「メタボリックドミノ」「病気とは人生そのもの」「予防医学の始まりは母親の手料理から」 | 総合診療医:誰もがわかりやすく医療を理解する事ができるブログ

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「否定の極論」記事に疲れたあなたへ贈る:「食事」「睡眠」「運動」・・これら「健康の三本柱」をねじ曲げずにポジティブに考えるブログです。

ネット記事などで、「薬は対症療法であって病気を治さない」とする発信を度々見ます。
感染症に対する抗生物質のように薬で完全に治る病気もありますが、例えば生活習慣病などは確かに対症療法であって、病気そのものは治せないため、薬が不必要になる事は難しいです。
  
では、なぜ医師は薬を処方するのでしょうか?
「金儲け」などというくだらない理由しか思いつかない人は、この先は読まないで結構です。
  
ちなみに現在は、薬の処方だけではあまり利益は上がらない仕組みになっています。
例えば入院患者さんに関して、「包括支払方式(DPC)」いわゆる「まるめ」を行なっている病院が多く、むしろ薬を使わなかったり検査をしない方が、病院の収益が上がる仕組みになっています。
  
さてその前に・・・。
  

  
日本では欧米の先進国に比べると、「予防」という事に関して、少なくとも20年は遅れているとされています。
「予防」というものは、次のように分類されます。
  
  
① 第一次予防:健康増進、疾病予防、特殊予防
生活習慣の改善、生活環境の改善、健康教育による健康増進を図り、予防接種による疾病の発生予防、事故防止による傷害の発生を予防すること
  
② 第二次予防:早期発見、早期対処、適切な医療と合併症対策
発生した疾病や障害を検診などにより早期に発見し、早期に治療や保健指導などの対策を行ない、疾病や傷害の重症化を予防すること
  
③ 第三次予防:リハビリテーション
治療の過程において保健指導やリハビリテーション等による機能回復を図るなど、社会復帰を支援し、再発を予防すること
  
  
これらがいわゆる「予防医学」です。
ただしよく読んで頂くとおわかりですが「第二次予防」~「第三次予防」、この段階になると、もはや「治療医学」すなわち内服処方などが含まれてくるのです。
なぜ「予防」の中に「治療」が含まれるのでしょうか?、その答えは後ほど。
  
#注意
!!
これ以降の内容は、生まれながらにして体質が弱かった人あるいは先天的な病気があった人、遺伝性の病気を持っている人、原因不明の特別な病気により病院とお付き合いが必要になった人・・・などなど、努力だけではどうしようもない人たちを除きます。
すべての人にあてはまる内容ではありません。
  

  
『病気とは人生そのものです!!』
  
上の写真をご覧ください。
「メタボリックドミノ」と言います。このブログ内で、とても大切な図です。
  
病気の始まりの多くは、まず「肥満」からです。
そして肥満の原因は、「食事」「運動」「睡眠」、いわゆる私が度々ブログで取り上げている「健康の三本柱」の少なくとも1つ(特に「食事」)が当てはまり、徐々に肥満が始まります。
  
若いうちは免疫力も高く、大した病気にもなりません。
風邪をひきやすくなっても、それが将来の健康への黄色信号とは通常思いません。
便秘も将来の健康への黄色信号とは通常思いません。
  
そして10年~20年くらい、肥満状態を放置しておくと、高血糖、高血圧、高脂血症(脂質異常症)、脂肪肝などが徐々に出現します。
更にこれらに対し何の「第一次予防」もしなかったり、職場健診などの「第二次予防」で異常を指摘されても、何にもしないと、病気はに進行し、2型糖尿病を合併します。
  
この段階になると、2型糖尿病を発症していなかったとしても、高血圧、高脂血症(脂質異常症)もさらに悪化していて、もはや薬なしには、血圧や血液検査上の数値も改善する事ができなくなっています。
  
更に病気は、「メタボリックドミノ」の下2列の状態、すなわち重篤な病気を合併し、生涯病院とお付き合いをしなければなりません。
  
これが「メタボリックドミノ」です。
『病気とは人生そのもの!!』というのは、こういう意味です。
  

 

▲糖尿病の目標設定の考え方

  
  
ネット上では「薬は対症療法であって病気を治さない」とする記事を多数見ます。
  
その通りなんです!!
薬が必要な人は、不健康な人生を歩んできたので、対症療法であっても薬が必要な身体になっているんです。
  
  
そして医師が薬を処方する理由は、「治す」事ではありません。
重篤な合併症への進行を少しでも「防止」することが目的の1つです。
  
これこそが「予防」の中の「第二~三次予防」に「治療」が入ってくる大きな理由です。
  
これは医療関係者としては常識なのですが、それをあえて「対症療法」のみを批判する医療関係者や医療ジャーナリストがいます。
偏った発信者を信頼するかしないかは、皆さんにおまかせします。
  
  
日本の医師は、「第一次予防」に関して、あまり説明しない者が多いです。
それは確かに改めるべきことです。
  

 

  
ですが、国民皆保険の日本において、軽い風邪などでもコンビニのごとく簡単に受診し、3分間診療の状態では、患者1人1人に丁寧に説明する時間などありません。
人気の医師や地方の医師不足の病院では、勤務時間を過ぎても、診療している医師が多数います。
  
上の図もご覧ください。
米国と比較しても、日本の医師は患者1人1人に細かく対応するだけの時間をとる事はできません。
  
「予防」に関して全く何の指導もない・・・と文句を言われても仕方のない日本の現状があります。
ただそれでもやっぱり、医師は生活指導もすべき・・・と、私は思いますが。
  
  
また、何でもかんでも医療に頼りきりも問題だと思います。
それは何も医療に限った事ではありません。
  
ネットで自ら情報を得る事ができる者が、行政や自治体が何も言わなかったから!とかで、他人への責任を求めたり、また責任者追及する発信もあります。
マスコミもよく責任者探しをしますよね。
  
私としては、他人にばかり頼らず自分でも調べなさい、おかしいと思ったら行動しなさいと言いたくなります。
    

▲糖尿病の合併症

 

  
  
薬をやめたいと相談してくる患者さんもおります。
  
このような人たちの多くは、「第一次予防」を怠って、「第二次予防」の後半から「第三次予防」の病状まで進んでいます。
病気になってから色々と文句を言ったり、西洋医学を批判する記事が多数あります。
厳しいようですが、都合が良すぎます。
  
やめたい気持ちはわかるのですが、病状が進行した状態では、もはや「第一次予防」だけで薬が不必要になる事は、簡単にはできません(何も考えずに、漫然と処方している医師も多いですが)。
  
  
患者さんが日常生活を大幅にあらためれば、減薬あるいは中止する事が可能かもしれませんが、それでも私個人の見立てでは、完全に薬を中止するには、10年くらいはかかると思っています。
  
なぜならそれ以上に、不健康な生活を続けてきたわけですから。
そのような人たちは、薬をやめる事ばかり考えずに、医療とお付き合いしながら自らの生活習慣を見直されてください。
  

▲高血圧の合併症

  
  
ところで時々「薬をのむ人たちとのまない人たちを比較すると、のむ人たちの方が合併症が多い」とする発信を見る事があります。
  
当たり前です
  
薬なしで「第一次予防」だけで生活習慣病を改善出来る人は、「メタボリックドミノ」の上にいる人たちで、薬が必要な人は「メタボリックドミノ」の下3~5列くらいにいる人たちです。
薬を必要な人たちが、合併症を起こしやすくて当然なんです。
  
  
同じく、「向精神薬を処方されている人は、されていない人に比べて自殺する割合が多い」とする発信
  
これも当たり前です
  
向精神薬の処方目的の1つは自殺防止です。
処方しないともっと自殺者が増えますし、処方が必要な人は、必要ではない人に比べて自殺しやすい病状なのです。
  
ただし、先輩精神科医が残していった「向精神薬の多剤処方」という負の遺産は、大きな問題です。
これは、現役バリバリの精神科医たちが、減薬するように努めています。また保険診療上、向精神薬の処方は2剤までとの縛りがあります。
  
  
#もう一度注意!!
今回の内容は、生まれながらにして体質が弱かった人あるいは先天的な病気があった人、遺伝性の病気を持っている人、原因不明の特別な病気により病院とお付き合いが必要になった人などを除きます。
すべての人にあてはまる内容ではありません。
  
  
今回の内容は、現場の医師の立場で書いているので、理解の仕方によっては、あまりにも一方的と思われても仕方がありません。
  
  
残念ながら国民皆保険で、コンビニのごとく受診できる日本の病院では、忙しすぎて多くの医師が細々とした生活指導はできません。
  

今、持病がない人は病気にならないように、「第一次予防」に努めるようにしてください。
そして年に1回は健診を受けて、「第二次予防」にも努めるようにしてください。
健診を受けて100点満点をとってきてください。「予防」に完璧なものなどありませんから。
持病をお持ちの方は、合併症をできるだけ起こさないようにするために、やはり「第一次予防」も併用するようにしてください。
  
  
では具体的に「第一次予防」として何を目指せばいいのでしょうか?
それは・・・
  

 

  
「全身の血流を良好にする事!!」です。
  
・手っ取り早く、末梢まで血流を良好にするためには、やはり「適度な運動」です。体内からの熱産生の約6割が、筋肉から発生しますから。
運動嫌いだったりある程度の運動が禁止されている人には「インターバル速歩」、あるいは「NEAT(非運動性活動熱産生)」をお勧めします。
  
・また脱水に注意しながら(特に持病がある人)、暑めのお風呂に入る事ですね。私は時々、酵素風呂に行きます。
テレビで報道される「ぬるま湯に半身浴」というのは、持病のある人が対象です。持病がなければ、41~42度のお風呂に入って、「体温を高める機会を増やしてください」。
  
・マッサージや整体、鍼灸などもいいと思います。
私はこの分野の専門外ですが、腕の良い整体師さんに施術を繰り返してもらえれば、血流も良好になると思います(技術職なのでエビデンスを出す事は難しいでしょうけど)。
  
  
最後に、未成年のお子さ
んやお孫さんがいらっしゃる方へ申し上げます
  
  

  
「病気の予防は、母親の手料理から始まる!!」
  
「健康の三本柱」で「運動」「睡眠」ももちろん大切ですが、子供の頃に悪い食習慣がつくと、大人になってもなかなか治りません。
例えば未成年のうちから喫煙を始めた人は、大人になってからでは簡単には禁煙できないですよね。
スナック菓子やファストフードなどのように、食べやすく作られてかつ栄養価の悪いものを摂る食習慣がつくと、これが将来の肥満や生活習慣病の元となります。
  
この食習慣をつけさせないためには、お母さんの手料理を腹一杯食べさせて、栄養価の低いものまで食べられないようにするのです(父子家庭ならば、父親が母親代わりに)。
よく食べさせ、よく運動させ、かつ夜更かしをしないようによく寝させる事が大切です。
  
つまり・・・
我々大人が、子供の頃に親から教えられたことは、今も昔も変わりありません。

  
ネット記事では名前がついた様々な食事法が紹介されています。
私からすれば、それらは腸内環境の良い健康な人が実行すると、却って不健康になるとしか思えません。
決して難しく考える必要はありません。
  
「シンプルは疲れません」
「シンプルはストレスを貯めにくいです」

お母さんが適切な食事を与えて、深く考えすぎない人生へと導くように、子供たちに教えてあげてください。
  
(画像はネットより引用)

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