宮崎新幹線に関して、動画やブログで色んな方の意見が出ています。
当ブログでも既に何回か提案していますが、今日から、ほらいんさんの動画
の一部を引用しながら、肥薩線の行方を併せて考えて行くこととします。
尚、少々話が長くなるので2週に分けますが、今週は、
(前半)
- 宮崎県が東九州新幹線に消極的な理由
- 宮崎新幹線のタイプとルート
- 宮崎新幹線の開業効果
についてで、来週は、
(後半)
- 並行在来線問題
- 延岡に新幹線が止まらない問題
- 宮崎新幹線の実現可能性の問題
- 計画見直しのタイミングとキッカケ
- 目標と大工程(案)
を予定しています。
また、当ブログへ初めて来られた方は、
を先に読んでいただいた方が分かり易いかもしれません。
宮崎県が東九州新幹線に消極的な理由
サブタイトルは「東九州新幹線が宮崎県に歓迎されないワケ」となっていますが、そもそも東九州新幹線とは、ココに書いたように、小倉から大分に向かって、そのまま下がって宮崎に至る計画でした。
しかし、宮崎県の熱意は薄く本動画では2021年度の宮崎県からJR九州への要望において、東九州新幹線の整備計画路線への格上げは9番目で、要するに、
出来てくれれば嬉しいけど
ということなのかもしれませんが、最新の2023年度版に於いては、要望に入ってすらいません。
では、何故消極的かと言うと、縦に長い宮崎県が負担しなければならない建設費が約3476億円と見積もられていて年間予算6400億円(国からの助成を含む)に対して負担が大きすぎるのです。
加えて、東九州新幹線が開通した暁には日豊本線の経営を引き受けることになるようで、宮崎県が二の足を踏むのは当然です。
でも、昨年後半から宮崎県の動きが変わり、
宮崎県が新幹線3ルートの費用対効果を調査へ…新八代・東九州・鹿児島中央、予算案に関連費
により、
2024年度一般会計当初予算案に関連費用3400万円を計上した。今年秋頃の調査結果公表を目指す。
と先週末にも報道されました。
新幹線が通るルートやタイプが決まるのは相当先でしょうが、当ブログでは新八代ルートを前提に話を進めて行きます。
宮崎新幹線のタイプとルート
新幹線の方式の一つとして所謂ミニ新幹線があります。これは在来線、つまり肥薩線、吉都線、日豊本線のレールの上を走るタイプです。
しかし、既にココでも書いたようにクネクネと走る路線は線形が悪いので高速化が難しい上に、現在の肥薩線は再度被災する心配があります。
そこで、大幅な時短効果が見込まれるフル規格、加えて建設費削減の意を込めて、
単線の新幹線新線の建設が妥当
というのが、ほらいんさんの提案で私も同意です。
東海道新幹線と同じフル規格の新線なら高速性を確保できるだけでなく、災害対策も兼ねることになるし、旅客需要に見合った単線なら建設費用を抑えられるからです。
肥薩線区間に限って言えばトンネルも使うことになるでしょうが、出来るだけ景色を楽しめる高架としていただくことをJR九州にお願いするしかありません。
また、具体的なルートとしては、新八代を出た後は我が人吉を通り、その後は、えびの~小林~都城~宮崎と、これも当ブログの提案と同じです。
この場合、熊本県内の建設に関わる費用は熊本県が持つことになりますが、見返りについては次項に書きます。
ただ、都城を経由すると線形が悪くなるし(&遠回りになるし)、都城の市街区に新幹線を引くのが難しいので、直接、小林→宮崎となるかもしれないようです。
でも何よりも大きいのは、東九州新幹線の場合は3476億円掛かる予定だったのが、宮崎新幹線だと1158億円と約1/3に抑えられますし、単線計画なら更に圧縮が可能になることです。
宮崎新幹線の開業効果
宮崎新幹線が出来た場合は、宮崎~福岡の航空便の乗客を移行させることが出来るとココで書きましたが、高速バス客を含めた細かなデータの内訳についても本動画で詳しく説明されているので是非観ていただくとして、簡単にまとめると、
福岡~宮崎:125万人(1時間25分)
熊本~宮崎: 75万人(50分)※平成30年度:25万人
山陽~宮崎: 40万人※~新大阪を含む
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合計 240万人
の需要が見込めるそうです。
この場合、熊本~宮崎が50分で結ばれることで往来が3倍増になるという効果は熊本県にとって大きいです。
それに人吉~宮崎が30分ならココで書いたように人吉球磨に住んでいる人の宮崎空港利用が視野に入りますし、宮崎~人吉~熊本という「南九州三都物語」的な周遊旅行も成り立ちます。
また、ビジネス面へのプラス効果もあります。
先月末に北関東の工作機械メーカーが、都城の中小企業を買収したというニュースが報道されていました。
狙いは、
電気自動車(EV)シフトのなかで需要が高まるパワー半導体向けの製造装置開発に照準を合わせ、台湾積体電路製造(TSMC)進出に沸く九州の設備と人材を取り込む。
とのことです。
今月初めのニュ-スでは、
TSMCが第2工場建設を発表 トヨタも出資、2027年稼働へ
という動きが報じられており、正に国を挙げての事業である半導体産業は、
熊本がハブとなってTSMCの効果を九州全域に波及させる
ためにも、今回の熊本~宮崎の高速化やココでも紹介した大分県が検討中の新幹線久大線ルートにより熊本~大分を新鳥栖経由で短時間で結ぶことが欠かせません。
でもその結果、これまで博多に偏っていた各社の九州支社の一部が、九州各地へのアクセスが良くなる熊本に移転して来る可能性が高まるわけで、九州のど真ん中に位置しているメリットを最大限に活かすことができます。
幸い現在開発が進行中の熊本駅前には、
のように駐車場としてしか使われていないスペースが相当あり、ここを高層ビルで埋めれば、九州支社を移転させてくる各社のオフィス需要に応えることが出来ますし、熊本駅前が東京駅の八重洲のように生まれ変わるわけです。
また、昨年リニューアルした阿蘇くまもと空港に対しては、熊本県が「新大空港構想」を策定していて、その中で、
九州を支えるセントラルゲートウェイとして更なる機能強化を図ります
と宣言しています。
そこで、
を観てみると、
空港の反対側にも旅客ターミナルや誘導路や同時離着陸可能にした滑走路(3千m級以上)を整備しておいた方が福岡空港よりも発着枠を増やせる
という意見が出るのは当然で、増設により現在はアジアに偏っている国際便だけでなく欧米便も呼び込めるのです。
その際に、例えば、半導体の設計/デザインの本場であるサンフランシスコ界隈から直行便で来熊したエンジニアが熊本を拠点にして九州各地に出かける為には新幹線網の充実が欠かせません。
それに、ココで報道されているようにTSMCで製造した半導体を迅速に消費地に届ける為には直行貨物便を増やせるだけの十分な規模が必要ですし、「新大空港構想」において九州を支えるためには1本の滑走路で足りる筈がないのです。
話が大幅に逸れましたが、こういった視点で考えれば、前項の熊本県内の建設費負担増は十分ペイできるということが理解いただけたと思います。