こんにちは、内科医 ひとちゃんですニコニコ

 

4月最初の休日の午後となっていますね。

桜の色に街が染まったせいか、はたまた、私の年齢のせいか・・・

時間の流れが、ゆっくりと感じます。

 

1960年代に活躍した米国の心理学者 「アブラハム・マズロー」は次のような言葉を残しています。

 

"In any given moment we have two options: to step forward into growth or to step back into safety."

 

「どんな瞬間にも、私たちには2つの選択肢がある。成長へと踏み出すか、安全な場所へ引き下がるかだ。」

 

この引用はマズローの思想を象徴する有名な言葉として広く知られています。また、彼の「欲求段階説(自己実現理論)」が経営学、看護学、教育学などの分野で多大な影響を与えたことも事実です。

 

しかしながら、2006年になると、彼の理論は「科学的厳密さの欠如」があるという大きな批判を巻き起こしたようです。

 

その理由は、彼の理論はすべて経験論であり、科学的な知見に乏しい

のが理由であったそうですが・・

 

マズローが提唱した「人間の可能性に目を向ける」という姿勢は、学問的、科学的には、全否定されているわけですが、現在の「ポジティブ心理学」に形を変えて受け継がれているのは不思議なことですね。

 

皆さまの体調は、いかがでしょうか?

 

(AIで画像を作成)

 

今回は・・・心血管系における「細胞老化」は、心筋・内皮細胞の機能不全をもたらすというお話をしてみたいと思います。

 

「加齢」は「心血管疾患(CVD)」における最大の独立した危険因子であるというお話は、ブロフ内でも何度か話題にしていますよね。

 

WHOの統計によれば、「心血管疾患(CVD)」による死亡者は年間約1,790万人に達し、超高齢社会においてその制御(せいぎょ)は、最重要課題の課題であるとされています(参考1)。

                    

近年の「ジェロサイエンス(Geroscience)」の進展により、加齢に伴う「心臓の機能低下」の根源的メカニズムとして、「細胞老化(Cellular Senescence)」が浮かび上がってきたわけですね。

 

「ジェロサイエンス」という言葉は、聞き慣れない言葉ですが・・・「老化」そのもののメカニズムを解明し、それを標的にすることでアルツハイマー病、癌、心血管疾患などの慢性疾患を同時に予防・遅延させ、健康寿命の延伸を目指す新しい医療研究分野ですね。

 

他の国々では、この「ジェロサイエンス」の分野に巨額の化学研究費

が割り当てられています。

 

全世界が「健康的な老い(ヘルシー・エイジング)」の実現を目指しているのですね。

 

(AIを用いて画像を作成) 

 

「心筋細胞」も「老化」するのか?・・・多くの方が疑問を持たれるかもしれません。

 

確かに・・・心臓を構成する「心筋細胞」は、「分裂終了細胞(Post-mitotic cells)」といって、それ以上は細胞分裂が起きないと言えます。

 

「細胞老化」とは、DNA損傷やテロメア短縮、酸化ストレス等の持続的なストレス応答として生じる不可逆的な細胞周期停止状態と定義されているわけですが、「心筋細胞」のような分裂終了細胞(Post-mitotic cells)においても、「老化様フェノタイプ(Senescence-like phenotype)」として機能不全を起こすことが明らかとなっているのですね(参考2, 3)。

 

では、「心筋細胞」の老化様変容とポンプ機能不全は、どのようにして生じるのでしょうか?

実は「心筋細胞」は成体において極めて低いターンオーバー率(年間0.5〜1%以下)しか持たないことが知られています(参考4)。

 

ターンオーバーとは、古い細胞が新しい細胞に置き換わっていくことでしたよね。

では、この「心筋細胞」が「老化」していくと・・・どのような状態

を呈して(ていして)いくのでしょうか?

 

それは、次のようなことが起きてくるとされています。

 

老化した「心筋細胞」は、単なる機能低下に留まらず、

 

「DNA損傷応答(DDR)」の持続的活性化、小胞体ストレスや

「ミトコンドリア」の品質管理異常(Mitophagy不全)を呈するとされています。

老化した心筋細胞は、単なる機能低下に留まらず、DNA損傷応答(DDR)の持続的活性化、小胞体ストレス、ミトコンドリアの品質管理異常(Mitophagy不全)を呈するとされています。

 

「p16INK4a(ピー16インクフォーエー)タンパク」は、「CDKN2A遺伝子」にコードされるがん抑制タンパク質で、

主に細胞周期のG1期からS期への移行を抑制し、「細胞老化」を誘導する働きを持つとされています。

 

老化した細胞で発現が高まるため、老化バイオマーカーとして利用されるものなのですが・・・

 

「心筋」の老化路ともに「p16INK4a(ピー16インクフォーエー)タンパク」の蓄積が起こり、このことが、「心臓」の病的な肥大や収縮能低下と密接に相関することが報告されています(参考5)。

 

そして、「老化した心臓」では安静時収縮力は比較的保たれますが、運動などストレス時の「予備能」が低下します。この低下の原因の一つとして、心筋細胞レベルの「興奮–収縮連関(E–C coupling)」の変化が知られています。

 

もちろん、これだけが原因ではなく、血管硬化・β受容体低下・構造リモデリングなども関与しているとされています、老化した心筋のポンプ機能低下は多因子性であるとされているのですね。

 

次に「老化心筋細胞」の分泌する「SASP(Senescence-Associated Secretory Phenotype)」が「心筋」にトドメを刺す(?)・・・ということになるのですが・・・(少しクライ気持ちになってきたのでドクロドクロドクロ)お話の続きは、後日の話題にしたいと思います。

 

素敵な1週間をお過ごしくださいキラキラ

 

それでは、またバイバイ

 

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<.ブログ後記  >4月7日

 

今宵は、強い風が吹いているようです。

 

今回は心臓で重要な働きを持つ「心筋細胞」も「老化細胞」になるというお話をさせていただきました。

本文の続記ですが・・・「老化心筋細胞」は、他の臓器の「老化細胞」と同様に「SASP(細胞老化随伴分泌現象)として、IL-1β、IL-6、TNF-αなどのサイトカイン、およびCCN1((Cellular Communication Network Factor 1)等の因子を周辺へ分泌します(参考6)。

心臓の中には、普段は「心筋線維芽細胞」という、心臓の形を維持するための土台を作る細胞があります。 しかし、高血圧や心筋梗塞などのストレスが加わると、「心筋線維芽細胞」→「筋線維芽細胞」という形質転換が起こり、その後、「筋線維芽細胞」が活性化・増殖し、その後に「早期老化」へ移行することが多いとされています

(参考7)。


本文内でもお話をしたように「心臓」の「老化細胞」の増加は、「心筋細胞」などにおいて細胞周期の不可逆的停止を引き起こし、酸化ストレスや代謝異常を通じて、心血管疾患の進行に寄与します。

このように心臓内の「老化細胞」の増加に加え、高血圧や心筋梗塞などのストレスが加わると心不全や虚血性心疾患のリスクを高めることが示されています(参考8)

では、この心臓の「老化細胞」を除去する方法はあるのでしょうか?

心機能改善のエビデンスのある治療は、「マウス」による動物実験では示されています。

それは、「D+Q療法(ダサチニブ+ケルセチン)」と呼ばれるものです。

この方法では、老齢マウスへの投与により、心筋線維化が抑制され、左室駆出率(LVEF)および拡張能の改善が報告されている

(参考9)。

また。この方法では、「心臓ー脳連関の回復」が示されており、「老化細胞除去療法(セノリティクス)」が、加齢に伴う心臓内の神経支配の脱落を抑制し、不整脈基質を改善することが示されています。


これは、細胞老化の制御が単なるポンプ機能に留まらず、心臓の電気生理学的安定性にも寄与することを示唆していると考えられています。

 

これは、イケるんじゃないか?・・・と思ったりもするわけですが・・・
この「ケルセチン」は、ブロッコリーやリンゴに含まれるポルフィリン(フラボノイド)であるのはよいのですが・・・

 

「ダサチニブ(商品名:スプリセル)」は、慢性骨髄性白血病(CML)に用いられるチロシンキナーゼ阻害剤という分子標的薬なのですね。

 

なので、ヒトへの応用には更なる検証が必要であると言えますね。
 

今回も最後までお付き合いいただきまして

誠にありがとうございましたお願い

 

 

参考)

1)Cell Death Discov. 2024 Feb 14;10(1):78. 

Cardiac cell senescence: molecular mechanisms, key proteins and therapeutic targets

Yi Luanら

 

2)J Am Coll Cardiol. 2019 Aug 13;74(6):804-813. 

Cardiovascular Aging and Heart Failure: JACC Review Topic of the Week

Filippos Triposkiadisら

 

3)Nal Rev Mol Cell Biol. 2007 Sep;8(9):729-40. 

Cellular senescence: when bad things happen to good cells

Judith Campidiら

 

4)Cell. 2015 Jun 18;161(7):1566-75. 

Dynamics of Cell Generation and Turnover in the Human Heart

Olaf Bergmannら

 

5)Circ Res. 2003 Oct 3;93(7):604-13. 

Senescence and death of primitive cells and myocytes lead to premature cardiac aging and heart failure

Cristina Chimentiら

 
6)Circ Res. 2020 Feb 14;126(4):533-551.
Targeting Age-Related Pathways in Heart Failure
Haobo Liら
 
7)Cell Death Dis. 2021 Jun 8;12(6):594.
G-MDSCs promote aging-related cardiac fibrosis by activating myofibroblasts and preventing senescence
Shu-Ning Sunら
 
8)Cardiovasc Res. 2022 Mar 25;118(5):1173-1187.
Senescence mechanisms and targets in the heart
Maggie S Chenら
 
9)Mech Ageing Dev. 2022 Dec:208:111740.
Pharmacological clearance of senescent cells improves cardiac remodeling and function after myocardial infarction in female aged mice
Nadia Salernoら
 

(紀尾井町の桜の風景)

(筆者撮影)

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こんにちは、内科医 ひとちゃんですニコニコ

 

月日が経つのは早いもので、3月最後の休日の午後になっています。

街の景色は桜の花があるせいか、優しさに包まれているような気もします。

 

それでも、ひとたび日々のニュースに目をやりますと、戦争の話題などで気持ちは暗くなるばかりです。あまり、良い状況に向かっている

とは思えないなあ〜と考え、ため息さえ出てしまいますね。

 

第2次世界大戦中に首相としてイギリスを率い、ヒトラー率いるナチス・ドイツの侵攻を食い止め、連合国を勝利に導いた「ウィンストン・チャーチル」は、不屈の指導者として歴史に名を残しています。

 

彼は、次にような言葉を残しています。


“The farther back you can look, the farther forward you are likely to see.”
過去を遠くまで振り返ることができる者ほど、未来も遠くまで見通せるだろう。

 

世界の中で目先のことではなく、遠い将来までも見据えた偉大な指導者が現れることに期待をしたいと思います。


皆さまの体調は、いかがでしょうか?

 

 

(AIで画像を作成)

 

さて、今回は自分自身の「免疫細胞」で「老化細胞」を除去できる可能性について、お話をしてみたいと思います。

 

「免疫細胞」のお話をする前に「老化細胞」について、少し復習をしておきたいと思います。

 

加齢に伴い、私たちの体内には「老化細胞(senescent cells)」と呼ばれる特殊な細胞が蓄積していくのでしたね。

 

「細胞老化」は1961年に「レオナルド・ヘイフリック」により初めて記述され、当初は「テロメア」短縮による「複製老化」であると理解されていました。

「テロメア」は、染色体の端(はし)についており、細胞分裂に伴い、その長さが短くなっていくのでしたね。

 

そして、「テロメア」がそれ以上は分裂できなくなると「細胞」は分裂をやめて、「老化細胞」に変化する・・・と理解されていたわけです。

その後、DNA損傷や酸化ストレス、がん遺伝子の活性化などの様々なストレスに応答して細胞分裂を永続的に停止した細胞も「老化細胞」になることが分かったのですね(参考1)。

 

「老化細胞」は分裂を停止しながらも代謝的には活性を保ち、「老化関連分泌形質(SASP: Senescence-Associated Secretory Phenotype)」と呼ばれる多様な炎症性サイトカイン、ケモカイン、マトリックス分解酵素(MMP)を分泌するのでしたね。

 

これらの「SASP」は周囲の正常細胞に慢性炎症(senoinflammation)を波及させ、組織機能の低下や加齢関連疾患の発症に関与するわけです(参考2)。


通常、免疫系がこれらの「老化細胞」を監視・除去するが、加齢に伴う免疫機能の低下(免疫老化:immunosenescence)によりその監視網を回避し、老化細胞が組織内に蓄積していくとされています(参考3)。
 

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(AIを用いて画像を作成)

 

本来であれば、自分自身の「免疫細胞」によって、「老化細胞」は除去できるはずですが、加齢に伴う「免疫細胞の機能の低下により、

これができなくなっている・・・ということになりますね。

 

「加齢」は免疫機能と炎症に複雑な変化をもたらし、高齢者における感染症やがん疾患の増加をもたらすとされています(参考4)

 

このために世界各国の研究者たちは、「老化細胞」を除去できる治療(セノリティック療法)の開発に力を注いでいるわけですね。

 

「セノリティック療法」は、老化および加齢に関連する障害と戦う上で有望であり、健康的な長寿を促進する可能性があります。

 

 

このような中で、問題点の中でクリアしなければいけない問題は、次のようなものになります。それは、次のようなものになります。

 

【1】「老化細胞」には、癌の抑制や組織再生生理的に重要な役割も持つため、無差別に除去することは、は臓器障害や線維化悪化などを起こすと考えられています。

 

【2】既存の「小分子セノリティクス(例:ナビトクラクスなどBCL-2ファミリー阻害薬)」は、血小板減少などの重い毒性が問題で、高齢患者での使用に制約 がある。

 

【3】CAR-T細胞・抗体薬物複合体・ワクチンなど免疫療法型セノリティクスは、「標的抗原(seno-antigen)」の同定が不足している(参考5)。

 

 

【4】「老化細胞」の中で、「ヘイフリックの限界」に達した細胞のみ

を破壊し、DNA損傷や酸化ストレス、がん遺伝子の活性化などの様々なストレスに応答して細胞分裂を停止した「老化細胞」は残すことが

望ましい。

 

このような状況の中で、韓国に本社をもつ「GCリンフォテック社(東京都江東区)」のご協力もあり、「老化細胞」の除去能力をもつ「NK細胞」と「CIK細胞」を利用できないか?・・・という勉強会

が始まりました。

 

「CIK細胞」とは、聞きなれない言葉であるかもしれませんね。

 

「CIK(Cytokine-Induced Killer:サイトカイン誘導キラー)細胞」は、患者さんの血液から採取したリンパ球を、体外で特定のサイトカイン(INF-γ,IL-2)や抗体を用いて強力に活性化・増殖させた細胞障害性T細胞の一種です。

 

この細胞は、「細胞障害性T細胞(CTL)と「NK細胞」の両方の特徴を持ち、様々ながん細胞を高い能力で直接攻撃し、主に肝細胞がんや胃がんなどの固形腫瘍に対する免疫療法として、再発抑制や延命効果が研究されています。

  • 高いがん殺傷能力: T細胞の高い標的認識能と、NK細胞のようなHLA(ヒト白血球抗原)に制限されない広範ながん細胞への攻撃能力(非特異的殺傷)を兼ね備えています。
  • 安全性の高い治療法: 主に患者自身の細胞(自家)を使用するため、免疫拒絶反応が少なく、副作用が低いとされています。
「GCリンフォテック社」では、「活性化しているNK細胞」の回収とともに多くの「CIK(Cytokine-Induced Killer:サイトカイン誘導キラー)細胞」を培養し、回収することに成功をしています。
 
本来は、「癌に対する免疫治療」として用いられる細胞群であるのですが、「老化細胞」も効率よく破壊することができるのだそうです。
 
もちろん、更なる検証が必要であるとは思いますが・・・将来、どこかの国で、新しい「セノリティック療法」として報告されるのかもしれませんね。
 
2014年4月から書いているアメーバブログも来月からは13年目に入ります。12年間続けることができたのは、皆さまの応援のおかげであり、とても感謝しております。
 
しがない「老人」が、未来で実現するであろう「抗老化医療」を夢を持って話していることは・・・滑稽(こっけい)であるかもしれませんが・・・今後とも宜しくお願い申し上げますウインク
 
素敵な1週間をお過ごしくださいキラキラ
 
それでは、またバイバイ
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<  ブログ後記  >3月31日

 

今日で2025年度が終わり、明日からは新しい年度が始まりますね。

 

今回は、「免疫細胞」を用いて、「老化細胞」を除去する治療(セノリティック療法)は可能なのか?・・・という話題について、お話をさせて頂きました。

 

答えは「イエス」であるわけですが・・・「老化細胞」が免疫系に認識される鍵(カギ)は、ストレス応答として表面に発現する「NKG2Dリガンド」というものになります。

「老化細胞」は、免疫システムに「見つけられる」ための分子を細胞表面に多く発現していることが分かっています。

 

とくに「NK細胞」や「細胞障害性T細胞(CTL)」の受容体と結合する分子は、これまでに詳しく研究されています。


その中で、免疫細胞を"活性化"する分子として報告されているのが、先にもあげた「NKG2Dリガンド」(MICA, MICB, ULBP1/2 など)であるわけです(参考6)

リガンド(Ligand)とは、タンパク質などの生体分子の特定の結合部位に特異的に結合する物質を指します。

 例えば、「 老化誘導(複製老化・DNA損傷老化)の段階のひとつの例を示しますと、以下のようなものがあります。

 

皮膚真皮層に存在する「線維芽細胞」では、「老化細胞」化しますと「NKG2Dリガンド」であるMICAとULBP2が強く表面に表出されます。

この「老化線維芽細胞」は、血液中の「NK細胞」や「細胞障害性T細胞(CTL)」により攻撃をされ、その結果、破壊されます(アポトーシス)。

なぜ、このような現象が起こるのか?・・・といいますと、

「NK細胞」や「細胞障害性T細胞(CTL)」には、この「NKG2Dリガンド」を認識して、免疫応答が起こるからという理由になります、

「NK細胞」や「細胞障害性T細胞(CTL)」表面に発現する、「NKG2Dリガンド」を認識する部位が強力な活性化受容体である「NKG2D受容体」となります。

 

この現象は、皮膚真皮層の線維芽細胞に限った現象でなく、多くの「老化細胞」は、「NKG2Dリガンド(MICA/Bなど)を発現しており、これが「NK細胞」や「細胞障害性T細胞」上の「NKG2D受容体」を刺激して、結果として「老化細胞」を破壊するということになります。

また、本文内でもご紹介をしましたが・・・「CIK細胞」も細胞表面に「NKG2D受容体」を持っておりまして、「NK細胞」や「細胞障害性T細胞(CTL)」と同様に「老化細胞」を破壊することができるということになります。

「CIK細胞」は「サイトカイン誘導キラー(Cytokine-induced killer: CIK)」というもので、「細胞障害性T細胞(CTL)」と「NK細胞」の両方の性質を持つとされ、最も強い抗腫瘍活性を持つ免疫細胞とされています。

癌に対する免疫細胞治療は、韓国において既にその一部が保険適応になっていますが、その免疫細胞治療の中心となる細胞が、この「CIK細胞」ということになります。


昨年から日本国内においても、「GCリンフォテック」社にて「CIK細胞」を含む製剤が作られ、JTKクリニックでも使用しています。

少し専門的なお話をしますと・・・「NK細胞」の平均的な寿命は3~5日程度に対し、「CIK細胞」の寿命は、約25~30日となります。


その特徴は、「HLA-I抗原」とともに「癌抗原」が表出されなくなった「癌細胞」も破壊することが、可能であり、また、ひとつの「癌細胞」を破壊しても・・・また、次から次へと「癌細胞」を破壊し続けることが知られています。


「HLA-I抗原」とともに「癌抗原」が表出されている「癌細胞」なら、「細胞障害性T細胞(CTL)」が有効です。

 

しかしながら、「癌細胞」のDNAの変異スピードが速いことにより「癌抗原」が次から次へと変化してしまいます。そうなりますと・・・「細胞障害性T細胞(CTL)」は次第に疲弊し、「癌細胞」を
破壊する力が低下してしまうことが予想されます。


そして、何よりも「癌細胞」自体が、「HLA-I抗原」を出さなくなってしまいますと「細胞障害性T細胞(CTL)」は、手も足も出なくなってしまうのですね。


「NK細胞」は、「HLA-I抗原」を出さなくなってしまった「癌細胞」でもラクラクと破壊することができます。
しかしながら、「NK細胞」の問題点はその「寿命」の短さにあります。寿命は3~5日程度であり、癌組織の内部に入っていく前に力尽きてしまうのですね。


また、「癌細胞」を破壊するためには、その1個に対して「NK細胞」2個を要する(ドレス現象)があります。


その点、「CIK細胞」は「癌細胞」を次から次へと破壊し、癌組織の奥まで入ることができるので、
さらに「癌抗原」がどんなに変化しても、また「HLA-I抗原」を出さなくなったとしても確実に「癌細胞」を破壊できるわけですね。

 

「老化細胞除去」に話を戻しますと・・・更に解決すべき問題は2つあります。

 

ひとつは、「老化細胞除去」を行う際には、体内にある「老化細胞」のおおよその数を把握しておく必要がありますね。
「老化細胞」を破壊し過ぎれば、「臓器の線維化」や致死的な「臓器障害」を起こしてしまうリスクがあるからでしたね。

「老化細胞」は組織ごとに性質もマーカーも異なり、「全身の老化細胞数」を一本の数値で正確に表す統一指標はまだないとされています(参考7,8)。
 

そのため、複数のマーカーの組み合わせで「老化細胞負荷(senescent cell burden)」を推定する方向で研究が進んでいるそうです。

 

もうひとつは長くなりますので、またの機会にいたしますが・・・

老化細胞(senescent cell)は本来、NK細胞やT細胞に認識され除去されますが、加齢とともに組織に蓄積するのは、「免疫逃避のメカニズム」「免疫老化(immunosenescence)」の両方があるためと考えられています。

 

例えば、皮膚線維芽細胞などの「老化細胞」は「非古典的MHC分子 HLA‑E 」を強く発現し、NK/CD8 T細胞上の抑制受容体「 NKG2A」 に結合して、破壊を抑制するということです。

 

「HLA-E」とは、聞き慣れない言葉かもしれませんが、ヒトの胎盤に

多く発現しているものなのですね。この関係は興味深いものがあります。


「老化細胞」を減らすと、マウスでは主に「健康寿命」の改善とともに、寿命が数〜約10%延びることが多いとされています。一方、人間で寿命がどの程度延びるかは、まだ誰にも分かっておらず、現在進行中の臨床試験の結果を待つ必要があるのだそうです。

しかしながら、「老化細胞」を減らすことが「健康寿命」を短くしたり、「寿命」を大幅に短くしてしまう可能性は、とても小さいのではないでしょうか?

 

今回も最後までお付き合いいただきまして

誠にありがとうございましたお願い

 

参考)

1)Front Immunol. 2025 Apr 4:16:1565278. 

Senescence, NK cells, and cancer: navigating the crossroads of aging and disease  

Marina Gerguesら

 

2)Exp Gerontol. 2020 Jun:134:110891. 

Senoinflammation: A major mediator underlying age-related metabolic dysregulation     

Dae Hyun Kimら

 

3)Nat Commun. 2019 Jun 3;10(1):2387. 

Senescent cells evade immune clearance via HLA-E-mediated NK and CD8+ T cell inhibition   

 Branca Pereira

4)Front Aging . 2022 May 30:3:900028. 

Immune Senescence, Immunosenescence and Aging

 Kyoo-A Leeら

 

5) NPJ Aging. 2024 Feb 6;10(1):12. 

Senolytics: from pharmacological inhibitors to immunotherapies, a promising future for patients' treatment

V Lelarge ら

 

6)Aging (Albany NY) . 2016 Feb;8(2):328-44.
NKG2D ligands mediate immunosurveillance of senescent cells
Adi Sagivら

 

7)Ageing Res Rev. 2016 Aug:29:1-12.
 Biomarkers to identify and isolate senescent cells
Mantas Matjusaitisら

8)Acc Chem Res. 2024 May 7;57(9):1238-1253.
Chemical Strategies for the Detection and Elimination of Senescent Cells
Jessie García-Fleitasら

 

(東京ミッドタウンの桜の風景)

(筆者撮影)

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こんにちは、内科医 ひとちゃんですニコニコ

 

最近の暖かさで桜は生長し、いよいよお花見シーズンに突入していきそうな気配ですね。

桜ばかりでなく、街でさまざまな花を見かけることも多くなりました。

 

"To plant a garden is to believe in tomorrow."
「庭に花を植えるということは、明日を信じるということである」

 

女優であり人道活動家でもあったオードリー・ヘプバーンの言葉です。

 

一粒の種を土に埋める。水をやり、日の光に託す。それは、まだ見ぬ未来に向けて信頼の手を差し伸べる行為です。花が咲くかどうかはわかりません。しかし、それでも種を蒔く(まく)。その行為そのものが、希望の表現であると解説がされています。

 

私たちの人生の日々も、そうした小さな種蒔きの連続であるのかもしれませんね。来月、来年、あるいは何年か先に花を咲かせる。

 

春はそのようなことを思い出させてくれる季節であるのかもしれませんね。

皆さまの体調は、いかがでしょうか?

 

(AIで画像を作成)

 

今回「エピジェネティクス・クロック(エピジェネティック時計)

について、お話をしてみようと思います。

 

「加齢(aging)」は、細胞・組織・臓器レベルにおける機能低下が、時間とともに蓄積(ちくせき)していくプロセスであり、がん、心血管疾患、神経変性疾患などの「加齢関連疾患」の最大のリスク因子であるとされています(参考1)。

 

ヒトの身体を構成する細胞のDNAには、「メチル基」と呼ばれる目印がついており、DNAのメチル化が低下すると、DNA→mRNAという遺伝子の「転写(てんしゃ)」が促進され、その逆にDNAのメチル化がが強くなると、この転写はストップされるわけです。

 

このようなDNAの配列に無関係に遺伝子の発現状態が変化するメカニズムを「エピジェネティクス」を呼ぶことは、以前のブログ内でもお話をさせていただきました。

 

近年、DNAメチル化パターンをもとにした「エピジェネティクス・クロック(エピジェネティック時計)の開発により、

「暦年齢(chronological age)」とは異なる「生物学的年齢(biological age)」を定量的に評価することが可能となったと報告されています(参考2.3)。

 

ところで、加齢によるDNAのメチル化の状態は、どのようになっていくのでしょうか?少し詳しくお話をしておきたいと思います。

 

「DNAメチル化(DNA methylation)とは、DNAを形づくる塩基のうち、「シトシン(C)」のピリミジン環5位にメチル基(−CH3​)が付加される化学修飾を指します。

 

この修飾は主に「CpGジヌクレオチド部位(CpGモチーフ)」で生じ、遺伝子の発現調節に関与するわけです(参考4)。

 

加齢に伴いまして、ヒトのゲノム(DNA)全体では

「低メチル化(global hypomethylation)」が進行する一方、特定のプロモーター領域では「高メチル化(promoter hypermethylation)」が生じ、重要な遺伝子のサイレンシングが引き起こされることが分かっています(参考5)。

 

この変化は「エピジェネティック・ドリフト」と呼ばれ、ゲノム不安定性やミトコンドリア機能障害といった加齢の特徴(hallmarks of aging)と相互に作用し、老化の表現型を決定づけると考えられています(1,5)。

これは、若い頃は似ていた「DNAメチル化パターン」が、高齢になるにつれて個人間でバラバラになる(ドリフトする)ことを示している

とされています。

 

           (参考文献より抜粋)

 

上記の図を見ていただくと横軸は、生まれた年から数える「暦の年齢」となりますが、これが同年齢であるとしても・・・

「エピジェネティクス・クロック(エピジェネティック時計)を測定してみると・・・

 

「暦の年齢」とは異なり、「細胞レベル」での老化の進み具合、つまり、身体が実際にどれくらい老化しているか(=生物学的年齢) を数値で推定することができるというわけです。

この「暦の年齢と生物学的年齢のズレ」を「エイジギャップ」と呼びます。

 

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                                    (AIを用いて画像を作成)

 

最近の研究では、生物学的年齢が高いほど病気になりやすかったり、死亡リスクが上がることも明らかになってきました。

 

そのため、「エピジェネティクス・クロック(エピジェネティック時計)は、「老化を客観的に測る新しいものさし」として、注目されているわけです。

 

「運動」や「食事改善」などの生活習慣介入によって、エピジェネティックな老化指標や代謝関連のメチル化異常が「部分的に巻き戻る/進行が遅くなる」ことを示す論文レベルのエビデンスは増えています。

 

例えば、前回の「内臓脂肪型肥満」のお話に関連づけるわけではありませんが・・・

 

肥満などに関わる「DNAメチル化」などは動的かつ可逆的であり、運動や減量、食事改善で「より正常なプロファイル」に近づきうると報告がされています(参考6,7)。

 

では、抗老化作用があるとされている「NMN ((ニコチンアミドモノヌクレオチド)」や「NAD+((ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)」、そして、「iPS細胞由来エクソソーム」などは、「エピジェネティクス・クロック(エピジェネティック時計)に影響を与えるのでしょうか?

 

続きは、後日の話題にしたいと思います。

 

素敵な1週間をお過ごしくださいキラキラ

それでは、またバイバイ

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<ブログ後記>3月24日

 

今回は、実際の「暦年齢」ではなく、「生物学的年齢(biological age)」を示す「エピジェネティクス・クロック(時計)のお話をさせていただきました。

 

本文内でもご紹介をしましたが、DNAの修飾「メチル化」のパターン

より、生物学的な年齢を示すものとなっています。

JTKクリニックでも「エピジェネティクス・クロック(時計)の測定検査は行っています。

 

現時点では、さまざまな「抗老化医療」が多くの施設で施行されており、「エピジェネティクス・クロック(時計)の測定のみを施行したいという方も、時にはいらっしゃいます。

 

しかしながら、注意をしなければいけないのは、「エピジェネティクス・クロック(時計)に変化を及ぼさない「抗老化医療」も存在するという事実です。

 

いったい、どのようなことなのでしょうか?

 

例えば・・・「NAD+(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)」は、点滴による投与が世界的に施行されているものです。

 

「NAD+」は、エネルギー代謝の中核を担う補酵素であり、「加齢」に伴いそのレベルは著明に低下していくことが知られています。

 

その主な要因として・・・「加齢」に伴い、DNA損傷が過剰になると「修復酵素PARP1」が活性化(PARP活性化)し、大量の「NAD+」を基質として消費することが知られています(ポリADPリボシル化)

(参考8)。

さらに「NAD+」分解が亢進→「 NAD+枯渇 →ATP産生低下 →細胞のエネルギー危機→細胞死となることもあります(参考8.9)。

 

さらに「NAD+」レベルの低下は、ゲノム安定性を維持する「サーチュイン(SIRT1-7)」の活性低下を招き、広範な細胞機能不全を引き起こすことが報告されています(参考10)。

 

 

では「NMN(ニコチンアミドモノヌクレオチド)」は、どうでしょうか?

「NMN」は、ビタミンB3から作られる体内の物質で、老化制御や長寿遺伝子(サーチュイン)を活性化するNAD+に変換される物質ですね。

マウスモデルにおいての話ですが・・・「NMN」補充は、ミトコンドリア機能を改善し、健康寿命を延長させることが示されています(参考11)。

 

ヒト臨床試験においても、高齢者の歩行速度や睡眠の質に対する改善効果が報告されていますが、心血管機能等への劇的な効果については依然として議論があります(参考12)。

 

こうした「NAD+」の点滴や「NMN」が「エピジェネティック・クロック(時計)」に影響を与えるのか?・・・と言いますと・・・

 

に関しては、「NAD+」点滴や「NMN」の単独投与によって既存の「エピジェネティック・クロック(時計)」が体系的に巻き戻る」という決定的な「エビデンス」はないとされています。

 

一方で、カロリー制限・運動・生活習慣介入は、「エピジェネティック・クロック(時計)」を明確に減速させうることがランダム化試験で示されています(参考13) 

 

カロリー制限・運動・生活習慣介入などはNAD⁺代謝やサーチュイン活性に影響するため 、「NAD+」の点滴や「NMN」が「エピジェネティック・クロック(時計)」に関わる可能性は高いわけですが、

直接的な因果関係はまだ証明されていない・・・と言えるかもしれませんね。

 

最後に「iPS細胞由来エクソソーム」は、「エピジェネティック・クロック(時計)」を巻き戻す・・・つまり、、「生物学的年齢(biological age)」を若返らせるのか?・・・ということになりますね。

 

「iPS細胞(人工多能性幹細胞)」自体は、4つの転写因子(山中因子)の導入などにより、細胞を「リプログラミング」して作成されるものでしたね。

 

「リプログラミング」とは、すでに分化した細胞からこの固定化されたメチル化などの標識を消去して「未分化」の状態に戻し、体を構成するあらゆる種類の細胞に分化することができる多能性を持った幹細胞を作り出す現象のことでしたね。

 

この「リプログラミング」は「エピジェネティック・クロック(時計)」年齢をゼロにします。そして、細胞分裂によって短くなっていく

「テロメア」の長さも0歳(胎児)と同様の長さまで回復します。

 

しかしながら、どの細胞になればよいか?・・・が分からなくなる「細胞アイデンティティ」の喪失というリスクを伴うわけです。

そのため、一過性の「部分的リプログラミング」による若返り研究が進んでいるのだそうです(参考14)。

 

これに対して、「iPS細胞由来エクソソーム」は、リプログラミング因子の直接導入に伴うリスクを回避しつつ、細胞若返りシグナルを届けるセルフリー療法として期待されています。

 

残念ながら、現時点では・・・

 

iPS細胞由来エクソソームが「エピジェネティック・クロック(時計)」を若返らせる、またが、進行を遅らせるという決定的なヒトのデータは、現時点では存在しません。


ただし、「エピジェネティックな老化状態」に影響しうる間接的なメカニズムや前臨床データは十分に想定されています。

 

例えば、「老齢マウス」への投与実験により、齢マウスに「iPS細胞由来エクソソーム」を3ヶ月間静脈注射すると

 

  • 大動脈リングの血管新生能が若齢マウスレベルまで回復
  • 腎・皮膚・筋・肝・肺・脳・脾など多臓器でp53・p16発現が有意に低下
  • 抗酸化能(TAOC)や骨髄細胞増殖も改善
    が報告されています(参考15)

 

また、同時に若いマウスに投与してもp53/p16には大きな変化がなく、主に老齢個体の老化シグナルを下げる効果と解釈されています

(参考15)

 

また、「ヒトiPS由来エクソソーム」は、老化ヒト真皮線維芽細胞で

  • SA‑β‑Gal活性低下(老化マーカー)
  • p53/p21経路の発現低下
     

を起こし、増殖・遊走能を回復させることも報告されています(参考16)。

 

まとめると・・・現時点では「iPS細胞由来エクソソーム」が、エピジェネティクス・クロック(時計)に直接、影響を与えたという論文はありません。

 

ただし、一般論として・・・

「iPS細胞由来エクソソーム」に搭載されたmiRNAが、受け手細胞のDNMT遺伝子などの活性を変え、プロモーターや広域のメチル化状態を改変しうる」ことは、実証されています(参考17,18) 。

 

以上のことから、直接的な証明はされていないものの、「iPS由来エクソソーム」のみが、「エピジェネティクス・クロック(時計)を若返らせる可能性がある・・・ということになりますね。

 

軽い気持ちで始めた「エピジェネティクス・クロック(時計)のお話が、なかなか、ヘビーなものになってしまいました笑い泣き

 

今回も最後までお付き合いいただき

誠にありがとうございましたお願い


 

参考)

1)Cell. 2023 Jan 19;186(2):243-278. 

Hallmarks of aging: An expanding universe

Charlas López-Otín ら

 

2)Genome Biol.. 2013;14(10):R115. 

DNA methylation age of human tissues and cell types

Steve Horvath

 

3)Nat Rev Genet. 2018 Jun;19(6):371-384.  

DNA methylation-based biomarkers and the epigenetic clock theory of ageing

Steve Horvathら

 

4)Pharmacol Ther. 2019 Mar:195:172-185. d

The role of DNA methylation in epigenetics of aging 

Archana Unnikrishnanら

 

5)MedComm(2020). 2025 Sep 1;6(9):e70369. 

Epigenetic Regulation of Aging and its Rejuvenation

Yongpan An.ら

 

6)Int J Mol Sci. 2022 Jan 25;23(3):1341. 

An Overview of Epigenetics in Obesity: The Role of Lifestyle and Therapeutic Interventions

Abeer M Mahmoudら

 

7)J Nutr Biochem. 2018 Apr:54:1-10. 

Epigenetic reprogramming in metabolic disorders: nutritional factors and beyond.                        

Zhiyong Chengら

 

8)PLos One. 2012;7(7):e42357. 

Age-associated changes in oxidative stress and NAD+ metabolism in human tissue 

Hassina Massudiら

 

9)Antoxid Redox signal.. 2018 Jun 20;28(18):1652-1668. 

Nicotinamide Adenine Dinucleotide Metabolism and Neurodegeneration 

Mariana  Peharら

 

10)Trends Cell Biol. 2014 Aug;24(8):464-71. 

NAD+ and sirtuins in aging and disease 

Shin-ichiro Imaiら

 

11)Cell. 2013 Dec 19;155(7):1624-38. 

Declining NAD(+) induces a pseudohypoxic state disrupting nuclear-mitochondrial communication during aging 

Ana P Gomesら

 

12)Geroscience. 2023 Feb;45(1):29-43. 

The efficacy and safety of β-nicotinamide mononucleotide (NMN) supplementation in healthy middle-aged adults: a randomized, multicenter, double-blind, placebo-controlled, parallel-group, dose-dependent clinical trial

 Lin Yiら

 

13)Pharmacol Ther. 2019 Mar:195:172-185. 

The role of DNA methylation in epigenetics of aging

Archana Unnikrishnanら

 

14)Aging(Albany NY). 2023 Jun 26;15(12):5854-5872. 

iPSC-derived exosomes promote angiogenesis in naturally aged mice

Xingyu Liら

 

15)Nature. 2020 Dec;588(7836):124-129. 

Reprogramming to recover youthful epigenetic information and restore vision

Yuancheng Luら

 

16)Int J Mol Sci. 2020 Jan 5;21(1):343. 

Derivation of Cell-Engineered Nanovesicles from Human Induced Pluripotent Stem Cells and Their Protective Effect on the Senescence of Dermal Fibroblasts

Hyelim Leeら

 

17)Mol Cancer. 2019 Oct 27;18(1):148. 

Exosomal miR-21 regulates the TETs/PTENp1/PTEN pathway to promote hepatocellular carcinoma growth

Liang-Qi Caoら

 

18)Cancer(Basal). 2020 Oct 11;12(10):2922. 

Regulatory Mechanisms of Epigenetic miRNA Relationships in Human Cancer and Potential as Therapeutic Targets

K M Taufiqul Arifら

 

(麻布台ヒルズの'神代曙’の品種の桜)

(筆者撮影)

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こんにちは、内科医 ひとちゃんですニコニコ

 

早いもので、3月も半ばとなっていますね。

東京の桜は、3月18日ごろから開花し、25日頃からは満開になるのだとか。いよいよ、本格的な春の到来が期待できそうです。

 

皆さまの体調は、いかがでしょうか?

 

 

(AIで画像を作成)

 

今回は「肥満」、とくに「内臓脂肪型肥満」について、お話をしてみたいと思います。

 

現代の医学において、「肥満」は最も深刻な健康課題のひとつであるとされています。

WHO(世界保健機関)の報告では、世界中で成人の約39%が太り気味(過体重)であり、その割合は増え続けていることが報告されています。

 

「肥満」は単に「体重が重い」という問題ではなく、心臓病、糖尿病、がん、脳卒中といった命に関わる病気の引き金となり、年間約400万人の死に関与していると推定されています(参考1)。

 

そして、(繰り返しになるかもしれませんが)近年の医学の中で分かってきたことは、「どれくらい太っているか(量)」よりも「どこに脂肪がついているか(場所)」の方が重要であるということです。

 

どのようなことか?・・・と言いますと、お腹の中に脂肪が溜まる(たまる)「内臓脂肪型肥満」は、見た目以上に健康への悪影響が強いことが明らかになっています(参考2)。

 

これまでにも「内臓脂肪型肥満」は、「動脈硬化」や「糖尿病」を発症すやすくなり、また、それらの「病態」を悪化させることは、話題としてきたのですが・・・実は「内臓脂肪」の存在は、ヒトの寿命(じゅみょう)そのものを縮めて(ちぢめて)しまうわけですね。

 

(AIを用いて画像を作成)

体重(kg)を身長(m)の2乗で割った「BMI」と死亡率の関係を調べると、多くの研究で以下のような「J字型」のグラフになることが分かっています。

 

 

約90万人を対象とした解析では、「BMI」が22.5~25.0の範囲で最も死亡リスクが低く、そこから「BMI」が5上がるごとに死亡率は約1.3倍ずつ上昇します(参考3)。

 

特に若い世代や男性において、この傾向は顕著であると報告されています(参考4)。

 

BMIが30~35になると平均余命は2~4年、BMI 40~45では8~10年も短くなると推計されています。

 

なぜ、「内臓脂肪」は、命を短くしてしまうほど、「リスク」が高いものであるのか?・・・という話題になっていくわけですが、続きは後日の話題にしたいと思います。

 

素敵な1週間をお過ごしくださいキラキラ

それでは、またバイバイ

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<ブログ後記>3月17日

今回は、「内臓脂肪型肥満」について、お話をさせていただきましたが・・・

「内臓脂肪型肥満」はなぜ、生命を脅かす(おびやかす)ほどリスクが高いのでしょうか?

その理由は、「内臓脂肪」は単なる脂肪の塊ではなく、全身の炎症や動脈硬化・心筋梗塞・脳卒中リスクを高める多数の物質(アディポカインやサイトカイン)を分泌する「内分泌臓器」とみなされる・・・からという理由になります。その特徴をみますと、以下のようなものになります。

 1)内臓脂肪は「活発すぎる」


 内臓脂肪は、ホルモンなどの刺激に敏感で、脂肪を分解して「遊離脂肪酸」という物質を放出しやすい性質があります(参考5)。

2)肝臓への直行便


最も重要な点は、内臓脂肪が「門脈(もんみゃく)」という大きな血管を通じて、直接肝臓に繋がっていることです(参考6)。

内臓脂肪から漏れ出した脂肪分や炎症物質は、フィルターを通らずに直接肝臓を攻撃し、全身の代謝を狂わせます。

3)免疫細胞の巣窟


内臓脂肪の中には、免疫細胞(マクロファージ)が集まりやすく、そこが炎症の火種となります(参考7)。

若干、ファンタジックな見出しになってしまいましたが・・・

 

上記のような性質から、「内臓脂肪型肥満」の脂肪は、「毒を出す臓器」に変化するといっても過言ではありません。

以前は「内臓脂肪」は、単なる「エネルギーの貯蔵庫」だと以前は思われていました。

 

しかし、現在では、様々なホルモンを分泌する「人体最大の分泌臓器」であると考えられています。

 

例えば、「内臓脂肪」が溜まると、「ホルモン(アディポカイン)」のバランスが崩れ、低下することが分かっています(参考8)。

この「アディポカイン」は以下のことに深く関与するとされています。

1)糖代謝・インスリン感受性の調節
2)エネルギーバランスの維持
3)炎症・免疫応答の制御
4)血管機能・動脈硬化への影響

このように「アディポネクチン」は、 本来、ヒトの身体を良い状態に保つように働く善玉ホルモンですが、「内臓脂肪」が増えると逆に分泌が減ってしまうわけですね。


このことが、「動脈硬化」や「糖尿病」を加速させ、TNF-αやIL-6といった「炎症を引き起こす物質」であるサイトカインが大量に放出されます(参考9)。

そして、これらのサイトカインが血液に乗って全身を巡り、血管や臓器を傷つけます。

さらに「内臓脂肪型肥満」が寿命を縮める最大の特徴は,「慢性低グレード炎症」にあると言われています(参考10)。

 

このメカニズムは、次のようなものになります。

さらに過栄養により脂肪細胞が「トリグリセリド」を蓄積し、細胞が大きくなりすぎると(肥大化)しますと、これらの細胞が「低酸素状態(虚血)に陥ります(おちいります)。
 

そのような状態になりますと、脂肪細胞にアポトーシスなどの細胞死が起こり、細胞の内容物(脂質・DAMPsなど)が細胞外に漏出します。


これで終わりではなく、死んだ細胞を貪食しようと「M1型マクロファージ」が集まるということになります。
「M1型マクロファージ」 とは、免疫活性型のマクロファージでしたね。
なので、・・・「M1型マクロファージ」は、TNF-α、IL-6、IL-1βなどの炎症性サイトカインを大量に分泌します。これらが血液に乗って全身を巡り、血管や臓器を傷つけるとされています(参考11)。

こうしたことで起こる「免疫応答」が「慢性低グレード炎症」として、各種の臓器を障害していくわけですね。

少しだけ、大きい視点で見てみると・・・これら「炎症性サイトカイン」の高い状態が「細胞老化(セネセンス)」を促進することが多くの研究で示されています。

 さらに周囲の細胞にも老化を波及させる因子と考えられています。
 

従って、これらを慢性的に上げる生活習慣や疾患(肥満・内臓脂肪・慢性感染など)は、老化スピードを高める方向に働く可能性が高いといえます。

実際にIL‑1βは、老化細胞が分泌するSASPの中核であり、周囲細胞を「老化細胞」を起こす鍵となる分子とされていますし(参考12)、
IL‑1βとTNF‑αは、ともに他臓器(脳・肝・椎間板など)の老化・機能低下を促進することが報告されているのですね(参考13,14)。

このような観点から考えますと、中年太り(内臓脂肪型肥満)であるにも関わらず、「健康長寿」を夢見ていることが
いかにナンセンスなことであるかがお分かりいただけるのではないかと思ったりもしますね。

 

今回も最後までお付き合い頂きまして

誠にありがとうございましたお願い

 

参考)

1)Lancet Diabetes Endocrinol. 2018 Dec;6(12):944-953. 

Association of BMI with overall and cause-specific mortality: a population-based cohort study of 3·6 million adults in the UK Krishnan Bhaskaranら

 

2)Lancet Diabetes Endocrinol. 2019 Sep;7(9):715-725. 

Visceral and ectopic fat, atherosclerosis, and cardiometabolic disease: a position statement 

lan J Neelandら

 

3)Lancet. 2009 Mar 28;373(9669):1083-96.

Body-mass index and cause-specific mortality in 900 000 adults: collaborative analyses of 57 prospective studies

Gary Whitlockら

 

4)Lancet. 2016 Aug 20;388(10046):776-86.  

Body-mass index and all-cause mortality: individual-participant-data meta-analysis of 239 prospective studies in four continents

Emanuele Di Angelantoniaら


5)Front Cardiovasc Med . 2023 Jul 27:10:1187735.
Visceral adipose tissue and residual cardiovascular risk: a pathological link and new therapeutic options
Arturo Cesaroら

6)Diabetol Metab Syndr. 2011 Jun 22:3:12.
Visceral adiposity, insulin resistance and cancer risk
Claire L Donohoeら

7)J Clin Endocrinol Metab. 2004 Jun;89(6):2548-56.
 Adipose tissue as an endocrine organ
Erin E Kershawら

8)Front Cardiovasc Med. 2020 Feb 25:7:22.
Adipose Tissue Distribution, Inflammation and Its Metabolic Consequences, Including Diabetes and Cardiovascular Disease
Alan Chaitら

9)Nutrients. 2020 May 3;12(5):1305.
Obesity, Bioactive Lipids, and Adipose Tissue Inflammation in Insulin Resistance
Iwona Kojtaら

10)Biomed Pap Med Fac Univ Palacky Olomouc Czech Repub. 2019 Feb;163(1):19-27.
 Visceral fat and insulin resistance - what we know?
Karolina Janochovaら 

11)Front Cardiovasc Med. 2020 Feb 25:7:22.
Adipose Tissue Distribution, Inflammation and Its Metabolic Consequences, Including Diabetes and Cardiovascular Disease
Alan Chaitら

12)Aging (Albany NY). 2012 Dec;4(12):932-51.
 IL1- and TGFβ-Nox4 signaling, oxidative stress and DNA damage response are shared features of replicative, oncogene-induced, and drug-induced paracrine 'bystander senescence'
Sona Hubackovaら

13)Biomed Pharmacother . 2020 Nov:131:110660.
The role of IL-1β and TNF-α in intervertebral disc degeneration
Yongjie Wangら

14)Int J Mol Sci. 2023 Mar 9;24(6):5217.
 Secretory Factors from Calcium-Sensing Receptor-Activated SW872 Pre-Adipocytes Induce Cellular Senescence and A Mitochondrial Fragmentation-Mediated Inflammatory Response in HepG2 Cells
Lautaro Briones-Suarezら

 

(夜の東京駅舎の風景)

(筆者撮影)

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こんにちは、内科医 ひとちゃんですニコニコ

 

青い空は広がっていますが、強い風が吹いています。

天気図を見てみると、西高東低の気圧配置で、日本海側を中心に雪や吹雪となっているのだとか。このあと、風のやや強い状態が続くのだそうです。

 

まだ、本格的な春は来ないのか?・・・と気持ちは落ち着かない気がします。

 

米国の思想家であり、哲学者、作家、詩人、エッセイストでもある

ラルフ・ワルド・エマーソンの言葉に次のようなものがあります。

 

"Adopt the pace of nature: her secret is patience"

自然のペースに従え。その秘訣は忍耐である 

 

植物が無理に開花させずに着実に成長するように、急ぐのをやめ、

ストレスを減らし、「今この瞬間を大切にせよ」という呼びかけなのだそうです。

 

皆さまの体調は、いかがでしょうか?

 

(AIで画像を作成)

 

前回は、「IPS細胞」についてお話をさせていただきました。

 

今回は、最近、話題になることに多い「腫瘍溶解ウイルス療法(Oncolytic Virus:OV療法)」が注目されています。

 

この「腫瘍」とは、「癌」のことですね。

 

今回は、この「腫瘍溶解ウイルス(OV)療法」が、どのようなメカニズムにより、「癌の治療」に役立つのか?・・・というお話をしてみたいと思います。

 

初めて、この言葉を聞く方もいらっしゃるかもしれませんね。

 

実は「癌細胞」に「ウイルス」を感染させることにより破壊する治療法の開発は、20世紀後半からずっと行われていました。

 

「癌細胞」では、よく増殖し、「正常細胞」では増殖しにくいように

細工した「ウイルス」が使われ、これまでに多くの「腫瘍溶解ウイルス(OV)」が開発されているのですね。

 

ただ、いくら「癌特異的」と言っても、全ての癌細胞に感染し全て殺してしまうことは至難の業(しなんのわざ)であったわけです。

 

このような理由から、その開発が停滞した時期もあったわけですが、最近になり、癌に対する「免疫細胞」の力が再認識(さいにんしき)されることで、再び、注目されるようになったわけですね。

 

 

(AIを用いて画像を作成)

 

では、「腫瘍溶解ウイルス(OV)」は、どのようなメカニズムにより、「癌細胞」に侵入することができるのでしょうか?

 

「癌溶解ウイルス(OV)」が、正常細胞を傷つけずに「癌細胞」で特異的に増殖できる理由は、「癌細胞」における幾つかの「分子異常」を利用しているためであるとされています。

 

以下に「癌細胞」に特異的な分子異常をご紹介したいと思います。

 

1.抗ウイルス応答(IFN経路)の欠損

 

正常細胞には、ウイルス感染を検知すると「インターフェロン(IFN)」を産生し、「PKR(プロテインキナーゼR)」の活性化を介して翻訳を停止させ、増殖を抑制するメカニズムがあります。

 

しかしながら、多くの「癌細胞」では、この「抗ウイルス経路」が破綻(はたん)しており、ウイルスが複製が優位になることが分かっています(参考1,2)。

 

2.Rasシグナルの恒常的活性化

 

「Ras(ラス)遺伝子」変異を持つ細胞では、PKRが抑制されるため、ウイルスの増殖が促進される。

 

「Ras遺伝子」は、細胞の増殖・分化・生存を制御するタンパク質をコードする「がん遺伝子」のグループ(KRAS、NRAS、HRAS)ですね。

 

通常は一時的に活性化し増殖を管理しますが、変異すると活性化状態が持続し、異常増殖(がん)を誘発するとされています。

 

このような状態になると、「癌溶解ウイルス(OV)」が癌細胞のなかに侵入しやすくなり、その後のウイルス複製が活発になります。

 

3.p53機能喪失と細胞周期制御異常

 

「細胞周期」が常に回っている「癌細胞」は、ウイルス複製に必要なDNA合成系が活性化していることが分かっています。

 

「p53遺伝子(TP53)」は、「癌抑制遺伝子」でして、細胞の癌化を防ぐため「ゲノムの守護者」と呼ばれていましたね。

 

通常の場合は、「DNA損傷」や「ストレス」を検知し、細胞周期の停止・修復、またはアポトーシス(細胞死)を誘導して異常細胞の増殖を防ぎます。

「p53遺伝子(TP53)」が変異すると・・・細胞は「癌化」しやすくなるとされています。

 

実際に・・・ヒト悪性腫瘍の約50%が、「p53遺伝子(TP53)」の変異を持つことは、これまでにも繰り返し報告されています(参考3,4)。

 

さらに遺伝子工学的には、ウイルス表面の「外被タンパク」を遺伝子改変で「癌に特異的受容体」への結合を高めたり、癌細胞でのみ作動するプロモーターを使って「侵入後にだけ」増えるよう設計されているのですね。

 

 

「癌溶解ウイルス(OV)」は、癌細胞のなかに侵入し、増殖を始める

わけですが・・・名前のとおりに「癌細胞を」を破壊してしまうわけですね。

 

その後、ヒトの「免疫細胞」が総動員されて、一気に「癌細胞」を破壊する戦闘体制になっていくわけですが・・・

お話の続きは、後日の話題にしたいと思います。

 

素敵な1週間をお過ごしくださいキラキラ

 

それでは、またバイバイ

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< ブログ後記 >3月10日

今回は、今話題の「腫瘍溶解ウイルス(OV)療法」について、お話をさせていただきました。
JTKクリニックも臨床研究レベルですが、ある種の「腫瘍溶解ウイルス(OV)」の投与を依頼される機会も多くなってきています。

感染後、ウイルスは癌細胞内でコピーされ、最終的には「細胞膜破壊(ウイルス誘導細胞死)」→ウイルス放出が起こるとされています(direct oncolysis)(参考5)、

さらに癌細胞を破壊(溶解)すると同時に、強い「抗腫瘍免疫」を誘導することが特徴であるとされています(参考6)
 

 

免疫細胞について、その動きを見ますと・・・
 

「NK細胞」も活性化するのですが・・・


「NK細胞」は、MHCクラスI分子の発現が低下した(免疫逃避を図る)癌細胞を直接攻撃するとされていますので重要です。
 

「腫瘍溶解ウイルス(OV)」療法下では、以下のメカニズムにより NK細胞の活性が最大化されます。

1)リガンド発現の上昇:

 

「腫瘍溶解ウイルス(OV)」の感染により、細胞表面にNKG2Dリガンド(MICA/Bなど)やDNAM-1リガンドが誘導され、NK細胞の認識能が高まります。

2)サイトカインによる活性化

 

感染細胞や周囲のマクロファージから放出されるIFN-α、βやIL-12が「NK細胞」を強力に活性化します。

3) IFN-γ(インターフェロン・ガンマ)の産生

活性化NK細胞は多量のIFN-γを分泌し、後述する樹状細胞の成熟やCT「細胞障害性T細胞(CTL ,CD8+T細胞)」の動員を強力にバックアップします。

CTL(細胞傷害性T細胞,CD8+T細胞)については、次のようになります。

「腫瘍溶解ウイルス(OV)療法」の最終的な目標は、癌特異的な「細胞障害性T細胞(CTL,CD8細胞)」の誘導であるとされています。

1)多様な抗原認識:

 

ウイルスによる「多焦点的な」細胞溶解により、単一の抗原標的ではなく、複数の腫瘍抗原に対するCTLが誘導される(Antigen Spreading)。

2) 腫瘍浸潤の促進

 

TMEにおけるケモカイン(CXCL9, CXCL10など)の発現上昇により、全身を循環するCTLが腫瘍内に効率よく集積する(参考7)。

次に「癌関連線維芽細胞(CAF)」についてですが・・・

 

臓器の癌、つまり「固形癌」が難治性である最大の問題点は、以前にもブログ内でお話をしたように癌の周囲や癌の組織内に存在している「癌関連線維芽細胞(CAF)」であろうと考えられます。

「癌関連線維芽細胞(CAF)」の存在する癌組織では、次のような問題が起きてきます。

「癌関連線維芽細胞(CAF)」の最も顕著な特徴は、大量の細胞外マトリックス(ECM)を産生することです。これにより、以下に示すようなころが問題になってきます。

1線維化(デスモプラジア)

「癌関連線維芽細胞(CAF)」は、コラーゲンやヒアルロン酸を過剰に分泌し、組織を「線維化」させます。これにより、癌組織は非常に硬くなります。

2,薬剤送達の阻害

 強固な線維化は組織内の圧力を高め、血管を押しつぶします。その結果、抗癌剤などの治療薬が癌細胞まで届きにくくなる「物理的なバリア」として機能します。
 

3.癌細胞の増殖と転移の促進

「癌関連線維芽細胞(CAF)」は,癌細胞に対して「肥料」を与えるような役割を果たします。その理由は、

1)成長因子の放出: HGF(肝細胞増殖因子)やEGF(上皮成長因子)などを分泌し、癌細胞の増殖を直接促します。

2)上皮間葉転換(EMT)の誘導:「癌関連線維芽細胞(CAF)」が放出するTGF-βなどのシグナルにより、癌細胞は移動能力の高い性質(EMT)を獲得し、血管やリンパ管へと浸潤しやすくなります。

この上皮間葉転換(EMT)をした癌細胞は、血管壁を通り抜けますので、遠方に転移することが
できる細胞ですね。癌が画像で確認できる3~5年前から、血液中の確認できる「血中腫瘍細胞検査
(CTC検査)のType2.の細胞ということになりますね。

4.免疫逃避のメカニズム

「癌関連線維芽細胞(CAF)」は、本来癌を攻撃するはずの「免疫システム」を抑制する環境(免疫抑制的微小環境)を作り出します。

1)免疫細胞の排除: 「癌関連線維芽細胞(CAF)」は線維の壁を作ることで、「細胞障害性T細胞(CD8+細胞」や「NK細胞」などの免疫細胞が「癌細胞」に接触するのを物理的に阻害します。

2)癌組織自体を免疫抑制状態する
 
免疫抑制状態の癌の組織は、T細胞などの免疫細胞の浸潤が少ない「Cold Tumor(冷たい腫瘍)」と呼ばれており、その組織内部の「マクロファージ」がM2型(免疫抑制)になっていることが報告されています。

「免疫治療」として、NK細胞や細胞障害性T細胞を投与しても、「Cold Tumor(冷たい腫瘍)」の状態では、これらの細胞が「癌組織」の前を素通り(すどうり)すると報告されるぐらい、免疫抑制状態になることもあるとされています。

この状態は、免疫抑制性の「腫瘍微小環境(TME)」と呼ばれます。


3)代謝のリプログラミング

 「癌関連線維芽細胞(CAF)」と癌細胞の間では、特殊な栄養のやり取りが行われています。

「癌関連線維芽細胞(CAF)」は自らの代謝を変え、乳酸やピルビン酸などのエネルギー源を癌細胞に供給します。これにより、酸素が少ない過酷な環境下でも「癌細胞」が生きていけるようサポートをするとされています。

上記の「Cold Tumor(冷たい腫瘍)」を 「癌関連線維芽細胞(CAF)」が覆い尽く(おおいつく)し,癌組織内にも混在しているわけですが、「腫瘍溶解ウイルス(OV)」の投与しますと・・・癌細胞を壊すだけでなく、 「癌関連線維芽細胞(CAF)」にも影響を与えることが報告されています。

上記の状態に対して、「腫瘍溶解ウイルス(OV)」は、癌細胞を溶解するだけでなく、「腫瘍微小環境(TME)」の主要構成要素である「癌関連線維芽細胞(CAF)」なども標的になり得ることが、近年明確になってきています。

「癌関連線維芽細胞(CAF)」は、癌の増殖・浸潤・免疫抑制に深く関与するため、「腫瘍溶解ウイルス(OV)」による「癌関連線維芽細胞(CAF)」は治療成績向上の重要な戦略と考えられています。

 

つまり、「腫瘍溶解ウイルス(OV)療法」 は、免疫抑制性の「腫瘍微小環境(TME)」に対しても、以下のような作用を示すことになります。

 

  (1) 免疫抑制性「腫瘍微小環境(TME)」の解除
    

 炎症性サイトカイン・I型IFN誘導により、抑制的な「腫瘍微小環境(TME)」が免疫活性化型へ変化
  

(2)癌組織内のマクロファージが、活性型のM1型になり、「細胞障害性T細胞(CTL,CD8+T細胞)」が浸潤するようになる。
 

このような状態を「Hot Tumor(熱い腫瘍)」と呼び、腫瘍内部に免疫細胞、特にT細胞が豊富に存在し、活発な免疫応答が起こっている腫瘍です。


「腫瘍溶解ウイルス(OV)が、癌細胞に感染すると、癌に対する抗がん剤などの「薬剤抵抗性」を改善する可能性があることが報告されています。

「腫瘍溶解ウイルス(OV)療法」は、抗がん剤治療においても、当院のように抗がん剤治療+NK細胞+「細胞障害性T細胞(CTL,CD8+T細胞)」の混合療法でも期待が持てる可能性がありますね。

 

今回も最後までお付き合いいただきまして

誠にありがとうございましたお願い

 

参考)

1)Front Oncol. 2017 Sep 8:7:195. 

Oncolytic Viruses-Interaction of Virus and Tumor Cells in the Battle to Eliminate Cancer

Anwen Howellsら

 

2)Front Immunol. 2024 Oct 4:15:1473288. 

Oncolytic virotherapy against lung cancer: key receptors and signaling pathways of viral entry 

Wenxun Dongら

 

3)J Intern Med. 2025 Aug;298(2):78-96. 

The TP53 tumor suppressor gene: From molecular biology to clinical investigations 

Panagiotis Baliakasら

 

4)Cancer Cell Int. 2021 Dec 24;21(1):703. 

p53 signaling in cancer progression and therapy 

Hany E Mareiら

 

5)Nat Biotechnol . 2012 Jul 10;30(7):658-70.
 Oncolytic virotherapy
Stephen J Russellら

 

6)Int J Mol Sci. 2025 Oct 7;26(19):9770.
Mechanisms of Oncolytic Virus-Induced Multi-Modal Cell Death and Therapeutic Prospects
Jinzhou Xuら

 

7)Trends Cancer . 2023 Feb;9(2):122-139.
The emerging field of oncolytic virus-based cancer immunotherapy
Rui Maら

 

 

 

(ホテルニューオータ二東京:春の予感)

(筆者撮影)

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