こんにちは、内科医 ひとちゃんですニコニコ

 

月日が経つ(たつ)には早いもので、9月となっていますね。

 

本格的な秋の季節の到来(とうらい)までには、まだ、時間がかかるのかもしれませんが・・・気温は過ごしやすくなっていくのかもしれませんね。

 

皆さまの体調は、いかがでしょうか?

 

 

<AIで作成>

 

季節の変化とともに、「時間」もゆっくりと過ぎていくわけですね。

 

アメリカのプロボクサー 「モハメド・アリ」は次のような言葉を残しています。

 

A man who views the world the same at fifty as he did at twenty has wasted thirty years of his life.

 

50歳の時に20歳の時と同じ世界を見ている人は、人生の30年を無駄にしてきた。

 

なんとも、耳が痛いという方もいらっしゃるのではないでしょうか。

 

といっても、過ぎ去った日々を後悔(こうかい)する・・・という

お話ではありません。

 

 

今回は「炎症老化(Inflammaging)」について、お話をしてみたいと思います。

 

言うまでもなく、ヒトの「老化」は、時間の経過とともに生物学的機能が徐々に低下していく避けら(さけら)れないプロセスですよね。

 

しかし、「老化」のプロセスの進行速度は、ヒトそれぞれによって大きく異なっていますよね。

 

同じ50歳であっても、あるヒトは実際の年齢より若く見えたり、その逆に実際の年齢よりも高齢に見えたりします。

見かけだけではなく、生物学的機能が保たれている・・・ということもあります。

 

なぜ、このような「老化」のプロセスの進行スピードに個人差が生じてくるのか?

 

というのが、今回のテーマとなります。

 

実は・・・最近、注目を集めているのがあります。

 

それは、「炎症老化(Inflammaging)」という概念(がいねん)となります。

 

この考え方は、次のようなものになります。

 

「炎症老化」は、加齢に伴い慢性的な軽度の炎症状態が持続し、それが「老化プロセス」を加速させるという考え方ですね。

 

では、「炎症老化」とは、どのようなものなのでしょうか?

 

「炎症」の本質は、ヒトの体を守るための生体防御反応です。

 

例えば・・・病原体や損傷を受けた組織に対して、免疫細胞が活性化し、炎症性サイトカインなどのシグナル分子を放出して、修復プロセスを開始します。

 

しかし、加齢に伴い、この炎症反応の制御がうまくいかなくなり、慢性的な軽度の炎症状態が持続するようになります。

 

これが「炎症老化」ということになります。

 

「炎症老化」は、目に見えるような症状を引き起こすことはほとんどありません。

 

しかし、静かに体内でくすぶり続け、様々な組織や臓器にダメージを与え、老化を加速させます。具体的には、以下のメカニズムが考えられています。

 

1)細胞老化の誘導

 

炎症性サイトカインは、細胞のDNAに損傷を与え、細胞老化を誘導します。細胞老化とは、細胞が不可逆的に増殖を停止した状態で、炎症性サイトカインや細胞外マトリックス分解酵素などを分泌し、周囲の組織に悪影響を及ぼします。

 

2)テロメアの短縮

 

炎症は、染色体の末端にあるテロメアの短縮を加速させます。テロメアは細胞分裂のたびに短くなり、一定の長さ以下になると細胞は分裂を停止します。テロメアの短縮は、細胞老化と密接に関連しており、老化の重要な指標とされています。

 

3)ミトコンドリア機能の低下

 

炎症は、細胞内のエネルギー産生を担うミトコンドリアの機能を低下させます。ミトコンドリア機能の低下は、活性酸素種の産生増加やエネルギー不足を引き起こし、細胞の老化を促進します。

 

4)タンパク質の異常蓄積

 

炎症は、タンパク質の折り畳み異常や分解障害を引き起こし、異常なタンパク質の蓄積を促進します。異常タンパク質の蓄積は、細胞機能の低下や細胞死を引き起こし、老化関連疾患の発症リスクを高めます。

 

 

そして、「炎症老化」は、様々な加齢関連疾患の発症リスクを高めることが知られています。具体的には、以下のような疾患が挙げられます。

 

 

◯心血管疾患

 

動脈硬化は、血管壁に炎症が起こり、プラークが蓄積することで進行します。炎症老化は、動脈硬化のリスクを高め、心筋梗塞や脳卒中などの心血管疾患の発症を促進します。

 

◯神経変性疾患

 

アルツハイマー病やパーキンソン病などの神経変性疾患では、脳内で慢性的な炎症が起こっていることが知られています。炎症老化は、神経細胞の損傷や死を促進し、神経変性疾患の発症や進行に関与していると考えられています。

 

◯代謝性疾患

 

2型糖尿病やメタボリックシンドロームなどの代謝性疾患では、慢性的な炎症が重要な役割を果たしています。炎症老化は、インスリン抵抗性や脂肪蓄積を促進し、代謝性疾患の発症リスクを高めます。

 

◯がん

 

慢性的な炎症は、がん細胞の増殖や転移を促進することが知られています。炎症老化は、がんの発生や進行に関与している可能性があります。

 

 

上記に示したように・・・「加齢」に伴う疾患の多くが、「炎症老化」の進行に伴って、発症している可能性は大いに(おおいに)ありますよね。

 

実際に「炎症老化」を抑制することは、健康寿命を延ばし、加齢関連疾患の発症リスクを低減するために重要であると考えられているのですね。

 

そのためには、どのようなアプローチの仕方があるのでしょうか?

続きは、後日の話題にしたいと思います。

 

 

素敵な1週間をお過ごしくださいキラキラ

 

それでは、またバイバイ

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<ブログ後記>9月3日

 

以前から比べると、夜の空気は随分(ずいぶん)と涼しく(すずしく)なったと思いますね。

 

年齢を重ねると誰でも、関節が痛んだり、傷の治りが遅くなったり、がんや心臓病、認知症、関節炎などのリスクが高まったしますよね。

 

多くの研究から、こうした変化は、加齢とともに体内で「炎症」に関わる分子が増えるせいで起きていることが明らかになってきています。

 

「加齢」と「炎症」、そして、さまざまな疾患との関連はよく知られており、「炎症老化(inflammaging)」と呼ばれています。

 

「炎症老化」というと聞き慣れない(ききなれない)言葉と思われる方も多いと思いますが、加齢に伴い、慢性的な炎症状態が続くことを言います。

簡単に言いますと・・・「炎症老化」の中心的なメカニズムは、慢性的な炎症反応が組織のダメージを引き起こすことになります。


恒例になると「炎症」が存在するようになる・・・というと驚かれる方も多いと思いますが、この炎症反応には、なんらかの病原体による感染症などではなく

サイトカインや化学伝達物質などの「炎症メディエーター」と呼ばれる物質が関与していると考えられています。

 

では、なぜ、「炎症老化」という不思議な炎症がおこるのでしょうか?
 

この「炎症老化」の根本的な原因としては、以下のような複数の要因が重なっている(かさなっている)と考えられています。

1.遺伝子の変異と損傷
DNAの損傷は細胞の機能不全を引き起こし、がんや他の疾患のリスクを増加させることがあります。

2.テロメアの短縮
細胞が分裂するたびに、染色体の端に位置するテロメアは少しずつ短くなります。

3.代謝の変化
年齢と共に代謝率が変化し、エネルギー効率が低下し、これにより体内の細胞ダメージが蓄積されます。

4.幹細胞の機能低下
幹細胞は組織の修復と再生に不可欠ですが、加齢とともにその能力が低下します。

ここまでお話をすると、炎症性サイトカインを産生する「老化細胞」と「炎症老化」を混同してしまうかもしれませんね。
 

少し、整理をしておきたいと思います。

「老化細胞」の炎症と「炎症老化」は、老化研究の分野で注目される2つの概念ですが、これらは、まったく異なる概念となります。
それぞれの違いについて、説明してみたいと思います。

○老化細胞の炎症(Senescence-Associated Secretory Phenotype, SASP)

老化細胞の炎症は、「Senescence-Associated Secretory Phenotype」(SASP)とも呼ばれ、細胞が老化(セネッセンス)に入る際に特定の分泌因子を放出する現象です。

 

「老化細胞」は、増殖を停止し、正常な機能を失いますが、その一方でサイトカイン、ケモカイン、成長因子などのプロ炎症分子を活発に分泌します。

 

これらの分泌物は、近隣の細胞に影響を与えることができ、時に周囲の正常な細胞を「老化細胞」化させてしまうことさえあります。

 

この現象は、ちょうど、燃え広がる火事のように慢性的な炎症を促進する要因ともなり得ます。

○炎症老化(Inflammaging)


一方、「炎症老化」は加齢全体にわたる広範な概念で、加齢に伴う慢性的な「低レベルの炎症」を指します。この状態は、全身のさまざまな組織や器官にわたって発生し、加齢に伴う様々な病態の発展に寄与するとされています。

 

どうでしょうか?わかりにくいですよね。
 

両者の関連性を整理しますと、次のようなことが言えます。
 

「炎症老化」は、それ自体が先にあげた多因子の結果であり、より広範な生理的プロセスの一部であり、「炎症老化」は体全体に影響を及ぼす可能性があるわけです。

 

これに対し、「老化細胞」の炎症局所的な影響が主であり、特定の組織や器官に限定されることが多いということになります。

では、この「炎症老化」を改善する方法は、あるのでしょうか?

詳細は、またの機会にしたいと思いますが・・・少し、ご紹介してみたいと思います。

1) NAD+
 

「NAD+(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)」は、「炎症老化」を改善する可能性があると考えられています。

 

NAD+は細胞内で重要な役割を果たす補酵素で、ATPのエネルギー産生やサーチュイン遺伝子の活性化によるDNA修復なども働きを持ちます。

 

実は、加齢とともに低下していく「NAD+」の減少は「炎症老化」と関連があるとされています
 

「炎症老化」に「NAD+」の投与が有効とされるのは、次のような理由にあると考えられています。

 

「 NAD+」は細胞の主要なエネルギー源であるATPの生成に必要な補酵素であり、その供給が増えると細胞のエネルギー効率が向上します。これにより、細胞が健康を維持し、炎症反応を適切に管理する能力が向上する可能性があります。

また、「 NAD+」はサーチュイン蛋白質(SIRTs)の重要な調節因子です。サーチュイン蛋白質は、長寿と関連している遺伝子の発現を調節することにより、細胞の老化を遅らせ、「炎症」を抑制する役割を持っています。

 

そして、「NAD+」はDNA損傷の修復をサポートし、細胞の老化を遅らせることが示されています。これにより、全体的な炎症レベルが減少する可能性があると考えられているのですね。

NMNなどのサプリメントはNAD+のレベルを上げることが示されており、炎症反応の抑制や加齢関連の機能低下の緩和に寄与する可能性があると考えられているのは、改めて、言うまでもありませんね。

現在のところ、NAD+の炎症老化に対する影響については有望な結果が得られていますが、さらなる臨床研究が必要です。また、NAD+サプリメントの使用にあたっては、専門家の指導のもとで行うことが推奨されます。

<参考>

1.Aging Cell. 2024 Jan;23(1):e13920. 

NAD metabolism:Role in senescence rregulation and aging.

Chini CCSら

 

2.Immunometabolism. 2020;2(3):e200026.

Macrophage Immunometabolism and Inflammaging: Roles of Mitochondrial Dysfunction, Cellular Senescence, CD38, and NAD+

Johnation R Yarbroら  など


さらに・・・2)「幹細胞培養上清液」は、「炎症老化」の改善に対して有望な効果を示す可能性がありますし、


3)「幹細胞由来のエクソソーム」は、「炎症老化」を改善する可能性があることからも報告されているのですが、これらのお話は、またの機会にしたいと思います。


アメリカのプロボクサー 「モハメド・アリ」の言葉 50歳の時に20歳の時と同じ世界を見ている人は、人生の30年を無駄(むだ)にしてきたと言っていますが・・・これまでの「医学の進歩」は

 

「長寿を目指す医療」の一点だけをみますと・・・30年以上の年月を無駄にしてきたのかもしれません。

 

しかしながら、物事(ものごと)というものは、すべて、明日からどう考え、どう行動していくかが重要であるのだと思います。

 

「長寿を目指す医療」に関しては、今後の5年で驚くような進歩をしていく可能性があるような気がします。

 

最初から諦めて(あきらめて)、昨日までと同じように過ごすか、

 

あるいは、難攻不落(なんこうふらく)と思われる山の頂上まで、いっきに駆け上がる(かけあがる)か?

 

「今後の5年を無駄にする」かもしれないのは・・・どちらなのでしょうか?・・・なんて、思います。

 

多分ですが・・・多くの「長寿」研究に携わる(たずさわる)研究者たちも迷いながらも、

山の頂上まで、いっきに駆け上がる(かけあがる)方を選ぶのだと思います。

 

例え、5年以上の月日を「長寿研究」にあて、同じ失敗を繰り返したとしても、そこの過程(かてい)に経験した「プロセス」こそが重要であることを知っているからですね。

 

例え、途中で息絶えて、屍(しかばね)になっても・・・かもしれませんね。

 

 

今回も最後までお付き合いいただきまして

ありがとうございましたお願い

 

 

          (以前のphoto. 筆者撮影)

 

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小笠原  均  (Hitoshi Ogasawara)   

医学博士, 内科医

(総合内科、リウマチ専門医)

(新潟大医学部卒)

 

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