NEATの勧め:1時間に2分、立ち上がって身体活動するだけでも、心筋梗塞や脳卒中が減少する!! | 総合診療医:誰もがわかりやすく医療を理解する事ができるブログ

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「否定の極論」記事に疲れたあなたへ贈る:「食事」「睡眠」「運動」・・これら「健康の三本柱」をねじ曲げずにポジティブに考えるブログです。

 2015/3/14 米国腎臓学会臨床雑誌に米国ユタ大学から、タイトルの報告がされました。
 原文のAbstract(英文)はこちらです。
http://cjasn.asnjournals.org/content/early/2015/04/29/CJN.08410814.abstract
  
#対象
 3626名の男女で、この内383名が慢性腎臓病(CKD)の持病がありました。
 研究チームは、米国の国民健康栄養調査(NHANES)の参加者3243名(CKDがない人)が加速度計で身体活動を記録したデータを解析しました。
 参加者は3年間追跡調査され、その間137名の死亡が確認されました。
  
#結果
 1時間当たりの座位時間が2分ずつ減少しても効果はありませんでした。
 また、その2分間に低強度の運動(立っている)をしてもやはり効果はみられませんでした。
 ですが、その2分間をウォーキングのような軽い運動に変えることで死亡リスクを33%低下させることがわかりました。
   
#結論
 研究チームは、たとえ2分間の歩行でも毎時間すれば、1週間で400kcalの余分なエネルギーを消費することができるので、1週間の推奨消費カロリーである600kcalのかなりの部分を達成できるためではないかとしております。
  

NEAT2


  
 ある糖質制限オタクのブログから抜粋します。
  
 「運動量に関しては明治の頃の日本人は、お米たっぷりで糖質60~70%も摂取していましたが、糖尿病はほとんどありませんでした。
 日々の肉体労働、歩く、掃除する、井戸に水くみ・・・中等度以上の運動量が現代人の約10倍と言われていますが、一般人は、日常的に走ったり鍛えたりはしていないと思います。
 運動量に関しては、明治の日本人が参考になると思います。」
   
      ↓↓
 このブログの発信者は「10倍!」という数字をどこから引っ張ってきたのか?、私も探しましたがわかりませんでした。
  
 ですが、我々は明治時代の大人と比べても、また我々の親が我々と同じ年齢の時と比べても、明らかに運動量は落ちています。
 それは次の理由によります。
   

NEAT3

  

~理由の具体例を挙げます~
  
・一部のローカルな駅を除き、ほとんどの駅でエスカレーターが設置された。
  
・地方のデパートも大型化し、エレベーターだけでなくエスカレーターも設置された。またエスカレーターは上りだけだったのに、下り方向にも設置された。
  
・トイレは和式が大幅に減って洋式となった。この結果、トイレでは足腰の筋肉を使わなくなった。
  
・特に都会では駅の数が増えて、駅までの歩行時間が減った。
  
・寒い地方では薪ストーブが減って、石油ストーブが多くなった。この結果、薪を割るという作業がなくなった。また地球温暖化により、雪国では雪かきをする時間が減った。
   

カロリー低下

  

 このように運動量は大幅に減りました。
 一方で「豊食(飽食)の時代」と言われながら、実際には特に20代女性の1日平均エネルギー摂取量は、何と終戦後より低いのです。
  
~若い女性の摂取カロリーは終戦直後より低い・・。”痩せすぎ”な人が多すぎる日本~
http://matome.naver.jp/odai/2142658128153644301
  

糖尿病1

  

 では2型糖尿病の患者数はと言うと、むしろ世界的にも年々増え続けています。
  
~糖尿病の男性は16.2%、女性9.2%。50歳代以上で急増~
~世界の糖尿病人口は3億8670万人に増加、約半数は糖尿病の自覚なし ~
http://www.dm-net.co.jp/calendar/chousa/population.php
  

健康の定義

  

 ダイエットを考えている方は、短期的には糖質制限はその方法の1つかもしれませんが、炭水化物(C)を大幅に減らしてタンパク質(P)・脂質(F)を増やすと、将来的には腎臓・肝臓に負担がかかりますし、AGE(終末糖化産物)も蓄積します。
 PFCいずれも少しずつ制限した方がいいと思います。
  
 そしてダイエットに関する多くの記事は、短期的に効果を求めています。
 そうしないと、ビジネスが成り立ちませんし、忙しい現代人には認められないからです。
  
 そもそもそのダイエット、一生続ける事が出来ますか?。
 偏った食事では楽しくありませんし、楽しくないダイエットは絶対に長続きしません。
  
★☆★☆★☆
  
 ダイエットは最終目標ではありません。
 健康で幸せにになる事が、誰しもの最終目標です。  
  
 ダイエットの基本は必ず運動を取り入れる事です。
 食事制限だけでは、体脂肪は減ってもいつか限界が来ますし、筋肉が増えないため基礎代謝が上がらず、体温も上がらないために脂肪が燃焼できません。
  
★☆★☆★☆
  
 良質な食事・適度な運動・良好な睡眠、いずれも取り入れないと良い効果が現れません。
 ガソリンが枯渇しかかったスポーツカーと同じです。
  
 特に糖質制限オタクの記事では、大半が運動に関する事に全くふれておりません。
 また食事による、体内からの熱産生に関する記事は皆無です。
   

ウォーキング2

   

~無駄に動く事~
 このブログのタイトルは何を意味しているのか?、それは「NEAT」です。
  
 NEAT=Non-Exercise Activity Thermogenesis、非運動性活動熱産生
 「NEAT」→それは「無駄に動く」事です。
 
★☆★☆★☆
   
①NEATを増やす日常活動
  
・通勤ではバスや電車の一駅手前から歩く
  
・駅や歩道橋、職場などで、積極的に階段を使う
  
・仕事でもプライベートでも、用事があれば自分から出向く
  
・トイレは、階段を使ってほかのフロアーへ行く
  
・昼食は、少し遠くの店へ行く
  
・職場でのコピー取りやファックスなど、あるいは自宅でも自分の事は自分で行なう
  
・掃除には電気掃除機を使わずホウキで、床ふきは雑巾がけをする
  
・ペットと散歩する
  
★☆★☆★☆
  
②こんなことでもNEATが増えます
  
・背筋を伸ばす
  
・パソコンに向かうときは猫背にならないように、歩く時や立っている時は頭上から吊り下げられているイメージで
  
•立っている時間を増やす
  
・通勤車中では空席があっても座らない、ごろ寝でテレビは見ない
  
・食事は一口ずつ最低30回は噛む
  
・噛んでいるときは安静時よりエネルギー消費量が20%アップし、また満腹感も得られやすい
   
★☆★☆★☆
  
 運動嫌いな方や運動が出来ない身体の方、どうしても忙しい方でも「NEAT」ならば、行なう事は可能なのではないでしょうか?。
  
 更には歩行中には「インターバル速歩」で身体の2/3がある下肢の筋肉に刺激を与えると更に効果的ですよ。
 「インターバル速歩」→http://www.jtrc.or.jp/interval/
  
(写真はネットより引用)