左翼文化人の閉鎖的な世界 | 人差し指のブログ

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「日本語で生きる幸福」

平川祐弘(ひらかわ すけひろ 1931~)

株式会社河出書房新社 2014年11月発行・より

 

 

 

かつて 『朝日新聞』 等の論壇文壇は左翼シンパで染められた。

 

 

いったんそうなってしまうと、声名の高い論者、

たとえば一時期の大江健三郎などに対しては

批判記事を書いても地方新聞でも掲載してくれなかったほどである。

 

 

新聞社側としては高名な文化人が述べる御高論を尊重する。

 

 

あるいは自分たちの考え方を代弁してくれる高名な文化人だからとして執筆機会を提供する。

 

 

しかし一見、時流に逆らうかに見せかけて実は新聞の本流に乗っている立ち回りの上手な評論家や作家もいるのである。

 

 

近頃はこれが 『朝日』 のスタンスだと忖度(そんたく)して調子をあわせるのだから、広い意味での御用記者である。

 

 

その馴れ合いが続くうちに、

皆さん互いに相手に保証された気になって、正しいと信じこむ。

 

 

閉鎖的情報空間では、左翼が自分は天の声だと言っても、

右翼が自分は正論だと称しても、結局は仲間内での妄論に過ぎず、

筆者も読者も集団的な自家中毒に陥(おちい)ってしまうことがままあるのである。

 

 

私は大江のような、文化大革命となれば紅衛兵を、

大学騒動となれば造反学生をもちあげたような人は、

知識人として信用しない。

 

 

裸の王様だと言うよりしかたがないが、

しかしこのような主張は活字にはなりにくかった。

 

 

それが近ごろは多少風向きが変わってきた。

 

 

次第に多くの人が遠慮せずに裸の王様は裸だといい新聞批判を口にするようになった。

 

 

4月10日 外濠公園(東京・千代田区)にて撮影