こんにちは、内科医 ひとちゃんですニコニコ

 

8月も今日で最後になっていますね。

 

夏も終わり・・・と言いたいところではありますが・・・

9月も猛暑の予想らしく、まだまだ、熱中症の予防を心がけていく必要がありますね。

 

皆さまの体調は、いかがでしょうか? 

 

  (AIで画像を作成)

 

今回は「記憶」と脳の「海馬(かいば)」についてのお話をしてみたいと思います。

 

「加齢」に伴う認知機能低下は、現代社会における重要な健康課題ですよね。

つい最近のニュースでも、2022年に「認知症」で俳優を引退していたブルース・ウィルス(70歳)氏が翌年の2月には、行動や言語に問題を生じさせ、人格を変えるタイプの「認知症」である「前頭側頭型認知症(FTD)を患っていることが公表されていました。

その後、脳のダメージは、速い(はやい)スピードで進行し、今では言葉を通じなくなっているという話題がありました。

 

ブルース・ウィルス氏は、私が好きな映画俳優さんの一人です。それが言葉も通じない・・・というのは、とても不思議な気がします。

 

以前のブログで、過去の記憶、つまり、「長期記憶」は「大脳皮質」に記憶され、「海馬(かいば)」は、短期の記憶を処理して「大脳皮質」で記憶できるようにする役割がある・・・

 

というお話をしたのですが、ブルース・ウィルス氏の病態は、いったい、どのようなものになるのか?・・・と思っていました。

 

不思議に思って・・・調べていたところ、次のようなことが分かったのですね。

 

「海馬」の機能は「新しい記憶の形成(エピソード記憶・陳述記憶)」には、必須であると言えます。

 

「情報」は、まず「海馬」で一時的に統合され、その後「再生・再固定化」を繰り返すことで、大脳皮質へ徐々に長期保存されていきます。

 

この理論は、『システム統合記憶理論』と呼ばれています。

問題は、この過程にかかる時間なのですが・・・この時間が想像以上の長さで、数ヶ月から、数十年かかるとしている論文もあるわけですね。

 

さらに驚くのは・・・「大脳皮質」に保存された記憶も、すべて、「海馬」の正常な働きなしにはスムーズに取り出せない可能性が大きいのだそうです。

 

「海馬」は「記憶痕跡を大脳皮質へリンクするハブ」のような役割を果たしているそうで、具体的には次のようなことになります。

 

「大脳皮質」には、長期的な知識や過去の体験の記録が保存されています。

しかし、それらを呼び出すときに「索引(インデックス)」として「海馬」が使われることがあるのだそうです。

 

例えば、昔の出来事を思い出すとき、「海馬」が複数の皮質領域を同時に活性化させて「全体像」を再構成するという作業が、「脳内」では行われているというわけです。

 

                   (AIで画像を作成)

 

そうであるとすると・・・「海馬」の機能は、記憶全体にとって、極めて重要であるということになりますね。

 

しかしながら・・・「海馬」は年齢とともに萎縮(いしゅく)し、機能が低下していくことが知られています。

 

この時に「海馬」では、どのような変化が起きているのでしょうか?

 

「海馬」の萎縮の根本的原因として、「老化細胞(senescent cells)」の蓄積と「ミトコンドリア機能障害」による悪循環が起きていると考えられています。

 

「ミトコンドリア機能障害」は、細胞老化の原因であると同時に結果でもあり、両者は加齢関連機能低下の複合的フィードバックループを形成するというのですね。

 

「ミトコンドリア機能障害」は、個々のミトコンドリアあたりの呼吸能力低下とミトコンドリア膜電位(MMP)の減少を特徴とし、これに伴い「活性酸素種(ROS)」の産生が増大します。

 

ROSは酸化的リン酸化(OXPHOS)効率を低下させ、さらなるROS産生を誘発する。

 

このような「活性酸素種」の慢性的亢進は、DNA塩基酸化、一本鎖・二本鎖切断、テロメア短縮を引き起こし、p53およびpRb経路の活性化を通じて細胞周期停止(老化)を誘導するというわけです。

 

これが「老化細胞」の「SASP」現象を引き起こし、このことが「海馬」の正常細胞を「老化細胞」化させて、ミトコンドリアの機能障害を誘導する・・・というのですね。

 

このような「悪循環」を断ち切ることができない限り、「海馬」の萎縮傾向は続き、やがて、記憶障害が進行していくということになります。

 

この病態に対する対策として、「NAD+」の鼻腔内への投与やNMNサプリの摂取が有効とされています。

 

JTKクリニックでは、既に実施していますが、「NAD+」を鼻から直接、投与することで脳の中に入ることが可能となります。

 

「NAD+」の分子は、約50KDaと大きいので、血液内の投与では、「脳血液関門」という部分を通過できないので、脳内に入ることができないというのが、その理由となりますね。

 

最近の論文で、「海馬」のミトコンドリアの機能障害を回復させることで、記憶障害を改善させることに成功したという論文があるのですが、

 

これが本当であるとすると加齢に伴う「記憶障害」も改善できることになるわけですが・・・

 

続きは、後日の話題にしたいと思います。

 

 

素敵な1週間をお過ごしくださいキラキラ

 

それでは、またバイバイ

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<.ブログ後記  >9月2日

 

今回は「短期記憶」に関連するはずの「海馬(かいば)」が、大脳皮質に記憶されている「長期記憶」のインデックスになっており、その理由から「海馬」の障害にもかかわらず、昔の記憶が思い出せない可能性もあることについて、お話をしました。

 

もちろん、脳神経の疾患のすべてが、「海馬」の萎縮から始まるわけではありません。

 

「海馬」の萎縮が早期に起こる疾患としては、「アルツハイマー病」や

「軽度認知障害(MCI)」などがあるのですが、

それに対し、「血管性認知症」や「前頭側頭型認知症」では「海馬」領域は保たれる場合が多いとされます。


上記に挙げた疾患において、「海馬」の機能障害が「老化細胞」の増加によるものなのか?或いは、「ミトコンドリア」の異常によるものなのかは・・・

まるで、「鶏(にわとり)」が先か?「卵(たまご)」が先か?

という論争のように答えが明確には出せない・・・と考えられているわけですね。

「海馬」の障害は、「海馬萎縮」から始まることが多いとされていますが、これまでは「「海馬萎縮」について、各種の(海外)文献には以下のように記載されています。

 

「海馬萎縮」は、「老化細胞の蓄積」と「ミトコンドリア機能障害」の両方が複雑に絡み合った結果として起こります。

 

これらは独立した原因ではなく、相互に促進し合う悪循環を形成しています・・・というような感じです。

 

それぞれのストーリーは、以下のようなものになっており、どちらも

合理的なストーリーとなっています。

【1】ミトコンドリア機能障害が老化細胞を誘発する経路

1)活性酸素種(ROS)の増加:機能不全のミトコンドリアから過剰なROSが産生されます


2)ATP産生の低下:エネルギー産生効率が著しく減少します


3)DNA損傷の蓄積:ROSによりDNA損傷、テロメア短縮が起こり、

これにより、p53-p21経路が活性化され、細胞周期の回転が止まり

「老化細胞」が増加する。

【2】老化細胞がミトコンドリア機能をさらに悪化させる経路

1)損傷ミトコンドリアの除去の低下:老化細胞では自食作用が低下し、機能不全ミトコンドリアが蓄積します。
 

2)PGC-1α/β抑制:p53活性化によりミトコンドリア生合成が阻害されます
3)慢性炎症の促進:「SASP(老化関連分泌表現型)」により炎症性サイトカインが放出されます

もちろん、どちらの説であったとしても、JTKクリニックでは治療に困ることはないかもしれません。

 

以前にブログ内でお話をしたように・・・「老化細胞」については、「iPS細胞由来エクソソーム」の投与により「老化細胞」の数を減らすことができるわけです。

 

「iPS細胞由来エクソソーム」の大きさは、一般的に30-150nmの小さなサイズであり、「血液脳関門(けつえきのうかんもん)」を通過しやすいと考えられています。

 

この「血液脳関門」は、脳と血液の間にあるバリア機構で、脳に必要な物質のみを通過させ、有害物質や病原体の脳への侵入を防ぐ役割を持っています。ここを通過できれば、脳(のう)まで、物質は達することを意味しています。

 

一方、「ミトコンドリア」の機能障害については、

脳内でのNAD+増加とミトコンドリア機能の関係については、理論的には強い関連性があると考えられています。

 

どのような影響を当てるかをみてみますと、以下のようになります。

 

1.ATP産生の向上:NAD+は電子伝達系で必須の補酵素として機能し、効率的なATP合成を促進する

 

2.TCA回路の活性化:多くの酵素反応でNAD+が必要で、エネルギー代謝全体が向上する

 

ということになり、間接的な効果としては、

 

3.サーチュイン遺伝子の活性化:NAD+依存性脱アセチル化酵素が活性化され、ミトコンドリア生合成が促進

 

4.PGC-1αの活性化:ミトコンドリア生成の主要調節因子が活性化

5. 抗酸化防御の強化:酸化ストレスからミトコンドリアを保護

 

実際には、いくつかの課題もあると考えられているのですが・・・

クリアできない程の大きな問題ではないと考えられています。

 

このような「海馬」の萎縮による老化の過程は、その進行を戻すことはできないと考えられていました。


しかしながら、最近では、ひょっとして、これを戻せるのではないか・・と考える研究者が出てきたわけです。

 

実際に最近、発表された論文で面白い(おもしろい)知見が得られています。その一部を紹介しますと、以下のようなものになります。

アメリカのカリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)の研究チームは、「加齢によって脳内で特に増えているもの」の中に「老化」を引き起こす「真犯人」がいるのではないかと考えたのだそうです。

この研究では、若いマウス(生後3か月)と老齢マウス(18~20か月)を比べ、脳の中でも記憶に深く関係する「海馬」という場所で特に増えているタンパク質や遺伝子がないかを詳しく調べました。
 

さまざまな解析を行った結果、年老いたマウスの「海馬」で特に目立って増えているタンパク質をひとつ見つけることができました。
それが「FTL1(フェリチン軽鎖1)」というタンパク質でした。
 

「FTL1(フェリチン軽鎖1)」は、細胞内にある「フェリチン」という複合体を構成するタンパク質の一つで、もともとは細胞の中に鉄を蓄える役割を持っています。
 

「老齢マウス」の「海馬」では、「FTL1(フェリチン軽鎖1)」が異常に増えており、しかもFTL1が多ければ多いほど、記憶テストでの成績が悪くなるという関係が明らかになりました。

さらに「FTL1(フェリチン軽鎖1)」若いマウスで人工的に増やしたら、実際に脳が老化するか?という逆方向の検証を行いました。
 

するとその結果、「FTL1(フェリチン軽鎖1)」を増やした「若いマウス」の脳は、本来若いマウスが示すはずのシナプスの働きが弱くなり、記憶や学習の能力もはっきりと低下してしまいました。

一方で研究チームはを減らしたら逆に脳の働きを取り戻せるのかも検証しました。
老齢マウスの脳で「FTL1(フェリチン軽鎖1)」を減らすと、今度は神経ネットワークの働きがよくなり、シナプスの活動が再び活性化ししたそうです。「老化細胞」の数は変化していないことがポイントです。
その結果、記憶力のテストでの成績も明らかに改善し、「老いたマウス」の脳が若い脳に近づくような回復が認められたそうです。

では、なぜ、「FTL1(フェリチン軽鎖1)」が増えると脳が老化するのでしょうか?


研究チームがさらに詳しく調べると、「FTL1(フェリチン軽鎖1)」が増えることで神経細胞のエネルギー産生が低下することがわかりました。
「ミトコンドリア」がエネルギーである「ATP」を作り出すのは、ヒトもマウスも同じわけですが・・・


「FTL1(フェリチン軽鎖1)」が多くなりすぎると、「ミトコンドア」のエネルギー産生がうまくできなくなってしまったというのですね。


そこで研究者たちは、エネルギー不足を補うために細胞にエネルギーを供給する役割を持つ「NADH」という物質を投与する実験も行いました。すると、マウスの記憶に改善が認められたというのですね。

つまり、「老化細胞」の増加でなく、「ミトコンドリア」のエネルギー産生が低下することが、マウスの老化による記憶障害を引き起こした可能性を見出したわけです(参考1)。

 

ヒトとマウスは、まったく同じではないかもしれませんが、

マウスの「FTL1(フェリチン軽鎖1)」と同様に機能するタンパクがあるかどうかは別として、

「ミトコンドリア」のATP産生の異常が、「老化細胞」の増加より先に生じている可能性が高い・・・と考えても大きな矛盾(むじゅん)はないかもしれませんよね。

 

ならば・・・ヒトの「海馬」を含めた脳で「ミトコンドリア」の

ATP産生を増加させる「NAD+」を増加させることは、

先に挙げた「海馬」の萎縮を早期から示す「アルツハイマー病「や

「軽度認知障害(MCI)」などの発症予防や進行抑制には有効性が期待できるのではないか・・・という考え方は、大きな矛盾はないように

思えてきます。

 

論文の中では「NADH」であったわけですが・・・

 

実は、「NAD+」との関係をみてみますと

 

「NAD+」と「NADH」は、可逆的な酸化還元反応により変換される関係にあると考えられているのですね。

 

NAD+(酸化型)+ H⁺ + 2e⁻ ⇌ NADH(還元型)

NAD+ + NADH = 総NADプール(比較的一定)

 

ここは、私の苦手なところなのですが・・・

 

「NAD+補充療法」の目的は、総NADプールの増加とNAD+/NADH比の最適化の両方なのだそうで、

単純にNADHを増やすことではなく、代謝の柔軟性を高めることが重要とされています。

 

つまり、適度の「NAD+」の投与は、総NADプールの増加とNAD+/NADH比の最適化の両方を実現することが可能であるということになります。

 

では、「海馬」をはじめとする「NAD+」を増加させるか?・・・ということになります。

 

本文内でお話をしたように「血液脳関門」は分子量が大きいので、「血液脳関門」を通り抜けることは不可能であると考えられています。

では、どうするか?

 

ここで出てくるのが・・・「鼻腔内投与(intranasal delivery)」は、「血液脳関門」を迂回して薬物を直接脳内に送達する革新的手法である。この経路は、鼻腔と脳を結ぶ独特な解剖学的構造を利用する投与法となります。

 

この鼻腔内投与の「薬物動態学的な優位性」は以下のようなものになっています。

 

1)迅速な脳内到達: 投与後15-30分以内に脳内濃度ピークを達成

 

2)高い生体利用率: 血液脳関門迂回により10-100倍の脳内濃度向上

 

3)標的特異性: 脳組織への選択的送達により全身副作用軽減

 

4)非侵襲性: 外科的処置不要の患者にやさしい投与法

 

5)反復投与可能性: 長期治療への適用が容易

 

などが報告されているわけですが、さらに「NAD+」の鼻腔内投与の効果を最大化するためには、以下の統合的アプローチが重要であると

考えられています。

 

1.運動療法: 有酸素運動によるBDNF産生促進

2.食事療法: 抗酸化物質豊富な食品摂取

3.睡眠衛生: 記憶固定化促進のための良質な睡眠

4.認知トレーニング: 海馬-皮質ネットワーク強化

ここまできて、食事療法や運動療法が出てくることにニヤけてしまうのは、私だけかもしれませんが・・・

近い将来には「NAD+の鼻腔内投与」を含む、総合的な「認知症予防」のプログラムが出てくるかもしれませんね。

 

今回も最後までお付き合いいただきまして

誠にありがとうございましたお願い

 

参考)

1)Nat Aging. 2025 Aug 19. doi: 10.1038/s43587-025-00940z. Online ahead of print.

Targeting iron-associated protein Ftl1 in the brain of old mice improves age-related cognitive impairment

Jaura Remesalら

 

など

 

   (夏の陽射しの中の丸の内仲通り)

          (筆者撮影)

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理事長・ 院長  

小笠原  均  (Hitoshi Ogasawara)   

医学博士, 内科医

(総合内科、リウマチ専門医)

(新潟大医学部卒)

 

 

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