こんにちは、内科医 ひとちゃんですニコニコ

 

10月も半ば近くになり、3連休の中日(なかび)となっていますね。

夏は過ぎて、「秋本番」というところですが、昨日、そして、スッキリとしないお天気になっています。

 

皆さまの体調は、いかがでしょうか?

 

        (AIで画像を作成)

 

今回の話題は「動脈硬化(どうみゃくこうか)」にしてみたいと思います。

 

「動脈硬化(どうみゃくこうか)」というと「LDL-C」を思い浮かべる方が多いですよね。いわゆる「悪玉コレステロール」と呼ばれるものになります。


基準値は、日本人間ドック学会では、60〜119𝑚𝑔/𝑑𝐿としていますが、動脈硬化学会は、140mg/d l以上を「脂質異常症」の診断基準としています。

 

もちろん、頸動脈や心臓の冠動脈などにプラークや狭窄(きょうさく)があれば、LDL-C値を70~80mg/day程度まで下げることが推奨(すいしょう)されていますので、そのために食事療法の指導や

スタチン系薬剤など、その効果が強めの薬剤の内服を勧められることもあります。

 

それで・・・「LDL-C」を下げることができれば・・・やっと一息つくことができて、これで「安心」だと思う方は多いと思います。

 

では・・・「LDL-C」の値を低下させることができれば、本当に安心なのか?・・・ということになります。

 

 (AIで画像を作成)

 

実は、その答えは「No (ノー)」ということになります。

 

たしかに、「LDL-C」を下げるのは動脈硬化を防ぐうえでとても大事なわけです。

しかしながら、それだけでは十分ではないことも、最近の研究でわかってきているのですね。

 

そこで、最新の研究から見えてきた「LDL-C対策のその先」について、お話をしてみたいと思います。

 

先にお話をしたように「LDL以外のコレステロールの粒子」も心臓や血管の病気に関わっていることが知られています。

このなかで、特に注目されているのが「レムナント」という粒子ということになります(参考1)。

 

「レムナントコレステロール」とも呼ばれる、この粒子は、血液中の脂肪分が分解された後の「残りかす」のような代謝産物を指すのですが・・・


主に以下のリポ蛋白の残存物(remnant)に含まれるコレステロールであることが分かっています。

詳しく見てみますと・・・

  • VLDLレムナント(超低比重リポ蛋白の残存物)
  • IDL(中間比重リポ蛋白 - intermediate-density lipoprotein)
  • カイロミクロンレムナント(食事由来の脂質を運搬したカイロミクロンの残存物)
などがあることが知られています。

ちょっと、難しいのですが・・・これらは「リポ蛋白リパーゼ」という酵素で分解されるのですが、

その残った代謝産物の「レムナントリポ蛋白」が動脈硬化の原因と考えられる・・・という研究結果が発表されています。

 

この「レムナントリポ蛋白」は、高いコレステロール含有量や特異なアポリポ蛋白組成により、動脈壁に蓄積(ちくせき)しやすく、マクロファージによる泡沫細胞(ほうまつ)細胞形成を強力に誘導(ゆうどう)して、「動脈効果」を促進(そくしん)することが示されているのですね(参考1,2)

 

また、「レムナントリポ蛋白」は、LDL-Cと同等かそれ以上に「動脈硬化」を促進(そくしん)する作用が大きいとされており、

特に糖尿病や高トリグリセリド血症患者でそのリスクが顕著(けんちょ)であるとも報告されています

(参考3)。

 

では、「レムナントリポ蛋白」の量をどのように測定すればよいのか?

そして、どのように治療していけば、よいのか?

というお話は、次回の話題にしたいと思います。

 

素敵な1週間をお過ごしくださいキラキラ

 

それでは、またバイバイ

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<ブログ後記>10月14日

 

ずいぶんと夜は、気温が下がるようになりましたね。

今回は「動脈硬化」を進行、そして増悪させる「レムナント粒子」についてお話をさせていただきました。

JTKクリニックでは、さまざまな「抗老化医療(アンチエイジング医療)」を実践(じっせん)しているのですが、その中でも「血管」の年齢を若く保つということに力を入れています。


ヒトひとりが、身体(からだ)の中に持つ「血管」のトータルの長さは、地球を約2周半するぐらいの長さを持っています。
 

この血管が、各種の臓器、皮膚のコラーゲン、エラスチンを作り出す「線維芽細胞」など、まだ、脳などにも「動脈硬化」が進展しやすい環境を放置(ほうち)したままでは、マズイんじゃないか?・・・という考えるからです。

それでは・・・「動脈硬化」をどのように抑制し、進行しないようにしていくのか?・・・ということになりますね。

もちろん、「動脈硬化」の進展予防や増悪させないためには、「 LDLーC(悪玉コレステロール)」の値を低下させることは、とても重要であることは、よく知られています。

例えば、心筋梗塞後や狭心症があり、心臓の冠動脈病変が存在したり、狭窄病変が存在する場合には、「 LDLーC(悪玉コレステロール)」を正常値上限の半分程度まで低下させることが推奨(すいしょう)されています。


例えば、「 LDLーC(悪玉コレステロール)」のあたいは、〜139ng/dLまでが正常範囲ですので、その値を70~80mg/dLまで低下させてくださいね・・・と担当の医師から、アドバイスをされるはずです。


「食事療法」は、もちろん行う必要があるわけですが・・・それでも難しい場合には、「スタチン系薬剤」を内服しましょうね・・・と主治医から、方針が示されることになります。


もちろん、「スタチン系」という薬剤は、「 LDLーC」を強力に低下させることができるのですが、

こうした薬剤でも「リポプロテイン(a):Lip(a)」という特殊なリポ蛋白粒子を低下させることは、

不可能なのですね。


ちなみに、この「リポプロテイン(a):Lip(a)」というリポ蛋白粒子は、今回の話題とした「レムナント粒子(TRL)」ではありません。

「レムナント粒子(TRL)」とは、ちょっと難しいのですが・

 

「カイロミクロン」や「VLDL(超低比重リポ蛋白)」が
「リポ蛋白リパーゼ(LPL)」という酵素により部分的に脂質分解を受けた後の「残存粒子(remnant = 残り物)」を指します。

データを例に示しますと・・・スタチン系薬剤などで「 LDLーC(悪玉コレステロール)」の値まで下がっても、

non-HDL-Cや中性脂肪(TG)がまだ高めという人がいます。

 

このパターンは割と多いのですが、このような時には「レムナント粒子」が血液中に残っている可能性が極めて(きわめて:高いと考えられています。

例えば、たとえば「中性脂肪(TG)」が、150〜499 mg/dLの範囲の高値が続く方は、

食後に増える「レムナント粒子」の影響も受けやすく、「高LDL-C」の治療なとの対策に加えて、

さらに上乗せをする形で、「レムナント粒子」に対する対策が必要か?・・・を主治医と相談してみる必要があると論文内では述べられています(参考1,4)。

このような動脈硬化に関係がある。「レムナント粒子」は、「動脈硬化の残余(ざんよ)リスク」とも呼ばれています。


では、「レムナント粒子」は、どのように評価をすれば良いのでしょうか?

近年になって、リポ蛋白(カイロミクロンや種々のコレステロールの総称)の中で

「カイロミクロン」と「VLDLコレステロール」が「リポ蛋白リパーゼ」という酵素で分解されて・・・残った代謝産物が「レムナントリポ蛋白」であることが報告されています。


ただし、この代謝産物は速やかに(すむやかに)血中から消失するので測定が困難であることが知られています。


その代わりに「レムナント様リポ蛋白コレステロール(RLP-C)」を測定して評価する方法があります。

血液中の脂質は食後の時間と共に変化するものと変化しにくいものがありますが、こ「レムナント様リポ蛋白コレステロール(RLP-C)」は、健常者では食後増加は少ないのですが、「虚血性心疾患」の患者さんや「糖尿病」の患者さんでは、食後増加し、なかなか低下しないとされています。
 

基準値は、空腹時で「7.5mg/dL以下」とされています。

 

しかし、「糖尿病」や「冠動脈疾患」の既往がある患者さんでは、5.2mg/dL以上でも「動脈硬化」を進行させる高リスクになりうることが知られています。

 

また、「内臓脂肪型肥満」のある患者群や「メタボリック症候群」のある患者群では、「LDLコレステロール値」が基準内であっても、「レムナント様リポ蛋白コレステロール(RLP-C)」が高値になっていたという報告もあります。


当院では、動脈硬化リスク因子として、「LDL-C」「TG」「Lip(a)」などを測定していたのですが、今後は「レムナント様リポ蛋白コレステロール(RLP-C)」値の測定が実施できればと考えています。

アフェレーシス療法(LDL-C吸着療法)は、最近、他の多くの施設でも施行されているわけですが、実際の臨床研究では、上に示した「RLP-C(レムナント様粒子コレステロール)」の値の低下が、

 

アフェレーシス療法(LDL-C吸着療法)の施行直後では、

50-70%低下することが報告されています

(2重膜濾過法では、膜の穴が小さい場合には一部のみ有効)。


もちろん、「アフェレーシス療法(LDL-C吸着療法)」は、

「RLP-C(レムナント様粒子コレステロール)」の値ばかりでなく、「LDL-C」「TG」「Lip(a)」などの値を全て低下させます。


JTKクリニックでは、10月15日から、検査をできる体制を整えましたが、保険診療での検査では、

これらのすべてのデータを一部の項目しか、確認できないのは、とても残念なことです。

 

今回も最後までお付き合いくださり

誠にありがとうございましたお願い

 

参考)

1)Eur Heart J 2021 Dec 14;42(47):4791-4806.

Triglyceride-rich lipoproteins and their remnants: metabolic insights, role in atherosclerotic cardiovascular disease, and emerging therapeutic strategies-a consensus statement from the European Atherosclerosis Society

Henry N Ginsbergら

 

2)Cirr Opin Lipidol. 2020 Jun;31(3):132-139. 

Remnant lipoproteins: are they equal to or more atherogenic than LDL?

Carlos A Aguilar Salinasら

 

3)Clin Res. 2016 Feb 19;118(4):547-63.

Triglyceride-Rich Lipoproteins and Atherosclerotic Cardiovascular Disease: New Insights From Epidemiology, Genetics, and Biology

Borge G Nordestgaardら

 

4)J Am Coll Cardiol 2021 Aug 31;78(9):960-993.
2021 ACC Expert Consensus Decision Pathway on the Management of ASCVD Risk Reduction in Patients With Persistent Hypertriglyceridemia: A Report of the American College of Cardiology Solution Set Oversight Committee
Salim S Viraniら

 

 

      (東京タワーが見える小道の風景)

         (筆者撮影)

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理事長・ 院長  

小笠原  均  (Hitoshi Ogasawara)   

医学博士, 内科医

(総合内科、リウマチ専門医)

(新潟大医学部卒)

 

【Coming Soon】

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<内科医ひとちゃんの抗老化医療最前線>

 

 

 

 

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自分の皮下脂肪から組織を採取し、「間葉系幹細胞」を培養して、自分自身の組織内に投与する「幹細胞治療」を開始しました。

 

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東京都千代田区麹町4-1-5麴町志村ビル2階

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こんにちは、内科医 ひとちゃんですニコニコ

 

10月に入りまして、最初の休日の午後になっています。

つい先日までの蒸し暑さがなくなり、クーラーなしでも快適に過ごせていたのですが・・・今日は少しだけ蒸し暑かったですね。

 

今朝(けさ)は、これまでに聞いたことがない美しい鳥の声で、目を覚まし(さまし)ました。

なんとも贅沢(ぜいたく)な休日の朝なのだろうと思いました。

 

皆さまの体調は、いかがでしょうか?

 

           (AIで画像を作成)

 

今回の話題は「変形性関節症(Osteoarthritis)」にしてみたいと思います。

加齢により、膝(ひざ)の痛みや指の第一関節、また、股関節に

痛みが出てくることは、少なくありません。

 

ときに「痛み」が激しいために「関節リウマチ」と診断され、抗リウマチ薬」を最初から処方されることもあるそうです。

 

「関節リウマチ」の診断は、血液検査、画像的な検査などが必須(ひっす)であり、慎重(しんちょう)に行うべきものなので・・・受診当日に「抗リウマチ薬」を処方されたという話を聞きますと、強い違和感(いわかん)を感じます。

 

「変形関節症(OA)」に話を戻しますと・・・2020年時点で世界の変形性関節症患者数は5億9500万人(全人口の7.6%)が「変形関節症(OA)」罹患しているとされています(参考1)

日本では,複数の研究により、国内の変形性膝関節症の患者数は2,530万人(男性860万人、女性1,670万人)という数値が、複数の医学文献で確認されています。

 

かつて、「変形性関節症(OA)」は・・・加齢に伴い、機械的な刺激(

関節の使い過ぎなど)で「関節軟骨」がすり減ってしまうことが原因

であると考えられていました。

 

軟骨の消失により、関節と関節の間である「関節裂隙(かんせつれつげき)」が狭くなってしまうことから、

骨どうしの間に摩擦(まさつ)が生じるなどして、炎症が起きたり、痛みが出る・・・と考えられていたわけですね。

 

           (図はお借りしました)

 

実際に「変形性関節症(OA)」は、以下のX線レントゲン画像のように進行性の疾患であり、最終的には「歩行障害」をきたす可能性もあります。 

以下の写真の図を見ていただくと、右に方が進行し、関節の隙間(すきま)が狭くなっていくのがお分かりいただけると思います。 

 

                                 (図はお借りしました)


先にお話をしたように「変形性関節症(OA)」は、単なる関節の「使い過ぎ」による「軟骨」の摩耗であるとされてきました。

 

しかし、現在では、免疫成分のひとつである「補体系」の活性化、老化細胞の蓄積とSASPの産生、炎症性サイトカインネットワーク、NF-κB(エヌエフ・カッパー・ビー)/MARKなどのシグナル伝達異常が相互の絡み(からみ)合う「全関節性の低度慢性炎症」であることが示されています(参考2,3)。

 

 

 (AIで画像を作成)

 

 

これに伴い、「変形性関節症(OA)」の治療は、大きく変化しています。主な変化は、次のようになります(参考4,5)。

 

以前の「変形性関節症(OA)」治療アプローチ(1990年代頃まで)は、以下のような特徴がありました。

  • 対症療法が中心:痛み止め(NSAIDsなど)と安静が主な治療
  • 手術への早期移行:症状が進行すると比較的早い段階で人工関節置換術を検討
  • 限られた選択肢:保存療法の選択肢が少なかった
  • リハビリの軽視:運動療法の重要性があまり認識されていなかった

これに対し、現在では「変形性関節症(OA)」に対するアプローチは、以下のように変化をしています(参考6,7)。


1.保存療法の充実

運動療法・リハビリ
陸上運動、水中運動などは痛み・機能・生活の質(QOL)を改善し、高齢者にも有効とされています。

2.体重管理


体重管理・減量 | BMI>28の場合、減量で症状の改善が得られる可能性が高いとされています。

3.内服治療


NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)は痛みのコントロールに有効ですが、長期使用や高齢者では副作用に注意が必要であるとされています。

4.注射療法


ヒアルロン酸注射は安全性が高く、症状改善効果が持続します。ステロイド注射は短期的な痛み緩和に有効ですが、長期使用は推奨されません。


親指や膝の「変形性関節症(OA)」では装具が痛み軽減に役立つことがありますが、機能改善効果は限定的とされています。

これらの変化の中で、最も大きな変化は、最も大きな変化は・・・

 

「症状が出たら手術をする」から

「できるだけ関節を温存し、機能を維持する」

 

という考え方への転換であると考えられています。

 

予防的アプローチと長期的な関節保護が重視されるようになったわけですね。

 

しかしながら・・・これらの「薬物療法(NSAIDs、アセトアミノフェン、コルチコステロイドなど)」は、主に痛みや炎症の緩和が目的であり、進行を止める(とめる)わけではなく、

 

また、リハビリなどの物理療法などでも、関節の構造的な進行(軟骨の破壊や変性)を完全に止めることはできないと考えられています。

 

グルコサミンやコンドロイチン硫酸など一部のサプリメントは進行抑制効果が示唆されていますが、効果は限定的であり、進行を完全に止めるエビデンスはないとされています。

 

では、「変形性関節症(OA)」の進行を抑える有効な治療というものは、現時点では存在しないのか〜と私も考えていたのですが・・・

 

最近、いくつかの論文を読んでいて・・・とても驚きました。

 

実は、「間葉系幹細胞(MSC)由来エクソソーム」を関節内腔内に投与することで。「変形性関節症(OA)」が進行することを抑えられる(おさえられる)のではないか・・・という報告が多くなっているのですね。
 

いったい、どのような原理で、「間葉系幹細胞(MSC)由来エクソソーム」が「変形性関節症(OA)に対して、有効性を示すというのでしょうか?

 

続きのお話は・・・後日の話題にしたいと思います。

 

素敵な1週間をお過ごしくださいキラキラ

それでは、またバイバイ

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<ブログ後記>10月7日

 

今回は、「間葉系幹細胞」由来のエクソソームが「変形関節症」

を改善する、または、進行を抑制する可能性がある・・・というお話

をさせていただきました。

 

間葉系幹細胞(MSC)とは、骨、軟骨、脂肪、神経などの様々な細胞に分化できる体性幹細胞の一種で、骨髄や脂肪組織、へその緒などに自然に備わっています。再生医療分野で注目されているのですね。


「変形性関節症(OA)」が単なる「関節の使い過ぎ」ではないことは、本文内でお伝えしたとおりです。

関節軟骨の変性・摩耗を主体とし、軟骨下骨の硬化、骨棘形成、滑膜炎などを伴う進行性の関節疾患が「変形性関節症(OA)」であるとされていましたが・・・さらに現在の病態には以下の要素が関与することが報告されています。


1)軟骨基質の変性: プロテオグリカンの減少、II型コラーゲンの断裂
 

2)軟骨細胞の機能異常: アポトーシスの亢進、代謝バランスの崩壊
 

3)炎症性サイトカインの産生: IL-1β、TNF-αなどによる軟骨分解酵素(MMPs)の活性化
 

4)軟骨下骨の変化;: 硬化、微小骨折、骨嚢胞形成

などが報告されています。

膝関節、股関節、手指関節:DIP間接(第1関節)、PIP関節(第2関節)などが好発部位ですが、
脊椎(椎間板・椎間関節)なども「変形性関節症(OA)」にも生じることがあり、進行性であると考えられています。

では、「変形性関節症(OA)」に対し、「間葉系幹細胞由来のエクソソーム」は、どのような効果を示すのでしょうか?

動物実験を含む多くの報告の中で、以下のようなことが報告されています。
 「間葉系幹細胞(MSC)エクソソームを関節内投与すると、軟骨破壊の抑制、炎症の軽減、痛みの緩和、軟骨・骨の再生促進が認められています(参考8,9,10,11)

また、ヒト胚性間葉系幹細胞由来のエクソソームの関節内注射は、骨軟骨の再生と修復を促進することや
コラーゲンII型やアグリカンなど軟骨成分の発現を増加させ、MMP-13やADAMTS5など分解酵素や炎症性サイトカイン(IL-1β, TNF-α, IL-6)を抑制することも報告されています。

 

さらに、痛みの軽減や骨リモデリングの正常化、マクロファージの抗炎症型(M2)への誘導なども報告されています(参考12,13,14,)

間葉系幹細胞由来のエクソソームの関節内注射は、「抗炎症」および「抗酸化マーカー」を強化することにより、変形性関節症の症状および進行を効果的に軽減する可能性も報告されています。

 

難点は、ヒトでの大規模な試験というものは、実施されていないところですが、個別の症例報告では有効性が示されていますし、

実際に治療を行なった方では、痛みなどの症状が軽減したという声が多く聞かれます。
 

一部の論文では、iPS細胞由来のエクソソームの方が効果が強いのではないかとする報告もあるのですが・・・まだまだ、論文が少ないのが現状です(参考15)

いかがでしょうか?・・・かなりの「期待」を持ってしまうのは、私だけでしょうか?

 

もちろん、なにがなんでも・・・「間葉系幹細胞由来のエクソソーム」の関節内注射がよいのだと強調するつもりはありませんし、

 

さらに「iPS細胞由来のエクソソーム」が、さらに有効かもしれないというつもりは、ありません。

 

なぜなら、「変形関節症(OA)」の治療方針というものが、ある程度は確立しているからですね。

しかしながら、それらの方法では「進行」を止められないという厳しい(きびしい)現実もあります。

 

近い将来、ヒトでの大規模な試験で良好な治療成績が出て、

「間葉系幹細胞」や「iPS細胞」由来のエクソソームが治療薬となった・・・などという日がやってくるのかもしれませんね。

 

今回も最後までお付き合いくださり

誠にありがとうございましたお願い

 

【参考】

1)Lancet Rheumatol. 2023 Aug 21;5(9):e508-e522.
Global, regional, and national burden of osteoarthritis, 1990-2020 and projections to 2050: a systematic analysis for the Global Burden of Disease Study 2021
GBD 2021 Osteoarthritis Collaborators 

 

2)Bone Res. 2022 Sep 20;10(1):60.

Current understanding of osteoarthritis pathogenesis and relevant new approaches 

 Liping Tongら 

 

3) Int J Mol Sci. 2021  Aug 26; 22(17): 9208. 

Cytokines and Chemokines Involved in Osteoarthritis Pathogenesis 

Vilim Molnarら 

 

4)Signal Transduct Target Ther. 2023 Feb3; 8(1):56.

Osteoarthritis: pathogenetic signaling pathways and therapeutic targets

Qing Yaoら 

 

5) Int J Mol Sci. 2021 Mar 5;22(5):2619.
Recent Updates of Diagnosis, Pathophysiology, and Treatment on Osteoarthritis of the Knee
Sunhee Jangら

 

6) J Clin Med.2020 Apr 18;9(4):1167. 

The Role of Physical Activity as Conservative Treartment for Hip and Knee Osteoritis in Older People: A systematic Review and Meta-Analysis 

Biagio Zampognaら

 

7) World J Orthop.2022 Mar 18; 13(3):212-229. 

Consective treatment of Knee osteoarthritis: A review of the literrature.

Wei Boon Limら

 

8)J Cell Mol Med. 2021 Oct;25(19):9281-9294.
Therapeutic effects of bone marrow mesenchymal stem cells-derived exosomes on osteoarthritis
Yi Jinら


9)Cell Tissue Res. 2020 Jul;381(1):99-114.
 Exosomal miR-9-5p secreted by bone marrow-derived mesenchymal stem cells alleviates osteoarthritis by inhibiting syndecan-1
Zhe Jinら

10)Stem Cell Res Ther. 2017 Mar 9;8(1):64.
Comparison of exosomes secreted by induced pluripotent stem cell-derived mesenchymal stem cells and synovial membrane-derived mesenchymal stem cells for the treatment of osteoarthritis
Yu Zhuら

11)Osteoarthritis Cartilage. 2016 Dec;24(12):2135-2140.
Exosomes derived from human embryonic mesenchymal stem cells promote osteochondral regeneration
S Zhangら

 

12)Stem Cell Res Ther. 2020 Jul 10;11(1):276.
Bone marrow mesenchymal stem cell-derived exosomes protect cartilage damage and relieve knee osteoarthritis pain in a rat model of osteoarthritis
Lei Heら

13)Biotechnol J. 2020 Dec;15(12):e2000082.
Mesenchymal Stem Cell-Derived Exosomes for Effective Cartilage Tissue Repair and Treatment of Osteoarthritis
Young Guk Kimら

14)Discov Med. 2024 Jul;36(186):1420-1429.
The Role of Intra-Articular Delivery of BM-MSCs-Derived Exosomes in Improving Osteoarthritis: Implication of _circYAP1_/ _miRNA-21_/ _TLR7_ Axis
Shimaa Saad El-Dinら

 

15)Stem Cell Res Ther. 2017 Mar 9;8(1):64.
Comparison of exosomes secreted by induced pluripotent stem cell-derived mesenchymal stem cells and synovial membrane-derived mesenchymal stem cells for the treatment of osteoarthritis
Yu Zhurら

 

                 (アマン東京近くにある大手森の風景)

            (筆者撮影)

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小笠原  均  (Hitoshi Ogasawara)   

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こんにちは、内科医 ひとちゃんですニコニコ

 

暑さは一段落している様で、明け方に外からは「虫の声」が聞こえていました。

何かしらの「秋」に関する話のネタはないものか?・・・

と昔、若い頃に書いていたネタ手帳を開いてみますと、次のようなものがありました。

 

米国の作家に「F・スコット・フィッツジェラルド(F. Scott Fitzgerald)」という方がおりまして、次のような言葉を見つけました。

 "Life starts all over again when it gets crisp in the fall." 

 

「秋の空気が澄んでくると、人生が再び始まる」

 

フィッツジェラルドの代表作である「グレート・ギャツビー」(The Great Gatsby) のなかに出てくるセリフの言葉の様です。

 

「グレート・ギャツビー」を原作にして作られた映画が2013年に

「レオナルド・ディカプリオ」が主演の映画「華麗(かれい)なるギャッピー」が制作されています。

 

 

しかしながら、「華麗(かれい)なるギャッピー」が制作された2013年には、このような「メモ」書きは、とっくに止めて(やめて)いたので・・・このような言葉が書いてあるのか?・・・としばらく考えていたのですが・・・

 

実は、「F・スコット・フィッツジェラルド」は、「老人と海(The Old Man and the Sea)」の作品を書いた「ヘミング・ウェイ」の友人であったのですね。

 

「老人と海(The Old Man and the Sea)」の小説がとても好きで、いつもカバンに入れてあったので、「ヘミング・ウェイ」の友人であった「F・スコット・フィッツジェラルド」の言葉を誰かに教えてもらったのだろうと思い出しました。

 

昔の大人は「粋(いき)」でしたからね。

 

ちょっと、前置きが長くなりましたが・・・

皆さまの体調は、いかがでしょうか?

 

 (AIで画像を作成)

 

今回は、「睡眠(すいみん)」についての話題にしたいと思います。

 

最近、高齢者でも7時間程度は、「睡眠時間」をとった方がよい・・・

という話題があるそうで、「7時間は眠れないから、睡眠薬を処方してほしい」とおっしゃる方が増えているのだそうです。

 

私自身も患者様から同様の依頼(いらい)をされたこともあります。

 

そこで、今回は「加齢(かれい)」によって、睡眠の障害や睡眠時間が短縮が起こるのは、なぜなのか?・・・というお話をしてみたいと思います。

 

実は・・・「加齢」により、睡眠の質の悪化や睡眠時間の減少するのは、次のような理由が報告されています。

 

それは・・・

(1)「サーカディアンリズム」、体内時計の乱れ

 (2)光入力経路の障害、(3)メラトニン分泌低下

そして、(4)恒常性維持機構の変化

 

という、主に4つの原因があると考えられているわけです。

 

そして、上記のようなことが起こる原因としては、次のような病態(びょうたい)のメカニズムがあると考えられているようです。

それは、「加齢」により、以下のように

 

(1) 視交叉上核(SCN)の機能低下

(2)網膜からの入力減弱

(3)メラトニン分泌低下
(4)恒常性維持機構の変容(へんよう
 
などが起こる可能性があるというもので、現代の「老年睡眠科学」における中心的な話題であり、「加齢に伴う(ともなう)睡眠障害」の「病態生理(びょうたいせいり)」であると考えられているのだそうです。
 
つまり、「加齢」により「睡眠(すいみん)」に影響が出るのは・・・きちんとした理由があるということになります。
 
いったい、どのような「メカニズム」なのかを詳しくお話をしてみたいと思います。
 

(1) 視交叉上核(SCN)の機能低下

 

「視交叉上核(SCN)」がどのようなことに関わっているか・・・と言いますと・・・この領域は、「サーカディアンリズム(概日リズム)」のマスタークロック(中央時計)として機能する重要な脳領域となります。

 

サーカディアンリズム(概日リズム)」とは、人間を含むほとんどの生物に備わる約24時間周期の「体内時計」が刻む生体リズムのことでしたよね。

睡眠と覚醒、体温や血圧、ホルモン分泌などがこのリズムによって調整され、地球の約24時間の自転周期に適応しています。

 

そして、このメカニズムの中心となるのが、「視交叉上核(SCN)」ということになります。

 

さらに「視交叉上核(SCN)」には、「バソプレシン(AVP)発現ニューロン」というものが存在しており、これらは「分子時計」のように

強固な概日振動(がいじつしんどう)を示す『時計遺伝子』を発現しているのですね。

 

ヒトの死後脳研究では、高齢者において「バソプレシン(AVP)ニューロン」の「季節性リズム」が消失していることが示されています

(参考1)

さらに、これらのニューロンの「日内変動」もまた失われることが明らかにされています(参考2).

 

そして、このような「マスタークロック(中心時計)」のレベルでの信号の低下こそが、睡眠・覚醒、体温、ホルモン分泌といった下流のリズムにおいて観察される振幅の減弱や断片化の根本的な駆動要因となるとも報告されています(参考3) 。

 

image

 (AIで画像を作成)

 

(2)網膜からの入力減弱

 

加齢に伴い、水晶体の黄変、青色光透過率の低下、および「内在性光感受性網膜神経節細胞(ipRGCs)」の機能低下が生じると考えられています。詳しくお話をしますと、以下のようになります。

 

加齢により、水晶体の光吸収増加と瞳孔の縮小(老人性縮瞳)と関連しており、これらは網膜への到達光量、特に「サーカディアンリズム(概日リズム)」の「光受容」に重要な短波長光(青色光、波長約480 nm)を進行性に減少させる とされています(参考4).

 

この影響は劇的であり、45歳では10歳児の約半分、80~95歳ではわずか10%の概日光受容しか持たない可能性があると報告されています。

 

(3)メラトニン分泌低下

 

「メラトニン分泌」が加齢とともに低下することは、「サーカディアンリズム(概日リズム)」の加齢研究の柱であるそうですが、

多くの研究で「メラトニン分泌」の低下を確認しています(参考5,6)

 

この「メラトニン分泌」の低下は、「網膜〜視交叉上核(SCN)〜松果体系(しょうかたいけい)」の機能低下と関連しており 、「アルツハイマー病」のような神経変性疾患では特に顕著で、睡眠障害と相関することが報告されています(参考6)

 

(4)恒常性維持機構の変化

 

「睡眠・覚醒サイクル」は、「サーカディアンリズム(概日性リズムのプロセス(プロセスC)」と「恒常性のプロセス(プロセスS)」の相互作用によって調節されるのだそうです(参考7)。

 

そして、これには「アデノシン」という物質が関与しているのですが、.「アデノシン」は、脳内で「睡眠圧」を作り出す重要な物質です。

 

「睡眠圧(すいみんあつ)」とは、起きている時間が長くなるにつれて、脳内に蓄積される脳内に蓄積する「アデノシン」などの睡眠物質によって高まるという「眠りたい」という生理的な欲求ことになります。

 

「睡眠圧」が高いほど眠りが深くなり、睡眠中に「アデノシン」が分解・排出されることで「睡眠圧」は下がるとされています。

 

「アデノシン」の蓄積は本来「睡眠圧」を高める役割ですが、高齢者では受容体の感受性の低下により、十分な睡眠誘発効果が得られなくなってしまうのだそうです(参考8) 。

 

高齢者では、脳内の「アデノシン」濃度が上昇する一方、受容体の感受性低下により「睡眠圧」の本来の機能が低下し、

「睡眠の質「が損なわれやすくなります。これは「加齢」に伴う睡眠障害の一因と考えられるそうです。

 

これらのことが、「老年睡眠科学」で述べられている「高齢者の睡眠障害」

を起こす詳細なメカニズムとなります。「老年睡眠科学」とは、なかなか、難しそうな分野ですね。

 

では、この「老化」に伴う、さまざまな「睡眠障害」をどのように治療していけばよいのか?・・・という問いの答えは、後日の話題にしたいと思います。

 

素敵な1週間をお過ごしくださいキラキラ

 

それでは、またバイバイ

-------------------------------------------------------------------

<ブログ後記 >9月30日

 

今回は、加齢により「睡眠」の障害が起こりやすい・・・というお話をさせていただきました。

 

ちょっと、古い話になりますが、日本のバブル期(1986年12月から1991年2月頃)までは、老いも若きも「眠る時間」さえも、もったいない・・・と、夜遅くまで仕事をしたり、または、仕事のあとに

お酒を飲みにいってなどと、精力的に日常を過ごしていました。

 

それが・・・7〜8時間の「睡眠」が必要不可欠と言われましても、なんとなく、すんなりと心に入っていかないような気もします。

 

ある初老の男性の方が、自分の「不眠傾向」は、バブル期を精力的に生きた名残り(なごり)に違いない(ちがいない)と笑っていらっしゃったのを思い出します。

 

しかしながら、高齢により「睡眠障害」が起こりやすくなるのは、本文内でお話をしたとおりですし、年齢に問わず「睡眠不足」は細胞レベルの「老化」を加速させるという「エビデンス」が複数の研究で報告されています(参考9)。
 

さらに「睡眠の質」が悪いヒトにおいて、DNAのメチル化など、エピジェネティックな「老化」を加速させるとも報告されています

(参考10)。


もちろん。中年期、及び、高齢者に多い「睡眠の断片化」を伴うタイプの睡眠も「老化」をさらに加速させる可能性がある・・・などとも報告されています(参考11)。

また、短い「睡眠時間」と「不眠症」は、「エピジェネティック年齢」の加速と関連しており、これらの状態を持つヒトは、実際の年齢より高齢な「生物学的年齢」になっていることが、示されています(参考12)。

さらに「睡眠障害」や「不眠」の症状、「長時間睡眠」は、

「テロメア短縮」と関連するなどと聞くと・・・

 

そこまで、脅す(おどす)のか?・・なんて、不愉快(ふゆかい)に思われる方もいらっしゃるはずです。

 

しかしながら、これは本当の話でして・・・実際に不眠症は70〜88歳の成人において、PBMCのテロメア長の短縮と関連しており、臨床的に重度の睡眠障害が細胞老化を促進する可能性が特に晩年において示唆されています(参考13)。

この「PBMC」とは、Peripheral Blood Mononuclear Cellsの略称で末梢血に含まれる単核細胞を意味しており、リンパ球(T細胞、B細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞等)、樹状細胞、などが含まれており、これらの免疫細胞において、テロメアの短縮を示していくことは、
一概(いちがい)には言えませんが・・・加齢に伴う「免疫力の低下」と関係がある可能性もあります。

さらに睡眠時間が7時間未満の人は、7時間以上眠る人に比べて白血球(免疫細胞)の「テロメア」が短い傾向があり、これは年齢や性別、BMIなどの影響を除いても認められるとも報告されています。

では、7時間という長さですが、大規模コホート研究の結果によれば、睡眠時間が7時間未満の成人は7時間以上眠る人に比べて、

 

白血球の「テロメア」の長さが有意に短いことが示されています。
特に高齢者や男性でこの傾向が強く、短い睡眠は加齢に伴うテロメア短縮を加速させる可能性が指摘されています(参考14)

ここまでくると、もうギブアップ(Give up)するしかなく、反論のしようがない・・・とも思えてきますよね。

次に本文内でもお話をした「高齢者の睡眠障害」に対して、どのような方法が有効なのか?・・・ということをまとめてみたいと思います。

 

その前にまず、高齢者の「睡眠」の特徴は、どのようなものか?・・・を少し詳しく見てますと、次のようなことが言われています。

・睡眠の前進化(早寝早起き)と振幅低下(昼夜差の減弱)がある
・入眠困難よりも中途覚醒・早朝覚醒が多い
・睡眠の断片化と日中傾眠がある

などのように、加齢に伴う「行動リズム」の規則性低下が一貫して報告されています。

これに対して、推奨(すいしょう)されていることは、以下のようになります。
 

1.生活・環境調整(第一選択:強く推奨されている)

  • 朝の高照度光(2,000--10,000 lx目安) 

  高齢者の不眠に対し、朝の決まった時間に高照度光が入眠/中途  

  覚醒・睡眠効率の改善に有効。

 

  • 夕方〜夜の減光・ブルーライト抑制

  高齢者では光感受性が変化しており、夜間の過剰光はメラトニン 

        抑制→位相遅延につながるため、減光・画面時間短縮が推奨。


2.日中活動量の確保(歩行/屋外光曝露の併用) 

 

歩行+屋外光が睡眠改善に寄与する


3..白内障の治療

などとなります。
 

 

簡単にまとめますと・・・朝起床後30--60分の屋外散歩(できれば午前9--11時の自然光)、就床2〜3時間前から室内を暖色・低照度へ、毎日同じ時刻の起床を徹底(てってい)する・・・ということになりますね。

これで、改善しなければ・・・次にくるのが「薬物療法」ということになります。
 

いわゆる「睡眠剤(すいみんざい)」を服用するということですね。

これには、次のような薬剤が推奨(すいしょう)されています。


(A)メラトニン受容体作動薬(ラメルテオン:ロゼルム(商品名)

「中等度の有効性だが高い安全性」という評価は正確である。

ラメルテオンは、高齢者の入眠時に対して有効であることが示されいる。

 加齢に伴う「メラトニン低下」を考慮すると、「メラトニン補充」という理論的根拠は生理学的に妥当であると言えます

(B).デュアルオレキシン受容体拮抗薬:スボレキサント(ベルソムラ)および、レンボレキサント(デエビゴ)

高齢者における「入眠」と「睡眠」の維持の両方にに対して、肯定的に評価している点は、広範な第III相臨床試験データによっても示された薬剤とされています。

 

上記の薬剤は、高齢者の「睡眠障害」に有効とされているわけですが、通常、よく「睡眠障害」に対して、標準治療として用いられる「ベンゾジアゼピン系薬剤」は、高齢者には投与しない方がよいとされています。

 

その理由は、転倒、骨折、認知症、その他の重大な有害事象のリスクが、多くなるからという理由になります。

また、ベンゾジアゼピン系薬剤では、認知機能障害、呼吸抑制のリスクが大きくなるとされています。

 

このために高齢者のさまざまな「睡眠障害」に対しては、「ベンゾジアゼピン系薬剤」の投与を避けて’避けて、先にあげたや

A)メラトニン受容体作動薬B).デュアルオレキシン受容体拮抗薬:スボレキサント(ベルソムラ)および、レンボレキサント(デエビゴ)

を用いた方が、リスクが小さく、かつ、有効性が高いとされているわけですね。

 

本文の冒頭にご紹介した手帳に書いてあった文章の中に

 

〜青年よ、昼夜を問わず

 己(おのれ)の決めた一点に

 知恵と誇りの水滴を一滴ずつ落とし続けるべし

 されば、岩盤に穴があき

 やがて、岩盤は宿命の破壊を遂げる(とげる)

                 Y(名前)〜

 

とありました。

 

宴会の席で、今は他界されたYさんが直接、自筆で書いて下さったものです。

 

「岩盤は宿命の破壊を遂げる」とは、古い言い方で、現代風に言えば

「岩盤は、必ず破壊される」となります。

 

若き日の私は、何を「岩盤」のように破壊することが困難に思っていたのか?・・・と、ここ数日考えていたのですが、どうしても思い出せません。

 

しかしながら、かつて、青年であった私は、残念ながら「短時間の睡眠」が多い高齢者であり、レンボレキサント(デエビゴ)を服用して、ベッドに入ることが多くなっていることに不思議な感じがします笑い泣き

 

今回も最後までお付き合いいただきまして

誠にありがとうございましたお願い

 

 

 

参考)

1)Neurobiol Aging. 1995 Nov-Dec;16(6):965-71. 

Influence of aging on the seasonal rhythm of the vasopressin-expressing neurons in the human suprachiasmatic nucleus 

MA Hofmanら

 

2)Brain Res. 1994 Jul 18;651(1-2):134-42. 

Alterations in circadian rhythmicity of the vasopressin-producing neurons of the human suprachiasmatic nucleus (SCN) with aging

MA Hofmanら

 

3)J Clin Invest. 2017 Feb 1;127(2):437–446. 

The aging clock: circadian rhythms and later life

Suzanne Hoodら

 

4)OPhthalmic Physiol Opt. 2003 Mar;23(2):181-7. 

Age, lens transmittance, and the possible effects of light on melatonin suppression 

W N Charmanら

 

5)J Pineal Res. 2019 May;66(4):e12562. 

Melatonin suppression is exquisitely sensitive to light and primarily driven by melanopsin in humans 

Abhishek S Prayagら

 

6)J PIneal Res. 2019 May;66(4):e12562. 

Melatonin suppression is exquisitely sensitive to light and primarily driven by melanopsin in humans 

Abhishek S Prayagら

 

7)Sleep Med Clin. Author manuscript;,2015 15;10(4):423ー434

 Aging and Circadian Rhythms 

Jeanne F Duffyら

 

8)Neurobiol Aging. 2006 Feb;27(2):351-60.

Age-related changes in adenosine metabolic enzymes in sleep/wake regulatory areas of the brain

Miroslaw Mackiewiczら


9) Innovation in Aging_, Volume 8, Issue Supplement_1, December 2024, Page 180
SLEEP: A GEROSCIENCE TARGET
Judith Carrollら 

 

10)Clin Epigenetics.2024 Jul 16;16(1):92.
The association between sleep quality and accelerated epigenetic aging with metabolic syndrome in Korean adults
Ho-Sun Leeら

 

11)Innovation in Aging, 2018, Vol. 2, No. S1
Facets of sleep health at different life course stages predicting cardiometabolic risk.
O. Buxtonら

 

12)Psychosom Med .2024 Jun 1;86(5):453-462.
Short Sleep and Insomnia Are Associated With Accelerated Epigenetic Age
Cynthia D ら

 

13)Sleep.2016 Mar 1;39(3):559-64.
Insomnia and Telomere Length in Older Adults
Judith E Carrollら

 

14)J Gerontol A Biol Sci Med Sci. 2022 Feb 3;77(2):243-249.
Sleep Duration, Health Promotion Index, sRAGE, and ApoE-ε4 Genotype Are Associated With Telomere Length in Healthy Australians
Varinderpal S Dhillonら

 

(アマン東京 ラウンジの風景)

              (筆者撮影)

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理事長・ 院長  

小笠原  均  (Hitoshi Ogasawara)   

医学博士, 内科医

(総合内科、リウマチ専門医)

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こんにちは、内科医 ひとちゃんですニコニコ

 

暑さは和らいで(やわらいで)いるのですが・・・曇りがちのすっきりしないお天気になっていますね。

 

秋晴れの透きとおるような青空を早く見てみたい・・・などと思ったりもします。

 

イギリスの小説家、フランシス・ブルット・ヤングは次のような言葉を残しています。

 

An autumn garden has a sadness when the sun is not shining.

陽(ひ)が輝いていないとき、秋の公園(庭)には悲しみがある

 

まさに今日の曇り空は、寂しい冬を予感させるものでした。

 

皆さまの体調は、いかがでしょうか? 

 

  (AIで画像を作成)

 

今回は、「新型コロナウイルス感染」後に、「自己免疫疾患」を発症する可能性があるか?・・・というお話をしてみたいと思います。

 

いまさら、「新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)」の話なの?:・・と思う方は、多いかもしれませんね。

 

「オミクロン株」に変異してからは、重症化(じゅうしょうか)する可能性は少なくなりましたし、米国からは「新型コロナウイルス」のワクチンは、健康に害があるなどという発言もちらほらと聞こえてきます。

 

「新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)」は、恐れることはない・・・などと勇ましい(いさましい)声も聞こえてきますよね。

 

しかしながら、「新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)」感染が

各種の「自己免疫疾患」の発症リスクを20-43%増加させることが、複数の大規模国際研究により確立されているのですね。

 

「自己免疫疾患」とは、「リウマチ膠原病疾患」ということになりますね。

複数の論文において、「新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)」感染後に「自己免疫疾患」を発症を疑うような「自己抗体」の出現が報告されているわけです。

 

特に重要な知見は以下の通りです:

 

「ロングCOVID」患者の83%で潜在性自己免疫(1種類以上の自己抗体陽性)が確認されています (参考1)。

 

さらに「ロングCOVID」患者の62%でポリ自己免疫(2種類以上の自己抗体陽性)に関する抗体の発現が報告されています

 

その「自己抗体」は、どのようなものがあるか?・・・と言いますと、次のようなものになります。

 

抗核抗体(ANA)、全身性エリテマトーデス(SLE)、抗リン脂質抗体に関連する抗体など、、さまざまな「自己抗体」の出現が報告されています。特に重症例や入院患者で高頻度に認められ、健常者と比較して有意に多いとされているのですね(参考2)。



    (AIで画像を作成)

 

ところで、「Long -Covid」自体は、どのような症状を起こすのでしょうか?

少し、整理をしておきたいと思います。

 

「新型コロナウイルス(COVID-19)」感染後、急性期を過ぎても多様な症状が長期間持続する「Long-COVID(ロングCOVID)」が世界中で報告されています。

 

これらの後遺症は、身体的・精神的・社会的な健康に大きな影響を及ぼしていると考えられています。

 

例えば、「Long-COVID(ロングCOVI)」の症状として報告されているのは、以下のようなものになります。

 

疲労(58%)、頭痛(44%)、注意力障害(27%)、脱毛(25%)、呼吸困難(24%)など、50種類以上の長期症状が報告されています(参考3,4)。


これらの症状に加えて、「自己免疫疾患」を発症すると聞きますと

・・・それは、本当なのか?・・・疑いたくもなりますよね。

 

もちろん、「自己抗体」が、血液中に存在するだけでは、「自己免疫疾患」を発症したとはいえません。あくまでも「自己抗体」は、その多くが診断を正確に行うための「参考」とされる場合が多いと考えられます。

 

では、実際に「自己免疫疾患」を発症することは報告されているのでしょうか?

 

残念ながら・・・「新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)」の感染後に、血管炎、多発性筋炎、全身性エリテマトーデス(SLE) ,サルコイドーシス、自己免疫性肝炎、ギランバレー症候群などの発症が報告されています(参考2)

 

では、なぜ、新型コロナウイルスの感染から、「自己免疫疾患」が発症するのでしょうか?

 

その詳細なメカニズムは、「自己免疫疾患発症」のヒントにもなるのではないかと思ったり、

何よりも「自己免疫疾患」を発症したときの早期発見は極めて、重要であるというお話につなげていきたいわけですが・・・続きは、後日の話題にしたいと思います。

 

素敵な1週間をお過ごしくださいキラキラ

 

それでは、またバイバイ

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<ブログ後記>9月23日

今回は新型コロナウイルス(COVID-19)の感染をきっかけに
自己免疫疾患を発症する可能性があるというお話をさせていただきました。

通常の自己免疫疾患(リウマチ膠原病疾患)の主な発症メカニズムは、遺伝子変異、分子修飾異常、免疫反応、加齢や環境要因などのうち、複数の要因が多層的に関与していると考えられています。

また、腸内細菌のバランス異常が免疫系の恒常性を崩し、自己免疫反応を誘発する可能性がなども示唆(しさ)されています 、

そして、ウイルス感染が自己免疫疾患の発症のトリガーになる可能性も指摘されています。


ウイルス感染がトリガーとなり、自己免疫疾患を発症する主なメカニズムは、次のようになります。

1)分子相同性(molecular mimicry)

ウイルス抗原が自己抗原と類似しているため、免疫系が誤って自己組織を攻撃する(参考5,6)

2)バイスタンダー活性化(bystander activation)

ウイルス感染による炎症環境で、自己反応性T細胞が非特異的に活性化される

3)エピトープ拡散(epitope spreading)

ウイルス感染で組織損傷が起こり、自己抗原が新たに免疫系に提示されることで自己免疫反応が拡大する

4)ウイルスによるB細胞の不死化や免疫制御破綻

特定のウイルス(例:EBウイルス)はB細胞を変化させ、自己抗体産生を促進する(参考7)

その他にも・・・
コクサッキーウイルス は、 1型糖尿病 を発症させるトリガーとなる可能性が示され、そのメカニズみは「分子相同性 」であるとされていますし(参考8)

インフルエンザウイルス は。ギラン・バレー症候群を発症させるトリガーとなる可能性が示され、そのメカニズみは
「バイスタンダー活性化等 」であるとされています(参考9)。

さらにヘルペスウイルス |は、多発性硬化症、自己免疫性角膜炎を発症させるトリガーとなる可能性が示され、そのメカニズみは
「分子相同性」であるという報告もあります(参考10)

 

つまり、「自己免疫疾患」の発症のトリガー(引き金)のひとつに

「ウイルス感染」かもしれないというわけですね。

同様に「新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)」感染後に自己免疫疾患を発症しやすくなる傾向が明確に報告されています。特に重要な知見は以下の通りです:

1.ロングCOVID患者の83%で潜在性自己免疫の病態
(1種類以上の自己抗体陽性)が確認 ( 参考11)
 

62%でポリ自己免疫(2種類以上の自己抗体陽性)を呈することなどが報告されています。

実際の自己免疫疾患発症例としては、全身生エリテマトーデス(SLE)、重症筋無力症、Graves病、自己免疫性溶血性貧血、

多発筋炎(PM)、自己免疫性甲状腺炎など

が報告されているようです。

また、検出頻度の高い自己抗体としtr。報告されているものは

  • インターフェロン(IFN-α, IFN-ω)抗体

 

  • 抗AGTR1抗体(Gタンパク質共役型受容体などに対する抗体)
  • IL-6, IL-1, TNF-αなどに対する抗体
  • 抗核抗体(ANA)
  • 抗リン脂質抗体(抗カルジオリピン、抗β2グリコプロテインI抗体など)
  • ACE2抗体
  • 抗好中球細胞質抗体(ANCA)

 

などが報告されています。

自己免疫疾患のような病態を示すは「ロングCOVID」の顕著な特徴であり、自己抗体の種類・量がロングCOVID症状の重篤度と相関し
免疫系恒常性の破綻(樹状細胞、Treg、NK細胞の異常)が多臓器症状を誘発するなどとも考えられているようです。

これらの症状に対して、以下のような治療も検討されているようです。

Long COVIDに伴うsmall fiber neuropathy(SFN)に対して、静注免疫グロブリン(IVIg)療法が有効である可能性を示す症例報告や小規模研究が複数存在しますが、エビデンスはまだ限定的と考えられているようです(参考12)。

また、「B細胞除去療法」では病原性B細胞の選択的除去とプラスマフェレーシスとの併用可能性が検討されていたりもするのですが、現時点では、エビデンスに乏しいとされています。

新型コロナウイルス感染(COVID-19)は、風邪(かぜ)みたいなものとする風潮もありますが、

当初は分からなかった「自己免疫様の状態」が誘導されることを考えると、やはり、感染しない方が良いわけですし、
 

Long-Covidに罹患(りかん)し、体調が思わしくない方も
自己免疫疾患を発症してはいないかを専門医療機関でチェックしてもらう必要があるかもしれませんね。

 

今回も最後までお付き合いいただきまして

誠にありがとうございましたお願い

 

参考)

1)J Transl Med. 2022 Mar 16;20(1):129.

Autoimmunity is a hallmark of post-COVID syndrome

Manuel Rojasら

 

2)Cells. 2021 Dec 20;10(12):3592.  Abraham Edgar

New Onset of Autoimmune Diseases Following COVID-19 Diagnosis

Gracia-Romasら

 

3)BMJ 2021 Jan 22:372:n136.

Managing the long term effects of covid-19: summary of NICE, SIGN, and RCGP rapid guideline

Waquaar Shahら

 

4)Cells. 2022 Dec 1;11(23):3882. 

Cardiovascular, Pulmonary, and Neuropsychiatric Short- and Long-Term Complications of COVID-19

Malgorzata Kobusiak-Prokopowiczら


(5)Viruses. 2023 Mar 18;15(3):782.
The Role of Viral Infections in the Onset of Autoimmune Diseases
Bhargavi Sundaresanら

(6)Viruses. 2019 Aug 19;11(8):762.
Viruses and Autoimmunity: A Review on the Potential Interaction and Molecular Mechanisms
Maria K Smattiら

 

(7)Nat Rev Rheumatol. 2024 Nov;20(11):729-740.
 Epstein-Barr virus as a potentiator of autoimmune diseases
William H Robinsonら

 

(8)Clin Microbiol Rev. 2006 Jan;19(1):80-94.
Molecular mimicry, bystander activation, or viral persistence: infections and autoimmune disease
Robert S Fujinamirら

 

(9)Front Immunol. 2025 Apr 3:16:1558386.
 The intersection of influenza infection and autoimmunity
Shunyu Xieら

 

(10)Science. 1998 Feb 27;279(5355):1344-7.
 Molecular mimicry by herpes simplex virus-type 1: autoimmune disease after viral infection
Z S Zhaoら

 

(11)J Transl Med. 2022 Mar 16;20(1):129.
 Autoimmunity is a hallmark of post-COVID syndrome
Manuel Rojasら

 

(12)Muscle Nerve. 2023 Jul;68(1):E29-E30.
 Intravenous immunoglobulin for immune-mediated small fiber neuropathy with TS-HDS and FGFR-3 antibodies: The jury is still out
Lawrence A Zeidmanら

 

(マンダリンオリエンタルH.からのスカイツリ-)

             (筆者撮影)

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小笠原  均  (Hitoshi Ogasawara)   

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(総合内科、リウマチ専門医)

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こんにちは、内科医 ひとちゃんですニコニコ

 

9月も半ばになろうとしていますね。

3連休で、旅に出ているなどという方も多いかもしれませんね。

 

先日は、診療を終えた後に「AI(人工知能)」の専門家のお話を聞く機会がありました。

軽い気持ちで出かけたわけですが・・・聞かせていただいた話は、

エキサイティングな内容でありまして、少し驚きました。

 

世界的には「AI(人工知能)」を仕事に取り入れることで、その成果の質(クオリティー)はアップしており、また、仕事の納期(仕事が完成する日)までの日程が、どんどんに短くなる傾向があるのだそうです。

 

それなのに、皆が競争しますので、仕事の報酬は低く、抑制されつつある・・・という奇妙(きみょう)な現象が起きているのだとか。

 

つまり、「AI(人工知能)」を使うことが前提になっている・・・というもですね。

 

ちなみに新しい知識、能力を身につけていかなければ・・・私のような「内科医」は「AI(人工知能)」に駆逐(くちく)される日は、近いのだとか。

 

この話が本当であるとするなら・・・なかなか、大変な時代になっていくのかもしれませんね。

 

皆さまの体調は、いかがでしょうか? 

 

                                   (AIで画像を作成)

 

今回は、少し面白い話題にしたいと思います。

それは、「豚(ぶた)の腎臓(じんぞう)」を腎不全を持つヒトに移植するというお話です、

 

この背景には、次のような事情(じじょう)があるとされています。

 

慢性腎不全患者に対する根治療法として、「腎移植(じんいしょく)」は最も有効な治療選択肢であると考えられているのですが、ドナー臓器の絶対的不足が深刻な医療問題となっているそうです。

 

ドナーとは、腎臓を提供するヒトということになりますね、

 

米国の臓器調達移植ネットワーク(OPTN)の最新統計によると、「腎移植待機(たいき)患者」は約89,792人(2024年9月現在)に達し、2024年に実施された全臓器移植48,149件を大幅に上回る状況が継続しているのだそうです(参考1)。

 

このような背景から、豚を用いた「異種移植(xenotransplantation)」が注目を集め、2024年から2025年にかけて、遺伝子編集豚腎を用いた臨床試験がFDA承認を相次いで取得しているいるのだそうです。

 

私も「豚の腎臓」を移植するという話は聞いていたのですが・・・

必ず失敗するだろうと思っていたわけです。

 

その理由は、豚の血液中には「内在性レトロウイルス」のウイルス粒子が存在することが知られていたからですね、

 

豚の内在性レトロウイルス(PERV: Porcine Endogenous Retroviruses)は、ヒトの内在性レトロウイルス’HERV;Human Endogenous Retroviruses)と同じように

進化の過程で、豚が「感染性レトロウイルス」に感染をした名残り(なごり)であるわけです。

 

ヒトの内在性レトロウイルス(HERV)のウイルス粒子は確認されていないのですが・・・豚の内在性レトロウイルス(PERV)は、ウイルス粒子が確認されています、

 

その理由としては、次のようなことが考えられています。

 

ヒトの内在性レトロウイルス(HERV)は

  • 数千万年前にヒトの祖先のゲノムに組み込まれた
  • 長期間にわたって変異が蓄積し、多くが不活化されている
  • 感染に必要な遺伝子(gag、pol、env)に欠失や変異が生じている

通常の感染性(外来生)レトロウイルスでは、gagは「内部構造タンパク」をコードしている遺伝子領域、polは「逆転写酵素」をコードする遺伝子領域、envは「外被糖蛋白」をコードする遺伝子領域で、ウイルス粒子が作られるためには、必要不可欠(ひつようふかけつ)

であるわけですが・・・欠失(遺伝子の一部が抜けてしまうこと)や変異(塩基が変化してしまうこと)により、正常なタンパク質が作れなくなってしまっている・・・つまり、ウイルス粒子が形成されることは、不可能というわけですね。

 

それに対して・・・

 

豚の内在性レトロウイルス(PERV)では、

 

  • 比較的最近(数百万年前)にゲノムに組み込まれた
  • 多くのPERV配列で感染に必要な全ての遺伝子が比較的完全な形で保存されている
  • 特にgag、pol、env の領域の遺伝子配列が保たれており、機能的なタンパクを酸性できる
このような理由から、ウイルス粒子が発現しており・・・豚からヒトへの臓器移植は不可能だろうと私は、考えていたわけですね。
 

                                           (AIで画像を作成)

 

ところが、実際には豚からの臓器移植は、(知らないうちに)かなり期待できるものとなっていたわけです。

 

(知らないうちに)と言ったのは、私自身が勉強しないうちに・・・

ということになるのですが・・・笑い泣き

 

豚からの臓器移植が検討され始めた理由は、圧倒的な臓器不足であり、日本では年間約15,000人、米国では約100,000人が臓器移植を待機している現状があるようです。

 

さらに、豚の臓器が注目される理由としては

  • サイズの適合性:豚の臓器サイズはヒトに近い
  • 生理学的類似性:代謝や血管構造がヒトに類似
  • 飼育の容易性:無菌環境での大量飼育が可能
  • 倫理的受容性:食用として既に利用されている

などがあるようです。

 

さらに豚の内在性レトロウイルス(PERV)については、多くの誤解があると解説する論文も出ています(参考1)。

 

どのようなことか?・・・といいますと

 

培養細胞系を用いた実験では、高力価のPERVがヒト細胞への感染を示すことがあることが知られています(参考2)。

 

しかし、これらの実験条件は生体内環境と大きく乖離(かいり)しており、臨床的リスク評価には適用(てきよう)できないのだそうです。

 

特に、細胞培養では「免疫系」や「組織特異的制限因子」が欠如(けつじょ)しているため、感染効率が過大評価される傾向があるのだそうです。

 

実際に動物実験も行われているのですが・・・小動物(マウス、ラット)から非ヒト霊長類まで幅広い動物モデルで、豚の内在性レトロウイルス(PERV)の感染実験が実施されています。

 

免疫抑制下での長期曝露実験(300日以上)においても、生体内での豚内在性レトロウイルス(PERV)の感染が成立した例は報告されていないのだそうです(参考3)

 

では、実際の臨床データは、どうなっているのでしょうか?

 

これまでの異種移植関連手技(豚膵島移植、豚皮膚移植、体外豚肝灌流など)において、200例を超える患者曝露が報告されているが、豚内在性レトロウイルス(PERV)の感染例は皆無(かいむ)であると報告されています(参考4)。

 

この根拠として、PCR、RT-PCR、血清学的検査、次世代シーケンシングなど多様な検出手法を用いた長期追跡調査でも、感染を示唆する所見は得られていないのだそうです。

 

2022年以降の豚腎移植症例においても、厳格な豚内在性レトロウイルス(PERV)監視プロトコルに基づく追跡が実施されているが、現時点で感染シグナルは、いっさい検出されていないそうです(参考5)。

 

さらにいくつかの技術が確立したことも「豚の臓器」をヒトへ移植

することを可能にしているわけですが・・・それについては、後日の話題にしたいと思います。

 

素敵な1週間をお過ごしくださいキラキラ

 

それでは、またバイバイ

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<ブログ後記>9月16日

 

今回は,最近、海外で話題となっている「豚(ブタ)」から腎臓などの臓器移植、よくに腎臓移植が行われている理由について、お話をさせていただきました。

私は、昔、「ヒト内在性レトロウイルス」の研究をしていたこともありまして、これまでに何人かの方から「豚からの臓器を移植する」ということの、意見を求められることがあったわけです。

 

これらの質問に対して、私はいつも・・・「短期的な腎臓機能の回復」は期待できるかもしれないが・・・ヒトが「豚の腎臓」で、長期に生存していくのは、かなり難しいのではないか・・・と答えてきたわけですね。

その理由は、本文内でもお話をしたように「豚」の血液や臓器には、

「豚内在性レトロウイルス粒子」が存在しているから・・・ということになります。


豚の臓器移植を行った際には、その臓器がヒトの免疫細胞により攻撃がされます、これはいわゆる「拒絶反応」ですが、これが生じないようにするために「免疫抑制剤」を長期に継続する必要があります。

そうしますと・・・「豚の内在性レトロウイルス」を抑制できなくなるので、高ウイルス血症をきたし、多臓器不全をきたしたり、

或いは、、NK細胞などの攻撃により、血液中も大量のサイトインが放出されたりするかもしれないと考えたわけです。

 

また、「豚の内在性レトロウイルス」の対する抗体が産生されるようになり、ウイルス粒子は不活化されるとしても、

 

「豚の内在性レトロウイルス」と同じ、アミノ酸配列や塩基開裂を持つヒトの臓器がありますと・・・ほんの一部の配列が同じというだけで、「豚の内在性レトロウイルス」に対する抗体や細胞障害性T細胞(CTL)は、ヒトの組織も対して、攻撃を仕掛けるようになってしますのですね。

このようなメカニズムを「分子学的相同性(molecular mimicry)」と呼びまして、現代でも「ヒトの自己免疫疾患」の発症のトリガー(引き金)となるのではないか?・・・という説があります。

 

しかしながら、こうした考えは、「杞憂(きゆう)」であったようです。この言葉は、中国の古典からくるもので、心配する必要のないものをあれこれと悩む(なやむ)ことを示す言葉ですよね。


ところで、「豚内在性レトロウイルス(PERV)」に対して豚が免疫反応を起こさない理由は、主に以下のメカニズムによるものです。

1. 胚発生期からの存在


    •   「 豚内在性レトロウイルス(PERV)」は豚のゲノムに組み込まれ

   てお り、胚発生の早期から存在している


    •    免疫系が発達する過程で、これらのウイルス由来タンパク質は

   「自己」として認識(にんしき)される

   

2. 中枢性免疫寛容


    •    胸腺でのT細胞選択過程で「 豚内在性レトロウイルス(PERV)」

  に強く反応する自己反応性T細胞は排除される


    •    これにより、「 豚内在性レトロウイルス(PERV)」的な細胞傷害

   性T細胞(CTL)の産生が抑制される
    
(正確には、PERV抗原に対する「制御性T細胞」が誘導され、「末梢性免疫寛容」というものもあります)

上記に示した現象は「自己免疫寛容(Self-tolerance)」と呼ばれています。
「自己免疫寛容(じこめんえきかんよう)」とは、免疫系が自分自身の正常な細胞や組織を攻撃しないメカニズムであるのですが、

「 豚内在性レトロウイルス(PERV)」胚発生の早期から存在していることから、自分自身の組織の一部として認識されているわけですね。

だから、「豚内在性レトロウイルス(PERV」は、「豚」の体内で、免疫反応は生じないわけですね。


ヒトに移植した「臓器」から出た「豚内在性レトロウイルス(PERV」は、ヒトにとっては「外敵」と認識され激しい免疫反応が起きてくる・・・と想像したことは、先に述べたとおりです。

しかし、実際には、ヒトに移植された腎臓から「豚内在性レトロウイルス(PERV」の遺伝子の発現やウイルス粒子の発言は認めなかった
というのですから・・・とても驚きます。

 

とはいえ、現在の遺伝子編集豚では、PERV不活化に加えて以下の改変が施されている「豚の腎臓」をヒトに移植するために各種遺伝子の導入などは行われているようです。

 

以下にその一部を示しますと・・・

 

現在の遺伝子編集豚では「豚内在性レトロウイルス(PERV」の不活化に加えて以下の改変が施されているそうです。

  • 異種抗原の除去(α-Gal、Neu5Gc、Sd(a)血液型抗原)
  • ヒト補体制御因子の導入(CD55、CD46、CD47)
  • ヒト凝固調節因子の導入(thrombomodulin、EPCR)
  • ヒトサイトカイン・増殖因子の導入

また。腎移植ですから、「免疫抑制剤」も使用するわけですが・・・

 

現在の豚腎移植では、以下の多剤併用免疫抑制が用いられていると報告もされています。

 

○ カルシニューリン阻害薬(タクロリムス)

○ 代謝拮抗薬(ミコフェノール酸)

○ mTOR阻害薬(エベロリムス)

○ 共刺激阻害薬(ベラタセプト)

○ 抗CD40抗体(tegoprubart)

 

このような強力な免疫抑制下でも、「豚内在性レトロウイルス(PERV」」の活性化や感染は報告されていないと報告されています

(参考6)。

 

 

なんだか、不思議な気もしますが・・・FDA(米国医薬食品局)に承認された臨床試験は2025年から開始されており、以下のような試験があるようです。

 

2025年に開始される正式臨床試験

 

1) United Therapeutics試験:55-70歳、透析6ヶ月以上の患者6例から開始し、最大50例まで拡大予定。10遺伝子編集UKidneyを使用し、24週間の主要評価項目で生涯追跡を実施。

 

2)eGenesis試験:50歳以上の透析患者対象のPhase 1/2/3統合試験。**69遺伝子編集腎臓(EGEN-2784)**を用い、2.5年間で33例の実施を計画。

 

結果が良いことを願いたいですね。

 

今回も最後までお付き合いくださり

ありがとうございますお願い

 

参考)

1)Organ Procurement and Transplantation Network (OPTN). 

National data on organ donation and transplantation.

Accessed September 2024.

 

2) Nature. 2000 Sep 7;407(6800):90-4. 

Infection by porcine endogenous retrovirus after islet xenotransplantation in SCID mice

L J van der Laanら

 

3) Science. 1999 Aug 20;285(5431):1236-41.

Search for cross-species transmission of porcine endogenous retrovirus in patients treated with living pig tissue. The XEN 111 Study Group

K Paradisら

 

4) Xenotransplantation. 2014 Sep-Oct;21(5): Mee Kum Kimら

The International Xenotransplantation Association consensus statement on conditions for undertaking clinical trials of xenocorneal transplantation

Mee Kum Kimら

 

5) N Engl J Med.. 2022 May 19;386(20):1889-1898. 

Results of Two Cases of Pig-to-Human Kidney Xenotransplantation

Robert A Montgomeryら

 

6) Am J Transplant. 2017 Aug;17(8):2178-2185.

Prolonged Survival Following Pig-to-Primate Liver Xenotransplantation Utilizing Exogenous Coagulation Factors and Costimulation 

J A Shahら

 

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