こんにちは、内科医 ひとちゃんです![]()
6月も半ばとなっていますね。暦に目をやりますと・・・
明日の16日からは、七十二候で「梅子黄(うめのみきばむ)」となることに気が付きました。
「梅(うめ)」は、古くから日本人に身近な植物ですが、もともとは花よりもその実が万病に効くとされ、奈良時代に薬用植物として中国から伝わったといいます。
梅雨に入り、身体の免疫力が落ちるこの時期、クエン酸が豊富で疲労回復、食欲増進の作用がある梅干しは、古くから重宝(ちょうほう)されてきたそうです。
皆さまの体調は、いかがでしょうか?
(AIで画像を作成)
さて、今回は敢えて(あえて)「食べない時間」を作ることが、健康の維持につながる・・・というお話をしてみたいと思います。
私たちは日々、「健康に良い食材」や「美容に効果的な食事法」といった情報に囲まれて暮らしています。
さまざまなメディアでは、「抗酸化作用のある食品」「腸内環境を整える食物繊維」「脂肪を燃やすタンパク質」などが盛んに取り上げられ、何を“食べるか”が健康の鍵(かぎ)として語られていますね。
「何を多く摂取(せっしゅ)すれば健康になれるのかということばかりが話題にされることが多いわけです。、
しかしながら、近年の研究では、「”食べないこと”=空腹状態」が持つ生理的な役割に注目が集まっているのですね。
これは、決して“断食のすすめ”ではありません。
むしろ、一定の時間、敢えて(あえて)食べないことで、ヒトの体が本来持っている「自己修復機能(じこしゅうふくきのう)や免疫機能が活性化されるという考え方になります。
(AIで画像を作成)
生理学的に、空腹状態は体に「代謝的ストレス」を与えます。
これは一見ネガティブなように思われますが、実はこのストレスが、体を強化し適応させる「ホルミシス(Hormesis)」という現象を引き起こします。
「ホルミシス(Hormesis)」は、「少量の有害なストレスが、生体に有益な適応反応を引き起こす現象」を指します。「毒も少量なら薬になる」という概念に近く、適度なストレスが生体の防御機能を活性化させ、結果的に健康増進につながるという生物学的現象です。
この「ホルミシス(Hormesis)」のメカニズムを一部、紹介しますと
次のようになります。
1. 適応的ストレス応答
軽度のストレスは以下の防御システムを活性化します。
- 抗酸化酵素(SOD、カタラーゼ、グルタチオンペルオキシダーゼ)の活性上昇
- DNA修復機構の強化
- オートファジーの促進
2. ミトコンドリア機能の改善
- 軽度の酸化ストレスがミトコンドリアの生合成を促進
- エネルギー産生効率の向上
- 細胞のストレス耐性増強
3.シグナル伝達経路の活性化
- Nrf2経路:抗酸化応答の主要な転写因子
- FOXO経路:ストレス耐性と長寿に関連
4. NK細胞の活性の増加
5.サーチュイン遺伝子の活性化
いかがでしょうか?一定の時間「空腹を保つ」・・・ある程度の空腹を保つだけで、これだけのメリットが出ることに驚かれた方も多いと
思います。
「腹いっぱいになるまで食べないと、力(ちから)がでない」とおっしゃる方は多いのですが・・・上記の「ホルミシス(Hormesis)」のメカニズムを見ますと・・・敢えて(あえて)食べない時間を作った方が調子がよくなるんじゃないか・・・と思えたりもします。
私が注目しているのは、「NK(ナチュラルキラー)細胞」の活性が増加することです。もちろん、ミトコンドリア機能の改善効果も注目すべきところですが・・・ね。
「NK細胞」は、生まれながらヒトが持っている「自然免疫」系に属するリンパ球であり、「癌細胞」、「ウイルス感染細胞」、そして、
「老化細胞」を非特異的に攻撃(こうげき)・排除(はいじょ)する能力を持ちます。
標的を自然に識別(しきべつ)し、攻撃するために「体内の見張り役(サーベイランスシステム)」とも呼ばれています。
とは言っても「NK細胞の数」は少ないわけですね。よく「NK細胞」の数を増やすことが重要である・・・なんて、おっしゃる方がいるのですが、これは間違い(まちがい)なのですね。
その証拠(しょうこ)と言ってはなんですが・・・高齢者では、若いヒトと比較して、「NK細胞」の数は多くなることが知られています。
このブログ内でも再三(さいさん)強調していますが・・・重要なのは「NK細胞の数」ではなく「活性度(cytotoxic activity)」なのですね。
つまり、「NK細胞」が、どれだけ機能的に働いているかがポイントになるわけです。次のようなデータも報告されています。
(図はお借りしました)
次のようなデータも報告されています。これは、年齢と「NK細胞」の活性の変化を表した図となります。
これを見ますと・・・男女ともに20歳ぐらいが「NK細胞」の活性が最も高く、それ以降は、加齢にともなって「NK細胞の活性」は低下していくことが分かっています。
そして、ある程度まで「NK細胞の活性」が低下していきますと・・・
今度が「癌の発生率」が増加してくることが確認できますね。
話を戻しますと、いくつかの研究により、断続的な空腹(インターミッテント・ファスティング)によって、「NK細胞」の活性が向上(こうじょう)することが示唆(しさ)されています。
これは空腹時に分泌されるケトン体やアディポネクチンなどの代謝産物が、「NK細胞」の機能を刺激することによると考えられています。
また、老化に伴い蓄積(ちくせき)する「老化細胞」を「NK細胞」が除去する能力も空腹によって高まる可能性があり、このことは、多くの加齢関連疾患や慢性炎症の予防にとって、とても重要な意味を持つとも考えられているのですね。
素敵な1週間をお過ごしください![]()
それでは、また![]()
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<ブログ後記>6月17日
夏のような暑い日が続いてますね。食事の摂取は控える(ひかえる)にしても、水分を充分にとることは「熱中症」を予防することは、重要ですね。
ヒトの3大欲求とされるもので、真っ先に挙げられるのは「食欲」であるわけですし、「食事」からいかに必要なカロリーや
栄養素を得ることは、生命維持に不可欠なことであると考えられています。
それなのに「食事」を摂取(せっしゅ)を制限することが、健康状態をよくする可能性がある・・・と聞いても、多くの方が疑問に思うのは、当然かも知れません。
一定時間の食事の制限を行うことを「間欠的な断食(インターミッテント・ファスティング)」と呼びます、
この「間欠的な断食は、体重管理や代謝の改善を中心に、さまざまな健康メリットが期待できる食事法と考えられているわけです。
その主な効果は、体重減少、心血管・代謝リスクの低減、インスリン感受性の向上などが挙げられます。
体重管理や代謝の改善を中心に、さまざまな健康メリットが期待できる食事法で、主な効果は、体重減少、心血管・代謝リスクの低減、インスリン感受性の向上などが挙げられます(参考1).
また、血圧、インスリン抵抗性、酸化ストレスの低下が一貫して認められています(参考2)。
ほとんどの断食法(隔日断食、5:2ダイエット、時間制限食)は、1〜8%の体重減少と10〜30%のエネルギー摂取減少をもたらすと考えられているそうで、それにより内臓脂肪の減少や、肥満・2型糖尿病患者での体脂肪分布の改善が報告されています(参考1)
そして、これらの効果が発現する理由として、「ミトコンドリア」の健全化や「DNA修復」に関与する細胞機構を活性化することが示されています。
こうした効果は、「間欠的な断食」ばかりでなく、「カロリー制限」(Cにも認められることが知られていまして、細胞のストレス応答経路を活性化し、DNA修復能力の向上やミトコンドリアの健康維持に寄与することが知られています(参考1,2,3)。
また、こうした「ミトコンドリア」機能の改善やエネルギー代謝の促進、酸化ストレスの低減を通じて、加齢や神経変性疾患の予防に役立つ可能性がある報告されています(参考3)。
「間欠的な断食」の効果は、「ミトコンドリア」の機能に影響を与えるだけでなく、「免疫機能」,「サーカディアンリズム(概日リズム)」,「老化」に多面的な影響を与えることが示されています。
「サーカディアンリズム(概日リズム)」が調整されることから「サーチュイン遺伝子(SIRT1、SIRT3、SIRT6など)」を活性化することが複数の研究で示されています。この活性化は、代謝改善や抗酸化作用、老化防止などの健康効果と関連しています。
例えば、「間欠的な断食」は、肝臓や網膜、脳などで「サーチュイン1遺伝子(SIRT1)のmRNAやタンパク質発現を増加させ、SIRT1の活性も大きく上昇することが報告されています。
また、同様に脂肪組織や肝臓で「サーチュイン3遺伝子(SIRT3」)の増加 させ、ミトコンドリア機能や脂質代謝の改善に寄与すると考えられています。参考文献は省略しますが、まとめますと、以下のようなものになります。
SIRT1 増加 代謝改善、抗炎症、長寿
SIRT3 増加 ミトコンドリア機能改善
SIRT6 維持が重要 代謝改善、脂肪組織の適応
このように一定時間の断食や食事摂取カロリーを減らすことは、「ミトコンドリア」機能の改善やエネルギー代謝の促進、酸化ストレスの低減をもたらし、
さらに「免疫機能」の改善や、「サーカディアンリズム(概日リズム)」の調整による「サーチュイン1遺伝子(SIRT1)の活性化などの抗老化作用の促進などというメリットばかりと言えるのかも知れませんね。
今回も最後までお付き合いいただき
誠にありがとうございました![]()
参考)
1) Trends Endocrinol Metab. 2024 Feb;35(2):125-141.
Common and divergent molecular mechanisms of fasting and ketogenic diets
Antonio Paoli ら
2)Mech Ageing Dev. 2020 Jun:188:111238.
12 days of in vivo caloric reduction can improve important parameters of aging in humans
Alica Schöller-Mann ら
3)Ageing Res Rev. 2017 Oct:39:46-58.
Impact of intermittent fasting on health and disease processes
Mark P Mattson ら
4)Diabetologia. 2021 Jul;64(7):1674-1689. .
Fasting and fasting-mimicking treatment activate SIRT1/LXRα and alleviate diabetes-induced systemic and microvascular dysfunction
Sandra S Hammerら
(週末の銀座 和光 時計台の見える風景)
(筆者撮影)
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理事長・院長
小笠原 均 (Hitoshi Ogasawara)
医学博士, 内科医
(総合内科、リウマチ専門医)
(新潟大医学部卒)
(筆者作成)
(
筆者がセレクトしたピアノJazzの曲)
<今週、なんとなく聞いてみたい曲>
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<JTKクリニックからのお知らせ>
◯外来診療は予約制をとり、待ち時間が生じないようにしています。
◯ ダイエット漢方製剤は、オンライン診療でも可能です。
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