こんにちは、内科医 ひとちゃんですニコニコ

 

3月最初の休日の午後となっています。

これまでよりも陽射し(ひざし)が強くなっているような気も致します。

今朝は、鳥のさえずりで目を覚ました朝でした。

 

『ウォールデン 森の生活』の著者で知られるアメリカの作家・思想家であったHenry David Thoreau(ヘンリー・デイヴィッド・ソロー)との調和、シンプルライフの重要性を強調していたそうです。

 

彼は、次にような名言を残しています。


“The first song of a bird is the herald of spring — a voice that says the world is awakening.”


「鳥の最初の歌は春の先触れ——世界が目覚めていると告げる声だ。」
 

皆さまの体調は、いかがでしょうか?

 

(AIで画像を作成)

 

最近、話題となっている「IPS細胞」について、お話をしてみたいと思います。

 

あらゆる細胞に変化できる「iPS細胞」を使った2つの再生医療製品について、厚生労働省の専門家部会は2月19日、国内での製造販売承認を了承していますね。


2006年に京都大の山中伸弥教授がマウスの細胞を使って「iPS細胞」を作製して20年となります。

 

「iPS細胞」を使った製品として世界で初めて実用化されるわけですね。承認が了承されたのは、大阪大発ベンチャーのクオリプスによる重い心不全治療に使う心筋シート「リハート(商品名)」と、住友ファーマによるパーキンソン病治療のための神経細胞「アムシェプリ(商品名)」。

 

これらの2つの製品は、京都大学iPS細胞研究財団がストックする第三者のiPS細胞を使ってつくられたのだそうです、

 

どちらの製品も再生医療製品をいち早く患者に届けるための、「条件・期限付き承認制度」での承認が了承されたわけですが、これは、

通常の薬の治験よりも少ない数の患者のデータで安全性や効果を判断され、有効性は効果があると推定できればよいのだそうです。

 

本承認されれば、「iPS細胞」を用いての新しい治療が、今後、多くの

患者さんを救えるようになるわけですね。

 

そこで、この「iPS細胞」の分子機構、臨床試験の現状、そして将来の課題について、2025年時点までの最新知見をお話をしてみたいと思います、

 

「iPS細胞(人工多能性幹細胞)」は、どのように作成されたのか?・・・という話題から始めてみたいと思います。

 

山中先生は2007年に、ヒト線維芽細胞にOct3/4、Sox2、Klf4、c-Mycの4因子(山中因子)を導入することにより、「iPS細胞」を樹立することに成功しました(参考1)。

 

この4つの因子は協調して、細胞のエピゲノムを再構成することができるのですね(参考1)。

 

4つの因子は協調して細胞のエピゲノムを再構成する性質を持ちます。

 

「エピゲノム」とは聞き慣れない言葉であるかもしれませんが・・・

DNA配列そのものは変えずに遺伝子の発現を制御する化学的な「修飾(しゅうしょく)」の総称ということになります。

 

具体的には「DNA」のメチル化や「ヒストン」の修飾(アセチル化、メチル化など)、クロマチン構造の変化などが含まれます。

 

つまり、「エピゲノムの再構成(リプログラミング)」とは、こうしたDNAやヒストンの修飾のパターンをリセットしたり、別の状態に書き換えたりすることを指します。

 

(AIを用いて画像を作成)

 

次に4つの因子を詳しく、見てみたいと思います。

 

1)Oct3/4 (POU5F1)

 

多能性維持の中核をなす。Sox2と複合体を形成し、Nanog等の多能性遺伝子ネットワークを活性化する。


2) Sox2

 

パイオニア転写因子として機能し、閉じた状態のクロマチンに結合して構造を開き、他の因子が結合できるようにする。

3)Klf4

細胞増殖に関与するとともに、体細胞特異的な遺伝子の抑制を助ける。

4) c-Myc

クロマチンリモデリングを広範囲で促進し、初期化効率を飛躍的に高めるとされています。

 

この「c-Myc」は、癌増殖遺伝子でして、発癌リスクに関連するため、現在は「L-Myc」への代替や「c-Myc」を除いた手法も一般化しています(参考1)。

「エピゲノムの再構成(リプログラミング)」は、DNAメチル化の解消やヒストン修飾の変化を経て、その後期には、更なる外部からの因子(外因性因子)を必要とせず、多能性ネットワークが持続的に転写を

開始されるわけですね。

 

つまり、ある細胞にOct3/4 (POU5F1), Sox2, Klf4, L-Mycを導入しただけで、DNAなどのメチル化、アセチル化という修飾が変わり、どのような臓器にも分化可能な「多能性幹細胞」に変化するということに

なりますね。

 

なんとも摩訶不思議(まかふしぎ))な話ではありますが、「iPS細胞」を使った2つの再生医療製品による治療成績が良ければ、さらに多くの方の病状を改善していくことが期待できますよね。

 

素敵な1週間をお過ごしくださいキラキラ

 

それでは、またバイバイ

--------------------------------------------------------------------

<ブログ後記>3月3日

今日は、ひな祭りですね。「桃の節句」と呼ばれるのは、旧暦の3月3日が「桃の花」の咲く季節にあたるからと聞いたことがあります。
 

ひな祭りは、平安時代の宮中行事「上巳(じょうし)の節句」に由来するのだとか。長い歴史を感じますね。

今回は「iPS細胞」についてのお話をさせていただきました。

こちらは、これからの歴史を作り出していくものかもしれません。

 

本文内の2社以外にも、iPS細胞から作成した「神経のもととなる細胞」を脊髄(せきずい)損傷患者に移植する再生医療製品の実用化に向け、慶応大発ベンチャー「ケイファーマ」が、2027年中にも臨床試験(治験)を開始すると発表しておりまして。脊髄損傷が対象の「iPS細胞」を使う治験は世界初であるそうです。

当クリニック(JTKクリニック)は、既に(すでに)自分自身の細胞から作成した「iPS細胞」を保存する事業の窓口になっています。


「iPS細胞」の保存といっても、もちろん「JTKクリニック」内で保存するわけでなく、「I Peace, Inc(アイ・ピース、本社:米国カリフォルニア州)」社の管理のもと、米国と日本国内の専用施設内で保存されることになっています。

「IPS細胞」の歴史を見てみると、その発見は、数十年にわたる「発生生物学」の研究積み重ねの上に成立していることが分かります、

その歴史を見てみますと・・・

1962年、クローン研究の第一人者であるジョン・ガードン氏はアフリカツメガエルの腸上皮細胞の核を、核を除去した卵母細胞へ移植し、正常なオタマジャクシが発生することを示しました。

ちょっと難しいのですが・・・これは「体細胞核移植(SCNT)」により、分化した細胞の核であっても全遺伝情報を保持し、初期化(リプログラミング)が可能であることを証明した画期的な実験であったとされています。


ジョン・ガードン氏は、残念ながら92歳でお亡くなりになりましたが、2012年にノーベル生理学・医学賞を山中伸弥教授と共同受賞しています。

繰り返しになるかもしれませんが・・・「リプログラミング(細胞初期化)」とは、簡単に言うと「細胞がそれまでに蓄積してきた『役割の記憶』を消去し、受精卵のような何にでもなれる状態(多能性)に戻すプロセス」のことですね。

専門的な話をするとすれば、その仕組みは「エピジェネティクス」の書き換えということになります。

DNAの塩基配列(A:アデニン, T:チミン, G:グアニン, C:シトシンの並び方)自体に変更を加えることはありません。


変化するのは、その上に付着している「エピジェネティックな標識」ということになります。

 

その標識とは、DNAメチル化や DNAが巻き付いているタンパク質(ヒストン)の状態(アセチル化などのヒストン修飾)を変え、遺伝子の読み取りやすさを調節する・・・ということになるでしょうか。

つまり、ある細胞に「リプログラミング」が起こると、DNAのメチル化、アセチル化などの修飾が、リセット(消去)され、

細胞は「特定の役割(皮膚など)」を忘れてしまい、再びどんな細胞にもなれる「白紙の状態」に戻るということになりますね。

その後、1981年にはマウス「ES細胞」が樹立され、1998年にはThomsonらによって「ヒトES細胞」が樹立されました(参考2)。

「ES細胞」は多能性を持つのですが、受精卵(胚)を破壊して作製するため、倫理的課題が常に伴っているというのですね。その理由は、受精卵(胚)は、子宮に着床すれば、胎児になるからです。

こうした状況の中で、山中伸弥教授らは「ES細胞」に特異的な「転写因子」に着目し、24種類の候補遺伝子から、1つずつ因子を除外していく「ドロップアウト法」によって、最終的に本文内で
ご紹介をした「Oct3/4」,「Sox2」,「Klf4」,「c-Myc」の4因子を特定したわけです。

 

サラっと書いてしまいましたが、とても時間のかかる、血のにじむような実験の連続であったものと想像します。


これらの4因子は、「転写因子」でして、現在「山中因子」と呼ばれています(参考1)

さらに2007年には、山中伸弥教授らは、Oct3/4, Sox2, Klf4, c‑Myc の4転写因子をレトロウイルス導入することで、まずマウス線維芽細胞からiPS細胞を樹立し、その後、c-Mycを用いない改良プロトコールを開発しました。

この改良法を用いて、成人皮膚線維芽細胞から「ヒトiPS細胞」の樹立にも成功し、Myc除去により腫瘍形成リスクが低減することを示しています(参考3)。

その後、「山中因子」のうち、Oct4 と Sox2 の2因子だけで「iPS細胞」へと再プログラムできることが報告されたり(参考4)、成人の「線維芽細胞」から作製した「ヒトiPS細胞」をバルプロ酸という薬剤の投与下に、Oct4とSox2の2つの因子だけを用いて、ヒト線維芽細胞を安全かつ効果的に作成したりすることが可能であることも報告されています。バルプロ酸(バルプロ酸ナトリウム)は、てんかん薬などに用いられる薬剤となります。


線維芽細胞→iPS→線維芽細胞の往復で機能的線維芽細胞が得られるこというわけですね(参考5).

「iPS細胞」が、今後、どのような歴史を作っていくのか?
とても楽しみですね。またの機会にお話をしてみたいと思います。

 

今回も最後までお付き合いいただきまして

誠にありがとうございましたお願い

 

参考)

1)Cell. 2007 Nov 30;131(5):861-72. 

Induction of pluripotent stem cells from adult human fibroblasts by defined factors 

Kazutoshi Takahashiら・・Shinya Yamanaka

 

2)Science. 1998 Nov 6;282(5391):1145-7.
 Embryonic stem cell lines derived from human blastocysts
J A Thomsonら

 

3)Nat Biotechnol. 2008 Jan;26(1):101-6.
Generation of induced pluripotent stem cells without Myc from mouse and human fibroblasts
Masato Nakagawaら・・Shinya Yamanaka

 

4)Nat Biotechnol . 2008 Nov;26(11):1269-75.
Induction of pluripotent stem cells from primary human fibroblasts with only Oct4 and Sox2
Danwei Huangfuら

5)PLoS One. 2011 Feb 28;6(2):e17128.

Epigenetic and phenotypic profile of fibroblasts derived from induced pluripotent stem cells
Kyle J Hewittら

 

(千鳥ヶ淵の桜: これから訪れる春の風景)

(筆者撮影)

 =================================

 

 

image

 

 

 Instagram

 

                                  <マイJazz リスト>Spotify

                      

                            <今週、なんとなく聞いてみたい曲> 

 

 

  =====================

<JTKクリニックからのお知らせ>

 

◯Zoomを用いた遠隔医療相談を始めました(内科関連疾患)

 

◯外来診療は予約制をとり、待ち時間が生じないようにしています。

 

◯ ダイエット漢方製剤は、オンライン診療でも可能です。

◯ 線維筋痛症に対するノイロトロピン等の点滴療法、トリガーポイント注射を行なっております。(セカンドオピニオン診療も可)

 

自分の皮下脂肪から組織を採取し、「間葉系幹細胞」を培養して、自分自身の組織内に投与する「幹細胞治療」を開始しました。

 

<JTKクリニック 所在地>

〒102-0083

東京都千代田区麹町4-1-5麴町志村ビル2階

電話 03-6261-6386

Mail:info@jtkclinic.com

 =================================

こんにちは、内科医 ひとちゃんですニコニコ

 

朝から気持ちの良い青空が広がっていますね。

暦を見ますと、その七十二候は「土脉潤起(つちのしょううるおいおこる)」となっています。

 

「土脉潤起(つちのしょううるおいおこる)」の意味は、温かい春の雨が凍てついた大地を潤し、土が柔らかく蘇る時期意味します。冷たい雪から雨に変わり、地中の草木が芽吹く準備を始めるというものだそうです。

 

フランスの詩人であり、作家でもあった「アナトール・フランス(Anatole France)」は、次のような言葉を残しています。


All changes, even the most longed for, have their melancholy; for what we leave behind us is a part of ourselves; we must die to one life before we can enter another.

 

「あらゆる変化には、たとえ最も待ち望んだものであっても、哀愁が伴う。なぜなら、私たちが置き去りにするものは、自分自身の一部だからだ。新たな人生へ踏み出す前に、まず一つの人生に別れを告げねばならないのだ。」

 

なるほど・・・そのとおりであると私は思います。

すべてを携えながら、長い道のりを歩いていくことはできませんからね。
 

皆さまの体調は、いかがでしょうか?

 

(AIで画像を作成)

 

前回に続き、「痛みの増幅(ぞうふく)」のメカニズムの後半について、お話をしてみたいと思います。

 

前回のブログでは、風が吹くなどの些細な刺激で、ヒリヒリ・ピリピリとした激しい痛みを感じるという症状が、この「アロディニア(異痛症)」と呼ばれる状態について、お話をさせていただきました。

 

このような現象がなぜ起こるのか?・・・は、これまで謎(なぞ)であったわけですが、最近の世界各国の研究者の報告から、新しいこと

が分かってきたのですね。

 

その内容は、「末梢神経系」と「中枢神経系」における免疫反応とに分かれ、「アストロサイト」と「ミクログリア細胞」の異常な活性化が深く関わっていることが分かってきたというのです。

 

この2種類の細胞は単独で機能するだけでなく、互いに絶えず信号を送り合い、相手の活性化状態を制御するという密接な「クロストーク(相互対話)」を行っていることが知られています。

 

この「クロストーク(相互対話)」は、健康な脳では恒常性の維持に欠かせない一方、特定の疾患においては、「炎症」を増幅させる負の連鎖(れんさ)をもたらすことが知られています。

 

では、この2つの細胞「アストロサイト」と「ミクログリア細胞」とは、どのような細胞なのでしょうか?

 

A)ミクログリア

 

「ミクログリア」は、脳全体に分布する常在性免疫細胞で、脳内の変化を常時監視しています。中枢神経系(CNS)実質細胞の約5–12%を占める単核貪食細胞で、マクロファージのような働きをします(参考1)

 

病原体、細胞の破片、異常なタンパク質の蓄積などを感知すると速やかに活性化し、炎症性サイトカインの産生や食作用(異物の取り込み・排除)を通じて脳を守る「第一応答者」として機能します

(参考2)。

 

 

B)アストロサイト

 

「アストロサイト」は、シナプス・血管・免疫・代謝を結びつけて脳の環境を精密に制御するとされていますが、損傷後に「反応性アストロサイト」となり、増殖・形態変化して瘢痕形成と神経修復・再編成に関与するとされています。

 

「アストロサイト」は、損傷や炎症などで環境が変化すると「反応性アストロサイト(reactive astrocytes/astrogliosis)」へと変化し、形態・遺伝子発現・機能が大きく変わることが知られています。

 

(AIを用いて画像を作成)

 

では、これらの「アストロサイト」と「ミクログリア」のクロストークとは、どのようなものなのでしょうか?

 

「慢性神経障害」などの多くの病態では・・・「ミクログリア」が先に活性化し、IL-1α、TNF-α、C1qのサイトカインなどが放出されます。

そうしますと「A1型アストロサイト」を誘導し炎症を増幅するというわけです。

 

補足になりますが、「アストロサイト」が活性化した時に2つの機能表現型があります。先にお話をした「A1型アストロサイト」は、毒性型と呼ばれているものでして、炎症性サイトカイン(ITNF-α,など)により誘導されるものです。

 

この「A1型アストロサイト(毒性型)」は神経変性疾患(アルツハイマー病など)の病態を悪化させることが知られています。

 

それに対して、「A2型アストロサイト」というものがあり、虚血や脳損傷の急性期に反応して発現するもので(保護型)と呼ばれています。

この「A2型アストロサイト(保護型)」の機能としては、「神経栄養因子(TGF-βなど)」を放出し、神経の修復や保護、血液脳関門の強化に寄与するというわけです。

 

整理しますと・・・「ミクログリア」が活性化すると、TNF-α、IL-1α, C1qを放出し、静止期の「A2型アストロサイト」を神経傷害性の「A1型アストロサイト」へと誘導するのですね。

 

一方、反応性の活性化された「A1型アストロサイト」から放出される

小分子タンパク質(ケモカイン)cxcl10やCCL2は、「ミクログリア」の遊走およびさらなる活性化を促進するという悪循環を形成し、改善が難しくなってしまうというわけですね。

 

もちろん、このモデルは多くの神経疾患でのモデルであって、「繊維筋痛症」の疼痛の増悪にピタリと当てはまるものではありません

(参考3)。

 

現状では、「線維筋痛症」のある方の脳や脊髄で、「A1型アストロサイト」のマーカー(C3など)を直接評価した報告はなく、「A1アストロサイト」の存在は推測の域を出ていません。

 

しかしながら、これまでに「PET-CT」で、繊維筋痛症の方の脳組織において、「ミクログリア」優位の活性化があることは確認され、報告されています(参考4)

 

他の慢性疼痛・神経変性で確立した「ミクログリア活性化」→

「A1型アストロサイト」の誘導→「神経毒性・シナプス異常」という

モデルを併せて考えますと・・・

必ず「ミクログリア」の活性化が、最初の段階であるという大原則がありますので、「線維筋痛症」でも「ミクログリア」の活性化から

「A1型アストロサイト」がある可能性は高いとされております。

 

「アストロサイト」と「ミクログリア」のクロストークによる中枢性

感作維持のメカニズムが、十分にあり得るストーリーであると考えられているそうです。

 

ならば・・・「新しい治療法」が考えられるかも・・・となるわけで

すが・・・続きは、後日の話題にしたいと思います。

 

素敵な1週間をお過ごしくださいキラキラ

 

それでは、またバイバイ

--------------------------------------------------------------------

<ブログ後記>2月24日

 

今回は、「アストロサイト」と「ミクログリア」がともに活性化して、「痛み」の増幅が生じる可能性について、お話をさせていただきなした。

この問題が解決できれば、「線維筋痛症」が完全に治りますということではないかもしれません、

なぜなら、「線維筋痛症」には、2つの側面があるからということになります。ひとつの側面は「疼痛」であり、風が吹いても痛いなどといった外部の刺激の異常な増幅というこよになります。

 

もうひとつは「うつ傾向」になります。もちろん、いつも「痛み」などの不調がありますので、それは無理もない・・・ということになるわけですが・・・ね。

 

「線維筋痛症」は、脳神経関連の疾患なのではないか?・・・という説があるのも理解できなくもありませんし、そうなのかもしれません。

しかしながら、近年、適応免疫系、特に「T細胞」が慢性痛に関わることが注目されています。

 

神経損傷後、脊髄後角や後根神経節にT細胞が入り込むことが観察されます。「CD4陽性T細胞(ヘルパーT細胞)とCD8陽性T細胞(細胞障害性T細胞)の両方が、痛覚過敏の維持に関与していることが動物実験で示されています(参考5)。

 

「T細胞」が、IFN-γ(インターフェロン ガンマ)などのサイトカインを産生し、これが「ミクログリア」や「アストロサイト」の活性化を促すというのですね。

 

また、「T細胞」由来の「サイトカイン」は直接的に神経細胞の興奮性を調節することも報告されています。このように、自然免疫と適応免疫の両方が協力して、痛みを慢性化させる複雑なネットワークを形成します。

 

もちろん、さらなる検証は必要であるわけですが・•・自分自身の

T細胞が反応するとすれば、「自己免疫」のメカニズムが働いているということになりますよね。

 

さらに興味深いことには、「痛み」の病態には性差が存在することが明らかになっています。特に、「ミクログリア」と「アストロサイト」の関与には性差があり、雄のマウスでは「ミクログリア」が、雌のマウスでは「T細胞」と「アストロサイト」がより重要な役割を果たすことが報告されています(参考6)。

 

では、どのような薬剤が「ミクログリア」と「アストロサイト」の

活性化による「痛み」の増幅を改善させる可能性があると報告されているのでしょうか?

以下に薬剤と、その作用機序をご紹介しておきたいと思います。

 


プレガバリン(Pregabalin)神経の興奮を抑える


• 作用点: 神経細胞(シナプス前終末)にある「電位依存性カルシウムチャネル(α2δサブユニット)」に結合します。


• 効果: カルシウムイオン(Ca²⁺)が神経細胞内に入るのをブロックし、興奮の伝達物質である「グルタミン酸」の過剰な放出を抑制します。これにより、「痛み」の信号が次の神経に伝わりにくくなります。


デュロキセチン(Duloxetine)痛みを抑えるブレーキを強める


• 作用点: 「セロトニン」や「ノルアドレナリン」といった神経伝達物質を回収する「再取り込みトランスポーター(SNRI)」の働きを阻害します。


• 効果: シナプス間隙(神経と神経の隙間)に、痛みを抑える働きを持つセロトニンやノルアドレナリンが長く留まるようになります。これにより、体が本来持っている「痛みを抑えるシステム(下行性疼痛抑制系)」の働きが強まります。


ミノサイクリン(Minocycline):免疫細胞の暴走を止める


• 作用点: 活性化した「ミクログリア」に直接作用します。
• 効果: ミクログリアの活動を抑制し、痛みを増強する「炎症性サイトカイン」の放出を抑えます。

 

これにより、神経の興奮バランスが崩れる(抑制の脱抑制)のを防ぎ、痛みの慢性化を根本から食い止めようとします。


参考論文は省略しますが・・・このように、それぞれの薬剤は異なるターゲットに作用し、多角的に痛みの増幅システムを鎮静化させようと働くと考えられています。

 

道半ばではありますが、現時点での海外の論文で報告されている「痛み」の増幅のメカニズムをお話させていただきました。

 

今回も最後までお付き合いいただきまして

誠にありがとうございましたお願い

 

参考)

1)Front Immunol. 2022 Oct 19:13:997786. 

Microglia morphophysiological diversity and its implications for the CNS   Andres Vidal-Itariagoら

Vidal-Itriago Aら

 

2)Annu Rev Immunol. 2014:32:367-402.

Microglia development and function 

Debasis Nayakら

 

3)Acta Neuropathol Commn. 2023 Mar 13;11(1):42. 

Roles of neuropathology-associated reactive astrocytes: a systematic review   

Jill M Lawrenceら

 

4)Brain Behav Immun. 2019 Jan:75:72-83. 

Brain glial activation in fibromyalgia - A multi-site positron emission tomography investigation  

Daniel S Albrechtら

 

5)J Neurosci. 2009 Nov 18;29(46):14415-22. 

T-cell infiltration and signaling in the adult dorsal spinal cord is a major contributor to neuropathic pain-like hypersensitivity   

Michael Costigennら

 

6)Nat Neurosci. 2015 Aug;18(8):1081-3. 

Different immune cells mediate mechanical pain hypersensitivity in male and female mice 

Robert E Sorgeら

 

(麻布台ヒルズ: 河津桜から始まる春の風景)

(筆者撮影)

 =================================

 

 

image

 

 

 Instagram

 

         < マイJazz プレイリスト> Piano Jazz

 

 

          

                         <今週、なんとなく聞いてみたい曲> 

 

 

  =====================

<JTKクリニックからのお知らせ>

 

◯Zoomを用いた遠隔医療相談を始めました(内科関連疾患)

 

◯外来診療は予約制をとり、待ち時間が生じないようにしています。

 

◯ ダイエット漢方製剤は、オンライン診療でも可能です。

◯ 線維筋痛症に対するノイロトロピン等の点滴療法、トリガーポイント注射を行なっております。(セカンドオピニオン診療も可)

 

自分の皮下脂肪から組織を採取し、「間葉系幹細胞」を培養して、自分自身の組織内に投与する「幹細胞治療」を開始しました。

 

<JTKクリニック 所在地>

〒102-0083

東京都千代田区麹町4-1-5麴町志村ビル2階

電話 03-6261-6386

Mail:info@jtkclinic.com

 =================================

こんにちは、内科医 ひとちゃんですニコニコ

 

気持ちの良い青空が広がり、季節を先取りしたような陽気となっています。

春の陽気は、長い間、待ち望んでいたことで、なんとなく嬉しくなりますね。

『トム・ソーヤーの冒険』の作者である19世紀の小説家「マーク・トウェイン」は、次のような言葉を残しています。

 

"In the spring, I have counted 136 different kinds of weather inside of 24 hours." 

 

春には、24時間の中に136種類もの異なる天気を数えたことがある

 

彼は、米国のニューイングランド地方の気候が変わりやすいことを

スピーチの中で揶揄(やゆ)したそうです。

 

春の気候が不安定であることを誇張して強調する際に引用される言葉かもしれませんね。

 

確かに明日の夕方からは寒くなりまして 、雪がちらつくとか。

 

皆さまの体調は、いかがでしょうか?

 

(AIで画像を作成)

 

今回は「線維筋痛症」などの痛みの治療にもつながる可能性があるかもしれない「慢性疼痛のメカニズム」について、お話をしてみたいと思います。

 

「痛み」は本来、体を守るための警告システムです。

 

しかし「慢性痛」では、痛み自体が病気となり、患者さんの生活の質を著しく低下させます。

 

最近の研究により、「痛みの増幅(ぞうふく)」には、末梢神経系と中枢神経系における免疫反応と、アストロサイトなどの「グリア細胞」の異常な活性化が深く関わっていることが分かってきました。

 

まず、末梢神経ですが・・. ・組織が損傷したり炎症が起きると、その場所で「免疫細胞」が活性化し、様々なサイトカインやケモカインを作り出します。

 

この免疫反応は本来、組織を修復するために必要なものですが、同時に痛みの感じ方を大きく変化させます。

マクロファージや肥満細胞などの「免疫細胞」は、損傷部位に素早く集まり、TNF-α、IL-1β、IL-6などの「炎症性サイトカイン」を放出します(参考1)。

 

 

これらの「炎症性サイトカイン」は、痛みを感じる神経線維に直接作用し、神経を興奮しやすい状態にします。

特に「TNF-α」は、神経細胞の表面にある「TNFR1(TNF受容体1型、CD120a)という受容体を通じて信号を伝え、ナトリウムチャネルやTRPV1チャネルの数を増やすとされています(参考2)。

 

 

TRPV1(トリップ・ブイワン)は、唐辛子(とうがらし)の辛み(からみ)の成分カプサイシンや43℃以上の熱、酸などを感知し、「熱い・痛い」という信号(侵害受容)に変換する細胞膜上のイオンチャンネルです。

 

侵害性刺激を「痛み」として感じる主要な感覚センサーであるので「TRPV1チャネル」の数を増やす結果、神経が反応する閾値が下がり、通常では痛みを感じないような弱い刺激でも痛みを感じるようになります。これが「アロディニア(異痛症)」と呼ばれる現象です。

 

風が吹くなどの些細な刺激で、ヒリヒリ・ピリピリとした激しい痛みを感じるという症状が、この「アロディニア(異痛症)」と呼ばれる状態となります。

 

さらに「IL-1β」も強力な痛み増強作用を持っています。「IL-1β」は、IL-1受容体を通じてp38 MAPキナーゼ経路というものを活性化し、「プロスタグランジンE2(PGE2)」の産生を促進します(参考3)。

 

 

「PGE2」は痛みを感じる神経を敏感にし、痛覚過敏を引き起こします。さらにIL-1βは神経成長因子(NGF)の産生も増やし、これが長期的な「痛みの感作」に寄与します。

「痛みの感作」とは、長引く痛みや炎症により神経系(末梢または中枢)が過敏になり、通常なら「痛み」を感じにない弱い刺激でも痛みを感じたり、実際の組織損傷以上に強い痛みを感じたりする現象を指します。

 

(AIを用いて画像を作成)

 

次に神経障害性疼痛における免疫応答についてのお話をさせていただきたいと思います。

神経が損傷されると、より複雑な免疫反応が起こります。損傷された神経組織からは、「DAMPs(ダンプス:ダメージ関連分子パターン)」と呼ばれる内因性の危険信号が放出されます。

 

この、「DAMPs」は、細胞の損傷や細胞死に伴って細胞内から放出される分子群の総称ですが、これにはATP、HMGB1、熱ショックタンパク質などが含まれます(参考4)。

 

これらの「DAMPs」は、免疫細胞にある「パターン認識受容体(特にToll様受容体)」を活性化し、炎症反応を開始させます。

とくに「TLR4(Toll様受容体4)」の活性化は、神経障害性疼痛の発症と維持に重要な役割を果たすことが複数の研究で示されています

(参考5)。

 

神経損傷部位では、マクロファージの浸潤が顕著に認められます。

マクロファージはM1型(炎症促進型)とM2型(抗炎症型)に分類されますが、神経障害性疼痛の初期にはM1型マクロファージが優位となり、炎症性メディエーターを大量に産生します(参考6)。

 

この炎症環境が、損傷を免れた隣の神経線維まで敏感にし、痛みの範囲を広げると考えられています。

 

最近、このメカニズムに、獲得免疫、とくにT細胞が「慢性痛」に関わることが注目されています。神経損傷後、脊髄後角や後根神経節にT細胞が入り込むことが観察されています。

 

実際に「CD4陽性T細胞」と「CD8陽性T細胞」の両方が、痛覚過敏の維持に関与していることが動物実験で示されています(参考7)。

 

「T細胞」はIFN-γなどのサイトカインを産生し、これが「ミクログリア」や「アストロサイト」の活性化を促します。

 

また、T細胞由来のサイトカインは直接的に神経細胞の興奮性を調節することも報告されています。このように、自然免疫と適応免疫の両方が協力して、「痛み」を慢性化させる複雑なネットワークを形成します。

 

次にやっと「ミクログリア」や「アストロサイト」の話が出てくるわけですが・・・続きは、後日の話題にしたいと思います。

 

素敵な1週間をお過ごしくださいキラキラ

 

それでは、またバイバイ

--------------------------------------------------------------------

<ブログ後記>2月17日

 

今回は、神経障害疼痛のお話をさせていただきました。

「痛み」は本来、体を守るための警告システムであるというお話を本文内でさせていただきましたが・・・

 

やはり、「痛み」が絶え間なく続いている「慢性の痛み(慢性疼痛)」は、「痛み」そのもの自体が病気となり、患者さんの生活の質を著しく低下させます。

 

ひとつの例が「線維筋痛症」であったりするわけです。

風があたってもガラスが刺さったような痛みに感じるというのは、まさに痛みの大きさが増幅されているように思います。

 

本文では、「末梢神経系」の領域の異常についての話であるわけですが、

損傷部位で発生するTNF-α、IL-1β、IL-6などのサイトカイン、また、

マクロファージ、CD4+T細胞(ヘルパーT細胞)、CD8+T細胞(細胞障害性T細胞)などと並べられますと・・・これは、何らかの「異常な免疫反応」が起きているのではないか?・・・と思えてきますよね。

 

多くの新しい用語にうんざりする方も多かったと思いますが、末梢神経では、炎症性サイトカインが放出され、何らかの「自己免疫反応(?)

」が起きている可能性があるわけです。

 

次に「中枢神経系」の領域に話を移しまして・・・「アストロサイト」が活性化して、痛みの増幅を起こすというお話をしてみたいと思います。

脳内(中枢神経系)に存在する最大のグリア細胞が「アストロサイト」というものになります。ギリシャ語で「星の細胞」を意味でして、多数の細い突起を広げ、脳全体に網目状に展開しています。

 

この「アストロサイト」は、以前のブログ内でもお話をしたことがあるかもしれません。

アストロサイトは、「神経細胞とは異なり電気信号を発生しないため、脳が働くために必要な情報伝達には関わっていない」と考えられ、その重要性が見過ごされてきた細胞となります。

 

その後、「アストロサイト」の四方八方に伸ばし突起は先端がシート状で、神経細胞同士の接合部位である「シナプス」と「脳血管」を覆っています。ヒトの「アストロサイト」は、1個あたり推定200万個以上のシナプスに関わっていると考えられているのですね。

 

また、「アストロサイト」は、「血管」と「神経細胞」の間を橋渡しし、血管からグルコースなどを取り込んで神経細胞へ渡す役割を持つとされます。

 

こうした多彩な機能を持つことから・・「アストロサイト」は、「脳内の環境調整役」などと呼ばれているわけです。

 

しかしながら、「神経損傷」がある状態では、「アストロサイト」は反応性の状態に変化し、「痛み」の増幅(ぞうふく)に積極的に関わるようになります。


とくに脊髄後角の「アストロサイト」は、末梢からの痛み刺激や炎症性メディエーターに反応して活性化します。

この活性化は「GFAP」というタンパク質の発現増加を特徴とし、形態的には細胞体が大きくなり突起が増えます(参考8)。

 

活性化したアストロサイトは、神経伝達の調節、炎症性メディエーターの産生、細胞外環境の変化など、複数の仕組みを通じて「痛覚伝達」を強めてしまうのだそうです。

 

・・・とここまでが、導入部分で、さらに「アストロサイト」の活性化は、しばしば「ミクログリア」の活性化と並行して起こります。実際、これらのグリア細胞間には密接なクロストークが存在し、互いに活性化を促進する・・・とい話になり、それは治療するには、どのような薬剤が最適か?・・・となっていくわけですが、

続きは、次週の話題にしたいと思います。

 

「難攻不落(なんこうふらく)の城を攻めて、完全に落とすには・・

・それなりの理論武装が必要なわけでして〜〜〜と言いながら、難しい用語に もう、ここでやめようかな〜〜〜とも思うわけですが、もう少しだけ話を進めたいと思います(本当は、ヘトヘトです笑い泣き

 

今回も最後までお付き合いいただき

誠にありがとうございましたお願い

 

参考)

1)Trends Neurosci. 2001 Aug;24(8):450-5. 

Glial activation: a driving force for pathological pain  

LR watkinsら

 

2)J Neurosci. 2003 Apr 1;23(7):2517-21. 

Tumor necrosis factor-alpha induces mechanical allodynia after spinal nerve ligation by activation of p38 MAPK in primary sensory neurons  

Maria Schhafersら

 

3)Nature. 2001 Mar 22;410(6827):471-5. 

Interleukin-1beta-mediated induction of Cox-2 in the CNS contributes to inflammatory pain hypersensitivity   

T A Samedら

 

4)Sultan Qaboos Univ Med J. 2015 May;15(2)

The Role of Damage-Associated Molecular Patterns (DAMPs) in Human Diseases: Part II: DAMPs as diagnostics, prognostics and therapeutics in clinical medicine  

Walter G Land

 

5)Brain Behav Immun. 2010 Jan;24(1):83-95. 

Evidence that opioids may have toll-like receptor 4 and MD-2 effects

Mark R Hutchosonら

 

6)Nat Commun. 2020 Jan 14;11(1):264. 

Dorsal root ganglion macrophages contribute to both the initiation and persistence of neuropathic pain 

Xiaobing Yuら

 

7)J Neurosci. 2009 Nov 18;29(46):14415-22. 

T-cell infiltration and signaling in the adult dorsal spinal cord is a major contributor to neuropathic pain-like hypersensitivity

Michael Costiganら

 

8)Acta Neuropathol. 2010 Jan;119(1):7-35. 

Astrocytes: biology and pathology   

 Michael V sofroniewら

 

(ミッドタウン東京:水の湧き出る風景)

(筆者撮影)

 =================================

 

理事長・ 院長  

小笠原  均  (Hitoshi Ogasawara)   

医学博士, 内科医

(総合内科、リウマチ専門医)

(新潟大医学部卒)

(業績)

 

 

image

 

 

 Instagram

 

         < マイJazz プレイリスト> Piano Jazz

 

 

           <今週、なんとなく聞いてみたい曲> 

 

 

    =====================

<JTKクリニックからのお知らせ>

 

◯Zoomを用いた遠隔医療相談を始めました(内科関連疾患)

 

◯外来診療は予約制をとり、待ち時間が生じないようにしています。

 

◯ ダイエット漢方製剤は、オンライン診療でも可能です。

◯ 線維筋痛症に対するノイロトロピン等の点滴療法、トリガーポイント注射を行なっております。(セカンドオピニオン診療も可)

 

自分の皮下脂肪から組織を採取し、「間葉系幹細胞」を培養して、自分自身の組織内に投与する「幹細胞治療」を開始しました。

 

<JTKクリニック 所在地>

〒102-0083

東京都千代田区麹町4-1-5麴町志村ビル2階

電話 03-6261-6386

Mail:info@jtkclinic.com

 =================================

こんにちは、内科医 ひとちゃんですニコニコ

 

先ほどまでは、雪が散らついておりました。

 

「立春」を過ぎてもなお舞い降りる雪を見ながら、冬の名残(なごり)と捉える(とらえる)べきか、それとも、春への序章なのだろうか・・・などと窓の外をぼんやりと見ておりました。

 

春になっても降る、あるいは消えずに残っている雪を「名残雪(なごりゆき)」と呼ぶわけですが、冬から春への移行を感じさせる季語として扱われます。 

 

2月の雪にはまさに、終わりと始まりが一つに溶け合う「境界の美」があるということでしょうか。

 

皆さまの体調は、いかがでしょうか?

 

 

(AIで画像を作成)

 

さて、以前にもお話をしたことがある話題なのですが・・・

 

「活性型ビタミンD」による「老化細胞」を抑制するメリットについて、再度、お話をしてみたいと思います。少し復習をぢてみますと、次のようなものになります。

 

「細胞老化」は、様々なストレス応答の結果として生じる不可逆的な「増殖停止」の状態でしたね。

 

「テロメア」の長さがそれ以上は分裂できなくなる「ヘイフリックの限界」に達することや、そこまで達しなくても、なんらかの遺伝子異常が生じることにより、細胞分裂を停止することで「老化細胞」になるというケースもありましたよね。

 

老化した細胞は単に機能を停止するだけでなく、

「SASP(Senescence-Associated Secretory Phenotype:老化関連分泌表現型)」と呼ばれる、炎症性サイトカインやマトリックス分解酵素を分泌する形質を獲得します(参考1)。

 

 

加齢に伴う「老化細胞」の蓄積(ちくせき)は、組織の「慢性炎症(Inflammaging)」を誘発し、動脈硬化、糖尿病、骨粗鬆症、神経変性疾患などの多岐にわたる加齢関連疾患の共通基盤となります (参考2)。

 

先に述べたとうに「細胞老化」は、テロメアの短縮、DNA損傷応答、酸化ストレス、発がんストレスなどによって誘導されます。

 

これらの反応をもう少し詳しくみてみると、「p53/p21CIP1経路」、および「 p16INK4A/pRb経路」が活性化しますと、「細胞周期」を恒久的に停止させます。

 

p53/p21CIP1経路」活性化は、 DNA損傷やストレスにより活性化され、細胞周期を停止させますし、「 p16INK4A/pRb経路」が活性化しますと、「細胞周期」を恒久的に停止させます。

 

こうして生じた「老化細胞」は、IL-6、IL-1β、TNF-α、および MMP 群を分泌し、「パラクライン」作用によって周囲の正常細胞へも老化を「伝播」させます(参考2)。

 

「パラクライン作用」とは、細胞が分泌する「成長因子」、「サイトカイン」、「エクソソーム」などが血液などを経由せず、隣接する細胞や

局所的な細胞に直接作用するシグナル伝達機構のことでしたね。

 

つまり、「老化細胞」が1つ生じますと、周囲の細胞は次から次へと

「老化細胞」が生じ、最終的には、ヒトの内臓、皮膚などを加速度的に「老化」させ、最終的にはヒトの寿命そのものを短くしていくとも考えられます。

 

(AIを用いて画像を作成)

 

では、この絶望的とも言える状況で「活性型ビタミンD」は、どのようにして、「老化細胞」を抑制していくのでしょうか?


「活性型ビタミンD」は、以下の5つの主要な経路を通じて「老化」を制御すると考えられています。

1 )Nrf2-抗酸化経路の活性化

「活性型ビタミンD」は、VDR(ビタミンD受容体)を介して細胞内の

「抗酸化スイッチ」である Nrf2 の転写を促進します(参考3)。

 

「Nrf2 」は「転写因子」なのですが、核内で「Nrf2」は、抗酸化酵素(SOD、カタラーゼなど)やグルタチオン合成酵素、ヘムオキシゲナーゼ1(HO-1)などの抗酸化・解毒遺伝子の発現を誘導し、細胞内の抗酸化力を高めるとされているのですね。

 

マウスモデルにおいて、「ビタミンD活性化酵素」の欠損は著しい酸化ストレスと早期老化を招きますが、外因性の「活性型ビタミンD」を補充により、「Nrf2 」を介してこれらの症状が劇的に改善されることが証明されています(参考3)。

2 )エピジェネティック制御:VDR-Ezh2-p16軸

老化マーカーである「 p16(p16INK4a)」の発現抑制において、「ビタミンD」は、エピジェネティックな「蓋(ふた)」の役割を果たします。

これは、ちょっと、難しいのですが・・・

「活性型ビタミンD」は、「ヒストンメチル化酵素 Ezh2 」の発現を誘導します。「ヒストンメチル化酵素 Ezh2 」は、遺伝子の発現を抑制する働きがあります。これが、「 p16 遺伝子」の存在する部分を抑制するようなヒストン修飾(H3K27me3)を促進します (参考4)。

 

 

これにより、幹細胞の増殖能が維持され、組織の再生能低下が防がれます。

3)抗老化タンパク質Klotho(クロソ)の誘導

「Klotho(クロソ/クロトー)」 Kは、主に腎臓や脳で生成される「抗老化タンパク質(ホルモン)」です。1997年に日本人の研究者(黒尾誠氏ら)によって発見され、寿命や老化のメカニズムに深く関与する物質として、現在世界中で研究が進行しています。 、

 

この「Klotho(クロソ/クロトー)タンパク」が欠損すると「早期老化」を呈し、過剰発現すると寿命が延長する「長寿遺伝子」のひとつです(参考5)。

 

「活性型ビタミンD」は、「Klotho 遺伝子」のプロモーター領域にあるビタミンD応答配列(VDRE)に直接結合し、その発現を強力にブーストします (参考6)。

 

Klotho はインスリン/IGF-1シグナル伝達経路(IIS経路)の抑制やWntシグナルの制御を通じて、全身性の「抗老化作用」を発揮するとされています。


4 )ミトコンドリア恒常性の維持

「VDR(ビタミンD受容体)」は、核内だけでなく「ミトコンドリア」にも局在し、「マイトファジー(損傷したミトコンドリアの分解)」や呼吸鎖機能の調節に関与します(参考7)。

 

 

「VDR(ビタミンD受容体)」が、機能不全に陥ると、ミトコンドリアからの「活性酸素(ROS)産生」が増大し、DNA損傷を介して細胞老化が加速します。

ビタミンD補充は、ミトコンドリアの「質」を維持することで、老化の源流を断つ役割を果たします。

5)「サーチュイン1遺伝子(SIRT1)」の活性化

長寿遺伝子として知られる「サーチュイン1遺伝子( SIRT1 )」も、

ビタミンDの制御下にあります。「活性型ビタミンD」は 

「サーチュイン1遺伝子( SIRT1 )」の発現を増強し、p53 や NF-\kappa B の脱アセチル化を通じて、アポトーシス抑制と抗炎症作用を同時に発揮することが報告されています。

 

いかがでしょうか?「活性型ビタミンD」というのは、「骨粗鬆症」の治療薬のひとつで、既に製剤化されています。

もちろん、「骨粗鬆症」の状態になければ、保険診療では処方できないわけですが、「抗老化医療」においても期待できそうですね。

 

素敵な1週間をお過ごしくださいキラキラ

 

それでは、またバイバイ

-------------------------------------------------------------------

<ブログ後記>2月10日

「活性型ビタミンD」は、既に「骨粗鬆症(こつそしょうしょう)」の治療薬として、製剤化されています。


臨床の現場では、活性型ビタミンD3製剤として、「アルフカルシドール(商品名:ワンアルファ,アルファロール」や「カルシトリオール(ロカルトロール)」などの薬剤があります。


これらの薬剤は、骨吸収を抑制することで、「骨密度」を増加させます。骨粗鬆の治療薬としては、ポピュラーであり、よく処方される薬剤になると思います。

このような「活性型ビタミンD」が「骨密度」の改善ばかりでなく、

「老化細胞」の蓄積を蓄積を抑制するというのですから驚きますね。

実際にそれを裏づけるようななデータが集まりつつあるようです。

どのようなデータかと言いますと、以下のようなものになります。

A.「テロメア長」の維持
大規模試験「VITAL trial」のサブ解析(2025年報告)において、5年間にわたるビタミンD3の補充は、プラセボ群と比較して白血球テロメア長の短縮を有意に抑制し、生物学的老化を約2〜3年分遅らせる可能性が示されました(参考8)。

B. 「免疫老化」の改善

高齢者を対象とした最新の研究では、高用量ビタミンDの投与が末梢血中の老化マーカー(SA-\beta-gal活性やp16発現)を低下させ、免疫機能を若返らせることが報告されています(参考9)
 

しかしながら、「活性型ビタミンD」の製剤(カルシトリオール、アルファカルシドール等)は、「抗老化作用」という「光」を持つ一方で、厳格な管理を要する「影」も併せ持ちます。


その「影」とは、どのようなことなのでしょうか?

それは、「高カルシウム血症」と、それによる「血管」の石灰化ということになります。「血管」の石灰化とは、「動脈硬化」ということになりますね。
 

それは、次のようなメカニズムによって引き起こされます。

実は、「活性型ビタミンD」は、腸管からの「Ca(カルシウム)」の

吸収を強力に促進(そくしん)します。

 

このため、「活性型ビタミンD」の製剤を過剰に投与しますと、血清Ca濃度を上昇させ、軟部組織や血管の石灰化を招くリスクがあるというわけです(参考10)。

 

これは本来の目的である「心血管系の老化抑制」と矛盾する結果を引き起こしかねないというわけです。組織の「老化」スピードを抑制するには、「動脈硬化」のスピードをできるだけ抑制することが重要でしたよね。

 

なぜなら、以前のブログでもお話をしましたが・・・1人のヒトの持つ血管のトータルの長さは、地球を2周半する長さを持ち、あらゆる組織に血液を供給しているわけですから・・・仮に「老化細胞」を抑えられても、「動脈硬化」が進行してしまっては、あらゆる臓器の「老化」は進行してしまいますよね。

 

今回も最後までお付き合いくださり

誠にありがとうございましたお願い

 

参考)

1)Nat Rev Mol Cell Biol. 2024 Dec;25(12):958-978. 

The senescence-associated secretory phenotype and its physiological and pathological implications 

Boshi Wangら

 

2)Endocr Rev.. 2024 Sep 12;45(5):655-675. 

Targeting Cell Senescence and Senolytics: Novel Interventions for Age-Related Endocrine Dysfunction.

Masayosi Sudaら

 

3)Agibg Cell. 2019 Jun;18(3):e12951. 

1,25-Dihydroxyvitamin D exerts an antiaging role by activation of Nrf2-antioxidant signaling and inactivation of p16/p53-senescence signaling 

Lulu Chenら

 

4)Aging Cell. 2020 Feb;19(2):e13095. 

1,25-Dihydroxyvitamin D protects against age-related osteoporosis by a novel VDR-Ezh2-p16 signal axis 

Renlel Yangら

 

5)Kidney Int. 2007 Apr;71(8):730-7. 

Klotho: an antiaging protein involved in mineral and vitamin D metabolism 

P-Erena Torressら

 

6)Biochem Biophys Res Commn. 2011 Oct 28;414(3):557-62. 

Vitamin D receptor controls expression of the anti-aging klotho gene in mouse and human renal cells 

Ryan E Forsterら

 

7)Int J Mol Sci. 2018 Jun 5;19(6):1672. 

Vitamin D Receptor Is Necessary for Mitochondrial Function and Cell Health

 Chiara Riccaら

 

8)Am J Clin Nutr. 2025 Jul;122(1):39-47.
Vitamin D3 and marine ω-3 fatty acids supplementation and leukocyte telomere length: 4-year findings from the VITamin D and OmegA-3 TriaL (VITAL) randomized controlled trial
Haidong Zhuら


9)Front Immunol . 2025 May 12:16:1570441.
 Co-administration of vitamin D and N-acetylcysteine to modulate immunosenescence in older adults with vitamin D deficiency: a randomized clinical trial
Samira Rastgooら

 

10)(Case Reports)J Bras Netfrol. 2020 Apr 3;42(2):238-244. 

Vitamin D Toxicity

Kenneth Limら

 

(帝国ホテル 赤い薔薇の装花)

 =================================

 

理事長・ 院長  

小笠原  均  (Hitoshi Ogasawara)   

医学博士, 内科医

(総合内科、リウマチ専門医)

(新潟大医学部卒)

(業績)

 

 

image

 

 

 Instagram

 

                           < マイJazz プレイリスト> Piano Jazz

 

 

               <今週、なんとなく聞いてみたい曲> 

 

=====================

<JTKクリニックからのお知らせ>

 

◯Zoomを用いた遠隔医療相談を始めました(内科関連疾患)

 

◯外来診療は予約制をとり、待ち時間が生じないようにしています。

 

◯ ダイエット漢方製剤は、オンライン診療でも可能です。

◯ 線維筋痛症に対するノイロトロピン等の点滴療法、トリガーポイント注射を行なっております。(セカンドオピニオン診療も可)

 

自分の皮下脂肪から組織を採取し、「間葉系幹細胞」を培養して、自分自身の組織内に投与する「幹細胞治療」を開始しました。

 

<JTKクリニック 所在地>

〒102-0083

東京都千代田区麹町4-1-5麴町志村ビル2階

電話 03-6261-6386

Mail:info@jtkclinic.com

 =================================

こんにちは、内科医 ひとちゃんですニコニコ

 

2月最初の休日となっています。

2月は「如月」と書いて「きさらぎ」と呼ばれることもありますね。

そのように読むようになったのは、室町時代の頃とされています。

 

「如月」を「じょげつ」と読んでも、2月の異称になるわけですが、これはm中国最古の字書『爾雅(じが)』に「二月を如となす」とあることから生まれました。

「如となす」は、万物が神意に従うように現れ出ることだそうで、

自然がいきいきと動き出す時期といえますね。

 

皆さまの体調は、いかがでしょうか?

 

(AIで画像を作成)

先週末のことでしたが、米国のオンライン・タブロイド紙『Raw story』の驚くような記事があったそうです。

 

トランプ米大統領による交流サイト(SNS)への執拗な投稿について、専門家から健康状態を懸念する声が上がっている。米国内のある医師は25日、大統領の深夜の連投や感情的な言動は、脳卒中後の一般的な副作用である「激越性(げきえつせい)うつ病」の兆候である可能性があるとし、医療チームによるより適切な介入が必要だと指摘したというニュースがありました。

 

22日にブリュッセルで開かれたEUの臨時首脳会議で、一部首脳らに「アウト・オブ・ヒズ・マインド(正気を失っている)」と評価されたという報道もあります。

 

そこで、今回は「脳卒中後うつ病」とは、どのようなものか?また、「アルツハイマー病」と違いについて、お話をしてみたいと思います。

 

高齢化に伴い、「脳卒中」と「認知症」の患者数は世界的に増加しているそうです。

 

脳卒中を経験した人の約3〜4割が「脳卒中後うつ病(PSD)」を発症するとされ、特にイライラや落ち着きがなくなる「激越(げきえつ)」を伴う場合、リハビリの妨げになるとされています (参考1,2,3)

 

 

一方、「アルツハイマー型認知症(AD)」は認知症の約7割を占める代表的な病気です [4]。「脳卒中後うつ病(PSD)」の認知機能の低下は、うつの治療によって「回復する可能性(可逆性)」があるのに対し、ADはゆっくりと進行する病気です。この違いを正しく理解することが、適切な治療への第一歩となります。

 

(AIを用いて画像を作成)

 

では、「脳卒中後うつ病(PSD)」が起こる仕組みとは、どのようなものになるのでしょうか?

「脳卒中」になると、脳の中では単なる「心の落ち込み」以上の物理的な変化が起こるとされています。

 

1)神経の炎症

 

脳の血管が詰まったり破れたりすると、脳内の免疫細胞(ミクログリアなど)が活性化し、炎症物質を放出します。これが脳の「修理機能」を邪魔し、うつ症状や記憶力の低下を引き起こします(参考5,6,7)

 

2. ストレス反応の暴走

 

脳卒中という大きなストレスにより、体内のホルモンバランス(HPA軸:視床下部-下垂体-副腎系)が崩れます。ストレスホルモンである「コルチゾール」が過剰に出続けると、記憶を司る「海馬」という部分がダメージを受けてしまいます(参考8)。

 

 

3.神経伝達物質の不足

 

意欲や気分に関わるセロトニン、ドパミンといった物質の通り道が脳卒中によって遮断され、回路がうまく働かなくなります (参考9)。

 

続きは、後日の話題にしてみたいと思います。

 

 

素敵な1週間をお過ごしくださいキラキラ

 

それでは、またバイバイ

--------------------------------------------------------------------

< ブログ後記   >2月3日

 

今日は「節分」ですね。明日からは「立春(りっしゅん)」となり、暦の上では、「春」になるわけですね。

 

今回は「脳卒中後うつ病」について、お話をさせていただきました。

「脳卒中」とは、脳梗塞(約7割)、脳出血、くも膜下出血などの脳血管障害ということになりますね。

 

実は、「脳卒中後うつ病」と「アルツハイマー病」の鑑別(かんべつ)は難しいとされています。

 

トランプ氏の姪メアリー・トランプ氏は、叔父がアルツハイマー病を患っている可能性があると以前から述べていましたので、ある意味では、トランプ氏にとって、優しい診断(?)であったのかもしれません。

 

彼女は、ユーチューブチャンネルで、トランプ氏が

1999年に93歳で亡くなった祖父 フレッド・トランプ氏に様子が似てきていることから、退行性の病気であるアルツハイマー病の可能性があると述べていたのです。

 

では、「脳卒中後うつ病(PSD)」と「アルツハイマー病(AD)」には、どのような特徴があるのでしょうか?参考文献が多いので、後記の方では省略させていただきたいと思います。

 

「脳卒中後うつ病(PSD)」と「アルツハイマー病(AD)」を比較しながら、お話をしてみたいと思います。

 

「脳卒中」は成人における主要な脳障害の原因であり、生存者の30〜40%が「脳卒中後うつ病(PSD)」を発症するとされています。

 

一方、「アルツハイマー病(AD)」は、認知症の60〜70%を占める進行性疾患である[とされています。

 

両者は症状が、とても似ているわけですが、「脳卒中後うつ病(PSD)」の認知障害は可逆的である可能性が高く、「アルツハイマー病(AD)」は、進行性で不可逆的であるため、正確な鑑別が予後を左右するとされています。

 

つまり、もしも「脳卒中後うつ病(PSD)」によるものであれば、認知症の症状が、治療により改善する可能性がある・・・ということになりますね。

 

鑑別は難しいとされるわけですが・・・脳神経内科などの専門家から見ると、それぞれの疾患の認知障害パターンには明確な差異があるとされています。

まず、機能・行動への影響をみてみますと、以下のようになります。

1)作業の正確性

 

「脳卒中後うつ病(PSD)」では、「処理速度や注意機能の低下が認められるが、治療により、改善が可能であるとされています。

 

「アルツハイマー病(AD)は、「 IADL(買い物、料理など)」は認知機能低下の初期段階で低下しやすい傾向があり、ADL(食事、排泄など)は、不可逆的に悪化していくとされています。

 2.BPSD(行動・心理症状 )

 

「脳卒中後うつ病(PSD)」では「激越(げきえつ)症状」や「易刺激性」が目立つとされています。

 

「激越(げきえつ)症状」とは、強い焦燥感、不安、イライラを伴い、じっとしていられず動き回る(そわそわする、徘徊、手をもみ合わせる等)行動が特徴の精神状態を指します。

 

うつ病特有の「動きが鈍くなる」状態とは異なり、一見活動的に見えるが、内心は「パニック」に近い状態であるとされています 。

 

一方、「アルツハイマー病(AD)」は、「アパシー」から始まり、進行に伴い徘徊や夕暮れ症候群、社会的孤立が生じるとされています。

 

「アパシー(Apathy)」とは、感情の欠如を語源とする、無気力・無関心・自発性の低下した状態を指します。周囲の事象だけでなく、自分の身の回りや日常的な活動への意欲が著しく減少するとされています。

 

認知症や脳血管障害、「パーキンソン病の周辺症状(BPSD)」として多く見られ、本人に自覚が乏しい、または悲哀感を伴わない点が「うつ」とは異なる特徴であるとされています。

 

若年発症例では、いずれも職業的・経済的損失が甚大となると解説されています。

 

では、治療については、どうなのでしょうか?

 

「脳卒中後うつ病(PSD)」では、の抗うつ剤「SSRI」などの薬剤投与が有効であり、「感情」のみならず、「認知機能」や「ADL」の改善させることが示されています。

 

ADL(Activities of Daily Living)とは、日常の生活動作を指しますね。

 

「アルツハイマー病(AD)」については、「ChE(コリンエステラーぜ)阻害薬」や「NMDA受容体拮抗薬」による対症療法に加え[、「レカネマブ,ドマネマブ」等の抗抗アミロイドβ(ベータ)抗体薬により進行を抑制する新しい段階に治療も進みつつあるようです。

 

いずれにしても、「認知症」を早期に見つけ出すことが重要であると

考えますので、JTKクリニックでは、通常の「長谷川式認知症スケール」や AIによる「認知症判断のためのプログラム」を試験的に運用しながら、早期の「認知症」をいち早く見つけ出し、専門医に紹介していく体制を始めています。

 

なかなか、難しい分野の医療ということになりますね。

 

少なくとも「脳卒中後うつ病(PSD)」を見つけ出し、専門医による抗うつ剤「SSRI」などの投与を行い、症状が改善できれば嬉しいと、

今は、思っています。

 

また、後記の方は、参考文献が多数のため、割愛させていただきました。

 

今回も最後までお付き合いくださり

誠にありがとうございましたお願い

 

 

参考)

1)Lancet Neuol. 2021 Oct;20(10):795-820. 

Global, regional, and national burden of stroke and its risk factors, 1990-2019: a systematic analysis for the Global Burden of Disease Study 2019 

GBD 2019 Stroke Collaborators

 

2)Stroke. 2017 Feb;48(2):e30-e43. 

Poststroke Depression: A Scientific Statement for Healthcare Professionals From the American Heart Association/American Stroke Association

Amytis Towfghiら

 

3)J Neuropsychiatry Cjin Neurosci.. 2024 Winter;36(1):22-35 Poststroke Depression: An Update

Robert G Robinsonら

 

4)Neurobiol Agin. 1997 Jul-Aug;18(4 Suppl):S27-32.

The neuropathological diagnosis of Alzheimer's disease: clinical-pathological studies 

BT Hyman

 

5)Aging Dis. 2024 Feb 28;16(1):394-407. 

Neuroinflammation and Post-Stroke Depression: Focus on the Microglia and Astrocytes 

Weizhuo Luら

 

6)Mol Neurobiol. 2024 Jan;61(1):132-147. 

Investigating the Potential Mechanisms and Therapeutic Targets of Inflammatory Cytokines in Post-stroke Depression 

Yutong Zhangら

 

7)Aging Dis. 2024 Feb 9;16(1):209-238. 

Inflammatory Pathogenesis of Post-stroke Depression

Xinyu fengら

 

8)Nat Rev Immunol. 2016 Jan;16(1):22-34. 

The role of inflammation in depression: from evolutionary imperative to modern treatment target  

Andrew H Millerら

 

9)Mol Psychiatry. 2006 Nov;11(11):984-91. 

The etiology of poststroke depression: a review of the literature and a new hypothesis involving inflammatory cytokines  

GSpallettaら

 

(梅の花とメジロ)

 =================================

 

理事長・ 院長  

小笠原  均  (Hitoshi Ogasawara)   

医学博士, 内科医

(総合内科、リウマチ専門医)

(新潟大医学部卒)

(業績)

 

 

image

 

 

 

 Instagram

 

                           < マイJazz プレイリスト>

 

 

               <今週、なんとなく聞いてみたい曲> 

 

 

=====================

<JTKクリニックからのお知らせ>

 

◯Zoomを用いた遠隔医療相談を始めました(内科関連疾患)

 

◯外来診療は予約制をとり、待ち時間が生じないようにしています。

 

◯ ダイエット漢方製剤は、オンライン診療でも可能です。

◯ 線維筋痛症に対するノイロトロピン等の点滴療法、トリガーポイント注射を行なっております。(セカンドオピニオン診療も可)

 

自分の皮下脂肪から組織を採取し、「間葉系幹細胞」を培養して、自分自身の組織内に投与する「幹細胞治療」を開始しました。

 

<JTKクリニック 所在地>

〒102-0083

東京都千代田区麹町4-1-5麴町志村ビル2階

電話 03-6261-6386

Mail:info@jtkclinic.com

 =================================