既に3.0に進んでいる業界や分野もあるのに、今更「肥薩線2.0」とするのはどうかという気がするのですが、逆に言うと此れまでは止まっていたのかもしれません。
それが、2020年の豪雨災害によって、肥薩線の今後について考えざるおえなくなりました。
他方で、今春、
ローカル鉄道再編で協議会 国が関与、改正法成立
「行司役」、国の手腕焦点 JRは歓迎、自治体警戒
とされています。
不採算路線に悩んでいるJRさんが歓迎しているのは、自治体との協議において国が介入してくれるからです。
それだけに、遅きに失したとは言え挽回策を講じる必要があるわけで、少々古く見えたとしても、2.0を考えて行きましょう。
尚、これから対ドイツ戦で日本の応援をするので、今日は早めの更新となりました。
人吉~新八代~熊本を1時間以下で結ぶ
かつての肥薩線は、JR八代駅の0番ホームから出る古い車両で人吉迄1時間以上乗っていたとボンヤリ記憶しているのですが、タビリスさんの記録によると1時間15分かかっていたようです。
夜遅い便で人吉駅に着いた時にはヘトヘトになりましたが、これも自家用車や高速バスと戦えなかった一因でしょう。
そんな肥薩線の線路の再整備の検討はこれからなのでしょうが、wikipediaに書かれている
- 高速化の手法
- 既存路線の改良
あたりを適用すれば、ローカル線でも高速鉄道の運行が可能なようで、
- JR北海道石勝線:最急曲線半径800 m / 最急勾配12 ‰として建設され、全線で130 km/h運転が可能
- 智頭急行智頭線:単線非電化ながら130 km/h運転対応
- 他7件
と沢山の事例がありますが、智頭線を走るスーパーはくと2号は山間部の単線でありながら智頭~上郡間(56.1km)を42分で結んでいます。
なので、同様の手法で人吉~八代間の51.8kmに八代~新八代間2.8kmを足した人吉~新八代間54.6km(<56.1km=智頭~上郡間)が40分程度に短縮できれば、現在(宮崎~)人吉~新八代間で利用できる高速バスの所用時間42分より早くなるので時間面で競争優位に立ちます。
加えて、先のスーパーはくと2号の車両が製造されたのは1994年 - 2002年とwikipediaに書かれているのですが、現在なら更なる高速化の余地があるでしょうから、出来れば人吉~新八代間を30分前後で結ぶことを目指したいところです。
そして最終目的地は熊本で、新八代~熊本間はノンストップとします。
かつての「急行くまがわ」は人吉~熊本間を84分(1時間24分)かかっていたと管理人あきらさんが書いておられますが、この新列車(仮に名称を「くまがわライナー」とします。)が人吉~熊本間を50分前後で結べば、市場が急速に広がります。
また、この「くまがわライナー」の車両は、肥薩線の風景にも溶け込む外観デザインであることは勿論ですが、
- 転換クロスシート:向きを変える
- 近鉄LC(ロングシート・クロスシート)型
の何れかの装備が前提です。
通勤通学需要を開拓
決して多くはありませんが、人吉から八代・熊本の勤務先に通ったり、学校に進む人がいます。前者は自家用車でしょうが、後者の多くは学校近くのアパートを借りて住んでいるのでしょう。
しかし、仮に人吉球磨~通勤・通学先が1時間~1時間半前後となった場合には状況が変わります。
勤務先の場所次第ではありますが、例えば熊本市中央区・西区・東区内迄なら人吉球磨が通勤圏内となって人吉駅でのパークアンドライドの促進になりますし、それだけでなく熊本市内の住宅需要の一部が人吉球磨に移ってくるかもしれません。
また、大学生は一人暮らしを希望する人の方が多いでしょうが、「くまがわライナー」を利用して自宅からの通学に切り替えることで家庭の経済的負担が減ります。
前記の「急行くまがわ」は人吉~熊本を一日6往復していたそうで、これをバージョンアップしたのが「くまがわライナー」となった場合、急行券or特急券と指定席券は別料金となりますが、定期券購入者数はJR九州さん側で把握できるので、一定数の自由席を設けて座って行ける車両編成にしたいところです。
高速バスと自家用車の代替え促進
人吉インターチェンジから高速バスに乗る人の行く先は、
- 熊本:仕事・遊びに行く(1時間46分)
- 福岡:仕事・遊びに行く(1時間46分)
- 新八代:新幹線に乗り継ぎ
の3通リの内の何れかが大半でしょう。
この内で、一番目の熊本行きなら、1時間46分掛かる高速バスに対して「くまがわライナー」(1時間未満)が圧倒的に有利になります。
また、福岡行きにおいても「くまがわライナー」+新幹線なら1時間半程度で着くので、高速バス(2時間33分)の利用者の相当数を奪える可能性がありますし、近隣の(宮崎県下の)都城市、小林市、えびの市の方の利用もターゲットに入ってきます。
加えて、自家用車で熊本や福岡へ出かけていた方も重要なターゲットです。
というのも国土交通省さんは、
単位輸送量(人キロベース)当たりのCO2排出量を見ると、鉄道と比べて、バスは約2.7倍、航空は約6倍、自家用乗用車は約9倍の排出量である。
と説明しています。
ということは、CO2排出量において、自家用車で出かける場合に対して1/9、高速バスで出かける場合に対しても1/2.7に出来るわけで、ココで書いたような小学校で利用するプリント用紙をケチルなどといったチマチマした対策よりも効果的です。
そこで、人吉球磨の住民がパークアンドライドで「くまがわライナー」を使って地域外に出かける場合には、二酸化炭素削減協力補助を出しましょう。
新幹線利用客の利便性向上
ココで書いたように、これまでは新八代駅迄自家用車や高速バスで行って新幹線に乗り換えるのが普通でした。
ところが、新八代に停車する新幹線の本数は限られており、熊本まで行った方が選択肢が増えます。
つまり、「くまがわライナー」で熊本経由で新幹線に乗り換えた方が便利であり、前記の通リ新幹線乗り継ぎ駅までの所要時間も短縮できるので、通しの料金を考えても圧勝でしょう。
航空機利用客への代替え提案
人吉球磨から航空機を使って遠地へ出かける人の大半は鹿児島空港を利用します。
そこで、仮に「くまがわライナー」が熊本迄通じた後に、新大阪へ行く場合を考えてみます。
[鹿児島空港利用]
人吉インター→鹿児島空港:52分(高速バス)
搭乗手続き~乗機:約40分
鹿児島空港→伊丹空港:70分
降機~バス乗り換え:約20分
伊丹空港~新大阪:30分
合計 :212分(3時間22分)
[くまがわライナー&新幹線利用]
人吉~熊本:60分(~50分)
乗り換え :15分
熊本→新大阪:177分
合計 :252分(4時間12分~4時間)≒約4時間
此れだけ見ると、飛行機を利用した場合の方が若干早いのでしょう。
しかし、「4時間の壁」という考え方を紹介している東洋経済さんの記事では、
鉄道で4時間を切る移動では鉄道利用が優位に立ち、4時間を超えると航空機が優位になる
と説明されています。
勿論、懐疑的な見方もあって詳しくはリンク元の記事を読んで欲しいのですが、新幹線と航空のシェアに於いて、
新幹線の所要時間が約3時間10分の東京圏―岡山は70対30、同約3時間50分の東京圏―広島間は68対32で、やはり新幹線が優位だ。
とのことです。
そうなると、頑張ればギリギリ4時間を切れるかもしれない「くまがわライナー」&新幹線の利用を選択して貰える可能性が高まります。
阿蘇くまもと空港の利用促進
残念ながら、現状では人吉球磨の人が阿蘇くまもと空港を利用することは殆ど無いでしょう。
というのも、地理的に鹿児島空港の方が近いですし、何よりも阿蘇くまもと空港への直通のリムジンバスも無いからです。
他方で、熊本市内から現状で1時間程度かかる阿蘇くまもと空港へのアクセス改善策として、空港アクセス鉄道が計画されていて、完成の暁には、熊本駅~空港駅が44分(~39分)で結ばれるとのことです。
本記事では既に「くまがわライナー」の終点は熊本駅と一旦書きましたが、更に空港駅まで延長すれば、人吉~阿蘇くまもと空港が1時間44分(~1時間29分)で結ばれることになります。
同空港は、将来的には(現在は路線がない)北海道や仙台便を計画しているので、日本全国、或いはアジアの国々の方が、空港から人吉まで乗り換えなしの1本の列車で来て貰えることになりますし、逆に人吉球磨の方が各地域に出かける時に、鹿児島空港以外の選択肢を持てることになります。
つまり、阿蘇くまもと空港~熊本~人吉で熊本が縦に1本で繋げることで、観光や経済面でのプラス材料になるのです。
その場合には、列車の名称が「くまもとライナー」になっても構いません。「くまがわライナー」を敢えて降ろしてでも実を取った方が効果が大きいからです。