こんにちは、内科医 ひとちゃんです![]()
いよいよ、梅雨(つゆ)の時期に入りそうですね。
あと3日もしますと、暦の七十二候では「腐草為蛍(くされたるくさほたるとなる)」となります。
梅雨の時期に腐った草が蒸れて(むれて)、「蛍(ほたる)」になると考えられていたことに由来するようです。
「蛍(ほたる)」が、光るのは・・・「ルシフェリン」という発光物質と「ルシフェラーゼ」とが混ざり、そこにホタルが吸った「酸素」が結びついて起きる化学反応が起こるからなのだとか。
皆さまの体調は、いかがでしょうか?
(AIで画像を作成)
前回のブログは、「ミトコンドリア」が産生する「ATP」の量が減少することで「老化」が進行するという説を「ミトコンドリア老化仮説」について、お話をさせていただいたわけです。
その中で「ミトコンドリア」の機能を改善することができれば、「老化細胞」の一部は、正常細胞に近いものとなり、少なくとも「老化細胞」が分泌する炎症物質は「細胞老化随伴(ずいはん)分泌表現型(Senescence-Associated Secretory Phenotype:SASP)」を改善できる可能性があるとお話をさせていただきました。
そして、この「ミトコンドリア」の機能を改善させる可能性のあるものとして・・・NMN、NAD+、5-ALAの投与は、それぞれ異なる作用機序を通じてミトコンドリア機能を改善し、老化関連障害を緩和(かんわ)する可能性を持つ可能性があるとお話をさせていただいたのだと思います。
そこで、今回は「5-ALA」の持つ作用機序についての話題にしたいと思います。
「5-ALA」の正式な名称は「5-アミノレブリン酸(5-Aminolevulinic acid, 5-ALA)」というものになります。
「5-アミノレブリン酸(5-ALA)」は、生体内で自然に産生される非タンパク質性アミノ酸であり、ヘム合成経路の最初の前駆体として機能します。
この「5-アミノレブリン酸(5-ALA)」は、「ミトコンドリア」での
エネルギー産生に重要な役割を担い、ヘムという物質のもととなるアミノ酸です。ヘムは、酸素を運ぶヘモグロビンや、エネルギーを生成する呼吸鎖複合体など、生命活動の鍵となると考えられている物質となると考えられています。
「5-アミノレブリン酸(5-ALA)」は、医療や健康分野で多様な用途が研究されているアミノ酸の一種です。近年、や疲労感の軽減、酸化ストレスの改善など、さまざまな効果が注目されています。
その安全性については、「5-ALA」は生体内で自然に産生される物質のため、比較的安全性が高いとされていますが、「5-ALA」の投与で光に対する感受性が高まるため、「5-ALA」の投与後は、強い光を避ける必要があるとされています。
実際に重大な副採用は認められていないとされているものの、光過敏症(4.6%)、肝機能障害(1.1%)の副作用が報告されています(参考1)
(AIで画像を作成)
「5-アミノレブリン酸(5-ALA)」の健康に対する影響としては、以下のようなことが報告されています。
1.慢性疲労・気分改善
1)疲労・無気力、抑うつ、全体的な気分障害スコアも改善する(参考2)
2)5-ALAの8週間摂取で、慢性的な身体的疲労感や怒り・敵意の感情が有意に軽減する(参考2)
2.LOH(加齢男性性腺機能低下症)症状の改善
5-ALAの8週間摂取で、LOH症状の総合スコアがプラセボより有意に改善したという報告がある(参考3)
LOH症状(Late-onset hypogonadism)は、加齢男性性腺機能低下症候群とも呼ばれ、中高年男性に見られるテストステロン(男性ホルモン)の低下によって引き起こされる症状群です。
- 体脂肪の増加、特に内臓脂肪の蓄積
- 疲労感や体力の低下
- 性機能の低下(性欲減退など)
- 抑うつ気分や気分の落ち込み
- イライラしやすさ
- 集中力や記憶力の低下
- 意欲の減退
などが起きる可能性があるわけですが、このような尿状に対して、「5-アミノレブリン酸(5-ALA)」が有効なのではないか・・・というわけですね。
また、健常者の激しい有酸素運動時に「5-アミノレブリン酸(5-ALA)」を摂取しますと・・・「抗酸化能」が有意に改善するということも報告されています(参考4)
また、「5-ALA(5-アミノレブリン酸)」の投与は、「免疫細胞の活性化」と「ミトコンドリアのATP産生」に明確な影響を与えることが示されています。
実際に「5-ALA(5-アミノレブリン酸)」と「鉄剤」を併用することにより、「腫瘍浸潤T細胞の活性化」細胞傷害性分子(グランザイムB)、サイトカイン(IL-2、IFN-γ)産生が増加することが報告されています(参考5)
と聞きますと・・・癌の治療に応用できるのではないかと思ったりするのですが・・・実際に細胞障害性T細胞(CTL)を活性化することも報告されています。
しかしながら、「5-ALA(5-アミノレブリン酸)」は、マクロファージの抗炎症型(M2)への分化を促進し、炎症抑制や組織修復に関与することが報告されているのですね(参考6)
この話題は、以前のブログ内でもお話をしたのですが・・・臓器癌(固形癌)の周囲には、「癌関連線維芽細胞(CAF)」というものが存在し、「腫瘍微小環境(TME)」というものが形成されていましたね。
「腫瘍微小環境」とは、腫瘍またはがん細胞を取り囲む、免疫細胞、血管系細胞、線維芽細胞などの様々な細胞が作り出す複雑な環境を指します。
この環境は、免疫抑制性の性質を持つばかりでなく、抗がん剤の効果の減弱、そして、癌の増殖や遠隔転移などを促進するがありましたね。
この「腫瘍微小環境」の性質を助けているのが、「M2型マクロファージ」でしてた。
繰り返しになりますが、少しだけ復習しておきますと・・・
多数の「マクロファージ」が、癌細胞周囲に存在しています。このようなマクロファージ は「腫瘍随伴マクロファージ(Tumor-associated macrophage: TAM)」と呼ばれています、
通常の場合、免疫細胞の「マクロファージ」は、 通常の場合、その活性化の様式から、M1型とM2 型に分けられます。
「M1型マクロファージ」は、持続的または過剰な活性化を起こしており、癌などの組織に損傷を起こせる可能性は高いわけです。
しかしながら、「腫瘍微小環境」内にある「腫瘍随伴マクロファージ( TAM)」は、「M2型マクロファージ」になっていることが報告されているわけですね。
この「M2型マクロファージ」、宿主の免疫応答を抑制、および組織リモデリングの促進、組織内の代謝と内分泌シグナル伝達を改善する増殖因子および、IL-10, TGF-β, Prostaglandin E2などの「抗炎症性因 子」の産生や「制御性T細胞」の浸潤を促す ことで
「抗腫瘍免疫」、つまり、癌を排除しようとする免疫を抑制したり、種々 の血管新生因子の産生によって「新生血管」を誘導することで、
がん細胞の増 殖に都合の良い微小環境を作ることに役立っているのですね。
癌の治療では、「腫瘍微小環境」内にある「腫瘍随伴マクロファージ( TAM)」を免疫抑制型「M2型マクロファージ」から活性型の「M1型マクロファージ」に変えていくことが重要であるわけですので・・・
「5-ALA(5-アミノレブリン酸)」は、マクロファージの抗炎症型(M2)への分化を促進する作用のあることは、癌の治療を困難にする可能性があるということになりますね。
ちょっと、話が脱線(だっせん)してしまいましたが・・・
「5-ALA(5-アミノレブリン酸)」は、加齢に伴うミトコンドリア機能低下を回復させ、ATP産生やエネルギー代謝あいしゃを向上させることは示されています。
加齢マウスで、5-ALAを経口投与すると、ミトコンドリア機能の低下(ATP産生低下、酵素活性低下)が回復し、インスリン抵抗性や耐糖能異常も改善されました。
6週間の5-ALA投与でミトコンドリア機能が十分に回復し、効果は投与中のみ持続したことが報告されています(参考7)
なかなか、「5-ALA(5-アミノレブリン酸)」には、さまざまな作用があるのですね。
素敵な1週間をお過ごしください![]()
それでは、また![]()
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<ブログ後記>6月10日
雨が止んで(やんで)おり、開けた窓からは穏やかな(おだやかな)風が入ってきます、
今宵(こよい)は、とても良いニュースを見つけ、しばらくは関連する文献などを眺めて(ながめて)いました。
そのニュースは共「共同通信」のニュースで、大阪大学の研究チームが「がん関連線維芽細胞(CAF)」のみに働きかけ、免疫抑制
物質を制御することに成功したというものですね。
実際にマウスの実験では、癌腫瘤の縮小が認められたそうで、癌に対する完全な治療の実施が可能になる・・・ことが期待できるとその記事の中では、述べられていました。
「がん関連線維芽細胞(CAF)」が制御(せいぎょ)できれば、抗がん剤の投与量も減らすことができますし、免疫細胞が接触し、癌細胞を破壊することもできますね。
また、癌細胞と「がん関連線維芽細胞(CAF)」で構成される「癌微小環境」では、マクロファージが、免疫抑制型の「M2型」から、
活性型の「M1型」に変化するという論文も多くありますので、癌細胞を免疫細胞が認識し、攻撃しやすくなる可能性が高いと考えられます。
マクロファージが、免疫抑制型の「M2型」のままでは、免疫細胞が
癌組織の前を素通り(すどうり)して、癌細胞を認識できないケース
もあると報告されていましたので、「癌微小環境」では、マクロファージを活性型の「M1型」に変化させることは、「免疫細胞」の併用することで、治療効果を格段に(かくだんに)向上させる可能性も出てくることになります。
以前にブログ内で、糖尿病に対する薬剤である「メトホルミン」が、「癌微小環境「内のマクロファージを免疫抑制型のM2型から、M1型に変える働きがあるというお話をしたわけですが・・・
それよりも有効な方法になることが期待できそうですね。
なので・・・本文内で「5-ALA」では、「癌微小環境」内のマクロファージが免疫抑制型のM2型になってしまう可能性があるとお話したのですが、将来、「癌関連線維芽細胞」自体をコントロールできるようになりますと、まったく話が変わってくる可能性がありますね。
話を戻しまして・・・ところで、「ニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)」は、体内で「NAD+(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)」に変化するわけですね。
この「NAD+」はエネルギー代謝や老化、細胞修復など多くの生理機能に関与するという重要な役割はあるのですが・・・
加齢とともに「NAD+」の量が低下することが知られています。
「NAD+」の量が減れば(へれば)・・・7つある「サーチュイン遺伝子(長寿遺伝子)」の発現量が低下し、「ミトコンドリア」でのATPの産生量も低下してしまいますよね。
そして、「NMN」を補給しますと、体内で速やかに「NAD+」へと変換され、NAD+プール(貯留量)が、増加することが分かっているのですね(参考8)。
では、加齢により「ミトコンドリア」からのATP産生も低下している状態では「NMN」や「NAD+」の投与は有効なのでしょうか。
「NAD+」やその前駆体である「NMN」の投与は、加齢などで機能が低下した「ミトコンドリア」であっても、再度、ATP産生を回復させることが報告されています。
このようなメカニズムは、次のように報告されています。
「NAD+」や「NMN」は、加齢などで機能が低下した「ミトコンドリア」であっても、「NAD+」のプール(貯蔵)を増やし、「サーチュイン3遺伝子(SIRT3)」などのNAD+依存性酵素を活性化することで
「ミトコンドリア」のタンパク質の脱アセチル化や抗酸化酵素活性化、ATP産生促進などをもたらすことで、ATP産生を回復させる
ことが報告されています(参考9)。
とくに「サーチュイン3遺伝子(SIRT3)」などのNAD+依存性酵素を活性化することは、「ミトコンドリア」の機能を向上させ、ATP産生が増加することが報告されています。
NAD+依存性酵素とは、NAD+が存在することで、はじめて活性化されるという意味ですね。
この「サーチュイン3(SIRT3)依存性」のメカニズムは、特筆(とくひつ)すべきものであると言えるかもしれません。
「サーチュイン3(SIRT3)」はNAD+の存在下にはたらく、脱アセチル化作用があり、「ミトコンドリア」内で代謝、酸化ストレス、細胞生存に関与する多数のタンパク質の機能を調節していると考えられています。
具体的には、(ちょっと細かい話になりますが・・・)
「サーチュイン3(SIRT3)」は、「ATP5O」と「ATP5A1」という2つの「ミトコンドリア」のATP合成酵素を活性化することで、エネルギー産生を増加させると考えられています。
また、「サーチュイン3(SIRT3)」は、SOD2のK68アセチル化を除去してSOD2を活性化し、ミトコンドリアの「活性酸素」を軽減することが知られています(参考10)
「ミトコンドリア」は、エネルギーであるATPを産生すると同時に「活性酸素」などを産生するために・・・エネルギーを産生しながらも、自分自身の「ミトコンドリアDNA」が壊されていく(こわされていく)という悲しい運命がありましたよね。
「サーチュイン3(SIRT3)」は、この「活性酸素」の影響を減らす力があるというこよになります。
また、「NAD+」は、ミトコンドリアに対しての直接的な作用もあることが知られています。
それは、老化により機能低下のある「ミトコンドリア」の「電子伝達系」という部分に対し、この能力を改善する作用があることも確認されています。
なかなか、難しい話になるのは承知(しょうち)の上で、少しまとめてみますと・・・
「NMN」や「NAD+」が、「老化したミトコンドリア」のATP産生を増加できるわけですが、
これは、「サーチュイン3(SIRT3)」遺伝子の活性化による酵素調節と、「NAD+」が「ミトコンドリア」の電子伝達系という部分に
直接働きかけて、これを改善するという2つの「複合的なメカニズム」が働く(はたらく)ためであるということになりますね。
では、本文内でご紹介した「5-ALA」と「NAD+」のATP産生メカニズムの違いとは、どのようなものなのでしょうか?
作用機序の根本的な違いを簡単に言いますと・・・
• 5-ALA: (構造的改善 )- 電子伝達系の構成要素を増やす
• NAD+: 機能的改善 - 既存の酵素系の活性を高める
「5-ALAは」は「量的改善」を、そして、「NAD+」は「質的改善」をもたらす異なるアプローチで、ATP産生を向上させると言えるかもしれませんね。
何が言いたいかといいますと・・・
「5-ALAは」と「NAD+」は、作用機序が根本的に異なるため、併用(へいよう)することで、相乗効果(そうじょうこうか)が期待できる可能性があるということになりますね。
なかなか、今回の話題はヘビーな感じでした![]()
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今回も最後までお付き合いいただきまして
誠にありがとうございました![]()
参考)
1)Eur J Pharm Sci. 2023 Sep 1:188:106493.
Microneedle-assisted transdermal delivery of perfluorotripropylamine-based oxygenated emulsion gel loaded with 5-aminolevulinic acid for enhanced photodynamic therapy of cutaneous squamous cell carcinoma
Lialiang Zhangら
2)Sci Rep. 2020 Sep 29;10(1):16004.
Reduction of fatigue and anger-hostility by the oral administration of 5-aminolevulinic acid phosphate: a randomized, double-blind, placebo-controlled, parallel study
3) J Neurosurg. 2023 Oct 13;140(4):987-1000.
Use of 5-ALA fluorescence-guided surgery versus white-light conventional microsurgery for the resection of newly diagnosed glioblastomas (RESECT study): a French multicenter randomized phase III study
Teiebaud Picartら
4) Int. Mol Sci. 2024 Jan 12;25(2):988.
The Impact of 5-Aminolevulinic Acid Supplementation on Redox Balance and Aerobic Capacity
Norio Sagaら
5)Vet Immunol Immunopathol. 2022 Sep:251:110473.
The effect of 5-aminolevulinic acid on canine peripheral blood mononuclear cells
Masaya Igaseら
6)Theranostics. 2023 Aug 28;13(14):4802-4820. Guanghui Jin
5-aminolevulinate and CHIL3/CHI3L1 treatment amid ischemia aids liver metabolism and reduces ischemia-reperfusion injury
Guanghui Jinら
7)PLos One. 2018 Jan 24;13(1):e0189593.
5-aminolevulinic acid (ALA) deficiency causes impaired glucose tolerance and insulin resistance coincident with an attenuation of mitochondrial function in aged mice
Shinichi Saitohら
8)Cell Metab. 2011 Oct 5;14(4):528-36.
Nicotinamide mononucleotide, a key NAD(+) intermediate, treats the pathophysiology of diet- and age-induced diabetes in mice
Jun Yoshino ら
9) Exp Neurol. 2020 Mar:325:113144..
NAD+ precursor modulates post-ischemic mitochondrial fragmentation and reactive oxygen species generation via SIRT3 dependent mechanisms
Nina Klimova ら
10) Front Cell Neurosci. 2024.
The role of SIRT3 in homeostasis and cellular health
Dennison Trinh et al.
(休日の朝;丸の内仲通りの風景)
(筆者撮影)
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理事長・院長
小笠原 均 (Hitoshi Ogasawara)
医学博士, 内科医
(総合内科、リウマチ専門医)
(新潟大医学部卒)
(筆者作成)
(Sptifyのポドキャスト:文章作成後、Notebook KLMにて、AIによる音声を作成:テスト配信)
(
筆者がセレクトしたピアノJazzの曲)
<今週、なんとなく聞いてみたい曲>
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<JTKクリニックからのお知らせ>
◯外来診療は予約制をとり、待ち時間が生じないようにしています。
◯ ダイエット漢方製剤は、オンライン診療でも可能です。
◯ 線維筋痛症に対するノイロトロピン等の点滴療法、トリガーポイント注射を行なっております。(セカンドオピニオン診療も可)
○自分の皮下脂肪から組織を採取し、「間葉系幹細胞」を培養して、自分自身の組織内に投与する「幹細胞治療」を開始しました。
<JTKクリニック 所在地>
〒102-0083
東京都千代田区麹町4-1-5麴町志村ビル2階
電話 03-6261-6386
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