こんにちは、内科医 ひとちゃんですニコニコ

 

夜の蒸し暑さで、夜によく眠れない方も多いのではないでしょうか?

 

夏の時期は仕方がない・・・というのも事実ですが・・・

「睡眠」は、昔よりも健康を維持するには、とても重要であると考えられているようです。

 

ロンドンの庶民生活を描いた作家て、『靴屋の休日』という喜劇の作家でも知られるトーマス・デッカー(Thomas Dekker)は、次のような名言を残しています。

 

Sleep is the golden chain that ties health and our bodies together  

 

「睡眠は健康と私たちの体を結び付ける黄金の鎖である」

 

皆様の体調は、いかがでしょうか?

 

(AIで画像を作成)

 

「睡眠」が健康に及ぼす影響は、最新の医学では次のように報告されています。

 

まず、「 睡眠時間」は、心血管疾患、糖尿病、免疫機能、認知機能に対して因果関係を持つことが明確に証明されているというのですね

(参考1)。

 

 特に注目すべきは、短時間睡眠(7時間未満)が心血管疾患の直接的な原因となることが実証されている・・・というのは、ちょっと驚きです(参考2)。

 

アメリカ心臓協会は、2022年に「睡眠」を「Life’s Essential 8(人生に必要不可欠な8項目)」に追加し、血圧、コレステロール、血糖値と同等の重要性を持つ「心血管健康指標」として位置づけたのですね。

 

このことは、「睡眠医学」において歴史的な転換点と考えられています。

アメリカ心臓協会の指針では、7-8時間の睡眠が最適であり、この範囲から逸脱すると心血管疾患リスクが段階的に上昇するというのですね(参考2)。

 

    (AIで画像を作成)

 

このような結果は、46万人を対象とした解析で「睡眠時間」と「心筋梗梗塞」の因果関係が実証されたそうです。

 

その結果は、次のようになります。

 

短時間睡眠(6時間未満)は心筋梗塞リスクを20%増加させたというのです(参考3)。
 

また、睡眠時間1時間増加当たり、冠動脈疾患リスクが26%低下することも報告され、これは従来の観察研究で見られたU字型関係とは異なり、短時間睡眠のみが因果的にリスクを増加させることも示されています。

 

それ以前の観察研究では、「睡眠時間」が長くても、心血管障害のリスクが高まる可能性が指摘されるというU字型のような関係があると

考えられていました。

 

しかし、これらの大規模試験の結果からは・・・

長時間の睡眠により、リスクが高まることはなく、短時間の睡眠のみが因果的にリスクを増加させることが示されたのだそうです。

 

これらの心血管障害の 病態生理学的メカニズムは、次のように報告されています。

 

 炎症経路の活性化が中心的役割を担うとされていまして・・・

 

「睡眠不足」により、C反応性タンパク質(CRP)、インターロイキン-6(IL-6)、TNF-αなどの炎症マーカーが上昇し、「動脈硬化」を促進(そくしん)するのだそうです。

 

 また、血管内皮細胞の機能障害を介して一酸化窒素(NO)産生が低下し、血管内皮依存性血管拡張能が障害されるのだそうです(参考4)

 

 

さらに自律神経系の失調により交感神経活性が亢進し、心拍変動性が低下し、(参考5), これにより血圧上昇リスクが高まり、長期的な心血管疾患発症につながるとも報告されているのですね(参考6)。

 

これだけの根拠が「睡眠時間」は7時間はとった方がよい・・・と

強く強調されるようになった背景なのですね。

 

睡眠不足による糖尿病、免疫機能への影響は、後日の話題にしたいと思います。

 

素敵な1週間をお過ごしくださいキラキラ

 

それでは、またバイバイ

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<ブログ後記> 7月8日

 

今朝は青空が広がり、皇居の近くを車で通った時に「蝉(せみ)」の鳴き声が聞こえていました。

蝉の声が聞こえてきますと・・・本格的な夏が到来したのかな〜などと思ったりします。

 

今回は「心筋梗塞」という、一見(いっけん)無関係な疾患の発症が「睡眠時間」に関係がある・・・というお話をさせていただきました。しかし、実は「心筋梗塞」ばかりでなく、他にも多くの疾患の発症が「睡眠」と関係があるのではないか・・・と報告されているのですね。

 

本文内でもご紹介しましたが、「睡眠時間」と「2型糖尿病」の発症の関係は、明確化されています。

「2型糖尿病」とは、生活していく中で、発症していく、通常の「糖尿病」ということになりますね。

 

48万人を対象とした大規模な解析で、5時間以下の睡眠で「糖尿病リスク」が37%増加することが示されています(参考7)。

この理由として、「睡眠時間と質」の低下は、インスリン抵抗性の増加、グルコース耐性の低下などの糖尿病リスクの増加と関連していることも報告されています(参考8)

さらに不規則な「睡眠」習慣は、2型糖尿病の発症リスクを高めることも報告されています(参考9)

では、短時間の睡眠が「免疫」に影響するかというと・・・答えは「Yes」となります。

短時間の「睡眠」が免疫力の低下を引き起こすという報告は、実は

多く存在します。睡眠不足や短時間睡眠は、「免疫システム」の働きを弱め、感染症のリスクを高めることが報告されています。

例えば、自然な短時間の睡眠は「ナチュラルキラー細胞(NK細胞)」の活性低下やT細胞機能の変化と関連し、免疫応答のバランスが崩れることが観察されています(参考10,11)。

さらに、睡眠不足は「炎症性サイトカイン」の増加や慢性的な低レベルの炎症状態を引き起こし、心血管疾患や代謝疾患などのリスクも高めると考えられています(参考12)。

では、睡眠時間の短いことは、「老化」の進行スピードには、影響を与えるのでしょうか?

短時間の「睡眠」が「老化」を早めてしまうことは、近年の研究で明確に報告されています。

 

特に、1日6時間未満の睡眠や不眠症状は、「エピジェネティック年齢(生物学的な老化指標)」の加速と密接に関連しており、実年齢よりも生物学的に高齢となる状態が観察されています(参考13)。

さらに睡眠時間が短い人は、脳の萎縮や認知機能の低下がより早く進行することも示されています。さらに、中年期からの短い睡眠は、後年の「認知症リスクの増加」とも関連していると報告されています(参考14)。
 

いかがでしょうか?「睡眠時間」を削ってでも、勉強をしたり、仕事を頑張ることが「美徳(びとく)」とされた時代が確かにあったのかもしれませんが・・・現在では、充分な睡眠をとる心がけが重要なのかもしれませんね。

 

今回も最後までお付き合いいただきまして

誠にありがとうございましたお願い


 

参考)

!)Physiol Rep ​​2017 Dec;5(23):e13498. 

Skeletal muscle insulin signaling and whole-body glucose metabolism following acute sleep restriction in healthy males

Emma Sweeneyら

 

2)Front Cardiovasc Med. 2022 Aug 11:9:930000.

Associations between sleep duration and cardiovascular diseases: A meta-review and meta-analysis of observational and Mendelian randomization studies

Shanshan Wangら

 

3)J Am Coll Cardiol. 2019 Sep 10;74(10):1304-1314

Sleep Duration and Myocardial Infarction

 Iyas Daghlasら

 

4)Am J Physiol Heart Circ Physiol. 2021 Jan 1;320(1):H29-H35. Sleep deprivation and endothelial function: reconciling seminal evidence with recent perspectives

Joshua M Cherubiniら 

 

5)Life(Basal). 2025 Jan 7;15(1):60.

The Effect of Sleep Disruption on Cardiometabolic Health

 SeokHyun Hongら

 

6)J Am Coll Cardiol. 2020 Mar 10;75(9):991-999.

Sleep Irregularity and Risk of Cardiovascular Events: The Multi-Ethnic Study of Atherosclerosis

Tianyi Huangら


7)Diabetes Care. 2015 Mar;38(3):529-37.
Sleep duration and risk of type 2 diabetes: a meta-analysis of prospective studies
Zhilei Shanら

 

8)Metabolism. 2018 Jul:84:56-66.
Sleep influences on obesity, insulin resistance, and risk of type 2 diabetes
Sirimon Reutrakulら

 

9)Sleep Med Rev. 2022 Apr:62:101594.
 Effects of sleep manipulation on markers of insulin sensitivity: A systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials
Nina Sondrupら

 

10)Commun Biol. 2021 Nov 18;4(1):1304.
Role of sleep deprivation in immune-related disease risk and outcomes
Sergio Garbarinoら

 

11)Brain Behav Immun. 2011 Oct;25(7):1367-75.
Short natural sleep is associated with higher T cell and lower NK cell activities
Elinor Fondellら

 

12) MedComm . 2023 Apr 30;4(3):e252.
Multiomics analysis of human peripheral blood reveals marked molecular profiling changes caused by one night of sleep deprivation
Chongyang Chenら

 

13)Psychosom Med. 2024 Jun 1;86(5):453-462.
Short Sleep and Insomnia Are Associated With Accelerated Epigenetic Age
Cynthia D J Kustersら

 

14)Sleep. 2014 Jul 1;37(7):1171-8.
Sleep duration and age-related changes in brain structure and cognitive performance
June C Loら

 

           (東京タワーのある風景)

              (筆者撮影)

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                  (上差し 筆者がセレクトした夏の夜のJazzの曲)

 

 

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