こんにちは、内科医 ひとちゃんですニコニコ

 

新年明けましておめでとうございます。

 

旧年中は当ブログをお読みいただき、誠にありがとうございました。皆様からのコメントや応援のお言葉が、毎週の更新の大きな励みとなっております。

 

本年も読者の皆様にとって有益で、楽しんでいただける記事をお届けできるよう努めてまいります。

本年も何卒宜しくお願い申し上げます。

 

皆様にとって素晴らしい一年となりますよう、心よりお祈り申し上げます。

 

皆さまの体調は、いかがでしょうか?

 

 

(AIで画像を作成)

 

今回は、「内臓脂肪型肥満」や「動脈硬化」の改善に有効なのではないかと考えられている新規の治療について、お話をしてみたいと思います。

 

まずは、「iPS細胞由来エクソソーム」です。

 

2006年、山中伸弥博士の率いる京都都大学の研究グループによってマウスの「線維芽細胞」に4つの遺伝子を導入することで作成された「万能細胞」ですね。

2012年のノーベル生理学・医学賞を山中伸弥先生は、受賞されていますね。

現在では、ヒトでも「iPS細胞」は、作成され、さまざまな分野で臨床研究が進められているわけです。

この「iPS細胞」からも「エクソソーム」が放出されています。

 

この「iPS細胞由来のエクソソーム」の特徴として、間葉系幹細胞(MSC)由来のエクソソームと比較して細胞増殖能や抗老化能が高い傾向にあることが報告されています(参考1)。

 

動脈硬化に関連することとしては・・・血管内皮細胞」の老化を逆転させ、虚血部位の「血管新生」を促進する能力が優れていることが示唆されています。

 

さらに肺高血圧モデル細胞で、細胞老化関連表現型(SASP)の抑制したという報告もあります(参考2)。

 

(AIを用いて画像を作成)

 

次に『間葉系幹細胞(MSC)由来エクソソーム』です。

 

についても、「動脈硬化」に関連する多くのデータが示されています。
 

「間葉系幹細胞」や「間葉系幹細胞由来のエクソソーム」は、非常に強力な「抗炎症作用」と「組織修復能」を持っていることが分かっています。

「間葉系幹細胞」や「間葉系幹細胞由来のエクソソーム」の大きな特徴は、次のようになります。

 

内臓脂肪に浸潤している「M1型マクロファージ(炎症促進性)」を「M2型マクロファージ(抗炎症性)」へ転換させることができます(参考3)。

 

これにより、内臓脂肪から放出されるTNF-αやIL-6などの「炎症性サイトカイン」の産生が減少し、全身のインスリン抵抗性と動脈硬化の進展が抑制されることが報告されています。

 

さらに「間葉系幹細胞由来のエクソソーム」は、miR-148a(マイクロRNA-148a)を肝臓に届けることによって肝線維症(肝硬変)から保護することも分かっています。

 

miR-148aは、肝内マクロファージの機能を調節し、肝線維症の潜在的な治療効果を示すのだそうです。

 

また、「間葉系幹細胞由来のエクソソーム」は、miR‑let‑7/IGF2BP1/PTEN 経路を介して、アテロームプラーク内のマクロファージの浸潤と生存を減少させる可能性があり、プラーク炎症負荷低下につながる可能性が示されています(参考4)。

 

つまり、プラークの安定性を保つと考えてよいかもしれませんね、

 

ここまでをみると、「動脈硬化」の根本的な問題は、「血管内皮細胞」の障害であり、その一部は「血管内皮細胞」が老化細胞に変化することです。

としますと・・・「iPS細胞由来のエクソソーム」は、「血管内皮細胞」の老化スピードを低下させ、虚血部位の「血管新生」を促進する能力が優れていることが示唆されています。

 

さらに炎症性サイトカインを放出させる「SASP」を改善させることは、「動脈硬化」の進行を緩やかにする可能性があります。

 

一方で、「内臓脂肪型肥満」の存在は、「動脈硬化」を進行させるとされていますが、「間葉系幹細胞由来のエクソソーム」は、

内臓脂肪に浸潤している「M1型マクロファージ(炎症促進性)」を「M2型マクロファージ(抗炎症性)」へ転換させ、その結果として、

「炎症性サイトカイン」を減少させます。

 

このことは、その結果として「動脈硬化」の進展を抑制させる効果が期待できるわけですね。

「iPS細胞由来のエクソソーム」と「間葉系幹細胞由来のエクソソーム」の両者を見てみると、どちらも、研究論文が、少ないのが現状です。

しかしながら、現時点では作用機序は異なるものの、「動脈硬化」の進展に一定の効果が期待できる可能性があると言えるかもしれませんね。

 

次に「NAD+」や「NMN」、そして、「高濃度ビタミンC点滴」の「動脈硬化」に対する効果はあるのか?・・・と疑問が湧いてくるわけですが、これらについては、後日の話題にしたいと思います。

 

素敵な1週間をお過ごし下さいキラキラ

 

それでは、またバイバイ

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< ブログ後記>   1月6日
 

2026年が始まり、1週間程度になりますね。
正月には雪も降りました。

日本最古の歌集とされる「万葉集」には、正月の雪を「吉事が重なるしるし」として喜ぶ和歌があります。

その和歌は、大伴家持という歌人の和歌で

「新しき年の初めの初春の 今日降る雪の いやしけ吉事」

というものがあります。その意味は

「新年の今日、降りしきる雪のように、良いことがますます重なりますように」となりますね。


「正月一日」の宴で詠まれたことが示されていますが、正月の雪を表現しているといってもよいかと思います。

さて、本題に入りますと・・・「肥満」とくに「内臓脂肪型肥満」は、慢性炎症を介して「動脈硬化性心血管疾患」を惹起する

中心的病態であると言えます。

これに対して、通常の治療以外の「新規治療」の可能性、また、治療の補助となるものはないか・・・というのが、今回の話題ですね。

本文内では、「iPS細胞由来のエクソソーム」と「間葉系幹細胞由来のエクソソーム」について、お話をしたわけですが・・・その他にも「NMN(ニコチンアミドモノヌクレオチド)」と
「NAD+((ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)」、「高濃度ビタミンC点滴」などにその効果があるのではないかとされているわけですね。」

まず、「NMN」ですが、マウスでは、「NMN』の投与により、以下のことが報告されています。

 

それは、加齢に伴う内皮機能低下と大動脈硬化(スティフネス)がほぼ正常化し、血管内皮細胞に依存する血管拡張、NO依存性拡張、脈波伝播速度、弾性率が改善したという報告があります(文献5)

また、同様にマウスによる動物実験ですが、NMNは大動脈内皮炎症(ICAM‑1, vWF)を抑え、アンジオテンシンII誘発の内皮機能障害を防ぎ、NO依存性血管拡張を回復させたという報告もあります文献6)。

ヒトでは、大規模な臨床試験は行われていないこともあり、残念ながら、現時点で「動脈硬化」そのものを改善させたという報告はないようです。

しかしながら、「NAD⁺前駆体(主にニコチン酸)」は、ヒトで

LDL-C・TG低下、HDL上昇など「脂質プロファイル」を有意に改善し、「動脈硬化」のリスク低減につながる可能性が示されています(参考7) 。

NR(ニコチンアミド・リボシド)は、NMN(ニコチンアミド・モノヌクレオチド)と同様に体内で、「NAD+」に変換される前駆体ということになりますね。

これらのNAD+前駆体は、グルコース、及び、脂質代謝の改善、加齢に関連する疾患の予防や加齢に伴う慢性炎症の軽減などの潜在的ば可能性が高いと報告されています(参考8)。

さらにヒトデータは、まだ前臨床レベルではあるのですが、「NMN」や「NAD+」の投与により、

血管壁を構成する細胞のミトコンドリアの機能回復と抗酸化力をアップさせることが確認されており、今後、新しいデータが報告される可能性が高いと考えられます。

次に「高濃度ビタミンC 点滴療法」ですが、「動脈硬化」の予防にどのようなメリットをもたらすのでしょうか?


「高濃度ビタミンC点滴療法」は、経口摂取では到達できない血中濃度を達成できるという利点があります。

しかし、「動脈硬化」の「治療」としてのエビデンスレベルは、NAD+前駆体やエクソソーム療法と比較すると、相対的に弱いと考えられています。

「ビタミンC」は、内臓脂肪やそれによの病態そのものを根本的に変えるというよりは、急性的な酸化ストレスの軽減や既存の治療法への補助として位置づけるのが妥当であると考えられているようです(参考9)。

しかし、大規模臨床試験において、「ビタミンC」単独投与が心血管イベントを有意に減少させたという確固たるエビデンスは得られていないといえます。

実際に多くの「高濃度ビタミンC点滴療法」の論文に目を通してみても、主にがん補助療法として研究されており、抗腫瘍効果や抗酸化・抗炎症などが議論されています(参考10)

確認されているのは・・化学療法の効果を高め。その副作用を軽減することになります。


しかしながら、「動脈硬化」の進行抑制や改善するという報告は、やはり、見当たりませんでした。

上記に述べたことから、「NMN」や「NAD+点滴」と併用する形で、「間葉系幹細胞(MSC)由来エクソソーム」の投与か、或いは、「iPS細胞由来エクソソーム」のどちらか、或いは、「間葉系幹細胞(MSC)由来エクソソーム」の投与」と「iPS細胞由来エクソソーム」の併用療法が、
内臓脂肪の機能正常化と血管壁の生物学的若返りを同時に達成するための極めて合理的な戦略であるとする報告も幾つかありました。

いずれにしても、単独ではなく、これらの中から併用していくことが有用であると考えて良いのかもしれなせんね。

あくまでも・・・現時点の報告からは・・・ということになるわけですがね。

今回も最後までお付き合いくださり
誠にありがとうございましたお願い
 

参考)

1) J Transel Med. 2015 Feb 1:13:49. 

Exosomes released from human induced pluripotent stem cells-derived MSCs facilitate cutaneous wound healing by promoting collagen synthesis and angiogenesis 

Jieyuan Zhangら

 

2)Circulation、Vol 148 Number Suppl 1 

Abstract 14923: Induced Pluripotent Stem Cell Derived Endothelial Progenitor Cells Attenuate Pulmonary Arterial Hypertension

Wei -Chun Huangら

 

3) Stem Cell Res Ther 2025 Feb 21;16(1):74.

Huc-MSCs-derived exosomes alleviate non-alcoholic steatohepatitis by regulating macrophages polarization through miR-24-3p/STING axis

Wel Jiangら

 

4)Stem Cell Research & Therapy.2025.16

Mesenchymal stem cells derived exosomes: a new era in cardiac regeneration

Hossein Rayat Pishehら

 

5)Aging Cell. 2016 Jun;15(3):522-30. 
Nicotinamide mononucleotide supplementation reverses vascular dysfunction and oxidative stress with aging in mice.
Natalie E de Picciottoら

 

6)Biochem Pharmacol . 2020 Aug:178:114019.
Reversal of endothelial dysfunction by nicotinamide mononucleotide via extracellular conversion to nicotinamide riboside
Łukasz Mateuszukら

7)Nutr Metab (Lond) . 2022 Mar 18;19(1):20.
Effects of NAD+ precursor supplementation on glucose and lipid metabolism in humans: a meta-analysis
Ou Zhongら

8)Endocr Rev . 2023 Nov 9;44(6):1047-1073.
 Nicotinamide Adenine Dinucleotide in Aging Biology: Potential Applications and Many Unknowns
Shalender Bhasinら

9)J Am Coll Nutr. 2003 Feb;22(1):18-35.
 Vitamin C as an antioxidant: evaluation of its role in disease prevention
Sebastian J Padayattyら

10)J Exp Clin Cancer Res. 2021 Oct 30;40(1):343.
High-dose intravenous vitamin C, a promising multi-targeting agent in the treatment of cancer
Franziska Böttgerら
 

(東京駅駅舎)

 (筆者撮影)

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理事長・ 院長  

小笠原  均  (Hitoshi Ogasawara)   

医学博士, 内科医

(総合内科、リウマチ専門医)

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こんにちは、内科医 ひとちゃんですニコニコ

 

2025年も残りが、数日となっていますね。

何かしら、寂しい気もする(?)わけですが・・・

サラサラと時間は流れていくように感じます。

 

以前にも「ナルニア国物語」の著者であることを紹介させていただきました英国の作家・学者であった「C.S.ルイス」は次のような言葉を

残しています。

 

 "There are far, far better things ahead than any we leave behind."

 

「私たちが置き去りにするどんなものよりも、はるかに、はるかに素晴らしいものが前方に待ち受けている。」

 

特に困難な時期や変化の時期に希望と前向きな視点を促すためによく紹介される言葉ですが、」ここは去る時間よりも、これからを楽しもうという気持ちになりますね。

 

皆さまの体調は、いかがでしょうか?

 

(AIで画像を作成)

 

今回は、「皮下脂肪型肥満」でも「動脈硬化」を起こしたり、「2型糖尿病」になるなど、臓器の障害を起こす可能性がある・・・という

お話をしてみたいと思います。

 

「内臓脂肪型肥満」なら、「動脈硬化」を起こしたり、「2型糖尿病」になるのは理解できるけど・・・「皮下脂肪型肥満」は大丈夫なのでは?

 

そう思われている方も、多くいらっしゃるかもしれませんね。

 

そこでで、今回は「皮下脂肪型肥満」にもリスクがある・・・という

お話をしてみたいと思います。

 

「肥満「は現代社会における最も深刻な公衆衛生上の課題の一つであり、世界人口の約3分の1が罹患しているとされています(参考1)。

「肥満」と心血管疾患(CVD)との間には明確な関連性が確立されているわけですが、近年の研究により、心血管リスクは「総体脂肪量」よりも「脂肪の分布様式」により強く規定(きてい)されることが明らかになってきています(参考2)。


とくに、腹腔内に蓄積する「内臓脂肪組織(Visceral Adipose Tissue: VAT)」は、皮下に蓄積する「皮下脂肪組織(Subcutaneous Adipose Tissue: SAT)」と比較して、動脈硬化性疾患の発症リスクを著しく増大させることが疫学的研究により示されています。

もちろん、」過去30年間にわたる疫学研究の蓄積により、CTやMRIで正確に測定された「内臓脂肪」組織が、心血管代謝疾患の罹患率および死亡率の独立した危険因子であることが、すでに確立されていますよね(参考3)。

 2024年の体系的レビュー(27研究)をみてみると・・・

 

内臓脂肪組織(VAT)/皮下脂肪組織(SAT)比が高いほど.高血圧、動脈硬化、冠動脈疾患、脳血管疾患、心不全などCVD発症リスクが

一貫して上昇することが示されているのですが、皮下脂肪組織(SAT)は、しばしば中立〜保護的とされています(参考4)。

 

皮下脂肪組織(SAT)は、中立〜保護的とされるなら、多くても、

大丈夫なのではないか?・・・と考えてしまいますよね。

 

(AIを用いて画像を作成)

 

ところで、「国際動脈硬化学会」と「国際心臓代謝リスク内臓肥満ワーキンググループ」は、2019年のポジションステートメントにおいて、

 

「内臓脂肪」および、「異所性脂肪沈着」が、2型糖尿病、動脈硬化、心血管疾患の新興リスク因子であることを明確に提言(ていげん)をしています(参考5)。

この「異所性脂肪沈着」こそが、多すぎる「皮下脂肪」が起こすものなのですね。いったい、どのようなことなのでしょうか?

 

実は、「皮下脂肪組織」は、体内最大の脂肪貯蔵庫であり、余剰エネルギーがあるときに「トリグリセリド(TG)として安全に貯蔵する「安全なリザーバー/metabolic sink」として機能すると考えられています(参考6)。
 

医学的に言いますと・・・健常な状態では、「皮下脂肪」の脂肪細胞は、小型であり。インスリン感受性が高いとされており、インスリンの刺激によりグルコース取り込み・脂肪酸取り込み・de novo脂肪酸合成が亢進するということになりますね(参考6)。

つまり、「皮下脂肪」は、過剰エネルギー摂取時には、


    - インスリン依存的にグルコースと遊離脂肪酸を取り込み
    - トリグリセリドとして蓄積し  


その後、必要時にリポリシスにより放出する・・・という可逆的(かぎゃくてき)な貯蔵システムとして考えられているわけです。

また、「 皮下脂肪」は、体内で最大、かつ、最も害が少ない脂肪貯蔵部位であり、余剰エネルギーをトリグリセリドとして蓄えることで、肝臓・筋肉・心臓などへの脂肪流入を防いでいると考えられています(参考7)。
 

一方で、「皮下脂肪」の蓄積能力に限界がありまして、余った脂質が内臓や臓器に回り、糖尿病・心血管病リスクが高まると考えられています。

「皮下脂肪」(とくに腹部皮下脂肪)は本来、余剰エネルギーを安全に貯蔵する"受け皿であるわけですが・・・

 

「皮下脂肪」の拡張能に上限(じょうげん)があるとされています(個人差はあります)。

この容量を超える、あるいは、脂肪細胞の新生(アディポジェネシス)が不十分であると・・・

 

   ⚫︎脂肪細胞が、肥大化して、「炎症」や「インスリン抵抗性」が進行する
   

 ⚫︎「脂肪」をこれ以上ためられず、「脂肪スピルオーバー」として。

内臓脂肪や肝臓・筋肉・膵臓などの「異所性脂肪」が増加する
 

ということになるわけです。

 

皮下脂肪は「増加さえしなければよい」のではなく、十分な容量と機能を保っているかが重要なのですね。

 

一方で、「皮下脂肪」は本来、余分な脂質を安全に貯める「バッファ」で、ここに貯められないと肝臓・筋肉・内臓脂肪などへの「異所性脂肪」が増え、インスリン抵抗性や脂質異常を招くとされていますので・・・

 

極端に「皮下脂肪」がなく、脂肪の貯蔵能力が低い人は、

(肝硬変などの方に多いとされます)BMIがそれほど高くなくても、内臓脂肪・肝脂肪が増え、糖尿病や動脈硬化リスクが高くなる可能性があり、死亡率が上昇すると考えられています。

 

「高皮下脂肪」+「低内臓脂肪」のパターンは、比較的良好な代謝プロファイルとされていますが、「高皮下脂肪」+「高内臓脂肪」

のパターンであっても、「低皮下脂肪」+「高内臓脂肪」よりは、

はるかにマシであるとも考えられるなどと考えられているのだそうです。

 

つまり、「皮下脂肪」は「ゼロが良い」わけではなく、十分な量で、内臓脂肪への溢れ(あふれ)が出ない程度が、代謝的に望ましいと考えられます。

 

先にご紹介しましたが、2024年の世界の論文やレビューが、

内臓脂肪組織(VAT)/皮下脂肪組織(SAT)が高いほど.高血圧、動脈硬化、冠動脈疾患、脳血管疾患、心不全などCVD発症リスクが

一貫して上昇することを示したという話題がありましたが・・・

 

今後の流れは、何がなんでもBMIの値を低下させるために体重を落とすというよりは、内臓脂肪組織(VAT)/皮下脂肪組織(SAT)の比率

を見ながら、どちらの量を減らすのか?・・・が重要になってくるのかもしれませんね。

 

素敵な年末をお過ごしくださいキラキラ

 

それでは、またバイバイ

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<ブログ後記>12月30日

2025年も残り1日となりましたね。街の風景は急ピッチで

「正月モード」に変わりつつあるように見えます。

さて、今回はちょっと変わった指標 「内臓脂肪組織(VAT)/皮下脂肪組織(SAT)比」について、お話をさせていただきました。

なぜ、この指標の値が、重要であると考えられているのでしょうか?

本文内でもお話をさせていただきましたが、内臓脂肪(VAT)が多いほど、インスリン抵抗性・脂質異常・肝障害などのリスクが高いことは、多数の研究で一致しています(参考8,9)


それに対して、通常の場合は、「皮下脂肪(SAT)」は、「内臓脂肪(VAT)」ほどは、健康に影響を及ぼさないとも報告されています。

「内臓脂肪」がどれだけ減ったか、あるいは「内臓脂肪組織(VAT)/皮下脂肪組織(SAT)比 (V/S比)」がどれだけ下がったのか・・・ということが、血糖・脂質の改善と強く結びつくことが報告されているわけです(参考10)。

では、実際に「内臓脂肪組織(VAT)/皮下脂肪組織(SAT)比」を計測しながら、体重の減量を行っていく必要があるのでしょうか?

 

腹部のMRI検査を施行することにより、内臓脂肪組織と皮下脂肪組織を見分けることは可能です。

しかしながら、実際に体重の減量を行う臨床の現場などでは、必ずしも「内臓脂肪組織(VAT)/皮下脂肪組織(SAT)比」を精密測定する必要はなく、「BMI+ウエスト周囲径」でかなりの情報が得られると
報告されています。

ところで、本文内でお話をしたような「皮下脂肪」だけが急速に減少して、「内臓脂肪」だけが変わらずにそのまま残るということは、

実際に起こるのでしょうか?

つまり、ダイエットなどの方法の違いで、身体の「脂肪減少」のパターンの減少の違いはあるのか?・・・という疑問よいうになりますね。

その答えは・・・「YES」ということになります。


いったい、どのようなことでしょうか?
この答えは、以下のようなものになります。

例えば、「食事制限(カロリー制限)」のもでは、「皮下脂肪(SAT)」の減少の方が大きく、「内臓脂肪(VAT)」の減少はその約半分程度にとどまることが多いと報告されています(参考11)。

その一方で、「食事制限+運動」による減量では、「内臓脂肪」と「皮下脂肪」は両方とも減少していくことが報告されているわけですね(参考12)。

この「運動」とは、どのようなものなのでしょうか?

「内臓脂肪組織(VAT)」と「皮下脂肪組織(SAT)」を減らす「運動」としては、次のようなものが推奨されています。

 

そちろん、「食事制限」を行ったうえで、これに「プラス」する「運動」ということになりますので、実際には大変なことかもしれませんね。


少し厳しいのですが・・・週3回以上の「中〜高強度の有酸素運動」を軸に、「筋トレを組み合わせる」ことが最も効果的とされています。例えば、中〜高強度の有酸素運動(ウォーキング早歩き、ジョギング、サイクリングなど)は、最も一貫して効果が確認されています。


その効果は、「内臓脂肪組織(VAT)」・「皮下脂肪組織(SAT)」・

体重・BMI・ウエスト周囲径を有意に減少したことが、大規模メタ解析の結果で報告されています(参考13)

また、高強度インターバルトレーニング(HIIT)という運動があります。聞き慣れない言葉と感じる方がいらっしゃるかもしれませんが、この運動は、 1〜2分ややきついペース → 1〜2分ゆっくり、を10〜15セット(合計高強度部分10〜15分程度)や 筋トレ:スクワット・腕立て・ローイングなど大筋群中心に1種目2〜3セット など、

中高年には、かなりヘビーな運動ということになりますね。
 

このような運動は、「内臓脂肪組織(VAT)」や「皮下脂肪組織(SAT)」を最も大きく減らす可能性が高く、短時間で、効果が出るわけです。

 

つまり、時間的な効率は、極めて高いわけですが、心肺・関節に大きな負荷がかかってしまうのだそうです。

 

なので、食事のカロリーを制限し、週3回以上の「中〜高強度の有酸素運動(30分程度の早歩き散歩)」が、現実的な「内臓脂肪組織(VAT)/皮下脂肪組織(SAT)比」を低下させることが、

脂肪肝などの内臓の障害や「動脈硬化」を進行させずに

「健康長寿」を実現させる方法になりそうですねキラキラキラキラキラキラ


以上が、今年最後のお話となります。


この1年間、誠にありがとうございました。

来年もさらに充実した情報の提供ができるよう頑張りますので、

引き続き、宜しくお願い致しますお願い
 

それでは、幸多き新年をお迎えくださいキラキラキラキラキラキラ


 

参考)

1)Curr Hypertens Rep 2018 Jul 10;20(9):77.
 Visceral Adipose Tissue Accumulation and Residual Cardiovascular Risk
Thierry H Le Jemteら

 

2)PLoS One. 2017 Sep 28;12(9):e0185403.
Body fat distribution, in particular visceral fat, is associated with cardiometabolic risk factors in obese women
Theodora W Elffers

 

3)Front Cardiovasc Med. 2023 Aug 21:10:1249401.
Association between visceral obesity and 10-year risk of first atherosclerotic cardiovascular diseases events among American adults: National Health and Nutrition Examination Survey
Liying Zhengら

 

4)BMC Public Health. 2024 Jul 9;24(1):1827.
The association between the visceral to subcutaneous abdominal fat ratio and the risk of cardiovascular diseases: a systematic review
Hadi Emamatら

 

5)Lancet Diabetes Endocrinol. 2019 Sep;7(9):715-725.
Visceral and ectopic fat, atherosclerosis, and cardiometabolic disease: a position statement
Ian J Neelandら

 

6)Cell Metab . 2016 Dec 13;24(6):820-834.
 Adipocyte Ceramides Regulate Subcutaneous Adipose Browning, Inflammation, and Metabolism
Bhagirath Chaurasiaら 

 

7)J Intern Med. 2016 Nov;280(5):465-475.
Adipose tissue regulates insulin sensitivity: role of adipogenesis, de novo lipogenesis and novel lipids
U Smith]ら

 

8)BMC Med. 2025 Feb 4;23(1):57.
 Visceral adipose tissue area and proportion provide distinct reflections of cardiometabolic outcomes in weight loss; pooled analysis of MRI-assessed CENTRAL and DIRECT PLUS dietary randomized controlled trials
Hadar Kleinら


9)Obesity (Silver Spring). 2025 May;33(5):825-838.
 Features, functions, and associated diseases of visceral and ectopic fat: a comprehensive review
Jiaqiang Luoら

 

10)Physiol Rev. 2013 Jan;93(1):359-404.
Pathophysiology of human visceral obesity: an update
André Tchernofら
 

11)Eur J Clin Nutr. 2022 Feb;76(2):184-195.
Comparisons of calorie restriction and structured exercise on reductions in visceral and abdominal subcutaneous adipose tissue: a systematic review
Takashi Abeら
 

12)J Clin Med. 2024 Aug 23;13(17):5005.
The Effects of Exercise Interventions on Ectopic and Subcutaneous Fat in Patients with Type 2 Diabetes Mellitus: A Systematic Review, Meta-Analysis, and Meta-Regression
Fatemeh Kazeminasabら
 

13)Obes Rev. 2024 Mar;25(3):e13666.
 Effects of various exercise types on visceral adipose tissue in individuals with overweight and obesity: A systematic review and network meta-analysis of 84 randomized controlled trials
Xiaoke Chen

 

(Cafe1894, 三菱一号館美術館)

 (筆者撮影)

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こんにちは、内科医 ひとちゃんですニコニコ

 

残念ながら、先週末は、雨模様のお天気となってしまいましたね。

 

空気の乾燥が、和らぐのは良いことなのですが・・・

 

皆さまの体調は、いかがでしょうか?

 

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(AIで画像を作成)

 

今回の話題は、「天気痛」にしてみたいと思います。

 

「雨が降る前は膝が痛む」、また「古傷が天気を予報する」などという話は、よく聞きますね。

 

これらは、単なる迷信や気のせいだと思われてきました。

 

しかし、近年の大規模な疫学調査や、最新の神経生理学的な研究により、「天気痛(気象病)」の実態が明らかになりつつあるのですね。

神経痛(神経障害性疼痛)や関節痛が、なぜ「気圧の低下」や「気温の低下(寒さ)」によって悪化するのか?・・・をお話してみたいと思います。


長年にわたり、「天気」と「痛み」の関係を証明することは困難であったそうです。

 

なぜなら、個人の思い込み(バイアス)を排除することが難しかったからという理由からなのですね。

しかし、「スマートフォン」の登場がその壁を打ち破った・・・というのですから、驚きます。

 

英国マンチェスター大学のDixon教授らは、1万人以上の「慢性疼痛」のある患者を対象に、スマホアプリとGPSを使った画期的な調査を行いました(2019年報告)。
 

このプロジェクトは、「Cloudy with a Chance of Pain」プロジェクトと呼ばれています。その方法は、以下のようなものです。


調査方法: 患者は日々の痛みをアプリに入力し、GPS情報からその場所のリアルタイムな気象データと照合。

結果: 「気圧の低下」「高湿度」「強風」の日には、痛みが悪化するリスクが約20%増加することが判明した」(参考1)。

 

この研究により、「関節リウマチ」や「神経痛」を持つ人々が天候の影響を受けることは、統計的にも確かな事実として認められるようになったのだそうです。

 

(AIを用いて画像を作成)

 

では、「気圧が下がると痛い」といっても、体はどのようにして気圧を感じているのでしょうか?

実は、私たちの体には、「気圧センサー」が備わっていることが分かっています。

 

実は、そのセンサーがあるのは、耳の奥にある「内耳(ないじ)」なのですね。

 

「内耳」には、平衡(へいこう)感覚をつかさどる「前庭(ぜんてい)」という器官があります。

 

外気圧の変化は、まず、鼓膜(こまく)・中耳腔に伝わり、その後、アブミ骨を介して卵円窓→蝸牛・前庭(内耳)へと波として伝達されます(参考2)

 

中耳の気圧変化は、「外リンパ」と「内リンパ」の間に小さな圧差を生じさせ、前庭神経の発火パターンを変えることが示されています (参考2)

 

ちょっと、難しいのですが・・・

 

「内耳」には「気圧計」のような専用器官は確認されていませんが、内耳に存在する「有毛細胞」というものが、内耳液の圧変化・流れを高感度に感知することで、結果的に気圧変化に反応すると考えられるのだそうです。


もうひとつのセンサーが、「冷えると痛い」という現象ですが、これには、別のセンサーがあるのですが、このお話は後日の話題にしたいと思います。

 

素敵な1週間をお過ごしくださいキラキラ

 

それでは、またバイバイ

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<ブログ後記>12月23日

 

天気が悪くなる前には、「関節」などに痛みを感じたり、線維筋痛症などのある方では、体幹部などが痛むことも多いかもそれませんね。

 

その理由としては、本文内でもご紹介をしたように・・・耳は「気圧計」の役割をしており、「気圧」の変化を敏感にキャッチできるからという理由になるわけです。

そのセンサーが存在するのは、耳の奥にある「内耳(ないじ)」という部分となりますね。


「内耳」には平衡感覚をつかさどる「前庭(ぜんてい)」という器官があります。

グルグルとまわるような回転性の目眩(めまい)が生じたときに、私を含めた医療者は、この「前庭」部分の炎症があるのではないか?・・と疑ったりもするわけです。


この「前庭」という器官は。次のような働きをすることが分かっています

1)気圧の感知

台風や雨雲が近づき気圧が下がると、内耳の気圧センサーがその変化を感知します。

2)交感神経の興奮

センサーからの信号が脳に伝わると、自律神経のバランスが崩れ、「交感神経」が過剰に興奮することが知られています(参考3)。

3)痛みの増幅

交感神経が興奮すると、血管が収縮したり、痛みを感じる神経内で「ノルアドレナリン」 という物質が作用して、普段より痛みを強く感じるようになります。

動物実験では、神経障害を持つラットを「低気圧環境(台風の接近程度)」に置くと痛がる行動が増えますが、内耳を破壊して機能をなくしたラットでは、気圧が下がっても痛みが悪化しないことが確認されています(参考4)。

 

これらのことは、「内耳」こそが天気の変化を「痛み」に変換するスイッチであることを示していると考えられています。

ところで、「気温が下がる」、つまり、「空気が冷えると痛い」という現象は、どのようなメカニズムがあると考えられているのでしょうか?

 

この現象には、「温度を感じる特殊なタンパク質(イオンチャンネル)が関わっているとされています。
 

実は、私たちの神経には、温度を感じ取るセンサーとなる「タンパク質」が存在することが分かっています。

そのタンパク質が、「TRPM8(ティーアールピーエムエイト)」と「TRPA1(ティーアールピーエーワン)」というものになります。

TRPM8

26℃以下の涼しさや、ミント(メントール)のひんやり感を感じるセンサー

TRPA1 

: 17℃以下の冷たさや、ワサビのツーンとする刺激を感じるセンサー

などと説明されています。
 

神経が損傷(そんしょう)を受けると、これらのセンサーの量が増えたり、感度が過敏になったりすることが知られています(参考5)。

その結果、健常な人なら「少し涼しい」と感じる程度の気温低下でも、神経痛患者さんの脳には「痛い!」という信号として伝わってしまうのです(アロディニア現象)。

さらに血流の低下によって「酸欠」の状態になることが、「神経痛」などの痛みを増強させることが知られています。

寒さを感じると、体は熱を逃がさないように「血管」を収縮させます。

神経に栄養を送る微細な血管も収縮するため、傷ついた神経が酸素不足(虚血)になり、「発痛物質」が蓄積して痛みが悪化するとされています。

このようにみてきますと・・・天気の悪化により、痛みの増悪することは、気のせいではないとも言えますね、

日々のお天気が、主に「神経痛」の状態に影響を与えるのは、「内耳」による気圧感知と「交感神経の興奮」、そして「低温による神経過敏と血流障害」という明確な生理学的メカニズムが存在するからということになりますね。

 

今後、医療が発展していくことにより、これらの問題を解決して、

「神経痛」などの痛みを改善させるは、十分に可能なことなのかも

しれませんね。

 

今回も最後までお付き合いくださり

誠にありがとうございましたお願い

 

参考)

1)NP J Digit Med. 2019 Oct 24:2:105.

How the weather affects the pain of citizen scientists using a smartphone app  

William G Dixonら

 

2)Rep Prog Phys. 2014 Jul;77(7):076601. 

The physics of hearing: fluid mechanics and the active process of the inner ear  

Tobias Reichenbachら

 

3)Neurosci Lett. 1999 Apr 30;266(1):21-4.
Lowering barometric pressure aggravates mechanical allodynia and hyperalgesia in a rat model of neuropathic pain
J Satoら

 

4)Eur J Pain. 2010 Jan;14(1):32-9. 

The inner ear is involved in the aggravation of nociceptive behavior induced by lowering barometric pressure of nerve injured rats

Megumi Funakuboら

 

5) RP Ion Channel Function in Sensory Transduction and Cellular Signaling Cascades.(Chapter13)
RPM8: The Cold and Menthol Receptor
David D.ら

 

     (日比谷ミッドタウンのクリスマスツリー2025)

 (筆者撮影)

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理事長・ 院長  

小笠原  均  (Hitoshi Ogasawara)   

医学博士, 内科医

(総合内科、リウマチ専門医)

(新潟大医学部卒)

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こんにちは、内科医 ひとちゃんですニコニコ

 

寒さを感じる休日の午後となっています。

昨夜から降り出した雨は、シトシトと振り続いているようです。

 

「炉辺の詩人」5人組の1人として知ら米国のヘンリー・ワズワース・ロングフェローは、次のような言葉を残しています。

 

 "The best thing one can do when it's raining is to let it rain." 

 

雨が降っている時にできる最善のことは、雨に降らせておくことだ

 

確かに、こんな冷たい雨の降る日はジタバタしても仕方がないと思ってしまいますね。

 

皆さまの体調は、いかがでしょうか?

 

(AIを用いて作成)


抗老化医療の分野において注目を集めている「ニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)」や「ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD+)」が、「ホルモン」の産生にどのような影響をにどのような影響を与えますか?・・・という質問をされることが多くなりました。


そこで、今回は「NMN」や「NAD+点滴」がホルモンに与える影響について、現時点で分かっていることについて、お話をしてみたいと思います。

まず、「NMN」そして,「NAD+」とは、どのようなものであるか・・・について、復習(ふくしゅう)をしておきたいと思います。
 

「NMN」は、生体内でエネルギー産生や老化制御に不可欠な補酵素「NAD+」を作るための重要な中間代謝産物(前駆体)であると言え

ます。

 

 

「NAD+」は、エネルギー産生(ATP合成)とサーチュイン遺伝子(SIRT1.~7.)の活性化を促し(うながし)、DNA修復、エピジェネティックな遺伝子制御など、細胞の生存に不可欠な補酵素であると考えらえれています(参考1)。

加齢に伴い、体内の「NAD+レベル」は、さまざまな臓器において

低下し、これが代謝機能不全や加齢関連疾患の要因となることが示されています(参考2)。
                                    

image

 (AIを用いて作成)

 

「ホルモン」分泌能低下もまた、「老化」の特徴のひとつといえます。

近年の研究により、「NAD+」の代謝と内分泌系の間に密接な相互作用が存在することが明らかになりつつあるというのですね。

そこで、今回は、「NMN」の投与、および「NAD+」の点滴が、性ホルモン、代謝ホルモン、および、サーカディアンリズム(概日リズム)関連ホルモンに及ぼす影響について、お話をしてみたいと思います。

「NAD+」は、「サーチュイン(SIRT1-7)遺伝子」を活性化させる補酵素として機能しますね。


「サーチュイン遺伝子」は、「長寿遺伝子」とも呼ばれ、ヒストンや転写因子の脱アセチル化を通じて遺伝子発現を制御し、ホルモン受容体の感受性やホルモン合成酵素の活性を調節していることが知られています(参考3)。

特に「サーチュイン1遺伝子(SIRT1)」は、核内受容体(エストロゲン受容体、アンドロゲン受容体、PPARsなど)の活性調節に関与しており、標的臓器におけるホルモン感受性を維持するために重要で
あることが分かっています(参考4)。
 

では、具体的に各種のホルモンには、どのような影響があると考えられているのでしょうか?

まず、「女性ホルモン」や「卵巣機能」への影響はについて、みてみたいと思います。

女性の生殖機能低下は、「卵母細胞」の質と数の減少に起因(きいん)すると考えられています。

 

「卵母細胞」とは、卵子のもととなる細胞ですね。

 

動物実験では、「NMN」投与により卵巣内の「NAD+」レベルが回復し、卵子の質や排卵数、受精率、生児獲得率が改善したと報告されています(参考5)。

 

ヒトでは、若年女性の卵巣予備能低下(DOR)に対するNMN補給は、卵胞発育や受精率、妊娠率の向上に寄与した臨床報告もあります(参考6)。

 

マウスの卵巣内の「NAD+」濃度が、加齢とともに低下しますが、「NMN」投与によりこの濃度が著しく回復し、卵巣萎縮を防止するとともに排卵卵子の質と量を向上させることが明らかになったとする報告もあります(参考7)。


以上のように「NMN」や「NAD+点滴」は、卵巣機能や卵子の質、代謝改善に寄与する可能性が示唆されていますが、エストロゲンやプロゲステロンなどの女性ホルモン分泌への直接的な影響は現時点で十分に証明されていないのが、現状のようです。

では、テストステロンなどの男性ホルモンに対しては、どうなのでしょうか?

現時点で、NMNやNAD+投与が、テストステロン分泌量や血中濃度に

影響を与えるというエビデンスは存在しないようです。

 

多くの研究は代謝改善や精子形成への影響に焦点を当てており、ホルモン分泌そのものへの作用は十分に検証されていない可能性があるようです。

 

では、最後に「甲状腺ホルモン」については、どうでしょうか?

 

現在の主要な研究では、NMNやNAD+投与が甲状腺ホルモン(T3、T4、TSHなど)の分泌や機能に直接影響を与えたという報告は見当たりませんでした。

 

今回は、「NMN」や「NAD+」が、ヒトのホルモン分泌に良い影響を

与えるに違いない・・・と気合いを入れて、多くの論文から。その証拠(しょうこ)を見つけようとしたわけですが、残念ながら、そのような報告は見つかりませんでしたえーん

 

 

しかしながら・・・これは、面白いと感じたホルモンがありました。

それは、「糖尿病」の発症に関わる「インスリン」というホルモンであるのですが、このお話は、後日の話題にしたいと思います。

 

素敵な1週間をお過ごしくださいキラキラ

 

それでは、またバイバイ

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<ブログ後記>12月16日

 

今回は、「NMN」や「NAD+」の投与は、身体のホルモンにどのような影響を与えるかについて、お話をさせていただきました。

 

思っていたよりも、「ホルモン」に影響を与える可能性が少ないことに驚かれたのではないでしょうか?

 

一方で、2型糖尿病に関する「インスリン」の分泌には影響を与える可能性があることについて、お話をしてみたいと思います。

 

その前に「インスリン」とは、どのようなホルモンであるのかについて、お話をしておきたいと思います。


「インスリン」は、血液中のブドウ糖(血糖)を細胞に取り込ませることで血糖値を下げる働きをします。

また、余分なブドウ糖を肝臓や筋肉でグリコーゲンとして蓄えたり、脂肪細胞で脂肪として蓄えたりする働きも持っています。

この「インスリン」を分泌するのが、膵臓にある「膵β(ベータ)細胞」ということになるわけです。

 

「膵β細胞」から分泌された「インスリン」は血液に乗って全身の細胞(特に筋肉細胞や脂肪細胞)に運ばれます。そして細胞表面にあるインスリン受容体に結合します。

この結合がスイッチとなり、細胞は血液中のブドウ糖を取り込み、エネルギーとして利用したり貯蔵したりします。

 

このインスリンの作用によって、私たちの体はエネルギー源であるブドウ糖を効率よく利用し、血糖値を一定の範囲に保つことができるというわけですね。
 

では、「膵β細胞」のインスリン分泌に対して、「NMN」や「NAD+」の効果は、どのようなものであるのか・・・をみてみると、次のようになります。

よく「インスリン分泌能」という言葉を耳にすることがあるかもしれませんが、これは「膵臓β細胞」がどれだけインスリンを作り出し、分泌する能力を持っているかを示すものです。

この「膵臓β細胞」の「インスリン分泌能」は、多くの研究で加齢に伴い低下することが報告されています。

また同時に「膵臓β細胞」が「老化細胞」になることによっても「インスリン分泌能」が低下することが報告されています。

実際に・・・加齢に伴う「膵臓β細胞」の細胞老化は、「膵臓β細胞」の機能低下の根底にある可能性があり、「老化細胞」を除去することでインスリン分泌が改善され、2型糖尿病の予防につながる可能性も指摘されています(参考8)

そして、「老化細胞」が多く出現しないとしても、加齢により「膵臓β細胞」のインスリン分泌低下が生じることも報告されています

(参考9)。

さらに加齢により「膵β細胞」のNAD+レベルやNAD+関連酵素の発現が低下し、「インスリン分泌能」が減弱することも知られています。

では、 加齢によりインスリン分泌が低下した「膵β細胞」に対して、「NMN」や「NAD+」の投与は有効なのでしょうか?

加齢に伴いNAD+合成酵素(NAMPT, NADKなど)の発現が低下し、
NAD+枯渇 → SIRT1活性低下 → インスリン分泌障害
という経路があることが示唆されています(参考10)

このために「NAD+」の投与により、NAD+/AMPK/SIRT1/HIF-1経路という部分を回復させることにより、「膵β細胞」の機能障害を改善することが確認されています。

このことは、膵β細胞機能障害、および、2型糖尿病の治療に対する潜在的な治療効果が期待できることが示されています。

 

また、「NMN」にも同様の働きがあることが報告されています(参考11)。

補足になりますが・・・HIF-1とは、細胞膜に存在し、血液中から細胞内へグルコースを運び込むタンパク質となりますね。

実際に・・・2型糖尿病のメインの治療薬とはなりえないものの。·身体活動と「SIRT1」および「SIRT3」の活性化は、特に高齢者において、グルコースの恒常性を維持し、2型糖尿病の予防に役立つ可能性があることが指摘されています(参考12)

ちなみに・・・サーチュイン3(SIRT3)遺伝子は、軽度のカロリー制限や空腹状態がサーチュイン遺伝子のスイッチを入れる刺激となります。


サーチュイン3(SIRT3)遺伝子は、本来は、ミトコンドリアの保護作用を持つことが知られていますが・・・実は、サーチュイン遺伝子のなかで最も「活性酸素(ROS)」を除去し、高い「抗酸化力」を持つとされるとされます。


なぜ、「膵β細胞」からのインスリン分泌に・・・なぜ、「ミトコンドリア」なのか?・・・と思われる方もいらっしゃるかもしれませんね、

実は、「膵β細胞」におけるインスリン分泌プロセスには高いエネルギーが要求されることが知られています。

生体の中でのエネルギーといえば、もちろん、「ATP(エーティーピー)でして、このATPを作るのが「ミトコンドリア」
であるということになるわけですね。

実際に、動物実験では、加齢に伴い膵β細胞のNAD+合成能が低下し、これがグルコース応答性インスリン分泌(GSIS)の不全を招くことが示されています(参考13)。

ならば・・・「NMN」を日常的に服用してれば、2型糖尿病になりにくいのではないか?・・・と思う方がいらっしゃるかもしれませんね。私も実は、そう思いました。
 

しかし、残念ながら、「NMN」の投与は、老齢マウスのインスリン分泌能を回復させたが、ヒトにおいては、健常者に対するNMN投与が血糖値やインスリン分泌に与える影響は限定的であり、耐糖能異常を有する集団においてのみ有益である可能性が高いとも報告されているのですね(参考14)。

「NMN」や「NAD+」については、一時のブームが去ったような気も致します。

実際に「NMN」や「NAD+」の投与は、当初期待されたようなメリットを示せなかったなどという論文もあります。

また、動物実験とヒトでの実験結果が、混在しているという事実もあるわけです。

 

しかしながら、細胞の機能を支えるエネルギー(ATP)産生をアップできる点、サーチュイン1遺伝子(SIRT1)が、壊れたDNAを修復することや、「サーカディアンリズム(概日リズム)」を調整すること、

また、サーチュイン3遺伝子(SIRT3)が、強い抗酸化作用を発揮すること、そして、上記のような2型糖尿病の予防や血糖値の安定化などの効果をひとつひとつ見てみますと・・・ただ、元気になることや

長寿を実現される・・・とは違う、大きなメリットがある可能性

があるのではないか?・・・なんて、思えたりもしますね。

 

こん顔も最後までお付き合いくださり

誠にありがとうございましたお願い

 

参考)

1)Nat Rev Mol Cell Biol. 2021 Feb;22(2):119-141.
NAD+ metabolism and its roles in cellular processes during ageing
Anthony J Covarrubiasら

 

2)Trends Cell Biol. 2014 Aug;24(8):464-71.
NAD+ and sirtuins in aging and disease
Shin-ichiro Imaiら

 

3)Nat Rev Mol Cell Biol. 2012 Mar 7;13(4):225-238.
 Sirtuins as regulators of metabolism and healthspan
Riekelt H Houtkooperら

 

4)Ann Med. 2011 May;43(3):198-211.
Sirtuin 1 in lipid metabolism and obesity
Thaddeus T Schugら

 

5)Biogerontology. 2022 Apr;23(2):237-249. 

Multispectral autofluorescence characteristics of reproductive aging in old and young mouse oocytes

 Jared M Campbellら

 

6)Human Reproduction, Volume 40, Issue Supplement_1, June 2025, deaf097.217.
O-217 Nicotinamide mononucleotide-a NAD+ precursor- a new hope for rejuvinating fertility outcome in young infertile women with diminished ovarian reserve- a retrospective analysis 
D Sen Shanaら
 

7)MedComm (2020). 2024 Sep 30;5(10):e727.
Nicotinamide mononucleotide supplementation rescues mitochondrial and energy metabolism functions and ameliorates inflammatory states in the ovaries of aging mice

inghui Liangら

 

8)Diabetologia. 2020 Oct;63(10):2022-2029.
Functional changes in beta cells during ageing and senescence
Cristina Aguayo-Mazzucatoら

 

9)Diabetologia. 2016 Jan;59(1):161-169.
Role of microRNAs in the age-associated decline of pancreatic beta cell function in rat islets
Ksenia Tugayら

 

10)Aging Cell. 2025 Apr;24(4):e70037.
 Downregulation of NAD Kinase Expression in β-Cells Contributes to the Aging-Associated  Decline in Glucose-Stimulated Insulin Secretion
Guan-Jie Liら

 

11)Int J Mol Sci. 2024 Sep 30;25(19):10534.
Nicotinamide Mononucleotide (NMN) Ameliorates Free Fatty Acid-Induced Pancreatic β-Cell Dysfunction via the NAD+/AMPK/SIRT1/HIF-1α Pathway
Yan Wangら

 

12)Int J Mol Sci. 2019 Sep 25;20(19):4748.
 Proposed Tandem Effect of Physical Activity and Sirtuin 1 and 3 Activation in Regulating Glucose Homeostasis
Francesca Pacificiら

 

13)Aging Cell. 2008 Jan;7(1):78-88.
 Age-associated loss of Sirt1-mediated enhancement of glucose-stimulated insulin secretion in beta cell-specific Sirt1-overexpressing (BESTO) mice
Kathryn Moynihan Ramseyら

 

14)Curr Diab Rep. 2024 Nov 12;25(1):4.
Effects of Nicotinamide Mononucleotide on Glucose and Lipid Metabolism in Adults: A Systematic Review and Meta-analysis of Randomised Controlled Trials
Feng Chenら

 

 

(KITTEビルのクリスマスツリー2025)

 (筆者撮影)

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こんにちは、内科医 ひとちゃんですニコニコ

 

暦(こよみ)の二十四節気では・・12月7日が、では「大雪(たいせつ)」のスタートとなりますね。

 

本格的な寒さの到来(とうらい)を前にして、多少暑くても、夏の終わり頃の気候がよかったなあ〜などと思います。

 

イギリスの作家・学者であるC.S.ルイスは以下のような言葉を残しています。

"We all want progress, but if you're on the wrong

road, progress means doing an about-turn and

walking back to the right road; in that case, the man

who turns back soonest is the most progressive."

 

その訳は、

 

「私たちは皆、進歩を望んでいる。しかし、もし間違った道にいるのなら、進歩とは、回れ右をして正しい道へ戻ることだ。その場合、最も早く引き返した者が、最も進歩的な(最も早く目的地に着く)

人間なのだ。」

 

という言葉を思い出します。

 

C.S.ルイスは、7巻からなるファンタジー小説「ナルニア国物語」の作者ですね。

残念ばがら・・・「冬の寒さ」に遅ればせばがら気がついて、夏に逆戻りしたいと思っても、当然ながら無理ですよね。

 

皆さまの体調は、いかがでしょうか?

 

(AIを用いて作成)

 

前回は「なぜ、加齢に伴い免疫力が低下する理由」について、お話をそました。

 

その後、「ナチュラル・キラー細胞(NK細胞)」が出てこなかったけど、「NK細胞」を含めれば、「老化細胞」を減らすことができるし、

「老化細胞」から放出される炎症性サイトカインも減少するから

「老化」のスピードは低下するはずだよね・・・と友人から質問があったわけです。

 

そのとおりなのですが・・・実は、彼の話には、「NK細胞」の弱点(じゃくてん)を見落としています。

 

そこで、今回の話題は、『NK細胞は、本当に老化細胞を破壊できるのか?』をお話して見たいと思います。

 

結論を先に言ってしまいますと・・・「NK細胞」が破壊すること、正確に言いますと、「アポトーシス(プログラムされた細胞死)」を起こさせることになりますが・・・「癌細胞」、「ウイルス感染細胞」、そして、「老化細胞」となるため。結論としては「老化細胞」を破壊することは、可能であるということになります。

 

 (AIを用いて作成)

 

しかしながら、「NK細胞」には、致命的(ちめいてき)な弱点がありましたね。

下の図は、「NK細胞」の活性(かっせい)を示しています。「活性」とは、「NK細胞」が持つ破壊力(はかいりょく)ということになりますね。

 

図を見ますと・・・「NK細胞」の活性は、男女とも20歳前後が最も高く、その後は加齢とともに低下していくことが分かっています。

 

なので、単純に血液中の「NK細胞」だけに「老化細胞」の破壊・除去を期待するのは・・・ちょっと難しいのではないかと思います。

 

ちょっとした方法を使えば、別ですが・・・となるのですね。

 

           (図はお借りしました)

 

では、「NK細胞」の活性を年齢に関わらず、若い時のような「活性」を取り戻す方法をご紹介する前に「老化細胞」について、少し整理をしてみたいと思います。

 

まずは、「老化細胞」の蓄積と、それに伴う(ともなう)組織変化について、お話をしてみたいと思います。

 

まずはヒトの体内にある「ゾンビ細胞」と呼ばれる「老化細胞」とは、どのようなものなのでしょうか?

 

「老化細胞」の定義(ていぎ)と言っても良いかもしれませんね。、

 

1961年、レナード・ヘイフリックらは、正常な細胞には「分裂回数の限界」があることを発見しました(ヘイフリック限界)(参考1)。

 

 

しかし、細胞老化は単なる「分裂の停止」ではなかったのですね。

 

 

「老化細胞」の一部は、アポトーシスを起こし、破壊されるわけですが、残りは、死ぬわけではなく、代謝的に活発な状態で組織内に留まり続け、周囲に悪影響を及ぼすタンパク質群を撒き散らすようになります。これはまさに、死なずに害を及ぼす「ゾンビ細胞」のような振る舞いであるとされているわけです(参考2)。


 

では、なぜ、「老化細胞」できるのか?・・・という問いになりますと・・・これは、分裂回数が「ヘイフリックの限界」に達した(たっした)からというだけではありません。

 

もちろん、「分裂の限界」から「老化細胞」になります。

以前にもブログ内でお話をしましたが・・・まとめてみますと次のようになります。

細胞老化の主な要因

【1】テロメア短縮-(複製老化)

分裂のたびに染色体末端が短くなり、限界に達すると細胞は分裂を止めます(複製老化)(参考3)。

 

 

【2】DNA損傷

放射線や活性酸素による遺伝子の傷が修復できない場合、細胞はがん化を防ぐために自ら老化モードに入ります(参考4)。

 

 

【5】がん遺伝子の活性化ー(がん遺伝子誘導性老化)

RASなどの「がん遺伝子」が異常活性化した場合も、強制的に細胞老化が誘導されます(参考5)。

 


となるわけですね。

つまり、細胞が癌化してしまう遺伝子異常が生じてしまったことから、まだ、分裂回数が残っているにも関わらず、「老化細胞」になることもあるわけです。

 

つまり、がん化を防ぐための防御反応として「細胞老化」、つまり「老化細胞」になることもあるのですね。

 

つまり、すべての「老化細胞」を「正常細胞」に戻す試み(こころみ)が、いかにナンセンスな話かが理解できますよね。

 

なぜなら・・・「老化細胞」の中には、「癌細胞」にならないように

分裂を停止したものもあるわけですのでね。

 

わざわざ、「癌細胞」を作り出すことは、デメリットしかありませんよね。

このお話の続きは、後日の話題にしたいと思います。

 

素敵な1週間をお過ごしくださいキラキラ

 

それでは、またバイバイ

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<ブログ後記>12月9日

「老化細胞」については、本文内でお話をしました。
ヒトは「老化細胞」の存在を自覚を自覚はできないのですが、多くの臓器を構成する細胞が「老化細胞」になるとされています。

例えば、皮膚真皮層に存在する「線維芽細胞」も老化することが知られています。

老化した「線維芽細胞」は、細胞周期が停止し、炎症性サイトカインやマトリックス分解酵素(MMPs)などを分泌(SASP)を起こします。

これにより、コラーゲンや弾性線維の分解が促進され、真皮の構造が劣化します。さらに真皮構造が崩れ、慢性的な微小炎症が続くことで、しわ・たるみ・ハリ低下などの変化として現れるとされています(参考6)。

また、老化線維芽細胞は、周囲の若い線維芽細胞にも悪影響を及ぼし、コラーゲンやエラスチンの発現を抑制することも確認されています(参考7)

このように「老化細胞」の影響は、皮膚線維芽細胞の影響が見えやすい部分となっているために、
皮膚の抗老化医療においても、老化細胞の除去やSASP抑制、抗酸化・抗炎症治療が、皮膚老化の新たな治療戦略として注目されているわけです(参考7)

これを破壊するために自分自身の「ナチュラル•キラー細胞(NK細胞)」を用いることが可能であるというわけですね。
「NK細胞」は、ウイルス感染細胞やがん細胞を攻撃するリンパ球です。T細胞のように事前の教育(抗原感作)を必要とせず、異常な細胞を見つけると即座に攻撃を開始できるため、「ナチュラルキラー(生まれつきの殺し屋)」と呼ばれます(参考8)。

「NK細胞」は、アクセルとブレーキのバランスで攻撃を決定することが知られています。ブレーキとアクセルは、以下のようなものになります。

1.ブレーキ(抑制性受容体)
正常な細胞が持っている「自分ですよ」という身分証(MHCクラスI分子)を   確認すると、攻撃を中止します(参考9)。正常な細胞はすべて.MHCクラスI分子を表面に出しているために

「NK細胞」には、攻撃されません。

では、「老化細胞」では、「MHC classI抗原」が表出されなくなるのでしょうか?

その答えは・・・「No」でして、「老化細胞」のMHCクラスI発現増加は、インターフェロン経路の活性化やp53経路の関与によって誘導されることが知られています。


「老化細胞」のMHCクラスI発現増加は、免疫機構荷よる「老化細胞除去」を妨げている可能性があると考えられています(参考10)


2.アクセル(活性化受容体):
 

異常な細胞の表面に出現する「ストレス分子(MICA/BやULBPなど)」をNKG2D受容体などが感知すると、「NK細胞」の攻撃スイッチが入ることが分かっています(参考11)。

そして、「老化細胞」の表面には、老化誘導(複製老化、オンコジーン誘導、DNA損傷など)により、MICAやULBP2などのNKG2Dリガンドがヒト線維芽細胞などの老化細胞表面で一貫して高発現します。

本文内でお話したように「老化細胞」の誘因にかかわらず、すべての「老化細胞」にMICAやULBP2などのNKG2Dリガンドが、高発現しているわけです(参考12)。

つまり、「老化細胞」は、「自分ですよ」という身分証(MHCクラスI分子)を表面に出して、NK細胞の攻撃から逃げようロスる性質があるものの、その表面には、はMICA/BやULBPなどのNKG2Dリガンドを表面に高い発現し、これがNK細胞によって、排除されることになるわけです。

その他にも、老化細胞は、NK細胞に対して「私を攻撃してくれ」というシグナルを出しています。
 

それは、次のようなものがあるとされています。

 (A) 危険信号の提示:
「老化細胞」は、DNA損傷応答の結果として、「NK細胞」のアクセルを踏ませるリガンド(MICA/B、ULBPなど)を細胞表面に大量に発現します(参考13)。

 (B)身分証の隠蔽 (MHC classI 抗原の低下)
 一部の「老化細胞」では、NK細胞のブレーキとなるMHCクラスI分子の発現を低下させ、攻撃を受けやすくなっていることも知られています。

(C)接着分子の増加:、
「老化細胞」ではICAM-1のmRNAおよび細胞表面発現が大きく増加することが示されています。これは酸化ストレスの増加と関連しており、「老化細胞」表面では、はICAM-1という接着分子を増やし、NK細胞が物理的に結合しやすい状態を作るとされ、より、「NK細胞」により、「老化細胞」は破壊されることが確認されています。
ICAM-1の発現が高いターゲット細胞は、NK細胞とのコンジュゲート形成(接着)が増加し、細胞傷害感受性も高まります(参考14)。

いかがでしょうか?「老化細胞」が「NK細胞」のより、除去されるのがお分かりいただけたでしょうか?

 

今回も最後までお付き合いくださり

誠にありがとうございましたお願い

 

参考)

1)Exp Cell Res. 1961 Dec:25:585-621.

The serial cultivation of human diploid cell strains

L HAYFLICKら
 

2)PLos Biol

Clinical Trial. 2008 Dec 2;6(12):2853-68.

Senescence-associated secretory phenotypes reveal cell-nonautonomous functions of oncogenic RAS and the p53 tumor suppressor

Jean-Philippe Coppeら

3)Nature. 2003 Nov 13;426(6963):194-8.

 A DNA damage checkpoint response in telomere-initiated senescence

Fabrizio d'Adda di Fagagnaら

 

4)Nature. 2006 Nov 30;444(7119):638-42. 

Oncogene-induced senescence is a DNA damage response triggered by DNA hyper-replication 

Raffaella Di Miccoら

 

5) Cell. 1997 Mar 7;88(5):593-602. 

Oncogenic ras provokes premature cell senescence associated with accumulation of p53 and p16INK4a 

M Serranoら

 

6)Int J Mol Sci. 2019 Apr 29;20(9):2126.
Molecular Mechanisms of Dermal Aging and Antiaging Approaches
Jung-Won Shinら

 

7)Cells. 2022 Nov 24;11(23):3749.
Aging Fibroblasts Adversely Affect Extracellular Matrix Formation via the Senescent Humoral Factor Ependymin-Related Protein 1
Kento Takayaら

 

8)Eur J Immunol. 1977 Sep;7(9):655-63.
Evidence for a similar or common mechanism for natural killer cell activity and resistance to hemopoietic grafts
R Kiesslingら

 

9)Nature . 1986 Feb;319(6055):675-8.
 Selective rejection of H-2-deficient lymphoma variants suggests alternative immune defence strategy
K Kärreら

 

10)Annu Rev Immunol . 2013:31:413-41.
 Regulation of ligands for the NKG2D activating receptor
David H Rauletら

 

11)Aging (Albany NY) . 2016 Feb;8(2):328-44.
NKG2D ligands mediate immunosurveillance of senescent cells
Adi Sagivら

 

12)Nature. 2005 Aug 25;436(7054):1186-90.
The DNA damage pathway regulates innate immune system ligands of the NKG2D receptor
Stephan Gasserら

 

13)Nat Commun. 2019 Jun 3;10(1):2387.
Senescent cells evade immune clearance via HLA-E-mediated NK and CD8+ T cell inhibition
Branca I Pereiraら

 

14)Cell Death Dis. 2021 Jan 18;12(1):94.
 Hsa_circ_0007456 regulates the natural killer cell-mediated cytotoxicity toward hepatocellular carcinoma via the miR-6852-3p/ICAM-1 axis
Min Shiら

 

(東京ミッドタウンのイルミネーションと月)

 (筆者撮影)

 

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理事長・ 院長  

小笠原  均  (Hitoshi Ogasawara)   

医学博士, 内科医

(総合内科、リウマチ専門医)

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