こんにちは、内科医 ひとちゃんです![]()
4月最初の休日の午後となっていますね。
桜の色に街が染まったせいか、はたまた、私の年齢のせいか・・・
時間の流れが、ゆっくりと感じます。
1960年代に活躍した米国の心理学者 「アブラハム・マズロー」は次のような言葉を残しています。
"In any given moment we have two options: to step forward into growth or to step back into safety."
「どんな瞬間にも、私たちには2つの選択肢がある。成長へと踏み出すか、安全な場所へ引き下がるかだ。」
この引用はマズローの思想を象徴する有名な言葉として広く知られています。また、彼の「欲求段階説(自己実現理論)」が経営学、看護学、教育学などの分野で多大な影響を与えたことも事実です。
しかしながら、2006年になると、彼の理論は「科学的厳密さの欠如」があるという大きな批判を巻き起こしたようです。
その理由は、彼の理論はすべて経験論であり、科学的な知見に乏しい
のが理由であったそうですが・・
マズローが提唱した「人間の可能性に目を向ける」という姿勢は、学問的、科学的には、全否定されているわけですが、現在の「ポジティブ心理学」に形を変えて受け継がれているのは不思議なことですね。
皆さまの体調は、いかがでしょうか?
今回は・・・心血管系における「細胞老化」は、心筋・内皮細胞の機能不全をもたらすというお話をしてみたいと思います。
「加齢」は「心血管疾患(CVD)」における最大の独立した危険因子であるというお話は、ブロフ内でも何度か話題にしていますよね。
WHOの統計によれば、「心血管疾患(CVD)」による死亡者は年間約1,790万人に達し、超高齢社会においてその制御(せいぎょ)は、最重要課題の課題であるとされています(参考1)。
近年の「ジェロサイエンス(Geroscience)」の進展により、加齢に伴う「心臓の機能低下」の根源的メカニズムとして、「細胞老化(Cellular Senescence)」が浮かび上がってきたわけですね。
「ジェロサイエンス」という言葉は、聞き慣れない言葉ですが・・・「老化」そのもののメカニズムを解明し、それを標的にすることでアルツハイマー病、癌、心血管疾患などの慢性疾患を同時に予防・遅延させ、健康寿命の延伸を目指す新しい医療研究分野ですね。
他の国々では、この「ジェロサイエンス」の分野に巨額の化学研究費
が割り当てられています。
全世界が「健康的な老い(ヘルシー・エイジング)」の実現を目指しているのですね。
(AIを用いて画像を作成)
「心筋細胞」も「老化」するのか?・・・多くの方が疑問を持たれるかもしれません。
確かに・・・心臓を構成する「心筋細胞」は、「分裂終了細胞(Post-mitotic cells)」といって、それ以上は細胞分裂が起きないと言えます。
「細胞老化」とは、DNA損傷やテロメア短縮、酸化ストレス等の持続的なストレス応答として生じる不可逆的な細胞周期停止状態と定義されているわけですが、「心筋細胞」のような分裂終了細胞(Post-mitotic cells)においても、「老化様フェノタイプ(Senescence-like phenotype)」として機能不全を起こすことが明らかとなっているのですね(参考2, 3)。
では、「心筋細胞」の老化様変容とポンプ機能不全は、どのようにして生じるのでしょうか?
実は「心筋細胞」は成体において極めて低いターンオーバー率(年間0.5〜1%以下)しか持たないことが知られています(参考4)。
ターンオーバーとは、古い細胞が新しい細胞に置き換わっていくことでしたよね。
では、この「心筋細胞」が「老化」していくと・・・どのような状態
を呈して(ていして)いくのでしょうか?
それは、次のようなことが起きてくるとされています。
老化した「心筋細胞」は、単なる機能低下に留まらず、
「DNA損傷応答(DDR)」の持続的活性化、小胞体ストレスや
「ミトコンドリア」の品質管理異常(Mitophagy不全)を呈するとされています。
老化した心筋細胞は、単なる機能低下に留まらず、DNA損傷応答(DDR)の持続的活性化、小胞体ストレス、ミトコンドリアの品質管理異常(Mitophagy不全)を呈するとされています。
「p16INK4a(ピー16インクフォーエー)タンパク」は、「CDKN2A遺伝子」にコードされるがん抑制タンパク質で、
主に細胞周期のG1期からS期への移行を抑制し、「細胞老化」を誘導する働きを持つとされています。
老化した細胞で発現が高まるため、老化バイオマーカーとして利用されるものなのですが・・・
「心筋」の老化路ともに「p16INK4a(ピー16インクフォーエー)タンパク」の蓄積が起こり、このことが、「心臓」の病的な肥大や収縮能低下と密接に相関することが報告されています(参考5)。
そして、「老化した心臓」では安静時収縮力は比較的保たれますが、運動などストレス時の「予備能」が低下します。この低下の原因の一つとして、心筋細胞レベルの「興奮–収縮連関(E–C coupling)」の変化が知られています。
もちろん、これだけが原因ではなく、血管硬化・β受容体低下・構造リモデリングなども関与しているとされています、老化した心筋のポンプ機能低下は多因子性であるとされているのですね。
次に「老化心筋細胞」の分泌する「SASP(Senescence-Associated Secretory Phenotype)」が「心筋」にトドメを刺す(?)・・・ということになるのですが・・・(少しクライ気持ちになってきたので![]()
![]()
)お話の続きは、後日の話題にしたいと思います。
素敵な1週間をお過ごしください![]()
それでは、また![]()
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<.ブログ後記 >4月7日
今宵は、強い風が吹いているようです。
今回は心臓で重要な働きを持つ「心筋細胞」も「老化細胞」になるというお話をさせていただきました。
本文の続記ですが・・・「老化心筋細胞」は、他の臓器の「老化細胞」と同様に「SASP(細胞老化随伴分泌現象)」として、IL-1β、IL-6、TNF-αなどのサイトカイン、およびCCN1((Cellular Communication Network Factor 1)等の因子を周辺へ分泌します(参考6)。
心臓の中には、普段は「心筋線維芽細胞」という、心臓の形を維持するための土台を作る細胞があります。 しかし、高血圧や心筋梗塞などのストレスが加わると、「心筋線維芽細胞」→「筋線維芽細胞」という形質転換が起こり、その後、「筋線維芽細胞」が活性化・増殖し、その後に「早期老化」へ移行することが多いとされています
(参考7)。
本文内でもお話をしたように「心臓」の「老化細胞」の増加は、「心筋細胞」などにおいて細胞周期の不可逆的停止を引き起こし、酸化ストレスや代謝異常を通じて、心血管疾患の進行に寄与します。
このように心臓内の「老化細胞」の増加に加え、高血圧や心筋梗塞などのストレスが加わると心不全や虚血性心疾患のリスクを高めることが示されています(参考8)
では、この心臓の「老化細胞」を除去する方法はあるのでしょうか?
心機能改善のエビデンスのある治療は、「マウス」による動物実験では示されています。
それは、「D+Q療法(ダサチニブ+ケルセチン)」と呼ばれるものです。
この方法では、老齢マウスへの投与により、心筋線維化が抑制され、左室駆出率(LVEF)および拡張能の改善が報告されている
(参考9)。
また。この方法では、「心臓ー脳連関の回復」が示されており、「老化細胞除去療法(セノリティクス)」が、加齢に伴う心臓内の神経支配の脱落を抑制し、不整脈基質を改善することが示されています。
これは、細胞老化の制御が単なるポンプ機能に留まらず、心臓の電気生理学的安定性にも寄与することを示唆していると考えられています。
これは、イケるんじゃないか?・・・と思ったりもするわけですが・・・
この「ケルセチン」は、ブロッコリーやリンゴに含まれるポルフィリン(フラボノイド)であるのはよいのですが・・・
「ダサチニブ(商品名:スプリセル)」は、慢性骨髄性白血病(CML)に用いられるチロシンキナーゼ阻害剤という分子標的薬なのですね。
なので、ヒトへの応用には更なる検証が必要であると言えますね。
今回も最後までお付き合いいただきまして
誠にありがとうございました![]()
参考)
1)Cell Death Discov. 2024 Feb 14;10(1):78.
Cardiac cell senescence: molecular mechanisms, key proteins and therapeutic targets
Yi Luanら
2)J Am Coll Cardiol. 2019 Aug 13;74(6):804-813.
Cardiovascular Aging and Heart Failure: JACC Review Topic of the Week
Filippos Triposkiadisら
3)Nal Rev Mol Cell Biol. 2007 Sep;8(9):729-40.
Cellular senescence: when bad things happen to good cells
Judith Campidiら
4)Cell. 2015 Jun 18;161(7):1566-75.
Dynamics of Cell Generation and Turnover in the Human Heart
Olaf Bergmannら
5)Circ Res. 2003 Oct 3;93(7):604-13.
Senescence and death of primitive cells and myocytes lead to premature cardiac aging and heart failure
Cristina Chimentiら
Targeting Age-Related Pathways in Heart Failure
Haobo Liら
G-MDSCs promote aging-related cardiac fibrosis by activating myofibroblasts and preventing senescence
Shu-Ning Sunら
Senescence mechanisms and targets in the heart
Maggie S Chenら
Pharmacological clearance of senescent cells improves cardiac remodeling and function after myocardial infarction in female aged mice
Nadia Salernoら
(紀尾井町の桜の風景)
(筆者撮影)
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理事長・ 院長
小笠原 均 (Hitoshi Ogasawara)
医学博士, 内科医
(総合内科、リウマチ専門医)
(新潟大医学部卒)
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