こんにちは、内科医 ひとちゃんです![]()
5月の連休も終わり、いつもどおりの日常が戻っています。
なかなか、調子が戻らないという方も多いかもしれませんね。
暦の七十二候は「蚯蚓出(みみずいづる)」となっています。
この「みみず」とは、いわゆる「ミミズ Earthworm」ですね。
「進化論」の提唱者である「チャールズ・ダーウィン」は
『種の起源』の出版後もミミズの研究を続け、約40年間にわたってその習性を観察・実験したことが知られています、
そのダーウィンは、次のような言葉を残しています。
"It may be doubted whether there are many other animals which have played so important a part in the history of the world, as have these lowly organized creatures."
「これほど下等に組織された生き物でありながら、世界の歴史においてこれほど重要な役割を果たしてきた動物が他にいるかどうか、疑わしいほどである」
ダーウィンは、この「遅くて目立たない行動の積み重ね」が長い年月を経て地球を劇的に変えるというプロセスに、自身の「漸進的(ざんしんてき)な進化論」との共通性を見出していたと言われています。
ミミズは、土壌を肥沃(ひよく)にする作用を持つことは有名ですが、「ルンブロキナーゼ」と総称される一群の酵素を持つことでも知られています。
この「ルンブロキナーゼ」は、血栓を溶解したり、血小板凝集を抑制、また、血液粘度の低下ことが報告されています。
ミミズを乾燥させ、粉砕したものでも、この「ルンブロキナーゼ」は一般的なタンパク質酵素と比較して極めて頑健(robust)な性質を持つことが知られています。
つまり、ミミズを乾燥させて、粉末化したものには、「ルンブロキナーゼ」の性質は残っており、血栓の形成を抑制する効果を持つことになりますね。
皆さまの体調は、いかがでしょうか?
今回は、ヒトの免疫細胞のひとつである「NK細胞」が、「老化細胞」を本当に除去できるのか?・・・というお話をしてみたいと思います。
まず。「細胞老化」について、復習してみたいと思います。
「細胞老化(cellular senescence)」とは、DNA損傷やテロメア短縮などのストレスに応答した、不可逆的な細胞周期停止状態を指します。
これは 「p16INK4a」 や 「p21CIP1 」の発現、「SA-β-gal活性」、そして炎症性因子を放出する「SASP(senescence-associated secretory phenotype)」を特徴とするものであるとされています(参考1,2) 。
「加齢」に伴いこれらの細胞は各臓器に蓄積し、慢性炎症(inflammaging)を介してフレイルや動脈硬化、肺線維症などの加齢関連疾患を発症させるわけです(参考3,4) 。
このような「老化細胞」を除去することが、かつて、INK-ATTACマウスを用いた研究で、老化細胞の除去が『健康寿命』を延長することが報告されています (参考5)、
この時点から、老化細胞にアポトーシス(プログラムされた細胞死)を誘導する「セノリティクス(Senolytics)」という概念が出てきたと言えるかもしれませんね(参考6)。
この「老化細胞」には、細胞表面に「NKG2D活性化リガンド」(MICA/B、ULBPs)が誘導されており 、この分子を認識した
「NK細胞」により「老化細胞」はアポトーシスを起こすことになります。つまり破壊されるわけですね。
もう少し詳しくお話をしますと・・・「NK細胞」は、活性化受容体と抑制受容体の統合シグナルに基づき、パーフォリン/グランザイムを介して老化細胞をアポトーシスへと導くということになります(参考7) 。
この「NK細胞」の投与は、単に「老化細胞」にアポトーシスを起こさせて、これを消失させるだけではなく、以下のような作用を起こすことが知られています。
1)組織線維化の抑制
肝線維化プロセス(肝硬変など)において、老化した星細胞はNK細胞によりクリアランスされ、修復が促進されます(参考8) 。
2)腫瘍抑制
老化した腫瘍細胞はCCL2などのSASP因子を介してNK細胞をリクルートし(呼び寄せて)、NKG2D依存的に排除されます (参考9,10) 。
3)個体老化の制御:
パーフォリン欠損(Prf1−/−)マウスでは老化細胞の蓄積と慢性炎症が加速し、寿命が短縮することがわかっています(参考11,12) 。
NK細胞が存在しても、「老化細胞」の細胞膜に穴をあける「パーフォリン」がない場合には、「老化細胞」がアポトーシスが起こせませんので、「老化細胞」が蓄積し、寿命は短縮してしまうわけですね。
さらに言えば単に「NK細胞」を培養増殖させ、それを投与するだけでは、「パーフォリン」があまり出ない状態(=活性が低い状態)のNK細胞が混在してしまうために期待したほどには「老化細胞」のアポトーシスは起こらない・・・という可能性が出てくるわけですね。
これには「フローサイトメトリー」をいう機器を用いて、活性が高い
NK細胞のみを選択して利用する必要があります。
「NK細胞」は、その数ではなく、「活性」が重要である・・・と強調されるのは、上記のような理由があるからなのですね。
JTKクリニックでは、この事実を重要視して、GCリフォテック社製の培養法で、かつ、フローサイトメトリー法を用いて、活性化した「NK細胞」のみを使用しています。
このように「NK細胞」は、組織の恒常性(こうじょうせい)を維持するための生理的な「掃除屋」として機能しているのですね。
(参考13) 。
素敵な1週間をお過ごしください![]()
それでは、また![]()
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<ブログ後記>5月12日
今回は、「NK(ナチュラル キラー)細胞で「老化細胞」を減らすことができるのか?・・・というお話をさせていただきました。
「NK細胞」は、生まれつき備わった免疫(自然免疫)を担うリンパ球で、「ウイルス感染細胞」や「がん細胞」を素早く殺傷する力を持っています(参考14,15)。
そして、本文内でもご紹介をしたように「NK細胞」は、「老化細胞」を監視し、排除する力も持っています(参考16)。
その排除の方法としては、本文内でもお話をしましたが、多くの老化細胞はストレスで、「NKG2Dリガンド」を発現し、これを認識した
「NK細胞」が活性化されます(参考17)。
この「NKG2Dリガンド」は、細胞の「ストレス」を免疫系に知らせる目印として働き、癌や感染などでも発現することが知られていますので、理論的には「癌細胞」を破壊することが可能であるということになりますね。
この「NKG2Dリガンド」は通常の健康細胞では低発現なのですが、DNA損傷・過増殖・低酸素・感染・酸化ストレス などで誘導されることが分かっています(参考18)。
それでは、「老化細胞」をどこまで除去すればよいのか?・・・という問題になりますが・・・
「老化細胞」の蓄積は多くの老年病や機能低下に因果的に関わり、マウスでは遺伝学的・薬理学的にこれらを減らすと、心臓・筋肉・認知機能など広範な改善が得られています。
現時点の前臨床データは「老化細胞負荷の減少は有益」と一貫していますが、「どこまで減らせばよいか」「どのサブタイプは残すべきか」という問いの正確な答えは、まだ出ていません。ヒトでの長期安全性データも不足しているというのが現状であると言えます(参考19)
その理由は、老化細胞は単なる「悪役」ではなく、生命維持に必須の役割も担って(になって)いるからということになりますね。
多くの動物実験およびヒト臨床前研究より、「慢性的蓄積した老化細胞」の選択的除去は、加齢関連疾患予防・健康寿命延伸に有望と考えられています。
しかしながら、一方で「急激または広範囲な排除」は本来必要な組織修復・恒常性維持機能まで損ねてしまうかもしてないことが明らかになっています(参考20)。
特定臓器(肝類洞内皮細胞/膵β細胞など)では置換不能な老化細胞集団も存在し、その消失後には線維化促進や代謝障害など深刻な副作用も観察されています(参考21)。
また、ちょっと想像するのが難しいのですが・・・免疫監視系との協調バランスも重要であり、高齢個体では免疫不全→蓄積→病態悪化という悪循環も示唆されています(参考22)
以上のように考えると・・・真の「健康長寿」を実現するためには「老化細胞」をすべてなくすというよりは、「有益な老化細胞」を温存しつつ「有害な老化細胞」のみを標的とするのが理想
であるわけですが、現時点では乗り越えるべき課題が残っています。
老化細胞にアポトーシスを起こさせる際、がん免疫で言うのドレス現象は、少なくとも現在の文献からは示されていません。
としますと、投与したNK細胞と同等か。それ以下の数の「老化細胞」氏はアポトーシスを生じないと言えることから、決まった数の「NK細胞」を検査データに異常ないことを確認しながら、一定期間ごと
に投与する方法は、現時点で充分に選択枝のひとつとなり得るものであると考えられますね。
1億個の老化細胞が半年に1回消失するのと、しないのでは「将来の健康寿命にどのような影響を与えるのか?・・・大変、興味深いところです。できるだけ理論的にその説明ができる日が楽しみです。
まだまだ、この問題は深く追及をしていきたいと思っています。
今回も最後までお付き合いいただきまして
誠にありがとうございました![]()
参考)
1)Nature. 2016 Feb 11;530(7589):184-9.
Naturally occurring p16(Ink4a)-positive cells shorten healthy lifespan
Darren J Bakerら
2)Physiol Rev. 2019 Apr 1;99(2):1047-1078.
Cellular Senescence: Aging, Cancer, and Injury
Arianna Calcinottoら
3)Nat Med. 2015 Dec;21(12):1424-35.
Cellular senescence in aging and age-related disease: from mechanisms to therapy
Bennett G Childsら
4)Nature. 2014 May 22;509(7501):439-46.
The role of senescent cells in ageing
Jan M yan Dwursen
5)Nature. 2016 Feb 11;530(7589):184-9
Naturally occurring p16(Ink4a)-positive cells shorten healthy lifespanDarren J Bakerら
6)Nat Med. 2022 Aug;28(8):1556-1568.
Cellular senescence and senolytics: the path to the clinic
Selim Chaibら
7)Nat Rev Immunol. 2015 Jun;15(6):388-400.
Perforin and granzymes: function, dysfunction and human pathology
llia Voskobolinkら
8)Cell. 2008 Aug 22;134(4):657-67.
Senescence of activated stellate cells limits liver fibrosis
yalery Keizhannoyskyら
9)J Exp Med. 2013 Sep 23;210(10):2057-69.
p53-dependent chemokine production by senescent tumor cells supports NKG2D-dependent tumor elimination by natural killer cells
Alexandre Lannelloら
10)Science. 2018 Dec 21;362(6421):1416-1422.
NK cell-mediated cytotoxicity contributes to tumor control by a cytostatic drug combination
Marcus Ruscettiら
11)Nat Commun. 2018 Dec 21;9(1):5435.
Impaired immune surveillance accelerates accumulation of senescent cells and aging
Yossi Ovadvaら
12)J Immunol. 1994 Aug 15;153(4):1687-96.
A novel population of expanded human CD3+CD56+ cells derived from T cells with potent in vivo antitumor activity in mice with severe combined immunodeficiency
PH Luら
13)J Leukoc Biol. 2019 Jun;105(6):1275-1283.
Senescent cells: Living or dying is a matter of NK cells
Fabrizio Autonangeliら
14)J Allergy Clin Immunol . 2023 Feb;151(2):371-385.
Human natural killer cells: Form, function, and development
Emily M Maceら
15)J Hematol Oncol 2021 Jan 6;14(1):7.
NK cell-based cancer immunotherapy: from basic biology to clinical developmen
Sizhe Liuら
16)Cells . 2022 Mar 17;11(6):1017.
Aging of the Immune System: Focus on Natural Killer Cells Phenotype and Functions
Ashley Brauningら
17)Front Cell Dev Biol . 2025 Jun 30:13:1597230.
Mechanisms of natural killer cell-mediated clearance of senescent renal tubular epithelial cells
Nils David Funkら
18)Immunol Rev. 2010 May;235(1):267-85.
Effect of NKG2D ligand expression on host immune responses
Marine Champsaurら
19)
Semin Immunol . 2018 Dec:40:101275.
Senescent cell clearance by the immune system: Emerging therapeutic opportunities
Larissa G P Langhi Prataら
20)Inflamm Regen. 2024 Jun 3;44(1):28.
Role of cellular senescence in inflammation and regeneration
Yuki Saitoら
21)Cell Metab . 2020 Jul 7;32(1):87-99.e6.
Defined p16High Senescent Cell Types Are Indispensable for Mouse Healthspan
Laurent Grosseら
22)Open Biol. 2020 Dec;10(12):200309.
Senescent cells and macrophages: key players for regeneration?
Sonia S Elderら
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理事長・ 院長
小笠原 均 (Hitoshi Ogasawara)
医学博士, 内科医
(総合内科、リウマチ専門医)
(新潟大医学部卒)
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<JTKクリニックからのお知らせ>
◯Zoomを用いた遠隔医療相談を始めました(内科関連疾患)
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