    逆に、先ほどの「iPS細胞由来エクソソーム」は、これら全ての指標を改善方向に導くため、抗老化効果があると評価されているのですね(参考7)

    その他の多くの研究結果から、「iPS細胞由来エクソソーム」は、老化細胞を完全に正常細胞に戻すことはできない可能性もあるものの、老化の進行を遅延させ、一部の機能を改善する効果があると考えられます。
     

    具体的には、以下のことがわかっています。


    ○老化細胞のマカーーカー(SA-β-Gal)の発現減少以外に

    ○コラーゲン産生の回復 

    ○炎症性サイトカイン分泌(IL-1α、IL-6、TNF-α)の減少 

     

    ○細胞増殖能力の部分的回復 

    ○p53-p21経路の抑制により、細胞周期停止が解除される

                 →細胞が増殖する 

    ○DNA修復能力の向上  

    ○エラスチンやヒアルロン酸の産生が促進される

    ○組織再生能力の回復 

    ○真皮の厚さと弾性の回復する

     (老化細胞が多くなると、真皮層は薄くなり、弾性は低下します)

    などが実際に報告されていルわけですね(参考8.9)、


    「iPS細胞由来エクソソーム」の投与により、「老化」の改善された

    線維芽細胞の機能は、数週間から数ヶ月間持続することや

    また、(細胞移植と異なり、エクソソームは複製能を持たないため)腫瘍化のリスクが低いことが確認されています。

    さらに、「iPS細胞由来エクソソーム」には、PRDX1とPRDX2などという抗酸化酵素が高濃度で含まれています


    これらのPRDXは、「老化線維芽細胞」に直接送達され、細胞内の「活性酸素(ROSなど)」の発現レベルを劇的に低下させることが知られているのですね。

    老化した線維芽細胞では、通常PRDXレベルが低下していますが、エクソソーム投与により内因性の「抗酸化能力」が回復します。
     

    この直接的な酵素補充により、DNA損傷マーカー(γH2AX)の減少や細胞増殖能の回復が起こることが確認されています(参考10)。

    これらの結果は、私個人は、驚くべきことであると思うのですが・・・やはり「完全な若返り」ではなく、「老化」の進行抑制と機能の部分的改善」として理解するのが適切であるかのもしれませんね。

     

    ただし、実際に「老化細胞」を除去する際には、組織全体の「老化細胞」を一定期間、減少させることが可能であることは、

    何らかの「老化細胞除去療法」を行う際には、一度に大量の「老化細胞」が破壊(アポトーシス)されることを防ぎ、「組織の損傷」や「機能障害」が生じることを防ぐ方法になり得る・・・のではないかなんて思います。

     

    またまた、長文になってしまいましたね。

     

    今回も最後までお付き合いいただき

    誠にありがとうございましたお願い

     

     

    参考)
    1) Stem Cell Res Ther. 2022 Sep 5;13(1):449.
    Systemic proteomics and miRNA profile analysis of exosomes derived from human pluripotent stem cells
    Youkun BIら
     
    2) Circ Res. 2017 Jan 20;120(2):407-417. 
    Exosomes Generated From iPSC-Derivatives: New Direction for Stem Cell Therapy in Human Heart Diseases

    Ji-Hye Jungら

     

    3) J Extracell Vesicles. 2020 Aug 26;9(1):1809064.

    Extracellular vesicles from human iPSC-derived neural stem cells: miRNA and protein signatures, and anti-inflammatory and neurogenic properties

    Raghavendra Upadhyaら

     

    4)Inflamm Regen. 2022 Apr 2;42(1):11.

    The roles and mechanisms of senescence-associated secretory phenotype (SASP): can it be controlled by senolysis?

    Naoko Ohtaniら

     

    5)Front Cell Dev Biol. 2021 Mar 29:9:645593. 

    Mechanisms of Cellular Senescence: Cell Cycle Arrest and Senescence Associated Secretory Phenotype

    Ruchi Kumanら

     

    6)Int J Med Sci. 2018 Jun 9;19(6):1715.

    Exosomes Derived from Human Induced Pluripotent Stem Cells Ameliorate the Aging of Skin Fibroblasts

    Myeongsik Ohら

     

    7)Int J Mol Sci. 2018 Jun 9;19(6):1715.

     Exosomes Derived from Human Induced Pluripotent Stem Cells Ameliorate the Aging of Skin Fibroblasts
    Myeongsik Oh ら

     

    8)Stem Cell Res Ther. 2019 May 21;10(1):142.

     Human embryonic stem cell-derived exosomes promote pressure ulcer healing in aged mice by rejuvenating senescent endothelial cells
    Bi Chen ら

    9)Cell Metab. 2025 Feb 4;37(2):527-541.
    Exosomal miR-302b rejuvenates aging mice by reversing the proliferative arrest of senescent cells
    Youkun Bi ら

     

    10) Cells. 2021 Jul 12;10(7):1763.
    Extracellular Vesicles under Oxidative Stress Conditions: Biological Properties and Physiological Roles
    Elisabetta Chiaradia ら


            (筆者撮影)

     =================================

     院長  

    小笠原  均  (Hitoshi Ogasawara)   

    医学博士, 内科医

    (総合内科、リウマチ専門医)

    (新潟大医学部卒)

     

     

     

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     <今週、なんとなく聞いてみたい曲>


     

     =====================

    <JTKクリニックからのお知らせ>

     

    ◯外来診療は予約制をとり、待ち時間が生じないようにしています。

     

    ◯ ダイエット漢方製剤は、オンライン診療でも可能です。

    ◯ 線維筋痛症に対するノイロトロピン等の点滴療法、トリガーポイント注射を行なっております。(セカンドオピニオン診療も可)

     

    ○自分の皮下脂肪から組織を採取し、「間葉系幹細胞」を培養して、自分自身の組織内に投与する「幹細胞治療」を開始しました。

     

     

    <JTKクリニック 所在地>

    〒102-0083

    東京都千代田区麹町4-1-5麴町志村ビル2階

    電話 03-6261-6386

    Mail:info@jtkclinic.com

    =================================

     

    こんにちは、内科医 ひとちゃんですニコニコ

     

    「お盆」の期間も終わり、暦の二十四節気では「立秋(りっしゅう)」にもなっているわけですが、相変わらずの暑さになっていますね。

     

    なぜ、これほどまでに暑いのか?・・・と考えていたのですが、その原因のひとつは、「地球温暖化」による気温の底上げ(そこあげ)であり、もうひとつは、「ラニーニャ現象」が日本付近で起きていることや、太平洋高気圧とチベット高気圧が重なる(かさなる)「ダブル

    高気圧」の状態になっているのが要因なのだとか。

     

    なので、今後も九州から関東を中心に猛暑日(もうしょび)のところ

    が多くなるそうです。

     

    引き続き、「熱中症」の予防には、心がけていく必要がありそうですね。

     

    皆さまの体調は、いかがでしょうか?

     

              (AIで画像を作成)

     

    さて、今回は、少しだけ不思議な話題をご紹介したいと思います・・・と言っても夏の「怪談話(かいだんばなし)ではありません。

     

    それは、「高血糖」の状態が長く続きますと・・・「免疫力」は低下しし、疲れやすくなる可能性があるのではないか?・・・というお話です。

     

    「糖尿病」になって、適切な治療を行われなければ・・・それは、免疫力だけではなく、眼底の網膜病変や末梢神経障害、そして、腎不全

    などが起きてくるに決まっている・・・と怒る(おこる)方もいらっしゃることと思います。

     

    そのとおりですね。ただし、今回の話題にしたいのは、次のような

    ケースになるかもしれません。

     

    例えば・・・「健康診断」を行ったところ、「HbA1c(ヘモグロビンA1c)」の値が、わずかに6.5%をこえていて、「2型糖尿病」があると

    判断された方、また、「HbA1c」が6.5%よりは低い6.3%であり、

    「2型糖尿病の境界域」であると判断された方の話となります。

     

    ちなみに「HbA1c」の値は、約1~2ヶ月間の「血糖値」の平均的な状態を示す指標です。

    また、「2型糖尿病」とは、一般的に「糖尿病」と呼ばれているものになります。

     

    これらのケースでは、おそらく食事療法を行って、食事の摂取カロリーを減らし、適度な運動を行ってください・・・と言われることが多いと思います。

     

    もちろん、「食事療法」を積極的に行い、その後、「HbA1c」の値が正常化する方は、まったく問題はありません。

     

       (AIで画像を作成)

     

    問題になるのは・・・いっこうに「HbA1c」の値が、改善していかない方となります。

     

    「次回はデータが良くなるように頑張る(がんばる)ので、その値が悪ければ、お薬を服用したい」・・・と強い決意を口にしながら、

    その次のデータを確認しても、改善がないという方もいらっしゃいます。

     

    「有言実行(ゆうげんじっこう)」ではなく、まさに「有言不実行(ゆうげんふじっこう)」ですね」・・・などと患者さんと一緒に笑っているうちは良いのですが・・・それでは、このモヤモヤした状態

    をいつまで続けるのか?・・・と私自身も実際の診療の中で悩んだ(なやんだ)ことがあります。

     

    やっと、ここからが「本題」になるのですが・・・最近の研究結果から、

    驚くべきことが明らかになっているのですね。それは、次のようなことになります。

     

    実は、「高血糖」の状態は、これまでの「糖尿病」の臨床的な常識(じょうしき)の範囲をはるかに超える「分子レベルの破綻(はたん)」を引き起こすことが明らかにされているのですね。

     

    「分子レベルの破綻」とは、大袈裟(おおげさ)だなあ〜と思う方もいらっしゃるかもしれませんね。

     

    その内容を見てみると・・・「NAD+(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)の枯渇(こかつ)」、「サーチュイン1遺伝子(SIRT1)」の機能不全、「サーカディアンリズム(概日リズム)」の乱れ、さらに

    「免疫破綻(めんえきはたん)」を

    結びつける「病的なネットワーク」が形成されることが分かってきているのですね。

     

    この「病的なネットワーク」の形成が開始されるのは、血糖値が

    100–125 mg/dLの範囲であっても、測定可能な「代謝破綻」が始まるということもエビデンスとして確認されているのだそうです。

     

    ちなみに血糖値の正常範囲は、空腹時血糖値::70~109mg/dLです。

     

    つまり、上記のことから考えると・・・先に例として示した

    「HbA1c」値が、6.5%をこえていて、「2型糖尿病」があると

    判断された方、そして、「HbA1c」が6.5%よりは低い6.3%であり、

    「2型糖尿病の境界域」であると判断された方の両者において、

    「分子レベルの破綻」や「代謝レベルの破綻」が生じている可能性が高いと考えられることから、積極的な治療などを施行していく必要であると考えられているのだそうです。

     

    その詳細なメカニズムについては、後日の話題にしたいと思います。

     

    素敵な1週間をお過ごしくださいキラキラ

     

    それでは、またバイバイ

    ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

    <. ブログ後記  >   8月19日

     

    今回は、何とも不思議な話と思える方もいっらっしゃるのではないかと思います。

    いわゆる「2型糖尿病(以下は糖尿病)」の血糖コントロールが悪いと、網膜症や腎障害、神経障害などを起こすことが常識であって、例えば「糖尿病境界域」などの内服治療が必要のない段階で、既に臓器障害が始まっていると言われたら、驚く(おどろく)方も多いかもしれません。

     

    それなら・・・「糖分」を摂取しなければ良いのか?・・・というと、そうではありません。

    なぜなら「糖分(主にグルコース)」は人体にとって以下の理由で必要不可欠なものなのですね。

     

    その理由は、「糖分」は体内で最も効率的に利用できるエネルギー源だからですね。

    食事から摂取した「糖質」は消化・吸収されてグルコースとなり、細胞内で「ATP(アデノシン三リン酸)」というエネルギーに変換されます。この「ATP」は、歩く、話す、考えるといったあらゆる生命活動に使われています。

    また、脳の活動にも「糖(グルコース)」は重要です。

    脳は通常、グルコースをほぼ唯一のエネルギー源として利用しており、この脳が正常に機能するためには、1日約120gのグルコースが必要不可欠であると考えられています。

    さらに筋肉を使っての運動に必要です。

    運動時、筋肉は筋グリコーゲン(糖の貯蔵形態)を分解してエネルギーを得ます。特に短時間の激しい運動では、「糖(グルコース)が主要なエネルギー源となるわけですね。

     

    この「糖(グルコース)」の血液中の量を示すものが「血糖値」ということになるのですが、ヒトの身体は、この「血糖値」一定範囲(約70-110mg/dL)に保つ仕組みを持っています。

     

    この仕組みとは、インスリンやグルカゴンなどのホルモンによって精密に調節されていrうわけですね。

     

    ただし、現代の食生活では糖分の過剰摂取が問題となることが多いとされています。

     

    糖分の過剰摂取の状態が続くと・・・

    過剰な「糖分(グルコース)」は体内で「中性脂肪(TG)」に変換されて蓄積されます。さらに「糖分(グルコース)」の摂取を続けますと、内臓脂肪の蓄積は、急速な体重増加が起こります。

     

    また、長期的な「糖分(グルコース)」の過剰摂取は、「インスリン抵抗性」を引き起こします。

    膵臓は血糖値を下げるために大量のインスリンを分泌し続けますが、やがて疲弊してインスリン分泌能力が低下し、「糖尿病」を発症します。

     

    このことから、考えると・・・一定の「糖(グルコース)」は必要であって、必要な分の「糖(グルコース)」が摂取できていて、過剰でない状態が、健常者では「血糖値(空腹時)」が、約70-110mg/dLになっていることであり、糖尿病の治療をしている方では、「HbA1c」が 7.0程度にコントロールされていれば、

     

    この基準どおりに治療を行なっていけば、組織にダメージを与える

    ような「高血糖」の状態ではない・・・と考えて良いのだと思います。

     

    では、「血糖値」の高くなることが、早い時期から臓器の障害をもたらす可能性がある・・・というのは本当なのか?・・・という疑問が出てきますよね。


    そんなことが本当にあるのか?・・・私自身もそのように考えるわけですが残念ながら・・・この話は本当のことのようです。

    「高血糖」の状態が続くことは、臓器の分子レベルの破綻(はたん)を引き起こす可能性があるというのですね、

    例えば、次のようなことが関係あるかもしれません。

    これは、一般的な話ですが・・・「糖尿病」と診断される4–7年前から「高血糖」もある場合が多いというのですね。

     

    それを裏付ける事実が、次のようなことになります。

    「糖尿病」の合併症のひとつに「糖尿病性網膜症」があり、通常の場合では、血糖コントロールが悪い状態が続くと、「糖尿病」の発症から約5-10年程度で初期変化が現れるとされています。

     

    しかしながら、「糖尿病」の診断時点で、網膜症は「18–39%」程度の方に既に(すでに)存在するという報告があるようです。

    一般的に「HbA1c  8.0以下」では、網膜症などの合併症は少ない可能性も指摘されていますので、かなりの「高血糖」の状態が

    長期間にわたり放置されていた可能性がありますね。

     

    実際には「2型糖尿病」の治療を行なっている場合の「血糖値」のコントロール目標は「HbA1c 7.0」前後とされていますが、とされていますので、この基準どおりに治療を行なっていけば、網膜症などの合併症を生じる可能性は、少なくなっていくと考えられます。

    では、正常でもなく、まだ、糖尿病でもない「糖尿病境界域」である場合は、どうでしょうか?まだ、「糖尿病」にはなっていないから、大丈夫かな〜と考える方が多いかもしれません、

     

    しかしながら、この期間では既に「高血糖」の状態になっている時間帯が多くなっている可能性もありますよね。

    実際には、「糖尿病境界域」と診断されたとしたら、どうしたらよいのでしょうか?

     

    この場合には、「食事量」を減らすことが重要となります。

    「糖尿病」進展することを防ぐ方法として、「食事の摂取カロリー」を減らして、「内臓脂肪」を落とすことで防げるのは、「インスリン抵抗性」と「膵臓β細胞ストレス」を同時に軽減することができると考えられています。
     

    では、なぜ「高血糖」の状態が続くと・・・「NAD⁺」の枯渇(こかつ)が起きるのでしょうか?

    これは、2つのメカニズムが考えられています。

    空腹時100–125 mg/dLの前糖尿病レベルでも、主に二つの経路を介してNAD⁺代謝に大きなストレスがかかり、細胞のエネルギーシステムが損なわれると考えられています、

    1つ目のメカニズムは、ちょっと難しいのですが、「アルドース還元酵素主導のポリオール経路」というものがありまして、余分な「糖(グルコース)」は「ソルビトール」へ還元され、続いて「フルクトース」へ酸化されるのですね。この「フルクトース」へ酸化される過程で、

    過剰なNADHが生じる。

     

    簡単にお話しますと・・・この過程で「NAD⁺」が消費されるというわけですが、過剰なNADHが産生されることで、NAD+/NADH比が低下します、

    これは、擬似的な低酸素状態となることから「ATP」の低下が生じて、これを補充するために「NAD+」が消費されるという複雑な

    悪循環が生じているというわけです。

    2つ目のメカニズムは、「酸化ストレス(活性酸素)」により「PARP」が活性化され、DNA修復のためにNAD⁺が消費されるというものです(参考4)。

    「PARP」は、いわゆる「DNA切れ目センサー」なので、「活性酸素」がDNAに損傷を作ると、これを感知して、「PARP」が活性化されます。

    「高血糖」の状態では、「ミトコンドリア」由来の過剰な活性酸素(スーパーオキシド)が産生されるためにDNAに損傷を多く作る
    ことから、「PARP」が強く動員されます

    つまり、高血糖→ミトコンドリア由来の「活性酸素」の増加→DNAの切断→PARPが傷を感知して活性化するということになります。

     

    そして、損傷したDNAを修復しようとするのは、「NAD+」から誘導される「サーチュイン1遺伝子(SIRT1)」の活性化であるのですね。

    このために「NAD+」は消費され、「NAD+」が枯渇した後には、
    「サーチュイン1遺伝子(SIRT1)」が活性化されなくなってしまう可能性があるわけですね。

     

    「サーチュイン1遺伝子(SIRT1)」が活性化されないとどのようなことが起こるのでしょうか?

     

    「サーチュイン1遺伝子」の重要な役割は、「損傷したDNAの修復」

    と「サーカディアンリズム(概日リズム)」の形成がありましたね。

    「サーチュイン1遺伝子」の活性の低下は、「サーカディアンリズム(概日リズム)」を破綻(はたん)させ、このことは、「ミトコンドリア」の酵素アセチル化過多や融合/分裂リズムの破綻など、多層の経路を通じて酸化的リン酸化能を低下させ、ATP産生の効率を落とすとも報告されています。

     

    「高血糖」は、グルコース上昇 → NAD⁺枯渇 → SIRT1機能不全 → 概日破綻 → 倦怠と免疫不全、という連関した病的カスケードの“出発点”となりうるという説が有望な訳ですが、今後、多方面からの検証が必要

    かもしれませんね。

    この話題は、またの機会に再度、話題にしてみたいと思います。

     

    今回も最後までお付き合いいただきまして

    誠にありがとうございましたお願い

     

     

    (夕暮れ時の東京タワー:高輪プリンスホテル)

    (筆者撮影)

     =================================

     院長  

    小笠原  均  (Hitoshi Ogasawara)   

    医学博士, 内科医

    (総合内科、リウマチ専門医)

    (新潟大医学部卒)

     

     

     

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              <今週、なんとなく聞いてみたい曲>

     

     

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    こんにちは、内科医 ひとちゃんですニコニコ

     

    昨夜は、夜空に満月「スタージェンムーン(チョウザメ月)」を見ることができましたが、今日の休日は

    残念ながら、雨のお天気となっています。

     

    せっかくの休日が、雨とは残念だと思ったりもするわけですが・・・

     

    アイルランド出身の作家かつ詩人である「オスカー・ワイルド」は、次のような言葉を残しています。

     

    When it rains, look for rainbows. When it's dark, look for stars.

    雨が降っているなら、虹を探しなさい。暗闇にいるなら、星を探しなさい

     

    この名言は、困難な状況でも希望を見つけることの大切さを教えているとされています。 

     

    「オスカー・ワイルド」の代表作は『ドリアン・グレイの肖像』『サロメ』『幸福な王子』などオスカー・ワイルドの文業と生きざまは世界中に影響を及ぼしたとされているのだそうです。

     

    日本でも森鴎外、夏目漱石、芥川龍之介、谷崎潤一郎らが「オスカー・ワイルド」の生き方や作風を意識したといわれているそうです。

     

    昔、ハードボイルド系の何かしたの映画(?)のなかに出てきた言葉

     

    Men always want to be a woman's first love. Women like to be a man's last romance.

     

     男はいつも最初の恋人になりたがる。女は最後の恋人になりたがる。  

     

    「オスカー・ワイルド」の言葉であったりもします。

    a man's last romance.**  

    → 男はいつも最初の恋人になりたがる。女は最後の恋人になりたがる。  

      

     

    (AIで画像を作成)

     

    前回は「癌に対するウイルス溶解療法」の話題とさせていただきましたが、今回は・・・皮膚の真皮層に存在する「線維芽細胞」の老化

    についての話題にしてみたいと思います。

     

    少しだけ、以前の話題を思い返してみますと・・・

     

    皮膚は、最も外側にある「表皮層」があり、その下に「真皮層」がありましたね。

    「真皮層」は、血流がとても豊富なわけですが、「表皮層」は、そうでもないとされています。

    image

    (図はお借りしました)

     

    皮膚のハリなどは、この「真皮層」にある「コラーゲン線維」や「エラスチン線維」、そして、その隙間(すきま)を埋めている「ヒアルロン酸」の状態に左右されるわけです。

     

    これらの物質を産生しているのが・・・「線維芽細胞(せんいがさいぼう)」ということになります。

     

    実は、真皮層の「線維芽細胞」は、」皮膚の構造と機能において重要な役割を果たしていることが分かっています。

    「線維芽細胞」の機能は以下のようなものになります。

        •    コラーゲンとエラスチンの産生
        •    ヒアルロン酸などの細胞外マトリックスの合成
        •    皮膚の弾力性と張りの維持

     

       (AIで画像を作成)

     

    このような重要な機能を持つ「線維芽細胞」は、加齢とともに

    どのような変化を起こすのでしょうか?

     

    当然なことかもしれませんが・・・真皮層に存在する「線維芽細胞」も「老化のプロセス」に逆らう(さからう)ことはできずに

    「老化細胞」になっていくわけですね。

     

    「線維芽細胞」が老化していくと、どのような変化が起きてくるのでしょうか?

     

    「線維芽細胞」が老化すると以下のような変化が起こるとされています。
        •    コラーゲンとエラスチンの産生量が減少
        •    既存のコラーゲンを分解する酵素(マトリックスメタロプロテ

       アーゼ)の産生が増加
        •    細胞の増殖能力と修復能力が低下
        •    炎症性物質の産生が増加(炎症性老化)
     

    こうした「線維芽細胞」の変化が、どのように外見に影響してくるのか?・・・と言いますと。以下のような外見的な老化現象が現れると

    考えられています。


        •    しわの形成 - 「コラーゲン」と「エラスチン」の減少により皮

       膚の弾力性が失われる


        •    たるみ - 皮膚の支持構造が弱くなる
        •    肌のハリの低下 - 真皮の厚みが減少し、表皮への栄養供給も影  

       響を受ける


        •    創傷治癒の遅延 - 線維芽細胞の機能低下により修復能力が下が

       る

     

    というわけですね。

     

    このように皮膚の「真皮層全体」の構造が、「線維芽細胞」の

    「老化」に大きな影響を受けてしまうわけですね。

     

    それならば・・・どうすればよいのか?

     

    ひとつは、「iPS細胞由来のエクソソーム」を用いるという方法がありますし、「NK細胞」を活性化させて、老化した「線維芽細胞」を破壊するというアイデアもあるかもしれません。

     

    しかし、最も始めやすいのは「亜鉛(Zn)」を摂取する方法かもしれません。

     

    「亜鉛(Zn)」というと男性の「滋養強壮」に用いるイメージが強いのですが・・・実は、「亜鉛製剤」の投与は皮膚真皮層の「線維芽細胞」の老化を遅延させる可能性が報告されているのですね。

     

    「亜鉛(Zn)」が持つ、皮膚の「真皮層」の存在する「線維芽細胞」の老化を遅延させるメカニズムについては、後日の話題にしたいと思います。

     

    素敵な1週間をお過ごしくださいキラキラ

     

    それでは、またバイバイ

    --------------------------------------------------------------------

    <ブログ後記>8月12日

     

    お天気は、雨が降ったりしているのですが、相変わらず蒸し暑い(むしあつい)日が続いています。


    先日、自分が「幼い頃の夏」を思い出しました。

    8月半ばでも、夜は涼しくて、お盆の時期には、皆(みな)で

    「線香花火(せんこうはなび)」をやったな〜などと思い出したのですね。

    昔は、駄菓子屋(だがしや)で「花火」を買っていたような気がしますが・・・最近の子供たちは、どこで「花火」を手に入れるのだろうか?・・・と考えておりました。

    しばらくしてから、コンビニエンスストアやスーパーで、「花火」が販売されていることに気がつきました。

     

    その時に数本の「線香花火」と思えるものが、家庭用の打ち上げ花火などのパッケージの中で、隅(すみに)に押しやられているのを見つけたわけです。

     

    「線香花火」を調べてみますと、今では希少な存在となっていたようです。

     


    (写真をお借りしました)

     

    『線香花火筒井時正』さんのホームページをみますと


    火薬には宮崎産の松煙、紙は福岡県八女市の手すき和紙で、それを

    草木染めで染色し、職人の手によって一本一本丁寧に縒り上げられています。

    ワインと同様、線香花火も「熟成」によって味わいが深まります。
    時を経た線香花火は、どこかやわらかく、のある火花を散らします。

    お手元の線香花火を残しておき、翌年の楽しみにするのも一興です

     

    と書いてありました。

     

    そうそう、残った分は来年の夏に・・・なんてこともあったかもなどと感慨深く思った次第です。

     

    さて、今回は、コラーゲン、エラスチン、ヒアルロン酸などを作り出す「線維芽細胞」が「老化細胞」になっていく際(さい)に・・・これらの物質を産生しなくなっていくわけですが・・・

     

    「亜鉛(Zn)」が「線維芽細胞」の老化スピードを低下させる可能性があるというお話をさせていただきました。


    「亜鉛(Zn)」は、ヒトの身体に必要なミネラル、つまり、「必須微量元素」のひとつとされています。


    そして、「亜鉛(Zn)」の機能は?・・・多くの「酵素活性」に関与したり、「免疫システム」を正常化させるなど、重要な役割を果たすと考えられています。

    また、「亜鉛(Zn)」は、多くの遺伝子の「転写制御(てんしゃせいぎょ)」に直接的・間接的に関与していることが分かっています。

    実は、「亜鉛(Zn)」を含む「転写因子(てんしゃいんし)」は多数存在します。その代表例は 「ジンク(亜鉛)フィンガー型転写因子(zinc finger transcription factors)」という種類に転写因子です。

     


            (図はお借りしました)

     

    順番が後からになってしまいましたが・・・

     

    「転写因子」とは、DNA.上にある「転写活性(プロモーター)領域」にくっつくことにより、その後方の領域の遺伝子をRNA(その後、mRNA)を作り出す「転写(transcription;)」を開始させる役割を持ちます。

    この「亜鉛フィンガー型転写因子」は、DNAにする部分に「亜鉛(Zn²⁺)イオンを配置し、その構造を安定化させるタンパク質群なのですね。


    この転写因子は、「線維芽細胞」で起きている各種遺伝子の発現を制御メカニズムに広く関与することが分かっています。

    「ジンク(亜鉛)フィンガー型転写因子」が作用する遺伝子の例を挙げますと

    ○    Sp1:コラーゲン遺伝子(COL1A1, COL3A1)やフィブロネクチン発現促進

    ○    EGR1:TGF-β, FGF2誘導、線維芽細胞の遊走・増殖促進

    ○    KLF4:抗炎症作用、角化細胞分化促進

    ○    NR3C1(グルココルチコイド受容体):炎症制御とECM維持のバランス調整

    ○ VDR(ビタミンD受容体):細胞増殖抑制と分化促進

    ○ ZNF281:細胞遊走やマトリックスリモデリング制御

     

    なそがあるということになります。

     「亜鉛(Zn)」の話題は、少し置いておきまして、再び

    「皮膚の老化」の正体をもう少し詳しくみてみたいと思います。


    「皮膚の老化」は、外因性要因(紫外線、酸化ストレス)および内因性要因(細胞老化、ホルモンの変化、栄養状態)によって進行すると考えられています。

    とくに「真皮層」に存在する「線維芽細胞」は、「コラーゲン」や「エラスチン」などの細胞外マトリックス(extracellular matrix: ECM)の主要な供給源であり、その機能低下をもたらす「老化」は皮膚の弾力性喪失、しわ形成、創傷治癒の遅延(ちえん)をもたらすと考えられているのですね(参考1.2)。

    では、「線維芽細胞」が「細胞老化」、つまり「老化細胞」になると、どのような変化が起こるのでしょうか?
     

    これは、次のようなことが報告されています。

    1.コラーゲンI・III産生低下

    2.ECM分解酵素(MMP)の発現増加

    3.成長因子応答性の低下

    4,炎症性サイトカインの分泌増加(SASP: senescence-associated secretory phenotype)

    これらの変化は皮膚構造の崩壊と慢性炎症を促進し、「老化」を加速するとされています(参考3)。

    このように「線維芽細胞」が老化していくことは、単に「コラーゲン」、「エラスチン」などの産生が低下するばかりでなく、当然のことですが、他の「老化細胞」と同様に「炎症性サイトカイン」の分泌増加(SASP)が起きてくるわけです。


    話を再び「亜鉛(Zn)」に戻しますと・・・最近になって、「線維芽細胞」の機能制御において「亜鉛(Zn)」を含む「転写因子」、つまり、「ジンク(亜鉛)フィンガー型転写因子」は、重要な役割を果たすことが明らかになってたのですね。

     

    これは、以下のようなものになります。

    1)創傷治癒促進

    「亜鉛(Zn)」は,「線維芽細胞」の遊走やコラーゲン産生を促進し、創傷治癒を加速します。
    STAT3シグナル経路の活性化が関与します (参考4)


    2) 抗酸化・保護作用

    「亜鉛(Zn)」の補給により「線維芽細胞」は、酸化ストレス(UVや過酸化水素など)に対する抵抗性を持つようになる(参考5)。

    などです、

    では、もし 「亜鉛(Zn)」の欠乏状態になりますとどのようなことが起きるのでしょうか?

     

    その答えは・・・「ジンク(亜鉛)フィンガー型転写因子」の機能低下が生じるとされています。

     

    「亜鉛(Zn)」の欠乏した状態では、「ジンク(亜鉛)フィンガー型転写因子」のDNAへの結合能が低下し、以下のような影響が生じるから
    というのが、その理由とされています。

    ●    Sp1活性低下 → コラーゲン合成遺伝子の発現減少

    ●    EGR1誘導不全 → 成長因子シグナル低下

    ●    KLF4の安定性低 → 抗炎症作用減弱

    これらの 結果として、創傷治癒遅延・皮膚弾力低下・慢性炎症増加などが起こるというのですね。

    では、最後に「亜鉛(Zn)」は、新しい「線維芽細胞」の産生を増加させることは、できるのでしょうか?

    諸説あるのですが・・・現時点の基礎研究と臨床研究の知見から総合的に見てみると・・・

     

    「亜鉛(Zn)」は、「線維芽細胞」の老化スピードを抑制する可能性が高く、また新しい線維芽細胞の生成にも重要な役割を果たす可能性も指摘されています。

     

    しかし、それは、直接的な働きではなく、間接的な補助程度の
    ものと考えられているのだそうです。

     

    実は、若き日の私は、「ジンク(亜鉛)フィンガー型転写因子」の異常が、自己免疫疾患の発症要因値なるのではないか・・・と考え、基礎実験を重ねていた「転写因子」のひとつなのですね。

     

    自己免疫疾患のTリンパ球などから「ジンク(亜鉛)フィンガー型転写因子」のタンパクを抽出し、タンパクを解析しようとしていたのですが

    ・・・途中で諦めた(あきらめた)経緯(けいい)があります。

     

    そのまま、時を経て(へて)、再び、出会ったわけですね。

     

    「今度こそは」・・・と私自身が、思えるなら良かったとは思いますが・・・残念ながら、新しい研究手法は思いつきません。

     

    ならば、『線香花火筒井時正』さんのホームページの言葉にあったように・・・の線香花火を残しておき、将来、誰かが解決する日を楽しみにするのもよいかな〜なんて、思っています爆  笑

     

    今回は、話が「亜鉛(Zn)」と「老化した線維芽細胞」をいったり、きたりで申し訳ありませんでした。

     

    今回も最後までお付き合いいただきまして

    誠にありがとうございましたお願い

     

    参考)
    1)Int Wound J. 2005  Int Wound J. 2005 Dec.

    Wound chronicity and fibroblastsenescence--implications for treatment.
    Keith G Harding ら

    2)J Wound Care. 2006
    The potential effect of fibroblastsenescence on wound healing and the chronic wound environment.
    Henderson EAら

     

    3) Gerontology. 2015                                        
     Role of Age-Associated Alternations of the Dermal Extracellular Matrix Microenviron ment in Human Skin Aging:A Mini-Review
    Taihao Quan ら

     

    4)Bioact Mater. 2023
    Sustained release of magnesium and zinc ions synergistically accelerates wound healing
    Fan Yang ら

     

    5)Biological Trace Element Research, May1,1933
    Effect of zinc supplementation on resistance of cultured human skin fibroblasts toward oxidant stress
    M. Richardら
     

     

    (レインボーブリッジと東京タワー)

    (筆者撮影)

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