先週は、

  • 宮崎県が東九州新幹線に消極的な理由
  • 宮崎新幹線のタイプとルート
  • 宮崎新幹線の開業効果

の観点から、宮崎新幹線についての記事を書きましたが、今週は、直面する問題から話を始めます。

並行在来線問題

そもそも並行在来線とは、

整備新幹線区間を並行する形で運行する在来線鉄道のことです。整備新幹線に加えて並行在来線を経営することは営業主体であるJRにとって過重な負担となる場合があるため、沿線全ての道府県及び市町村から同意を得た上で、整備新幹線の開業時に経営分離されることとなっています。

と国土交通省のwebsiteに書かれています。


簡単に言うと、仮に宮崎新幹線が出来た場合には、並行して走っている在来線の運営を地元自治体が引き受けなければならないわけですが、路線によって事情が違うので個別に見て行きます。

  • 肥薩線(八代~人吉):[当ブログ案]新・肥薩線に移行(くまがわ鉄道も運行)
  • 肥薩線(人吉~吉松):[当ブログ案]第三セクター化を検討
  • 吉都線(吉松~都城):並行在来線か否かは未定
  • 日豊本線(都城~宮崎):同

新・肥薩線は、路盤や橋梁だけでなくトンネルを掘ることになるでしょうが、出来るだけ高架橋を使った路線とし、当ブログがココで提案しているように、

  • くまがわライナー(熊本~新八代~人吉)
  • くまがわ鉄道による湯前~八代間の生活路線

の2本立てで運営を行うことから再開し、宮崎新幹線が開通の暁には、三線軌条により新幹線車両も同じ路線を走らせることを前提にします。

その際に、新・肥薩線においては、駅の集約も必要ですし、人吉~吉松間は第三セクター化を視野に入れなければなりません。

また、後者の場合、高校生の通学利用への配慮をする必要はありますが、ゆったりねっとさんが2019年11月に書かれた大畑駅-1に掲載された時刻表

   (出典:ゆったりねっと)

によれば、元々6本/往復/日で、しかもその内の4本が観光列車ですから、専用路線に特化した方がよいかもしれません。

尚、吉都線と日豊本線については当ブログが意見を挟む立場ではありませんが、

吉都線や肥薩線は、そもそも並行在来線に認定されない場合も考えられますし、日豊本線についても、宮崎新幹線のルート次第

とのことで、詳しくは前回に紹介した動画を見ていただいた方が良いでしょう。


延岡に新幹線が止まらない問題

東九州新幹線が元の計画通リ開通した場合に、宮崎県内で出来る駅は、

(大分~)延岡~日向市~都農~高鍋~宮崎

と言っておられるのは、こよりおれんじさんです。

この中でも延岡市は、

戦前より宮崎県内屈指の工業都市

wikipediaに書かれてる通リで、宮崎日日新聞の記事にあるように、

新幹線「宮崎-新八代」異議あり 延岡市長「東九州ルートが第一」

という意見が出てくるのは当然ですが、ここは宮崎県内で話し合っていただくことなので、熊本県民から意見するのは控えます。

ただ、代案というわけではないのですが、熊本~延岡を結ぶ九州中央自動車道の工事が着々と進んでいて、熊本県のwebsiteによれば、


(出典:熊本県「九州中央自動車 路線図」)
 

にて、未事業化区間は残り4カ所です。

そこで、工事を全力で前倒しすれば、鉄道の場合に現在4時間前後掛かっている福岡へのアクセスも、延岡~(高速バス)~熊本~(新幹線)~福岡にて半分以下にできますし、佐賀、長崎へも日帰りの範囲になってきます。

加えて、新幹線開通の暁には、延岡~宮崎~(宮崎新幹線)~熊本・福岡の乗り継ぎにおいて、例えば、2011年3月まで運転されていた「リレーつばめ」が新八代駅で行っていた乗り換え方式

を参考に、在来線特急で延岡から宮崎駅に着いた乗客は同じホームの反対側に止まっている新幹線に乗り継げるようにするといった利用面での配慮をするなどの合わせ技で延岡市の賛同を得られるように進めて行く必要があります。

宮崎新幹線の実現の可能性

ここまで来て今更の話になって恐縮ですが、宮崎新幹線を実現させるのは大きなハードルがあります。

というのも1964年に開通した東海道新幹線の成功を経て作られた「全国新幹線鉄道整備法」(1970年)が先ずあって、そのもとで基本計画路線、整備計画路線が定められています。そのあたりについては「全国の新幹線鉄道網の現状


(出典:全国の新幹線鉄道網の現状)

に詳しく書かれているのですが、既に東九州新幹線は基本計画路線に入っています。

なのに入りもしていない宮崎新幹線に差し替えるのは当然容易ではありません。

そのあたりについて詳しく解説してくれているのは、夢挑戦さんの

ですが、今から申請しても基本計画路線の12番目なので順番通リなら山陰や四国の後となり筈であり、ましてや、先に着工しようものなら、


なんで宮崎新幹線が先なんだ?


という声が飛んでくるのは確実です。

また、鐵坊主さんの最新の動画

では、

新八代ルートはトンネルが80%で総工費を9000億円

としておられ、まるで地下鉄のような新幹線になってしまいますし、先週に書いた「宮崎新幹線のタイプとルート」の予算見込みとも隔たりがありますが、このあたりは、今年度に宮崎県が委託するコンサルの調査を待つしかありません。

ただ、同動画における@user-gg3xi6ie9zさんの

新八代ルートは熊本県の財界や新聞社が言い出してきたルートなので、人吉救済復興と兼ね合わせれば熊本県が反対する確率は限りなく低い

というコメントは興味深いもののソースは分かりませんが、私が推測するには、宮崎県知事の狙いは、

本命)新八代ルート:熊本県経済界と連携して熊本県を巻き込む
対抗)宮崎・鹿児島先行ルート:東九州新幹線計画内なので安全牌
形式)日豊本線ルート:本来のルートであり調査をするが形式的

でしょう。 

何れにせよ、元々の東九州新幹線の計画が作られたのは50年前であり、その後の状況の変化によって方針を見直すのが本来な筈です。

そこで頼みにするのが、ココで紹介した「経済財政運営と改革の基本方針2023 加速する新しい資本主義~未来への投資の拡大と構造的賃上げの実現~(令和5年6月16日閣議決定)」とやたら長い通称「骨太方針2023」に書かれている、

基本計画路線及び幹線鉄道ネットワーク等の高機能化等の地域の実情に応じた今後の方向性について調査検討を行う。

の解釈で、

  • 基本計画路線等の範囲内で地域の実情に応じた今後の方向性の調査検討
    or
  • 基本計画路線等に準じるも地域の実情に応じて今後の方向性の見直しもアリ

の何れかなのでしょうが、当ブログは当然後者としても、このあたりは専門家に意見を求めたいところです。

計画見直しのタイミングとキッカケ

肥薩線復興を推し進めてこられた蒲島郁夫熊本県知事が2024年4月15日に任期満了となります。

それに伴い、熊本日日新聞の記事で報道されている通リ、

3月24日に投開票される次期知事選

となります。

既に複数の方が立候補しておられて、各陣営の選挙公約が出てくるのは3月に入ってからでしょうが、肥薩線復興については、既に熊本県、国土交通省、JR九州の間での話が進んでいるので大きく変えることは難しいかもしれません。

しかし、仮に、


JR肥薩線検討会議の方向性を踏まえて復興に努力しつつ、

宮崎新幹線の動きも見守る。


という意向を表明されたら、人吉球磨の得票に大きく影響を与えるかもしれません。


何も「人吉に新幹線を持って来ます!」まで言う必要はなく、ギリギリ「宮崎新幹線との連携も考える。」を匂わす程度で良いのです。


因みに、前回の2020年度の知事選挙は、現職の蒲島郁夫氏が437,133票を獲得して当選しました。

今回は新人同士の戦いですから、もう少し当選ラインが下がるような気がしますが、前回の選挙では、人吉球磨の有権者数=71,544名/投票者数=39,762名ですから、場合によっては今回の当選者の得票の1割近くを占める可能性があります。

それだけに、人吉球磨の有権者への訴えに於いて十分にご配慮いただくようお願いします。


でも、それだけでは不十分で、今夏までに総選挙が有った場合には、熊本4区の候補者が同様の公約を発表してもらうことが必要ですし、人吉球磨を地盤とする参議院議員の方が、前項の解釈について国会で質問していただければ、大きく流れが変わるキッカケになります。

何れにしても、色んな形で機運を醸成して行くことが求められるのです。

目標と大工程(案)

肥薩線復興の話が新幹線まで広がって、話が大きくなりました。

ただ、豪雨災害で被災した肥薩線を元に戻すだけで問題が解決する筈がありません。

1909年に開通した旧・肥薩線は地域の移動と観光を支える路線としての役割を終え、これからは都市間を結ぶ路線として、或いは新しい観光スタイルを提供する路線として生まれ変わることが新たな目標なのです。

現時点での需要の有無ではなく、需要を生める路線にするかが求められているのです。

勿論、ココで紹介した熊本県発表のJR肥薩線復興方針(案)に書かれた29項目は必達です。

それに、先に触れたTSMCに対しては、日経BPさんも書いている水の問題も含めて慎重に対処しなくてはなりませんし、そもそもTSMC頼みで良いのかととも思いますが、こういった機会を捉え、鉄道路線の復興を単に熊本県南の活性化に留めるのではなく、広く九州全体に経済効果を波及させる手段とすることを通じて熊本県の飛躍に繋げなくてはなりません。

その為の大まかな工程(案)を以下にまとめて終わることとします。

2024年度
肥薩線の持続可能性の検討を進めつつ、宮崎新幹線の調査を見守りながら必要に応じて協力する。(2024年秋ごろに出るとされている結果を踏まえる。)

2025年度~
新・肥薩線(新八代~人吉)として、くまがわ鉄道による生活路線、くまがわライナー、及び将来の新幹線の利用を前提とした建設計画にシフトする。また、宮崎県と共同で宮崎新幹線の実現に動き出す。その際に、肥薩線の人吉~吉松間の運行に関して鹿児島県と協調する他、福岡県、大分県、長崎県、佐賀県、沖縄県も含めたオール九州の支持を得る。

2024年度~2032年度
JR肥薩線復興方針(案)に書かれた29項目の実施を徹底や当ブログがココで提案したパークアンドライド項目も準備を進める。

2033年度
新・肥薩線の開通:くまがわ鉄道による生活路線(湯前~人吉~八代)、くまがわライナーの運行を開始する。

2043年度
宮崎新幹線の開通:宮崎県内の各駅~人吉駅~新八代駅~(熊本~福岡~新大阪)が完成する。