こんにちは、内科医 ひとちゃんですニコニコ

 

暑さは一段落している様で、明け方に外からは「虫の声」が聞こえていました。

何かしらの「秋」に関する話のネタはないものか?・・・

と昔、若い頃に書いていたネタ手帳を開いてみますと、次のようなものがありました。

 

米国の作家に「F・スコット・フィッツジェラルド(F. Scott Fitzgerald)」という方がおりまして、次のような言葉を見つけました。

 "Life starts all over again when it gets crisp in the fall." 

 

「秋の空気が澄んでくると、人生が再び始まる」

 

フィッツジェラルドの代表作である「グレート・ギャツビー」(The Great Gatsby) のなかに出てくるセリフの言葉の様です。

 

「グレート・ギャツビー」を原作にして作られた映画が2013年に

「レオナルド・ディカプリオ」が主演の映画「華麗(かれい)なるギャッピー」が制作されています。

 

 

しかしながら、「華麗(かれい)なるギャッピー」が制作された2013年には、このような「メモ」書きは、とっくに止めて(やめて)いたので・・・このような言葉が書いてあるのか?・・・としばらく考えていたのですが・・・

 

実は、「F・スコット・フィッツジェラルド」は、「老人と海(The Old Man and the Sea)」の作品を書いた「ヘミング・ウェイ」の友人であったのですね。

 

「老人と海(The Old Man and the Sea)」の小説がとても好きで、いつもカバンに入れてあったので、「ヘミング・ウェイ」の友人であった「F・スコット・フィッツジェラルド」の言葉を誰かに教えてもらったのだろうと思い出しました。

 

昔の大人は「粋(いき)」でしたからね。

 

ちょっと、前置きが長くなりましたが・・・

皆さまの体調は、いかがでしょうか?

 

 (AIで画像を作成)

 

今回は、「睡眠(すいみん)」についての話題にしたいと思います。

 

最近、高齢者でも7時間程度は、「睡眠時間」をとった方がよい・・・

という話題があるそうで、「7時間は眠れないから、睡眠薬を処方してほしい」とおっしゃる方が増えているのだそうです。

 

私自身も患者様から同様の依頼(いらい)をされたこともあります。

 

そこで、今回は「加齢(かれい)」によって、睡眠の障害や睡眠時間が短縮が起こるのは、なぜなのか?・・・というお話をしてみたいと思います。

 

実は・・・「加齢」により、睡眠の質の悪化や睡眠時間の減少するのは、次のような理由が報告されています。

 

それは・・・

(1)「サーカディアンリズム」、体内時計の乱れ

 (2)光入力経路の障害、(3)メラトニン分泌低下

そして、(4)恒常性維持機構の変化

 

という、主に4つの原因があると考えられているわけです。

 

そして、上記のようなことが起こる原因としては、次のような病態(びょうたい)のメカニズムがあると考えられているようです。

それは、「加齢」により、以下のように

 

(1) 視交叉上核(SCN)の機能低下

(2)網膜からの入力減弱

(3)メラトニン分泌低下
(4)恒常性維持機構の変容(へんよう
 
などが起こる可能性があるというもので、現代の「老年睡眠科学」における中心的な話題であり、「加齢に伴う(ともなう)睡眠障害」の「病態生理(びょうたいせいり)」であると考えられているのだそうです。
 
つまり、「加齢」により「睡眠(すいみん)」に影響が出るのは・・・きちんとした理由があるということになります。
 
いったい、どのような「メカニズム」なのかを詳しくお話をしてみたいと思います。
 

(1) 視交叉上核(SCN)の機能低下

 

「視交叉上核(SCN)」がどのようなことに関わっているか・・・と言いますと・・・この領域は、「サーカディアンリズム(概日リズム)」のマスタークロック(中央時計)として機能する重要な脳領域となります。

 

サーカディアンリズム(概日リズム)」とは、人間を含むほとんどの生物に備わる約24時間周期の「体内時計」が刻む生体リズムのことでしたよね。

睡眠と覚醒、体温や血圧、ホルモン分泌などがこのリズムによって調整され、地球の約24時間の自転周期に適応しています。

 

そして、このメカニズムの中心となるのが、「視交叉上核(SCN)」ということになります。

 

さらに「視交叉上核(SCN)」には、「バソプレシン(AVP)発現ニューロン」というものが存在しており、これらは「分子時計」のように

強固な概日振動(がいじつしんどう)を示す『時計遺伝子』を発現しているのですね。

 

ヒトの死後脳研究では、高齢者において「バソプレシン(AVP)ニューロン」の「季節性リズム」が消失していることが示されています

(参考1)

さらに、これらのニューロンの「日内変動」もまた失われることが明らかにされています(参考2).

 

そして、このような「マスタークロック(中心時計)」のレベルでの信号の低下こそが、睡眠・覚醒、体温、ホルモン分泌といった下流のリズムにおいて観察される振幅の減弱や断片化の根本的な駆動要因となるとも報告されています(参考3) 。

 

image

 (AIで画像を作成)

 

(2)網膜からの入力減弱

 

加齢に伴い、水晶体の黄変、青色光透過率の低下、および「内在性光感受性網膜神経節細胞(ipRGCs)」の機能低下が生じると考えられています。詳しくお話をしますと、以下のようになります。

 

加齢により、水晶体の光吸収増加と瞳孔の縮小(老人性縮瞳)と関連しており、これらは網膜への到達光量、特に「サーカディアンリズム(概日リズム)」の「光受容」に重要な短波長光(青色光、波長約480 nm)を進行性に減少させる とされています(参考4).

 

この影響は劇的であり、45歳では10歳児の約半分、80~95歳ではわずか10%の概日光受容しか持たない可能性があると報告されています。

 

(3)メラトニン分泌低下

 

「メラトニン分泌」が加齢とともに低下することは、「サーカディアンリズム(概日リズム)」の加齢研究の柱であるそうですが、

多くの研究で「メラトニン分泌」の低下を確認しています(参考5,6)

 

この「メラトニン分泌」の低下は、「網膜〜視交叉上核(SCN)〜松果体系(しょうかたいけい)」の機能低下と関連しており 、「アルツハイマー病」のような神経変性疾患では特に顕著で、睡眠障害と相関することが報告されています(参考6)

 

(4)恒常性維持機構の変化

 

「睡眠・覚醒サイクル」は、「サーカディアンリズム(概日性リズムのプロセス(プロセスC)」と「恒常性のプロセス(プロセスS)」の相互作用によって調節されるのだそうです(参考7)。

 

そして、これには「アデノシン」という物質が関与しているのですが、.「アデノシン」は、脳内で「睡眠圧」を作り出す重要な物質です。

 

「睡眠圧(すいみんあつ)」とは、起きている時間が長くなるにつれて、脳内に蓄積される脳内に蓄積する「アデノシン」などの睡眠物質によって高まるという「眠りたい」という生理的な欲求ことになります。

 

「睡眠圧」が高いほど眠りが深くなり、睡眠中に「アデノシン」が分解・排出されることで「睡眠圧」は下がるとされています。

 

「アデノシン」の蓄積は本来「睡眠圧」を高める役割ですが、高齢者では受容体の感受性の低下により、十分な睡眠誘発効果が得られなくなってしまうのだそうです(参考8) 。

 

高齢者では、脳内の「アデノシン」濃度が上昇する一方、受容体の感受性低下により「睡眠圧」の本来の機能が低下し、

「睡眠の質「が損なわれやすくなります。これは「加齢」に伴う睡眠障害の一因と考えられるそうです。

 

これらのことが、「老年睡眠科学」で述べられている「高齢者の睡眠障害」

を起こす詳細なメカニズムとなります。「老年睡眠科学」とは、なかなか、難しそうな分野ですね。

 

では、この「老化」に伴う、さまざまな「睡眠障害」をどのように治療していけばよいのか?・・・という問いの答えは、後日の話題にしたいと思います。

 

素敵な1週間をお過ごしくださいキラキラ

 

それでは、またバイバイ

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<ブログ後記 >9月30日

 

今回は、加齢により「睡眠」の障害が起こりやすい・・・というお話をさせていただきました。

 

ちょっと、古い話になりますが、日本のバブル期(1986年12月から1991年2月頃)までは、老いも若きも「眠る時間」さえも、もったいない・・・と、夜遅くまで仕事をしたり、または、仕事のあとに

お酒を飲みにいってなどと、精力的に日常を過ごしていました。

 

それが・・・7〜8時間の「睡眠」が必要不可欠と言われましても、なんとなく、すんなりと心に入っていかないような気もします。

 

ある初老の男性の方が、自分の「不眠傾向」は、バブル期を精力的に生きた名残り(なごり)に違いない(ちがいない)と笑っていらっしゃったのを思い出します。

 

しかしながら、高齢により「睡眠障害」が起こりやすくなるのは、本文内でお話をしたとおりですし、年齢に問わず「睡眠不足」は細胞レベルの「老化」を加速させるという「エビデンス」が複数の研究で報告されています(参考9)。
 

さらに「睡眠の質」が悪いヒトにおいて、DNAのメチル化など、エピジェネティックな「老化」を加速させるとも報告されています

(参考10)。


もちろん。中年期、及び、高齢者に多い「睡眠の断片化」を伴うタイプの睡眠も「老化」をさらに加速させる可能性がある・・・などとも報告されています(参考11)。

また、短い「睡眠時間」と「不眠症」は、「エピジェネティック年齢」の加速と関連しており、これらの状態を持つヒトは、実際の年齢より高齢な「生物学的年齢」になっていることが、示されています(参考12)。

さらに「睡眠障害」や「不眠」の症状、「長時間睡眠」は、

「テロメア短縮」と関連するなどと聞くと・・・

 

そこまで、脅す(おどす)のか?・・なんて、不愉快(ふゆかい)に思われる方もいらっしゃるはずです。

 

しかしながら、これは本当の話でして・・・実際に不眠症は70〜88歳の成人において、PBMCのテロメア長の短縮と関連しており、臨床的に重度の睡眠障害が細胞老化を促進する可能性が特に晩年において示唆されています(参考13)。

この「PBMC」とは、Peripheral Blood Mononuclear Cellsの略称で末梢血に含まれる単核細胞を意味しており、リンパ球(T細胞、B細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞等)、樹状細胞、などが含まれており、これらの免疫細胞において、テロメアの短縮を示していくことは、
一概(いちがい)には言えませんが・・・加齢に伴う「免疫力の低下」と関係がある可能性もあります。

さらに睡眠時間が7時間未満の人は、7時間以上眠る人に比べて白血球(免疫細胞)の「テロメア」が短い傾向があり、これは年齢や性別、BMIなどの影響を除いても認められるとも報告されています。

では、7時間という長さですが、大規模コホート研究の結果によれば、睡眠時間が7時間未満の成人は7時間以上眠る人に比べて、

 

白血球の「テロメア」の長さが有意に短いことが示されています。
特に高齢者や男性でこの傾向が強く、短い睡眠は加齢に伴うテロメア短縮を加速させる可能性が指摘されています(参考14)

ここまでくると、もうギブアップ(Give up)するしかなく、反論のしようがない・・・とも思えてきますよね。

次に本文内でもお話をした「高齢者の睡眠障害」に対して、どのような方法が有効なのか?・・・ということをまとめてみたいと思います。

 

その前にまず、高齢者の「睡眠」の特徴は、どのようなものか?・・・を少し詳しく見てますと、次のようなことが言われています。

・睡眠の前進化(早寝早起き)と振幅低下(昼夜差の減弱)がある
・入眠困難よりも中途覚醒・早朝覚醒が多い
・睡眠の断片化と日中傾眠がある

などのように、加齢に伴う「行動リズム」の規則性低下が一貫して報告されています。

これに対して、推奨(すいしょう)されていることは、以下のようになります。
 

1.生活・環境調整(第一選択:強く推奨されている)

  • 朝の高照度光(2,000--10,000 lx目安) 

  高齢者の不眠に対し、朝の決まった時間に高照度光が入眠/中途  

  覚醒・睡眠効率の改善に有効。

 

  • 夕方〜夜の減光・ブルーライト抑制

  高齢者では光感受性が変化しており、夜間の過剰光はメラトニン 

        抑制→位相遅延につながるため、減光・画面時間短縮が推奨。


2.日中活動量の確保(歩行/屋外光曝露の併用) 

 

歩行+屋外光が睡眠改善に寄与する


3..白内障の治療

などとなります。
 

 

簡単にまとめますと・・・朝起床後30--60分の屋外散歩(できれば午前9--11時の自然光)、就床2〜3時間前から室内を暖色・低照度へ、毎日同じ時刻の起床を徹底(てってい)する・・・ということになりますね。

これで、改善しなければ・・・次にくるのが「薬物療法」ということになります。
 

いわゆる「睡眠剤(すいみんざい)」を服用するということですね。

これには、次のような薬剤が推奨(すいしょう)されています。


(A)メラトニン受容体作動薬(ラメルテオン:ロゼルム(商品名)

「中等度の有効性だが高い安全性」という評価は正確である。

ラメルテオンは、高齢者の入眠時に対して有効であることが示されいる。

 加齢に伴う「メラトニン低下」を考慮すると、「メラトニン補充」という理論的根拠は生理学的に妥当であると言えます

(B).デュアルオレキシン受容体拮抗薬:スボレキサント(ベルソムラ)および、レンボレキサント(デエビゴ)

高齢者における「入眠」と「睡眠」の維持の両方にに対して、肯定的に評価している点は、広範な第III相臨床試験データによっても示された薬剤とされています。

 

上記の薬剤は、高齢者の「睡眠障害」に有効とされているわけですが、通常、よく「睡眠障害」に対して、標準治療として用いられる「ベンゾジアゼピン系薬剤」は、高齢者には投与しない方がよいとされています。

 

その理由は、転倒、骨折、認知症、その他の重大な有害事象のリスクが、多くなるからという理由になります。

また、ベンゾジアゼピン系薬剤では、認知機能障害、呼吸抑制のリスクが大きくなるとされています。

 

このために高齢者のさまざまな「睡眠障害」に対しては、「ベンゾジアゼピン系薬剤」の投与を避けて’避けて、先にあげたや

A)メラトニン受容体作動薬B).デュアルオレキシン受容体拮抗薬:スボレキサント(ベルソムラ)および、レンボレキサント(デエビゴ)

を用いた方が、リスクが小さく、かつ、有効性が高いとされているわけですね。

 

本文の冒頭にご紹介した手帳に書いてあった文章の中に

 

〜青年よ、昼夜を問わず

 己(おのれ)の決めた一点に

 知恵と誇りの水滴を一滴ずつ落とし続けるべし

 されば、岩盤に穴があき

 やがて、岩盤は宿命の破壊を遂げる(とげる)

                 Y(名前)〜

 

とありました。

 

宴会の席で、今は他界されたYさんが直接、自筆で書いて下さったものです。

 

「岩盤は宿命の破壊を遂げる」とは、古い言い方で、現代風に言えば

「岩盤は、必ず破壊される」となります。

 

若き日の私は、何を「岩盤」のように破壊することが困難に思っていたのか?・・・と、ここ数日考えていたのですが、どうしても思い出せません。

 

しかしながら、かつて、青年であった私は、残念ながら「短時間の睡眠」が多い高齢者であり、レンボレキサント(デエビゴ)を服用して、ベッドに入ることが多くなっていることに不思議な感じがします笑い泣き

 

今回も最後までお付き合いいただきまして

誠にありがとうございましたお願い

 

 

 

参考)

1)Neurobiol Aging. 1995 Nov-Dec;16(6):965-71. 

Influence of aging on the seasonal rhythm of the vasopressin-expressing neurons in the human suprachiasmatic nucleus 

MA Hofmanら

 

2)Brain Res. 1994 Jul 18;651(1-2):134-42. 

Alterations in circadian rhythmicity of the vasopressin-producing neurons of the human suprachiasmatic nucleus (SCN) with aging

MA Hofmanら

 

3)J Clin Invest. 2017 Feb 1;127(2):437–446. 

The aging clock: circadian rhythms and later life

Suzanne Hoodら

 

4)OPhthalmic Physiol Opt. 2003 Mar;23(2):181-7. 

Age, lens transmittance, and the possible effects of light on melatonin suppression 

W N Charmanら

 

5)J Pineal Res. 2019 May;66(4):e12562. 

Melatonin suppression is exquisitely sensitive to light and primarily driven by melanopsin in humans 

Abhishek S Prayagら

 

6)J PIneal Res. 2019 May;66(4):e12562. 

Melatonin suppression is exquisitely sensitive to light and primarily driven by melanopsin in humans 

Abhishek S Prayagら

 

7)Sleep Med Clin. Author manuscript;,2015 15;10(4):423ー434

 Aging and Circadian Rhythms 

Jeanne F Duffyら

 

8)Neurobiol Aging. 2006 Feb;27(2):351-60.

Age-related changes in adenosine metabolic enzymes in sleep/wake regulatory areas of the brain

Miroslaw Mackiewiczら


9) Innovation in Aging_, Volume 8, Issue Supplement_1, December 2024, Page 180
SLEEP: A GEROSCIENCE TARGET
Judith Carrollら 

 

10)Clin Epigenetics.2024 Jul 16;16(1):92.
The association between sleep quality and accelerated epigenetic aging with metabolic syndrome in Korean adults
Ho-Sun Leeら

 

11)Innovation in Aging, 2018, Vol. 2, No. S1
Facets of sleep health at different life course stages predicting cardiometabolic risk.
O. Buxtonら

 

12)Psychosom Med .2024 Jun 1;86(5):453-462.
Short Sleep and Insomnia Are Associated With Accelerated Epigenetic Age
Cynthia D ら

 

13)Sleep.2016 Mar 1;39(3):559-64.
Insomnia and Telomere Length in Older Adults
Judith E Carrollら

 

14)J Gerontol A Biol Sci Med Sci. 2022 Feb 3;77(2):243-249.
Sleep Duration, Health Promotion Index, sRAGE, and ApoE-ε4 Genotype Are Associated With Telomere Length in Healthy Australians
Varinderpal S Dhillonら

 

(アマン東京 ラウンジの風景)

              (筆者撮影)

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理事長・ 院長  

小笠原  均  (Hitoshi Ogasawara)   

医学博士, 内科医

(総合内科、リウマチ専門医)

(新潟大医学部卒)

 

【Coming Soon】

12年分のブログから検索も可能?・・・なの?

 

<内科医ひとちゃんの抗老化医療最前線>

 

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<JTKクリニックからのお知らせ>

 

◯外来診療は予約制をとり、待ち時間が生じないようにしています。

 

◯ ダイエット漢方製剤は、オンライン診療でも可能です。

◯ 線維筋痛症に対するノイロトロピン等の点滴療法、トリガーポイント注射を行なっております。(セカンドオピニオン診療も可)

 

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<JTKクリニック 所在地>

〒102-0083

東京都千代田区麹町4-1-5麴町志村ビル2階

電話 03-6261-6386

Mail:info@jtkclinic.com

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こんにちは、内科医 ひとちゃんですニコニコ

 

暑さは和らいで(やわらいで)いるのですが・・・曇りがちのすっきりしないお天気になっていますね。

 

秋晴れの透きとおるような青空を早く見てみたい・・・などと思ったりもします。

 

イギリスの小説家、フランシス・ブルット・ヤングは次のような言葉を残しています。

 

An autumn garden has a sadness when the sun is not shining.

陽(ひ)が輝いていないとき、秋の公園(庭)には悲しみがある

 

まさに今日の曇り空は、寂しい冬を予感させるものでした。

 

皆さまの体調は、いかがでしょうか? 

 

  (AIで画像を作成)

 

今回は、「新型コロナウイルス感染」後に、「自己免疫疾患」を発症する可能性があるか?・・・というお話をしてみたいと思います。

 

いまさら、「新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)」の話なの?:・・と思う方は、多いかもしれませんね。

 

「オミクロン株」に変異してからは、重症化(じゅうしょうか)する可能性は少なくなりましたし、米国からは「新型コロナウイルス」のワクチンは、健康に害があるなどという発言もちらほらと聞こえてきます。

 

「新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)」は、恐れることはない・・・などと勇ましい(いさましい)声も聞こえてきますよね。

 

しかしながら、「新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)」感染が

各種の「自己免疫疾患」の発症リスクを20-43%増加させることが、複数の大規模国際研究により確立されているのですね。

 

「自己免疫疾患」とは、「リウマチ膠原病疾患」ということになりますね。

複数の論文において、「新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)」感染後に「自己免疫疾患」を発症を疑うような「自己抗体」の出現が報告されているわけです。

 

特に重要な知見は以下の通りです:

 

「ロングCOVID」患者の83%で潜在性自己免疫(1種類以上の自己抗体陽性)が確認されています (参考1)。

 

さらに「ロングCOVID」患者の62%でポリ自己免疫(2種類以上の自己抗体陽性)に関する抗体の発現が報告されています

 

その「自己抗体」は、どのようなものがあるか?・・・と言いますと、次のようなものになります。

 

抗核抗体(ANA)、全身性エリテマトーデス(SLE)、抗リン脂質抗体に関連する抗体など、、さまざまな「自己抗体」の出現が報告されています。特に重症例や入院患者で高頻度に認められ、健常者と比較して有意に多いとされているのですね(参考2)。



    (AIで画像を作成)

 

ところで、「Long -Covid」自体は、どのような症状を起こすのでしょうか?

少し、整理をしておきたいと思います。

 

「新型コロナウイルス(COVID-19)」感染後、急性期を過ぎても多様な症状が長期間持続する「Long-COVID(ロングCOVID)」が世界中で報告されています。

 

これらの後遺症は、身体的・精神的・社会的な健康に大きな影響を及ぼしていると考えられています。

 

例えば、「Long-COVID(ロングCOVI)」の症状として報告されているのは、以下のようなものになります。

 

疲労(58%)、頭痛(44%)、注意力障害(27%)、脱毛(25%)、呼吸困難(24%)など、50種類以上の長期症状が報告されています(参考3,4)。


これらの症状に加えて、「自己免疫疾患」を発症すると聞きますと

・・・それは、本当なのか?・・・疑いたくもなりますよね。

 

もちろん、「自己抗体」が、血液中に存在するだけでは、「自己免疫疾患」を発症したとはいえません。あくまでも「自己抗体」は、その多くが診断を正確に行うための「参考」とされる場合が多いと考えられます。

 

では、実際に「自己免疫疾患」を発症することは報告されているのでしょうか?

 

残念ながら・・・「新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)」の感染後に、血管炎、多発性筋炎、全身性エリテマトーデス(SLE) ,サルコイドーシス、自己免疫性肝炎、ギランバレー症候群などの発症が報告されています(参考2)

 

では、なぜ、新型コロナウイルスの感染から、「自己免疫疾患」が発症するのでしょうか?

 

その詳細なメカニズムは、「自己免疫疾患発症」のヒントにもなるのではないかと思ったり、

何よりも「自己免疫疾患」を発症したときの早期発見は極めて、重要であるというお話につなげていきたいわけですが・・・続きは、後日の話題にしたいと思います。

 

素敵な1週間をお過ごしくださいキラキラ

 

それでは、またバイバイ

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<ブログ後記>9月23日

今回は新型コロナウイルス(COVID-19)の感染をきっかけに
自己免疫疾患を発症する可能性があるというお話をさせていただきました。

通常の自己免疫疾患(リウマチ膠原病疾患)の主な発症メカニズムは、遺伝子変異、分子修飾異常、免疫反応、加齢や環境要因などのうち、複数の要因が多層的に関与していると考えられています。

また、腸内細菌のバランス異常が免疫系の恒常性を崩し、自己免疫反応を誘発する可能性がなども示唆(しさ)されています 、

そして、ウイルス感染が自己免疫疾患の発症のトリガーになる可能性も指摘されています。


ウイルス感染がトリガーとなり、自己免疫疾患を発症する主なメカニズムは、次のようになります。

1)分子相同性(molecular mimicry)

ウイルス抗原が自己抗原と類似しているため、免疫系が誤って自己組織を攻撃する(参考5,6)

2)バイスタンダー活性化(bystander activation)

ウイルス感染による炎症環境で、自己反応性T細胞が非特異的に活性化される

3)エピトープ拡散(epitope spreading)

ウイルス感染で組織損傷が起こり、自己抗原が新たに免疫系に提示されることで自己免疫反応が拡大する

4)ウイルスによるB細胞の不死化や免疫制御破綻

特定のウイルス(例:EBウイルス)はB細胞を変化させ、自己抗体産生を促進する(参考7)

その他にも・・・
コクサッキーウイルス は、 1型糖尿病 を発症させるトリガーとなる可能性が示され、そのメカニズみは「分子相同性 」であるとされていますし(参考8)

インフルエンザウイルス は。ギラン・バレー症候群を発症させるトリガーとなる可能性が示され、そのメカニズみは
「バイスタンダー活性化等 」であるとされています(参考9)。

さらにヘルペスウイルス |は、多発性硬化症、自己免疫性角膜炎を発症させるトリガーとなる可能性が示され、そのメカニズみは
「分子相同性」であるという報告もあります(参考10)

 

つまり、「自己免疫疾患」の発症のトリガー(引き金)のひとつに

「ウイルス感染」かもしれないというわけですね。

同様に「新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)」感染後に自己免疫疾患を発症しやすくなる傾向が明確に報告されています。特に重要な知見は以下の通りです:

1.ロングCOVID患者の83%で潜在性自己免疫の病態
(1種類以上の自己抗体陽性)が確認 ( 参考11)
 

62%でポリ自己免疫(2種類以上の自己抗体陽性)を呈することなどが報告されています。

実際の自己免疫疾患発症例としては、全身生エリテマトーデス(SLE)、重症筋無力症、Graves病、自己免疫性溶血性貧血、

多発筋炎(PM)、自己免疫性甲状腺炎など

が報告されているようです。

また、検出頻度の高い自己抗体としtr。報告されているものは

  • インターフェロン(IFN-α, IFN-ω)抗体

 

  • 抗AGTR1抗体(Gタンパク質共役型受容体などに対する抗体)
  • IL-6, IL-1, TNF-αなどに対する抗体
  • 抗核抗体(ANA)
  • 抗リン脂質抗体(抗カルジオリピン、抗β2グリコプロテインI抗体など)
  • ACE2抗体
  • 抗好中球細胞質抗体(ANCA)

 

などが報告されています。

自己免疫疾患のような病態を示すは「ロングCOVID」の顕著な特徴であり、自己抗体の種類・量がロングCOVID症状の重篤度と相関し
免疫系恒常性の破綻(樹状細胞、Treg、NK細胞の異常)が多臓器症状を誘発するなどとも考えられているようです。

これらの症状に対して、以下のような治療も検討されているようです。

Long COVIDに伴うsmall fiber neuropathy(SFN)に対して、静注免疫グロブリン(IVIg)療法が有効である可能性を示す症例報告や小規模研究が複数存在しますが、エビデンスはまだ限定的と考えられているようです(参考12)。

また、「B細胞除去療法」では病原性B細胞の選択的除去とプラスマフェレーシスとの併用可能性が検討されていたりもするのですが、現時点では、エビデンスに乏しいとされています。

新型コロナウイルス感染(COVID-19)は、風邪(かぜ)みたいなものとする風潮もありますが、

当初は分からなかった「自己免疫様の状態」が誘導されることを考えると、やはり、感染しない方が良いわけですし、
 

Long-Covidに罹患(りかん)し、体調が思わしくない方も
自己免疫疾患を発症してはいないかを専門医療機関でチェックしてもらう必要があるかもしれませんね。

 

今回も最後までお付き合いいただきまして

誠にありがとうございましたお願い

 

参考)

1)J Transl Med. 2022 Mar 16;20(1):129.

Autoimmunity is a hallmark of post-COVID syndrome

Manuel Rojasら

 

2)Cells. 2021 Dec 20;10(12):3592.  Abraham Edgar

New Onset of Autoimmune Diseases Following COVID-19 Diagnosis

Gracia-Romasら

 

3)BMJ 2021 Jan 22:372:n136.

Managing the long term effects of covid-19: summary of NICE, SIGN, and RCGP rapid guideline

Waquaar Shahら

 

4)Cells. 2022 Dec 1;11(23):3882. 

Cardiovascular, Pulmonary, and Neuropsychiatric Short- and Long-Term Complications of COVID-19

Malgorzata Kobusiak-Prokopowiczら


(5)Viruses. 2023 Mar 18;15(3):782.
The Role of Viral Infections in the Onset of Autoimmune Diseases
Bhargavi Sundaresanら

(6)Viruses. 2019 Aug 19;11(8):762.
Viruses and Autoimmunity: A Review on the Potential Interaction and Molecular Mechanisms
Maria K Smattiら

 

(7)Nat Rev Rheumatol. 2024 Nov;20(11):729-740.
 Epstein-Barr virus as a potentiator of autoimmune diseases
William H Robinsonら

 

(8)Clin Microbiol Rev. 2006 Jan;19(1):80-94.
Molecular mimicry, bystander activation, or viral persistence: infections and autoimmune disease
Robert S Fujinamirら

 

(9)Front Immunol. 2025 Apr 3:16:1558386.
 The intersection of influenza infection and autoimmunity
Shunyu Xieら

 

(10)Science. 1998 Feb 27;279(5355):1344-7.
 Molecular mimicry by herpes simplex virus-type 1: autoimmune disease after viral infection
Z S Zhaoら

 

(11)J Transl Med. 2022 Mar 16;20(1):129.
 Autoimmunity is a hallmark of post-COVID syndrome
Manuel Rojasら

 

(12)Muscle Nerve. 2023 Jul;68(1):E29-E30.
 Intravenous immunoglobulin for immune-mediated small fiber neuropathy with TS-HDS and FGFR-3 antibodies: The jury is still out
Lawrence A Zeidmanら

 

(マンダリンオリエンタルH.からのスカイツリ-)

             (筆者撮影)

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理事長・ 院長  

小笠原  均  (Hitoshi Ogasawara)   

医学博士, 内科医

(総合内科、リウマチ専門医)

(新潟大医学部卒)

 

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こんにちは、内科医 ひとちゃんですニコニコ

 

9月も半ばになろうとしていますね。

3連休で、旅に出ているなどという方も多いかもしれませんね。

 

先日は、診療を終えた後に「AI(人工知能)」の専門家のお話を聞く機会がありました。

軽い気持ちで出かけたわけですが・・・聞かせていただいた話は、

エキサイティングな内容でありまして、少し驚きました。

 

世界的には「AI(人工知能)」を仕事に取り入れることで、その成果の質(クオリティー)はアップしており、また、仕事の納期(仕事が完成する日)までの日程が、どんどんに短くなる傾向があるのだそうです。

 

それなのに、皆が競争しますので、仕事の報酬は低く、抑制されつつある・・・という奇妙(きみょう)な現象が起きているのだとか。

 

つまり、「AI(人工知能)」を使うことが前提になっている・・・というもですね。

 

ちなみに新しい知識、能力を身につけていかなければ・・・私のような「内科医」は「AI(人工知能)」に駆逐(くちく)される日は、近いのだとか。

 

この話が本当であるとするなら・・・なかなか、大変な時代になっていくのかもしれませんね。

 

皆さまの体調は、いかがでしょうか? 

 

                                   (AIで画像を作成)

 

今回は、少し面白い話題にしたいと思います。

それは、「豚(ぶた)の腎臓(じんぞう)」を腎不全を持つヒトに移植するというお話です、

 

この背景には、次のような事情(じじょう)があるとされています。

 

慢性腎不全患者に対する根治療法として、「腎移植(じんいしょく)」は最も有効な治療選択肢であると考えられているのですが、ドナー臓器の絶対的不足が深刻な医療問題となっているそうです。

 

ドナーとは、腎臓を提供するヒトということになりますね、

 

米国の臓器調達移植ネットワーク(OPTN)の最新統計によると、「腎移植待機(たいき)患者」は約89,792人(2024年9月現在)に達し、2024年に実施された全臓器移植48,149件を大幅に上回る状況が継続しているのだそうです(参考1)。

 

このような背景から、豚を用いた「異種移植(xenotransplantation)」が注目を集め、2024年から2025年にかけて、遺伝子編集豚腎を用いた臨床試験がFDA承認を相次いで取得しているいるのだそうです。

 

私も「豚の腎臓」を移植するという話は聞いていたのですが・・・

必ず失敗するだろうと思っていたわけです。

 

その理由は、豚の血液中には「内在性レトロウイルス」のウイルス粒子が存在することが知られていたからですね、

 

豚の内在性レトロウイルス(PERV: Porcine Endogenous Retroviruses)は、ヒトの内在性レトロウイルス’HERV;Human Endogenous Retroviruses)と同じように

進化の過程で、豚が「感染性レトロウイルス」に感染をした名残り(なごり)であるわけです。

 

ヒトの内在性レトロウイルス(HERV)のウイルス粒子は確認されていないのですが・・・豚の内在性レトロウイルス(PERV)は、ウイルス粒子が確認されています、

 

その理由としては、次のようなことが考えられています。

 

ヒトの内在性レトロウイルス(HERV)は

  • 数千万年前にヒトの祖先のゲノムに組み込まれた
  • 長期間にわたって変異が蓄積し、多くが不活化されている
  • 感染に必要な遺伝子(gag、pol、env)に欠失や変異が生じている

通常の感染性(外来生)レトロウイルスでは、gagは「内部構造タンパク」をコードしている遺伝子領域、polは「逆転写酵素」をコードする遺伝子領域、envは「外被糖蛋白」をコードする遺伝子領域で、ウイルス粒子が作られるためには、必要不可欠(ひつようふかけつ)

であるわけですが・・・欠失(遺伝子の一部が抜けてしまうこと)や変異(塩基が変化してしまうこと)により、正常なタンパク質が作れなくなってしまっている・・・つまり、ウイルス粒子が形成されることは、不可能というわけですね。

 

それに対して・・・

 

豚の内在性レトロウイルス(PERV)では、

 

  • 比較的最近(数百万年前)にゲノムに組み込まれた
  • 多くのPERV配列で感染に必要な全ての遺伝子が比較的完全な形で保存されている
  • 特にgag、pol、env の領域の遺伝子配列が保たれており、機能的なタンパクを酸性できる
このような理由から、ウイルス粒子が発現しており・・・豚からヒトへの臓器移植は不可能だろうと私は、考えていたわけですね。
 

                                           (AIで画像を作成)

 

ところが、実際には豚からの臓器移植は、(知らないうちに)かなり期待できるものとなっていたわけです。

 

(知らないうちに)と言ったのは、私自身が勉強しないうちに・・・

ということになるのですが・・・笑い泣き

 

豚からの臓器移植が検討され始めた理由は、圧倒的な臓器不足であり、日本では年間約15,000人、米国では約100,000人が臓器移植を待機している現状があるようです。

 

さらに、豚の臓器が注目される理由としては

  • サイズの適合性:豚の臓器サイズはヒトに近い
  • 生理学的類似性:代謝や血管構造がヒトに類似
  • 飼育の容易性:無菌環境での大量飼育が可能
  • 倫理的受容性:食用として既に利用されている

などがあるようです。

 

さらに豚の内在性レトロウイルス(PERV)については、多くの誤解があると解説する論文も出ています(参考1)。

 

どのようなことか?・・・といいますと

 

培養細胞系を用いた実験では、高力価のPERVがヒト細胞への感染を示すことがあることが知られています(参考2)。

 

しかし、これらの実験条件は生体内環境と大きく乖離(かいり)しており、臨床的リスク評価には適用(てきよう)できないのだそうです。

 

特に、細胞培養では「免疫系」や「組織特異的制限因子」が欠如(けつじょ)しているため、感染効率が過大評価される傾向があるのだそうです。

 

実際に動物実験も行われているのですが・・・小動物(マウス、ラット)から非ヒト霊長類まで幅広い動物モデルで、豚の内在性レトロウイルス(PERV)の感染実験が実施されています。

 

免疫抑制下での長期曝露実験(300日以上)においても、生体内での豚内在性レトロウイルス(PERV)の感染が成立した例は報告されていないのだそうです(参考3)

 

では、実際の臨床データは、どうなっているのでしょうか?

 

これまでの異種移植関連手技(豚膵島移植、豚皮膚移植、体外豚肝灌流など)において、200例を超える患者曝露が報告されているが、豚内在性レトロウイルス(PERV)の感染例は皆無(かいむ)であると報告されています(参考4)。

 

この根拠として、PCR、RT-PCR、血清学的検査、次世代シーケンシングなど多様な検出手法を用いた長期追跡調査でも、感染を示唆する所見は得られていないのだそうです。

 

2022年以降の豚腎移植症例においても、厳格な豚内在性レトロウイルス(PERV)監視プロトコルに基づく追跡が実施されているが、現時点で感染シグナルは、いっさい検出されていないそうです(参考5)。

 

さらにいくつかの技術が確立したことも「豚の臓器」をヒトへ移植

することを可能にしているわけですが・・・それについては、後日の話題にしたいと思います。

 

素敵な1週間をお過ごしくださいキラキラ

 

それでは、またバイバイ

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<ブログ後記>9月16日

 

今回は,最近、海外で話題となっている「豚(ブタ)」から腎臓などの臓器移植、よくに腎臓移植が行われている理由について、お話をさせていただきました。

私は、昔、「ヒト内在性レトロウイルス」の研究をしていたこともありまして、これまでに何人かの方から「豚からの臓器を移植する」ということの、意見を求められることがあったわけです。

 

これらの質問に対して、私はいつも・・・「短期的な腎臓機能の回復」は期待できるかもしれないが・・・ヒトが「豚の腎臓」で、長期に生存していくのは、かなり難しいのではないか・・・と答えてきたわけですね。

その理由は、本文内でもお話をしたように「豚」の血液や臓器には、

「豚内在性レトロウイルス粒子」が存在しているから・・・ということになります。


豚の臓器移植を行った際には、その臓器がヒトの免疫細胞により攻撃がされます、これはいわゆる「拒絶反応」ですが、これが生じないようにするために「免疫抑制剤」を長期に継続する必要があります。

そうしますと・・・「豚の内在性レトロウイルス」を抑制できなくなるので、高ウイルス血症をきたし、多臓器不全をきたしたり、

或いは、、NK細胞などの攻撃により、血液中も大量のサイトインが放出されたりするかもしれないと考えたわけです。

 

また、「豚の内在性レトロウイルス」の対する抗体が産生されるようになり、ウイルス粒子は不活化されるとしても、

 

「豚の内在性レトロウイルス」と同じ、アミノ酸配列や塩基開裂を持つヒトの臓器がありますと・・・ほんの一部の配列が同じというだけで、「豚の内在性レトロウイルス」に対する抗体や細胞障害性T細胞(CTL)は、ヒトの組織も対して、攻撃を仕掛けるようになってしますのですね。

このようなメカニズムを「分子学的相同性(molecular mimicry)」と呼びまして、現代でも「ヒトの自己免疫疾患」の発症のトリガー(引き金)となるのではないか?・・・という説があります。

 

しかしながら、こうした考えは、「杞憂(きゆう)」であったようです。この言葉は、中国の古典からくるもので、心配する必要のないものをあれこれと悩む(なやむ)ことを示す言葉ですよね。


ところで、「豚内在性レトロウイルス(PERV)」に対して豚が免疫反応を起こさない理由は、主に以下のメカニズムによるものです。

1. 胚発生期からの存在


    •   「 豚内在性レトロウイルス(PERV)」は豚のゲノムに組み込まれ

   てお り、胚発生の早期から存在している


    •    免疫系が発達する過程で、これらのウイルス由来タンパク質は

   「自己」として認識(にんしき)される

   

2. 中枢性免疫寛容


    •    胸腺でのT細胞選択過程で「 豚内在性レトロウイルス(PERV)」

  に強く反応する自己反応性T細胞は排除される


    •    これにより、「 豚内在性レトロウイルス(PERV)」的な細胞傷害

   性T細胞(CTL)の産生が抑制される
    
(正確には、PERV抗原に対する「制御性T細胞」が誘導され、「末梢性免疫寛容」というものもあります)

上記に示した現象は「自己免疫寛容(Self-tolerance)」と呼ばれています。
「自己免疫寛容(じこめんえきかんよう)」とは、免疫系が自分自身の正常な細胞や組織を攻撃しないメカニズムであるのですが、

「 豚内在性レトロウイルス(PERV)」胚発生の早期から存在していることから、自分自身の組織の一部として認識されているわけですね。

だから、「豚内在性レトロウイルス(PERV」は、「豚」の体内で、免疫反応は生じないわけですね。


ヒトに移植した「臓器」から出た「豚内在性レトロウイルス(PERV」は、ヒトにとっては「外敵」と認識され激しい免疫反応が起きてくる・・・と想像したことは、先に述べたとおりです。

しかし、実際には、ヒトに移植された腎臓から「豚内在性レトロウイルス(PERV」の遺伝子の発現やウイルス粒子の発言は認めなかった
というのですから・・・とても驚きます。

 

とはいえ、現在の遺伝子編集豚では、PERV不活化に加えて以下の改変が施されている「豚の腎臓」をヒトに移植するために各種遺伝子の導入などは行われているようです。

 

以下にその一部を示しますと・・・

 

現在の遺伝子編集豚では「豚内在性レトロウイルス(PERV」の不活化に加えて以下の改変が施されているそうです。

  • 異種抗原の除去(α-Gal、Neu5Gc、Sd(a)血液型抗原)
  • ヒト補体制御因子の導入(CD55、CD46、CD47)
  • ヒト凝固調節因子の導入(thrombomodulin、EPCR)
  • ヒトサイトカイン・増殖因子の導入

また。腎移植ですから、「免疫抑制剤」も使用するわけですが・・・

 

現在の豚腎移植では、以下の多剤併用免疫抑制が用いられていると報告もされています。

 

○ カルシニューリン阻害薬(タクロリムス)

○ 代謝拮抗薬(ミコフェノール酸)

○ mTOR阻害薬(エベロリムス)

○ 共刺激阻害薬(ベラタセプト)

○ 抗CD40抗体(tegoprubart)

 

このような強力な免疫抑制下でも、「豚内在性レトロウイルス(PERV」」の活性化や感染は報告されていないと報告されています

(参考6)。

 

 

なんだか、不思議な気もしますが・・・FDA(米国医薬食品局)に承認された臨床試験は2025年から開始されており、以下のような試験があるようです。

 

2025年に開始される正式臨床試験

 

1) United Therapeutics試験:55-70歳、透析6ヶ月以上の患者6例から開始し、最大50例まで拡大予定。10遺伝子編集UKidneyを使用し、24週間の主要評価項目で生涯追跡を実施。

 

2)eGenesis試験:50歳以上の透析患者対象のPhase 1/2/3統合試験。**69遺伝子編集腎臓(EGEN-2784)**を用い、2.5年間で33例の実施を計画。

 

結果が良いことを願いたいですね。

 

今回も最後までお付き合いくださり

ありがとうございますお願い

 

参考)

1)Organ Procurement and Transplantation Network (OPTN). 

National data on organ donation and transplantation.

Accessed September 2024.

 

2) Nature. 2000 Sep 7;407(6800):90-4. 

Infection by porcine endogenous retrovirus after islet xenotransplantation in SCID mice

L J van der Laanら

 

3) Science. 1999 Aug 20;285(5431):1236-41.

Search for cross-species transmission of porcine endogenous retrovirus in patients treated with living pig tissue. The XEN 111 Study Group

K Paradisら

 

4) Xenotransplantation. 2014 Sep-Oct;21(5): Mee Kum Kimら

The International Xenotransplantation Association consensus statement on conditions for undertaking clinical trials of xenocorneal transplantation

Mee Kum Kimら

 

5) N Engl J Med.. 2022 May 19;386(20):1889-1898. 

Results of Two Cases of Pig-to-Human Kidney Xenotransplantation

Robert A Montgomeryら

 

6) Am J Transplant. 2017 Aug;17(8):2178-2185.

Prolonged Survival Following Pig-to-Primate Liver Xenotransplantation Utilizing Exogenous Coagulation Factors and Costimulation 

J A Shahら

 

     (夏の思い出;近所で開催された盆踊りの風景)

            (筆者撮影)

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こんにちは、内科医 ひとちゃんですニコニコ

 

9月に入りまして、最初の休日の午後になっています。

今朝は青空が広がり、気持ちがよいかもしれないと思いまして、少し散歩をしました。

 

陽射し(ひざし)は強かったのですが、空気は秋のように少しだけ爽やか(さわやか)なものに感じました。

 

米国の作家 「ルドルフォ・アナヤ」の言葉に次のような言葉があることを思い出しました。

 

There is a time in the last few days of summer when the ripeness of autumn fills the air.

 

夏の終わりの数日間の中には、秋の成熟が空気を満たす時期がある

 

というものなのですが、まさに慣れ親しんだ(なれしたしんだ)秋の空気に気がついたような気がしました。

 

 「ルドルフォ・アナヤ」の小説『祝福せよ、ウルティマよ』などをお読みになった方もいらっしゃるかもしれませんね。

 

皆さまの体調は、いかがでしょうか? 

 

        (AIで画像を作成)

 

今回は、「脂肪肝」が「老化」のスピードを加速する・・・というお話をしてみたいと思います。

 

「脂肪肝」とは、いったいどのような状態をいうのでしょうか?

 

「脂肪肝」とは・・・肝臓に過剰な脂肪(中性脂肪)が蓄積され、肝臓全体の約30%以上を脂肪が占めている状態のことです。現在、一般成人の20-25%、男性では約40%が脂肪肝を患っているとされており、非常に多くの方が罹患している現代の生活習慣病であると言えます。

 

いわゆる肝臓が「フォアグラ」状態になっているなどと・・・以前は笑い飛ばすこともあったかもしれません。

 

しかし、近年の研究により、「脂肪肝」は、単に肝硬変や肝がんへ進展する可能性あるばかりでなく、「老化」そのものを加速させるリスク因子であることが明らかになりつつあります (参考1)。

 

「脂肪肝」が「老化」のスピードを加速させる・・・と言われると、その深刻(しんこく)の度合いは・・・ある程度の確率(かくりつ)で、肝硬変や肝臓癌が起こるリスクがあると言われるよりも、より深刻な問題と感じる方も、ひょっとしたら多いかもしれませんね。

 

                        (AIで画像を作成)

 

では、どのようなメカニズムで、「脂肪肝」は、「老化」を加速させるのでしょうか?

 

脂肪肝が老化を促進(そくしん)する分子メカニズムとして、以下のようなものが挙げられます。

 

1.慢性炎症

 

肝細胞内に蓄積した脂肪は、TNF-α(ティーエヌエフ アルファ)やIL-6(インターロイキン6)といった「炎症性サイトカイン」の持続的放出を引き起こし、慢性低度炎症を形成します (参考2)。

 

この現象は老化の分子基盤とされるinflammagingに直結し、血管や筋肉、脳機能の加齢性変化を促進します。Inflammagingは、感染のない状態での慢性的な全身性炎症として定義され、加齢に伴う罹患率と死亡率の主要なリスク因子とされています (参考3)。
 

2.酸化ストレスとDNA損傷

 

「脂肪肝」では、ミトコンドリア機能障害が起こり、これにより「活性酸素種(ROS)」が過剰産生され、DNAやタンパク質、脂質が損傷します (参考4)。

 

「活性酸素種(ROS)」などの酸化ストレスは、「細胞老化」を促し(うながし)、炎症との悪循環を形成します。

また、「ミトコンドリア」の機能低下とATP産生能の減少が認められ、細胞のエネルギー代謝異常が「老化」のプロセスを加速させます。

 

3.NAD+NAD+代謝異常とエネルギー破綻

 

「脂肪肝」では「NAD⁺(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)の低下が認められ、「サーチュイン1遺伝子(SIRT1)」をはじめとするサーチュインファミリーの活性低下を介して細胞老化を促進します (参考5)。

「NAD⁺」は、細胞代謝やDNA修復機能の維持に必須(ひっす)であり、その枯渇は細胞の恒常性維持能力を著しく損ないます。

 

4.テロメア短縮

 

肝組織を用いた研究では、「脂肪肝」の患者において、同年代の対照群と比べてテロメア長が有意に短縮していることが報告されています (参考6)。

 

とくに、肝線維化の進行と「テロメア短縮」の間には独立した関連が認められ、年齢調整後もなお統計学的に有意な関連性が維持されています。「テロメア短縮」は細胞老化の分子時計として機能し、肝細胞の再生能力低下と炎症の持続化に寄与(きよ)するとされています。

 

5.エピジェネティックな変化

 

DNAメチル化やヒストン修飾の異常が、「脂肪肝」の患者で確認され、老化関連遺伝子発現異常に関与しています (参考7)。

特に、アセチル-CoA代謝の変化が「エピジェネティック修飾」を引き起こし、発がんリスクの増加にも関与することが報告されています (参考8)。

 

ここまでくると・・・これは、本当に「脂肪肝」を温存(?)しながらの「健康寿命」を伸ばすのは、無理かもしれないな〜と思われる方が多いのではないでしょうか。

 

ならば・・・どうすればよいのか?

それについては、後日の話題にしたいと思います。

 

素敵な1週間をお過ごしくださいキラキラ

 

それでは、またバイバイ

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<ブログ後記>9月9日

 

昨夜は、虫の声が聞こえる中で、満月の夜を堪能(たんのう)しました。暑い暑いと言っているうちに、いつの間にか秋の夜の特徴ともいえる「虫の声」を聞いて、少し驚き(おどろき)ました。

 

さて、今回は「脂肪肝」について、お話をさせていただきました。

 

本文では「脂肪肝」としましたが、これまではNAFLD(非アルコール性脂肪性肝疾患)とNASH(非アルコール性脂肪肝炎)と細分化されていました。
しかし、2023年に前者がMASLD(代謝機能障害関連脂肪性肝疾患)となり、
後者がMASH(代謝機能障害関連脂肪性肝炎)に変更され、それに伴い「脂肪肝」の新しい名称は、「脂肪性肝疾患(SLD)」と呼ばれるようになっています。


しかしながら、「脂肪肝」の名称は、いまだにポピュラーなので、こちらを使わせていただきました。

上記の命名変更の背景(はいけい)には、この疾患の概念(がいねん)として、より「代謝機能異常」に焦点を当てたものとなり、「老化関連疾患」としての側面がより明確になったといえるかもしれませんね、

今後は、単なる肝疾患としてではなく、全身の「老化プロセス」を加速させる代謝性疾患として包括的(ほうかつてき)にアプローチすることが求められる:・・と記載された文献もよく見かけるようになっています。

ところで、この「脂肪肝」を改善するには、どうすればよいのでしょうか?


これは、以下のようなことが推奨(すいしょう)されています。

1.体重減少


7-10%の体重減少で肝臓の脂肪化状態の改善、10%以上でMASH(代謝機能異常関連脂肪性肝炎)の改善や線維化の改善が期待できるとされています (参考9)。


体重減少は「炎症マーカー」の改善や「テロメア長」の安定化させることが示されています。

2.食事療法


いわゆる「地中海食」は、肝脂肪減少とインスリン感受性改善に有効であり、抗酸化物質と抗炎症成分の豊富な摂取が「老化プロセス」を遅延させるとされています (参考10)。

 

最新の研究では、地中海食と時間制限食を組み合わせた介入により、より顕著な代謝改善効果が報告されています (参考11)。

3. 時間制限食


間欠的断食や時間制限食による肝脂肪改善効果が複数のランダム化比較試験で報告されており、オートファジー活性化を介した細胞老化の遅延効果も期待されています (参考12)。

4.運動療法


週150分以上の中強度有酸素運動で肝脂肪が20-30%減少し、レジスタンス運動との併用でさらなる効果が得られます (参考13,14)。

 

運動は「テロメラーゼ活性」の向上と「NAD⁺レベル」の改善を通じて、細胞老化を遅延(ちえん)させると考えられています。

5.睡眠
 

睡眠時間や睡眠の質は、「脂肪肝」、とくにMASLD(代謝機能障害関連脂肪性肝疾患)の発症・進展リスクとの関連が示されており、適切な睡眠は概日リズムの正常化とサーチュイン活性の維持に重要であると報告されています (参考15)。

いかがでしょうか?「脂肪肝」が「老化のプロセス」を進行させるという報告が、これだけ報告されていると・・・肝臓のフォアグラ状態などと、笑ってばかりもいられない・・・かもしれませんよね。

 

今回も最後までお付き合いくださり

誠にありがとうございましたお願い

 

参考)

1) Hepatology. 2023 Dec 1;78(6):1966-1986. 

A multisociety Delphi consensus statement on new fatty liver disease nomenclature

Mary E Rinellaら

 

2)Hepatology. 2010 Nov;52(5):1836-46. 

Evolution of inflammation in nonalcoholic fatty liver disease: the multiple parallel hits hypothesis

Herbert Tilgら

 

3)Nat Rev Endocrinal.. 2018 Oct;14(10):576-590.

Inflammaging: a new immune-metabolic viewpoint for age-related diseases

Claudio Franceschiら

 

4)Mitochondrion. 2006 Feb;6(1):1-28. 

Mitochondrial dysfunction in NASH: causes, consequences and possible means to prevent it

Karima Begricheら

 

5)Br J Pharmacol. 2016 Aug;173(15):2352-68.

Hepatic NAD(+) deficiency as a therapeutic target for non-alcoholic fatty liver disease in ageing

Can-Can Zhouら

 

6)Sci Rep. 2021 Sep 9;11(1):18004.

Association between telomere length and hepatic fibrosis in non-alcoholic fatty liver disease

Hee Kyung Shinら

 

7)Curr Diab Rep. 2013 Apr;13(2):229-37.

Epigenetics of insulin resistance: an emerging field in translational medicine

 

8) Genome Med. 2022 Jun 23;14(1):67. 

Acetyl-CoA metabolism drives epigenome change and contributes to carcinogenesis risk in fatty liver disease

Gabriella Assabteら


9) Gastroenterology. 2015 Aug;149(2):367-78.

Weight Loss Through Lifestyle Modification Significantly Reduces Features of Nonalcoholic Steatohepatitis
Eduardo Vilar-Gomez ら

10)  J Hepatol. 2013 Jul;59(1):138-43. 

The Mediterranean diet improves hepatic steatosis and insulin sensitivity in individuals with non-alcoholic fatty liver disease
Marno C Ryan ら

11) Aliment Pharmacol Ther. 2025 Apr;61(8):1290-1309. 
Effects of a 12-Week Mediterranean-Type Time-Restricted Feeding Protocol in Patients With Metabolic Dysfunction-Associated Steatotic Liver Disease: A Randomised Controlled Trial-The 'CHRONO-NAFLD Project'
Sofia Tsitsou ら

12)JHEP Rep. 2021 Feb 17;3(3):100256. 
Treatment of NAFLD with intermittent calorie restriction or low-carb high-fat diet - a randomised controlled trial
Magnus Holmerら

13) J Hepatol. 2012 Jul;57(1):157-66.
 Exercise and non-alcoholic fatty liver disease: a systematic review and meta-analysis
Shelley E Keating ら

14)J Hepatol. 2017 Jan;66(1):142-152. 
Aerobic vs. resistance exercise in non-alcoholic fatty liver disease: A systematic review
Ryuki Hashida ら

15) Sleep Breath. 2023 Oct;27(5):1985-1996. 

Short sleep duration and the risk of nonalcoholic fatty liver disease/metabolic associated fatty liver disease: a systematic review and meta-analysis
Jie Yang ら

 

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こんにちは、内科医 ひとちゃんですニコニコ

 

8月も今日で最後になっていますね。

 

夏も終わり・・・と言いたいところではありますが・・・

9月も猛暑の予想らしく、まだまだ、熱中症の予防を心がけていく必要がありますね。

 

皆さまの体調は、いかがでしょうか? 

 

  (AIで画像を作成)

 

今回は「記憶」と脳の「海馬(かいば)」についてのお話をしてみたいと思います。

 

「加齢」に伴う認知機能低下は、現代社会における重要な健康課題ですよね。

つい最近のニュースでも、2022年に「認知症」で俳優を引退していたブルース・ウィルス(70歳)氏が翌年の2月には、行動や言語に問題を生じさせ、人格を変えるタイプの「認知症」である「前頭側頭型認知症(FTD)を患っていることが公表されていました。

その後、脳のダメージは、速い(はやい)スピードで進行し、今では言葉を通じなくなっているという話題がありました。

 

ブルース・ウィルス氏は、私が好きな映画俳優さんの一人です。それが言葉も通じない・・・というのは、とても不思議な気がします。

 

以前のブログで、過去の記憶、つまり、「長期記憶」は「大脳皮質」に記憶され、「海馬(かいば)」は、短期の記憶を処理して「大脳皮質」で記憶できるようにする役割がある・・・

 

というお話をしたのですが、ブルース・ウィルス氏の病態は、いったい、どのようなものになるのか?・・・と思っていました。

 

不思議に思って・・・調べていたところ、次のようなことが分かったのですね。

 

「海馬」の機能は「新しい記憶の形成(エピソード記憶・陳述記憶)」には、必須であると言えます。

 

「情報」は、まず「海馬」で一時的に統合され、その後「再生・再固定化」を繰り返すことで、大脳皮質へ徐々に長期保存されていきます。

 

この理論は、『システム統合記憶理論』と呼ばれています。

問題は、この過程にかかる時間なのですが・・・この時間が想像以上の長さで、数ヶ月から、数十年かかるとしている論文もあるわけですね。

 

さらに驚くのは・・・「大脳皮質」に保存された記憶も、すべて、「海馬」の正常な働きなしにはスムーズに取り出せない可能性が大きいのだそうです。

 

「海馬」は「記憶痕跡を大脳皮質へリンクするハブ」のような役割を果たしているそうで、具体的には次のようなことになります。

 

「大脳皮質」には、長期的な知識や過去の体験の記録が保存されています。

しかし、それらを呼び出すときに「索引(インデックス)」として「海馬」が使われることがあるのだそうです。

 

例えば、昔の出来事を思い出すとき、「海馬」が複数の皮質領域を同時に活性化させて「全体像」を再構成するという作業が、「脳内」では行われているというわけです。

 

                   (AIで画像を作成)

 

そうであるとすると・・・「海馬」の機能は、記憶全体にとって、極めて重要であるということになりますね。

 

しかしながら・・・「海馬」は年齢とともに萎縮(いしゅく)し、機能が低下していくことが知られています。

 

この時に「海馬」では、どのような変化が起きているのでしょうか?

 

「海馬」の萎縮の根本的原因として、「老化細胞(senescent cells)」の蓄積と「ミトコンドリア機能障害」による悪循環が起きていると考えられています。

 

「ミトコンドリア機能障害」は、細胞老化の原因であると同時に結果でもあり、両者は加齢関連機能低下の複合的フィードバックループを形成するというのですね。

 

「ミトコンドリア機能障害」は、個々のミトコンドリアあたりの呼吸能力低下とミトコンドリア膜電位(MMP)の減少を特徴とし、これに伴い「活性酸素種(ROS)」の産生が増大します。

 

ROSは酸化的リン酸化(OXPHOS)効率を低下させ、さらなるROS産生を誘発する。

 

このような「活性酸素種」の慢性的亢進は、DNA塩基酸化、一本鎖・二本鎖切断、テロメア短縮を引き起こし、p53およびpRb経路の活性化を通じて細胞周期停止(老化)を誘導するというわけです。

 

これが「老化細胞」の「SASP」現象を引き起こし、このことが「海馬」の正常細胞を「老化細胞」化させて、ミトコンドリアの機能障害を誘導する・・・というのですね。

 

このような「悪循環」を断ち切ることができない限り、「海馬」の萎縮傾向は続き、やがて、記憶障害が進行していくということになります。

 

この病態に対する対策として、「NAD+」の鼻腔内への投与やNMNサプリの摂取が有効とされています。

 

JTKクリニックでは、既に実施していますが、「NAD+」を鼻から直接、投与することで脳の中に入ることが可能となります。

 

「NAD+」の分子は、約50KDaと大きいので、血液内の投与では、「脳血液関門」という部分を通過できないので、脳内に入ることができないというのが、その理由となりますね。

 

最近の論文で、「海馬」のミトコンドリアの機能障害を回復させることで、記憶障害を改善させることに成功したという論文があるのですが、

 

これが本当であるとすると加齢に伴う「記憶障害」も改善できることになるわけですが・・・

 

続きは、後日の話題にしたいと思います。

 

 

素敵な1週間をお過ごしくださいキラキラ

 

それでは、またバイバイ

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<.ブログ後記  >9月2日

 

今回は「短期記憶」に関連するはずの「海馬(かいば)」が、大脳皮質に記憶されている「長期記憶」のインデックスになっており、その理由から「海馬」の障害にもかかわらず、昔の記憶が思い出せない可能性もあることについて、お話をしました。

 

もちろん、脳神経の疾患のすべてが、「海馬」の萎縮から始まるわけではありません。

 

「海馬」の萎縮が早期に起こる疾患としては、「アルツハイマー病」や

「軽度認知障害(MCI)」などがあるのですが、

それに対し、「血管性認知症」や「前頭側頭型認知症」では「海馬」領域は保たれる場合が多いとされます。


上記に挙げた疾患において、「海馬」の機能障害が「老化細胞」の増加によるものなのか?或いは、「ミトコンドリア」の異常によるものなのかは・・・

まるで、「鶏(にわとり)」が先か?「卵(たまご)」が先か?

という論争のように答えが明確には出せない・・・と考えられているわけですね。

「海馬」の障害は、「海馬萎縮」から始まることが多いとされていますが、これまでは「「海馬萎縮」について、各種の(海外)文献には以下のように記載されています。

 

「海馬萎縮」は、「老化細胞の蓄積」と「ミトコンドリア機能障害」の両方が複雑に絡み合った結果として起こります。

 

これらは独立した原因ではなく、相互に促進し合う悪循環を形成しています・・・というような感じです。

 

それぞれのストーリーは、以下のようなものになっており、どちらも

合理的なストーリーとなっています。

【1】ミトコンドリア機能障害が老化細胞を誘発する経路

1)活性酸素種(ROS)の増加:機能不全のミトコンドリアから過剰なROSが産生されます


2)ATP産生の低下:エネルギー産生効率が著しく減少します


3)DNA損傷の蓄積:ROSによりDNA損傷、テロメア短縮が起こり、

これにより、p53-p21経路が活性化され、細胞周期の回転が止まり

「老化細胞」が増加する。

【2】老化細胞がミトコンドリア機能をさらに悪化させる経路

1)損傷ミトコンドリアの除去の低下:老化細胞では自食作用が低下し、機能不全ミトコンドリアが蓄積します。
 

2)PGC-1α/β抑制:p53活性化によりミトコンドリア生合成が阻害されます
3)慢性炎症の促進:「SASP(老化関連分泌表現型)」により炎症性サイトカインが放出されます

もちろん、どちらの説であったとしても、JTKクリニックでは治療に困ることはないかもしれません。

 

以前にブログ内でお話をしたように・・・「老化細胞」については、「iPS細胞由来エクソソーム」の投与により「老化細胞」の数を減らすことができるわけです。

 

「iPS細胞由来エクソソーム」の大きさは、一般的に30-150nmの小さなサイズであり、「血液脳関門(けつえきのうかんもん)」を通過しやすいと考えられています。

 

この「血液脳関門」は、脳と血液の間にあるバリア機構で、脳に必要な物質のみを通過させ、有害物質や病原体の脳への侵入を防ぐ役割を持っています。ここを通過できれば、脳(のう)まで、物質は達することを意味しています。

 

一方、「ミトコンドリア」の機能障害については、

脳内でのNAD+増加とミトコンドリア機能の関係については、理論的には強い関連性があると考えられています。

 

どのような影響を当てるかをみてみますと、以下のようになります。

 

1.ATP産生の向上:NAD+は電子伝達系で必須の補酵素として機能し、効率的なATP合成を促進する

 

2.TCA回路の活性化:多くの酵素反応でNAD+が必要で、エネルギー代謝全体が向上する

 

ということになり、間接的な効果としては、

 

3.サーチュイン遺伝子の活性化:NAD+依存性脱アセチル化酵素が活性化され、ミトコンドリア生合成が促進

 

4.PGC-1αの活性化:ミトコンドリア生成の主要調節因子が活性化

5. 抗酸化防御の強化:酸化ストレスからミトコンドリアを保護

 

実際には、いくつかの課題もあると考えられているのですが・・・

クリアできない程の大きな問題ではないと考えられています。

 

このような「海馬」の萎縮による老化の過程は、その進行を戻すことはできないと考えられていました。


しかしながら、最近では、ひょっとして、これを戻せるのではないか・・と考える研究者が出てきたわけです。

 

実際に最近、発表された論文で面白い(おもしろい)知見が得られています。その一部を紹介しますと、以下のようなものになります。

アメリカのカリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)の研究チームは、「加齢によって脳内で特に増えているもの」の中に「老化」を引き起こす「真犯人」がいるのではないかと考えたのだそうです。

この研究では、若いマウス(生後3か月)と老齢マウス(18~20か月)を比べ、脳の中でも記憶に深く関係する「海馬」という場所で特に増えているタンパク質や遺伝子がないかを詳しく調べました。
 

さまざまな解析を行った結果、年老いたマウスの「海馬」で特に目立って増えているタンパク質をひとつ見つけることができました。
それが「FTL1(フェリチン軽鎖1)」というタンパク質でした。
 

「FTL1(フェリチン軽鎖1)」は、細胞内にある「フェリチン」という複合体を構成するタンパク質の一つで、もともとは細胞の中に鉄を蓄える役割を持っています。
 

「老齢マウス」の「海馬」では、「FTL1(フェリチン軽鎖1)」が異常に増えており、しかもFTL1が多ければ多いほど、記憶テストでの成績が悪くなるという関係が明らかになりました。

さらに「FTL1(フェリチン軽鎖1)」若いマウスで人工的に増やしたら、実際に脳が老化するか?という逆方向の検証を行いました。
 

するとその結果、「FTL1(フェリチン軽鎖1)」を増やした「若いマウス」の脳は、本来若いマウスが示すはずのシナプスの働きが弱くなり、記憶や学習の能力もはっきりと低下してしまいました。

一方で研究チームはを減らしたら逆に脳の働きを取り戻せるのかも検証しました。
老齢マウスの脳で「FTL1(フェリチン軽鎖1)」を減らすと、今度は神経ネットワークの働きがよくなり、シナプスの活動が再び活性化ししたそうです。「老化細胞」の数は変化していないことがポイントです。
その結果、記憶力のテストでの成績も明らかに改善し、「老いたマウス」の脳が若い脳に近づくような回復が認められたそうです。

では、なぜ、「FTL1(フェリチン軽鎖1)」が増えると脳が老化するのでしょうか?


研究チームがさらに詳しく調べると、「FTL1(フェリチン軽鎖1)」が増えることで神経細胞のエネルギー産生が低下することがわかりました。
「ミトコンドリア」がエネルギーである「ATP」を作り出すのは、ヒトもマウスも同じわけですが・・・


「FTL1(フェリチン軽鎖1)」が多くなりすぎると、「ミトコンドア」のエネルギー産生がうまくできなくなってしまったというのですね。


そこで研究者たちは、エネルギー不足を補うために細胞にエネルギーを供給する役割を持つ「NADH」という物質を投与する実験も行いました。すると、マウスの記憶に改善が認められたというのですね。

つまり、「老化細胞」の増加でなく、「ミトコンドリア」のエネルギー産生が低下することが、マウスの老化による記憶障害を引き起こした可能性を見出したわけです(参考1)。

 

ヒトとマウスは、まったく同じではないかもしれませんが、

マウスの「FTL1(フェリチン軽鎖1)」と同様に機能するタンパクがあるかどうかは別として、

「ミトコンドリア」のATP産生の異常が、「老化細胞」の増加より先に生じている可能性が高い・・・と考えても大きな矛盾(むじゅん)はないかもしれませんよね。

 

ならば・・・ヒトの「海馬」を含めた脳で「ミトコンドリア」の

ATP産生を増加させる「NAD+」を増加させることは、

先に挙げた「海馬」の萎縮を早期から示す「アルツハイマー病「や

「軽度認知障害(MCI)」などの発症予防や進行抑制には有効性が期待できるのではないか・・・という考え方は、大きな矛盾はないように

思えてきます。

 

論文の中では「NADH」であったわけですが・・・

 

実は、「NAD+」との関係をみてみますと

 

「NAD+」と「NADH」は、可逆的な酸化還元反応により変換される関係にあると考えられているのですね。

 

NAD+(酸化型)+ H⁺ + 2e⁻ ⇌ NADH(還元型)

NAD+ + NADH = 総NADプール(比較的一定)

 

ここは、私の苦手なところなのですが・・・

 

「NAD+補充療法」の目的は、総NADプールの増加とNAD+/NADH比の最適化の両方なのだそうで、

単純にNADHを増やすことではなく、代謝の柔軟性を高めることが重要とされています。

 

つまり、適度の「NAD+」の投与は、総NADプールの増加とNAD+/NADH比の最適化の両方を実現することが可能であるということになります。

 

では、「海馬」をはじめとする「NAD+」を増加させるか?・・・ということになります。

 

本文内でお話をしたように「血液脳関門」は分子量が大きいので、「血液脳関門」を通り抜けることは不可能であると考えられています。

では、どうするか?

 

ここで出てくるのが・・・「鼻腔内投与(intranasal delivery)」は、「血液脳関門」を迂回して薬物を直接脳内に送達する革新的手法である。この経路は、鼻腔と脳を結ぶ独特な解剖学的構造を利用する投与法となります。

 

この鼻腔内投与の「薬物動態学的な優位性」は以下のようなものになっています。

 

1)迅速な脳内到達: 投与後15-30分以内に脳内濃度ピークを達成

 

2)高い生体利用率: 血液脳関門迂回により10-100倍の脳内濃度向上

 

3)標的特異性: 脳組織への選択的送達により全身副作用軽減

 

4)非侵襲性: 外科的処置不要の患者にやさしい投与法

 

5)反復投与可能性: 長期治療への適用が容易

 

などが報告されているわけですが、さらに「NAD+」の鼻腔内投与の効果を最大化するためには、以下の統合的アプローチが重要であると

考えられています。

 

1.運動療法: 有酸素運動によるBDNF産生促進

2.食事療法: 抗酸化物質豊富な食品摂取

3.睡眠衛生: 記憶固定化促進のための良質な睡眠

4.認知トレーニング: 海馬-皮質ネットワーク強化

ここまできて、食事療法や運動療法が出てくることにニヤけてしまうのは、私だけかもしれませんが・・・

近い将来には「NAD+の鼻腔内投与」を含む、総合的な「認知症予防」のプログラムが出てくるかもしれませんね。

 

今回も最後までお付き合いいただきまして

誠にありがとうございましたお願い

 

参考)

1)Nat Aging. 2025 Aug 19. doi: 10.1038/s43587-025-00940z. Online ahead of print.

Targeting iron-associated protein Ftl1 in the brain of old mice improves age-related cognitive impairment

Jaura Remesalら

 

など

 

   (夏の陽射しの中の丸の内仲通り)

          (筆者撮影)

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理事長・ 院長  

小笠原  均  (Hitoshi Ogasawara)   

医学博士, 内科医

(総合内科、リウマチ専門医)

(新潟大医学部卒)

 

 

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