こんにちは、内科医 ひとちゃんですニコニコ

 

早いもので、3月も半ばとなっていますね。

東京の桜は、3月18日ごろから開花し、25日頃からは満開になるのだとか。いよいよ、本格的な春の到来が期待できそうです。

 

皆さまの体調は、いかがでしょうか?

 

 

(AIで画像を作成)

 

今回は「肥満」、とくに「内臓脂肪型肥満」について、お話をしてみたいと思います。

 

現代の医学において、「肥満」は最も深刻な健康課題のひとつであるとされています。

WHO(世界保健機関)の報告では、世界中で成人の約39%が太り気味(過体重)であり、その割合は増え続けていることが報告されています。

 

「肥満」は単に「体重が重い」という問題ではなく、心臓病、糖尿病、がん、脳卒中といった命に関わる病気の引き金となり、年間約400万人の死に関与していると推定されています(参考1)。

 

そして、(繰り返しになるかもしれませんが)近年の医学の中で分かってきたことは、「どれくらい太っているか(量)」よりも「どこに脂肪がついているか(場所)」の方が重要であるということです。

 

どのようなことか?・・・と言いますと、お腹の中に脂肪が溜まる(たまる)「内臓脂肪型肥満」は、見た目以上に健康への悪影響が強いことが明らかになっています(参考2)。

 

これまでにも「内臓脂肪型肥満」は、「動脈硬化」や「糖尿病」を発症すやすくなり、また、それらの「病態」を悪化させることは、話題としてきたのですが・・・実は「内臓脂肪」の存在は、ヒトの寿命(じゅみょう)そのものを縮めて(ちぢめて)しまうわけですね。

 

(AIを用いて画像を作成)

体重(kg)を身長(m)の2乗で割った「BMI」と死亡率の関係を調べると、多くの研究で以下のような「J字型」のグラフになることが分かっています。

 

 

約90万人を対象とした解析では、「BMI」が22.5~25.0の範囲で最も死亡リスクが低く、そこから「BMI」が5上がるごとに死亡率は約1.3倍ずつ上昇します(参考3)。

 

特に若い世代や男性において、この傾向は顕著であると報告されています(参考4)。

 

BMIが30~35になると平均余命は2~4年、BMI 40~45では8~10年も短くなると推計されています。

 

なぜ、「内臓脂肪」は、命を短くしてしまうほど、「リスク」が高いものであるのか?・・・という話題になっていくわけですが、続きは後日の話題にしたいと思います。

 

素敵な1週間をお過ごしくださいキラキラ

それでは、またバイバイ

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<ブログ後記>3月17日

今回は、「内臓脂肪型肥満」について、お話をさせていただきましたが・・・

「内臓脂肪型肥満」はなぜ、生命を脅かす(おびやかす)ほどリスクが高いのでしょうか?

その理由は、「内臓脂肪」は単なる脂肪の塊ではなく、全身の炎症や動脈硬化・心筋梗塞・脳卒中リスクを高める多数の物質(アディポカインやサイトカイン)を分泌する「内分泌臓器」とみなされる・・・からという理由になります。その特徴をみますと、以下のようなものになります。

 1)内臓脂肪は「活発すぎる」


 内臓脂肪は、ホルモンなどの刺激に敏感で、脂肪を分解して「遊離脂肪酸」という物質を放出しやすい性質があります(参考5)。

2)肝臓への直行便


最も重要な点は、内臓脂肪が「門脈(もんみゃく)」という大きな血管を通じて、直接肝臓に繋がっていることです(参考6)。

内臓脂肪から漏れ出した脂肪分や炎症物質は、フィルターを通らずに直接肝臓を攻撃し、全身の代謝を狂わせます。

3)免疫細胞の巣窟


内臓脂肪の中には、免疫細胞(マクロファージ)が集まりやすく、そこが炎症の火種となります(参考7)。

若干、ファンタジックな見出しになってしまいましたが・・・

 

上記のような性質から、「内臓脂肪型肥満」の脂肪は、「毒を出す臓器」に変化するといっても過言ではありません。

以前は「内臓脂肪」は、単なる「エネルギーの貯蔵庫」だと以前は思われていました。

 

しかし、現在では、様々なホルモンを分泌する「人体最大の分泌臓器」であると考えられています。

 

例えば、「内臓脂肪」が溜まると、「ホルモン(アディポカイン)」のバランスが崩れ、低下することが分かっています(参考8)。

この「アディポカイン」は以下のことに深く関与するとされています。

1)糖代謝・インスリン感受性の調節
2)エネルギーバランスの維持
3)炎症・免疫応答の制御
4)血管機能・動脈硬化への影響

このように「アディポネクチン」は、 本来、ヒトの身体を良い状態に保つように働く善玉ホルモンですが、「内臓脂肪」が増えると逆に分泌が減ってしまうわけですね。


このことが、「動脈硬化」や「糖尿病」を加速させ、TNF-αやIL-6といった「炎症を引き起こす物質」であるサイトカインが大量に放出されます(参考9)。

そして、これらのサイトカインが血液に乗って全身を巡り、血管や臓器を傷つけます。

さらに「内臓脂肪型肥満」が寿命を縮める最大の特徴は,「慢性低グレード炎症」にあると言われています(参考10)。

 

このメカニズムは、次のようなものになります。

さらに過栄養により脂肪細胞が「トリグリセリド」を蓄積し、細胞が大きくなりすぎると(肥大化)しますと、これらの細胞が「低酸素状態(虚血)に陥ります(おちいります)。
 

そのような状態になりますと、脂肪細胞にアポトーシスなどの細胞死が起こり、細胞の内容物(脂質・DAMPsなど)が細胞外に漏出します。


これで終わりではなく、死んだ細胞を貪食しようと「M1型マクロファージ」が集まるということになります。
「M1型マクロファージ」 とは、免疫活性型のマクロファージでしたね。
なので、・・・「M1型マクロファージ」は、TNF-α、IL-6、IL-1βなどの炎症性サイトカインを大量に分泌します。これらが血液に乗って全身を巡り、血管や臓器を傷つけるとされています(参考11)。

こうしたことで起こる「免疫応答」が「慢性低グレード炎症」として、各種の臓器を障害していくわけですね。

少しだけ、大きい視点で見てみると・・・これら「炎症性サイトカイン」の高い状態が「細胞老化(セネセンス)」を促進することが多くの研究で示されています。

 さらに周囲の細胞にも老化を波及させる因子と考えられています。
 

従って、これらを慢性的に上げる生活習慣や疾患(肥満・内臓脂肪・慢性感染など)は、老化スピードを高める方向に働く可能性が高いといえます。

実際にIL‑1βは、老化細胞が分泌するSASPの中核であり、周囲細胞を「老化細胞」を起こす鍵となる分子とされていますし(参考12)、
IL‑1βとTNF‑αは、ともに他臓器(脳・肝・椎間板など)の老化・機能低下を促進することが報告されているのですね(参考13,14)。

このような観点から考えますと、中年太り(内臓脂肪型肥満)であるにも関わらず、「健康長寿」を夢見ていることが
いかにナンセンスなことであるかがお分かりいただけるのではないかと思ったりもしますね。

 

今回も最後までお付き合い頂きまして

誠にありがとうございましたお願い

 

参考)

1)Lancet Diabetes Endocrinol. 2018 Dec;6(12):944-953. 

Association of BMI with overall and cause-specific mortality: a population-based cohort study of 3·6 million adults in the UK Krishnan Bhaskaranら

 

2)Lancet Diabetes Endocrinol. 2019 Sep;7(9):715-725. 

Visceral and ectopic fat, atherosclerosis, and cardiometabolic disease: a position statement 

lan J Neelandら

 

3)Lancet. 2009 Mar 28;373(9669):1083-96.

Body-mass index and cause-specific mortality in 900 000 adults: collaborative analyses of 57 prospective studies

Gary Whitlockら

 

4)Lancet. 2016 Aug 20;388(10046):776-86.  

Body-mass index and all-cause mortality: individual-participant-data meta-analysis of 239 prospective studies in four continents

Emanuele Di Angelantoniaら


5)Front Cardiovasc Med . 2023 Jul 27:10:1187735.
Visceral adipose tissue and residual cardiovascular risk: a pathological link and new therapeutic options
Arturo Cesaroら

6)Diabetol Metab Syndr. 2011 Jun 22:3:12.
Visceral adiposity, insulin resistance and cancer risk
Claire L Donohoeら

7)J Clin Endocrinol Metab. 2004 Jun;89(6):2548-56.
 Adipose tissue as an endocrine organ
Erin E Kershawら

8)Front Cardiovasc Med. 2020 Feb 25:7:22.
Adipose Tissue Distribution, Inflammation and Its Metabolic Consequences, Including Diabetes and Cardiovascular Disease
Alan Chaitら

9)Nutrients. 2020 May 3;12(5):1305.
Obesity, Bioactive Lipids, and Adipose Tissue Inflammation in Insulin Resistance
Iwona Kojtaら

10)Biomed Pap Med Fac Univ Palacky Olomouc Czech Repub. 2019 Feb;163(1):19-27.
 Visceral fat and insulin resistance - what we know?
Karolina Janochovaら 

11)Front Cardiovasc Med. 2020 Feb 25:7:22.
Adipose Tissue Distribution, Inflammation and Its Metabolic Consequences, Including Diabetes and Cardiovascular Disease
Alan Chaitら

12)Aging (Albany NY). 2012 Dec;4(12):932-51.
 IL1- and TGFβ-Nox4 signaling, oxidative stress and DNA damage response are shared features of replicative, oncogene-induced, and drug-induced paracrine 'bystander senescence'
Sona Hubackovaら

13)Biomed Pharmacother . 2020 Nov:131:110660.
The role of IL-1β and TNF-α in intervertebral disc degeneration
Yongjie Wangら

14)Int J Mol Sci. 2023 Mar 9;24(6):5217.
 Secretory Factors from Calcium-Sensing Receptor-Activated SW872 Pre-Adipocytes Induce Cellular Senescence and A Mitochondrial Fragmentation-Mediated Inflammatory Response in HepG2 Cells
Lautaro Briones-Suarezら

 

(夜の東京駅舎の風景)

(筆者撮影)

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こんにちは、内科医 ひとちゃんですニコニコ

 

青い空は広がっていますが、強い風が吹いています。

天気図を見てみると、西高東低の気圧配置で、日本海側を中心に雪や吹雪となっているのだとか。このあと、風のやや強い状態が続くのだそうです。

 

まだ、本格的な春は来ないのか?・・・と気持ちは落ち着かない気がします。

 

米国の思想家であり、哲学者、作家、詩人、エッセイストでもある

ラルフ・ワルド・エマーソンの言葉に次のようなものがあります。

 

"Adopt the pace of nature: her secret is patience"

自然のペースに従え。その秘訣は忍耐である 

 

植物が無理に開花させずに着実に成長するように、急ぐのをやめ、

ストレスを減らし、「今この瞬間を大切にせよ」という呼びかけなのだそうです。

 

皆さまの体調は、いかがでしょうか?

 

(AIで画像を作成)

 

前回は、「IPS細胞」についてお話をさせていただきました。

 

今回は、最近、話題になることに多い「腫瘍溶解ウイルス療法(Oncolytic Virus:OV療法)」が注目されています。

 

この「腫瘍」とは、「癌」のことですね。

 

今回は、この「腫瘍溶解ウイルス(OV)療法」が、どのようなメカニズムにより、「癌の治療」に役立つのか?・・・というお話をしてみたいと思います。

 

初めて、この言葉を聞く方もいらっしゃるかもしれませんね。

 

実は「癌細胞」に「ウイルス」を感染させることにより破壊する治療法の開発は、20世紀後半からずっと行われていました。

 

「癌細胞」では、よく増殖し、「正常細胞」では増殖しにくいように

細工した「ウイルス」が使われ、これまでに多くの「腫瘍溶解ウイルス(OV)」が開発されているのですね。

 

ただ、いくら「癌特異的」と言っても、全ての癌細胞に感染し全て殺してしまうことは至難の業(しなんのわざ)であったわけです。

 

このような理由から、その開発が停滞した時期もあったわけですが、最近になり、癌に対する「免疫細胞」の力が再認識(さいにんしき)されることで、再び、注目されるようになったわけですね。

 

 

(AIを用いて画像を作成)

 

では、「腫瘍溶解ウイルス(OV)」は、どのようなメカニズムにより、「癌細胞」に侵入することができるのでしょうか?

 

「癌溶解ウイルス(OV)」が、正常細胞を傷つけずに「癌細胞」で特異的に増殖できる理由は、「癌細胞」における幾つかの「分子異常」を利用しているためであるとされています。

 

以下に「癌細胞」に特異的な分子異常をご紹介したいと思います。

 

1.抗ウイルス応答(IFN経路)の欠損

 

正常細胞には、ウイルス感染を検知すると「インターフェロン(IFN)」を産生し、「PKR(プロテインキナーゼR)」の活性化を介して翻訳を停止させ、増殖を抑制するメカニズムがあります。

 

しかしながら、多くの「癌細胞」では、この「抗ウイルス経路」が破綻(はたん)しており、ウイルスが複製が優位になることが分かっています(参考1,2)。

 

2.Rasシグナルの恒常的活性化

 

「Ras(ラス)遺伝子」変異を持つ細胞では、PKRが抑制されるため、ウイルスの増殖が促進される。

 

「Ras遺伝子」は、細胞の増殖・分化・生存を制御するタンパク質をコードする「がん遺伝子」のグループ(KRAS、NRAS、HRAS)ですね。

 

通常は一時的に活性化し増殖を管理しますが、変異すると活性化状態が持続し、異常増殖(がん)を誘発するとされています。

 

このような状態になると、「癌溶解ウイルス(OV)」が癌細胞のなかに侵入しやすくなり、その後のウイルス複製が活発になります。

 

3.p53機能喪失と細胞周期制御異常

 

「細胞周期」が常に回っている「癌細胞」は、ウイルス複製に必要なDNA合成系が活性化していることが分かっています。

 

「p53遺伝子(TP53)」は、「癌抑制遺伝子」でして、細胞の癌化を防ぐため「ゲノムの守護者」と呼ばれていましたね。

 

通常の場合は、「DNA損傷」や「ストレス」を検知し、細胞周期の停止・修復、またはアポトーシス(細胞死)を誘導して異常細胞の増殖を防ぎます。

「p53遺伝子(TP53)」が変異すると・・・細胞は「癌化」しやすくなるとされています。

 

実際に・・・ヒト悪性腫瘍の約50%が、「p53遺伝子(TP53)」の変異を持つことは、これまでにも繰り返し報告されています(参考3,4)。

 

さらに遺伝子工学的には、ウイルス表面の「外被タンパク」を遺伝子改変で「癌に特異的受容体」への結合を高めたり、癌細胞でのみ作動するプロモーターを使って「侵入後にだけ」増えるよう設計されているのですね。

 

 

「癌溶解ウイルス(OV)」は、癌細胞のなかに侵入し、増殖を始める

わけですが・・・名前のとおりに「癌細胞を」を破壊してしまうわけですね。

 

その後、ヒトの「免疫細胞」が総動員されて、一気に「癌細胞」を破壊する戦闘体制になっていくわけですが・・・

お話の続きは、後日の話題にしたいと思います。

 

素敵な1週間をお過ごしくださいキラキラ

 

それでは、またバイバイ

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< ブログ後記 >3月10日

今回は、今話題の「腫瘍溶解ウイルス(OV)療法」について、お話をさせていただきました。
JTKクリニックも臨床研究レベルですが、ある種の「腫瘍溶解ウイルス(OV)」の投与を依頼される機会も多くなってきています。

感染後、ウイルスは癌細胞内でコピーされ、最終的には「細胞膜破壊(ウイルス誘導細胞死)」→ウイルス放出が起こるとされています(direct oncolysis)(参考5)、

さらに癌細胞を破壊(溶解)すると同時に、強い「抗腫瘍免疫」を誘導することが特徴であるとされています(参考6)
 

 

免疫細胞について、その動きを見ますと・・・
 

「NK細胞」も活性化するのですが・・・


「NK細胞」は、MHCクラスI分子の発現が低下した(免疫逃避を図る)癌細胞を直接攻撃するとされていますので重要です。
 

「腫瘍溶解ウイルス(OV)」療法下では、以下のメカニズムにより NK細胞の活性が最大化されます。

1)リガンド発現の上昇:

 

「腫瘍溶解ウイルス(OV)」の感染により、細胞表面にNKG2Dリガンド(MICA/Bなど)やDNAM-1リガンドが誘導され、NK細胞の認識能が高まります。

2)サイトカインによる活性化

 

感染細胞や周囲のマクロファージから放出されるIFN-α、βやIL-12が「NK細胞」を強力に活性化します。

3) IFN-γ(インターフェロン・ガンマ)の産生

活性化NK細胞は多量のIFN-γを分泌し、後述する樹状細胞の成熟やCT「細胞障害性T細胞(CTL ,CD8+T細胞)」の動員を強力にバックアップします。

CTL(細胞傷害性T細胞,CD8+T細胞)については、次のようになります。

「腫瘍溶解ウイルス(OV)療法」の最終的な目標は、癌特異的な「細胞障害性T細胞(CTL,CD8細胞)」の誘導であるとされています。

1)多様な抗原認識:

 

ウイルスによる「多焦点的な」細胞溶解により、単一の抗原標的ではなく、複数の腫瘍抗原に対するCTLが誘導される(Antigen Spreading)。

2) 腫瘍浸潤の促進

 

TMEにおけるケモカイン(CXCL9, CXCL10など)の発現上昇により、全身を循環するCTLが腫瘍内に効率よく集積する(参考7)。

次に「癌関連線維芽細胞(CAF)」についてですが・・・

 

臓器の癌、つまり「固形癌」が難治性である最大の問題点は、以前にもブログ内でお話をしたように癌の周囲や癌の組織内に存在している「癌関連線維芽細胞(CAF)」であろうと考えられます。

「癌関連線維芽細胞(CAF)」の存在する癌組織では、次のような問題が起きてきます。

「癌関連線維芽細胞(CAF)」の最も顕著な特徴は、大量の細胞外マトリックス(ECM)を産生することです。これにより、以下に示すようなころが問題になってきます。

1線維化(デスモプラジア)

「癌関連線維芽細胞(CAF)」は、コラーゲンやヒアルロン酸を過剰に分泌し、組織を「線維化」させます。これにより、癌組織は非常に硬くなります。

2,薬剤送達の阻害

 強固な線維化は組織内の圧力を高め、血管を押しつぶします。その結果、抗癌剤などの治療薬が癌細胞まで届きにくくなる「物理的なバリア」として機能します。
 

3.癌細胞の増殖と転移の促進

「癌関連線維芽細胞(CAF)」は,癌細胞に対して「肥料」を与えるような役割を果たします。その理由は、

1)成長因子の放出: HGF(肝細胞増殖因子)やEGF(上皮成長因子)などを分泌し、癌細胞の増殖を直接促します。

2)上皮間葉転換(EMT)の誘導:「癌関連線維芽細胞(CAF)」が放出するTGF-βなどのシグナルにより、癌細胞は移動能力の高い性質(EMT)を獲得し、血管やリンパ管へと浸潤しやすくなります。

この上皮間葉転換(EMT)をした癌細胞は、血管壁を通り抜けますので、遠方に転移することが
できる細胞ですね。癌が画像で確認できる3~5年前から、血液中の確認できる「血中腫瘍細胞検査
(CTC検査)のType2.の細胞ということになりますね。

4.免疫逃避のメカニズム

「癌関連線維芽細胞(CAF)」は、本来癌を攻撃するはずの「免疫システム」を抑制する環境(免疫抑制的微小環境)を作り出します。

1)免疫細胞の排除: 「癌関連線維芽細胞(CAF)」は線維の壁を作ることで、「細胞障害性T細胞(CD8+細胞」や「NK細胞」などの免疫細胞が「癌細胞」に接触するのを物理的に阻害します。

2)癌組織自体を免疫抑制状態する
 
免疫抑制状態の癌の組織は、T細胞などの免疫細胞の浸潤が少ない「Cold Tumor(冷たい腫瘍)」と呼ばれており、その組織内部の「マクロファージ」がM2型(免疫抑制)になっていることが報告されています。

「免疫治療」として、NK細胞や細胞障害性T細胞を投与しても、「Cold Tumor(冷たい腫瘍)」の状態では、これらの細胞が「癌組織」の前を素通り(すどうり)すると報告されるぐらい、免疫抑制状態になることもあるとされています。

この状態は、免疫抑制性の「腫瘍微小環境(TME)」と呼ばれます。


3)代謝のリプログラミング

 「癌関連線維芽細胞(CAF)」と癌細胞の間では、特殊な栄養のやり取りが行われています。

「癌関連線維芽細胞(CAF)」は自らの代謝を変え、乳酸やピルビン酸などのエネルギー源を癌細胞に供給します。これにより、酸素が少ない過酷な環境下でも「癌細胞」が生きていけるようサポートをするとされています。

上記の「Cold Tumor(冷たい腫瘍)」を 「癌関連線維芽細胞(CAF)」が覆い尽く(おおいつく)し,癌組織内にも混在しているわけですが、「腫瘍溶解ウイルス(OV)」の投与しますと・・・癌細胞を壊すだけでなく、 「癌関連線維芽細胞(CAF)」にも影響を与えることが報告されています。

上記の状態に対して、「腫瘍溶解ウイルス(OV)」は、癌細胞を溶解するだけでなく、「腫瘍微小環境(TME)」の主要構成要素である「癌関連線維芽細胞(CAF)」なども標的になり得ることが、近年明確になってきています。

「癌関連線維芽細胞(CAF)」は、癌の増殖・浸潤・免疫抑制に深く関与するため、「腫瘍溶解ウイルス(OV)」による「癌関連線維芽細胞(CAF)」は治療成績向上の重要な戦略と考えられています。

 

つまり、「腫瘍溶解ウイルス(OV)療法」 は、免疫抑制性の「腫瘍微小環境(TME)」に対しても、以下のような作用を示すことになります。

 

  (1) 免疫抑制性「腫瘍微小環境(TME)」の解除
    

 炎症性サイトカイン・I型IFN誘導により、抑制的な「腫瘍微小環境(TME)」が免疫活性化型へ変化
  

(2)癌組織内のマクロファージが、活性型のM1型になり、「細胞障害性T細胞(CTL,CD8+T細胞)」が浸潤するようになる。
 

このような状態を「Hot Tumor(熱い腫瘍)」と呼び、腫瘍内部に免疫細胞、特にT細胞が豊富に存在し、活発な免疫応答が起こっている腫瘍です。


「腫瘍溶解ウイルス(OV)が、癌細胞に感染すると、癌に対する抗がん剤などの「薬剤抵抗性」を改善する可能性があることが報告されています。

「腫瘍溶解ウイルス(OV)療法」は、抗がん剤治療においても、当院のように抗がん剤治療+NK細胞+「細胞障害性T細胞(CTL,CD8+T細胞)」の混合療法でも期待が持てる可能性がありますね。

 

今回も最後までお付き合いいただきまして

誠にありがとうございましたお願い

 

参考)

1)Front Oncol. 2017 Sep 8:7:195. 

Oncolytic Viruses-Interaction of Virus and Tumor Cells in the Battle to Eliminate Cancer

Anwen Howellsら

 

2)Front Immunol. 2024 Oct 4:15:1473288. 

Oncolytic virotherapy against lung cancer: key receptors and signaling pathways of viral entry 

Wenxun Dongら

 

3)J Intern Med. 2025 Aug;298(2):78-96. 

The TP53 tumor suppressor gene: From molecular biology to clinical investigations 

Panagiotis Baliakasら

 

4)Cancer Cell Int. 2021 Dec 24;21(1):703. 

p53 signaling in cancer progression and therapy 

Hany E Mareiら

 

5)Nat Biotechnol . 2012 Jul 10;30(7):658-70.
 Oncolytic virotherapy
Stephen J Russellら

 

6)Int J Mol Sci. 2025 Oct 7;26(19):9770.
Mechanisms of Oncolytic Virus-Induced Multi-Modal Cell Death and Therapeutic Prospects
Jinzhou Xuら

 

7)Trends Cancer . 2023 Feb;9(2):122-139.
The emerging field of oncolytic virus-based cancer immunotherapy
Rui Maら

 

 

 

(ホテルニューオータ二東京:春の予感)

(筆者撮影)

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こんにちは、内科医 ひとちゃんですニコニコ

 

3月最初の休日の午後となっています。

これまでよりも陽射し(ひざし)が強くなっているような気も致します。

今朝は、鳥のさえずりで目を覚ました朝でした。

 

『ウォールデン 森の生活』の著者で知られるアメリカの作家・思想家であったHenry David Thoreau(ヘンリー・デイヴィッド・ソロー)との調和、シンプルライフの重要性を強調していたそうです。

 

彼は、次にような名言を残しています。


“The first song of a bird is the herald of spring — a voice that says the world is awakening.”


「鳥の最初の歌は春の先触れ——世界が目覚めていると告げる声だ。」
 

皆さまの体調は、いかがでしょうか?

 

(AIで画像を作成)

 

最近、話題となっている「IPS細胞」について、お話をしてみたいと思います。

 

あらゆる細胞に変化できる「iPS細胞」を使った2つの再生医療製品について、厚生労働省の専門家部会は2月19日、国内での製造販売承認を了承していますね。


2006年に京都大の山中伸弥教授がマウスの細胞を使って「iPS細胞」を作製して20年となります。

 

「iPS細胞」を使った製品として世界で初めて実用化されるわけですね。承認が了承されたのは、大阪大発ベンチャーのクオリプスによる重い心不全治療に使う心筋シート「リハート(商品名)」と、住友ファーマによるパーキンソン病治療のための神経細胞「アムシェプリ(商品名)」。

 

これらの2つの製品は、京都大学iPS細胞研究財団がストックする第三者のiPS細胞を使ってつくられたのだそうです、

 

どちらの製品も再生医療製品をいち早く患者に届けるための、「条件・期限付き承認制度」での承認が了承されたわけですが、これは、

通常の薬の治験よりも少ない数の患者のデータで安全性や効果を判断され、有効性は効果があると推定できればよいのだそうです。

 

本承認されれば、「iPS細胞」を用いての新しい治療が、今後、多くの

患者さんを救えるようになるわけですね。

 

そこで、この「iPS細胞」の分子機構、臨床試験の現状、そして将来の課題について、2025年時点までの最新知見をお話をしてみたいと思います、

 

「iPS細胞(人工多能性幹細胞)」は、どのように作成されたのか?・・・という話題から始めてみたいと思います。

 

山中先生は2007年に、ヒト線維芽細胞にOct3/4、Sox2、Klf4、c-Mycの4因子(山中因子)を導入することにより、「iPS細胞」を樹立することに成功しました(参考1)。

 

この4つの因子は協調して、細胞のエピゲノムを再構成することができるのですね(参考1)。

 

4つの因子は協調して細胞のエピゲノムを再構成する性質を持ちます。

 

「エピゲノム」とは聞き慣れない言葉であるかもしれませんが・・・

DNA配列そのものは変えずに遺伝子の発現を制御する化学的な「修飾(しゅうしょく)」の総称ということになります。

 

具体的には「DNA」のメチル化や「ヒストン」の修飾(アセチル化、メチル化など)、クロマチン構造の変化などが含まれます。

 

つまり、「エピゲノムの再構成(リプログラミング)」とは、こうしたDNAやヒストンの修飾のパターンをリセットしたり、別の状態に書き換えたりすることを指します。

 

(AIを用いて画像を作成)

 

次に4つの因子を詳しく、見てみたいと思います。

 

1)Oct3/4 (POU5F1)

 

多能性維持の中核をなす。Sox2と複合体を形成し、Nanog等の多能性遺伝子ネットワークを活性化する。


2) Sox2

 

パイオニア転写因子として機能し、閉じた状態のクロマチンに結合して構造を開き、他の因子が結合できるようにする。

3)Klf4

細胞増殖に関与するとともに、体細胞特異的な遺伝子の抑制を助ける。

4) c-Myc

クロマチンリモデリングを広範囲で促進し、初期化効率を飛躍的に高めるとされています。

 

この「c-Myc」は、癌増殖遺伝子でして、発癌リスクに関連するため、現在は「L-Myc」への代替や「c-Myc」を除いた手法も一般化しています(参考1)。

「エピゲノムの再構成(リプログラミング)」は、DNAメチル化の解消やヒストン修飾の変化を経て、その後期には、更なる外部からの因子(外因性因子)を必要とせず、多能性ネットワークが持続的に転写を

開始されるわけですね。

 

つまり、ある細胞にOct3/4 (POU5F1), Sox2, Klf4, L-Mycを導入しただけで、DNAなどのメチル化、アセチル化という修飾が変わり、どのような臓器にも分化可能な「多能性幹細胞」に変化するということに

なりますね。

 

なんとも摩訶不思議(まかふしぎ))な話ではありますが、「iPS細胞」を使った2つの再生医療製品による治療成績が良ければ、さらに多くの方の病状を改善していくことが期待できますよね。

 

素敵な1週間をお過ごしくださいキラキラ

 

それでは、またバイバイ

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<ブログ後記>3月3日

今日は、ひな祭りですね。「桃の節句」と呼ばれるのは、旧暦の3月3日が「桃の花」の咲く季節にあたるからと聞いたことがあります。
 

ひな祭りは、平安時代の宮中行事「上巳(じょうし)の節句」に由来するのだとか。長い歴史を感じますね。

今回は「iPS細胞」についてのお話をさせていただきました。

こちらは、これからの歴史を作り出していくものかもしれません。

 

本文内の2社以外にも、iPS細胞から作成した「神経のもととなる細胞」を脊髄(せきずい)損傷患者に移植する再生医療製品の実用化に向け、慶応大発ベンチャー「ケイファーマ」が、2027年中にも臨床試験(治験)を開始すると発表しておりまして。脊髄損傷が対象の「iPS細胞」を使う治験は世界初であるそうです。

当クリニック(JTKクリニック)は、既に(すでに)自分自身の細胞から作成した「iPS細胞」を保存する事業の窓口になっています。


「iPS細胞」の保存といっても、もちろん「JTKクリニック」内で保存するわけでなく、「I Peace, Inc(アイ・ピース、本社:米国カリフォルニア州)」社の管理のもと、米国と日本国内の専用施設内で保存されることになっています。

「IPS細胞」の歴史を見てみると、その発見は、数十年にわたる「発生生物学」の研究積み重ねの上に成立していることが分かります、

その歴史を見てみますと・・・

1962年、クローン研究の第一人者であるジョン・ガードン氏はアフリカツメガエルの腸上皮細胞の核を、核を除去した卵母細胞へ移植し、正常なオタマジャクシが発生することを示しました。

ちょっと難しいのですが・・・これは「体細胞核移植(SCNT)」により、分化した細胞の核であっても全遺伝情報を保持し、初期化(リプログラミング)が可能であることを証明した画期的な実験であったとされています。


ジョン・ガードン氏は、残念ながら92歳でお亡くなりになりましたが、2012年にノーベル生理学・医学賞を山中伸弥教授と共同受賞しています。

繰り返しになるかもしれませんが・・・「リプログラミング(細胞初期化)」とは、簡単に言うと「細胞がそれまでに蓄積してきた『役割の記憶』を消去し、受精卵のような何にでもなれる状態(多能性)に戻すプロセス」のことですね。

専門的な話をするとすれば、その仕組みは「エピジェネティクス」の書き換えということになります。

DNAの塩基配列(A:アデニン, T:チミン, G:グアニン, C:シトシンの並び方)自体に変更を加えることはありません。


変化するのは、その上に付着している「エピジェネティックな標識」ということになります。

 

その標識とは、DNAメチル化や DNAが巻き付いているタンパク質(ヒストン)の状態(アセチル化などのヒストン修飾)を変え、遺伝子の読み取りやすさを調節する・・・ということになるでしょうか。

つまり、ある細胞に「リプログラミング」が起こると、DNAのメチル化、アセチル化などの修飾が、リセット(消去)され、

細胞は「特定の役割(皮膚など)」を忘れてしまい、再びどんな細胞にもなれる「白紙の状態」に戻るということになりますね。

その後、1981年にはマウス「ES細胞」が樹立され、1998年にはThomsonらによって「ヒトES細胞」が樹立されました(参考2)。

「ES細胞」は多能性を持つのですが、受精卵(胚)を破壊して作製するため、倫理的課題が常に伴っているというのですね。その理由は、受精卵(胚)は、子宮に着床すれば、胎児になるからです。

こうした状況の中で、山中伸弥教授らは「ES細胞」に特異的な「転写因子」に着目し、24種類の候補遺伝子から、1つずつ因子を除外していく「ドロップアウト法」によって、最終的に本文内で
ご紹介をした「Oct3/4」,「Sox2」,「Klf4」,「c-Myc」の4因子を特定したわけです。

 

サラっと書いてしまいましたが、とても時間のかかる、血のにじむような実験の連続であったものと想像します。


これらの4因子は、「転写因子」でして、現在「山中因子」と呼ばれています(参考1)

さらに2007年には、山中伸弥教授らは、Oct3/4, Sox2, Klf4, c‑Myc の4転写因子をレトロウイルス導入することで、まずマウス線維芽細胞からiPS細胞を樹立し、その後、c-Mycを用いない改良プロトコールを開発しました。

この改良法を用いて、成人皮膚線維芽細胞から「ヒトiPS細胞」の樹立にも成功し、Myc除去により腫瘍形成リスクが低減することを示しています(参考3)。

その後、「山中因子」のうち、Oct4 と Sox2 の2因子だけで「iPS細胞」へと再プログラムできることが報告されたり(参考4)、成人の「線維芽細胞」から作製した「ヒトiPS細胞」をバルプロ酸という薬剤の投与下に、Oct4とSox2の2つの因子だけを用いて、ヒト線維芽細胞を安全かつ効果的に作成したりすることが可能であることも報告されています。バルプロ酸(バルプロ酸ナトリウム)は、てんかん薬などに用いられる薬剤となります。


線維芽細胞→iPS→線維芽細胞の往復で機能的線維芽細胞が得られるこというわけですね(参考5).

「iPS細胞」が、今後、どのような歴史を作っていくのか?
とても楽しみですね。またの機会にお話をしてみたいと思います。

 

今回も最後までお付き合いいただきまして

誠にありがとうございましたお願い

 

参考)

1)Cell. 2007 Nov 30;131(5):861-72. 

Induction of pluripotent stem cells from adult human fibroblasts by defined factors 

Kazutoshi Takahashiら・・Shinya Yamanaka

 

2)Science. 1998 Nov 6;282(5391):1145-7.
 Embryonic stem cell lines derived from human blastocysts
J A Thomsonら

 

3)Nat Biotechnol. 2008 Jan;26(1):101-6.
Generation of induced pluripotent stem cells without Myc from mouse and human fibroblasts
Masato Nakagawaら・・Shinya Yamanaka

 

4)Nat Biotechnol . 2008 Nov;26(11):1269-75.
Induction of pluripotent stem cells from primary human fibroblasts with only Oct4 and Sox2
Danwei Huangfuら

5)PLoS One. 2011 Feb 28;6(2):e17128.

Epigenetic and phenotypic profile of fibroblasts derived from induced pluripotent stem cells
Kyle J Hewittら

 

(千鳥ヶ淵の桜: これから訪れる春の風景)

(筆者撮影)

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こんにちは、内科医 ひとちゃんですニコニコ

 

朝から気持ちの良い青空が広がっていますね。

暦を見ますと、その七十二候は「土脉潤起(つちのしょううるおいおこる)」となっています。

 

「土脉潤起(つちのしょううるおいおこる)」の意味は、温かい春の雨が凍てついた大地を潤し、土が柔らかく蘇る時期意味します。冷たい雪から雨に変わり、地中の草木が芽吹く準備を始めるというものだそうです。

 

フランスの詩人であり、作家でもあった「アナトール・フランス(Anatole France)」は、次のような言葉を残しています。


All changes, even the most longed for, have their melancholy; for what we leave behind us is a part of ourselves; we must die to one life before we can enter another.

 

「あらゆる変化には、たとえ最も待ち望んだものであっても、哀愁が伴う。なぜなら、私たちが置き去りにするものは、自分自身の一部だからだ。新たな人生へ踏み出す前に、まず一つの人生に別れを告げねばならないのだ。」

 

なるほど・・・そのとおりであると私は思います。

すべてを携えながら、長い道のりを歩いていくことはできませんからね。
 

皆さまの体調は、いかがでしょうか?

 

(AIで画像を作成)

 

前回に続き、「痛みの増幅(ぞうふく)」のメカニズムの後半について、お話をしてみたいと思います。

 

前回のブログでは、風が吹くなどの些細な刺激で、ヒリヒリ・ピリピリとした激しい痛みを感じるという症状が、この「アロディニア(異痛症)」と呼ばれる状態について、お話をさせていただきました。

 

このような現象がなぜ起こるのか?・・・は、これまで謎(なぞ)であったわけですが、最近の世界各国の研究者の報告から、新しいこと

が分かってきたのですね。

 

その内容は、「末梢神経系」と「中枢神経系」における免疫反応とに分かれ、「アストロサイト」と「ミクログリア細胞」の異常な活性化が深く関わっていることが分かってきたというのです。

 

この2種類の細胞は単独で機能するだけでなく、互いに絶えず信号を送り合い、相手の活性化状態を制御するという密接な「クロストーク(相互対話)」を行っていることが知られています。

 

この「クロストーク(相互対話)」は、健康な脳では恒常性の維持に欠かせない一方、特定の疾患においては、「炎症」を増幅させる負の連鎖(れんさ)をもたらすことが知られています。

 

では、この2つの細胞「アストロサイト」と「ミクログリア細胞」とは、どのような細胞なのでしょうか?

 

A)ミクログリア

 

「ミクログリア」は、脳全体に分布する常在性免疫細胞で、脳内の変化を常時監視しています。中枢神経系(CNS)実質細胞の約5–12%を占める単核貪食細胞で、マクロファージのような働きをします(参考1)

 

病原体、細胞の破片、異常なタンパク質の蓄積などを感知すると速やかに活性化し、炎症性サイトカインの産生や食作用(異物の取り込み・排除)を通じて脳を守る「第一応答者」として機能します

(参考2)。

 

 

B)アストロサイト

 

「アストロサイト」は、シナプス・血管・免疫・代謝を結びつけて脳の環境を精密に制御するとされていますが、損傷後に「反応性アストロサイト」となり、増殖・形態変化して瘢痕形成と神経修復・再編成に関与するとされています。

 

「アストロサイト」は、損傷や炎症などで環境が変化すると「反応性アストロサイト(reactive astrocytes/astrogliosis)」へと変化し、形態・遺伝子発現・機能が大きく変わることが知られています。

 

(AIを用いて画像を作成)

 

では、これらの「アストロサイト」と「ミクログリア」のクロストークとは、どのようなものなのでしょうか?

 

「慢性神経障害」などの多くの病態では・・・「ミクログリア」が先に活性化し、IL-1α、TNF-α、C1qのサイトカインなどが放出されます。

そうしますと「A1型アストロサイト」を誘導し炎症を増幅するというわけです。

 

補足になりますが、「アストロサイト」が活性化した時に2つの機能表現型があります。先にお話をした「A1型アストロサイト」は、毒性型と呼ばれているものでして、炎症性サイトカイン(ITNF-α,など)により誘導されるものです。

 

この「A1型アストロサイト(毒性型)」は神経変性疾患(アルツハイマー病など)の病態を悪化させることが知られています。

 

それに対して、「A2型アストロサイト」というものがあり、虚血や脳損傷の急性期に反応して発現するもので(保護型)と呼ばれています。

この「A2型アストロサイト(保護型)」の機能としては、「神経栄養因子(TGF-βなど)」を放出し、神経の修復や保護、血液脳関門の強化に寄与するというわけです。

 

整理しますと・・・「ミクログリア」が活性化すると、TNF-α、IL-1α, C1qを放出し、静止期の「A2型アストロサイト」を神経傷害性の「A1型アストロサイト」へと誘導するのですね。

 

一方、反応性の活性化された「A1型アストロサイト」から放出される

小分子タンパク質(ケモカイン)cxcl10やCCL2は、「ミクログリア」の遊走およびさらなる活性化を促進するという悪循環を形成し、改善が難しくなってしまうというわけですね。

 

もちろん、このモデルは多くの神経疾患でのモデルであって、「繊維筋痛症」の疼痛の増悪にピタリと当てはまるものではありません

(参考3)。

 

現状では、「線維筋痛症」のある方の脳や脊髄で、「A1型アストロサイト」のマーカー(C3など)を直接評価した報告はなく、「A1アストロサイト」の存在は推測の域を出ていません。

 

しかしながら、これまでに「PET-CT」で、繊維筋痛症の方の脳組織において、「ミクログリア」優位の活性化があることは確認され、報告されています(参考4)

 

他の慢性疼痛・神経変性で確立した「ミクログリア活性化」→

「A1型アストロサイト」の誘導→「神経毒性・シナプス異常」という

モデルを併せて考えますと・・・

必ず「ミクログリア」の活性化が、最初の段階であるという大原則がありますので、「線維筋痛症」でも「ミクログリア」の活性化から

「A1型アストロサイト」がある可能性は高いとされております。

 

「アストロサイト」と「ミクログリア」のクロストークによる中枢性

感作維持のメカニズムが、十分にあり得るストーリーであると考えられているそうです。

 

ならば・・・「新しい治療法」が考えられるかも・・・となるわけで

すが・・・続きは、後日の話題にしたいと思います。

 

素敵な1週間をお過ごしくださいキラキラ

 

それでは、またバイバイ

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<ブログ後記>2月24日

 

今回は、「アストロサイト」と「ミクログリア」がともに活性化して、「痛み」の増幅が生じる可能性について、お話をさせていただきなした。

この問題が解決できれば、「線維筋痛症」が完全に治りますということではないかもしれません、

なぜなら、「線維筋痛症」には、2つの側面があるからということになります。ひとつの側面は「疼痛」であり、風が吹いても痛いなどといった外部の刺激の異常な増幅というこよになります。

 

もうひとつは「うつ傾向」になります。もちろん、いつも「痛み」などの不調がありますので、それは無理もない・・・ということになるわけですが・・・ね。

 

「線維筋痛症」は、脳神経関連の疾患なのではないか?・・・という説があるのも理解できなくもありませんし、そうなのかもしれません。

しかしながら、近年、適応免疫系、特に「T細胞」が慢性痛に関わることが注目されています。

 

神経損傷後、脊髄後角や後根神経節にT細胞が入り込むことが観察されます。「CD4陽性T細胞(ヘルパーT細胞)とCD8陽性T細胞(細胞障害性T細胞)の両方が、痛覚過敏の維持に関与していることが動物実験で示されています(参考5)。

 

「T細胞」が、IFN-γ(インターフェロン ガンマ)などのサイトカインを産生し、これが「ミクログリア」や「アストロサイト」の活性化を促すというのですね。

 

また、「T細胞」由来の「サイトカイン」は直接的に神経細胞の興奮性を調節することも報告されています。このように、自然免疫と適応免疫の両方が協力して、痛みを慢性化させる複雑なネットワークを形成します。

 

もちろん、さらなる検証は必要であるわけですが・•・自分自身の

T細胞が反応するとすれば、「自己免疫」のメカニズムが働いているということになりますよね。

 

さらに興味深いことには、「痛み」の病態には性差が存在することが明らかになっています。特に、「ミクログリア」と「アストロサイト」の関与には性差があり、雄のマウスでは「ミクログリア」が、雌のマウスでは「T細胞」と「アストロサイト」がより重要な役割を果たすことが報告されています(参考6)。

 

では、どのような薬剤が「ミクログリア」と「アストロサイト」の

活性化による「痛み」の増幅を改善させる可能性があると報告されているのでしょうか?

以下に薬剤と、その作用機序をご紹介しておきたいと思います。

 


プレガバリン(Pregabalin)神経の興奮を抑える


• 作用点: 神経細胞(シナプス前終末)にある「電位依存性カルシウムチャネル(α2δサブユニット)」に結合します。


• 効果: カルシウムイオン(Ca²⁺)が神経細胞内に入るのをブロックし、興奮の伝達物質である「グルタミン酸」の過剰な放出を抑制します。これにより、「痛み」の信号が次の神経に伝わりにくくなります。


デュロキセチン(Duloxetine)痛みを抑えるブレーキを強める


• 作用点: 「セロトニン」や「ノルアドレナリン」といった神経伝達物質を回収する「再取り込みトランスポーター(SNRI)」の働きを阻害します。


• 効果: シナプス間隙(神経と神経の隙間)に、痛みを抑える働きを持つセロトニンやノルアドレナリンが長く留まるようになります。これにより、体が本来持っている「痛みを抑えるシステム(下行性疼痛抑制系)」の働きが強まります。


ミノサイクリン(Minocycline):免疫細胞の暴走を止める


• 作用点: 活性化した「ミクログリア」に直接作用します。
• 効果: ミクログリアの活動を抑制し、痛みを増強する「炎症性サイトカイン」の放出を抑えます。

 

これにより、神経の興奮バランスが崩れる(抑制の脱抑制)のを防ぎ、痛みの慢性化を根本から食い止めようとします。


参考論文は省略しますが・・・このように、それぞれの薬剤は異なるターゲットに作用し、多角的に痛みの増幅システムを鎮静化させようと働くと考えられています。

 

道半ばではありますが、現時点での海外の論文で報告されている「痛み」の増幅のメカニズムをお話させていただきました。

 

今回も最後までお付き合いいただきまして

誠にありがとうございましたお願い

 

参考)

1)Front Immunol. 2022 Oct 19:13:997786. 

Microglia morphophysiological diversity and its implications for the CNS   Andres Vidal-Itariagoら

Vidal-Itriago Aら

 

2)Annu Rev Immunol. 2014:32:367-402.

Microglia development and function 

Debasis Nayakら

 

3)Acta Neuropathol Commn. 2023 Mar 13;11(1):42. 

Roles of neuropathology-associated reactive astrocytes: a systematic review   

Jill M Lawrenceら

 

4)Brain Behav Immun. 2019 Jan:75:72-83. 

Brain glial activation in fibromyalgia - A multi-site positron emission tomography investigation  

Daniel S Albrechtら

 

5)J Neurosci. 2009 Nov 18;29(46):14415-22. 

T-cell infiltration and signaling in the adult dorsal spinal cord is a major contributor to neuropathic pain-like hypersensitivity   

Michael Costigennら

 

6)Nat Neurosci. 2015 Aug;18(8):1081-3. 

Different immune cells mediate mechanical pain hypersensitivity in male and female mice 

Robert E Sorgeら

 

(麻布台ヒルズ: 河津桜から始まる春の風景)

(筆者撮影)

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こんにちは、内科医 ひとちゃんですニコニコ

 

気持ちの良い青空が広がり、季節を先取りしたような陽気となっています。

春の陽気は、長い間、待ち望んでいたことで、なんとなく嬉しくなりますね。

『トム・ソーヤーの冒険』の作者である19世紀の小説家「マーク・トウェイン」は、次のような言葉を残しています。

 

"In the spring, I have counted 136 different kinds of weather inside of 24 hours." 

 

春には、24時間の中に136種類もの異なる天気を数えたことがある

 

彼は、米国のニューイングランド地方の気候が変わりやすいことを

スピーチの中で揶揄(やゆ)したそうです。

 

春の気候が不安定であることを誇張して強調する際に引用される言葉かもしれませんね。

 

確かに明日の夕方からは寒くなりまして 、雪がちらつくとか。

 

皆さまの体調は、いかがでしょうか?

 

(AIで画像を作成)

 

今回は「線維筋痛症」などの痛みの治療にもつながる可能性があるかもしれない「慢性疼痛のメカニズム」について、お話をしてみたいと思います。

 

「痛み」は本来、体を守るための警告システムです。

 

しかし「慢性痛」では、痛み自体が病気となり、患者さんの生活の質を著しく低下させます。

 

最近の研究により、「痛みの増幅(ぞうふく)」には、末梢神経系と中枢神経系における免疫反応と、アストロサイトなどの「グリア細胞」の異常な活性化が深く関わっていることが分かってきました。

 

まず、末梢神経ですが・・. ・組織が損傷したり炎症が起きると、その場所で「免疫細胞」が活性化し、様々なサイトカインやケモカインを作り出します。

 

この免疫反応は本来、組織を修復するために必要なものですが、同時に痛みの感じ方を大きく変化させます。

マクロファージや肥満細胞などの「免疫細胞」は、損傷部位に素早く集まり、TNF-α、IL-1β、IL-6などの「炎症性サイトカイン」を放出します(参考1)。

 

 

これらの「炎症性サイトカイン」は、痛みを感じる神経線維に直接作用し、神経を興奮しやすい状態にします。

特に「TNF-α」は、神経細胞の表面にある「TNFR1(TNF受容体1型、CD120a)という受容体を通じて信号を伝え、ナトリウムチャネルやTRPV1チャネルの数を増やすとされています(参考2)。

 

 

TRPV1(トリップ・ブイワン)は、唐辛子(とうがらし)の辛み(からみ)の成分カプサイシンや43℃以上の熱、酸などを感知し、「熱い・痛い」という信号(侵害受容)に変換する細胞膜上のイオンチャンネルです。

 

侵害性刺激を「痛み」として感じる主要な感覚センサーであるので「TRPV1チャネル」の数を増やす結果、神経が反応する閾値が下がり、通常では痛みを感じないような弱い刺激でも痛みを感じるようになります。これが「アロディニア(異痛症)」と呼ばれる現象です。

 

風が吹くなどの些細な刺激で、ヒリヒリ・ピリピリとした激しい痛みを感じるという症状が、この「アロディニア(異痛症)」と呼ばれる状態となります。

 

さらに「IL-1β」も強力な痛み増強作用を持っています。「IL-1β」は、IL-1受容体を通じてp38 MAPキナーゼ経路というものを活性化し、「プロスタグランジンE2(PGE2)」の産生を促進します(参考3)。

 

 

「PGE2」は痛みを感じる神経を敏感にし、痛覚過敏を引き起こします。さらにIL-1βは神経成長因子(NGF)の産生も増やし、これが長期的な「痛みの感作」に寄与します。

「痛みの感作」とは、長引く痛みや炎症により神経系(末梢または中枢)が過敏になり、通常なら「痛み」を感じにない弱い刺激でも痛みを感じたり、実際の組織損傷以上に強い痛みを感じたりする現象を指します。

 

(AIを用いて画像を作成)

 

次に神経障害性疼痛における免疫応答についてのお話をさせていただきたいと思います。

神経が損傷されると、より複雑な免疫反応が起こります。損傷された神経組織からは、「DAMPs(ダンプス:ダメージ関連分子パターン)」と呼ばれる内因性の危険信号が放出されます。

 

この、「DAMPs」は、細胞の損傷や細胞死に伴って細胞内から放出される分子群の総称ですが、これにはATP、HMGB1、熱ショックタンパク質などが含まれます(参考4)。

 

これらの「DAMPs」は、免疫細胞にある「パターン認識受容体(特にToll様受容体)」を活性化し、炎症反応を開始させます。

とくに「TLR4(Toll様受容体4)」の活性化は、神経障害性疼痛の発症と維持に重要な役割を果たすことが複数の研究で示されています

(参考5)。

 

神経損傷部位では、マクロファージの浸潤が顕著に認められます。

マクロファージはM1型(炎症促進型)とM2型(抗炎症型)に分類されますが、神経障害性疼痛の初期にはM1型マクロファージが優位となり、炎症性メディエーターを大量に産生します(参考6)。

 

この炎症環境が、損傷を免れた隣の神経線維まで敏感にし、痛みの範囲を広げると考えられています。

 

最近、このメカニズムに、獲得免疫、とくにT細胞が「慢性痛」に関わることが注目されています。神経損傷後、脊髄後角や後根神経節にT細胞が入り込むことが観察されています。

 

実際に「CD4陽性T細胞」と「CD8陽性T細胞」の両方が、痛覚過敏の維持に関与していることが動物実験で示されています(参考7)。

 

「T細胞」はIFN-γなどのサイトカインを産生し、これが「ミクログリア」や「アストロサイト」の活性化を促します。

 

また、T細胞由来のサイトカインは直接的に神経細胞の興奮性を調節することも報告されています。このように、自然免疫と適応免疫の両方が協力して、「痛み」を慢性化させる複雑なネットワークを形成します。

 

次にやっと「ミクログリア」や「アストロサイト」の話が出てくるわけですが・・・続きは、後日の話題にしたいと思います。

 

素敵な1週間をお過ごしくださいキラキラ

 

それでは、またバイバイ

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<ブログ後記>2月17日

 

今回は、神経障害疼痛のお話をさせていただきました。

「痛み」は本来、体を守るための警告システムであるというお話を本文内でさせていただきましたが・・・

 

やはり、「痛み」が絶え間なく続いている「慢性の痛み(慢性疼痛)」は、「痛み」そのもの自体が病気となり、患者さんの生活の質を著しく低下させます。

 

ひとつの例が「線維筋痛症」であったりするわけです。

風があたってもガラスが刺さったような痛みに感じるというのは、まさに痛みの大きさが増幅されているように思います。

 

本文では、「末梢神経系」の領域の異常についての話であるわけですが、

損傷部位で発生するTNF-α、IL-1β、IL-6などのサイトカイン、また、

マクロファージ、CD4+T細胞(ヘルパーT細胞)、CD8+T細胞(細胞障害性T細胞)などと並べられますと・・・これは、何らかの「異常な免疫反応」が起きているのではないか?・・・と思えてきますよね。

 

多くの新しい用語にうんざりする方も多かったと思いますが、末梢神経では、炎症性サイトカインが放出され、何らかの「自己免疫反応(?)

」が起きている可能性があるわけです。

 

次に「中枢神経系」の領域に話を移しまして・・・「アストロサイト」が活性化して、痛みの増幅を起こすというお話をしてみたいと思います。

脳内(中枢神経系)に存在する最大のグリア細胞が「アストロサイト」というものになります。ギリシャ語で「星の細胞」を意味でして、多数の細い突起を広げ、脳全体に網目状に展開しています。

 

この「アストロサイト」は、以前のブログ内でもお話をしたことがあるかもしれません。

アストロサイトは、「神経細胞とは異なり電気信号を発生しないため、脳が働くために必要な情報伝達には関わっていない」と考えられ、その重要性が見過ごされてきた細胞となります。

 

その後、「アストロサイト」の四方八方に伸ばし突起は先端がシート状で、神経細胞同士の接合部位である「シナプス」と「脳血管」を覆っています。ヒトの「アストロサイト」は、1個あたり推定200万個以上のシナプスに関わっていると考えられているのですね。

 

また、「アストロサイト」は、「血管」と「神経細胞」の間を橋渡しし、血管からグルコースなどを取り込んで神経細胞へ渡す役割を持つとされます。

 

こうした多彩な機能を持つことから・・「アストロサイト」は、「脳内の環境調整役」などと呼ばれているわけです。

 

しかしながら、「神経損傷」がある状態では、「アストロサイト」は反応性の状態に変化し、「痛み」の増幅(ぞうふく)に積極的に関わるようになります。


とくに脊髄後角の「アストロサイト」は、末梢からの痛み刺激や炎症性メディエーターに反応して活性化します。

この活性化は「GFAP」というタンパク質の発現増加を特徴とし、形態的には細胞体が大きくなり突起が増えます(参考8)。

 

活性化したアストロサイトは、神経伝達の調節、炎症性メディエーターの産生、細胞外環境の変化など、複数の仕組みを通じて「痛覚伝達」を強めてしまうのだそうです。

 

・・・とここまでが、導入部分で、さらに「アストロサイト」の活性化は、しばしば「ミクログリア」の活性化と並行して起こります。実際、これらのグリア細胞間には密接なクロストークが存在し、互いに活性化を促進する・・・とい話になり、それは治療するには、どのような薬剤が最適か?・・・となっていくわけですが、

続きは、次週の話題にしたいと思います。

 

「難攻不落(なんこうふらく)の城を攻めて、完全に落とすには・・

・それなりの理論武装が必要なわけでして〜〜〜と言いながら、難しい用語に もう、ここでやめようかな〜〜〜とも思うわけですが、もう少しだけ話を進めたいと思います(本当は、ヘトヘトです笑い泣き

 

今回も最後までお付き合いいただき

誠にありがとうございましたお願い

 

参考)

1)Trends Neurosci. 2001 Aug;24(8):450-5. 

Glial activation: a driving force for pathological pain  

LR watkinsら

 

2)J Neurosci. 2003 Apr 1;23(7):2517-21. 

Tumor necrosis factor-alpha induces mechanical allodynia after spinal nerve ligation by activation of p38 MAPK in primary sensory neurons  

Maria Schhafersら

 

3)Nature. 2001 Mar 22;410(6827):471-5. 

Interleukin-1beta-mediated induction of Cox-2 in the CNS contributes to inflammatory pain hypersensitivity   

T A Samedら

 

4)Sultan Qaboos Univ Med J. 2015 May;15(2)

The Role of Damage-Associated Molecular Patterns (DAMPs) in Human Diseases: Part II: DAMPs as diagnostics, prognostics and therapeutics in clinical medicine  

Walter G Land

 

5)Brain Behav Immun. 2010 Jan;24(1):83-95. 

Evidence that opioids may have toll-like receptor 4 and MD-2 effects

Mark R Hutchosonら

 

6)Nat Commun. 2020 Jan 14;11(1):264. 

Dorsal root ganglion macrophages contribute to both the initiation and persistence of neuropathic pain 

Xiaobing Yuら

 

7)J Neurosci. 2009 Nov 18;29(46):14415-22. 

T-cell infiltration and signaling in the adult dorsal spinal cord is a major contributor to neuropathic pain-like hypersensitivity

Michael Costiganら

 

8)Acta Neuropathol. 2010 Jan;119(1):7-35. 

Astrocytes: biology and pathology   

 Michael V sofroniewら

 

(ミッドタウン東京:水の湧き出る風景)

(筆者撮影)

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理事長・ 院長  

小笠原  均  (Hitoshi Ogasawara)   

医学博士, 内科医

(総合内科、リウマチ専門医)

(新潟大医学部卒)

(業績)

 

 

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