こんにちは、内科医 ひとちゃんですニコニコ

 

8月になりました。

相変わらず、暑い日が続きますね。

 

本格的な「夏の日」が続きますと・・・若い頃であれば「海」に行きたいなどと、反射的に思ったりもしたのですが・・・

今では、年齢のせいか、そのように思わなくなりました。

 

あの有名な「ひまわり」の作品を描いた(えがいた)オランダの画家

ゴッホは次のような言葉を残しています。

 

The heart of man is very much like the sea, it has its storms, it has its tides and in its depths it has its pearls too.
 

人の心は海とよく似ていて、嵐があって、潮の満ち引きがあって、

深さがあって、そして真珠もある。

 

ゴッホ(フィンセント・ファン・ゴッホ  )の絵画は、誰でも1度はもにしたことがあるかもしれませんね。

 

「ひまわり」は、最も有名ですが・・・「星月夜」、「夜のカフェテラス」などと素敵な絵画が多いですよね。

 

少し調べてみますと・・・ゴッホが生きている時に売れた絵は、

たった1つしかないそうです。その絵は「赤い葡萄畑(ぶどうばたけ)」という絵なのだそうです。

 

ゴッホの死後、彼の弟テオも半年後に亡くなってしまったそうですが、テオの妻ヨーという方が、ゴッホの絵の回顧展(かいこてん)を開くなどして、ゴッホの絵の価値を高めるための努力を続けたそうです。

このことが、のちに「ゴッホ」が世界的な画家として認められることにつながったのだとか。

 

もし、ゴッホの弟の妻ヨーが、失意のまま人生を送っていたとしたら

ゴッホの「ひまわり」などの絵は、私たちの目に触れることはなかったかもしれませんね。

 

皆さまの体調は、いかがでしょうか?

 

(AIで画像を作成)

 

前回は「動脈硬化」の話題とさせていただきましたが、今回は「癌細胞」に「ウイルス」を感染させて、「癌細胞」を破壊する・・・

という新しい癌の治療が報道されていますので、その話題をご紹介してみたいと思います。

 

先月の31日に東京大学と信州大学の研究チームが、皮膚癌の一種である「悪性黒色腫(メラノーマ)」の患者さんに対して、ウイルスを使って「癌細胞」を破壊するウイルス療法が高い有効性を示すことができたことを発表しました。(毎日新聞内記事より)

 

その詳細な内容は、同紙の内容をお読みいただくとして、

 

どうして、「ウイルス」を「癌細胞」に感染させると、

それを破壊できるのか?・・・と疑問を持つ方も多いと思いますので、そのメカニズムについて、お話をしてみようと思います。

 

この治療の正式な名称は、「がん治療におけるウイルス溶解療法(oncolytic virus therapy)」と呼ばれるものになります。

 

「癌細胞」の自己複製メカニズムを逆手(さかて)に取った革新的な治療法として急速に発展しているものということになります。

 

この治療法の原理は、「癌細胞」のみに選択的に感染し、

「癌細胞」のみを破壊することができる特殊なウイルスを用いて、

 

直接的な「癌細胞破壊」と、それに伴って(ともなって)生じる

免疫系の活性化」という2つのことが、抗がん作用をもたらすものとされています。

 

   (AIで画像を作成)

 

もう少しだけ専門的な話をしますと・・・

 

この「癌に対するウイルス溶解療法」は、「癌細胞」が持つ特有の分子生物学的な欠陥(けっかん)をうまく利用しているとも言えます。

 

いったい、どのようなことなのでしょうか?

それは、次のようなことになります。

 

「癌細胞」の多くでは、p53経路やRB経路などの重要な細胞制御機構が破綻していることが多いとされます。

 

例えば・・・「p53遺伝子」は、以前にブログ内でもお話をしたことがありましたが、「DNAの守護神」と呼ばれるものでしたよね。

 

本来であれば、DNAに異常がありますと「p53タンパク」は、「p21タンパク」を誘導して、細胞周期の回転をストップさせます。

 

 

 

 

この細胞周期の回転がストップしているうちに

異常な遺伝子を修復するのですが・・・癌を発症している方の半数以上が「p53遺伝子」に変異が起きており、そのために正常な「p53タンパク」が作られません。

さらにその状態では、「p21タンパク」を産生することができないために癌細胞は分裂増殖を繰り返していくことになります。

 

なぜなら「p53タンパク」は「転写因子」でして、「p21遺伝子」を発現させて、「p21タンパク」を産生されることによって、「細胞周期」の回転がストップするからですね。

 

こうした「p53遺伝子」の異常は、実は「ウイルス感染」にとって、有利な状況をつくり出します。

 

その理由は、以下のようなものになります。

 

1)アポトーシス回避 

 

 p53が機能しないと、ウイルス感染細胞が本来なら死ぬべき状況でも生存し続け、ウイルス増殖の場を提供する

 

2)細胞周期制御の破綻 

 

ウイルスが細胞の増殖機構を乗っ取りやすくなる

 

3)免疫応答の低下

 

 p53は自然免疫応答にも関与しており、その機能低下はウイルスの排除を困難にする

 

などという理由があるからということになります。

 

つまり、「癌に対するウイルス溶解療法」は、本来であれば細胞の異常増殖を抑制するはずの「抗ウイルス機構「が、癌細胞では機能不全を起こしていることを利用しているわけですね。

 

さらに癌細胞内のウイルスは、次のようなプロセスで癌細胞を破壊します。

 

 1. 初期感染:ウイルスが癌細胞に特異的または非特異的メカニズムで侵入 

 

2. 急速複製:DNAとタンパク質が細胞質、または核内で合成される

 

 3. 細胞溶解:感染後48-72時間で感染細胞が破壊され、子孫ウイルスが放出 4. 拡散増殖:放出されたウイルスが近隣の腫瘍細胞に感染し、感染が拡大 する

 

4.アポトーシス誘導メカニズム  溶解ウイルスは複数の経路を通じてがん細胞のアポトーシスを誘導する。

 

といったプロセスですね。

これで、「癌細胞」は次々に破壊されていくというわけですね。

 

そして、実はもうひとつ、大きなメリットがあるのですが、続きは後日の話題にしたいと思います。

 

素敵な1週間をお過ごしくださいキラキラ

 

それでは、またバイバイ

 

-------------------------------------------------------------------

< ブログ後記 > 8月5日

 

真夏の厳しい暑さが続いてますね。

群馬県伊勢崎市では、気温は41.8℃となり、日本国内の最高気温を更新したというニュースがありました。

 

ヒトの高熱以上にまで上昇する気温を見ると、これまでの夏の常識が通用(つうよう)しない領域に入っているような気さえします。

 

今回の話題での「癌」に対する治療に「ウイルス」を用いるという話題は・・・これもまた、癌治療の常識が通用しない摩訶不思議(まかふしぎ)な話であるという印象を持つ方も多いかもしれません。

「癌」の治療にウイルスを用いる「ウイルス溶解療法」に

私が関心を持ったのは、2023年の秋であったような気がします。
 

同年に目にした、ハーバード大学の論文は、「腫瘍溶解ウイルス」を実際の患者さんの反応を調べた研究でした。

この論文に関連して、以下のような解説文が紹介されています。

ウイルスにより溶解した「癌細胞」から癌抗原に対する免疫反応を利用することで、全ての「癌細胞」を殺せなくても、免疫系を動員して癌を抑制する可能性があると述べられていたと記憶しています。


この治験ではCAN-3110と名付けた「ヘルペスウイルス」がを直接脳腫瘍内に注射する治療が行われています。

 

有効性が確認された患者さんの「癌病変」から手術時に標本を作製してています。

癌組織への細胞浸潤を調べてみると、壊死した組織の周囲に多くの

「 CD8T細胞」、「CD4T細胞」が浸潤していることが確認されたと報告されています(参考1)

CD8T細胞は、「細胞障害性T細胞」ですし、CD4T細胞は「ヘルパーT細胞」となりますね。

癌治療における「ウイルス溶解療法(oncolytic virus therapy)」は、がん細胞の自己複製メカニズムを逆手に取った革新的な治療法として急速に発展してきているわけです。

 

この治療法は、「癌細胞」を選択的に感染・破壊する特殊なウイルスを用いて、直接的な「癌細胞破壊」と「免疫系の活性化」という二重の抗がん効果をもたらすとされています。 

 

本文内でも話題としましたが、「ウイルス溶解療法」の主要なメカニズムをまとめてみますと、以下のようになります。

【 1 】直接的ながん細胞破壊(溶解)

ウイルスは、癌細胞に選択的に感染し、その細胞内で増殖します。

最終的にがん細胞を破壊(溶解)してウイルス粒子を放出します(参考2)


この時間は短く、感染後48-72時間で感染した「癌細胞」が破壊され、増殖した子孫ウイルスが放出されると考えられています。

このようにウイルス感染した「癌細胞」が破壊されるメカニズムは、次のようなものになります。

 

「癌細胞」内で大量に「ウイルス」が、複製されることで、細胞の正常な機能が阻害さたり、細胞質や核の構造が破綻すると考えられています。

さらにウイルスが産生する蛋白質が、「癌細胞」の生存に必要な
蛋白質合成や DNA 複製により- 細胞周期の停止や DNA 損傷応答の活性化により、癌細胞が破壊されると考えられています。(参考2,3)


【 2 】免疫システムの活性化

「癌細胞」が壊れることで、癌抗原や炎症性分子が放出され、これが「免疫細胞」を刺激します。その結果、癌細胞に対する「自然免疫」・「獲得免疫」が強化されます(参考4,5,6)

 

「自然免疫」とは、「ナチュラル・キラー(NK細胞)」などですし・「獲得免疫」は、「細胞障害性T細胞(CD8+T細胞)」や

「ヘルパーT細胞(CD4+T細胞)などということになりますね。

 


【3】癌関連線維芽細胞(CAF)などで形成される「がん微小環境(TME)」の変化

「がん微小環境(TME)」は、「癌細胞」と「癌関連線維芽細胞(CAF)」など多様な細胞で構成され、「治療抵抗性」や「免疫抑制」に関与するとされています。

 

                                    (図はお借りしました)

 

「ウイルス溶解療法」は、「がん微小環境(TME)」に対して、

「がん細胞の直接破壊」と「免疫環境の再構築」という2つの

メカニズムで効果を発揮すると考えられています。

例えば、以前にブログ内でもお話をしましたが・・通常の場合、「癌細胞」と「がん関連線維芽細胞(CAF)」など多様な細胞で構成される「がん微小環境(TME)」は、全体的に「免疫」が抑制される
「コールド(cold)」な状態になっていると分かっています。

 

            (図はお借りしました)

 

この「免疫抑制状態」の特徴的な所見のひとつが「M2型のマクロファージ」となりますね。

この状態では、血液中に「細胞障害性T細胞(CTL)」が多く存在していても、癌病変を認識(にんしき)できずに素通り(すどおり)してしまうとされています。

「ウイルス溶解療法」を施行し、癌にウイルスが感染することで、癌細胞が破壊されることで、放出された「癌抗原」や「炎症シグナル」が、免疫細胞(T細胞など)を活性化させ、免疫抑制的な「がん微小環境(TME)」「免疫活性化型(hot)」に変化させることが知られています。

この「免疫活性化状態」の特徴的な所見のひとつが「M1型のマクロファージ」となります。


この状態になりますと、一部の「腫瘍溶解ウイルス」では、「がん関連線維芽細胞(CAF)」や「腫瘍間質細胞」も標的とし、線維性バリアや免疫抑制因子の分泌を減少させ、ウイルスや免疫細胞の浸潤を促進することも報告されています(参考7)

 

ただし、癌に対して「ウイルス溶解療法」のみの治療よりは、「免疫細胞療法」、免疫チェックポイント阻害薬であるオプジーボ(ヒト型抗ヒトPD-1モノクローナル抗体)を併用した方が有効性が高いとする

報告や、また、癌に対する抗がん剤治療を施行する際にも

 

「抗がん剤」と「ウイルス溶解療法」を併用することで相乗効果が期待できるという研究報告があります。両者は異なる作用機序を持つため、組み合わせることで単独治療よりも高い治療効果が得られる可能性があるというのが理由であると報告されています(参考8)

 

「ウイルス」というと拒否感を示す方もいらっしゃるかもしれませんが・・・ヒトに感染する「ウイルス」ばかりではありません。

 

「癌細胞」の表面にレセプターがあるなど、「ウイルス」が「癌細胞」のなかに入り込める仕組み(しくみ)が存在すれば、よいわけですね。また、ヒトのDNAなどの遺伝子の組換え(くみかえ)が起こらないウイルスであれば適応があるということになります。

最近では、「植物」のウイルスが「癌のウイルス溶解療法」が可能である可能性も示され、まさに「ホット(hot)な話題」になっているのですね。

 

今回も最後までお付き合いいただきまして

誠にありがとうございましたお願い

 

参考)
1)Nature. 2023 Nov;623(7985):157-166.

Clinical trial links oncolytic immunoactivation to survival in glioblastoma
Alexander L Lingら

 

2)Signal Transduct Target Ther. 2023 Apr 11;8(1):156.
 Oncolytic virotherapy: basic principles, recent advances and future directions

Danni Linら

 

3)Cell Death Dis. 2020 Jan 22;11(1):48.
Characterization of virus-mediated immunogenic cancer cell death and the consequences for oncolytic virus-based immunotherapy of cancer
Jing Maら

 

4)Int J Mol Sci. 2024 Apr 25;25(9):4691.
Molecular Circuits of Immune Sensing and Response to Oncolytic Virotherapy
Darshak K Bhattら

5) Viruses. 2016 Feb 4;8(2):43.
To Infection and Beyond: The Multi-Pronged Anti-Cancer Mechanisms of Oncolytic Viruses
Kevin A Cassadyra

6)Trends Cancer. 2024 Feb;10(2):135-146.
 Integrating innate and adaptive immunity in oncolytic virus therapy
 Kristin DePeauxら

 

7) Mol Ther. 2021 May 5;29(5):1668-1682.
Beyond cancer cells: Targeting the tumor microenvironment with gene therapy and armed oncolytic virus
Peter Kok-Ting Wanら

 

8)Curr Pharm Biotechnol. 2012 Jul;13(9):1817-33.

Bugs and drugs: oncolytic virotherapy in combination with chemotherapy

Sonia Tusell Wennier

 

(麻布台ヒルズからの東京タワー)

(筆者撮影)

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 院長  

小笠原  均  (Hitoshi Ogasawara)   

医学博士, 内科医

(総合内科、リウマチ専門医)

(新潟大医学部卒)

 

 

 

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こんにちは、内科医 ひとちゃんですニコニコ

 

気がつけば、7月もあと数日となっています。

暦も二十四節気(にじゅうしせっき)は「大暑(たいしょ)」となることに気がつきました。

 

「大暑(たいしょ)」は、1年のうちで最も暑い期間とされていることから、連日の気温が体温以上になっている「天気図」にも納得した次第です。

 

皆さまの体調は、いかがでしょうか?

 

 

(AIで画像を作成)

 

今回は「動脈硬化(どうみゃくこうか)」についての新しい話題について、取り上げてみたいと思います。

 

まず、「動脈硬化」は、どのような状態をいうのかを少し復習しておきたいと思います。

 

「動脈硬化(atherosclerosis)」は、動脈の血管壁に脂質やコレステロールが蓄積し、血管が厚くなり硬くなる「慢性炎症性疾患」でしたね。この結果、血管内腔(ないくう)が狭くなり、血流が阻害(そがい)される状態でしたよね。

 

「動脈硬化」の進行過程は、「血管内皮細胞」の細胞の障害から始まります。

その後、血管壁へのコレステロールの沈着から始まり、炎症反応を経てプラークの形成へと進み、最終的には血管の狭窄や閉塞を引き起こします。これが様々な循環器系疾患の基盤となるわけですね。

 

(図はお借りしました)

 

このような病態の進行を抑制し、血栓の形成を予防するために以下のようなう薬剤を用いて、「LDLコレステロールを低下させる」ことが第一目標とされているわけですね。

 

スタチン系薬剤(LDLコレステロールを低下させる)

フィブラート系薬剤(中性脂肪を低下させる)

抗血小板薬(血栓形成を制御)

降圧薬(高血圧の管理)

 

 

    (AIで画像を作成)

 

最近になり、「動脈硬化」の治療について、考え方の変化があったというのですね。

 

「PPARα(peroxisome proliferator-activated receptor alpha)」という物質が、「動脈硬化」の病態形成と治療において中心的な役割を果たしていることが分かってきたそうです。

 

 

最新の研究知見により、PPARαの抗炎症作用 が従来考えられていた脂質代謝改善効果よりも重要であることが明らかになり、 治療戦略の根本的見直しが進んでいるのだそうです。

 

「PPARα」とは、どのようなものかと言いますと・・・

 

「PPARα(ピーピーエーアールアルファ)」は、ペルオキシソーム増殖剤応答性受容体(Peroxisome proliferator-activated receptor alpha)の略で、主に肝臓、腎臓、心臓、骨格筋に発現する核内受容体の一種です。脂肪酸代謝や炎症反応などに関与し、脂質低下薬の標的として知られています。

 

 「PPARα」が動脈硬化を改善するメカニズムがどのようなものかは、後日の話題にいたしますが・・・

 

どうやら、「間葉茎幹細胞」由来のエクソソームが、この

「PPARα」に関与している可能性があるというお話をご紹介したいと思います。

 

素敵な1週間をお過ごしくださいキラキラ

 

それでは、またバイバイ

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< ブログ後記 >7月29日

「動脈硬化(atherosclerosis)」というと・・・「悪玉コレステロール(LDL-C)高値」などを連想する方が多いかもしれませんね。

LDL-C高値の「高コレステロール血症」や中性脂肪(TG)高値の「高TG血症」の状態が確認されますと・・・スタチン系薬剤(LDLコレステロールを低下させる)やフィブラート系薬剤(中性脂肪を低下させる)を服用することを勧められるのが、一般的な内科的な治療の流れとなっています。

しかしながら、最新の研究結果では「動脈硬化」の病態形成やその進行は「PPARα(ピーパーアルファ)」というものが、強く関与していることが分かってきたのですね。

この「PPARα遺伝子」は、糖・脂質代謝や細胞の分化と密接に関係している遺伝子群の発現を調節する「転写因子(てんしゃいんし)となります。

「PPARα」は、多くの代謝経路を制御しており、主に以下の機能を持つとされています。

「脂質代謝」に関わる遺伝子の発現を調節することで、血中脂質を改善する作用を持っています。具体的には、肝臓や筋肉などで脂肪酸の利用を促進し、血中のトリグリセリド(中性脂肪)を低下させ、HDLコレステロール(善玉コレステロール)を増加させる働きがあります(参考1)。


また、「PPARα」の遺伝子の活性化は、「脂肪肝」の肝機能障害を改善させる可能性も報告されています(参考2)

「PPARα」の具体的な作用機序をみてみますと、次のようになります。

1)遺伝子発現の調節

活性化された「PPARα」は、特定の遺伝子(アポAI、AII、AV、Cなど)の発現を促進または抑制します。

2)脂質代謝の改善

これらの遺伝子発現の変化により、肝臓での脂質合成が抑制され、脂肪酸の分解が促進され、血中のトリグリセリドが低下します。また、HDLコレステロールの合成も促進されます。


さらに・・・上記のような機序による「PPARα」の活性化による効果は、どのようなものになるのでしょうか?

 

それは、以下のような作用となります。

脂質に対する作用

【1】血中TG(トリグリセリド)の低下

肝臓でのTG(トリグリセリド)合成が抑制され、血中のTG(トリグリセリド)濃度が低下

【2】HDLコレステロールの増加

HDLコレステロールの合成が促進され、血中のHDLコレステロール濃度が上昇


【 3】その他の効果

脂肪酸の利用促進、炎症反応の抑制、インスリン抵抗性の改善など

抗炎症作用

【1】NF-κBシグナル伝達経路の抑制による「炎症性サイトカイン(TNF-α、IL-6など)」の産生抑制
   抑制
【2】ロイコトリエンB4(LTB4)のクリアランス促進による炎症抑制 

【3】「血管内皮細胞」の炎症反応を制御(参考3)

【4】血管壁へのマクロファージをアポトーシスを起こさせることで、マクロファージの浸潤と活性化を抑制 (参考4)

血管壁への直接な作用

【1】内皮型一酸化窒素合成酵素(eNOS)の活性化による血管拡張作用

【2】接着分子(VCAM-1、ICAM-1)の発現抑制によるマクロファージの血管壁への浸潤抑制

【3】マクロファージでの泡沫細胞形成の抑制

などが知られている。「PPARα」の活性化をすることにより、LDL-C値、TG値の値に関係なく、「動脈硬化」の進行が抑制される可能性が指摘されています。

実際に以下のようなことが、現時点で検討されているそうなのですね。

「PPARα」の肝細胞特異的遺伝子導入は、脂質代謝と炎症の両方を同時に制御する画期的なアプローチとして、動脈硬化治療に革命的な可能性を秘めていると考えられています。

実際に動物を用いた研究では、複数の動物モデルでコレステロール30-50%減少、TG値の40-70%減少、プラーク面積32-75%縮小という劇的な改善を実証し、分子レベルでの多面的治療効果が確認され
ているのだそうです。

ところで、「PPARα」遺伝子と「間葉系幹細胞(MSC)由来エクソソーム」の関係は、主に肝疾患や動脈硬化などの疾患モデルで注目されています。

間葉系幹細胞(MSC)には、骨髄由来、脂肪由来、臍帯由来、歯髄由来など、様々な種類がありますね。
 

話を戻しますと・・・「間葉系幹細胞(MSC)由来のエクソソーム」の投与は、「PPARα」を活性化する可能性があることが報告されているのですね。

「PPARα」遺伝子と「間葉系幹細胞(MSC)由来エクソソーム」の関係を見てみますと・・・
 

「間葉系幹細胞(MSC)由来エクソソーム」、は、特に肝臓疾患モデルにおいて、以下のようにPPARαの発現を回復・増加させることが示されています。

「ヒト臍帯MSC由来エクソソーム」は、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)モデルマウスの肝臓で低下したPPARαタンパク質発現を回復させ、炎症抑制や肝障害の改善に寄与する(参考5)、

このように「間葉系幹細胞」に由来するエクソソームの投与は、「PPARα遺伝子」の発現を増加させることが知られており、「動脈硬化」を改善させる可能性が考えられているのですね。

ヒトは生まれた時から、徐々に「動脈硬化」に進行していくことが分かっていますので、その進行を強く抑制できるのは、なんとも夢のある話に思えますね。

今回も最後までお付き合いいただきまして
誠にありがとうございましたお願い

 

参考)

1)Cell Physiol Biochem.2018;51(6):2760-2775.
Targeting PPARα for the Treatment and Understanding of Cardiovascular Diseases
Shuzhen Liら

 

2)Pharmacol Res. 2023 Jun:192:106786.
 Roles of the peroxisome proliferator-activated receptors (PPARs) in the pathogenesis of nonalcoholic fatty liver disease (NAFLD)
Yuan-Ye Qiuら

 

3)Oxid Med Cell Longev. 2021 Feb 25:2021:2045259.
PPAR _α_ Targeting GDF11 Inhibits Vascular Endothelial Cell Senescence in an Atherosclerosis Model
Fangfang Douら

 

4)  J Biol Chem. 1998 Oct 2;273(40):25573-80.
Activation of proliferator-activated receptors alpha and gamma induces apoptosis of human monocyte-derived macrophages
G Chinettiら

 

5)Stem Cell Res Ther. 2022 Nov 12;13(1):517.
Human umbilical cord mesenchymal stromal cell-derived exosomes protect against MCD-induced NASH in a mouse model
Ying Shiら

 

 

(レインボーブリッジと東京タワー)

(筆者撮影)

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 院長  

小笠原  均  (Hitoshi Ogasawara)   

医学博士, 内科医

(総合内科、リウマチ専門医)

(新潟大医学部卒)

 

 

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こんにちは、内科医 ひとちゃんですニコニコ

 

いよいよ、夏本番といってよいのでしょうか。

「梅雨」に特有の湿気がなくなって、強い陽射し(ひざし)となっていますね。

 

3連休でお出かけをしている方も多いかもしれません。

 

イギリスの銀行家、政治家、生物学者、考古学者であったジョン・ラボックは、次のような言葉を残しています。

 

Rest is not idleness, and to lie sometimes on the grass on a summer day listening to the murmur of water, or watching the clouds float across the sky, is hardly a waste of time.

 

休息は怠惰ではない。夏の日に草の上で横になって水のせせらぎを聞いたり、雲が空を横切るのを眺めることは、ほとんど時間の浪費ではない。

 

ジョン・ラボックは、多くの研究業績を残し、多くの法律の制定に関わるなど。精力的に仕事をこなしたと伝えられていますが・・・

夏の「自然」の中で、過ごすことを格別な時間と考えていたのかもしれませんね。

 

皆さまの体調は、いかがでしょうか?

 

 

(AIで画像を作成)

 

前回は、癌に対する「細胞障害性T細胞(CTL)」の作用について、お話をさせていただきました。

 

「細胞障害性T細胞(CTL)」は、癌細胞の表面にある「MHC class I

抗原とともに表出された「癌の抗原」を認識し、破壊するわけですので、とても強い力で「癌細胞」を破壊することが可能である・・・と言えます。

 

しかしながら・・・弱点もあるわけです。

 

ひとつ目の弱点は、「MHC classI抗原」とともに表出されていた「癌の抗原」が変化してしまうことです。

 

これは、「癌細胞」が、「細胞障害性T細胞(CTL)」などで認識され、攻撃され始めると・・・特定の抗原を持つ癌細胞が攻撃され、破壊されます。

これであれば、「癌細胞」はすべて破壊されるということになるのですが・・・「癌細胞」の中には、この抗原が変化しているものが存在するわけです。

 

例えば・・・「癌細胞」の表面に「MHC class I」抗原が存在しても、

「癌細胞」の遺伝子が変化することにより、「MHC class I」抗原とともに表出される抗原も変化してしまうのですね。

 

最初の「癌抗原」をAとすると・・・当然、この時点の「細胞障害性T細胞(CTL)」は、「癌抗原A」を持つ「癌細胞」は確実に破壊できるわけですが、「癌抗原」がBに変化してしまいますと・・・

 

いくら「癌抗原A」を持つ「癌細胞」に対する「細胞障害性T細胞(CTL)」を多く投与しても、「癌抗原B」を持つ「癌細胞」を破壊はできないことになります。

 

こうした「癌抗原」の変化は、「癌細胞」のDNAの変化を生じる場合よりも、DNAのエピジェネチックな変化(アセチル化、メチル化、リン酸化など)によって変化し、癌に対する「免疫応答」に影響を与えると考えられています。

 

なので、癌の抗原変化のパターンは、無限であると考えてよいかもしれませんね。

そして、これらの抗原の変化は、常に生じており。治療の影響でも変化すると考えられています。

 

この癌の抗原の変化は、どの程度の頻度で起こるのでしょうか?

 

「癌の種類」にもよるのですが・・・その変化のスピードは速く(はやく)、癌発生の初期から数週間〜数ヶ月の間に観察されることが多いとされています。

 

「細胞障害性T細胞(CTL)」の投与を開始すると・・癌細胞は、この免疫から逃れるために・・・「癌抗原」の変化スピードは速くなっていく可能性が考えられます。

 

ただし、最初の抗原の完全な消失はまれで、ある程度のレベルで抗原は残存します。

 

つまり、当初の癌抗原Aが、突然、癌抗原Bに変わるというわけでなく、癌抗原A<癌抗原Bとなっていくクァ毛ですね。

しかしながら、当初の癌抗原Aを持つ癌細胞を破壊することが可能な「細胞障害性T細胞(CTL)」の破壊力は弱くなっていくことが予想されます・

 

    (AIで画像を作成)

 

「細胞障害性T細胞(CTL)」の2つ目の弱点とは、どのようなものなのでしょうか?

 

これは、これまで何度かブログ内でもご紹介している話ですが・・・

通常であれば、「癌抗原」と「MHC class I抗原」とが、「癌細胞」の表面に出ているわけです。

 

これらが「癌細胞」の表面に出ているために「細胞障害性T細胞(CTL)」は、「癌細胞」であると認識し、これを破壊することができるわけです。

 

しかしながら、時間が経過するうちに・・・「癌細胞」は、抗原提示に関わる分子(MHCクラスIなど)の発現をなくしたり

「抗原」の処理経路を変化させたりすることで、「免疫」から逃避しようとすることが知られています。

 

この現象は、「MHCクラスI抗原」の「ダウンレギュレーション(Daunregyurēshon)」と呼ばれています。

 

ヒトの「癌細胞」では、約40~90%でMHCクラスIのダウンレギュレーションが報告されています。

多くの固形がんでMHCクラスIの発現低下が見られ、これはCTLによる認識・攻撃を回避する主要な免疫逃避メカニズムであると考えられています。

 

「癌抗原」は、「MHC classI 抗原」とともに「癌細胞」表面に表出されますので、「癌抗原」も隠されて(かくされて)しまうわけです。

 

そのような状況になりますと・・「細胞障害性T細胞(CTL)」がどんなに多く存在しても、「癌細胞」を破壊できないjということになります。

 

 

このような「癌細胞」が、「癌抗原」は、「MHC classI 抗原」を表出しなくなってしまうような変化は、「癌」の進行とともに段階的に起こり、数週間から数ヶ月のスパンで進行するとされているのですね。

 

この状態になると・・・これは、「免疫細胞」を利用して、「癌細胞」

破壊するのは不可能なのか?・・・と言いますと、そうでもありません。

 

 

 

上記のように「MHCクラスI抗原」の「ダウンレギュレーション(Daunregyurēshon)」が生じていたとしても、「ナチュラル・キラー

(NK)細胞は、「癌細胞」を破壊することが可能であるのですね。

 

もちろん、「癌細胞」の「癌抗原」の変化や「MHCクラスI抗原」の「ダウンレギュレーション(Daunregyurēshon)」がなければ、

「細胞障害性T細胞(CTL)」の癌細胞の破壊力は、とても強いわけですが・・・ね。

 

では、「細胞障害性T細胞(CTL)」と「NK細胞」を使えば、癌細胞の立場からすると、これを回避(かいひ)するのは、難しいのでは・・・と考えられますね。

 

実際に「細胞障害性T細胞(CTL)」と「NK細胞」を同時に投与することで、相乗効果が期待できると報告されているのですが・・・続きは。後日の話題にしたいと思います。

 

素敵な休日を、そして、1週間をお過ごしくださいキラキラ

 

それでは、またバイバイ

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<ブログ後記 >7月22日

本格的な夏の季節が訪れたのは嬉しいのですが、
容赦なく(ようしゃなく)強い陽射し(ひざし)が照りつけているのは、少しだけ(?)・・・うんざりしてしまいますね。

今回は、前回のブログ内でもお話をした「細胞障害性T細胞(CTL)」についての特徴をお話をさせていただきました。


「細胞障害性T細胞(CTL)」が「癌細胞」の抗原の変化に弱いというお話をしますと・・・ならば、最初から「ナチュラル・キラー(NK)細胞」を用いた方がよいのではないか?・・・という疑問を持つ方も多いかもしれません。

しかしながら、「NK細胞」にも弱点はあります。

それは、本文内でもご紹介したように「NK細胞」の寿命の短さや「NK細胞」の活性、つまり「癌細胞」を破壊する力ですが・・・本文内にもご紹介をした「ドレス現象」が起こることで、
「NK細胞」の活性が低下してしまい、効率的に癌腫瘤全体に効果を及ぼす(およぼす)可能性が指摘されています。

ことから、癌の腫瘤の表面にダメージを与えるものの、癌腫瘤の深部までは達しにくい(たっしにくい)と考えられてもいるのですね。

「NK細胞」を大量に培養し、断続的に投与することが可能であれば、その有効性を充分に期待できると考える医学研究者もいまし、実際に効果が期待できると思います。

こうした癌に対して「細胞障害性T細胞(CTL)」や「NK細胞」などの「免疫細胞」を用いた治療は、韓国、中国、マレーシアなどで研究「がされており、今後、ベトナムでもその治療の実際的な方法が
検討されています。その中で、「韓国」で、GCリンフォテック社の主導で国として、治験が第3相試験までが施行されて、有効性が認められて、同国の「保険診療」となったそうです。

話を戻しますと・・・「細胞障害性T細胞(CTL)」や「NK細胞」の細胞を同時に投与すると、治療効果に「相乗効果(そうじょうこうか)」があることが、既に世界各国で報告されているのですね。 

 

次にまとめてみたいと思います。

1)相補的な腫瘍認識と攻撃

「細胞障害性T細胞(CTL)」は、抗原特異的に「癌細胞」を認識し、「NK細胞」は、抗原に依存しないで、異常細胞を排除できるため、「癌細胞」の多様性や免疫逃避に対応できるとされています。
(参考1,2)

「NK細胞」は、正常な細胞ではない細胞を破壊しようとしますので・・・例えば、ウイルス感染細胞
や「老化細胞」までも破壊することが可能でしたね。

この性質からしますと、「癌細胞」抗原がどんなに変化しても・・・「NK細胞」は「癌細胞」を破壊できることになりますね。

2)免疫応答の増強

「NK細胞」は、「樹状細胞」の腫瘍局所へのリクルートを促進し,「細胞障害性T細胞(CTL)」の細胞応答を強化することが報告されています。さらに「細胞障害性T細胞(CTL)」から放出される
「インターロイキン2(IL-2)」はNK細胞を活性化することも報告されています (参考1,3)

「樹状細胞」のお話は、ブログ内であまり触れてこなかったのですが、そのメカニズムを簡単にご紹介しますと、次のようなものになります。
「樹状細胞」が癌細胞の断片や死んだ細胞を「食べる」わけですね。これを「貪食(どんしょく)」
と呼びます。そして「抗原」処理をして、MHC class II抗原と一緒に表面に出し、「ヘルパーT細胞(CD4+T細胞)」→「細胞障害性T細胞(CTL)」を活性化するというプロセスをたどります。
このプロセスに10日〜14日程度の時間が必要であるとされています。

このプロセスのスタートは、「癌組織」部分に「樹状細胞」を早く集めるところから始まりますので
「NK細胞」が癌組織を攻撃すると同時に「樹状細胞」を呼び寄せるということになりますね。

3)癌細胞が「MHC class I抗原(HLAクラスI)」を喪失し「細胞障害性T細胞(CTL)」から逃避しても、NK細胞はそのような細胞を認識・排除できる

4)免疫チェックポイント阻害剤との併用効果の増強

PD-1/PD-L1阻害などの免疫チェックポイント治療は、「細胞障害性T細胞(CTL)」だけでなく
「NK細胞」の抗腫瘍活性も高める(参考5)

これらに加えて、癌幹細胞(Cancer Stem Cells, CSCs)は、腫瘍の再発や治療抵抗性の原因となる細胞ですが、「NK細胞」や「細胞障害性T細胞(CTL)」は、条件によっては、癌幹細胞を破壊することが可能です。
ただし、「癌幹細胞」は、免疫細胞からの攻撃を回避する多様な仕組みも持っていますので、
やはり、「NK細胞」と「細胞障害性T細胞(CTL)」を同時に投与した方よい可能性はありますね。

もちろん、これらの「免疫細胞」だけで「癌細胞」がなくなるとは、現時点では考えていません。


可能であれば、標準治療の「手術療法」や「化学療法」の補助として、用いるべきという私の基本的な考え方です。

それは、どんなに「化学療法」を施行しても、現状では「癌幹細胞」は残っている可能性があるということです。もちろん、経過中に自分自身の「免疫細胞」の力が強ければ、「癌幹細胞」は自然に消失する可能性は高いと考えます。


しかし、万が一、残っていますと、再発するリスクもあるわけですね。

「化学療法」の優れた(すぐれた)ところは、「癌細胞」を大量に破壊できることです。もし、手術が可能ならば、できるだけ「癌組織」を除去し、癌細胞の数を少なくした方が「免疫細胞」を用いた治療
は効果を示しやすいと言えますね。

ただし、化学療法には「プロトコール(レジメ)」と呼ばれる抗がん剤の投与方法がありまして、世界の中でも「超高齢化社会」である我が国では、このような「プロトコール(レジメ)」をすべて
施行できずに、副作用の出現で、中止せざるを得ない患者さんもいるとされています。

「NK細胞」や「細胞障害性T細胞(CTL)」を併用するとしても、あまり、副作用が出ないことが特徴なのですね。
 

しかしながら、「免疫細胞」を用いた治療にも弱点があります。
それは、「癌関連線維芽細胞(CARF)」の存在でしたね、「癌関連線維芽細胞」と「癌細胞」の混じりあった「がん微小環境(Tumor Microenvironment, TME)」でしたね。


この中には、血管内皮細胞や免疫細胞が「癌関連線維芽細胞」と同時に存在しているわけです。
この免疫細胞の中で、「マクロファージ」という細胞が、活性型のM1型から、免疫抑制型のM2型に変化しているために・・・
ひどい場合には、どんなに「免疫細胞」を投与しても、それらが「癌組織」を認識できずに通り過ぎる・・・という現象「も報告されているのですね。

今回のブログは、若干、踏み込んだお話をしましたので・・・また、叩かれる(たたかれる)かもしれませんねえーん

 

まあ、引退まじかの「老害医師」が、若い医療者たちに残した伝言と

考えてもらった方が良いかもしれません爆  笑

「常識にとらわれるな。そして、新しい考え方に乗り遅れるな!」というメッセージとともに・・・ね。

 

今回も最後までお付き合いいただきまして

ありがとうございましたお願い

 

参考)
1)Annu Rev Immunol. 2023 Apr 26:41:17-38.
 Designing Cancer Immunotherapies That Engage T Cells and NK Cells
Oleksandr Kyrysyuら

2)J Immunother Cancer. 2024 Oct 31;12(10):e009934.

Unlocking the therapeutic potential of the NKG2A-HLA-E immune  checkpoint pathway in  T cells and NK cells for cancer    immunotherapy
Yan Liら

 

3)Immune Netw. 2025 Apr 9;25(2):e17.
Cytokines in Focus: IL-2 and IL-15 in NK Adoptive Cell Cancer Immunotherapy
Bryan Marrら

 

4)Front Immunol. 2019 Dec 6:10:2836.
 Harnessing NK Cells for Cancer Treatment
Paola Minettoら

 

5)J Clin Invest. 2018 Oct 1;128(10):4654-4668.
 Contribution of NK cells to immunotherapy mediated by PD-1/PD-L1 blockade
Joy Hsuら

 

(麻布台ヒルズにて)
(筆者撮影)

 =================================

 院長  

小笠原  均  (Hitoshi Ogasawara)   

医学博士, 内科医

(総合内科、リウマチ専門医)

(新潟大医学部卒)

 

 

                (上差し 筆者がセレクトしたピアノJazzの曲)

 

                  (上差し 筆者がセレクトした夏の夜のJazzの曲)

 

 

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         <今週、なんとなく聞いてみたい曲>

 

 

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<JTKクリニックからのお知らせ>

 

◯外来診療は予約制をとり、待ち時間が生じないようにしています。

 

◯ ダイエット漢方製剤は、オンライン診療でも可能です。

◯ 線維筋痛症に対するノイロトロピン等の点滴療法、トリガーポイント注射を行なっております。(セカンドオピニオン診療も可)

 

○自分の皮下脂肪から組織を採取し、「間葉系幹細胞」を培養して、自分自身の組織内に投与する「幹細胞治療」を開始しました。

 

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〒102-0083

東京都千代田区麹町4-1-5麴町志村ビル2階

電話 03-6261-6386

Mail:info@jtkclinic.com

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こんにちは、内科医 ひとちゃんですニコニコ

 

月日が経つのははやいもので、7月も半ばになろうとしていますね。

本格的な夏がきて・・・「夏を満喫(まんきつ)するぞ」と言いたいところではありますが・・・

 

耳に入ってくるニュースは、なんとも鬱陶しい(うっとおしい)ことばかりで、なかなか、夏を心から楽しもうという気にもならないのも事実です。

 

皆さまの体調は、いかがでしょうか?

 

(AIで画像を作成)

 

今回は、お隣の国「韓国」で「免疫細胞を用いた癌治療」が保険診療

として、実施可能になったという画期的(かっきてき)なニュースがありまして、それに関するお話をしてみたいと思います。

 

もちろん、日本国内のニュースでは一切(いっさい)報道されていませんが・・・ね。

 

その「免疫細胞」とは、主に「細胞障害性T細胞(CTL)」を用いた治療で、韓国に本社のある「GCリンフォテック社」が中心となり開発したものになります。

 

JTKクリニックの「免疫細胞」を用いた癌の補助療法は、この「GCリンフォテック社」の日本支社の協力により行っています。

 

「GCリンフォテック社」の情報によれば、韓国国内での第3相試験でも「有効性」が確認できるデータが得られ、保険診療で行える治療になったそうです。

 

各国の公的な保険診療で認められるのは「ナチュラル・キラー(NK細胞)」が先だろうと、私は考えておりましたので・・・見事に予想が外れてしまったわけです。

 

そこで、今回は遅ればせながら・・・「ナチュラル・キラー(NK細胞)」の話題を交える(まじえる)形で、「細胞障害性T細胞(CTL)」

とは、どのような「免疫細胞」であるのかを話題にしてみたいと思います。

 

    (AIで画像を作成)

 

まずは・・・「癌細胞」を排除できる細胞で、代表的なものをあげるとしますと・・・「ナチュラル・キラー(NK)細胞」と「細胞障害性T細胞(CTL)」となります。

「NK細胞」の話題は、これまでも、多くの話題をご紹介してきましたね。少しだけ、復習してみますと・・・

 

「NK細胞」は、生まれつき備わっている「自然免疫」を構成する細胞のひとつでありまして、「癌細胞」ばかりでなく、「ウイルス感染細胞」や「老化細胞」までも破壊することが報告されています。

現在では、身体を構成する「各種の臓器(ぞうき)」から「老化細胞」を除去することが可能となれば、ヒトの寿命が10~20年程度の延長をすることが可能である・・・という説も出てきているので、

 

で、「抗老化医療」の中でも、自己血由来の「NK細胞」を培養増殖(ばいようぞうしょく)させて、投与する「NK細胞」療法は、「抗老化医療」という側面からも期待されているわけですね。


「NK細胞」の破壊力は、とても強いわけですが、難点(なんてん)をいえば・・・「NK細胞」の生存期間の短さが問題となります。

ヒトやマウスの通常の「NK細胞」は、数日から数週間程度で寿命を迎えると考えられています。

 

もちろん、時間が経つと、その活性(免疫の強さ)は、次第に低下していきますので、「NK細胞」にその破壊力を期待できるのは、約3~5日間であると考えられます。
 

また、癌細胞を破壊する際には、「NK細胞」の「ドレス現象」
というものが認められることが、2013年に東北大学の研究グループによって報告されています。

「NK細胞」の「ドレス現象」とは、次のようなものになります。
最初に「癌細胞」を攻撃した「NK細胞①」は、「癌細胞」からNKG2DLを獲得することがあります。この結果、「NK細胞①」は、NKG2DLをまとった状態、つまり「ドレスを着た」ような状態になり、これが「NK細胞②」よって、攻撃され、破壊されてしまうという現象が起こるのですね。

 

           (図はお借りしました) 

 

このことは、「NK細胞」の能力を半減(はんげん)させると考えられているわけです。

一方で「細胞障害性T細胞(CTL)」は・・・と言いますと、「細胞障害性T細胞(CTL)」は、CD8+ T細胞とも呼ばれます。
 

これは、次のようなメカニズムにより、「癌細胞」を破壊します。

「癌細胞」は、内部のタンパク質(癌抗原)を分解して「ペプチド」の断片を作り、これをMHCクラスI分子と結合させて細胞表面に提示します。

「ペプチド」はアミノ酸が結合したものでしたね。

 

          (図はお借りしました)

 

 

自分自身が「癌細胞」であると「MHC class I抗原」といっしょに表面に出した「癌細胞」は、すぐに「細胞障害性T細胞(CTL)」の餌食(えじき)」になり、攻撃を受けることになります。

 

もう少し、詳細な流れをお話ししておきますと・・・

 

「細胞障害性T細胞(CTL)」の「T細胞受容体(TCR)」がこの複合体を認識することで、癌細胞を「異常な細胞」として識別します。


これは、次のようなメカニズムとなります。

「(細胞傷害性T細胞(CTL)」の細胞受容体(TCR)が、MHCクラスI分子に提示された「癌抗原ペプチド」を認識すると、以下の反応が起こると考えられています。

 




        (図はお借りしました)


1) T細胞が活性化される
             ↓
2)細胞毒性顆粒(パーフォリン、グランザイム)を放出
              ↓

3)癌細胞のアポトーシス(細胞死)を誘導する

というように癌細胞を破壊(アポトーシス)するわけですね。
-


上記のような「細胞障害性T細胞(CTL)」による癌細胞攻撃は、従来の理解を遙かに超えた精密で強力なな分子システムであると考えられているわけですね。

 

しかしながら、「細胞障害性T細胞(CTL)」の「癌」に対する免疫力には、弱点も存在するわけですが、続きは、後日の話題にしたいと思います。

 

素敵な1週間をお過ごしくださいキラキラ

 

それでは、またバイバイ

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<ブログ後記>7月15日

本文内で、ご紹介した「細胞障害性T細胞(CTL)」を用いる治療は、「活性リンパ球療法」というブランド名で呼ばれています。

その歴史を見てみますと、実に壮大(そうだい)な歴史(History)があるのが理解できます。

1980年代の初め、アメリカ国立衛生研究所の「ローゼンバーグ博士」が率いる研究チームは、がん患者さんから大量の「リンパ球」を採取して、一定量の「インターロイキン2(I L-2)」のサイトカインを加えるという方法を考え出しました。

「インターロイキン2(I L-2)」というサイトカインは、「リンパ球」を活性化させるますが、この活性化した「リンパ球」を点滴で体内に戻す方法を開発し、この治療は「LAK療法」と名付けられ、第4の癌治療として、大いに期待されたそうです。

この「LAK療法」は、治療が困難な「進行がん」であっても、大きな癌病変が消える症例が多く認められたそうですが、問題点も浮き彫り
(うきぼり)になったそうです。

その問題点は、「インターロイキン2(I L-2)」の副作用が強いことであり、癌の縮小は認められるものの、どうしても、それを克服(こくふく)することができなかったようです。

それに加えて、致命的(ちめいてき)であったのは、「LAK療法」では、活性を高めた「NK細胞」を増殖させることができないことが判明したそうです。

ブログ内でも度々(たびたび)お話をしていますが・・・「NK細胞」は、その数ではなく、その「活性」が重要であるというお話をしているわけですが・・・「NK細胞」の活性を高められても、それがある程度の増殖をしなければ、「癌の治療」には使えない・・・
ということになりますね。

注目すべきは、「ローゼンバーグ博士」の目指した「癌の免疫治療」
が、「細胞障害性T細胞(CTL)」と「NK細胞」を同時に投与することを目指していた点になります。

いずれにせよ、「ローゼンバーグ博士」らの作り出した「LAK療法」は、実用化は見送られたのだそうです。

「LAK療法」が衰退(すいたい)したあと、次の課題は、「リンパ球」の効率的な大量培養方法の開発、身体的な負担の軽減、高い治療効果と安全性が目的となっていきます。

そして、1980年代の後半になり、日本で新しい培養方法が開発されたのです。

当時の「国立がんセンター」の研究室長だった「関根暉彬博士」は、「LAK療法」の開発に携わった(たずさわった)経験を活かし(いかし)、少量の末梢血液(約30cc)から「リンパ球」を分離し、新たに「抗CD3抗体」と前述の「インターロイキン2(I L-2)」で刺激することにより、リンパ球を1,000倍以上に増殖させることに成功したのですね。

少し、解説をしますと・・・リンパ球の一部である「T細胞」の表面には、「CD3タンパク質」というものがありまして、T細胞の増殖に重要な役割を果たしているのですね。「抗CD3抗体」が「CD3タンパク質」を刺激して、「インターロイキン2(I L-2)」の刺激とは、

別の経路で、「T細胞」の増殖を促した(うながした)・・・ということになります。

さらに「関根先生」の開発した手法が画期的(かっきてき)であったところは、活性化した「リンパ球」を患者さんに投与する直前に「抗CD3抗体」や「インターロイキン2(IL-2)」を取り除くことで、投与した際に生じる重篤な(じゅうとく)な副作用も解消されたというわけですね。

これが、日本で生まれた『活性化自己リンパ球療法』の歴史となりますね。

関根先生の研究チームは、「活性化自己リンパ球療法」の効果を確認するため、「肝臓がん」の術後再発予防を目的とした臨床試験を行ないました。5年間の試験の結果、無再発生存率は改善され、統計学的にも明らかな有意差が認められました。

この結果は、2000年に世界的な医学雑誌「ランセット」に掲載され、「活性化自己リンパ球療法」は科学的根拠に基づいた初めての受動免疫療法として知られることになったというわけです。

関根先生の行った方法を少し検証してみますと・・・

「インターロイキン2( IL-2)」は、増殖・生存シグナルを促進するので、「細胞障害性T細胞(CTL, CD8+T細胞)が強力に増殖されることになります。

活性・増殖される細胞は、他にもありまして、「インターロイキン2( IL-2)レセプター」を発現しているために、「インターロイキン2( IL-2)」に応答して増殖する細胞に「ヘルパーT細胞(CD4+T細胞)」もあります。

また、抗CD3抗体を用いますと・・・- TCR/CD3複合体に結合し、「細胞障害性T細胞(CTL, CD8+T細胞)」と「ヘルパーT細胞(CD4+T細胞)」を強力に活性化させることが知られています。

解説が後になってしまいましたが・・・
「ヘルパーT細胞(CD4+T細胞)」とは、それ自体は細胞毒性はない(直接的な殺傷能力はない)わけですが、他の免疫細胞を活性化・調節する「司令塔」的役割を持つ細胞ということになります。

NK細胞の増殖・活性化には、「インターロイキン2( IL-2)」は共通なのですが、NK細胞は、CD3分子を発現していないため、抗CD3抗体による直接的な活性化・増殖は起こりません。

話を戻しますと・・・関根先生の研究チームの開発した「活性化自己リンパ球療法」の「抗CD3抗体」や「インターロイキン2(IL-2)」を用いる方法は、
ときどき、話題になる「CAR-T療法」の遺伝子改変前の「T細胞」の増殖にも応用されているそうです。

長くなってしまいましたので、「癌細胞」の抗原の変化について、後日の話題にしたいと思います。

今回も最後までお付き合いいただきまして
誠にありがとうございましたお願い

 

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              (筆者撮影)

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 理事長・院長  

小笠原  均  (Hitoshi Ogasawara)   

医学博士, 内科医

(総合内科、リウマチ専門医)

(新潟大医学部卒)

 

 

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                <今週、なんとなく聞いてみたい曲>

 

 

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<JTKクリニックからのお知らせ>

 

◯外来診療は予約制をとり、待ち時間が生じないようにしています。

 

◯ ダイエット漢方製剤は、オンライン診療でも可能です。

◯ 線維筋痛症に対するノイロトロピン等の点滴療法、トリガーポイント注射を行なっております。(セカンドオピニオン診療も可)

 

○自分の皮下脂肪から組織を採取し、「間葉系幹細胞」を培養して、自分自身の組織内に投与する「幹細胞治療」を開始しました。

 

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こんにちは、内科医 ひとちゃんですニコニコ

 

夜の蒸し暑さで、夜によく眠れない方も多いのではないでしょうか?

 

夏の時期は仕方がない・・・というのも事実ですが・・・

「睡眠」は、昔よりも健康を維持するには、とても重要であると考えられているようです。

 

ロンドンの庶民生活を描いた作家て、『靴屋の休日』という喜劇の作家でも知られるトーマス・デッカー(Thomas Dekker)は、次のような名言を残しています。

 

Sleep is the golden chain that ties health and our bodies together  

 

「睡眠は健康と私たちの体を結び付ける黄金の鎖である」

 

皆様の体調は、いかがでしょうか?

 

(AIで画像を作成)

 

「睡眠」が健康に及ぼす影響は、最新の医学では次のように報告されています。

 

まず、「 睡眠時間」は、心血管疾患、糖尿病、免疫機能、認知機能に対して因果関係を持つことが明確に証明されているというのですね

(参考1)。

 

 特に注目すべきは、短時間睡眠(7時間未満)が心血管疾患の直接的な原因となることが実証されている・・・というのは、ちょっと驚きです(参考2)。

 

アメリカ心臓協会は、2022年に「睡眠」を「Life’s Essential 8(人生に必要不可欠な8項目)」に追加し、血圧、コレステロール、血糖値と同等の重要性を持つ「心血管健康指標」として位置づけたのですね。

 

このことは、「睡眠医学」において歴史的な転換点と考えられています。

アメリカ心臓協会の指針では、7-8時間の睡眠が最適であり、この範囲から逸脱すると心血管疾患リスクが段階的に上昇するというのですね(参考2)。

 

    (AIで画像を作成)

 

このような結果は、46万人を対象とした解析で「睡眠時間」と「心筋梗梗塞」の因果関係が実証されたそうです。

 

その結果は、次のようになります。

 

短時間睡眠(6時間未満)は心筋梗塞リスクを20%増加させたというのです(参考3)。
 

また、睡眠時間1時間増加当たり、冠動脈疾患リスクが26%低下することも報告され、これは従来の観察研究で見られたU字型関係とは異なり、短時間睡眠のみが因果的にリスクを増加させることも示されています。

 

それ以前の観察研究では、「睡眠時間」が長くても、心血管障害のリスクが高まる可能性が指摘されるというU字型のような関係があると

考えられていました。

 

しかし、これらの大規模試験の結果からは・・・

長時間の睡眠により、リスクが高まることはなく、短時間の睡眠のみが因果的にリスクを増加させることが示されたのだそうです。

 

これらの心血管障害の 病態生理学的メカニズムは、次のように報告されています。

 

 炎症経路の活性化が中心的役割を担うとされていまして・・・

 

「睡眠不足」により、C反応性タンパク質(CRP)、インターロイキン-6(IL-6)、TNF-αなどの炎症マーカーが上昇し、「動脈硬化」を促進(そくしん)するのだそうです。

 

 また、血管内皮細胞の機能障害を介して一酸化窒素(NO)産生が低下し、血管内皮依存性血管拡張能が障害されるのだそうです(参考4)

 

 

さらに自律神経系の失調により交感神経活性が亢進し、心拍変動性が低下し、(参考5), これにより血圧上昇リスクが高まり、長期的な心血管疾患発症につながるとも報告されているのですね(参考6)。

 

これだけの根拠が「睡眠時間」は7時間はとった方がよい・・・と

強く強調されるようになった背景なのですね。

 

睡眠不足による糖尿病、免疫機能への影響は、後日の話題にしたいと思います。

 

素敵な1週間をお過ごしくださいキラキラ

 

それでは、またバイバイ

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<ブログ後記> 7月8日

 

今朝は青空が広がり、皇居の近くを車で通った時に「蝉(せみ)」の鳴き声が聞こえていました。

蝉の声が聞こえてきますと・・・本格的な夏が到来したのかな〜などと思ったりします。

 

今回は「心筋梗塞」という、一見(いっけん)無関係な疾患の発症が「睡眠時間」に関係がある・・・というお話をさせていただきました。しかし、実は「心筋梗塞」ばかりでなく、他にも多くの疾患の発症が「睡眠」と関係があるのではないか・・・と報告されているのですね。

 

本文内でもご紹介しましたが、「睡眠時間」と「2型糖尿病」の発症の関係は、明確化されています。

「2型糖尿病」とは、生活していく中で、発症していく、通常の「糖尿病」ということになりますね。

 

48万人を対象とした大規模な解析で、5時間以下の睡眠で「糖尿病リスク」が37%増加することが示されています(参考7)。

この理由として、「睡眠時間と質」の低下は、インスリン抵抗性の増加、グルコース耐性の低下などの糖尿病リスクの増加と関連していることも報告されています(参考8)

さらに不規則な「睡眠」習慣は、2型糖尿病の発症リスクを高めることも報告されています(参考9)

では、短時間の睡眠が「免疫」に影響するかというと・・・答えは「Yes」となります。

短時間の「睡眠」が免疫力の低下を引き起こすという報告は、実は

多く存在します。睡眠不足や短時間睡眠は、「免疫システム」の働きを弱め、感染症のリスクを高めることが報告されています。

例えば、自然な短時間の睡眠は「ナチュラルキラー細胞(NK細胞)」の活性低下やT細胞機能の変化と関連し、免疫応答のバランスが崩れることが観察されています(参考10,11)。

さらに、睡眠不足は「炎症性サイトカイン」の増加や慢性的な低レベルの炎症状態を引き起こし、心血管疾患や代謝疾患などのリスクも高めると考えられています(参考12)。

では、睡眠時間の短いことは、「老化」の進行スピードには、影響を与えるのでしょうか?

短時間の「睡眠」が「老化」を早めてしまうことは、近年の研究で明確に報告されています。

 

特に、1日6時間未満の睡眠や不眠症状は、「エピジェネティック年齢(生物学的な老化指標)」の加速と密接に関連しており、実年齢よりも生物学的に高齢となる状態が観察されています(参考13)。

さらに睡眠時間が短い人は、脳の萎縮や認知機能の低下がより早く進行することも示されています。さらに、中年期からの短い睡眠は、後年の「認知症リスクの増加」とも関連していると報告されています(参考14)。
 

いかがでしょうか?「睡眠時間」を削ってでも、勉強をしたり、仕事を頑張ることが「美徳(びとく)」とされた時代が確かにあったのかもしれませんが・・・現在では、充分な睡眠をとる心がけが重要なのかもしれませんね。

 

今回も最後までお付き合いいただきまして

誠にありがとうございましたお願い


 

参考)

!)Physiol Rep ​​2017 Dec;5(23):e13498. 

Skeletal muscle insulin signaling and whole-body glucose metabolism following acute sleep restriction in healthy males

Emma Sweeneyら

 

2)Front Cardiovasc Med. 2022 Aug 11:9:930000.

Associations between sleep duration and cardiovascular diseases: A meta-review and meta-analysis of observational and Mendelian randomization studies

Shanshan Wangら

 

3)J Am Coll Cardiol. 2019 Sep 10;74(10):1304-1314

Sleep Duration and Myocardial Infarction

 Iyas Daghlasら

 

4)Am J Physiol Heart Circ Physiol. 2021 Jan 1;320(1):H29-H35. Sleep deprivation and endothelial function: reconciling seminal evidence with recent perspectives

Joshua M Cherubiniら 

 

5)Life(Basal). 2025 Jan 7;15(1):60.

The Effect of Sleep Disruption on Cardiometabolic Health

 SeokHyun Hongら

 

6)J Am Coll Cardiol. 2020 Mar 10;75(9):991-999.

Sleep Irregularity and Risk of Cardiovascular Events: The Multi-Ethnic Study of Atherosclerosis

Tianyi Huangら


7)Diabetes Care. 2015 Mar;38(3):529-37.
Sleep duration and risk of type 2 diabetes: a meta-analysis of prospective studies
Zhilei Shanら

 

8)Metabolism. 2018 Jul:84:56-66.
Sleep influences on obesity, insulin resistance, and risk of type 2 diabetes
Sirimon Reutrakulら

 

9)Sleep Med Rev. 2022 Apr:62:101594.
 Effects of sleep manipulation on markers of insulin sensitivity: A systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials
Nina Sondrupら

 

10)Commun Biol. 2021 Nov 18;4(1):1304.
Role of sleep deprivation in immune-related disease risk and outcomes
Sergio Garbarinoら

 

11)Brain Behav Immun. 2011 Oct;25(7):1367-75.
Short natural sleep is associated with higher T cell and lower NK cell activities
Elinor Fondellら

 

12) MedComm . 2023 Apr 30;4(3):e252.
Multiomics analysis of human peripheral blood reveals marked molecular profiling changes caused by one night of sleep deprivation
Chongyang Chenら

 

13)Psychosom Med. 2024 Jun 1;86(5):453-462.
Short Sleep and Insomnia Are Associated With Accelerated Epigenetic Age
Cynthia D J Kustersら

 

14)Sleep. 2014 Jul 1;37(7):1171-8.
Sleep duration and age-related changes in brain structure and cognitive performance
June C Loら

 

           (東京タワーのある風景)

              (筆者撮影)

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                (上差し 筆者がセレクトしたピアノJazzの曲)

 

                  (上差し 筆者がセレクトした夏の夜のJazzの曲)

 

 

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                <今週、なんとなく聞いてみたい曲>

 

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<JTKクリニックからのお知らせ>

 

◯外来診療は予約制をとり、待ち時間が生じないようにしています。

 

◯ ダイエット漢方製剤は、オンライン診療でも可能です。

◯ 線維筋痛症に対するノイロトロピン等の点滴療法、トリガーポイント注射を行なっております。(セカンドオピニオン診療も可)

 

○自分の皮下脂肪から組織を採取し、「間葉系幹細胞」を培養して、自分自身の組織内に投与する「幹細胞治療」を開始しました。

 

<JTKクリニック 所在地>

〒102-0083

東京都千代田区麹町4-1-5麴町志村ビル2階

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