こんにちは、内科医 ひとちゃんですニコニコ

 

5月の連休も終わり、いつもどおりの日常が戻っています。

なかなか、調子が戻らないという方も多いかもしれませんね。

 

暦の七十二候は「蚯蚓出(みみずいづる)」となっています。

この「みみず」とは、いわゆる「ミミズ Earthworm」ですね。

 

「進化論」の提唱者である「チャールズ・ダーウィン」は

『種の起源』の出版後もミミズの研究を続け、約40年間にわたってその習性を観察・実験したことが知られています、

そのダーウィンは、次のような言葉を残しています。

 

"It may be doubted whether there are many other animals which have played so important a part in the history of the world, as have these lowly organized creatures."

 

「これほど下等に組織された生き物でありながら、世界の歴史においてこれほど重要な役割を果たしてきた動物が他にいるかどうか、疑わしいほどである」

 

ダーウィンは、この「遅くて目立たない行動の積み重ね」が長い年月を経て地球を劇的に変えるというプロセスに、自身の「漸進的(ざんしんてき)な進化論」との共通性を見出していたと言われています。

 

ミミズは、土壌を肥沃(ひよく)にする作用を持つことは有名ですが、「ルンブロキナーゼ」と総称される一群の酵素を持つことでも知られています。

この「ルンブロキナーゼ」は、血栓を溶解したり、血小板凝集を抑制、また、血液粘度の低下ことが報告されています。

 

ミミズを乾燥させ、粉砕したものでも、この「ルンブロキナーゼ」は一般的なタンパク質酵素と比較して極めて頑健(robust)な性質を持つことが知られています。

 

つまり、ミミズを乾燥させて、粉末化したものには、「ルンブロキナーゼ」の性質は残っており、血栓の形成を抑制する効果を持つことになりますね。

 

皆さまの体調は、いかがでしょうか?

 

 

(AIで画像を作成)

 

今回は、ヒトの免疫細胞のひとつである「NK細胞」が、「老化細胞」を本当に除去できるのか?・・・というお話をしてみたいと思います。

 

まず。「細胞老化」について、復習してみたいと思います。

 

「細胞老化(cellular senescence)」とは、DNA損傷やテロメア短縮などのストレスに応答した、不可逆的な細胞周期停止状態を指します。

 

これは 「p16INK4a」 や 「p21CIP1 」の発現、「SA-β-gal活性」、そして炎症性因子を放出する「SASP(senescence-associated secretory phenotype)」を特徴とするものであるとされています(参考1,2) 。


「加齢」に伴いこれらの細胞は各臓器に蓄積し、慢性炎症(inflammaging)を介してフレイルや動脈硬化、肺線維症などの加齢関連疾患を発症させるわけです(参考3,4) 。
 

このような「老化細胞」を除去することが、かつて、INK-ATTACマウスを用いた研究で、老化細胞の除去が『健康寿命』を延長することが報告されています (参考5)、

 

この時点から、老化細胞にアポトーシス(プログラムされた細胞死)を誘導する「セノリティクス(Senolytics)」という概念が出てきたと言えるかもしれませんね(参考6)。

 

この「老化細胞」には、細胞表面に「NKG2D活性化リガンド」(MICA/B、ULBPs)が誘導されており 、この分子を認識した

「NK細胞」により「老化細胞」はアポトーシスを起こすことになります。つまり破壊されるわけですね。

 

(AIを用いて画像を作成) 

 

もう少し詳しくお話をしますと・・・「NK細胞」は、活性化受容体と抑制受容体の統合シグナルに基づき、パーフォリン/グランザイムを介して老化細胞をアポトーシスへと導くということになります(参考7) 。

 

この「NK細胞」の投与は、単に「老化細胞」にアポトーシスを起こさせて、これを消失させるだけではなく、以下のような作用を起こすことが知られています。

 

1)組織線維化の抑制

 肝線維化プロセス(肝硬変など)において、老化した星細胞はNK細胞によりクリアランスされ、修復が促進されます(参考8) 。

 

2)腫瘍抑制

老化した腫瘍細胞はCCL2などのSASP因子を介してNK細胞をリクルートし(呼び寄せて)、NKG2D依存的に排除されます (参考9,10) 。

 

3)個体老化の制御:

パーフォリン欠損(Prf1−/−)マウスでは老化細胞の蓄積と慢性炎症が加速し、寿命が短縮することがわかっています(参考11,12) 。

                                            

NK細胞が存在しても、「老化細胞」の細胞膜に穴をあける「パーフォリン」がない場合には、「老化細胞」がアポトーシスが起こせませんので、「老化細胞」が蓄積し、寿命は短縮してしまうわけですね。

 

さらに言えば単に「NK細胞」を培養増殖させ、それを投与するだけでは、「パーフォリン」があまり出ない状態(=活性が低い状態)のNK細胞が混在してしまうために期待したほどには「老化細胞」のアポトーシスは起こらない・・・という可能性が出てくるわけですね。

 

これには「フローサイトメトリー」をいう機器を用いて、活性が高い

NK細胞のみを選択して利用する必要があります。

 

「NK細胞」は、その数ではなく、「活性」が重要である・・・と強調されるのは、上記のような理由があるからなのですね。


JTKクリニックでは、この事実を重要視して、GCリフォテック社製の培養法で、かつ、フローサイトメトリー法を用いて、活性化した「NK細胞」のみを使用しています。

 

 

このように「NK細胞」は、組織の恒常性(こうじょうせい)を維持するための生理的な「掃除屋」として機能しているのですね。

(参考13) 。

 

素敵な1週間をお過ごしくださいキラキラ

 

それでは、またバイバイ

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<ブログ後記>5月12日

 

今回は、「NK(ナチュラル キラー)細胞で「老化細胞」を減らすことができるのか?・・・というお話をさせていただきました。

「NK細胞」は、生まれつき備わった免疫(自然免疫)を担うリンパ球で、「ウイルス感染細胞」や「がん細胞」を素早く殺傷する力を持っています(参考14,15)。

そして、本文内でもご紹介をしたように「NK細胞」は、「老化細胞」を監視し、排除する力も持っています(参考16)。

その排除の方法としては、本文内でもお話をしましたが、多くの老化細胞はストレスで、「NKG2Dリガンド」を発現し、これを認識した

「NK細胞」が活性化されます(参考17)。

この「NKG2Dリガンド」は、細胞の「ストレス」を免疫系に知らせる目印として働き、癌や感染などでも発現することが知られていますので、理論的には「癌細胞」を破壊することが可能であるということになりますね。

この「NKG2Dリガンド」は通常の健康細胞では低発現なのですが、DNA損傷・過増殖・低酸素・感染・酸化ストレス などで誘導されることが分かっています(参考18)。

それでは、「老化細胞」をどこまで除去すればよいのか?・・・という問題になりますが・・・

「老化細胞」の蓄積は多くの老年病や機能低下に因果的に関わり、マウスでは遺伝学的・薬理学的にこれらを減らすと、心臓・筋肉・認知機能など広範な改善が得られています。
 
現時点の前臨床データは「老化細胞負荷の減少は有益」と一貫していますが、「どこまで減らせばよいか」「どのサブタイプは残すべきか」という問いの正確な答えは、まだ出ていません。ヒトでの長期安全性データも不足しているというのが現状であると言えます(参考19)

その理由は、老化細胞は単なる「悪役」ではなく、生命維持に必須の役割も担って(になって)いるからということになりますね。

多くの動物実験およびヒト臨床前研究より、「慢性的蓄積した老化細胞」の選択的除去は、加齢関連疾患予防・健康寿命延伸に有望と考えられています。

しかしながら、一方で「急激または広範囲な排除」は本来必要な組織修復・恒常性維持機能まで損ねてしまうかもしてないことが明らかになっています(参考20)。

特定臓器(肝類洞内皮細胞/膵β細胞など)では置換不能な老化細胞集団も存在し、その消失後には線維化促進や代謝障害など深刻な副作用も観察されています(参考21)。

また、ちょっと想像するのが難しいのですが・・・免疫監視系との協調バランスも重要であり、高齢個体では免疫不全→蓄積→病態悪化という悪循環も示唆されています(参考22)

以上のように考えると・・・真の「健康長寿」を実現するためには「老化細胞」をすべてなくすというよりは、「有益な老化細胞」を温存しつつ「有害な老化細胞」のみを標的とするのが理想
であるわけですが、現時点では乗り越えるべき課題が残っています。

老化細胞にアポトーシスを起こさせる際、がん免疫で言うのドレス現象は、少なくとも現在の文献からは示されていません。

 

としますと、投与したNK細胞と同等か。それ以下の数の「老化細胞」氏はアポトーシスを生じないと言えることから、決まった数の「NK細胞」を検査データに異常ないことを確認しながら、一定期間ごと

に投与する方法は、現時点で充分に選択枝のひとつとなり得るものであると考えられますね。

 

1億個の老化細胞が半年に1回消失するのと、しないのでは「将来の健康寿命にどのような影響を与えるのか?・・・大変、興味深いところです。できるだけ理論的にその説明ができる日が楽しみです。

 

まだまだ、この問題は深く追及をしていきたいと思っています。

 

今回も最後までお付き合いいただきまして

誠にありがとうございましたお願い

 

参考)

1)Nature. 2016 Feb 11;530(7589):184-9. 

Naturally occurring p16(Ink4a)-positive cells shorten healthy lifespan

Darren J Bakerら

 

2)Physiol Rev. 2019 Apr 1;99(2):1047-1078.

Cellular Senescence: Aging, Cancer, and Injury

Arianna Calcinottoら

 

3)Nat Med. 2015 Dec;21(12):1424-35. 

Cellular senescence in aging and age-related disease: from mechanisms to therapy

 Bennett G Childsら

 

4)Nature. 2014 May 22;509(7501):439-46.

The role of senescent cells in ageing

Jan M yan Dwursen

 

5)Nature. 2016 Feb 11;530(7589):184-9

Naturally occurring p16(Ink4a)-positive cells shorten healthy lifespanDarren J Bakerら

 

6)Nat Med. 2022 Aug;28(8):1556-1568.

Cellular senescence and senolytics: the path to the clinic

Selim Chaibら

 

7)Nat Rev Immunol. 2015 Jun;15(6):388-400.

Perforin and granzymes: function, dysfunction and human pathology

llia Voskobolinkら

 

8)Cell. 2008 Aug 22;134(4):657-67.

Senescence of activated stellate cells limits liver fibrosis

yalery Keizhannoyskyら

 

9)J Exp Med. 2013 Sep 23;210(10):2057-69. 

p53-dependent chemokine production by senescent tumor cells supports NKG2D-dependent tumor elimination by natural killer cells

Alexandre Lannelloら

 

10)Science. 2018 Dec 21;362(6421):1416-1422. 

NK cell-mediated cytotoxicity contributes to tumor control by a cytostatic drug combination

 Marcus Ruscettiら

 

11)Nat Commun. 2018 Dec 21;9(1):5435. 

Impaired immune surveillance accelerates accumulation of senescent cells and aging

Yossi Ovadvaら

 

12)J Immunol. 1994 Aug 15;153(4):1687-96.

A novel population of expanded human CD3+CD56+ cells derived from T cells with potent in vivo antitumor activity in mice with severe combined immunodeficiency

PH Luら

 

13)J Leukoc Biol. 2019 Jun;105(6):1275-1283. 

Senescent cells: Living or dying is a matter of NK cells

Fabrizio Autonangeliら

 

14)J Allergy Clin Immunol . 2023 Feb;151(2):371-385.
Human natural killer cells: Form, function, and development
Emily M Maceら

15)J Hematol Oncol 2021 Jan 6;14(1):7.
 NK cell-based cancer immunotherapy: from basic biology to clinical developmen
Sizhe Liuら

16)Cells . 2022 Mar 17;11(6):1017.
Aging of the Immune System: Focus on Natural Killer Cells Phenotype and Functions
Ashley Brauningら

17)Front Cell Dev Biol . 2025 Jun 30:13:1597230.
Mechanisms of natural killer cell-mediated clearance of senescent renal tubular epithelial cells
Nils David Funkら

18)Immunol Rev. 2010 May;235(1):267-85.
Effect of NKG2D ligand expression on host immune responses
Marine Champsaurら

19)
Semin Immunol . 2018 Dec:40:101275.
Senescent cell clearance by the immune system: Emerging therapeutic opportunities
Larissa G P Langhi Prataら

20)Inflamm Regen. 2024 Jun 3;44(1):28.
Role of cellular senescence in inflammation and regeneration
Yuki Saitoら

21)Cell Metab . 2020 Jul 7;32(1):87-99.e6.
Defined p16High Senescent Cell Types Are Indispensable for Mouse Healthspan
Laurent Grosseら

22)Open Biol. 2020 Dec;10(12):200309.
Senescent cells and macrophages: key players for regeneration?
Sonia S Elderら
 

(東京ガーデンテラス紀尾井町 

赤坂プリンス クラシックハウスの薔薇

(筆者撮影)

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こんにちは、内科医 ひとちゃんですニコニコ

 

ゴールデンウィークも残すところ僅か(わずか)となっていますね。

 

ニュースを見れば、この混沌(こんとん)とした世の中を丸く収める

(おさめる)者はいないのか?・・・と思う方もいらっしゃるかもしれませんね。

 

「濁った(にごった)水も、

      静かにしておけば澄んで(すんで)くる」

 

中国春秋時代における哲学者である「老子」の言葉ですね

 

「孰(いず)れか能(よ)く濁(にご)りて以(もっ)て静かにして徐(おもむろ)に清(す)まさん」

 

(誰が、この濁った世界を静かに保ち、ゆっくりと澄ませることができるだろうか=道(タオ)を体得した者だけがそれができる)

という意味なのだそうです。

 

世界の出来事の根底に流れる法則が「道(タオ)」というわけですね。

 

私は、この言葉を19歳の頃にある占い師から教わりました。

 

この世の中が、まさに高明な易人の予言したとおりになっているのは、とても不思議な気がします。

 

皆さまの体調は、いかがでしょうか?

 

(AIで画像を作成)

 

今年のゴールデンウイークは、風が強く吹くなど天候が荒れた日が多かったような気がします。

 

「雨が降る前になると膝や腰が痛む」  
「低気圧が近づくと、頭が重くなり、具合が悪くなる」
 

「天気が悪くなると痛む」という訴えは、日常生活でもしばしば聞かれることですね。

 

以前は「気のせい」「心因性」「迷信」と片づけられることも少なくなかった印象があります。

 

しかし、最近の知見では、どのように考えられているのかを確認し、

知識をアップデートしておきたいと思います。

 

「天候」の変化に伴って、頭痛、関節痛、神経痛、めまい、倦怠感、気分の落ち込みなどが悪化する現象は、「気象病 (meteoropathy)」、あるいは「気象関連痛 (weather-related pain)」として研究対象になっているのですね。

 

よく知られた研究では、次のようなものがあります。

ドイツで行われた代表的な研究では、2021年に16歳以上の1,080人を対象として調査が行われ、回答者の46%が「天候が自分の健康に影響する」と答えていることが報告されています。

 

2013年の同様の調査では、回答者の50%が「天候が健康に影響する」と答えていると答えています。

 

報告されている主な症状は

  • 頭痛・片頭痛
  • 倦怠感・疲労感
  • 全身の不調感

などが多かったとされています。

また、女性、高齢者、慢性疾患を持つ人ではその頻度が高いことも報告されているのですね(参考1)。

 

この調査結果は、よく知られているのですが・・・すべて、自己申告による調査であったことに難点があったわけですね。

 

(AIを用いて画像を作成) 

 

このような「気象病 (meteoropathy)」の研究には、一定の難しさが

あるとされているようです。

 

 その理由としては、次のようなものになります。

 

実際の天候では、気圧、気温、湿度、日照、風、活動量、睡眠、心理的ストレスが同時に変化する。そのため、人間を対象とした観察研究だけで「気圧だけが原因である」と証明することは簡単ではないそうです。

 

このため、動物実験などで得られた「神経生理学的知見」などをもとに、現時点で最も妥当と考えられるメカニズムがどのようなものか?

を考えていく必要がある・・・と強調されているのですね。

 

では、いったい何が身体の不調に関係しているのでしょうか?

 

答えを言ってしまいますと・・・「低気圧そのもの」だけではなく、「気圧の変化」であるということになります。

 

では・・・ヒトの気圧センサーは、いったいどの臓器にあるのか?

ということになりますね。

 

このお話の続きは、後日の話題にしたいと思います。

 

それでは、またバイバイ

------------------------------------------------------------------

<ブログ後記 >5月8日
 

今回は、低気圧などの気象の影響で「痛み」が増悪するメカニズム

について、お話をさせていただきました。


「気圧」は目に見えず、匂い(におい)もないわけです。

それにもかかわらず、身体はその変化をどこかで、「気圧」の変化を

感じ取っているのか?・・・という疑問が出てきますよね。

実は、「気圧」そのものを測る「単一の器官」が特定されているわけではありません。

しかしながら、現時点で「大気圧」の変化を感じる器官ではないかと、最も有力視されているのが、耳の奥にある「内耳前庭系(ないじぜんていけい)」という部分になります。

 


(図はお借りしました)


例えば、健常成人に20--40 hPa程度の気圧を低下させた状況になると、ほぼ全員が耳の圧迫感、約半数が頭の締め付け感を訴え、軽い頭痛が出る人もいることが分かっています。

 この耳の圧迫感は、外耳道と中耳の圧差による「鼓膜(こまく)の変形・緊張で説明できるとしている報告もあります(参考2)。

しかしながら、最もポピュラーな考え方は、「内耳」が関与しているとするものになります。

この「内耳」には、音を感じる「蝸牛(かぎゅう)」という部分と、身体の傾き・回転・加速度を感じる「前庭器官」があります。


「前庭器官」は本来、平衡感覚(へいこうかんかく)を担う(になう)構造であり、三半規管、卵形嚢、球形嚢などから構成されています。

近年の動物実験では、この「前庭系」が「気圧」の変化に反応する可能性が強く示されています。

佐藤らの研究グループは、神経障害性疼痛モデルラットを用いて、「低気圧刺激」が痛覚(つうかく)行動を悪化させることを報告しています(参考3)。

さらに、「内耳」を薬理学的に障害したラットでは、低気圧による痛覚行動の増悪が消失したことが示されています(参考4)。


これらのことは、「低気圧」による痛みの増悪に、内耳が関与している可能性を示す重要な知見であるとされています。

そして、実際に内耳にある「前庭器」は、本来は重力・加速度センサーであるわけですが、圧変化にも反応しうると報告されています(参考5) 。

次に、「気圧」の低下が、脳のどの部位に伝わるのか?・・・という疑問が出てきますよね。
 

この答えを示す報告に、以下のようなものがあります。

2019年のPLOS ONE論文では、マウスに40 hPaの気圧低下を与えると、脳幹にある「上前庭神経核」で神経が活性化するときに認められる活動マーカー「c-Fos陽性細胞」が増加することが示されています(参考6)。

このことは、「上前庭神経核」が、「内耳」からの情報を受け取る中継地点であることを示しており、この結果は、気圧低下が「前庭系」を介して「脳幹」の神経活動を変化させる可能性を示している
とされています。


さらに2025年には、SatoらがScientific Reportsにおいて、マウスの前庭神経節におけるArc発現を用いて、より一次感覚ニューロンに近い部位の活動を解析した結果があります(参考7)。

この研究では、低気圧刺激により下前庭神経節の神経細胞が活性化することが示され、「内耳」に気圧感知システムが存在する可能性がさらに強く示されています。

ただし、この研究もマウスを用いた実験であり、ヒトで同じ機序がそのまま働くと断定することはできないものであると言えます。


以上の知見をふまえて、神経障害性疼痛や古傷の痛みが悪化するメカニズムを考えてみると、以下のようなことが予想されます。

例えば、神経が一度傷つくと、その部位や後根神経節では「痛覚神経」の興奮性が高まり、「交感神経」からの影響を受けやすくなるケースがあることが分かっています。

これは、いわば「痛みに関与する神経が過敏になり、交感神経の信号にも反応しやすくなる状態」であると考えることができるとされています。

動物実験では、神経障害性疼痛モデルラットに低気圧刺激を与えると、「痛覚」過敏が悪化することが示されています(参考8)。

また、低気圧による痛みの増悪には「交感神経系」が関与する可能性が報告されています(参考9)。
特に、神経障害性疼痛、幻肢痛、古傷の痛みなどでは「交感神経」と「痛覚神経」の相互作用が症状の波を作り出す可能性があるとされています。

ただし、ここで重要なのは、気圧変化が直接「患部を壊す」わけではないことである。むしろ、すでに「痛みの神経が過敏になり、交感神経の信号にも反応しやすくなる状態」になっている神経系に対して、「気圧」の変化が「自律神経系」を介して、増悪因子として働くと考えるのが適切であると考えられています。

また、「気圧変化」は、身体にとって一種の「環境ストレス」と考えられています。
「ストレス刺激」を受けると、「視床下部−下垂体−副腎軸」、すなわちHPA軸が活性化し、副腎皮質ホルモンが分泌されることが知られています。

2025年のTerajimaらの研究では、「慢性絞扼性(やっこうせい)神経損傷」 の存在する モデルマウスに20 hPaの低気圧刺激を単回、または3回連続で与える実験が報告されています(参考10)。

単回刺激では明らかな機械的「痛覚過敏」はみられなかったわけですが、3回連続の低気圧刺激では「機械的痛覚過敏」が増強し、血漿コルチコステロン濃度も上昇する現象が報告されています。

この結果は、反復する気圧低下が神経障害性疼痛を累積的に悪化させ、その背景に「視床下部−下垂体−副腎軸」のHPA軸活性化が関与する可能性を示しているものとも言えますね。

以上をまとめますと、「気象痛」や「気象関連痛」は次のような流れで説明することが可能になります。

第一に、低気圧や気圧変動が中耳・耳管を介して「内耳前庭系」へ伝わります。
第二に、「前庭系」の情報が前庭神経を通じて脳幹の「上前庭神経叢」の「前庭神経核」に入力されます。
第三に、この情報が自律神経系、「視床下部−下垂体−副腎軸」のHPA軸、、痛覚制御系に波及します。第四に、もともと痛みの感作がある部位、すなわち古傷、神経障害部位などで症状が現れるよいうことになります。

このモデルでは、「気象病」の症状が人によって異なる理由も説明しやすいと言えます。
入り口は「内耳前庭系」で共通していても、出口はその人の弱い部位、すでに障害されたことのある
神経回路、慢性炎症のある組織によって異なるということになりますね。

天気痛に悩む人にまず伝えるべきことは、症状は決して「怠け」や「思い込み」ではない、ということななります。

一方で、天気だけに原因を求めすぎることにも注意が必要であると言えますね。
なぜなら、睡眠不足、脱水、運動不足、筋緊張、ストレス、月経周期、気分の落ち込み、慢性炎症、肥満、血糖変動なども、痛みの閾値を下げることが知られているからという理由になりますね。

今回も最後までお付き合いいただき
誠にありがとうございましたお願い
 

参考)

1)Atmosphere 2022, 13(11),1865

The Prevalence of Weather Sensitivity in Germany Derived from Population Surveys

Kathrin Grawら

 

2)Hearing Research.Vol 353,September 2017, Pages 49-56
 Tympanic membrane pressure buffering function at quasi-static and low-frequency pressure   variations
Wasil H.M. Salihら

 

3)Neurosci Lett. 1999 Apr 30;266(1):21-4.
Lowering barometric pressure aggravates mechanical allodynia and hyperalgesia in a rat model of neuropathic pain
J Satoら

4)Eur J Pain . 2010 Jan;14(1):32-9.
The inner ear is involved in the aggravation of nociceptive behavior induced by lowering barometric pressure of nerve injured rats
Megumi Funakuboら

 

5)Compr Physiol. 2023 Jun 26;13(3):4811-4832.
 The Central Network Involved in the Processing of Vestibular Inputs and the Generation of Vestibulosympathetic Reflexes Controlling Blood Pressure in Humans
Brendan McCarthyら

 

6)PLoS One. 2019 Jan 25;14(1):e0211297.
 Lowering barometric pressure induces neuronal activation in the superior vestibular nucleus in mice
Jun Satoら

 

7)Sci Rep . 2025 Dec 24;15(1):44525.
The inner ear is a barometric pressure sensor-change in barometric pressure induces vestibular ganglion cell activation in mice
Jun Satoら

 

8)Neurosci Lett. 1999 Apr 30;266(1):21-4.
Lowering barometric pressure aggravates mechanical allodynia and hyperalgesia in a rat model of neuropathic pain
J Satoら

 

9)PLoS One . 2025 Jan 17;20(1):e0317767.
The effects of lowering barometric pressure on pain behavior and the stress hormone in mice with neuropathic pain
Yuki Terajimaら
 

10)PLoS One 2025 Jan 17;20(1):e0317767.
The effects of lowering barometric pressure on pain behavior and the stress hormone in mice with neuropathic pain
Yuki Terajimaら

 

(散歩の途中で見つけた薔薇の花)

(筆者撮影)

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こんにちは、内科医 ひとちゃんですニコニコ

 

朝から気持ちのよい青空が広がっています。小鳥のさえずりも聞こえ、開けた窓からは、気持ちのよい「そよ風」を感じることができます。

この季節になると・・・なんとも心地よい眠気を感じますね。

次のような言葉が、ふと浮かんできます。

 

「春眠 暁(あかつき)を覚えず」

 

中国・唐代の詩人、孟浩然(もうこうねん)の『春暁(しゅんぎょう)』の冒頭の句ですね。

 

春眠不覺曉     春眠 暁を覚えず 

處處聞啼鳥     処処 啼鳥を聞く 

夜來風雨聲     夜来 風雨の声

花落知多少     花落つること 知る多少ぞ

 

この意味は次のようなものになります。

 

春の眠りは心地よく、夜が明けたことにも気づかない。

あちらこちらから、鳥の鳴き声が聞こえてくる。

そういえば昨夜は、風雨の音がしていた。 

花はいったい、どれほど散ってしまったことだろう。

 

となりますね。

 

都内の桜はすべて散ってしまいましたが、「春の眠気」はまだ、残っているように感じるのは、私だけでしょうか?

 

皆さまの体調は、いかがでしょうか?

 

(AIで画像を作成)

 

前回は、自己免疫疾患のひとつである「全身性エリテマトーデス(SLE)」の病態の安定に「NAD+」が有効である可能性をお話をさせていただきました。

 

もちろん、この疾患の治療法は確立していますし、今後のより有効な治療が検討されている状況ですので、「NAD+」は、治療というよりは

サポートの役割になるかもしれませんね。

 

今回は、SARS-CoV-2感染後の「新型コロナ後遺症」「NAD+」が有効である可能性について、お話をしてみたいと思います。

 

新型コロナ「SARS-CoV-2」感染は、急性期において強い炎症応答、インターフェロン応答異常、代謝撹乱、凝固異常、臓器障害を引き起こしうるとされています。

 

回復後も、一部の患者さんでは、倦怠感、息切れ、認知機能障害、睡眠障害、自律神経症状などが遷延し、「Long COVID」として問題となっているわけですね。

 

その病態は多因子的であり、ウイルス残存、自己免疫、慢性炎症、微小血管障害、自律神経異常など複数の機序が想定されているわけですが、近年、その背景の一つとして「エピジェネティックな傷跡(きずあと)というものが注目されています(参考1,2,3,4)
 

SARS-CoV-2感染は、宿主細胞の「DNAメチル化」や「ヒストン修飾」に影響を及ぼし、免疫関連遺伝子、炎症関連遺伝子、代謝関連遺伝子の発現パターンを変化させうると報告されているわけです (参考5,6)。

 

(AIを用いて画像を作成) 

 

感染急性期には、ウイルスと宿主の相互作用の中で、「DNAメチル化酵素」や「ヒストン修飾関連因子」の発現変動が報告されており、

これが免疫回避や炎症制御異常に関与する可能性が指摘されているのですね(参考4,5,6)


さらに、COVID-19罹患後数か月にわたり「DNAメチル化」の異常や「エピジェネティック・ドリフト」の増加が持続することが報告されています(参考7,8,9)

 

さらに「エピジェネティック時計」を用いた解析では、生物学的年齢の加速、とくに免疫系や炎症状態を強く反映する指標の変化が観察されており、これが「Long COVID」の症状持続に関与する可能性が示唆されている (参考10,11)

 

もちろん、これらの研究は主として関連を示すものであり、「エピジェネティック異常」「Long COVID」の症状の原因なのか、あるいは持続炎症の結果なのかは、なお十分には解明されていないわけです。

 

しかしながら、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染は、PARPやCD38などのNAD+を消費する酵素を活性化し、NAD+代謝回転を亢進させ、細胞内NAD+低下を引き起こしうると報告されている (参考12,13)

 

その結果、ミトコンドリア機能低下、酸化ストレス増大、DNA修復異常、炎症制御低下などが起こり、これらはLong COVIDの病態と重なると論じられている(参考14,15,16)

 

現時点の研究は、SARS-CoV-2感染が炎症反応の中でNAD+を強く消費し、その代謝異常がミトコンドリア障害や慢性炎症を通じて「Long COVID」に関与しうるという有力な仮説を支持するものであると言えますね。

 

ただし、「Long COVID」の症状と「NAD+枯渇」と症状を直接結びつける決定的な臨床データはまだ限られており、残念ながら「NAD+」補充療法の有効性も確立されていないとも言えます。

 

しかしながら、「Long COVID」の状態においても「NAD+」の低下は

存在し、さまざまな症状につながっている可能性は否定できないのではないかと思ったりもします。

 

最後に「老化」・「全身性エリテマトーデス(SLE)」・「新型コロナ後遺症」に共通する「エピジェネティックな変化」とは・・・ということになるのですが・・・この続きは、後日の話題にしたいと思います。

 

素敵な1週間をお過ごしくださいキラキラ

 

それでは、またバイバイ

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<ブログ後記>4月29日

 

今回は、一見するとまったく別に見える「老化」、「全身性エリテマトーデス」、「新型コロナ後遺症(Long Covid)という3つの疾患が、その共通の基盤として、「NAD+」低下の性質を持つというお話をさせていただきました。

いずれにおいても細胞内の「NAD⁺」プールの慢性的減少が報告されており、その原因として「消費亢進」と「合成低下」の双方向から「NAD⁺」の恒常性が破綻(はたん)している可能性が指摘されているわけです。

 

それぞれの病態をざっくりと見てみると、以下のようになります。

「老化」では、「DNA損傷」が蓄積することによるPARP1の持続的活性化により「NAD+」が消費され、また、」「老化細胞」の炎症が持続することに伴う「CD38」発現亢進が「NAD⁺」の消費を加速させることになります。

 

「全身性エリテマトーデス(SLE)」では、自己核酸(DNA/RNA)や免疫複合体が「核酸センサー」を刺激し続けることで、常に「I型インターフェロン(IFN-I)」が過剰に産生される「インターフェロン・シグネチャー」という状態にあります。

 

この「I型インターフェロン(IFN-I)」シグナルが、形質細胞様樹状細胞(pDC)や単球の「CD38」発現を強力に誘導する。

「CD38」は細胞表面や細胞内に存在する酵素ですが、「NAD+」を基質として利用し、ADPR(ADPリボース)やcADPRに変換します。

 

この酵素活性が過剰になると、細胞内の貴重なエネルギー代謝の鍵である「NAD+」が浪費(消費)され、その結果として、「NAD+」が低下し、やがて、枯渇する可能性もあるというわけです。

 

「NAD+」が低下すると、細胞は以下のような「エネルギー危機」に陥ります。

  • ミトコンドリア機能の低下: ATP産生がスムーズに行かなくなります。

  • DNA修復能力の減退: NAD+を必要とする修復酵素(PARPなど)の働きが鈍ります。

  • 炎症の増幅: NAD+不足は細胞を「老化細胞」のような状態(SASP:炎症性表現型)に導き、さらに炎症性サイトカインを放出させる悪循環を生みます。

「SARS-CoV-2」の感染では、抗ウイルス応答として誘導される「IFN(インターフェロン)誘導性の「PARP9/12/14」が、「モノADPリボシル化」を介して活性化し、急性期から回復期に至るまで「NAD⁺」を消費し続けます。

 

この一連のメカニズムは、「NAD+の戦場(NAD+ battlefield)」

とも呼ばれ、以下のように進行します。

 

SARS-CoV-2に感染すると、宿主の自然免疫としてインターフェロン(IFN)応答が引き起こされます。

  • これにより、抗ウイルス作用を持つ「インターフェロン誘導遺伝子(ISG)」として、PARP9、PARP12、PARP14などの非カノニカル(非定型的)なPARPファミリーが強力に誘導されます。

  • DNA修復に関わる代表的なPARP1が「ポリ」ADPリボシル化を行うのに対し、これらのPARP9/12/14は、標的となるウイルスタンパク質や宿主タンパク質に単一のADPリボースを付加する「モノADPリボシル化(MARylation)」を行います。

  • これによりウイルスの複製を阻害します。

  • このモノADPリボシル化反応は、細胞内のNAD+を基質として直接消費します。

  • 急性期には、宿主側がPARPをフル稼働させてウイルスをMAR化しようとNAD+を大量消費します。

  • 一方で、SARS-CoV-2は自身の非構造タンパク質3(Nsp3)に「マクロドメイン(Mac1)」という酵素活性部位を持っており、付加されたモノADPリボースを「剥がす(脱MAR化)」ことで免疫から逃れようとします。

  • 付加しては剥がされるという「イタチごっこ(無益なサイクル)」が細胞内で激しく起こる結果、NAD+が凄まじい勢いで浪費され、急速な「NAD+」の枯渇(エネルギー危機)に陥ります。         

 

では、「回復期」はどうかと言いますと・・・この「NAD+」の消費は持続し、深刻な影響を及ぼすと考えられています。

  • 急性期を過ぎてウイルスが排除された後も、微小なウイルス残骸の残存や、慢性的な炎症シグナル(IFNの持続)がくすぶり続けるケースがあります。

  • これにより、PARP9/12/14やCD38などのNAD+消費酵素が「スイッチが入ったまま」の状態になり、回復期に至っても慢性的に「NAD+」を消費し続けます。

  • 持続的な「NAD+」の枯渇は、ミトコンドリアの機能不全(ATP産生低下)や酸化ストレスの増大を招きます。

  • これが「Long COVID(コロナ後遺症)」で特徴的な「激しい倦怠感(Fatigue)」「ブレインフォグ」「運動不耐症」の根本的な原因の一つになっている可能性が強く示唆されています。

さらに、加齢・酸化ストレス・慢性炎症の影響でサルベージ経路の律速酵素NAMPTの発現と活性が低下し、合成側からも「NAD⁺枯渇」が促進されるというわけです。

さらに「NAD⁺」の低下は「サーチュイン(SIRT1/SIRT6)」活性の減弱を招き、ヒストンアセチル化のバランスが崩れてヘテロクロマチンが弛緩する。

「SIRT6」はとくに反復配列やレトロトランスポゾン領域のサイレンシングに必須であると考えられており、その機能不全は、

レトロトランスポゾン「LINE-1(L1)」の脱抑制を許す。

 

再活性化した「LINE-1(L1)」は。ORF1p/ORF2pを発現し、ORF2pの逆転写酵素活性により細胞質に二本鎖DNAやRNA:DNAハイブリッドを生じる。

これらの核酸はcyclic GMP-AMP synthase(cGAS)に認識され、STING-TBK1-IRF3軸を介してIFN-I産生と炎症性サイトカイン放出を惹起する。

 

「IFN-I」はさらにCD38発現を誘導してNAD⁺消費を加速するため、「NAD⁺低下→サーチュイン不全→クロマチン弛緩→L1脱抑制→cGAS-STING活性化→IFN-I/炎症→CD38亢進→さらなるNAD⁺消費」という悪循環が成立する可能性も指摘されています。

 

上記のようなメカニズムが「老化進行」、「SLEの活動性増悪」、「Long COVID」における症状遷延の共通基盤を形成していると考えられているわけです。

では、どのように対処するのが有効か・・・と考えますと、次のようになります。

「NMN(ニコチンアミドモノヌクレオチド)」といったNAD⁺前駆体の補充は、複数の機序を介して上記悪循環の遮断を狙うことができる可能性があります。

 

すなわち、「サーチュイン再活性化」によるヒストン修飾の正常化とL1再サイレンシングを介したエピゲノム安定化、単球・マクロファージにおけるIFN-I/ISG応答の鎮静化、PARP機能維持を介したゲノム安定性の保持、

そして、SIRT3を介した「ミトコンドリア」の品質管理とATP産生能の改善である。とくにLong COVIDで顕著な慢性疲労、ブレインフォグ、運動耐容能低下、骨格筋脱力の一部は、こうしたミトコンドリア機能改善による緩和が期待される。

将来的には、NAD⁺前駆体補充、CD38阻害薬、選択的PARP阻害薬、L1抑制を狙う逆転写酵素阻害薬を組み合わせた多層的な「免疫代謝療法(immunometabolic therapy)」が、これら難治性病態への新たな治療軸となりうるのではないかと考えられているのですね。

 

若干、難しいお話となってしまいましたが・・・「NAD+」の低下が

「老化」のプロセスばかりでなく、「全身性エリテマトーデス(SLE)」の活動期や新型コロナウイルス感染後の後遺症である「Long Covid」

の状態でも起こりうることは、頭の片隅に置いておく必要があると

思いますね。

 

今回も最後までお付き合いいただきまして

誠にありがとうございましたお願い

 

 

参考)

1)Front Immunol . 2021 Oct 8:12:752380. 

COVID-19 Is a Multi-Organ Aggressor: Epigenetic and Clinical Marks Mankgopo Magdeline Kgatleら

 

2)Infection. 2023 Dec;51(6):1603-1618. Amiit Deyら

Epigenetic perspectives associated with COVID-19 infection and related cytokine storm: an updated review

Amiit Deyら

 

3)Epigenomics. 2021 May;13(10):745-750. 

Epigenomics in COVID-19; the link between DNA methylation, histone modifications and SARS-CoV-2 infection

 Milad Shirvalilooら

 

4)Clin Epigenetics. 2024 Aug 20;16(1):112. 

Epigenetic patterns, accelerated biological aging, and enhanced epigenetic drift detected 6 months following COVID-19 infection: insights from a genome-wide DNA methylation study

Luciano Calzeriら

 

5)Infectiom. 2023 Dec;51(6):1603-1618. 

Epigenetic perspectives associated with COVID-19 infection and related cytokine storm: an updated review

Amit Deyら

 

6)Epigenomics. 2021 May;13(10):745-750. 

Epigenomics in COVID-19; the link between DNA methylation, histone modifications and SARS-CoV-2 infection

Milad Shirvalilooら

 

7)Clin Epigenetics. 2024 Aug 20;16(1):112. 

Epigenetic patterns, accelerated biological aging, and enhanced epigenetic drift detected 6 months following COVID-19 infection: insights from a genome-wide DNA methylation study

 Luciano Calzariら

 

8)Expert Rev Mol Med. 2024 Oct 22:26:e29. 

Epigenetic changes in patients with post-acute COVID-19 symptoms (PACS) and long-COVID: A systematic review

Madhura Shekhar Patilら

 

9)Geroscience. 2025 Feb;47(1):483-501. 

The COVID-19 legacy: consequences for the human DNA methylome and therapeutic perspectives

Carlo Gaetanoら

 

10)Front Genet. 2022 Jun 3:13:819749. 

Longitudinal Study of DNA Methylation and Epigenetic Clocks Prior to and Following Test-Confirmed COVID-19 and mRNA Vaccination

Alina P S Pangら

 

11)Biogerontology. 2025 Dec 2;27(1):12. 

DNA methylation-based epigenetic clocks highlight immune-driven aging acceleration in COVID-19 across diverse populations

Manoj Kumar Guptaら

 

12)Front Immunol . 2023 Jun 29:14:1158455.

SARS-CoV-2 infection dysregulates NAD metabolism

Amin izadpanahら

 

13)FASEB Biology. 2025 Jun 18;7(8):e70011. 

Oral MIB-626 (β Nicotinamide Mononucleotide) Safely Raises Blood Nicotinamide Adenine Dinucleotide Levels in Hospitalized Patients With COVID-19 and Acute Kidney Injury: A Randomized Controlled Trial

 Karol M Pencinaら

 

14)Clin Pathol. 2022 Jun 24:15:2632010X221106986. 

Rationale for Nicotinamide Adenine Dinucleotide (NAD+) Metabolome Disruption as a Pathogenic Mechanism of Post-Acute COVID-19 Syndrome

Tabitha Blockら

 

15)EClinical Medicine. 2025 Nov 12:89:103633. 

Effects of nicotinamide riboside on NAD+ levels, cognition, and symptom recovery in long-COVID: a randomized controlled trial

Chao-Yi Wuら

 

16)Geroscience. 2024 Oct;46(5):5267-5286. 

Mitochondrial dysfunction in long COVID: mechanisms, consequences, and potential therapeutic approaches

Tihamer Molnarら

 

 

(今年最後の八重桜:ホテルニューオータニ東京 オーバカナル前)

(筆者撮影)

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こんにちは、内科医 ひとちゃんですニコニコ

 

青空が広がり、穏やかな春の陽気になっていますね。

今朝は目が覚めてから、ベッドの中で鳥の鳴き声を聞いておりました。

 

「中東」の紛争は終息に向かっている状況に変化はないのだろう・・

・とスマホに手をの伸ばし、ニュースを見ますと・・・見事に期待を裏切られた感がありました。

 

古今東西の賢者の一人とされる十八世紀の哲学者

「イマヌエル・カント」は、著書『永遠平和のために』のなかで、戦争を終わらせ持続的な平和を築くための条件を示しています。


彼は、著書のなかで「汝の意志の格率が、常に同時に普遍的立法の原理として妥当しうるように行為せよ」と述べています。


その意味は、「行為の原則」が状況や都合によって揺らいではならず、いかなる時にも通用する普遍性を備えるべきことを説いているわけですね。


政治的決断というものは、その時々の情勢の中で下されるものですが、真に価値ある決断は、目先の利害を超えて、未来の歴史においてもなお正しいと評価されるものでなければなりませんよね。


思慮深く熟慮を重ね、普遍的原則に照らして下された決断だけが、時の試練に耐え、後世の人々から「あの時、あの指導者がいたからこそ」と称えられるのだと思います。逆に、その場しのぎの計算で下された決断は、たとえ一時的に成功したように見えても、やがて歴史の審判の前に色褪せていきます。


すべては「未来」の歴史において評価されるわけですが、今のような混乱の時代は、どのように歴史に残されるのでしょうか?・・・なんて、思ってしまいますね。

 

皆さまの体調は、いかがでしょうか?


image

(AIで画像を作成)

 

前回は「NAD+ (ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)と「NAD+サルベージ経路」について、お話をさせていただきました。

 

今回は、「理論」的に考えますと・・・この「NAD+」が「老化」以外にある「疾患」の状態の改善に有用な可能性があるのではないか?

・・・というお話をしてみたいと思います。

 

「NAD+」が有用かもしれない疾患とは、「新型コロナ後遺症」

「全身性エリテマトーデス(SLE)」ということになります。

 

少しだけ長いお話になるかもしれませんので、2回にわたってお話をしてみたいと思います(今回の追記は学会参加のためなしにさせていただきます)。

 

「老化」、「新型コロナ後遺症」、「全身性エリテマトーデス(SLE)」

まったく異なる分野の疾患に対する「NAD+」の効果・・・と聞くと

不思議に思う方もいらっしゃるかもしれなませんね。

 

ヒトの細胞では、「DNA」の塩基配列そのものを変えずに遺伝子発現を調節する機構、すなわち「エピジェネティクス」が、細胞の恒常性維持、分化、老化、炎症応答に深く関与していることがわかっています。

 

代表的な機構として、「DNAメチル化」「ヒストンのアセチル化」などの修飾、クロマチン再構築が挙げられる。

 

一般に、遺伝子プロモーター領域における「DNAメチル化」は、転写抑制と関連し、ヒストン「アセチル化」はクロマチン構造を開いた状態に傾け、転写活性化を促進する。

 

一方で、これらの制御は単純な二元論で説明できるものではなく、細胞種、ゲノム局在、周辺のクロマチン環境、代謝状態に応じて動的に変化することが知られている。
 

     図1.ヒストンとDMAの関係

 

図1.に示すようにDNAは、細胞内で「ヒストン」というものに巻き付いた形で存在しているわけです。

 

なぜ、このようなお話をするのか?・・・近年、加齢に伴う「細胞老化」、自己免疫疾患である「全身性エリテマトーデス(systemic lupus erythematosus: SLE)」、さらに「COVID-19後遺症(Long COVID, post-acute sequelae of SARS-CoV-2 infection: PASC)という、一見異なる三つの病態の間に、「エピジェネティック異常」という共通の分子基盤が存在する可能性が示されているからなのですね。

 

とくに、「DNAメチル化異常」、「ヒストンアセチル化修飾の破綻」、

「レトロトランスポゾンの脱抑制」「自然免疫センサーの慢性的活性化」、そしてNAD⁺代謝低下に伴う「サーチュイン活性の障害」は、

これらの病態を横断して理解するうえで重要な接点であると考えられているのですね(参考1,2,3,4)。

 

(AIを用いて画像を作成) 

 

約25年前の話になりますが・・・「全身性エリテマトーデス(SLE)」

の病態にDNAの低メチル化状態が「ヒト内在性レトロウイルス(Human Endogenous Reterovirus:HERV)」の一部がmRNAレベルで発現しているのを基礎実験を重ね、確認していました。

 

その時は、「HERV-E clone4-1」という名称の割とレトロウイルスの構造が保存されているものでした、

レトロウイルスの構造は、

 

「LTR(転写活性領域)」-「gag(内部構造タンパク)」-「pol(逆転写酵素)」-「env(外被糖タンパク)」-「LTR(転写活性領域)」

 

という構造なのですが・・・「全身性エリテマトーデス(SLE)」の疾患活動性が高くなると、「HERV-E clone4-1」の「gag(内部構造タンパク)部分のmRNAの発現が上昇し、治療とともに低下する現象があったわけです。

これと逆相関する形でDNAのメチル化を制御する「DNMT1」遺伝子の発現があることを見つけたわけです。

 

つまり、「全身性エリテマトーデス(SLE)」の疾患活動性が高くなると「DNMT1」mRNAの発現が低下」し、「HERV-E clone4-1」の「gag」部分のmRNAが増加しているデータが得られたわけです。

 

そこで、「DNMT1」遺伝子のプロモーター部分に付着する「転写因子」の異常が原因だろうと・・・間違った方向に進む実験を繰り返し、力尽きた・・・ということになります。25年前の話です。

 

現時点の「全身性エリテマトーデス(SLE)」は、次のように考えられています。

 

多彩な自己抗体産生、免疫複合体形成、補体活性化、I型IFNシグナルの増強を特徴とする全身性自己免疫疾患であり、

その病態形成には遺伝要因、環境要因、性差、免疫調節異常が関与する疾患であることは、昔と認識は変わりません。


近年とくに重要視されているのが、免疫細胞における「エピジェネティックス」の異常である とされているわけです(参考5,6,7)。

 

さらに現時点で、「全身性エリテマトーデス(SLE)」の患者T細胞では、「DNMT1の発現低下」「ERK経路異常」を介してDNA低メチル化が生じ、通常は抑制されるべき免疫関連遺伝子の発現が亢進することが報告されています。

 

CD11a、CD70などの遺伝子はその代表例であり、低メチル化に伴う過剰発現が自己反応性の増強に関与すると考えられている 5。さらに、、では、「ヒストン修飾異常」やmiRNA異常も加わり、複数の階層で免疫恒常性が破綻している可能性が指摘されているわけです(参考7,8)


一方、近年の研究は、「全身性エリテマトーデス(SLE)」における「レトロトランスポゾン」異常にも光を当てられています。

 

「全身性エリテマトーデス(SLE)」の活動期の免疫細胞などでは「LINE-1」転写産物などの発現上昇が認められ、疾患活動性と相関することが示されています (参考9,10)。


 

「LINE-1」とは、 ヒトゲノム中に約10万個存在し、自己複製してDNA上を移動する「レトロトランスポゾン」を指します。

 

この遺伝子も「全身性エリテマトーデス(SLE)」の疾患の活動性の

上昇とともに、その発現が増加していたわけですね。

つまり、私の検証していた「HERV-E clone4-1」だけではなく、

本来はDNA内に固定されているはずの「ヒト内在性レトロウイルス(HERV)」「レトロロランスポゾン」が「DNAのメチル化」の低下により、発現していた可能性が大きいと考えられますね。

 

このレトロトランスポゾン「LINE-1」の発現が増加することも報告されています(参考11)。

 

さらに「全身性エリテマトーデス(SLE)」では、「LINE-1」由来の逆転写産物やDNA:RNA複合体が、cGASやZBP1などの核酸センサーと関連して局在し、「I型インターフェロン(IFN)応答」「炎症シグナルの増幅」に寄与する可能性が報告されています(参考 12,13)。

 

 

これらの「全身性エリテマトーデス(SLE)」によるレトロトランスポゾン「LINE-1」の発現量の増加は、「DNMT-1遺伝子」などのmRNAの低下により生じた「DNAの低メチル化」が原因であろうと想像できなす。

 

しかしながら、DNAメチル化が弱くても、「ヒストン脱アセチル化」がしっかり機能すれば、「レトロトランスポゾン」の発現をかなり抑制できる可能性はあるという説が有望なのですね(参考14)。


 

この説から考えると・・・「全身性エリテマトーデス(SLE)」の活動性の高い状態では、ヒストンの「アセチル化・脱アセチル化」のメカニズムに異常が生じている可能性があるとも考えられるわけですね。

 

         (図2,DNAとヒストン)

 

もちろん、「全身性エリテマトーデス(SLE)」の病態は、さらに複雑

ではあるわけですが・・・ね。

 

DNAの低メチル化状態の得られない状況でも、ヒストンを脱アセチル化してしまえば・・・これは、25年前の私の発想ですが・・・その時は、その方法が浮かびませんでした。

 

現時点で、どのように考えられているのか?・・・と言いますと次のようになります。

 

「全身性エリテマトーデス(SLE)」では、特に単球やT細胞でCD38・PARPの誘導によりNAD⁺消費が増え、「局所的なNAD⁺低下・ストレス」が起こりうる一方、全身レベルでは低活動期にNAD⁺産生も同時に高まるなど複雑です。少なくとも「NAD⁺代謝の異常」はSLE免疫細胞の特徴であり、NAD⁺を補う介入はI型IFN過剰の緩和策として検討されているのですね。

 

素敵な1週間をお過ごしくださいキラキラ

 

それでは、またバイバイ

 

参考)

1)Aging(Albany NY). 2018 Nov 3;10(11):3590-3609

The senescent cell epigenome

Na Yangら

 

2)Cells. 2022 Feb 15;11(4):672. 

Epigenetic Regulation of Cellular Senescence

Jack Crouchら

 

3)Cell. 2008 Nov 28;135(5):907-18. 

SIRT1 redistribution on chromatin promotes genomic stability but alters gene expression during aging

 Philipp Oberdoerfferら

 

4)Nature. 2019 Feb;566(7742):73-78. 

L1 drives IFN in senescent cells and promotes age-associated inflammation

Marco De Ceccoら

 

5)Transl Res. 2009 Jan;153(1):4-10. 

Epigenetic regulation and the pathogenesis of systemic lupus erythematosus

Yujun Panら

 

6)Autoimmunity. 2010 Feb;43(1):17. 

Key role of ERK pathway signaling in lupus 

GARRIELA GORELIK

 

7)Int J Clin Rheumtol. 2011 Aug;6(4):423-439. 

Epigenetics in systemic lupus erythematosus: leading the way for specific therapeutic agents 

Matlock A Jeffriesら

 

8)Int J Mol Sci. 2024 Jan 13;25(2):1019. 

Epigenetic Dysregulation in the Pathogenesis of Systemic Lupus Erythematosus

Yasuto Arakiら

 

9)Mob DNA. 2023 May 10;14(1):5. 

Expression of L1 retrotransposons in granulocytes from patients with active systemic lupus erythematosus

Kennedy C Ukagibleら

 

10)Arthritis Rheumaatol. 2016 Nov;68(11):2686-2696. 

Expression of Long Interspersed Nuclear Element 1 Retroelements and Induction of Type I Interferon in Patients With Systemic Autoimmune Disease 

Clio P Mayaraganiら

 

11)Aging Cell. 2013 Apr;12(2):247-56.

Genomes of replicatively senescent cells undergo global epigenetic changes leading to gene silencing and activation of transposable elements

Marco De Ceccoら

 

12)Mob DNA. 2024 Jun 27;15(1):14. 

Subcellular location of L1 retrotransposon-encoded ORF1p, reverse transcription products, and DNA sensors in lupus granulocytes

Fatemeh Moadabら

 

13)Front Immunol. 2019 May 8:10:1028. 

Sources of Pathogenic Nucleic Acids in Systemic Lupus Erythematosus

Tomas Mustelinら

 

14)Cell Genom. 2024 Feb 14;4(2):100498.

Locus-level L1 DNA methylation profiling reveals the epigenetic and transcriptional interplay between L1s and their integration sites

Sophie Lancianoら


  

image
(自由の女神とレインボーブリッジ)
(筆者撮影)

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こんにちは、内科医 ひとちゃんですニコニコ

 

例年に比べ、悪天候の日が多かったような気がしたのですが、どうやら都内近郊の「桜」の時期は終わってしまったようです。

楽しみにしていただけに残念に思います。

 

鎌倉時代末期から南北朝時代にかけての歌人・随筆家である吉田兼好(兼好法師)が作者である『徒然草(つれづれぐさ)』には、次のような文章があります。

 

「花は盛りに、月は隈なきをのみ見るものかは」

 

桜は満開、月は満月だけを見るものだろうか(いや、そうではない)。散りゆく花や、雲に隠れる月にこそ趣(おもむき)がある

 

という訳になるのですが、彼はさらに次のように述べています。


咲く直前のつぼみの頃、あるいは散り果てた後の枝に思いを寄せるほうが、満開を愛でるよりもずっと味わい深い、と。

 

満開の花の下で酒を飲み騒ぐのは風流を解さぬ振る舞いであり、本当に心ある人は散りゆく花びらに名残を惜しみ、見えない月を想像して胸を満たすのだと説きます。


つまり「見えないもの」「不完全なもの」「失われゆくもの」にこそ想像力が働き、心の奥に深い情趣(あはれ)が生まれるという美意識なのだ・・・と説いて(といて)いるわけですね。

 

なるほどね・・・と納得しつつも、私は来年の桜に期待したいと思います。
 

皆さまの体調は、いかがでしょうか?

 

 

(AIで画像を作成)

 

「NMN(ニコチンアミドモノヌクレオチド)サプリ」などを摂取している・・・とか、「NAD+(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)点滴」をしていると、とても調子がよい・・・などという話を聞くことが多くなっています。

 

「NMN」は、ビタミンB3から生成される、細胞のエネルギー産生と

若々しさを保つ「NAD+」の前駆体物質となりますね。

 

「NAD+」は、全細胞に存在し、エネルギー産生、サーチュイン遺伝子の活性化、「DNA修復」を担う(になう)補酵素であるとされています。

 

この「NAD+」は、加齢とともに減少し、40代でピーク時の約半分になるため、老化や代謝低下の一因とされていましたね。

 

今回は、「NAD+」が減少していくと・・・「DNA修復」の能力は低下していくわけですが、このことがヒトの健康にどのよう影響を及ぼすのか?・・・について、お話をしてみたいと思います。

 

ヒトの体を構成する約37兆個の細胞は、内因性および外因性の広範な「ゲノムストレス」に晒されて(さらされて)いると言われています。

 

「ゲノムストレス」には、どのようなものがあるか?・・・といいますと・・・

「紫外線」、「活性酸素種(ROS)」、「化学物質」、そしてDNA複製時のエラーにより、1細胞あたり1日平均5万から10万箇所ものDNA損傷が生じると推定されています(参考1)。

 

DNA損傷の数の多さに驚かれる方もいらっしゃるかもしれません。

こうした状況で、「NAD+」の低下が続きますと・・・

 

このことは。ゲノムの恒常性を維持する「DNA修復システム」の破綻は、変異の蓄積を招き、がん化、神経変性、そして個体老化を加速させると考えられているのですね。

 

(AIを用いて画像を作成) 

 

では、「NAD+」はどのようなメカニズムにより損傷したDNAを修復していくのでしょうか?

 

「DNA修復」の初期応答において中核を担うのが、「PARP1(ポリADPリボースポリメラーゼ1)であることが知られています。

DNAに傷がついた際、真っ先に駆けつけて修復を促進する重要な「センサー」の役割を果たしているわけですね。

 

 

「PARP1」はDNA切断部位を迅速に認識し、「NAD+」を基質として消費しながら、標的タンパク質へ「ポリADPリボース(PAR)鎖」というものを付加するわけです(PARylation)。

 

この「ポリADPリボース(PAR)鎖」が足場(scaffold)となり、各種修復因子が損傷部位へ集積することが知られています(参考2,3)。

 

上記のメカニズムがきちんと機能すれば、何も問題はないわけですが・・・

近年の「老化研究」における重要な知見は、加齢に伴う細胞内「NAD+」濃度の著明な低下であると報告されています(参考4)。

 

そして、このNAD+」の枯渇(こかつ)が、「PARP1」や「サーチュイン」の活性を制限し、「DNA修復能」の減弱を引き起こす主要因であることが明らかになってきたというのですね。

 

NAD+低下 → SIRT1/PARP1活性不全 → DNA修復不全

 

上記のように「NAD+」の低下は、「元気がなくなる」とか「肥満」

になりやすくなる・・・などということばかりでなく、1細胞あたり

1日平均5万から10万箇所ものDNA損傷を残したまま、日々を生きる

ということになりますので・・・

 

これは「癌の発生」や「老化細胞」の増加につながっていく可能性が

高いということになるかもしれませんね。

 

素敵な1週間をお過ごし下さいキラキラ

 

それでは、またバイバイ

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<ブログ後記>4月14日

 

今回は、老化に伴って減少する「NAD+(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)についてお話をさせていただきました。

 

「NAD+」の低下により、疲れやすくなるといった生易しい(なまやさしい)問題ばかりではなく、1細胞あたり1日平均5万から10万箇所程度生じるとされる「DNA損傷」を修復できないまま、日々を過ごしていかなくてはならない・・・という重大な問題が生じてくるわけですね。

 

「NAD+」の性質をもう少し詳しく見てみたいと思います。

 

まず、「NAD+」は、組織ごとにプールされて存在することが分かっています。


しかしながら・・・もちろん、ヒトが生まれた時から「NAD⁺」は細胞内で常に消費されています。

 

それと同時に、「NAD⁺」の消費から生まれる分解産物を再利用して、効率よく「NAD+」を再合成する経路があるわけです。

 

これが「NAD+のサルベージ経路」ということになります。

 

これを示した図が、以下のようになります。



(JTKクリニック資料より)

 

少し分かりにくいかもしれませんが・・・律速酵素であるNAMPT(ニコチンアミドホスホリボシルトランスフェラーゼ)」

 

「ニコチンアミド(NAM)」を「NMN」に変換し、続いてNMNAT(ニコチンアミドモノヌクレオチドアデニリルトランスフェラーゼ)」がNAD+を再合成することが知られています(参考5)

少しわかりやすくお話をしますと・・・私たちの体内では、「NAD+」を消費し、そのカスとして「NAM(ニコチンアミド)」が残ります。


これをそのまま捨てず、「NAMPT(ニコチンアミドホスホリボシルトランスフェラーゼ)」いう酵素を使って再び「「ニコチンアミド(NAM)」」「NMN」へと作り直し、さらにNMNAT(ニコチンアミドモノヌクレオチドアデニリルトランスフェラーゼ)」という酵素

を用いて、「NAD+」を作るというわけですね。

 

「NAD+」を消費した後に残る「「NAM(ニコチンアミド)」を「リサイクル」して、再び「NAD+」を作るというメカニズムが存在するわけですね。

この「リサイクル」のメカニズムが「NAD+のサルベージ経路」ということになりますね。

 

実際に・・・ヒトの体内の「NAD+」の大部分(約90%以上)は、このリサイクルによって賄われ(まかなわれ)ています。

 

これにより、エネルギー代謝やシグナル伝達に必要な細胞内の「NAD+の恒常性」が保たれている・・・ことになりますね。

 

正確には「若い年代では・・・」という条件がつきます。


残念ながら、この経路で最も重要な酵素である「NAMPT(ニコチンアミドホスホリボシルトランスフェラーゼ)」活性が、加齢とともに低下してしまうのですね。


「NAMPT」の活性の低下 →→→ リサイクル効率が落ちる→ 

結果として「NAD+」の減少 ということになるわけです。

さらに最近の知見では「NAD+」が「消費型酵素」の基質として、

とても、大量に消費されることが分かってきたわけです。


どのようなものが「NAD+」を大量に消費してしまうのでしょうか?
主要な「NAD+」消費酵素は以下の3群となります。

【1】PARPファミリー: DNA修復およびゲノム安定性維持。

【2.】サーチュイン(SIRT1-7: エピジェネティック制御および代謝調節。

【3】NAD+グリコヒドロラーゼ(CD38, CD157): NAD+分解およびカルシウムシグナル。

【1】は本文内でご紹介したものですね。


さらに興味深いこと・・・「NAD+低下」と「DNA修復障害」は、孤立した現象ではなく、相互に増幅し合う悪循環を形成するということが報告されています。

 

Chiniらは2024年のAging Cell誌総説で、この悪循環の全体像を以下のように整理しています(参考6)。


その内容を見てみますと・・・


まず、「代謝ストレス」や「DNA損傷」が「PARP1」を活性化し、「NAD+」が消費され、その量が低下します。
 

この「NAD+」の低下は「サーチュイン1(SIRT1)」活性を抑制し、DNA修復効率やクロマチン維持機能が低下します。

修復されない「DNA損傷」が蓄積すると、細胞は「p16」や「p21」といった細胞周期阻害因子を発現します。


細胞を分裂させるために働く「細胞周期」がストップしますと、「細胞老化(cellular senescence)」の状態になってしまいますよね。
 

「老化細胞」は、「SASP(老化関連分泌表現型)」という炎症性サイトカインなどを分泌して、周囲の免疫細胞やマクロファージの表面に「CD38」などの発現を促進(そくしん)します。

この「CD38」の増加は、組織全体の「NAD+」をさらに分解し、全体的な「NAD+」レベルを低下させます。
 

そして「NAD+」がさらに低下した状況では、「PARP1」および「サーチュイン1(SIRT1)」の機能をいっそう障害し、「DNA損傷」の蓄積「老化細胞」の増加を加速させるということになります(参考7,8)。

この「悪循環」は組織レベルで進行し、臓器機能の低下、フレイル(虚弱)、加齢性疾患の発症につながっていくというわけです。

 

「心臓」においても、加齢に伴う「NAD+」量の低下が報告されており、心機能の加齢性変化との関連が指摘されているのですね

(参考9)。

では、最後に加齢により「NAD+のサルベージ経路」の機能が低下し、「NAD+」が低下し、「DNAの修復障害」が起こっている状況で

「NMNサプリ」「NAD+点滴」は、どのような意味を持っているのでしょうか?


(JTKクリニック資料より)

 

「 NMNサプリメント」服用の意味は、リサイクル工程の「ショートカット」であると言えます。

本来であれば、NAM →(NAMPT)→ NMN」というステップが必要ですが、

「NAMPT(ニコチンアミドホスホリボシルトランスフェラーゼ)」の能力は加齢で衰え(おとろえ)ていますよね。

 

「NMN」を直接摂取することで、衰えた「NAMPT」を飛ばして(ショートカットして)、その次の工程である「NMN → NAD+」へスムーズに進めることができます。

つまり、「NMNサプリ」のメリットとは、 細胞内での「NAD+」の合成を効率的にブーストでき、サーチュイン遺伝子の活性化やエネルギー代謝の改善が期待できるようになります。

一方で、「NAD+点滴」の意味は、外部からの「直接的なNAD+の大量補給」ということになります。

「NAD+点滴」は、「NMNサプリメント」とは異なるアプローチでNAD+レベルに働きかけます。

「NMNサプリ」は、消化管での代謝や、肝臓での「初回通過効果」を受けて、その効果には個人差が生じるとされていますが

 

「NAD+点滴」は、こうした影響を受けずに直接血中に「NAD+」そのものを送り込みます。 これにより、全身の組織や細胞へ迅速に「NAD+」を届けることを狙って(になって)います。

そのメリットは、 経口摂取よりも血中濃度を急激に高めることができ、脳の認知機能へのアプローチや、強い疲労感の回復などを目的として利用されます。

ここで、浮かんでくる疑問は、「老化細胞」を減らすことは周囲の免疫細胞の「CD38」を減らすことになりますので、「NAD+」の大量消費を改善することができるのでしょうか?

答えとしては、理論的には「YES(イエス)」であり、動物実験レベルでは支持するエビデンスが得られているということになります。

ただし、いくつかの重要な留意点があります。

まず、老化細胞→SASP→CD38→NAD+低下という因果経路が確立されています。

そして・・「老化細胞除去」が「NAD+レベル」を部分的に回復させるエビデンスがあります。

Kirkland らのNature Medicine総説(2022年)では、「老化細胞」がSASPを介してマクロファージ表面の「CD38」を活性化し

組織内の「NAD+レベル」を減少させること、そしてセノリティクス(老化細胞除去薬)が組織の「NAD+レベル」を部分的に回復させることが記載されています(参考10)
 

さて、あなたは「NAD+」の濃度を維持しなから、「老化細胞」を

除去できる日を待ちますか?爆  笑

 

それとも「老化細胞」を除去できる日がきて、その時に「NAD+」の濃度が増加するのを待ちますか?笑い泣き

 

今回も最後までお付き合いいただき

誠にありがとうございましたお願い

 

参考)

1)Mutagenesis. 2004 May;19(3):169-85. 

Endogenous DNA damage in humans: a review of quantitative data

Rinne De Bontら

 

2)Cancer Res. 2012 Nov 1;72(21):5588-99. 

Trapping of PARP1 and PARP2 by Clinical PARP Inhibitors

Junko Muraiら

 

3)Nat Commun. 2018 Feb 27;9(1):844. 

NAD+ analog reveals PARP-1 substrate-blocking mechanism and allosteric communication from catalytic center to DNA-binding domains

Marie-Frabce Langelierら

 

4)Proc Natl Acad Sci U S A. 2015 Mar 3;112(9):2876-81. 

In vivo NAD assay reveals the intracellular NAD contents and redox state in healthy human brain and their age dependences

Xiao-Hong Zhuら

 

5)Biochem Soc Trans. 2019 Feb 28;47(1):119-130.
Keeping the balance in NAD metabolism
Øyvind Strømlandら

 

6)Aging Cell. 2024 Jan;23(1):e13920.
 NAD metabolism: Role in senescence regulation and aging
Claudia Christiano Silva Chiniら

 

7)Front Immunol . 2025 Jun 2:16:1579924.
 Unveiling the role of NAD glycohydrolase CD38 in aging and age-related diseases: insights from bibliometric analysis and comprehensive review
Xianghui Zhaoら

8)Mol Biol Cell. 2019 Sep 15;30(20):2584-2597.
 NAD+ consumption by PARP1 in response to DNA damage triggers metabolic shift critical for damaged cell survival
Michael M Murataら

 

9)Circulation. 2021 Nov 30;144(22):1795-1817.
NAD+ Metabolism in Cardiac Health, Aging, and Disease
Mahmoud Abdellatifら

 

10)Biochem Biophys Res Commun 2019 May 28;513(2):486-493.
The NADase CD38 is induced by factors secreted from senescent cells providing a potential link between senescence and age-related cellular NAD+ decline
Claudia Chiniら

 

(東京ガーデンテラス紀尾井町「花の広場」の噴水)

(筆者撮影)

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