こんにちは、内科医 ひとちゃんですニコニコ

 

昨夜が雨の降っておりましたので、雨の休日と思っていました。

そんな予想に反して、青空の広がる休日となりました。

 

少し蒸し暑い(むしあつい)のには変わりないのですが、窓からは気持ちのよい風が入ってきます。

 

皆さまの体調は、いかがでしょうか?

 

 

          (筆者が人工知能 AIで作成)

 

今回は「幹細胞(かんさいぼう)」についての話題にしてみたいと思います。

 

「幹細胞」とは、どのようなものであったでしょうか?

 

幹細胞には、いくつかの特徴的な性質がありましたね。

主な特徴を詳しく見てみたいと思います。

 

 

1)自己複製能力

 

「幹細胞」は自己複製する能力を持っていましたよね。

これは、同じ性質を持つ細胞を無限に生成し続ける能力を意味します。

これにより、幹細胞は長期間にわたって細胞源として存在し続けることができます。

 

2)分化能力

 

「幹細胞」は特定の条件下で、異なるタイプの細胞に分化する能力があります。

例えば、「造血幹細胞」は赤血球や白血球など、さまざまな血液細胞に分化することができますし、「神経幹細胞」であれば神経系の細胞のみに分化できることになります。

 

この性質により、「幹細胞」は組織や器官の修復、再生に不可欠であると言えます。

 

3)ニッチ依存性

 

「幹細胞ニッチ(stem cell niche)」と呼ばれ.「幹細胞」が各組織中に局在する場,もしくは微小環境.細胞外シグナルや細胞接着の場,酸素,栄養素等の供給を介して幹細胞の維持,機能制御に深くかかわるとされています。

 

4)再生能力

 

「幹細胞」は損傷した組織の修復や、病気の治療に利用される可能性があると考えられています。

 

例えば、心筋梗塞後の心臓組織の修復や、糖尿病に関連する膵臓のインスリン分泌に関与する「β細胞(ベータさいぼう)の再生に幹細胞が使用されることなどが、研究から明らかにされつつあるのですね。

 

これらの「幹細胞」の持つ特性が明らかになってきたことより、「幹細胞」は、再生医療の分野で、現在でも非常に重要な役割を担っていると考えられているのですね。

 

 

 

では・・・「幹細胞」は、血管内の投与されると・・・本当の損傷が激しい臓器に到達することができるのでしょうか?

それとも・・・損傷した臓器に到達することなく、無駄になってしまうのでしょうか?

 

損傷した臓器に到達すれば、すんなりと幹細胞は、その臓器に分化することは可能なのでしょうか?

 

・・・といろいろな疑問が出てきますが・・・続きは、後日の話題にしたいと思います。

 

 

素敵な1週間をお過ごしくださいキラキラ

 

それでは・・・またバイバイ

 

<ブログ後記>6月18 日

 

1日中降り続いた雨も止み(やみ)、窓からは涼しい風が入ってきます。あと、数日で梅雨(つゆ)に入るのだとか。

今回は、「幹細胞」の移植のお話をさせていただきました。

 

通常の「幹細胞」の移植という言葉は、大袈裟(おおげさ)であるかもしれませんね。
それは、どのようなものになるのか?・・・について、少しお話をしてみたいと思います。

 

まず、患者さんの脂肪組織から、「幹細胞」を採取します。

脂肪組織から採取された「幹細胞」は、「間葉系幹細胞(かんようけいかんさいぼう)」となるわけですが、この「間葉系幹細胞」は、損傷した組織の修復に重要な役割を果たすことが知られています。


どのような役割か・・・と言いますと・・・「間葉系幹細胞」は、損傷した組織に移動し、損傷した組織の細胞を置き換えたり、組織の修復を促進する因子を分泌することが知られているのですね。

治療としては・・・脂肪組織から採取された「間葉系幹細胞(かんようけいかんさいぼう)」は、培養・増殖した後に・・・患者さん自身に点滴投与されるわけです。

では、「幹細胞」は、点滴された後(あと)に・・・本当に損傷の激しい組織に優先的に到達することができるのでしょうか?

 

これは、多くの方が疑問に思われることかもしれませんね。

実は・・・「幹細胞」は、ほぼ正確に損傷した部位に到達(とうたつ)することができるとされています。

「幹細胞」が点滴投与された際に「損傷した組織」に優先的に到達するメカニズムは「ホーミング」と呼ばれています。


このメカニズムは、次のようなものであるとされています。

組織に損傷がありますと、「炎症」を示すシグナルとして「サイトカイン」や「ケモカイン」という物質が放出されます。


これらの分子は、「幹細胞」の特定の受容体に結合し、「幹細胞」を誘導することが知られています。
そのほかに「血管内皮細胞」は、活性化や幹細胞が血管壁に接着した後、細胞は血管の壁を越えて、組織間質に移動する仕組みなどが存在することも分かっています。

問題は、損傷する部位にたどり着いた後・・・ということになります。

いったい、どのような問題が生じるというのでしょうか?それは、次のようなものになります。

もちろん、「間葉系幹細胞」は、先にも述べたように・・・損傷した組織に移動し、損傷した組織の細胞を置き換えたり、組織の修復を促進する因子を分泌したりします。
 

しかしながら、この「損傷」の多い組織には「老化細胞」が蓄積していると考えられているのですね。

そして、いつものお話になりますが・・・「損傷」の多い組織の「老化細胞」は、他の組織の「老化細胞」と同様に「炎症性サイトカイン」などの「老化関連分泌表現型(SASP)」を分泌することが知られています。

そして、「SASP」は損傷の多い組織の中でさえも、周囲の細胞を「老細胞」化をしていくというわけです。

実は・・・このように「炎症性サイトカイン」などの「SASP」が多く存在する部位には、「幹細胞」は付着(ふちゃく)できない可能性が高い可能性が指摘されているのですね。

 

仮に付着できたとしても、その「幹細胞」は、分裂できない可能性が高いと考えられてます。

 

あたり前のことですが・・・「幹細胞」が「損傷」のある部位に付着できなければ、当然のことですが・・・「幹細胞」の持つ組織修復力を発揮できないということになりますね。

 

もちろん、「老化細胞」を除去できるワクチンなどが既にあれば問題はないのですが・・・残念ながら、現時点では市場に出ていません。

 

・・・としますと、どうすればよいか?・・・ということになります。

現時点で、ひとつの考えられる方法は、自分自身の「NK細胞」を用いる方法です。癌の予防治療として施行されるものですね。

 

以前にもお話をしましたが、「NK細胞」は「老化細胞」を破壊することができます。

 

「炎症性サイトカイン」などの「SASP」を放出する「老化細胞」がなくなれば、その後に投与した「幹細胞」は何の問題もなく損傷部位に付着し、分裂を開始できることが想像できます。こうした議論は、海外の論文でも散見(さんけん)されます。

もうひとつの方法としては、何らかの方法により、損傷部位に存在する「炎症性サイトカイン」などの「SASP」の量を減少させ、その再増加が起こらないうちに「幹細胞」を付着させ、分裂を開始させてしまうという考え方です。

 

これは、「炎症性サイトカイン」などの「SASP」をアフェレーシス療法を用いて、除去しようとするもので、いくつかの研究開発が進んでいるのだそうです。

 

「幹細胞」治療にリスクがないわけではありません。施行する際には、担当医師から充分な説明を受け、メリット・デメリットを確認していく必要がありそうですね。

 

今回も最後までお付き合いいただきまして

誠にありがとうございましたお願い

 

 

参考)

1.Gerontology.2022  Mar; 68(3): 339–352. 

Aging and Mesenchymal Stem Cells: Therapeutic Opportunities and Challenges in the Older Group

Huan Chenら

 

2.Front Immunol.. 2022 Sep 29:13:940577.

Characterization of age-related immune features after autologous NK cell infusion: Protocol for an open-label and randomized controlled trial

Xiaofeng Tangら

 

3.Int J Mol Sci.2016 Jul; 17(7): 1164. 

Senescence in Human Mesenchymal Stem Cells: Functional Changes and Implications in Stem Cell-Based Therapy

Valentina Turrinettoら

 

 

 

 

(以前のphoto:  筆者撮影)

 

 =================================

 JTKクリニックホームページ

 

 理事長、院長  

小笠原  均  (Hitoshi Ogasawara)   

医学博士, 内科医

(総合内科、リウマチ専門医)

新潟大医学部卒

 

  <JTKクリニック・アンチエイジング治療>

 

 

image

 

 

image

 

Instagram

   

<内科医ひとちゃんが選んだJazzの曲>ニコニコ

 

 

<内科医ひとちゃんが選んだ懐かしい曲>爆  笑

 

<今週、なんとなく聞いてみたい曲>

       

 

     =====================

JTKクリニックからのお知らせ

 

◯外来診療は予約制をとり、待ち時間が生じないようにしています。

 

◯ ダイエット漢方製剤は、オンライン診療でも処方が可能です。

 

◯ 線維筋痛症に対するノイロトロピン等の点滴療法、トリガーポイント注射を行なっております。(セカンドオピニオン診療も可)

 

 

◯ 新型コロナウイルス後遺症外来を行なっています。 

(オンライン相談も可)

 

 

 

 

<JTKクリニック 所在地>

〒102-0083

東京都千代田区麹町4-1-5麴町志村ビル2階

電話 03-6261-6386

Mail:info@jtkclinic.com

==================================

こんにちは、内科医 ひとちゃんですニコニコ

 

梅雨の鬱陶しい(うっとうしい)季節を想像していたのですが・・・窓からは薄日が差し込み、爽やかな風も流れ込んでくる休日の午後となりました。

 

暦を見ますと七十二候は「蟷螂生(かまきりしょうず)」になっていますね。

 

「カマキリ」の英語名は、「Praying mantis」で、その前肢を振り上げる姿勢が祈りの格好に似ていることから、このように呼ばれるのだとか。

 

「カマキリ」について調べてみたところ、カマキリの寿命は約7ケ月

なのだそうです。メスは産卵期になると体力を蓄えるためにオスを食べてしまうそうで、オスの方はさらに寿命が短いのだとか。

 

なんとも儚い(はかない)命というわけですね。

 

皆さまの体調は、いかがでしょうか?

 

 

(筆者がAIで作成)

 

今回は「動脈硬化(どうみゃくこうか)」を話題に取りあげてみたいと思います。

 

「動脈硬化」は初期症状がほとんどなく、加齢とともに進行してしまう「沈黙(ちんもく)の疾患」といわれますね。

 

生まれた時から、徐々に「動脈硬化」は進行していくとされますので・・・まったく、「動脈硬化」がないという方はいないはず・・・です。

 

では、この「動脈硬化」の進行に逆行(ぎゃっこう)する方法はないのでしょうか?・・・というのが、今回のテーマです。

 

まずは、「動脈硬化」のメカニズムを再度、取り上げてみたいと思います。

 

「動脈硬化(アテローム性動脈硬化)」は、心臓病や脳血管障害などの心血管系疾患の主な原因となる状態です。

 

この病態のメカニズムは、複数の段階に分けて説明することができるとされていましたね。

 

1.血管内皮細胞の損傷

 

動脈の内側を覆う「血管内皮細胞」が、高血圧、高脂血症、喫煙、糖尿病などのリスク因子によって損傷を受けます。これにより、動脈の内壁が炎症を起こしやすくなります。

 

2.リポプロテインの蓄積

 

損傷した血管内皮を通じて、「低密度リポプロテイン(LDL)」などの脂質が動脈壁の内側に侵入し蓄積します。LDLは酸化されやすく、

「酸化LDL」はさらに炎症を促進します。

 

3.マクロファージの活動

 

「酸化LDL」を取り込んだマクロファージ(免疫細胞の一種)がフォーム細胞と呼ばれる脂肪を多く含む細胞に変化します。

これらのフォーム細胞が「プラーク(アテローマ)」の形成を促します。

 

4.プラークの形成と成長

 

蓄積された脂質、フォーム細胞、線維性組織などが複合して、動脈壁に「プラーク」を形成します。この「プラーク」が成長すると動脈の通路が狭くなり、血流が阻害されます。

 

5.プラークの安定性の変化

 

「 プラーク」は線維性キャップで覆われていますが、このキャップが薄いと「プラーク」が破裂しやすくなります。

 

「プラーク」が破裂すると、その部分で血栓が形成され、心筋梗塞や脳梗塞などの脳血管障害を引き起こす可能性があります。

 

このように・・・「動脈硬化」の進行は、これらのメカニズムが連鎖的に作用することで進行し、最終的には心筋梗塞や脳梗塞などの重大な心血管事象を引き起こす原因となるとされるわけですね。

 

 

ところで・・・上記のメカニズムでの中で「動脈硬化」の進行を緩やかにし、ストップさせ、改善の方向に逆行させられる可能性があっるとしたら・・・どの段階なのでしょうか?

 

これは、1.の血管内皮細胞の損傷を改善させることが重要であると考えられており、・・「血管内皮細胞」の機能が正常化し、その安定を保つことができれば・・・「動脈硬化」の進行を遅らせるか、「逆行」させる可能性がある・・・と考える研究者は少なくないのですね。

 

もちろん、これまでも「動脈硬化」の進行予防のために・・食生活の改善(果物、野菜、全粒穀物、良質な脂肪の摂取増加)、定期的な運動、禁煙など推奨(すいしょう)され、血圧のコントロール、血糖値の管理、脂質プロファイルの改善などが必要だと言われてきたわけですが・・・

これらのことは、すべて「血管内皮細胞」の損傷を改善する意味で、強調されてきたこととも言えるのですね。

 

例えば・・・「高血圧」は、「血管内皮細胞」に対して直接的な損傷を与えますし、「糖尿病」は、「血管内皮細胞」の機能障害のリスクを高めることが知られています。

 

また、最近では「スタチン系」という薬剤が使われることも多いわけですが・・・「スタチン系」系薬剤は、「LDLコレステロール」を低下させるだけでなく、抗炎症作用も持っており、「血管内皮細胞」の機能を改善する効果があります。

 

このように・・・これまでも「動脈硬化」の進行を予防する目的で、さまざまな方法が行われてきたのですね。

しかしながら、もしかすると・・・その効果は限定的であったかもしれません。

 

そこで・・・さらに違う方法によって、「血管内皮細胞」の損傷を改善させられないか?・・・となってくるわけです。

 

「血管内皮細胞」も「老化細胞」化して、炎症性サイトカインを放出し、周囲の正常な「血管内皮細胞」を急速に「老化」させてしまったりすることも知られており、なかなか、ハードルが高い問題になっているのかもしれません。

 

そこで・・・「NAD+(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)」の濃度を高めることで、「サーチュイン1(SIRT1)遺伝子」の活性化、そして、「ATP産生」を増加させることは・・・

 

「動脈硬化」を改善するのではないか?・・・と考える研究者が出てきたわけですね。

 

もちろん・・・「その可能性は高い・・・かも」というのが、その答えになるのですが、この続きは後日の話題にしたいと思います。

 

 

素敵な1週間をお過ごしくださいキラキラ

 

それでは、またバイバイ

--------------------------------------------------------------------

<ブログ後記>6月11日

 

「想像力(そうぞうりょく)は、知識(ちしき)より大切だ」という言葉を残したのは、理論物理学者のアインシュタインです。

 

以前であれば・・・「動脈硬化」を改善するなんて、馬鹿げている・・・と一笑に付され(いっしょうにふされ)たことでしょうね。

 

しかしながら・・・世界の中には・・・ひょっとして「動脈硬化」を改善することは、可能なのではないか・・・と考える研究者も少なくないようです。

 

その考え方を少し紹介しますと、次のようなものになります。

 

 

まず、動脈の最も内側に存在するのが「血管内皮細胞」となります。

 

「血管内皮細胞」の機能は、以前のブログ内でもご紹介したのですが・・・

一酸化窒素(NO)やエンドセリンなど数多くの血管作動性物質(血管に働きかける因子)を放出しています。。

 

そして、血管壁の収縮・弛緩(血管の硬さ・やわらかさ)をはじめとして、血管壁への炎症細胞の接着、血管透過性、凝固・線溶系の調節などを行っていることが知られています。

 

さらに「血管内皮細胞」は、壁の内側に常に固定されているわけではなく、遊走能(ゆうそうのう)を持ち、移動することが可能な細胞なのですね。

 

「遊走能」とは、細胞などが生体のある場所から別の場所に移動する能力を指し(さし)ます。

 

「血管内皮細胞」の遊走能は、血管障害の程度や修復機転に関与していると考えられています。

 

また、次のようなことも分かっています。

 

「動脈硬化巣」に「血管内皮細胞」の「老化細胞」が蓄積していることがわかり,「血管内皮細胞」の「老化」を抑制すると血管機能が保たれ,

その反対に「血管内皮細胞」の「老化」を促進すると・・・血管機能が悪化することも報告されています。

 

さらに「血管内皮細胞」の「老化」を抑制することは,脳血管・心血管疾患だけでなく,肥満や糖尿病も改善させることが明らかとなっているのですね。

 

こうした現時点で分かっている知見(ちけん)を前提に考えますと・・・次のような考え方がされるのは、不思議でないように思えます。

 

「NAD+(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)」の濃度が高まることと、「サーチュイン1(SIRT1)遺伝子」の活性化、そして「ATP産生の増加」は、動脈硬化の改善に寄与する可能性があります。

 

これらの要因が、重要な役割を果たしていると考えられるのは、以下のようなメカニズムで、「動脈硬化」の予防や改善に関与すると考えられています。

 

1.NAD+とSIRT1の関係

これは、説明するまでもないかもしれません。

 

「NAD+」は、細胞内での重要な補酵素であり、エネルギー代謝や細胞の修復プロセスに必要です。

「SIRT1(サーチュイン1遺伝子)」は、NAD+依存的に産生が増加し、「DNA修復」、「抗炎症反応」、細胞の「老化防止」など多くの生理的プロセスに関与していますよね。

 

つまり、「NAD+」の濃度が高まると、「SIRT1」の活性が増し、これが「血管内皮細胞」の機能を向上させる可能性があるということになりますね。

 

次のことは、とても興味深いものになります。

 

2.内皮機能の改善

「SIRT1」は、「血管内皮細胞」の健康を保持することで知られており、この遺伝子の活性化は血管拡張、抗炎症作用、抗酸化作用を通じて「血管内皮機能」を改善します。

 

これにより、動脈硬化の初期段階である「血管内皮細胞」の機能障害を防ぐことが可能になる可能性があるということになります。

 

3.エネルギー産生の増加 

細胞のエネルギーにあたるものは、「ATP」でしたね。

「ATP」産生の増加は、さまざまな細胞の生存と機能の維持に

不可欠であると考えられています。

 

「血管内皮細胞」も例外ではなく、ストレスや損傷に対する耐性が高まる可能性が高いということになります。

 

これらをすべて、可能にするには・・・

 

(図はお借りしました)

 

となるのですが・・・果たして、経口からのNMNサプリで、充分な「動脈硬化」を改善するまでの「NAD+」濃度を保てるのか?・・・

という若干の疑問も残りますね。

 

ならば・・・欧米各国では、どのような考え方をするのか?・・・

ということになっていくのですが・・・

 

この話題は、またの機会にしたいと思います。

 

今回も最後までお付き合いいただきまして

誠にありがとうございましたお願い

 

参考)

1.J-Stage「血管内皮細胞老化について」

 

2.Open Heart.2022; 9(2): e002171. 

Nutraceutical activation of Sirt1: a review

James J DiNicolantonioら

               など

 

image

 (ミッドタウン東京 フィリップ・ミル 東京

筆者撮影)

 

 =================================

 JTKクリニックホームページ

 

 理事長、院長  

小笠原  均  (Hitoshi Ogasawara)   

医学博士, 内科医

(総合内科、リウマチ専門医)

新潟大医学部卒

 

  <JTKクリニック・アンチエイジング治療>

 

 

image

 

 

image

 

Instagram

   

<内科医ひとちゃんが選んだJazzの曲>ニコニコ

 

<内科医ひとちゃんが選んだ懐かしい曲>爆  笑

 

<今週、なんとなく聞いてみたい曲>

       

 
     =====================

JTKクリニックからのお知らせ

 

◯外来診療は予約制をとり、待ち時間が生じないようにしています。

 

◯ ダイエット漢方製剤は、オンライン診療でも処方が可能です。

 

◯ 線維筋痛症に対するノイロトロピン等の点滴療法、トリガーポイント注射を行なっております。(セカンドオピニオン診療も可)

 

 

◯ 新型コロナウイルス後遺症外来を行なっています。 

(オンライン相談も可)

 

 

 

 

<JTKクリニック 所在地>

〒102-0083

東京都千代田区麹町4-1-5麴町志村ビル2階

電話 03-6261-6386

Mail:info@jtkclinic.com

==================================

こんにちは、内科医 ひとちゃんですニコニコ

 

6月に入りまして、最初の休日となっています。

暦に目をやりますと・・・その七十二候は「麦秋至(むぎのときいたる)」となっています。

 

この時期にもう「秋」とは、なんとも不思議な気がして、調べて見ますと・・・

 

その意味は、麦が実り、たわわに黄金色に穂をつける、麦にとっての「秋」なのだそうです。

そして、この「秋」とは、百穀(ひゃっこく)が成熟するとき・・・ということになるようです。

 

皆さまの体調は、いかがでしょうか?

 

(筆者がAIで作成)

 

今回は、「サーカディアンリズム」に関連するお話をしてみたいと思います。

 

「サーカディアンリズム」とは、どのようなものですか?・・・という質問をされることが、最近は多くなりました。

 

「サーカディアンリズム」とは、どのようなものであったでしょうか?

 

あらためて、整理をしてみたいと思います。

 

「サーカディアンリズム」とは・・・

 

ヒトの体内時計が、生成する約24時間周期の生理的リズムですね。

もちろん、ヒトだけでなく、地球上の動物もこのリズムを持っています。

 

これは、地球の自転周期に合わせて進化した「内部的なメカニズム」で、生物が日々の環境の変化に適応できるようにしています。

 

そして、この「サーカディアンリズム」は、「睡眠」と「覚醒(かくせい)」のサイクル、「ホルモン分泌」、「体温調節」、「食欲」などの多くの生理活動を調節することが知られています。

 

サーカディアンリズムの乱れは、睡眠障害、うつ病、肥満、糖尿病などの健康問題につながることがあると考えられていましたよね。

 

このように重要な機能を持つ「サーカディアンリズム」ですが・・・

実は「免疫力」の強化作用を持つことも報告されています。

 

話は少し脱線しますが・・・一般的な話として、「免疫力」が高い・・・といった場合、どのようなことを指しているのでしょうか?

 

そうですね。これは、生まれつき備わって(そなわって)いる「自然免疫」のなかのひとつである「NK(ナチュラル・キラー)細胞」の活性が高いこと・・・でしたよね。

 

「NK細胞」の数が多いこと・・・と言いたいところですが・・・

高齢者では「NK細胞」の数は、むしろ増加していることが多いのですが、その活性は低下しており、「免疫力」は低下する・・・というお話は、以前のブログでご紹介させていただきましたよね。

 

「NK細胞」は免疫系の重要な一部であり、がん細胞やウイルスに感染した細胞を早期に認識して破壊する役割を担っています。

 

「NK細胞」と「サーカディアンリズム」の関係に話を戻しますと・・・いくつかの研究では、次のようなことが報告されています。

 

例えば・・・「サーカディアンリズム」は、「NK細胞」の活性に周期的な影響を与えることが示されています。

 

例えば、ヒトの「NK細胞」の活性は夜間に高まり、日中に低下する傾向があります。

 

このリズムは、個体の免疫反応効率を高めるために重要であると考えられているのですね。

 

また、こんなことも報告されています。

 

アルコール摂取の影響による「NK細胞」のリズムの変動も観察され、エタノール摂取は「NK細胞」の活性にマイナスの影響を及ぼすことが確認されているのですね。

 

素敵な1週間をお過ごしくださいキラキラ

 

それでは、またバイバイ

 

参考)

1)Sleep, Vol.24(7),October 2001

Total Sleep Deprivation Induces an Acute and Transient Increase in NK Cell Activity in Healthy Young Volunteers 

Yasuhiro Matumoto ら

---------------------------------------------------------------------

<ブログ後記>6月4日

 

今回は「サーカディアンリズム」が「免疫」のシステムにどのような影響を与える可能性があるか?・・・というお話をさせていただきました。

 

「サーカディアンリズム」、概日(きじつ)リズムとも呼ばれ、およそ24時間の周期で体内で調整される生物学的リズムのことを指します。

 

そして、このリズムは、本文内でもご紹介したとおり、「睡眠」と「覚醒」のサイクル、ホルモンの分泌、体温の調節、食欲など、多くの生理的プロセスに影響を与えることが知られています。  

 

そして、このリズムが乱れると、睡眠障害、気分障害、代謝異常などの健康問題を引き起こす可能性があると考えられています。

 

以前のブログでもご紹介したと思いますが・・・

 

「サーカディアンリズム」を主に調整するのは、「時計遺伝子」でしたよね。

image

(図はお借りしました)

 

例えば、ヒトでは「CLOCK」や「BMAL1」などの時計遺伝子が、体内時計の主要な部分を形成しており、これらの遺伝子が相互作用してタンパク質を生産し、そのタンパク質の濃度の変動が体内時計の周期を決定するのでしたね。

 

これにより、生物は自然の光暗周期に適応し、効率的に生活することが可能になります。

 

目から光が入ると時計遺伝子がリセットされる仕組みもありましたよね。

 

この時計遺伝子のリセットは、主に視交叉上核(SCN)と呼ばれる脳内の領域を通じて行われます。

SCNは体内時計の中心的役割を担っており、外界の光の情報を受け取って体内のリズムを調整します。その過程は以下のように進行します。

image

(図はお借りしました)

 

詳細は、またの機会にいたしますが・・・

 

このように、外界からの光の情報は目を通じて脳に伝わり、「時計遺伝子」を介して、「体内時計」がリセットされ、生物が環境に適応できるように生理的リズムが調整されるわけですね。

 

 

この「サーカディアンリズム」は、NK細胞の活性を高めるのではないか?・・・と考えられているわけです。

 

「NK細胞」の数よりも、「NK細胞」の活性が重要である・・・ということは、以前のブログ内でも強調させていただきましたよね。

 

例えば、ある論文ではラットの動物での検証なのですが・・・

 

ラットの脾臓から濃縮した「NK細胞」における時計遺伝子(Per1、Per2、Bmal1、Clock)、Dbp(時計制御出力遺伝子)、CREB(クロックシグナル伝達に関与)、細胞溶解因子(グランザイムBおよびパーフォリン)、サイトカイン(IFN-γおよびTNF-α)の発現の概日変化を測定しました。

 

この研究で得られた結果は、「NK細胞」に機能的な分子時計機構が存在し、「サーカディアンリズム」に連動する形で、細胞溶解因子(グランザイムBおよびパーフォリン)、サイトカイン(IFN-γおよびTNF-α)の発現の概日変化が認められたと報告されています。

 

「サーカディアンリズム」が、「NK細胞」に及ぼす変化については、g現在、さまざまな形で検証されているようです。次のように考えられているようです。一部を紹介しますと・・・

 

1. 機能的な変化:

   a. 殺傷能力の日内変動

      夜間から早朝にかけてNK細胞の細胞傷害活性が最大化する

      

      →結果として、癌細胞や感染細胞の排除効率が上昇する

 

   b. サイトカイン分泌プロファイルの変化

      

 IFN-γ、TNF-α、GM-CSFなどのサイトカイン分泌が夜間に増加。

      他の免疫細胞(T細胞、マクロファージ)を活性化する。

      

   c. 免疫監視能力の時間依存性

      NKG2D、NKp46などの受容体発現が日中よりも夜間に増加。

      異常細胞の認識と排除が、夜間により効率的に行われる可能性。

 

3.  SIRT1(サーチュイン1)-mTOR経路の活性変化

      SIRT1の発現と活性が日内変動を示す。

       夜間に高まり、mTOR経路を活性化する。

      その結果、NK細胞の増殖能、サイトカイン産生、細胞傷害活性が  

  増加する。

 

まだまだ、あるのですが・・・こちらは、またの機会にしたいと思います。

 

諸説さまざまなわけですが・・・「サーカディアンリズム」が作り出す「夜間」に「NK細胞」の活性が高くなり、「癌細胞」、「ウイルス感染細胞」、そして、「老化細胞」を効率よく除去できる仕組みがあるようです。

 

そして、3.のSIRT1(サーチュイン1)-mTOR経路とも関連してくっるのは、興味深いところです。   

 

「mTOR」は、2種類の複合体に存在するのですが・・・

 

「mTOR」のシグナル伝達異常は、がんや心血管疾患、糖尿病など、多くの病態に関与するとされていまして、現在のアンチエイジング医療研究のひとつの柱とされているからです。

 

私には、ただの偶然とは思えないのですが・・・ね。

 

 

今回も最後までお付き合いいただきまして

誠にありがとうございましたお願い

 

 

参考)

2.J. Immunol.. 2005 Jun 15;174(12):7618-24. 

Circadian oscillations of clock genes, cytolytic factors, and cytokines in rat NK cells

Alvaro Arjonaら

 

3..J. Immunol. 1997 May 1;158(9):4454-64.

Effects of sleep and circadian rhythm on human circulating immune cells

J Bornら

 

 (筆者撮影)

 

 =================================

 JTKクリニックホームページ

 

 理事長、院長  

小笠原  均  (Hitoshi Ogasawara)   

医学博士, 内科医

(総合内科、リウマチ専門医)

新潟大医学部卒

 

  <JTKクリニック・アンチエイジング治療>

 

 

image

 

 

image

 

Instagram

   

<内科医ひとちゃんが選んだJazzの曲>ニコニコ

 

<内科医ひとちゃんが選んだ懐かしい曲>爆  笑

 

<今週、なんとなく聞いてみたい曲>

 

       
 
     =====================

JTKクリニックからのお知らせ

 

◯外来診療は予約制をとり、待ち時間が生じないようにしています。

 

◯ ダイエット漢方製剤は、オンライン診療でも処方が可能です。

 

◯ 線維筋痛症に対するノイロトロピン等の点滴療法、トリガーポイント注射を行なっております。(セカンドオピニオン診療も可)

 

 

◯ 新型コロナウイルス後遺症外来を行なっています。 

(オンライン相談も可)

 

 

 

 

<JTKクリニック 所在地>

〒102-0083

東京都千代田区麹町4-1-5麴町志村ビル2階

電話 03-6261-6386

Mail:info@jtkclinic.com

==================================

こんにちは、内科医 ひとちゃんですニコニコ

 

5月最後の休日になっています。

よく晴れていて、気持ちはよいのですが

若干、蒸し暑さも感じたりもしますね。

 

最近は、人工知能(AI)を用いて、お仕事をされる方が増えているそうですね。

 

だんだんと・・・ヒトの仕事が減ってしまうと危惧(きぐ)する声もありますが・・・そんな時代は、まだまだ先の話だろうと私は思っておりました。

 

ある日、興味本意(きょうみほんい)で画像を作らせてみました。それが下の1枚目のものになります。

ちょっと、驚きましたね。想像以上に時代は進んでいるようです。

 

皆さまの体調は、いかがでしょうか?

 

 

 

今回は、前回の続きの話題にしたいと思います
「ヒト内在性レトロウイルス(HERV)」や「レトロトランスポゾン」
が、どうやらDNAの中で、複製を繰り返しているかもしれない・・・
というお話をさせていただきました。
 
これらの遺伝子は、ある遺伝子の中に挿入されることで、本来の遺伝子の持つ配列を変えてしまったり、ある遺伝子の発現を増強させたり、抑制したりする可能性もあるわけです。
 
場合によっては、新たに疾患を引き起こす可能性もあります。
 
なぜ、このような現象が起こるのかを説明してみたいと思います。
下の図は、細胞の核の中にある「染色体」が、どのような構造から構成されるのか・・・を示したものです。
 
もちろん、染色体は2本鎖のDNAが折りたたまれた形で存在するわけですが・・・「ヒストン」というボールのようなものに巻きついた状態で存在することが知られています。この「ヒストン」には「ヒストンテール」よいう尻尾(しっぽ)のようなものが伸びています。
 
 
image
           (図はお借りしました)
 
この「ヒストン」への巻きとられ方が重要でして、きつく巻きとられた形であれば、遺伝子の「転写(てんしゃ)」はなくなり、DNAは安定した状態となります。
 
「転写」とは、DNAをコピーして、1本鎖のRNAなどが作られることですね。
このRNAから不必要な部分がなくなって(スプライシング)、mRNAが作られるわけですね。
 
このような変化を「クロマチンの構造変化」と呼ぶのですね。
 
image
一方で、「ヒストン」への「DNA」の巻き取られ方が緩くなると・・
・遺伝子の「転写(てんしゃ)」が開始されるということになります。
 
もう少しだけ詳しくお話すると、次のようになります「。
 
「ヒストン」の「ヒストンテール」に「アセチル基」がくっつきますと、ヒストン-DNA間の静電的結合が弱くなり,クロマチン構造が弛緩することで転写因子などがDNAへ結合しやすくなり,遺伝子の発現が誘導されます(ヒストンアセチル化)。
 
このヒストンのアセチル化は,アセチル基をヒストンに付加するヒストンアセチル化酵素(histone acetyltransferase:HAT)で制御をされています。
 
一方,「ヒストンテール」の「アセチル基」が除去されるとクロマチン構造が凝縮し,遺伝子の発現が抑制されるのですね(ヒストン脱アセチル化)。
 
このヒストンからアセチル基を取り除くヒストン脱アセチル化酵素(histone deacetylase:HDAC)によって制御されていることが知られています。
 
このような遺伝子の発言のOn・Offの仕組みを「エピジェネティック・スイッチ」と呼びます。
 
上記のような仕組みは・・・本来であれば、あるタンパク質が必要な時にそれをコードする遺伝子の転写を開始するためのメカニズムであったはずです。
 
「コードする」・・・というのは、その遺伝子がコピーされて、RNAが作られ、それがスプライシングをされて、mRNAになり、さらにこれが翻訳されて「タンパク質」になるということですね。
 
ところが何らかの要因で、「ヒストンアセチル化」の状態が保てなくなると・・・,常にクロマチン構造が弛緩した状態になり、
その結果、転写因子などがDNAへ結合しやすくなり,簡単に遺伝子の発現が起こりやすくなってしまうのですね。
 
このメカニズムがうまく働かないことが、「老化」や「癌」の発生にも大きな影響を与えている・・・という報告もあります。
 
しかしながら、この「「ヒストンアセチル化」の状態が保てなくなるなどの「エピジェネティック・スイッチ」のトラブルを改善させる可能性を持つものがあります。
 
これが、「NAD+(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)」から誘導される「サーチュイン遺伝子(長寿遺伝子)」ということになるのですね。
 
「サーチュイン遺伝子」は、ヒトでは他の哺乳類(ほにゅうるい)世同様に7つ存在するわけですが・・・その中でも「サーチュイン1遺伝子」と「サーチュイン6遺伝子」が注目されています。
 
とくに「サーチュイン1遺伝子」は、ヒストンを「脱アセチル化」することにより、組織の恒常性や多くの疾患のエピジェネティックな制御に重要な役割を担っているとされているのですね。
 

image

 

ヒストンを「脱アセチル化」することができれば、異常な遺伝子の発現は停止し、この間にDNAの修復をすることも可能になるというわけです。

 

もちろん、「ヒト内在性レトロウイルス」や「レトロトランスポゾン」などは、異常な遺伝子ということになりますよね。

 
そして、前回のブログでもお話をしたように・・・ヒトにおいても
多くの研究者らは、「ヒト内在性レトロウイルス(HERV)」や「レトロトランスポゾン」が発現してしまうことが、細胞老化や組織老化を進行させると考えているわけです。
 
ならば・・・「NAD+」を体内で増加させ、ヒストンを「脱アセチル化」を助け、上の図のように遺伝子の「転写」を抑制すれば、
「ヒト内在性レトロウイルス(HERV)」や「レトロトランスポゾン」が発現が減少し、細胞老化や組織老化が進行するの抑制できますよね・・・ということになりますね。
 
「NAD+」の前駆体(ぜんくたい)が、「N M N(ニコチンアミドモノヌクレオチド)」となりますね、
 
言うまでもありませんが・・・「N M N」はヒトの体内に入ると、補酵素NAD+に変換され、「サーチュイン遺伝子」を活性化すると考えられていますよね。
 
素敵な1週間をお過ごしくださいキラキラ
 
それでは、またバイバイ

 

 

参考)

1.Cell. 2023 Jan 19;186(2):287-304.

Resurrection of endogenous retroviruses during aging reinforces senescence

Xiaoqian Liuら

 

2.Int. J. Mol. Sci.2019, 20(13), 3153

The Role of SIRT1 on DNA Damage Response and Epigenetic Alterations in Cancer

Débora Kristina Alves-Fernandesaら

 

3.Int. J. Mol. Sci.2024, 25(1), 497

The Role of Sirtuin 6 in the Deacetylation of Histone Proteins as a Factor in the Progression of Neoplastic Disease 

Marzena Baranら

--------------------------------------------------------------------

<ブログ後記>5月28日

 

今宵は、雨と風が強まり、大荒れの天気となっているようです。

 

今回は、DNA「ヒストン」の「エピジェネティック・スイッチ」とその異常により、「ヒト内在性レトロウイルス」や「レトロトランスポゾン」の遺伝子が発現する可能性があるというお話をさせていただきました。

 

いったい、どのような状況になりますと・・・「ヒト内在性レトロウイルス」や「レトロトランスポゾン」の遺伝子が発現する可能性があるのか?・・・というお話をさせていただきました。

 

少し、切り口を変えて・・・「DNAのメチル化」についてもお話をしてみたいと思います。

 

 

遺伝子が発現するというのは、DNAをコピーするようにして、まずはRNAが作られ、この不要な部分が取り除かれて、m RNAが作られる「転写(てんしゃ)」のことを指します。

 

そして、次のような現象が起きるということは、よく知られていることであると思います。


ひとつの受精卵の「DNA」から、目や肝臓など多くの臓器が分化していくメカニズム・・・と言った方がわかりやすいかもしれません。

 

DNAを構成する「塩基」の配列は変わらないにも関わらず(かかわらず)、異なるmRNAが作られ、そこから異なるタンパク質ができるために多くの種類の違う臓器が作られていくわけです。
 

この理由は、DNA自体が様々な「修飾(しゅうしょく)」を受けており、この修飾のされ方が変化するから・・・という仕組みが存在するからということになります。


こうした仕組みは、「エピジェネティクス(epigenetics)」と呼ばれています。「epi」はギリシャ語で「後に」という意味を表す接頭語で、DNAの塩基配列変化を伴わない遺伝子発現調節機構のことを言います。

この「エピジェネティクス」は、個体発生や細胞分化の過程で必須のメカニズムとなっているわけですが・・・


その実態は、DNAを構成するシトシンのメチル化やヒストンの化学修飾(リジンメチル化・アセチル化・ユビキチン化)などがあることが知られています。

これらDNAの修飾は、遺伝子の発現を亢進(こうしん)したり、または「抑制」するなどのに調節することが知られているのですね。

私も実は「ヒト内在性レトロウイルス(HERV)」を研究していたことがあります。私は基礎医学の研究者ではなく、単なる臨床医であり、とても系統だった研究ができたわけではありません。


しかしながら、偶然にも「全身性エリテマトーデス(SLE)」の患者さんのmRNAを解析していた時に、疾患の活動性が上昇した時には「DNMT1遺伝子のmRNA遺伝子」の発現量が極端に低下し、そのときに「ヒト内在性レトロウイルス(HERV)」の内部構造タンパク質(gagタンパク質)をコードするmRNAの発現量が増加することを見出しました。
 

 

「DNMT1遺伝子」とは、DNAのメチル化を調節する遺伝子でしたので、この遺伝子が低下しているということは、DNAのメチル化の状態が低下していることが疑われたのですね。

ちょっとだけ、説明を加えますと・・・DNAの「メチル化」とは、「シトシン」の塩基にメチル基が付加される化学的修飾で、主にCpGサイト(シトシンとグアニンが連続する配列)に起こることが知られています。


DNAがメチル化されますと、mRNAなどが作られる遺伝子の転写がされなくなり、脱メチル化されると遺伝子の転写が開始される・・・ということになりますね。

なので・・・「全身性エリテマトーデス(SLE)」の疾患活動性の高い時には、DNAの「メチル化」の状態が低下し、その結果、通常は発現しない「ヒト内在性レトロウイルス(HERV)」の
遺伝子が発現するのではないか・・・と考えたのですね。

 

そこからは、DNMT1 mRNAの低下がなぜ、起きているのか?・・・と更に私の研究は深みにはまり、最終的には失敗することになるわけです。

 

実は、当初、「全身性エリテマトーデス(SLE)」の遺伝子研究は、DNAのアセチル化・脱アセチル化についても研究をする方針でいたのですが・・・当時は、「サーチュイン遺伝子」が何らかの形で関与しているのではないか・・・という説はあったのですが・・・

 

どうすれば、「サーチュイン遺伝子」の発現を実験に関連付けられるかが、当時の私には思いつきませんでした。

ちょうど、20年前の話ですね。

 

今であれば・・・「N M N」から「NAD+」を体内で作り出し、サーチュイン遺伝子を活性化することを簡単に思いつくわけですが・・・ね。

 

もちろん、現在でも「全身性エリテマトーデス(SLE)」の正確な発症原因は正確には分かっていません。

しかしながら・・・「DNA」のメチル化の低下も関与しているのではないかと思うのですね。そして、そのことにより、DNA上にある「ヒト内在性レトロウイルス(HERV)」の遺伝子の一部が発現していたのではないか・・・と思ったりもします。

 

そして、もし、20年前にDNAのアセチル化・脱アセチル化の研究を少しずつでも進めればよかったなあ〜などとも思います。

当初の予定どおりにですね。

 

その理由は、どうやらDNAの低メチル化状態があったとしても、ヒストンにDNAがしっかりと巻きついていれば・・・その影響が小さいのではないか・・・という説が多く出てきているからなのですね。

 

 

image

 

つまり、DNAが低メチル化になり、異常な遺伝子をいつでも発現できるようになったとしても、上の図の下段の状態のように「脱アセチル化」の状態を作り出せれば、その異常な遺伝子の発現を抑制できる可能性が高い・・・ということになりますね。

 

 

ちょっと、長くなってしまいましたね。

この話は、何週間でも続けることができるのですが・・・

それは、またの機会にしたいと思います。

 

 

今回も最後までお付き合いいただきまして

誠にありがとうございましたお願い

 

参考)

4. J Rheumatol. 2001 Mar;28(3):533-8.

Quantitative analyses of messenger RNA of human endogenous retrovirus in patients with systemic lupus erythematosus

H.Ogasawaraら

 

 

 (以前のphoto;筆者撮影)

 

 =================================

 JTKクリニックホームページ

 

 理事長、院長  

小笠原  均  (Hitoshi Ogasawara)   

医学博士, 内科医

(総合内科、リウマチ専門医)

新潟大医学部卒

 

  <JTKクリニック・アンチエイジング治療>

 

 

image

 

 

image

 

Instagram

 

<今週、なんとなく聞いてみたい曲>

 

 

    =====================

JTKクリニックからのお知らせ

 

◯外来診療は予約制をとり、待ち時間が生じないようにしています。

 

◯ ダイエット漢方製剤は、オンライン診療でも処方が可能です。

 

◯ 線維筋痛症に対するノイロトロピン等の点滴療法、トリガーポイント注射を行なっております。(セカンドオピニオン診療も可)

 

 

◯ 新型コロナウイルス後遺症外来を行なっています。 

(オンライン相談も可)

 

 

 

 

<JTKクリニック 所在地>

〒102-0083

東京都千代田区麹町4-1-5麴町志村ビル2階

電話 03-6261-6386

Mail:info@jtkclinic.com

==================================

こんにちは、内科医 ひとちゃんですニコニコ

 

5月も後半になっていますね。

 

あと2日も経ちますと・・・暦(こよみ)の七十二候(しちじゅうにこう)は、「蚕起食桑(かいこおこってくわをくらう)」となることに気がつきました。

 

意味は、蚕(かいこ)が盛んに桑(くわ)の葉を食べ始めるの葉を食べ始める頃ということになるでしょうか。。

 

蚕(かいこ)が、幼虫から蛹(さなぎ)になるときに糸を吐き出して繭(まゆ)を作るわけですが、この繭(まゆ)が 絹(きぬ)と呼ばれる繊維(せんい)であり、昔から衣類の材料などに使われてきたわけですね。

 

皆さまの体調は、いかがでしょうか?

 

 

今回の話題は、「老化細胞」と「ヒト内在性レトロウイルス(HERV)」に関連するお話をしてみたいと思います。
 
ヒトゲノム(DNA)全体の約8%程度は、「内在性レトロウイルス」に関連する遺伝子から構成されており、ヒトのDNAに存在する「内在性レトロウイルス」を「ヒト内在性レトロウイルス(human endogenous retroviruses)」と呼ばれています。
いくつかの頭文字(かしらもじ)をとって、「HERV(ハーブ)」と呼ばれます。
 
これは数百万年前・・・ヒトがまだ、サルであった時代ですが・・・
生殖細胞系列に組み込まれた「外来性レトロウイルス感染」の残骸であると考えられています。
 
「外来性レトロウイルス」というのは、「感染性レトロウイルス」とも言われるもので、地上に存在するレトロウイルス科のウイルスを指します。
 
つまり・・・ヒトがまだ、サルであった時代に地上に存在した「レトロウイルス科」のウイルスに感染し、「生殖細胞」に感染したものが
現代に生きるヒトのDNAの中に残っている・・・ということになりますね。
 
ちょっと怖いな〜と思う方もいらっしゃるかもしれませんが・・・
これらのヒト内在性レトロウイルス(HERV)遺伝子の大部分は、突然変異、挿入、欠失の蓄積により、無傷の「オープンリーディングフレーム」を含んでいないことから、害のないものと考えられるようになっていた・・・というわけですね。 
 
「〜なっていた」と過去形にしたのは、この常識が変化しつつあるから・・・ということになるからということになります。
 
細胞や組織の老化に関連する内在性レトロウイルスの発現を同定し、「HERV-K」レトロウイルス様粒子(RVLP)の蓄積が、老化促進作用を持っていることがわかったというのですね。
 
さらに・・・「内在性レトロウイルス(ERV)」の活性化は、老化した霊長類やマウスの臓器、高齢者のヒト組織や血清でも観察された・・・というのです。
 
また、「内在性レトロウイルス(ERV)」の抑制により、細胞の老化や組織の変性が緩和され、生体の「老化」もある程度緩和されることが確認できた・・・というわけです。
 
これらの知見から研究者らは、動物の「内在性レトロウイルス(ERV)」や「ヒト内在性レトロウイルス(HERV)」の復活が、
細胞老化や組織老化を進行させる原動力である・・・とまで、述べているのですね。
 
私自身も昔、「ヒト内在性レトロウイルス(HERV)」」の遺伝子の発現の研究をしていたこともあって、HERVの遺伝子が発現するということを証明するのは難しいし、HERVの遺伝子の一部で構成される
「レトロトランスポゾン」の研究から新しい事実が見つかるのだろう
・・・と考えていたのですが・・・
 
まさか・・・今の私が個人的に関心を持っている「老化」のメカニズムの中で、「ヒト内在性レトロウイルス(HERV)」」の話題に出会えるとは思いませんでした。

 

この「ヒト内在性レトロウイルス(HERV)」」と「老化」のメカニズムが結びつくと・・・新しい「老化」を抑制するメカニズムを実現する方法が浮かびあがってくるのですね。

 

もう、私たちは既に(すでに)その方法を手にしているかもしれないのですが・・・ねウインク

 

続きは・・・後日の話題にしたいと思います。

 

素敵な1週間をお過ごしくださいキラキラ

 

それでは・・・またバイバイ

 

 

参考)

1.Cell. 2023 Jan 19;186(2):287-304.

Resurrection of endogenous retroviruses during aging reinforces senescence

Xiaoqian Liuら

---------------------------------------------------------------------

<ブログ後記>5月21日>

今回は、ヒト内在性レトロウイルス(HERV)が、ヒトの「老化」に関与しているのではないか・・・というお話をさせていただきました。

実は、HERVが「癌」の病変にも発現しているという報告も多いのですが、「老化」に影響を及ぼしているということに少し驚きました。

 

ウイルス粒子が組織や血中に出ているのか?・・・と思った方もいらっしゃるかもしれませんが、実は『プロウイルス』の状態のものが問題だと述べられています。

 

『プロウイルス』とは、レトロウイルスの遺伝子が宿主細胞(ヒト)のゲノムに組み込まれた状態を指します。

 

以前のブログでもご紹介したのですが・・・「ヒト内在性レトロウイルス(HERV)」の構造は、外来性(感染性)レトロウイルス
と同様に両橋に遺伝子の転写を調節する「Long Terminal Repeat (LTR)」の構造があり、その間には、内部構造タンパク
をコードする「gag領域」、逆転写酵素をコードする「pol領域」、そして、外被糖タンパクをコードする「env領域」が存在します。

これ全体が、本当に遺伝子(RNA)レベルで発現するようならば、「ウイルス粒子」を作ることも可能なのですが、これまでの通説では、「ヒト内在性レトロウイルス(HERV)」が実際にウイルス粒子をつくることは不可能であると考えられていたのですね。

 

そして・・・最近の論文の中でも、以前の通説どおりに「ヒト内在性レトロウイルス(HERV)」の粒子を発見したという報告はないのですね。

 

なので・・・本文内で述べた「ヒト内在性レトロウイルス(HERV)」とは、あくまでも『DNA』に組み込まれた『プロウイルス』のタイプの活性化・・・ということになります。


「ヒト内在性レトロウイルス(HERV)」の構造である「LTR-gag-pol -env-LTR」の一部が欠如している場合は、「レトロトランスポゾン」と呼びます。

 

実際に「レトロトランスポゾン」は、mRNAレベルで発現して、ヒトの免疫システムなどに影響を与えるのではないか・・・と考えられており、研究が進んでいます。

 

          (図はお借りしました)

 


(図はお借りしました)

 

なので・・・最近の報告の内容は、「老化」により「ヒト内在性レトロウイルス(HERV)」のウイルス粒子が出現しているではなく、

「レトロトランスポゾン」の遺伝子と同様に

遺伝子を複製しては、同じ遺伝子上にコピーを挿入していく・・・

 

という現象が起こっていくことがわかった・・・というのが正しいということになります。

 

もちろん、「ヒト内在性レトロウイルス(HERV)」の遺伝子や「レトロトランスポゾン」の遺伝子が、新たな場所に挿入されていく際には、場所を選ぶことなく、無秩序な遺伝子の挿入が起こります。

 

そうしますと・・・例えば、重要な『遺伝子A』の近傍(きんぼう)に「ヒト内在性レトロウイルス(HERV)」の遺伝子や「レトロトランスポゾン」の遺伝子が挿入されたり、『遺伝子A』の真ん中に挿入されますと・・・

 

場合によっては、『遺伝子A』が機能しなくなったりする可能性もあります。

 

ところで、「老化」の進行により、「ヒト内在性レトロウイルス(HERV)」の遺伝子や「レトロトランスポゾン」の遺伝子が活性化していくのは、どのような原因によるものなのでしょうか?

 

DNAの「メチル化の低下」とヒストンの「アセチル化の亢進(こうしん)」が起きているから・・・というのが理由になります。

 

image

        (図はお借りしました)」

 

では・・・「ヒト内在性レトロウイルス(HERV)」の遺伝子や「レトロトランスポゾン」の遺伝子の活性化することによる「老化」のリスクを減らすには、どのような方法があるのか?・・・という話題になっていくのですが・・・

 

続きは、次回の話題にしてみたいと思います。


今回も最後までお付き合いいただきまして

誠にありがとうございましたお願い

 

          (以前のphoto;筆者撮影)

 

 =================================

 JTKクリニックホームページ

 

 理事長、院長  

小笠原  均  (Hitoshi Ogasawara)   

医学博士, 内科医

(総合内科、リウマチ専門医)

新潟大医学部卒

 

  <JTKクリニック・アンチエイジング治療>

 

 

image

 

 

image

 

Instagram

 

 

<今週、なんとなく聞いてみたい曲>

 

=====================

JTKクリニックからのお知らせ

 

◯外来診療は予約制をとり、待ち時間が生じないようにしています。

 

◯ ダイエット漢方製剤は、オンライン診療でも処方が可能です。

 

◯ 線維筋痛症に対するノイロトロピン等の点滴療法、トリガーポイント注射を行なっております。(セカンドオピニオン診療も可)

 

 

◯ 新型コロナウイルス後遺症外来を行なっています。 

(オンライン相談も可)

 

 

 

 

<JTKクリニック 所在地>

〒102-0083

東京都千代田区麹町4-1-5麴町志村ビル2階

電話 03-6261-6386

Mail:info@jtkclinic.com

==================================