「憲法」の基本教科書を考えてみる――芦部信喜著(高橋和之補訂)『憲法 第八版』刊行にあたって
この2023年9月8日に、岩波書店より、芦部信喜 著・高橋和之 補訂『憲法 第八版』が4年半ぶりの改版で刊行された。それで、きょう(9月29日)、大学生協書籍部で一部購入した。まず、体裁を確認しよう。A5判タテ組み・上製で 496頁ある。いまや、タテ組みの基本書・教科書は、稀有だ。代表的なところでは、大石眞先生の2巻ものの基本書がそうだ。タテ組みが好まれないのは、まず、タテ組みというだけで、敬遠する学生、司法試験受験生が多数派だからだということだ。また、パソコンデータが、横書きが基本で、1ページに入れる文字数も、ヨコ組みのほうが、体裁上無理なく入る。縦書き・タテ組みにこだわる著者でないかぎり、横組みの本をつくるのが通常の編集者だろう。芦部本も、初版のころは、タテ組みの本も少なからずあったので、違和感はなかったが、いまはどうだろう。組み方の遺言などはないだろうし、組版データの、ヨコ⇒タテは、校閲さえしっかりしていれば比較的簡単なので、そろそろヨコ組みの並製版で、やや薄くて丈夫な本文紙を使い、束をスリム化する、というのはどうだろう。それで、定価:本体3,400円+税 だがら、頁単価は、7円程度だ。改版では旧版データをかなり活かせたとしても、頁単価7円は、初刷り1万部以上、増刷2000部以上、総印税10~12%程度、か と思わせる。この種の本格的教科書本で、上記の設計が出きる本は、稀有といってよいだろう。それだけ、本書が、憲法教育業界で、基本書として扱われたことがわかる。しかし、補訂者の高橋先生も、70歳をとうに越えておられるし、ご自分の基本書も書いておられる。いつまで、補訂されるのか気になる。芦部先生の直接の門下生も、高齢化しているなか、孫弟子に補訂を任せるか? 現東大教授の宍戸常寿先生や小島慎司先生も多忙だから、筆が速くて高橋先生のメガネにかなう孫弟子と言ったら、木村草太先生(都立大学)くらいか?ここで、版元の岩波書店の本書の宣伝コピーをみてみよう。 憲法の学習は、「芦部憲法」を読むことから始まる。憲法的思考のエッセンスを簡潔かつ平易に語り、世代を超えて読み継がれてきた名著を、1993年の初版刊行から30年、芦部信喜生誕100年を記念して4年半ぶりに改訂。法改正、新立法、新判例、新論点等、この間に生じた憲法変動を反映させた第八版としてここに刊行する。*本書は、なぜ「名著」と呼ばれるのか? 「芦部信喜氏は、「憲法訴訟論」という新しい研究領域を開拓し、長年にわたり憲法学をリードしました。その芦部憲法学のエッセンスを凝縮し、到達点をコンパクトにまとめたのが 本書です。1999年に芦部氏が逝去されてからは弟子にあたる高橋和之氏が補訂を施し、現在も憲法学の通説を把握する上で必読の地位を保っています。文章は平易でありながら含蓄深く、読み返すごとに新たな発見があること。定義がしっかり書かれていること。本書 のこうした特長は、憲法のあり方や解釈をめぐる繊細かつ根源的な議論が必要な今、真に重要な要素です。教科書・参考書には、定評ある芦部憲法の最新版をぜひお薦めください。」と。まあ、全国的に影響力のある芦部本にかわる憲法の単著をかける40~50代のかたがいないわけではないと思われる。しかし、芦部氏の、「憲法訴訟論」や「二重の基準論」などの、思考をこえて、学界・実務界に受け入れられるもの、という視点ではどうだろう。これは、けっこう難しいかもしれない。したがって、当分は、芦部本に代わるものは出てこないような気がする。 まとめに一句。 小鳥来る理屈の窓に風呂敷に ひうち