こんにちは、内科医 ひとちゃんです![]()
2025年も残りが、数日となっていますね。
何かしら、寂しい気もする(?)わけですが・・・
サラサラと時間は流れていくように感じます。
以前にも「ナルニア国物語」の著者であることを紹介させていただきました英国の作家・学者であった「C.S.ルイス」は次のような言葉を
残しています。
"There are far, far better things ahead than any we leave behind."
「私たちが置き去りにするどんなものよりも、はるかに、はるかに素晴らしいものが前方に待ち受けている。」
特に困難な時期や変化の時期に希望と前向きな視点を促すためによく紹介される言葉ですが、」ここは去る時間よりも、これからを楽しもうという気持ちになりますね。
皆さまの体調は、いかがでしょうか?
(AIで画像を作成)
今回は、「皮下脂肪型肥満」でも「動脈硬化」を起こしたり、「2型糖尿病」になるなど、臓器の障害を起こす可能性がある・・・という
お話をしてみたいと思います。
「内臓脂肪型肥満」なら、「動脈硬化」を起こしたり、「2型糖尿病」になるのは理解できるけど・・・「皮下脂肪型肥満」は大丈夫なのでは?
そう思われている方も、多くいらっしゃるかもしれませんね。
そこでで、今回は「皮下脂肪型肥満」にもリスクがある・・・という
お話をしてみたいと思います。
「肥満「は現代社会における最も深刻な公衆衛生上の課題の一つであり、世界人口の約3分の1が罹患しているとされています(参考1)。
「肥満」と心血管疾患(CVD)との間には明確な関連性が確立されているわけですが、近年の研究により、心血管リスクは「総体脂肪量」よりも「脂肪の分布様式」により強く規定(きてい)されることが明らかになってきています(参考2)。
とくに、腹腔内に蓄積する「内臓脂肪組織(Visceral Adipose Tissue: VAT)」は、皮下に蓄積する「皮下脂肪組織(Subcutaneous Adipose Tissue: SAT)」と比較して、動脈硬化性疾患の発症リスクを著しく増大させることが疫学的研究により示されています。
もちろん、」過去30年間にわたる疫学研究の蓄積により、CTやMRIで正確に測定された「内臓脂肪」組織が、心血管代謝疾患の罹患率および死亡率の独立した危険因子であることが、すでに確立されていますよね(参考3)。
2024年の体系的レビュー(27研究)をみてみると・・・
内臓脂肪組織(VAT)/皮下脂肪組織(SAT)比が高いほど.高血圧、動脈硬化、冠動脈疾患、脳血管疾患、心不全などCVD発症リスクが
一貫して上昇することが示されているのですが、皮下脂肪組織(SAT)は、しばしば中立〜保護的とされています(参考4)。
皮下脂肪組織(SAT)は、中立〜保護的とされるなら、多くても、
大丈夫なのではないか?・・・と考えてしまいますよね。
ところで、「国際動脈硬化学会」と「国際心臓代謝リスク内臓肥満ワーキンググループ」は、2019年のポジションステートメントにおいて、
「内臓脂肪」および、「異所性脂肪沈着」が、2型糖尿病、動脈硬化、心血管疾患の新興リスク因子であることを明確に提言(ていげん)をしています(参考5)。
この「異所性脂肪沈着」こそが、多すぎる「皮下脂肪」が起こすものなのですね。いったい、どのようなことなのでしょうか?
実は、「皮下脂肪組織」は、体内最大の脂肪貯蔵庫であり、余剰エネルギーがあるときに「トリグリセリド(TG)として安全に貯蔵する「安全なリザーバー/metabolic sink」として機能すると考えられています(参考6)。
医学的に言いますと・・・健常な状態では、「皮下脂肪」の脂肪細胞は、小型であり。インスリン感受性が高いとされており、インスリンの刺激によりグルコース取り込み・脂肪酸取り込み・de novo脂肪酸合成が亢進するということになりますね(参考6)。
つまり、「皮下脂肪」は、過剰エネルギー摂取時には、
- インスリン依存的にグルコースと遊離脂肪酸を取り込み
- トリグリセリドとして蓄積し
その後、必要時にリポリシスにより放出する・・・という可逆的(かぎゃくてき)な貯蔵システムとして考えられているわけです。
また、「 皮下脂肪」は、体内で最大、かつ、最も害が少ない脂肪貯蔵部位であり、余剰エネルギーをトリグリセリドとして蓄えることで、肝臓・筋肉・心臓などへの脂肪流入を防いでいると考えられています(参考7)。
一方で、「皮下脂肪」の蓄積能力に限界がありまして、余った脂質が内臓や臓器に回り、糖尿病・心血管病リスクが高まると考えられています。
「皮下脂肪」(とくに腹部皮下脂肪)は本来、余剰エネルギーを安全に貯蔵する"受け皿であるわけですが・・・
「皮下脂肪」の拡張能に上限(じょうげん)があるとされています(個人差はあります)。
この容量を超える、あるいは、脂肪細胞の新生(アディポジェネシス)が不十分であると・・・
⚫︎脂肪細胞が、肥大化して、「炎症」や「インスリン抵抗性」が進行する
⚫︎「脂肪」をこれ以上ためられず、「脂肪スピルオーバー」として。
内臓脂肪や肝臓・筋肉・膵臓などの「異所性脂肪」が増加する
ということになるわけです。
皮下脂肪は「増加さえしなければよい」のではなく、十分な容量と機能を保っているかが重要なのですね。
一方で、「皮下脂肪」は本来、余分な脂質を安全に貯める「バッファ」で、ここに貯められないと肝臓・筋肉・内臓脂肪などへの「異所性脂肪」が増え、インスリン抵抗性や脂質異常を招くとされていますので・・・
極端に「皮下脂肪」がなく、脂肪の貯蔵能力が低い人は、
(肝硬変などの方に多いとされます)BMIがそれほど高くなくても、内臓脂肪・肝脂肪が増え、糖尿病や動脈硬化リスクが高くなる可能性があり、死亡率が上昇すると考えられています。
「高皮下脂肪」+「低内臓脂肪」のパターンは、比較的良好な代謝プロファイルとされていますが、「高皮下脂肪」+「高内臓脂肪」
のパターンであっても、「低皮下脂肪」+「高内臓脂肪」よりは、
はるかにマシであるとも考えられるなどと考えられているのだそうです。
つまり、「皮下脂肪」は「ゼロが良い」わけではなく、十分な量で、内臓脂肪への溢れ(あふれ)が出ない程度が、代謝的に望ましいと考えられます。
先にご紹介しましたが、2024年の世界の論文やレビューが、
内臓脂肪組織(VAT)/皮下脂肪組織(SAT)が高いほど.高血圧、動脈硬化、冠動脈疾患、脳血管疾患、心不全などCVD発症リスクが
一貫して上昇することを示したという話題がありましたが・・・
今後の流れは、何がなんでもBMIの値を低下させるために体重を落とすというよりは、内臓脂肪組織(VAT)/皮下脂肪組織(SAT)の比率
を見ながら、どちらの量を減らすのか?・・・が重要になってくるのかもしれませんね。
素敵な年末をお過ごしください![]()
それでは、また![]()
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<ブログ後記>12月30日
2025年も残り1日となりましたね。街の風景は急ピッチで
「正月モード」に変わりつつあるように見えます。
さて、今回はちょっと変わった指標 「内臓脂肪組織(VAT)/皮下脂肪組織(SAT)比」について、お話をさせていただきました。
なぜ、この指標の値が、重要であると考えられているのでしょうか?
本文内でもお話をさせていただきましたが、内臓脂肪(VAT)が多いほど、インスリン抵抗性・脂質異常・肝障害などのリスクが高いことは、多数の研究で一致しています(参考8,9)
それに対して、通常の場合は、「皮下脂肪(SAT)」は、「内臓脂肪(VAT)」ほどは、健康に影響を及ぼさないとも報告されています。
「内臓脂肪」がどれだけ減ったか、あるいは「内臓脂肪組織(VAT)/皮下脂肪組織(SAT)比 (V/S比)」がどれだけ下がったのか・・・ということが、血糖・脂質の改善と強く結びつくことが報告されているわけです(参考10)。
では、実際に「内臓脂肪組織(VAT)/皮下脂肪組織(SAT)比」を計測しながら、体重の減量を行っていく必要があるのでしょうか?
腹部のMRI検査を施行することにより、内臓脂肪組織と皮下脂肪組織を見分けることは可能です。
しかしながら、実際に体重の減量を行う臨床の現場などでは、必ずしも「内臓脂肪組織(VAT)/皮下脂肪組織(SAT)比」を精密測定する必要はなく、「BMI+ウエスト周囲径」でかなりの情報が得られると
報告されています。
ところで、本文内でお話をしたような「皮下脂肪」だけが急速に減少して、「内臓脂肪」だけが変わらずにそのまま残るということは、
実際に起こるのでしょうか?
つまり、ダイエットなどの方法の違いで、身体の「脂肪減少」のパターンの減少の違いはあるのか?・・・という疑問よいうになりますね。
その答えは・・・「YES」ということになります。
いったい、どのようなことでしょうか?
この答えは、以下のようなものになります。
例えば、「食事制限(カロリー制限)」のもでは、「皮下脂肪(SAT)」の減少の方が大きく、「内臓脂肪(VAT)」の減少はその約半分程度にとどまることが多いと報告されています(参考11)。
その一方で、「食事制限+運動」による減量では、「内臓脂肪」と「皮下脂肪」は両方とも減少していくことが報告されているわけですね(参考12)。
この「運動」とは、どのようなものなのでしょうか?
「内臓脂肪組織(VAT)」と「皮下脂肪組織(SAT)」を減らす「運動」としては、次のようなものが推奨されています。
そちろん、「食事制限」を行ったうえで、これに「プラス」する「運動」ということになりますので、実際には大変なことかもしれませんね。
少し厳しいのですが・・・週3回以上の「中〜高強度の有酸素運動」を軸に、「筋トレを組み合わせる」ことが最も効果的とされています。例えば、中〜高強度の有酸素運動(ウォーキング早歩き、ジョギング、サイクリングなど)は、最も一貫して効果が確認されています。
その効果は、「内臓脂肪組織(VAT)」・「皮下脂肪組織(SAT)」・
体重・BMI・ウエスト周囲径を有意に減少したことが、大規模メタ解析の結果で報告されています(参考13)
また、高強度インターバルトレーニング(HIIT)という運動があります。聞き慣れない言葉と感じる方がいらっしゃるかもしれませんが、この運動は、 1〜2分ややきついペース → 1〜2分ゆっくり、を10〜15セット(合計高強度部分10〜15分程度)や 筋トレ:スクワット・腕立て・ローイングなど大筋群中心に1種目2〜3セット など、
中高年には、かなりヘビーな運動ということになりますね。
このような運動は、「内臓脂肪組織(VAT)」や「皮下脂肪組織(SAT)」を最も大きく減らす可能性が高く、短時間で、効果が出るわけです。
つまり、時間的な効率は、極めて高いわけですが、心肺・関節に大きな負荷がかかってしまうのだそうです。
なので、食事のカロリーを制限し、週3回以上の「中〜高強度の有酸素運動(30分程度の早歩き散歩)」が、現実的な「内臓脂肪組織(VAT)/皮下脂肪組織(SAT)比」を低下させることが、
脂肪肝などの内臓の障害や「動脈硬化」を進行させずに
「健康長寿」を実現させる方法になりそうですね![]()
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以上が、今年最後のお話となります。
この1年間、誠にありがとうございました。
来年もさらに充実した情報の提供ができるよう頑張りますので、
引き続き、宜しくお願い致します![]()
それでは、幸多き新年をお迎えください![]()
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参考)
1)Curr Hypertens Rep 2018 Jul 10;20(9):77.
Visceral Adipose Tissue Accumulation and Residual Cardiovascular Risk
Thierry H Le Jemteら
2)PLoS One. 2017 Sep 28;12(9):e0185403.
Body fat distribution, in particular visceral fat, is associated with cardiometabolic risk factors in obese women
Theodora W Elffers
3)Front Cardiovasc Med. 2023 Aug 21:10:1249401.
Association between visceral obesity and 10-year risk of first atherosclerotic cardiovascular diseases events among American adults: National Health and Nutrition Examination Survey
Liying Zhengら
4)BMC Public Health. 2024 Jul 9;24(1):1827.
The association between the visceral to subcutaneous abdominal fat ratio and the risk of cardiovascular diseases: a systematic review
Hadi Emamatら
5)Lancet Diabetes Endocrinol. 2019 Sep;7(9):715-725.
Visceral and ectopic fat, atherosclerosis, and cardiometabolic disease: a position statement
Ian J Neelandら
6)Cell Metab . 2016 Dec 13;24(6):820-834.
Adipocyte Ceramides Regulate Subcutaneous Adipose Browning, Inflammation, and Metabolism
Bhagirath Chaurasiaら
7)J Intern Med. 2016 Nov;280(5):465-475.
Adipose tissue regulates insulin sensitivity: role of adipogenesis, de novo lipogenesis and novel lipids
U Smith]ら
8)BMC Med. 2025 Feb 4;23(1):57.
Visceral adipose tissue area and proportion provide distinct reflections of cardiometabolic outcomes in weight loss; pooled analysis of MRI-assessed CENTRAL and DIRECT PLUS dietary randomized controlled trials
Hadar Kleinら
9)Obesity (Silver Spring). 2025 May;33(5):825-838.
Features, functions, and associated diseases of visceral and ectopic fat: a comprehensive review
Jiaqiang Luoら
10)Physiol Rev. 2013 Jan;93(1):359-404.
Pathophysiology of human visceral obesity: an update
André Tchernofら
11)Eur J Clin Nutr. 2022 Feb;76(2):184-195.
Comparisons of calorie restriction and structured exercise on reductions in visceral and abdominal subcutaneous adipose tissue: a systematic review
Takashi Abeら
12)J Clin Med. 2024 Aug 23;13(17):5005.
The Effects of Exercise Interventions on Ectopic and Subcutaneous Fat in Patients with Type 2 Diabetes Mellitus: A Systematic Review, Meta-Analysis, and Meta-Regression
Fatemeh Kazeminasabら
13)Obes Rev. 2024 Mar;25(3):e13666.
Effects of various exercise types on visceral adipose tissue in individuals with overweight and obesity: A systematic review and network meta-analysis of 84 randomized controlled trials
Xiaoke Chen
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理事長・ 院長
小笠原 均 (Hitoshi Ogasawara)
医学博士, 内科医
(総合内科、リウマチ専門医)
(新潟大医学部卒)
< Jazz プレイリスト>
<今週、なんとなく聞いてみたい曲>
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<JTKクリニックからのお知らせ>
◯JTKクリニックは、2025年1月27日〜2026年1月4日まで、休診とさせていただきます。
◯Zoomを用いた遠隔医療相談を始めました(内科関連疾患)
◯外来診療は予約制をとり、待ち時間が生じないようにしています。
◯ ダイエット漢方製剤は、オンライン診療でも可能です。
◯ 線維筋痛症に対するノイロトロピン等の点滴療法、トリガーポイント注射を行なっております。(セカンドオピニオン診療も可)
自分の皮下脂肪から組織を採取し、「間葉系幹細胞」を培養して、自分自身の組織内に投与する「幹細胞治療」を開始しました。
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〒102-0083
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