こんにちは、内科医 ひとちゃんですニコニコ

 

5月も後半になっていますね。

 

あと2日も経ちますと・・・暦(こよみ)の七十二候(しちじゅうにこう)は、「蚕起食桑(かいこおこってくわをくらう)」となることに気がつきました。

 

意味は、蚕(かいこ)が盛んに桑(くわ)の葉を食べ始めるの葉を食べ始める頃ということになるでしょうか。。

 

蚕(かいこ)が、幼虫から蛹(さなぎ)になるときに糸を吐き出して繭(まゆ)を作るわけですが、この繭(まゆ)が 絹(きぬ)と呼ばれる繊維(せんい)であり、昔から衣類の材料などに使われてきたわけですね。

 

皆さまの体調は、いかがでしょうか?

 

 

今回の話題は、「老化細胞」と「ヒト内在性レトロウイルス(HERV)」に関連するお話をしてみたいと思います。
 
ヒトゲノム(DNA)全体の約8%程度は、「内在性レトロウイルス」に関連する遺伝子から構成されており、ヒトのDNAに存在する「内在性レトロウイルス」を「ヒト内在性レトロウイルス(human endogenous retroviruses)」と呼ばれています。
いくつかの頭文字(かしらもじ)をとって、「HERV(ハーブ)」と呼ばれます。
 
これは数百万年前・・・ヒトがまだ、サルであった時代ですが・・・
生殖細胞系列に組み込まれた「外来性レトロウイルス感染」の残骸であると考えられています。
 
「外来性レトロウイルス」というのは、「感染性レトロウイルス」とも言われるもので、地上に存在するレトロウイルス科のウイルスを指します。
 
つまり・・・ヒトがまだ、サルであった時代に地上に存在した「レトロウイルス科」のウイルスに感染し、「生殖細胞」に感染したものが
現代に生きるヒトのDNAの中に残っている・・・ということになりますね。
 
ちょっと怖いな〜と思う方もいらっしゃるかもしれませんが・・・
これらのヒト内在性レトロウイルス(HERV)遺伝子の大部分は、突然変異、挿入、欠失の蓄積により、無傷の「オープンリーディングフレーム」を含んでいないことから、害のないものと考えられるようになっていた・・・というわけですね。 
 
「〜なっていた」と過去形にしたのは、この常識が変化しつつあるから・・・ということになるからということになります。
 
細胞や組織の老化に関連する内在性レトロウイルスの発現を同定し、「HERV-K」レトロウイルス様粒子(RVLP)の蓄積が、老化促進作用を持っていることがわかったというのですね。
 
さらに・・・「内在性レトロウイルス(ERV)」の活性化は、老化した霊長類やマウスの臓器、高齢者のヒト組織や血清でも観察された・・・というのです。
 
また、「内在性レトロウイルス(ERV)」の抑制により、細胞の老化や組織の変性が緩和され、生体の「老化」もある程度緩和されることが確認できた・・・というわけです。
 
これらの知見から研究者らは、動物の「内在性レトロウイルス(ERV)」や「ヒト内在性レトロウイルス(HERV)」の復活が、
細胞老化や組織老化を進行させる原動力である・・・とまで、述べているのですね。
 
私自身も昔、「ヒト内在性レトロウイルス(HERV)」」の遺伝子の発現の研究をしていたこともあって、HERVの遺伝子が発現するということを証明するのは難しいし、HERVの遺伝子の一部で構成される
「レトロトランスポゾン」の研究から新しい事実が見つかるのだろう
・・・と考えていたのですが・・・
 
まさか・・・今の私が個人的に関心を持っている「老化」のメカニズムの中で、「ヒト内在性レトロウイルス(HERV)」」の話題に出会えるとは思いませんでした。

 

この「ヒト内在性レトロウイルス(HERV)」」と「老化」のメカニズムが結びつくと・・・新しい「老化」を抑制するメカニズムを実現する方法が浮かびあがってくるのですね。

 

もう、私たちは既に(すでに)その方法を手にしているかもしれないのですが・・・ねウインク

 

続きは・・・後日の話題にしたいと思います。

 

素敵な1週間をお過ごしくださいキラキラ

 

それでは・・・またバイバイ

 

 

参考)

1.Cell. 2023 Jan 19;186(2):287-304.

Resurrection of endogenous retroviruses during aging reinforces senescence

Xiaoqian Liuら

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<ブログ後記>5月21日>

今回は、ヒト内在性レトロウイルス(HERV)が、ヒトの「老化」に関与しているのではないか・・・というお話をさせていただきました。

実は、HERVが「癌」の病変にも発現しているという報告も多いのですが、「老化」に影響を及ぼしているということに少し驚きました。

 

ウイルス粒子が組織や血中に出ているのか?・・・と思った方もいらっしゃるかもしれませんが、実は『プロウイルス』の状態のものが問題だと述べられています。

 

『プロウイルス』とは、レトロウイルスの遺伝子が宿主細胞(ヒト)のゲノムに組み込まれた状態を指します。

 

以前のブログでもご紹介したのですが・・・「ヒト内在性レトロウイルス(HERV)」の構造は、外来性(感染性)レトロウイルス
と同様に両橋に遺伝子の転写を調節する「Long Terminal Repeat (LTR)」の構造があり、その間には、内部構造タンパク
をコードする「gag領域」、逆転写酵素をコードする「pol領域」、そして、外被糖タンパクをコードする「env領域」が存在します。

これ全体が、本当に遺伝子(RNA)レベルで発現するようならば、「ウイルス粒子」を作ることも可能なのですが、これまでの通説では、「ヒト内在性レトロウイルス(HERV)」が実際にウイルス粒子をつくることは不可能であると考えられていたのですね。

 

そして・・・最近の論文の中でも、以前の通説どおりに「ヒト内在性レトロウイルス(HERV)」の粒子を発見したという報告はないのですね。

 

なので・・・本文内で述べた「ヒト内在性レトロウイルス(HERV)」とは、あくまでも『DNA』に組み込まれた『プロウイルス』のタイプの活性化・・・ということになります。


「ヒト内在性レトロウイルス(HERV)」の構造である「LTR-gag-pol -env-LTR」の一部が欠如している場合は、「レトロトランスポゾン」と呼びます。

 

実際に「レトロトランスポゾン」は、mRNAレベルで発現して、ヒトの免疫システムなどに影響を与えるのではないか・・・と考えられており、研究が進んでいます。

 

          (図はお借りしました)

 


(図はお借りしました)

 

なので・・・最近の報告の内容は、「老化」により「ヒト内在性レトロウイルス(HERV)」のウイルス粒子が出現しているではなく、

「レトロトランスポゾン」の遺伝子と同様に

遺伝子を複製しては、同じ遺伝子上にコピーを挿入していく・・・

 

という現象が起こっていくことがわかった・・・というのが正しいということになります。

 

もちろん、「ヒト内在性レトロウイルス(HERV)」の遺伝子や「レトロトランスポゾン」の遺伝子が、新たな場所に挿入されていく際には、場所を選ぶことなく、無秩序な遺伝子の挿入が起こります。

 

そうしますと・・・例えば、重要な『遺伝子A』の近傍(きんぼう)に「ヒト内在性レトロウイルス(HERV)」の遺伝子や「レトロトランスポゾン」の遺伝子が挿入されたり、『遺伝子A』の真ん中に挿入されますと・・・

 

場合によっては、『遺伝子A』が機能しなくなったりする可能性もあります。

 

ところで、「老化」の進行により、「ヒト内在性レトロウイルス(HERV)」の遺伝子や「レトロトランスポゾン」の遺伝子が活性化していくのは、どのような原因によるものなのでしょうか?

 

DNAの「メチル化の低下」とヒストンの「アセチル化の亢進(こうしん)」が起きているから・・・というのが理由になります。

 

image

        (図はお借りしました)」

 

では・・・「ヒト内在性レトロウイルス(HERV)」の遺伝子や「レトロトランスポゾン」の遺伝子の活性化することによる「老化」のリスクを減らすには、どのような方法があるのか?・・・という話題になっていくのですが・・・

 

続きは、次回の話題にしてみたいと思います。


今回も最後までお付き合いいただきまして

誠にありがとうございましたお願い

 

          (以前のphoto;筆者撮影)

 

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 理事長、院長  

小笠原  均  (Hitoshi Ogasawara)   

医学博士, 内科医

(総合内科、リウマチ専門医)

新潟大医学部卒

 

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