こんにちは、内科医 ひとちゃんです
5月最後の休日になっています。
よく晴れていて、気持ちはよいのですが
若干、蒸し暑さも感じたりもしますね。
最近は、人工知能(AI)を用いて、お仕事をされる方が増えているそうですね。
だんだんと・・・ヒトの仕事が減ってしまうと危惧(きぐ)する声もありますが・・・そんな時代は、まだまだ先の話だろうと私は思っておりました。
ある日、興味本意(きょうみほんい)で画像を作らせてみました。それが下の1枚目のものになります。
ちょっと、驚きましたね。想像以上に時代は進んでいるようです。
皆さまの体調は、いかがでしょうか?
ヒストンを「脱アセチル化」することができれば、異常な遺伝子の発現は停止し、この間にDNAの修復をすることも可能になるというわけです。
もちろん、「ヒト内在性レトロウイルス」や「レトロトランスポゾン」などは、異常な遺伝子ということになりますよね。
![キラキラ](https://stat100.ameba.jp/blog/ucs/img/char/char3/088.png)
![バイバイ](https://stat100.ameba.jp/blog/ucs/img/char/char3/128.png)
参考)
1.Cell. 2023 Jan 19;186(2):287-304.
Resurrection of endogenous retroviruses during aging reinforces senescence
Xiaoqian Liuら
2.Int. J. Mol. Sci.2019, 20(13), 3153
The Role of SIRT1 on DNA Damage Response and Epigenetic Alterations in Cancer
Débora Kristina Alves-Fernandesaら
3.Int. J. Mol. Sci.2024, 25(1), 497
The Role of Sirtuin 6 in the Deacetylation of Histone Proteins as a Factor in the Progression of Neoplastic Disease
Marzena Baranら
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<ブログ後記>5月28日
今宵は、雨と風が強まり、大荒れの天気となっているようです。
今回は、DNA「ヒストン」の「エピジェネティック・スイッチ」とその異常により、「ヒト内在性レトロウイルス」や「レトロトランスポゾン」の遺伝子が発現する可能性があるというお話をさせていただきました。
いったい、どのような状況になりますと・・・「ヒト内在性レトロウイルス」や「レトロトランスポゾン」の遺伝子が発現する可能性があるのか?・・・というお話をさせていただきました。
少し、切り口を変えて・・・「DNAのメチル化」についてもお話をしてみたいと思います。
遺伝子が発現するというのは、DNAをコピーするようにして、まずはRNAが作られ、この不要な部分が取り除かれて、m RNAが作られる「転写(てんしゃ)」のことを指します。
そして、次のような現象が起きるということは、よく知られていることであると思います。
ひとつの受精卵の「DNA」から、目や肝臓など多くの臓器が分化していくメカニズム・・・と言った方がわかりやすいかもしれません。
DNAを構成する「塩基」の配列は変わらないにも関わらず(かかわらず)、異なるmRNAが作られ、そこから異なるタンパク質ができるために多くの種類の違う臓器が作られていくわけです。
この理由は、DNA自体が様々な「修飾(しゅうしょく)」を受けており、この修飾のされ方が変化するから・・・という仕組みが存在するからということになります。
こうした仕組みは、「エピジェネティクス(epigenetics)」と呼ばれています。「epi」はギリシャ語で「後に」という意味を表す接頭語で、DNAの塩基配列変化を伴わない遺伝子発現調節機構のことを言います。
この「エピジェネティクス」は、個体発生や細胞分化の過程で必須のメカニズムとなっているわけですが・・・
その実態は、DNAを構成するシトシンのメチル化やヒストンの化学修飾(リジンメチル化・アセチル化・ユビキチン化)などがあることが知られています。
これらDNAの修飾は、遺伝子の発現を亢進(こうしん)したり、または「抑制」するなどのに調節することが知られているのですね。
私も実は「ヒト内在性レトロウイルス(HERV)」を研究していたことがあります。私は基礎医学の研究者ではなく、単なる臨床医であり、とても系統だった研究ができたわけではありません。
しかしながら、偶然にも「全身性エリテマトーデス(SLE)」の患者さんのmRNAを解析していた時に、疾患の活動性が上昇した時には「DNMT1遺伝子のmRNA遺伝子」の発現量が極端に低下し、そのときに「ヒト内在性レトロウイルス(HERV)」の内部構造タンパク質(gagタンパク質)をコードするmRNAの発現量が増加することを見出しました。
「DNMT1遺伝子」とは、DNAのメチル化を調節する遺伝子でしたので、この遺伝子が低下しているということは、DNAのメチル化の状態が低下していることが疑われたのですね。
ちょっとだけ、説明を加えますと・・・DNAの「メチル化」とは、「シトシン」の塩基にメチル基が付加される化学的修飾で、主にCpGサイト(シトシンとグアニンが連続する配列)に起こることが知られています。
DNAがメチル化されますと、mRNAなどが作られる遺伝子の転写がされなくなり、脱メチル化されると遺伝子の転写が開始される・・・ということになりますね。
なので・・・「全身性エリテマトーデス(SLE)」の疾患活動性の高い時には、DNAの「メチル化」の状態が低下し、その結果、通常は発現しない「ヒト内在性レトロウイルス(HERV)」の
遺伝子が発現するのではないか・・・と考えたのですね。
そこからは、DNMT1 mRNAの低下がなぜ、起きているのか?・・・と更に私の研究は深みにはまり、最終的には失敗することになるわけです。
実は、当初、「全身性エリテマトーデス(SLE)」の遺伝子研究は、DNAのアセチル化・脱アセチル化についても研究をする方針でいたのですが・・・当時は、「サーチュイン遺伝子」が何らかの形で関与しているのではないか・・・という説はあったのですが・・・
どうすれば、「サーチュイン遺伝子」の発現を実験に関連付けられるかが、当時の私には思いつきませんでした。
ちょうど、20年前の話ですね。
今であれば・・・「N M N」から「NAD+」を体内で作り出し、サーチュイン遺伝子を活性化することを簡単に思いつくわけですが・・・ね。
もちろん、現在でも「全身性エリテマトーデス(SLE)」の正確な発症原因は正確には分かっていません。
しかしながら・・・「DNA」のメチル化の低下も関与しているのではないかと思うのですね。そして、そのことにより、DNA上にある「ヒト内在性レトロウイルス(HERV)」の遺伝子の一部が発現していたのではないか・・・と思ったりもします。
そして、もし、20年前にDNAのアセチル化・脱アセチル化の研究を少しずつでも進めればよかったなあ〜などとも思います。
当初の予定どおりにですね。
その理由は、どうやらDNAの低メチル化状態があったとしても、ヒストンにDNAがしっかりと巻きついていれば・・・その影響が小さいのではないか・・・という説が多く出てきているからなのですね。
つまり、DNAが低メチル化になり、異常な遺伝子をいつでも発現できるようになったとしても、上の図の下段の状態のように「脱アセチル化」の状態を作り出せれば、その異常な遺伝子の発現を抑制できる可能性が高い・・・ということになりますね。
ちょっと、長くなってしまいましたね。
この話は、何週間でも続けることができるのですが・・・
それは、またの機会にしたいと思います。
今回も最後までお付き合いいただきまして
誠にありがとうございました
参考)
4. J Rheumatol. 2001 Mar;28(3):533-8.
Quantitative analyses of messenger RNA of human endogenous retrovirus in patients with systemic lupus erythematosus
H.Ogasawaraら
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理事長、院長
小笠原 均 (Hitoshi Ogasawara)
医学博士, 内科医
(総合内科、リウマチ専門医)
新潟大医学部卒
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