クリーンディーゼル尿素SCRシステムの修理でディーラーから高額請求されていませんか。故障を防ぐ方法やリーズナブルな修理方法があります!また、トータルなクリーニングを定期的に施工することで高額出費が回避できます

 

昨今、ネットサーフィンをしているとシトロエンの故障記事の傾向の変化に気づくことがあります。昭和や平成の頃はもっぱら、油圧系統や電気系統の故障がほとんどでした。しかし、昨今ではシトロエンもハイテクエンジンを搭載するようになったからか、エンジン系の故障の記事も多くなったように感じます。

また、最近目立つのが尿素SCR(Selective Catalytic Reduction=選択的触媒還元)システムの故障の記事です。このシステムの原理としては、アンモニア(NH3)が窒素酸化物(NOx)と化学反応することで、窒素(N2)と水(H2O)に還元されることを応用したもので、火力発電所や船舶の排気ガス処理システムにヒントを得ています。ただしアンモニアを車両に積むのは危険なため、尿素水をタンクに入れて搭載し、これを排気中に噴射することにより高温下で加水分解させアンモニアガスを得ています。

また、これは現在、ディーゼルの輸入車ユーザーを悩ましている大きな故障の1つだと思います。

プジョー・シトロエンあるあるですが、ディーゼル2リッターBlue HDIモデルでアドブルータンクの変形(これはリコールがかかったと聞いています)やアドブループライミングポンプの故障でシステムのカウントダウンが始まり、「エンジン停止まであと○○km」との表示にビビりまくる状態となります。

多くの輸入車が採用しているDPF+SCRシステムの概要を簡単に説明すると排気ガスは先ずDPF(Diesel Particulate Filter=ディーゼル微粒子捕集フィルター)を通ります。ここでPMが濾過されます。また、このDPFは自己クリーニング機能を持ち、捕集したPMがある程度たまると電気ヒーターで燃焼させます(DPF再生)。そして、その後NOxキャタライザーで排気中に噴射された尿素水を高温下で加水分解させてアンモニア(NH3)を発生させ、化学反応によりNOxを窒素(N2)と水(H2O)に還元するというシステムです。

このシステムの故障パターンは大体お約束があります。

 

1.尿素水自らの結晶化や不純物から生じるシアヌル酸の結晶の付着による詰まりに起因する故障

 

PSAのアドブルータンクのリコールについては通気口の設定が不適切なため、尿素水の結晶化により通気口が詰まることがあり、そのため、アドブルータンクの内圧が適切に調節できずに負圧となり当該タンクが変形し、アドブループライミングポンプの負荷が高まり、警告灯が点灯して、最悪の場合、排出ガスが基準値を超えるおそれがあるというものです。このようなタンクの通気口の詰まり以外の原因でのアドブループライミングポンプの故障も多いです。これらの故障の遠因はアドブルードージングモジュール(尿素水インジェクター)の詰まりだと言われています。つまり、詰まっている状態でポンプが作動するとポンプに高負荷がかかり壊れるという図式です。ポンプだけでは交換できずにタンクASSYとなるのが痛いところです。ベンツなどではポンプ交換キットも出始めたので、シトロエンも出ないかなと思っています。この場合、尿素水自身が結晶化している場合は水を加えて常温に加熱すれば液体に戻るのですが、シアヌル酸の結晶は手ごわいです。簡単には除去できず、削り取る必要があります。

これはSCRシステムのカウントダウンが始まったBMW G11 740dの画像です。アドブルードージングモジュールのパイプからアドブルーが漏れて結晶化しているのが見えます。

はたして、アドブルー噴射ノズルを取り外してみるとノズルの先端部分に白い結晶がびっしり付着しているのが分かります。ここが詰まったために行き場のなくなったアドブルーがパイプの外に漏れて結晶化したのだと思います。これで故障の主原因が判断できます。

 
2.NOxセンサーに起因する故障
 
SCRシステムはその性格上非常に多くのセンサーで管理されています。その中でメインとなるのがNOxセンサーです。これは2つ装備され、浄化前と浄化後のNOxをモニタリングしてシステムの挙動を管理しています。このセンサーそのものが非常に過敏に反応するのに加えて、SCRシステムによってNOxが窒素と水に還元されるため、出口側のNOxセンサーは水蒸気など電気的に過酷な環境にセンサーが置かれることもセンサー素子が痛む遠因となっているという説があります。これが故障すると排気が正常に浄化されていないとシステムが判断し、アドブルーが満タンにもかかわらずアドブルーを補給せよというアラートが出たり、カウントダウンが始まったりすることがあります。また、NOxセンサーは非常に高価な部品で1個5~10万円はします。簡単に交換できる金額ではありません。
3.DPF再生に起因する故障
 
DPF再生に必要な時間は、エンジンが暖機状態になってから15分から20分程度、走行距離にして10kmから20km程度です。DPF再生が不完全なまま走行終了を繰り返すと、警告灯が点灯します。国産車では手動再生モードもあるのですが、輸入車ではこのエラーでディーラーに入庫するといとも簡単にDPFユニットの交換が必要ですと判断されて50~60万円コースとなる場合があると聞きます。親切な修理工場を探してDPFクリーニングをしてPMの詰まりを解消すれば簡単に直る故障にもかかわらずです。
 
こうした情報をゲットできたのは私が住んでいる新潟県内にある三条市のCONSENSE MOTOR WERKE(コンセンスモーターヴェルケ)のチーフメカの諸橋さんのおかげです。新潟県には優れた輸入車整備工場がたくさんあって本当に頼もしい限りです。どこが・どのように・どうして故障したのか説明してくださるので、修理方法も選択の余地ができて、的確なので、ただひたすらパーツを交換しまくる修理方法とは一線を画します。また、とても分かりやすい動画チャンネルをアップしておられるので本当にお勧めです。これらの動画の中で諸橋さんも力説されていますが、現在、SCRシステムの故障を回避するには
 
1.ケチらずにシアヌル酸を生じさせるトリウレットなどの不純物を可能な限り除去した高品位なアドブルーを使用する。
 
2.ある程度の走行距離になったら、NOxセンサー(特に出口側)を交換する。
 
3.アドブルータンクやアドブルードージングモジュール(尿素水インジェクター)が詰まっていないか、また、アドブルーの白い結晶や固形物の付着がシステム経路上に見られないか整備工場入庫の際にシステムをこまめに点検してもらい、清掃を行う。
 
4.DPF再生が適切に行われるようにチョイ乗りに注意する。
 
これらの工夫が現在ユーザーができる最良の方法だと思われます。壊れたらドイツ御三家クラスだとアドブルータンク15万円、NOxセンサー1本10万円、DPFユニット50万円、SCRキャタライザー30万円くらいなので、平気で100万円コースの超高額修理になることも最悪ありえないとは言えません。

 

 

これらの動画の中で諸橋さんも述べていますが、ヨーロッパではECUをチューニング(コーディング)してSCRシステムを無効にする魔改造が平気で行われています。Googleで「scr delete」や「scr remove」などのキーワードで検索すると多数ヒットします。日本でもこれをやってくれるショップがいくつか見られます。日本語では「アドブルー キャンセル」で検索すると多数ヒットします。私にはこの方法が合法なのかそうでないのか分かりかねますので興味のある方は施工業者にお問い合わせいただければと思います。

 

また、NOx対策としてSCRだけではなく、従来型のEGR(Exhaust Gas Recirculation=排気再循環)システムも使われている場合にはEGRクーラーの洗浄も必要になってきますので、注意が必要です。下の動画でCONSENSE MOTOR WERKEの諸橋さんも言っておられますが、ディーゼルは補器類の機能のバランスが大切なので、不具合がある補器だけではなく、「上流(吸気系)も下流(排気系)も全体的に」クリーニングすることが大切になるでしょう。その方が結果的に高額出費が抑えられると思います。

 

引用:イタフラ車そしてマイレージ旅行に魅せられて・・・、コベルコ建機、スパークオート、モーターファン、CONSENSE MOTOR WERKE

 

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