こんにちは、内科医ひとちゃんです![]()
窓を開けて、外の音を聞いていますと・・・さまざまな鳥のさえずり
が聞こえています。
My favorite weather is bird chirping weather.
私のお気に入りの天気は鳥のさえずりだ
アメリカの作家、ハリエット・アン・ジェイコブズの言葉ですが、まさに休日の鳥のさえずりは、空が曇って(くもって)いても、快適に感じます。
皆さまの体調は、いかがでしょうか?
(AIで画像を作成)
今回は、善玉コレステロールと呼ばれる「HDL-C(エッチディーエル・コレステロール)』を話題にしてみたいと思います。
まず、「HDL-C」は、どのようなものであるかを
整理してみたいと思います。
「HDL-C(高密度リポタンパク質コレステロール)」は、血中に存在するコレステロールの一種で、よく「善玉コレステロール」と呼ばれています。HDL-Cは血管内の余分なコレステロールを回収し、肝臓に運ぶ役割を持っており、「動脈硬化」の予防に役立つとされています。
「HDL-C」の主な機能と特徴を見てみますと・・・次のようなものになります。
- 血管壁からコレステロールを回収する
- 回収したコレステロールを肝臓へ運び、処理・排出する
- 抗酸化作用や抗炎症作用により血管を保護する
実は、「HDL-C」の低値は、さまざまな健康リスクと関連していると考えられています。以下にそのメカニズムを紹介したいと思います。
1)コレステロール逆転送の低下
「HDL」の主な機能は、末梢組織や動脈壁からコレステロールを肝臓へ運搬する「コレステロール逆転送」です。「HDL」の値が低いと、この機能が低下し、動脈壁にコレステロールが蓄積しやすくなると考えられています。
2.抗酸化作用の減弱
「HDL」には活性酸素を除去する「抗酸化作用」があります。
「HDL」が少ないと、「LDL(低密度リポタンパク質)」の酸化が進みやすくなり、酸化LDLが動脈壁に取り込まれて動脈硬化を促進します。
3.抗炎症作用の低下
「HDL」には炎症を抑制する作用がありますが、「HDL」が不足すると血管の炎症が進みやすくなります。この「炎症」は動脈硬化の進行を加速させると考えられています。
4.血管内皮細胞保護機能の低下
「HDL」は血管内皮細胞の機能を保護する作用がありますが、
「HDL」低値ではこの保護効果が弱まり、血管内皮細胞の機能障害を招き(まねき)ます。
5.血小板凝集抑制作用の減弱
「HDL」には血小板の凝集を抑制する作用があり、「HDL」が低いと血栓形成リスクが高まります。
上記にご紹介したように「HDL-C」の低値は、動脈硬化や「血管年齢」の高齢化、血栓形成、そして、「血管内皮細胞」の機能障害を起こす可能性があるのですね。
以前のブログ内でもご紹介したのですが・・・
「血管内皮細胞」は、一酸化窒素(NO)やプロスタサイクリンなどの血管拡張物質、およびエンドセリンなどの血管収縮物質を分泌して、血管の収縮や拡張を調節しています。
また、血液の凝固を抑制し、血栓形成を防ぐ(ふせぐ)という重要な機能を持っています。
「HDL-C」の低値は、このような重要な働きを持つ「血管内皮細胞」
も機能不全状態にしてしまうわけです。その他にも、動脈硬化や「血管年齢」の高齢化を起こしてしまうわけですね。
ところで、上記の文章内で、「HDL(高密度リポタンパク質)』と書いたわけですが・・・HDL-C(高密度リポタンパク質コレステロール)との違いは、どのようなものなのでしょうか?
その答えは・・・以下のようなものになります。
「HDL」は血液中に存在するリポタンパク質の一種で、タンパク質とさまざまな脂質(コレステロール、リン脂質、トリグリセリドなど)で構成される粒子そのものを指します。
これは血液中でコレステロールなどの脂質を運ぶ「運び屋」の役割を果たしています。
一方、「HDL-C」は特に「HDL」に含まれるコレステロール成分のみを指します。つまり、「HDL-C」は高密度リポタンパク質によって運ばれるコレステロールの量を測定した値です。
医療検査では通常、「HDL-C」の値が測定されます。
これは血中の「HDL」が運んでいるコレステロールの量を数値化したもので、心血管疾患のリスク評価において重要な指標となっています。
簡単に言いますと・・・
- HDL:リポタンパク質の粒子そのもの(運び屋)
- HDL-C:HDLによって運ばれているコレステロールの量(積荷の一部)
健康診断の結果表では、HDL-Cと表記されることが多いですが、これらは同じものを指しています![]()
健康診断のデータでは、「LDL-C(悪玉コレステロール)」や「TG(中性脂肪)」ばかりが注目をされるわけですが、「HDL-C」にも注目していく必要があるのですね。
素敵な1週間をお過ごしください![]()
それでは、また![]()
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<ブログ後記>4月22日
今回は「HDL-C」について、お話をさせていただきだきました。
低HDL-C血症は、血液中の「HDLコレステロール」の値が基準値より低い状態を指します。一般的に男性では40mg/dL未満、女性では
40mg/dL未満の場合に「低HDL-C血症」と診断されます。
本文内でもご紹介したように「低HDL血症」は、心血管リスクを高める重要な因子であり、生活習慣の見直しなどが必要になると考えられています。
「低HDL血症」に対しては、まず生活習慣の改善が推奨されます。特に有酸素運動や飽和脂肪酸の摂取制限、オメガ3脂肪酸の摂取が効果的とされています (参考1)
薬物治療では、以前は、「ナイアシン」や「フィブラート系薬剤」がHDL上昇効果を示すとされていましたが、
大規模臨床試験(AIM-HIGH試験など)が施行された結果、
約3年間の追跡期間中に高コレステロール血症に対して強力な改善作用を持つ「スタチン療法」に「ナイアシン」を追加しても、HDLコレステロール値とトリグリセリド値が著しく改善したにもかかわらず、臨床的利益の増加は認められなかった( AIM-HIGH ClinicalTrials.)
という結果がありました。(参考2)。
「フィブラート系薬剤」についても同様の結果であり、 近年は
「HDL-C」の量よりも、質・機能が注目されるようになりました。
また、Madsenらの研究(2017)では、「HDL-C」が高くても、「LDL-C」値が高い場合には心血管疾患のリスクは減少しないことが明らかにされました (参考3)
一方で、「HDL-C」の値が高ければ、常に「動脈硬化」のリスクが低いとは限らないという認識も重要です。研究対象者は心血管疾患の既往歴や重篤な合併症がな合計631,762人を対象としたもので、
「HDL-C」 値が高い人 (男性では 70 mg/dl 以上、女性では 90 mg/dl 以上) は、非心血管疾患による死亡の危険性が高まったことか分かった(参考4)というのですから、この結果には少し驚きます。
この理由は「HDL-C」のすべてが「LDL-C」の運び屋ではないため「HDL-C」が多すぎても逆に「動脈硬化」が進むという理由や以下のような理由があるのだそうです。
1.機能不全のHDL-Cの存在
高HDL-Cを持つ患者は、機能不全のHDLを持っている可能性があります。これは、HDLが通常の保護機能を果たさず、逆に心血管疾患のリスクを高める可能性があることを示唆しています。
2.非従来型のリスク因子
高HDL-Cを持つ人々は、従来のリスク因子では認識されない非従来型のリスク因子を持っている可能性があります。これにより、心筋梗塞などの「虚血性心疾患(IHD)」のリスクが高まることがあります
3.コレステロールアシルトランスフェラーゼ(LCAT)活性の低下
高HDL-Cを持つ人々は、LCAT活性が低いことが多く、これも「虚血性心疾患(IHD)」関連しています。LCATはHDLの機能に重要な役割を果たしており、その活性が低いとHDLの保護効果が減少する可能性があります(参考4)
なんのこっちゃ・・・となるわけですが、上記に記載してきた内容から、「低HDL-C血症」は心血管リスクを高める重要な因子であり、生活習慣の見直しや全身性の代謝改善が求められるのは事実です。
しかしながら、「HDL-C」は「高ければ良い」という単純な指標ではなく、その質や他の脂質パラメータ(特にLDL)と合わせて総合的に評価する必要があるということが、最新の国際的な知見となるそうです。
実際に・・・LDL-C-C/HDL-C比率は、冠動脈疾患や脳卒中の予後、心血管疾患の重症度評価において重要な指標です。特に高い比率は、心血管疾患のリスク増加と関連しており、予防や治療の指標として有用である可能性があると考えられています。
軽い気持ちで、善玉コレステロールである「HDL-C」のお話をしようと思ったわけですが・・・それをまとめるのは、案外(あんがい)、
難しいものでした![]()
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ここから、「NMN」や「NAD+」の投与が「HDL-C」のバランスを保つという話にもっていきたかったのですが・・・
興味深い文献がありました。その内容は、以下のようなものです。
複数の研究によると、NAD+前駆体(NAD+を体内で生成するための物質)の投与は、HDL-コレステロール値を有意に増加させる効果があることが示されています。2021年2月までに実施された40件の臨床試験のメタ分析では、NAD+前駆体の補充はHDL-C値を顕著に増加させることが示されたというものです。
これらのお話は、また、別の機会にお話をしたいと思います。
今回も最後までお付き合いいただきまして
誠にありがとうございました![]()
【参考文献】
1)Rev Cardiovasc Med. 2021 Dec 22;22(4):1523-1533.
Effects of aerobic, resistance, and combined exercise on metabolic syndrome parameters and cardiovascular risk factors: a systematic review and network meta-analysis
Minyu Liangら
2)New Engl J Med. 2011 Dec 15;365(24):2255-67.
Niacin in patients with low HDL cholesterol levels receiving intensive statin therapy
William E Bodenら
3)J Am Coll Cardiol. 2016 Nov 8;68(19):2073-2083.
High-Density Lipoprotein Cholesterol and Cause-Specific Mortality in Individuals Without Previous Cardiovascular Conditions: The CANHEART Study
Dennis T Kgら
4)Clin Chem. 2010 Jul;56(7):1128-37.
High pre-beta1 HDL concentrations and low lecithin: cholesterol acyltransferase activities are strong positive risk markers for ischemic heart disease and independent of HDL-C
Amar A Sethiら
(メズム東京 デッキからの風景)
(筆者撮影)
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理事長、院長
小笠原 均 (Hitoshi Ogasawara)
医学博士, 内科医
(総合内科、リウマチ専門医)
(新潟大医学部卒)
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