こんにちは、内科医 ひとちゃんです![]()
5月の大型連休が終わり、通常の日常の時間が戻ってきていますね。
暦を見ますと、その七十二候は「蚯蚓出(みみずいづる)」となっていますね。
その意味は・・・冬眠していたミミズが地上に現れ始める頃・・・
という意味ですね。
ミミズは。落ち葉などの有機物を食べて、土の中に窒素やリンを含む栄養豊富のフンをしますが、これは、畑に肥料を撒くのと同じ意味を持つのだそうです。
たしかに「ミミズ」の英名は、「earth worm = 地球の虫」となっていますね。
皆さまの体調は、いかがでしょうか?
前回の話題に関連して、癌治療の補助療法として「免疫細胞」を使うという考え方・・・という話題にしてみたいと思います。
癌の免疫治療と言いますと・・・「ナンセンス」だと思われる方が多いのではないかと思います。
しかしながら・・・癌治療の補助療法としてなら・・・そのような手もあるのかなあ〜と思っていただけるのではなでしょうか。
そこで、今回はJTKクリニックが、「GCリンフォテック」さんに協力していただいて行なっている「細胞障害性T細胞(CTL)+NK細胞」の同時がなぜ、良い結果を出す可能性があるのか?・・・について、お話をしてみたいと思います。
まず、癌細胞はどのような形で「免疫細胞」の攻撃をされるのか?・・・というお話をしてみたいと思います。
当初、「癌細胞」は、「MHC class I(ワン)」分子というものとともに「癌の一部(癌抗原)」を出してます。
「MHC class I」分子について、少し解説をしますと・・・たちの細胞の表面には、MHCという糖タンパク質がたくさん(細胞1つあたり10万の単位で)発現しています。これは、この細胞は自分のものである印のようなものですね。
ヒトにおけるMHCのことをHLA(Human Leukocyte Antigen; ヒト白血球抗原)といいますね。臓器移植はHLAが同じでないとできない・・・などというお話を聞いたことがあるのではないでしょうか?
実は、「MHC分子」には、2種類あります。
「MHC class I(ワン)」分子と「MHC class II(ツー)」分子がありまして、癌のように細胞内の異常な遺伝子の発現から始まる異物は、「内在性抗原(ないざいせいこうげん)」と呼ばれていまして、これらは、「MHC class I(ワン)」分子とともに細胞表面に表面に表出(ひょうしゅつ)されます。
下の図の左側のような状態になりまして、この状態であれば・・・
「細胞障害性T細胞(CTL, CD8±T cell」で、このような細胞を破壊できるわけです。
しかしながら、癌細胞は「細胞障害性T細胞(CTL)」の破壊から逃れ(のがれ)ようとして、上の右の図のように「MHC class I(ワン)」分子を表出せずに隠して(かくして)しまうことが知られています。
この状態になりますと・・・「細胞障害性T細胞(CTL)」をどんなに頻回(ひんかい)に投与しても、癌細胞は破壊できないことになります。
なぜなら、「細胞障害性T細胞(CTL)」が攻撃するあめには、「MHC class I(ワン)」分子に異常な抗原とともに細胞表面に出ていることが必要不可欠(ひつようふかけつ)だから・・・ということになるからですね。
(AIで画像を作成)
このように「癌細胞」は、免疫監視機構(めんえきかんしきこう)
から逃れる(のがれる)ために「MHCクラスI分子」の発現を低下させる場合があります。
これは「免疫逃避機構(めんえきとうひきこう)」と呼ばれ、「細胞障害性T細胞(CTL)」による「癌細胞」の認識と排除を妨げる(さまたげる)戦略の一つとされています。
この状態であっても、「ナチュラルキラー(NK)細胞」は「癌細胞」を破壊することは可能なのですね。
なぜなら「NK細胞」は、「MHC class I分子」の有無(うむ)に関わらず、正常な細胞ではないものを破壊できるからですね。
つまり、「癌細胞」の表面に「MHC class I分子」があろうと、なかろうとこれを破壊することが可能であるわけです。
また、不思議なことですが・・・「NK細胞」が分泌する「IFN-γ(インターフェロン ガンマ)などのサイトカインにより、癌細胞の
「MHCクラスI 分子」の発現が増加し、「細胞障害性T細胞(CTL)」による「癌細胞」の認識・攻撃が促進されると考えられています(参考1)
ならば・・・「NK細胞」のみを積極的に投与した方が良いのではないか・・・と考える方がいらっしゃっても不思議ではありませんよね。
実は、私も最初は、そのように考えていました。
しかしながら、実際は次のようなことが判明していました。
「NK細胞単独投与」では、がん細胞が多様な耐性メカニズムを発動しやすく、治療効果が制限されることが多いです。
この耐性克服のためには、他の免疫療法や分子標的治療との併用、NK細胞の機能強化が重要であると考えられているのですね。
つまり、現時点においては、癌に対する免疫細胞治療を行う際には、
「細胞障害性T細胞(CTL)」や「NK細胞」による単独攻撃では、
癌細胞が一方の攻撃に耐性を持っても、もう一方の細胞が排除できる可能性が高まるだけでなく、
癌細胞が獲得しやすい「免疫回避」や「耐性」を「細胞障害性T細胞(CTL)」や「NK細胞」の両者を組み合わせることで生存する癌細胞の耐性獲得を抑制し、治療効果を維持しやすくなるとされるのですね(参考2)
癌に対して、免疫治療を行う際に「細胞障害性T細胞(CTL)」や「NK細胞」の両者を同時投与する方法は、まさに当院オリジナルの
「JTK方式」である・・・とぶち上げたかったわけですが・・・
調べてみますと、世界の中では、あたりまえな「スタンダードな免疫細胞」の方法だったのですね![]()
素敵な1週間をお過ごしください![]()
それでは。また![]()
--------------------------------------------------------------------
<.ブログ後記 >5月13日
今回は、癌に対する「細胞免疫治療」を話題にさせていただきました。もちろん、こうした治療が誰にでも施行される時代が来るかは予想できません。
現状では、各国の研究者がそれを実現しようとして努力を続けている段階と言えますね。
現時点では・・・「癌」に対しては、手術療法・化学療法・放射線治療などを施行する「癌の3大治療」というものがあるわけですし、保険診療で行える治療であり、治療後の予後も以前に比べれば、格段(かくだん)に改善もしているわけです。
しかしながら、私の周囲を見てみますと・・・この2年間で私の友人や知り合いなど、数人が癌で命を落としています。
たまたま、運が悪かったとが、病状が進行していたということもあるかもしれませんが・・・。
そこで、頭に浮かんでくるのは、以前にブログ内で話題とさせていただいたことがある、英国のがん研究団体「キャンサー・リサーチUK」などが行った「トレイサーX」試験の結果です。
このなかでは、癌の早期発見が非常に重要だということが強調されています。
その内容を振り返ってみますと・・・「癌は常に変化・進化している。そして、癌は時にはとても攻撃的(こうげきてき)になり、免疫システムを侵略し、身体中に転移するのに適した形になる」ことを示し、癌の治療が非常に難しいと述べています。
さらに・・・「癌の進化は無限であり、「万能のがん治療薬」をすぐに開発できる可能性は低い・・・こうしたことから『癌を早期発見』することが極めて(きわめて)重要である」と結論づけているのですね
(文献3)。
もちろん、言うまでもないことですが・・・「早期発見」は、標準治療においても重要なことに変わりはありません。
では、「癌に対する免疫細胞治療」は、この常識を覆せる(くつがえせる)のか?・・・と疑問を持つ方も多いと思います。
個人的な意見ですが・・・まだ、「トレイサーX」試験で導かれた(みちびかれた)結論ほどの諦め(あきらめ)を感じる状況(じょうきょう)ではない・・・ということになるかもしれません。
その理由は、実際に「免疫細胞」を用いての治療をしている方で、お元気で過ごされている方が、何人かは、いらっしゃるから・・・ということになります。
最初はStageIVの末期の状態からの治療スタート
でしたので・・・現実的なお話には思えないかもしれませんね。
しかしながら、「免疫細胞」を用いての治療をしたら、「癌」が治った(なおった)などという簡単(かんたんな)お話ではありません。
それは、長い経過のうちには、度々(たびたび)「再発」を繰り返すからです。「再発」といっても細胞レベルの再発ですので、せいぜい
「腫瘍マーカー」がわずかに異常値を示す程度となります。
このような段階の癌細胞を捉えることのできる検査で代表的なものは、現時点では宮城県 仙台市にある「日本遺伝子研究所(宮城県仙台市:代表 中川原寛一先生」の「血中腫瘍細胞検査(CTC検査)」で経過を見ていく方法となります。
(最近、GCリンフォテック社の「DNAの安定性」などを見る検査なども出てますが・・・)
これらの検査は、癌細胞の発生した段階で、治療を開始しようという発想ですね。つまり、癌の腫瘤(しゅりゅう)が作られるまで、待つのではなく、血液中に「癌細胞」の存在を確認した時点で「免疫細胞治療」を行うわけです。
そして、血液中に癌細胞がなくなれば。治療を中止するわけですね。
では、手術ができないほど、癌が進行している時に・・・
なぜ「抗がん剤」と併用した方がよいのでしょうか?
これは、多くの方が疑問を持つところですね。「抗がん剤」の中には「分子標的薬」という癌の増殖を抑制する薬剤も含まれるわけですが、それらの薬剤は・・・大量の「癌細胞」を破壊したり、「癌細胞」の増殖を抑制(よくせい)できるからという理由になります。
癌との戦い(たたかい)は、時間との勝負ですから、大量に癌細胞を破壊できたり、増殖を抑制した方が、状況は有利となりますね。
ただし、「抗がん剤」の弱点(じゃくてん)は、副作用があることと「癌幹細胞(がんかんさいぼう)」を壊すことが難しいことになります。
一方で「免疫細胞」による治療では、前回のブログ内でも話題としましたが、癌組織の中や癌の周囲に存在する「癌関連線維芽細胞」が、癌細胞と免疫細胞の接触を妨害(ぼうがい)したり、
免疫抑制の性質を持つM2型マクロファージが免疫細胞が癌細胞を認識できないようにしてしまうことがある・・・という話題もご紹介しましたね。
つまり、「抗がん剤」に「免疫細胞」を併用するという考え方は、ほとんど、正常な細胞と見分けがつかないと言われる「癌幹細胞」を破壊(はかい)することができるという一点だけに注目しても、無意味ということはないと私は、思ったりします。
今回も最後までお付き合いいただきまして
誠にありがとうございました![]()
参考)
1)Clin.Immunol. 2017 Apr:177:76-86.
Adoptive transfer of natural killer cells promotes the anti-tumor efficacy of T cells
Stephen R Godingら
2.)J Physiol . 2022 Dec;600(23):5027-5054.
Interdependence of sequential cytotoxic T lymphocyte and natural killer cell cytotoxicity against melanoma cells
Kim S Friedmann
3)Nature. 2023 Apr;616(7957):534-542.
The evolution of non-small cell lung cancer metastases in TRACERx
Maise Al Bakirら
(虎ノ門ヒルズ内のOpenカフェ)
(筆者撮影)
=================================

院長
小笠原 均 (Hitoshi Ogasawara)
医学博士, 内科医
(総合内科、リウマチ専門医)
(新潟大医学部卒)
<JTKクリニック・アンチエイジング>
(筆者作成)
<内科医ひとちゃんが選んだピアノJazzの曲>
<今週、なんとなく聞いてみたい曲>
=====================
<JTKクリニックからのお知らせ>
◯外来診療は予約制をとり、待ち時間が生じないようにしています。
◯ ダイエット漢方製剤は、オンライン診療でも可能です。
◯ 線維筋痛症に対するノイロトロピン等の点滴療法、トリガーポイント注射を行なっております。(セカンドオピニオン診療も可)
○自分の皮下脂肪から組織を採取し、「間葉系幹細胞」を培養して、自分自身の組織内に投与する「幹細胞治療」を開始しました。
<JTKクリニック 所在地>
〒102-0083
東京都千代田区麹町4-1-5麴町志村ビル2階
電話 03-6261-6386
|
|
==================================
























