こんにちは、内科医ひとちゃんです![]()
3月最後の休日の午後になっています。
暦をみますとその七十二候は「雷乃発声(かみなりすなわちこえをはっす)」となっています。
その意味は、冬の間鳴りを潜めていた雷が春の訪れを告げるように遠くの空で鳴り始める頃なのだそうです。
「春雷(しゅんらい)」とは、ひょっとして、今頃からの季節の雷(かみなり)をそう呼ぶのか?・・・と調べたところ、「春雷」は、
「立春(りっしゅん)」から「立夏(りっか)頃までに発生する雷で、「春雷」は、春の到来を伝えるともいわれるそうです。
皆さまの体調は、いかがでしょうか?
今回は「動脈硬化(どうみゃくこうか)」は、改善するか?という話題をとりあげてみたいと思います。
「動脈硬化」とは、動脈血管壁が厚く硬くなり、弾力性を失っていく慢性的な病態を指しますよね。
さらに細かく言いますと
1.内膜の肥厚
血管内膜にコレステロール、脂質、細胞残骸などが蓄積(ちくせき)する。
2.中膜の変性
血管壁の弾性繊維(エラスチン)が減少し、硬化する
3.プラーク形成
脂質コア、炎症細胞、平滑筋細胞などからなる隆起性病変の形成
4.石灰化
進行した病変では血管壁にカルシウム沈着が起こる
などのことが生じるとされています。もちろん、これらのことが改善せずに進行すれば・・・冠動脈閉塞による「心筋梗塞(しんきんこうそく)」、脳動脈の閉塞(へいそく)や破綻(はたん)による「脳梗塞(のうこうそく)」や脳出血が生じるリスクが高くなりますよね。
もちろん、「動脈硬化」の初期(しょき)には、無症状であることが多いものの、進行すると重篤な(じゅうとく)な循環器疾患や脳血管障害の原因となります。
この「動脈硬化」を改善することは、可能である(かもしれない)・・・と聞くと驚く方もいらっしゃるかもしれません。
なぜなら、これまでの常識(じょうしき)では、飽和脂肪酸や精製炭水化物を減らし、不飽和脂肪酸、食物繊維、抗酸化物質を含む食品を増やす(地中海式食事など)食事療法や
週に150分以上の中等度有酸素運動(ウォーキング、水泳など)を定期的に行うこと、そして、禁煙、内臓脂肪型肥満の解消、アルコール摂取の制限が必要と言われてきたからですね。
これらを守ることが「動脈硬化」の進行を食い止めることができる・・・というわけです。
もちろん、これらのことは重要であることに変わりはありません・
しかしながら、進行を食い止める・・・と言われても、漠然(ばくぜん)としており、心のモヤモヤ感が残っていたのは、私だけではないはずです。
最近になり、「動脈硬化」を改善することは可能なのではないか?・・・という考え方が出てきているのですね。
どのようにして、「動脈硬化」を改善することができるのでしょうか?
それは、「血管内皮細胞」の機能を改善することで、動脈硬化を改善することは可能ではないか・・・とする考え方なのですね。
(図はお借りしました)
確かに血管の内側を覆って(おおって)いる「血管内皮細胞」の障害(内皮機能不全)は動脈硬化の進行において極めて重要な役割を果たして(はたして)いることが知られています。以前にもブログ内でご紹介したかもしれませんが・・・
「血管内皮細胞」の障害が動脈硬化を進行させるメカニズムは、次のようになります。
- バリア機能の喪失:
- 健常な「血管内皮細胞」は、血液成分と血管壁の間のバリアとして機能し、この障害により、LDLコレステロールの血管壁への侵入と蓄積が促進される
- 血管調節機能の障害:
- 一酸化窒素(NO)産生の減少により血管弛緩能が低下し、内皮由来収縮因子(エンドセリンなど)の産生増加する。このことが、血管トーヌスの異常をもたらし、高血圧を悪化
- 炎症反応の促進:
- 接着分子(VCAM-1、ICAM-1など)の発現増加
- 単球/マクロファージの内膜への侵入と泡沫細胞化
- 炎症性サイトカインの産生増加
- 血栓傾向の亢進:
- 抗血栓性表面の喪失
- 組織因子などの凝固促進因子の発現
- 血小板活性化と凝集の促進
- 血管平滑筋細胞への影響:
- 平滑筋細胞の増殖・遊走を制御する因子のバランス崩壊
- 中膜から内膜への平滑筋細胞の移動と増殖促進
- 酸化ストレスの増加:
- 活性酸素種(ROS)の産生増加
- LDLの酸化修飾促進
- 抗酸化防御機構の機能低下
これらの変化が相互に作用し合って、動脈硬化プラークの形成と成長を促進します。そのため、「血管内皮細胞」の機能保護と改善は動脈硬化予防の重要な治療標的となっています。
では、どのような方法が「血管内皮細胞」の機能を改善する可能性が指摘(してき)されているのでしょうか?
現在、注目されている方法は、次のようなものです。
A)運動療法
特にストレッチング運動は、「血管内皮細胞」機能を改善し、動脈硬化の予防に寄与することが示されています..
B)薬物療法と栄養補助
ビタミンCや抗酸化物質、l-アルギニンなどの栄養補助は、内皮機能を改善し、動脈硬化のリスクを低減する可能性が指摘されています。
C)サーチュイン1(SIRT1)遺伝子の活性化
サーチュイン1(SIRT1)遺伝子は、多様な生物学的機能を持つNAD+依存性脱アセチル化酵素をコードしていますが、一酸化窒素合成酵素(eNOS)の活性化により、血管内皮細胞の機能改善すると考えられています。
D)幹細胞療法
「幹細胞療法」は、「血管内皮細胞」の修復を促進し、血管の機能を回復させる可能性があることが報告されています。
血管内を循環する「間葉系幹細胞」が血管の損傷を修復し、「血管内皮細胞」の機能を改善することが示されています。
とくにD)の幹細胞治療が「血管内皮細胞」の機能を改善させる・・・という話には、驚く方も多いと思うのですが、「血管内皮細胞」を正常化させる手段として、最も有望(ゆうぼう)と考えられているのですね。
続きは・・・後日の話題にさせていただきたいと思います。
素敵な1週間をお過ごしください![]()
それでは、また![]()
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<ブログ後記>4月1日
4月になったわけですが、関東甲信地方の平野部では冷たい雨が降り、東京都心では真冬並みの厳しい寒さとなっていますね。
今回は「動脈硬化」は改善するかもしれない・・・というお話をさせていただきました。
以前のブログでご紹介したことがありますが、「動脈硬化(どうみゃくこうか)」は、加齢とともに進行する血管の状態変化です。
どのような変化が起こるのか?・・・と言いますと、血管の内壁に脂質(特にコレステロール)が蓄積し、血管が硬く狭くなる状態ということになりますね。
加齢によって起こる血管の変化は、以下のようなものになります。
1)血管の弾力性の低下
2)細胞修復機能の低下
3)慢性的な軽度の炎症状態
4) 酸化ストレスの増加
「血管」は、皮膚の真皮層や各臓器に網(あみ)の目のように広がっていて、1人のヒトの血管の総延長距離は約10万キロメートル(約100,000km)と言われています。これは地球を2周半近く回れる距離に相当するわけですね。
・・・と考えますと、各種の臓器細胞を再生が可能になったとしても、「血管」が年齢相応に老化して、「動脈硬化」を起こしているとしますと・・・その効果は半減してしまうかもしれませんよね。
実際にその具体的な影響は、次のようなものになると考えられています。
A)組織の壊死リスクの増加
極度の血流制限により、せっかく再生された組織が虚血状態となり壊死する可能性があります。
B)機能低下
臓器は構造的には再生していても、血流不足により本来の機能を十分に発揮できません。
C)線維化の促進(そくしん)
慢性的な血流不足は組織の線維化を促進し、臓器の柔軟性と機能をさらに低下させると考えられます。
そうしますと、今の血管の「動脈硬化」の進行を抑制させるか、あるいは、それを改善していく方法があるのか?・・・という疑問が各国の研究者たちに出てくるのも、当然なのかもしれませんね。
加齢に伴う「動脈硬化」はある程度避けられないプロセスと言えるわけですが、本文内でも、ご紹介をしたように・・・「生活習慣」の改善(かいぜん)によって、「動脈硬化」の進行速度を大幅に遅らせることが報告されています。
しかし、もう少し欲張って(よくばって)、この生活習慣の改善以上の効果を上げられるものはないのか?・・・と皆が考えたというのは、自然な流れなのかもしれません。
きっかけのひとつは、ハーバード大学のデビット・A・シンクレア教授の著書『LIFE SPAN 老いなき世界』の中に書かれている多くの驚くべき研究結果が紹介されたからでしょうか?
それまでは、ヒトには寿命(じゅみょう)というものがあり、加齢に伴い、活動力が低下し、気力を失い、一定の期間が経てば(たてば)、ヒトの一生は終わっていく・・・という考え方が主流(しゅりゅう)であったわけです。
ところが・・・「NMN(ニコチンアミドモノヌクレオチド)」や「NAD+(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)」を補充し、各種臓器の細胞のATP産生を増加させて、
「サーチュイン遺伝子(長寿遺伝子)」の活性を高く保つことで、ヒトは120歳まで生きることが可能だ・・・とデビット・A・シンクレア教授などが示したことで、皆が健康で長生きをする「ウェルビーイング(Well-being)」を目標にするような気もします。
そんな傾向が強くなるなかで・・・血管の老化」つまり「動脈硬化」については、生活習慣の改善が重要という主張は、少し「ナマぬるい」と感じていた研究者が多くなったような気もします。
「幹細胞治療」が「血管」の「老化」のプロセスを逆転させる・・・という主張は、いかにも「夢物語(ゆめものがたり)」に思えます。
しかしながら、いくつかの論文や報告の中では、次のようなことが報告をされています。
例えば、「(間葉系)幹細胞」が、広範囲に失われた「血管内皮細胞」を修復する能力を持っていることが示され、「幹細胞療法」が血管疾患の治療の有望な選択肢であり、将来的には組織再生、つまり動脈の内側を覆う内皮を修復して血管系の機能を回復するのに役立つ可能性があることを示していますし、
さらに「動脈硬化」による血管内皮細胞の障害に対する「(間葉系)幹細胞(MSC)」の投与が有効であることを示しています(文献1).
また、別の論文でも「(間葉系)幹細胞(MSC)」が動脈内皮細胞を横断する能力を持ち、化学誘引物質やせん断応力の影響を受けることが示されています。これにより、間葉系幹細胞(MSC)が動脈硬化のような炎症性疾患において治療的に利用できる可能性が示唆されています(文献2)
また、脂肪由来の「(間葉系)幹細胞(MSC)の投与が動脈硬化の治療において安全で効果的であることが示され、治療後、患者の脂質プロファイルや動脈硬化の指標が改善したと報告しています(文献3)
これらを見ますと、「(間葉系)幹細胞」の投与は、「血管内皮細胞」の機能低下を改善することで、「動脈硬化」を改善させる可能性は
大いに(おおいに)ある・・と言えそうですが・・・ね。
今回も最後までお付き合いいただきまして
誠にありがとうございました![]()
(参考文献)
1)Trends Cardiovasc Med. 2007 Oct;17(7):246-51.
Stem cell therapy for vascular disease
Benjamin Adamsら
2)PLoS One. 2011;6(9)
Mesenchymal stem cells exhibit firm adhesion, crawling, spreading and transmigration across aortic endothelial cells: effects of chemokines and shear
Giselle Chamberlainら
3)Stem Cell Res Ther.2020 Dec 11;11(1):538.
Autologous adipose mesenchymal stem cell administration in arteriosclerosis and potential for anti-aging application: a retrospective cohort study
Hiroki Ohtafら
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理事長、院長
小笠原 均 (Hitoshi Ogasawara)
医学博士, 内科医
(総合内科、リウマチ専門医)
(新潟大医学部卒)
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