こんにちは、内科医 ひとちゃんです![]()
木々の緑が色濃く(いろこく)なる時期である6月が訪れ、昨日の寒さが嘘(うそ)にように暖かい陽射し(ひざし)を感じることのできる休日の午後となっています。
ところで、このブログを始めたのが、2014年4月であったと記憶していますので、5月からは、12年目に入ったことになります。
多くの方に読んでいただき、励まし(はげまし)のお言葉をいただくなどがあり、現在も続けていられるのだと大変、感謝しております。
最近は「人工知能(AI)」を利用して、絵を描いたりなど楽しく遊びながら過ごしておりますが、ブログでも新しい話題をご紹介できたら良いなあ・・・と考えております。今後とも何卒宜しくお願い申し上げます。
アイルランドで、かつて、文学者、脚本家、劇作家、評論家、政治家
と多くの才能を持ち、94歳の長寿を全う(まっとう)した「ジョージ・バーナード・ショー」は、次のような言葉を残しています。
We don't stop playing because we grow old ; we grow old becouse we stop playimg.
年をとったから遊ばなくなるのではない。遊ばなくなるから年をとる
のだ
私が好きな言葉なのですが・・・新しいことに興味を持ち、それを体験したり、経験を得ることは重要だ・・・と最近は自分自身に言い聞かせる日々です。
皆さまの体調は、いかがでしょうか?
今回は、生命の根源的(こんげんてき)なエネルギー(ATP)を産生する「ミトコンドリア」の機能低下が・・・「老化」の主要因(しゅよういん)であるのではないか・・・という一部の研究者の仮説(かせつ)を「ATP産生」の減少の連鎖(れんさ)がもたらす「全身的な老化」が、どのようなものかを考えてみたいと思います。
生物の「老化」の過程(かてい)は、極めて複雑かつ多因子的であるが、「ミトコンドリア機能障害(きのうしょうがい)」が中心的な役割を果たしているのではないか・・・という仮説(かせつ)があります。
そんなバカな・・・と思われる方が多いと思いますが・・・ミトコンドリア」が産生する「ATP」の量が減少することで「老化」が進行するという説を「ミトコンドリア老化仮説」といいまして、
が提唱されて以来、その重要性は「実験的・臨床的エビデンス」の
蓄積(ちくせき)により広く認識されるようになったのですね
(参考1,2)。
2011年にSahiaらが世界的な科学雑誌である「Science(サイエンス)」に「ミトコンドリア老化仮説」を報告するまでは、次のように考えられていました。
「老化」は気付かないうちに進行し、体に多種多様(たしゅたよう)な影響を与え、多くの臓器の機能が徐々に低下していくろ考えられていたそうです。
よく知られている「老化の理論」では、「細胞核」と「ミトコンドリア」という2つの細胞小器官で起こる「損傷(そんしょう)」が関与しているとされていますよね。
しかし、この一見異なる多数の細胞過程の間につながりがあるのかどうかについては、2011年にSahiaらが「ミトコンドリア老化仮説」が発表されるまでは、わからなかったそうです。
Sahinらは、「細胞核の老化過程」と「ミトコンドリアの老化過程」の間に興味深いつながりがあることを明らかにし、「細胞老化」についての統一的な機構が存在する可能性を示していた・・・というわけですね。
ちなみに「ミトコンドリア老化仮説」は、間違い(まちがい)であることが証明されるどころか・・・その「重要性」は、実験的・臨床的エビデンスの蓄積(ちくせき)により広く認識(にんしき)されるようになっているのだそうです。
「ミトコンドリア老化仮説」の詳細な内容は、後日の話題にするとして、その蓄積した「エビデンス」とは、どのようなものなのでしょうか?
「エビデンス (evidence) 」とは、は、英語の「証拠(しょうこ)」や「根拠(こんきょ)」を意味する言葉ですね。「ATP」の減少は、皮膚を含む臓器に次のような影響を与えることが分かっています。
1)皮膚
皮膚の恒常的な再生は、ミトコンドリアによって産生される「ATP」に依存しており、その減少は表皮細胞の増殖・分化能の低下を招くことが報告されています(参考3)。
具体的には、「ATP」の減少によって「表皮角化細胞」の増殖サイクルが遅延し、基底層から角質層への分化過程が障害される。
これにより、表皮のバリア機能が低下し、経表皮水分喪失の増加、皮膚乾燥、炎症感受性の亢進などの老化皮膚の特徴が顕在化するということが分かっています。
さらに別の研究では、皮膚の「ATP」減少は、真皮層にある「コラーゲン」や「エラスチン」などの細胞外マトリックスタンパク質の産生にも影響を与えることが知られています。
「真皮線維芽細胞」は、これらのタンパク質合成に大量の「ATP」を消費するそうですが、「ミトコンドリア」機能低下による「ATP」エネルギー供給不足は、質的・量的両面での細胞外マトリックス産生の低下を招き(まねき)、最終的には、しわ形成や皮膚弾力性喪失といった老化現象が生じることが報告されているのですね(文献4)。
2.神経系
脳は最もエネルギー消費の大きな臓器であり、体重の約2%に過ぎないにもかかわらず、全身の「ATP」消費量の約20%を占める。Navarroらによると、加齢に伴う「ミトコンドリア」の機能低下と脳内「ATP」減少は、神経細胞のエネルギー危機を招き、シナプス機能障害、神経伝達物質放出の減少、軸索輸送の障害などを引き起こす(Navarro & Boveris, 2007)。これらの変化は認知機能低下や神経変性疾患の素因となることが報告されています(文献5)。
3.心筋
心筋細胞は高密度の「ミトコンドリア」を有し、継続的な収縮活動のために大量のATPを必要とする。
心臓のミトコンドリアにおける「ATP」の産生減少は、心筋収縮力の低下、心拍出量の減少、酸化ストレス増加による心筋細胞損傷などを招くことが報告されている(参考6)
加齢に伴う心機能低下や心不全発症リスク増加の背景には、このようなミトコンドリア機能低下が関与しているとも述べられている。
まだ、免疫細胞への影響、肝臓、腎臓などへの「ATP」の産生が減少したときの影響もあるが、これらは、後日にご紹介したいと思います。
ミトコンドリア」が産生する「ATP」の量が減少することで「老化」が進行するという「ミトコンドリア老化仮説」に反論する知見(ちけん)やデータのないわけですね。
・・・としますと、「抗老化医療(アンチエイジング医療)」は、「老化」が「ミトコンドリア老化仮説」によって進行するものかもしれないと考えて、有効性を示す治療法を選択(せんたく)しておいた方がいいんじゃないかなあ〜という考え方も出てくるわけですね。
現行の方法で「ミトコンドリア老化仮説」が本当であったとして、有効なものは存在するのでしょうか?
続きは、後日の話題にしたいと思います。
素敵な1週間をお過ごしください![]()
それでは、また![]()
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<ブログ後記>6月3日
今回は「ミトコンドリア」の産生するエネルギー ATPの低下が「老化細胞」の産生へとつながる可能性について、お話をさせていただきました。
「老化細胞」が産生される機序と言いますと・・・「テロメア」が「ヘイフリックの限界」になるまで「細胞分裂」が生じ、
それ以上は細胞分裂を起こすことによって作られるわけです。
「ヘイフリックの限界」とは、ヒトの細胞が分裂を停止する限界で、細胞分裂を繰り返すたびに染色体末端(せんしょくたいまったん)にあるテロメアが短くなると細胞が「老化」し、一部はプログラムされた細胞死(アポトーシス)を起こしますが、残りは「老化細胞」になるわけですね。
この「老化細胞」は、炎症性サイトカインやケモカイン、プロテアーゼ、成長因子などを放出することで、周囲の組織の損傷(そんしょう)を与えたり、「老化細胞」化したりするので、「ゾンビ細胞」とも呼ばれていまして、「老化細胞」が分泌する炎症物質は「細胞老化随伴(ずいはん)分泌表現型(Senescence-Associated Secretory Phenotype:SASP)」と呼ばれています。
このSASPが「老化」を進行させたり、癌を発症させる可能性があるというのですから、「老化細胞」を除去するための薬剤などの開発が進められているわけです。
こうした状況に今回、話題にしたような・・・「老化」の過程(かてい)は、極めて複雑かつ多因子的であることは知られているのですが・・・
「ミトコンドリア機能障害(きのうしょうがい)」が生じることが、「老化」のプロセスや「老化細胞」の形成に中心的な役割を果たしているのではないか・・・という仮説(かせつ)「ミトコンドリア老化仮説」などというものが出てきますと・・・少し「カオスな状態」に感じるのは、私だけでしょうか・・・。
もちろん、加齢に伴って、「ミトコンドリア」機能低下は、mtDNA(ミトコンドリアDNA)の変異の蓄積、酸化ストレス増加、
ミトコンドリア品質管理機構の障害など、複数の機序を通じてATP産生効率を減弱させることは知られています。
この過程は単なるエネルギー不足を超え、ROSの過剰産生による酸化的損傷や細胞シグナル伝達の変化を通じて、老化細胞の形成につながると考えられています。
さらに「ミトコンドリア」は、ATP合成を担う(になう)だけでなく、ホメオスターシス(生体内恒常性)、アポトーシス制御、活性酸素種(ROS)産生と解毒、代謝シグナル伝達など多様な細胞機能に関与していることが知られていまして、「ミトコンドリア」機能低下のみ
でも「老化細胞」が生じる可能性があるというのですね。
その理由は、「ミトコンドリア」の機能低下は、単なるエネルギー産生の減少にとどまらず、細胞恒常性の全般的な破綻(はたん)を招き(まねき)、これが「老化細胞」の形成に直結すると考えられていルのですね(参考7)。
つまり、「加齢」とは別に何らかの理由で「ミトコンドリア」の機能低下が生じた場合にも「老化細胞」の産生につながるわけですね。実際に「ミトコンドリア」の機能障害に関連して、ATP産生が減少していることが明らかになっています。(参考8)
「ミトコンドリアの機能」と代謝障害が多様な年齢関連疾患の病態に深く関与していることを示し、老化過程における「ミトコンドリア」の機能維持が、健康寿命延長の鍵となる可能性を指摘している論文もあるわけです。(参考9)
例えば、実際に皮膚における「ミトコンドリア」の機能障害により、ATP産生が減少している影響としては、次のようなことが知られています。
表皮角化細胞の増殖・分化能の低下、真皮線維芽細胞によるコラーゲン・エラスチン産生の減少、バリア機能の障害などが挙げられ、これらは乾燥、しわ形成、弾力性喪失などの臨床的老化所見と直接関連するとされています。
同様に、皮膚以外の他の臓器や免疫細胞においても、「ATP産生低下」は組織特異的な機能障害をもたらし、老化関連疾患の病態を形成することが知られています。
もうひとつ、この話題を「カオス化」させるお話をご紹介させていただきます。
それは、「iPS細胞」から放出される「エクソソーム」が・・・「老化細胞」を「正常細胞」に変える可能性があるのではないかというお話です。
JTKクリニックは、「iPS細胞」関連の研究で、米国でも高く評価されている「リプロセル」社と業務提携をしているわけですが・・・
同社の論文には「老化細胞」に「iPS細胞」から放出される「エクソソーム」を投与すると・・・「老化細胞」が消失するということを示すデータがあるのですね。
私は、この実験結果の図をみた時に「老化細胞」が何らかの理由で、アポトーシスを生じたのだ・・・解釈していました。
もちろん、「老化細胞」はアポトーシスを起こせない細胞ということになりますので、これが「アポトーシス」を起こしただけでも、かなりスゴイことなわけです。
最近、「リプロセル」社の社長様が、JTKクリニック内で、教育講演会を開催してくださったのですが・・・「
その時に「老化細胞」に「iPS細胞」から放出される「エクソソーム」を投与すると・・・一部の細胞が「正常細胞化」する可能性があるというお話を聞かせていただいたのですね。
よくよく調べてみますと「老化細胞」に対する「iPS細胞由来エクソソーム」の作用として、SASP(老化関連分泌表現型)の抑制、細胞周期の部分的な再開、ミトコンドリア機能の改善などの報告がありました。
細胞周期の再開というのは、「老化細胞」は分裂を停止していますので、細胞の増殖に関係する「細胞周期」はストップする
わけです。これが一部再開したというのは・・・もう「老化細胞」が分裂を再開したということを示している可能性があるわけですね、
このことから、私は一部の「老化細胞」は「正常細胞」の戻る可能性もあるのではないか・・・と考えました。
そして、調べていましたら、「ミトコンドリア老化仮説」という説があることに気がついたというわけです。
この説には、現時点で矛盾が見当たらないというお話を本文内で紹介しましたが、もし、「老化細胞」の形成に「ミトコンドリア」の作り出す「ATP」のエネルギーが重要であるとすれば・・・
「ミトコンドリア」の機能を改善することができれば、「老化細胞」の一部は、正常細胞に近いものとなり、少なくとも「SASP」を放出し、「老化」の進行を促進したり、「老化に伴う疾患」の発症を抑制できる可能性があるというわけです。
そんなことが可能なのか・・・と疑問に思われる方もいらっしゃるかもしれませんね。
実は、もう既に(すでに)手にしているかもしれません。
ある論文には、次のような記載があります。
NMN、NAD+、5-ALAによる介入は、それぞれ異なる作用機序を通じてミトコンドリア機能を改善し、老化関連障害を緩和(かんわ)する可能性を持つ。
NMNやNAD+はNAD+レベルを増加させることで「ミトコンドリア」mの呼吸鎖機能と代謝調節を改善する。
これらのアプローチは、エネルギー代謝の回復だけでなく、酸化ストレスの軽減、細胞老化の抑制、組織再生能の促進など、
多面的な抗老化効果をもたらす可能性がある・・・・とですね。
もちろん・・・・今後、さらに検証が必要である・・・・と書かれているわけですが・・・・ね。
この続きのお話は、またの機会にしたいと思います。
今回も最後までお付き合いいただきまして
誠にありがとうございました![]()
参考)
1)Nature. 2011 Feb 17;470(7334):359-65.
Telomere dysfunction induces metabolic and mitochondrial compromise
テロメア機能不全は、代謝とミトコンドリアの機能低下を引き起こす
Ergun Sahinら
2)J Intern Med. 2021 Jul;290(1):231-234.
Mitochondrial dysfunction as part of an inflammatory intermediate phenotype that drives premature ageing .
Stenvinkel Peterら
3)Cell Death Dis. 2020 Jun 9;11(6):444.
Mitochondria in skin health, aging, and disease
Annapoorna Sreedharら
4)Exp Dermatol. 2014 Sep;23(9):607-14.
Mitochondrial dysfunction: a neglected component of skin diseases
Rene G Feichtingerら
5)Am J Physiol Cell Physiol. 2007 Feb;292(2):C670-86.
The mitochondrial energy transduction system and the aging process
Ana Navarroら
6)Signal Transduct Target Ther. 2024 May 15;9(1):124.
Mitochondrial dysfunction: mechanisms and advances in therapy
Yao Zongら
7)J Intern Med. 2008 Feb;263(2):167-78.
Mitochondrial dysfunction as a cause of ageing
A Trifunovic ら
8) Am J Physiol Cell Physiol. 2007 Feb;292(2):C670-86.
The mitochondrial energy transduction system and the aging process
Ana Navarroら
9)Nat Rev Endocrinol. 2022 Apr;18(4):243-258.
Mitochondrial and metabolic dysfunction in ageing and age-related diseases
João A Amorim ら
(ホテル アマン東京ロビーの風景)
(筆者撮影)
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理事長・院長
小笠原 均 (Hitoshi Ogasawara)
医学博士, 内科医
(総合内科、リウマチ専門医)
(新潟大医学部)
(筆者作成)
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(Sptifyのポドキャスト:文章作成後、Notebook KLMにて、AIによる音声を作成:テスト配信)
(
筆者がセレクトしたピアノJazzの曲)
<今週、なんとなく聞いてみたい曲>
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<JTKクリニックからのお知らせ>
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