奴隷労働者供給構造と経済的徴兵制 ~貧困と監獄と軍隊と/日本版プラン・メキシコへの罠(最終回)~ |   「生きる権利、生きる自由、いのち」が危ない!

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徳冨蘆花「謀叛論」を再発見してたら、
「ソクラテスの弁明」が、なぜ好きなのか、最近になって納得し始めた今日この頃です。


今回で、「貧困と監獄と軍隊と」シリーズの、
あるいは
日本版プラン・メキシコへの罠」シリーズの、
あるいは
憲法(9条)改正後の日本の光景」シリーズと言うべきものの最終回です。


早速ですが、
堤未果『貧困大国アメリカ』の或る部分部分を、
御覧いただきます。


”《アメリカの国民は恐怖にコントローされている


 かつて冷戦時のアメリカでは、
膨れ上がる軍事予算の大義名分として
共産主義への恐怖」があおられ
軍需産業を潤わせた

 今同じように浮上した
テロや凶悪犯罪への恐怖
という新たなマーケティングが、
刑務所産業複合体
巨大なビッグビジネスに成長させている

 それに関わるさまざまな事業
前述した刑務所投資信託REIT
通信会社建設業界
さらに囚人たちを移送するための輸送業者
セキュリティ関連業界
囚人の衣食住を請け負う各種サービス
医療業界など、
刑務所内の囚人数増え続けるほどに
利益を得る無数の企業
が、
政治家メディア警察司法などへ
圧力をかけるべく働きかける
のだ。
<ALEC>が 民営刑務所業界と結託して、囚人労働による組合労働者の置き換えを画策


 権利を持たない囚人賃金が下げられることで
国内の他の労働者しわ寄せを受ける



 雇用をする側にとって
これ以上ないほど好条件労働者」の存在は、
一般労働者の賃金下げるだけでなく
労働者分解することで
組合弱体化させ

交渉力を失わせることで

労働市場全体地盤沈下してゆく



 冒頭に出てきた元囚人のアラン・ジャクソンは、
前科借金がネックとなって
就職活動がうまくいかず

結局、仮釈放期間中に
食料品店で菓子パンを万引きし

累犯者として逮捕されて
再び刑務所に戻された


 アランの弁護士を引き受けている
マイク・ウォーレン弁護士は、こう語る。

問題は、
この国の国民
恐怖
コントロールされ続けていることです。
国民は
テロとの戦い』というキーワードにあおられて
膨れ上がる軍事費予算戦線拡大黙認
次々に現われる病気への恐怖から
薬づけになり医療破産している。

「個人破産の半数は医療費が原因」

 学位がないとワーキン
グプアになる
思いこまされ
法外な学費を払うために高利で借金をする
ホームレスになり刑務所に入ったあとも
さらなる借金スパイラルが追いかけてくる
といった具合です」

(引用者中略)

 過度市場原理支配する社会では
政治企業とても仲が良い


 その証拠に、
どれだけ大統領の顔が変わろうとも
政府企業
相変わらず積極的にローンを奨励

そのための条件を緩和する政策
次々に進められている



 「そして国民
日常を脅かす凶悪犯罪への
恐怖
おどらされ

新たな刑務所建設厳罰化
支持している


ある日突然転落した自分自身
塀の向こう巨大な工場を支える
囚人たちの一行
(いっこう)
加わるかもしれないことなど
夢にも思わずに
、です。

 私たちは
いい加減気づかなければなりません。
こうした恐怖というものが
作り出されるプロセス

それによって
恩恵を受ける存在
のことを


 国とはいったい何なのか?

なぜ
この国では
私たちの税金

学生よりも
囚人生みだすために
使われているのか
」”

(堤未果『貧困大国アメリカⅡ』P.192-194)


政府が、
国内の若者への教育費に対してよりも、
囚人を生みだす環境づくりに、
税金を使うというのは、
どういう事なのでしょうか。

 
アメリカの学資ローンには、
銀行等の民間企業が行なっているもの
政府が行っているもの
二種類がある

 このうち政府の学資ローンは、
学校の成績には関係なく誰でも申請でき
親の資産状況も原則として関係ない

 [置かれている状況によって
受けられるローンの個人差はあるが]
アメリカ市民でなくても、
グリーンカード(永住権)があれば
ローンの受給資格が認められる。
ただし破産しても債務は消えず
そのまま残る

公立大学に通う学生ローン合計は
平均1万2000ドルで、
私立大学に通う学生ローン合計は
平均で1万4000ドル。
この平均値では
卒業してからの月々のローン返済
それぞれ150ドル、175ドルで

20~30年かかる
という。
 低所得者用の教育補助として
返済不要の奨学金も一部あるが、
ほとんどは政府年率8.5%という利子
金融機関に補助する学資ローン主流
だ。
(引用者中略)

 政府新自由主義政策の流れ
教育予算大幅に削減された結果

この学資ローンの貸出期間も
急速に民営化が進んでいる

政府保証人の役割を果たすことに加え
教育予算から利子を提供してくれることから

貸し手にとっては非常に割のいい
この「学資ローン」は、金融機関の間では
ドル箱」と呼ばれている
という。

 教育予算削減により
授業料高騰することで
学資ローンの申請急増する
というこの仕組み

政府金融機関にとっては
コスト削減利益拡大になる

民間委託されればされるほど
返済の金の取り立て厳しくなり

負担は借り手である学生たちの肩
重くのしかかってくる
。”(P.118-119)


しかも・・・


四年制大学を卒業しても
賃金の低い職にしか就けず

カード地獄から抜け出すために
さらに借金を重ねて修士号をとりに
学校に戻る学生もいる”(P.129)


しかし、大学院に入り直しても、
金がかさむ結末になることが、
同書に紹介されています。

新自由主義
のせいで教育予算削減されて
授業料高騰した事により、その煽り受けて
学資ローンの債務/借金抱える若者
また元々、貧しい地域出身の若者目の前に
キャリアとして大学進学や学業を継続するため
抜け道用意される”のでした。


その”抜け道”というのが


学資ローン生活を圧迫して
進学を断念する若者たちにとって

非常に魅力的なのが
入隊すると大学費用を負担する」という
軍の勧誘文句だ。
(引用者中略)
 ・・・「学資ローン返済免除プログラム
というサイトで、躍るような文字で記された内容は
次のようなものだった。
「学資ローン返済に追われていませんか?
非情な回収業者から
電話でいやがらせをされていませんか?
私たちはそんなあなたの味方です。
現在抱えている学資ローンの返済から
自由になるお手伝いをさせていただきます。」”
(P.131)


ところが、軍の学費返済額には限度額があり
『貧困大国アメリカ』で紹介されている、
UCLAを卒業した若者は、
学資ローンの借金全額返済するには
軍隊と8年間も契約を交わす必要がある
のだ
という。

旨そうに見えたこの抜け道”も
ある種の「であったのでした。


”マンハッタンにある
帰還兵センター(Vet Center)のスタッフ、
ティム・レイバンは、
アメリカ政府のやり方
若者の出口をふさぐもの」だとして批判する。

 社会保障費削減し
大企業優遇する
という政府のやり方

セイフティネットない中で
教育雇用の場所
奪われた若者たち

将来への希望を失わせます


今私のところに相談に来る
帰還兵たちの大半
が、
新自由主義政策
犠牲になった
若者たち
なれの果て
です。

帰還兵自殺率犯罪率の高さと、
生活保護にかかる費用を考えたら、
国が教育に金をかけ、
若者の「自己承認(self-assurance)」

仕事の「技能」を伸ばしてやり

企業が雇用しやすい人材を育てる方が、
余程理にかなった投資ですよ」”
(P.140)


新自由主義政策の煽りを受けて、
進路生活に困って残された選択肢として、
若者たち>が、
軍隊入隊せざるを得なくなる状況の成立をして、
法律として徴兵制」を設けなくても
貧困格差をもたらすだけで

若者たち>を軍隊に吸収できる

経済的徴兵制」というべき「徴兵システム」の成立
ここに見つけることが出来ます。


”ある1人の教師は、
教育導入された競争について
こんな風に語った。

新自由主義政策を続けている政府
落ちこぼれゼロ法案」を出した後、
さらに二〇〇五年度に
低所得家庭児童向け医療保険基金」から
11億ドルを削減しました。
こうして広げられた格差によって
ますます多くの子供たち
選択肢を狭められている
んです。

ワーキングプアの子供たち戦争にいくのは
この国のためでも正義のためでもありません
彼ら
政府の市場原理に基づいた
弱者切り捨て政策により
生存権おびやかされ

お金のために
やむなく戦地に行く道を
選ばされる
のです
」”
(同書 P.107)

グローバリゼーションによって
形態自体が様変わりした戦争
について、
パメラは言う。

もはや徴兵制など
必要はない
のです

政府
格差を拡大する政策を
次々に打ち出すだけで
いいのです

経済的に追いつめられた国民

黙っていても
イデオロギーのためではなく
生活苦から
戦争に行ってくれますから

ある者は兵士として、
またある者は
戦争請負会社の派遣社員として、
巨大な利益を生み出す戦争ビジネスを
支えてくれる
のです。
大企業は潤い
政府の中枢にいる人間たち
その資金力でバックアップする
これは国境を越えた巨大なゲームなのです」”
(P.177-178)


経済的に追いつめられた国民は、
黙っていても
イデオロギーのためではなく
生活苦から戦争に行ってくれますから

というように、
経済的困窮に追いつめて、
戦地に赴かせる
”ような「人間工学」が、
日本においても
原発下請け労働者供給構造」でも、
機能していることを、
たとえば、
斎藤貴男『「東京電力」研究 排除の構造』で、
確認することができます。


抑圧の最下層にて被曝する

・・・・総被曝線量の96
下請け労働者浴びている

電力会社や原発、メーカーなどの正社員
4%だけ
何十年も変わらない関係だ。
NPO法人「原子力資料情報室」が
発行している『原子力市民年間2011-12』
(七つ森書館、2012)に載っている。

 原発で働いて被曝した労働者
(おびただ)しい人数になるはずだ

1974年に大阪地裁で
日本初の原発被曝訴訟を起こした岩佐嘉寿幸
(いわさ かずゆき 1923~2000)
三審のいずれでも
全面敗訴に退けられたのをはじめ、
その因果関係を認められた被害者
皆無に近い

2012年2月現在で、
わずかに10件の労災認定を数えるのみである。
そのうち三件は
一九九九年の東海村JOC臨界事故の犠牲者らで、
誤魔化しようのないケースだった。
圧倒的多数の労災申請訴訟
これらごく少数の例外を除いて
当然のように門前払いの扱いを受けてきた

 作業員人権嘲笑(あざけわら)ことも、
原発が最も安くつく発電方法」だとする
ストーリーの一部だった。
そこに暴力団のさばる余地が生じる
ヤクザの世界をフィールドにしている
ジャーナリストの鈴木智彦(1966~)は、
3・11の後の福島第一原発で作業員として働く
潜入取材を試みた際、
暴力団の組長たちの高笑いを聞いたそうである。
原発は儲かる堅いシノギだな。
動きだしたらずっと金になる
これ一本で食える

シャブなんて売らんでもいい
(中略)
原発は
あんたたちふうに(斎藤氏注=マスコミ的)言えば、
タブーの宝庫。
それが裏社会の俺たちには、
打ち出の小槌となるんだよ。はっはっは」
「ヤクザは社会のヨゴレ、
原発は放射性廃棄物というヨゴレを
永遠に吐き続ける

似たもの同士なんだよ。俺たちは」

 また、前期のシンポジウムのパネリストで、
1970年代から
被曝労働のテーマを追いかけてきた樋口健二は、
原発とは
差別の上にしか成立しえない
システム

と指摘した。
労働者人権
当然のように無視されている現実は、
元請け(財閥系)→下請け孫請け
ひ孫請け親方(暴力団を含む)
日雇い労働者農漁民被差別部落民、
元炭鉱マン、大都市寄せ場、都市底辺労働者

・・・・という重層構造から成る前近代的労働形態が
露骨に示しているという。

 釜ヶ崎や山谷のような寄せ場
(日雇い労働力の売買行為がもとまって行なわれる地域。・・・)
には早い時期から被曝労働闇市場
存在したらしい
。”
(斎藤貴男『「東京電力」研究 排除の構造』 P.289-290)


差別的労働市場

2011年6月4日、夜。
東京・猿楽町の在日本韓国YMCA地下一階で、
シンポジウム「そこで働いているのは誰か
――原発における被曝労働の実態
」が催された。
(引用者中略)
「東電や東芝、日立、三菱などの原発メーカーが
元請けで、
そこから末端の労働者までの間には
七重、八重の下請けが、
時に暴力団までが介在して
ピンハネを重ねている
という話がありましたが、
そうした重層構造は、
必ずしも原発の被曝労働だけの問題では
ありません

この国の多くの産業の現場で
何十年も働いても年金も保険も何もない

事故が起きても労災も出ない現実

珍しくもない
んです。


被曝するに決まっているのを
前提

それでも原発で働く

働くしかない被曝労働者たち

近年になって注目され始めた
非正規雇用深刻な問題
集約的に表してしまっている

このままでは
いずれ誰も彼もが
彼ら同じような立場に
追いやられていく

ということなのかもしれませんね。」
 全国日雇労働組合協議会(日雇全協)・
山谷争議団団長の
中村光男(1951~)の発言だった。

(引用者中略)

(その後日、中村氏が斎藤氏に語った発言)
「釜ヶ崎のような差別的な求人市場
戦前からずっと続いている

東京でも山谷地区をはじめ、
あちこちに分散して継続されています。
この国では戦後も
労働力過剰な構造一貫していたから

下請けは元請けに何も言えないし、
その下請けで働く労働者は、
ハッキリ言えば、
常に奴隷的な労働を強いられてきたんだ。
終身雇用などと言われていた時代でさえも、
末端の労働現場では、
雇用責任へったくれもありはしなかった
んです。
労働法制治外法権にあったと言ってもいい。

 ただ、
そうして元々あった構造が、
1970年代あたりから
アメリカ直輸入の発想

意図的に拡大されてきている

のも確かです。
私も
大企業で
労務管理を担当している人間

差別的な労働市場
積極的に作り出す必要がある
と公言している
のを
きいたことがありますよ。」”
(同 P.285-286)


差別的な労働市場奴隷的労働」は、
戦前~戦後と、日本には、何十年も前から有り、
そして、そうした「差別的な闇市場」から、
<原発で働くしかない被曝労働者>が、
元請けの原発メーカーに”調達”されて来、
そして「原発稼働」は、
そうした「差別的奴隷労働構造を温存してこそ、
はじめて成立することを、
ここから学ぶことができます。

さらに、もっとお伝えしたい事は、
こうした「奴隷労働市場化」は、
一部の闇市場」から、
私たち社会一般的なレベル」にまで
引き上げ
られている「社会工学
と言いたくなるような現実に、
いま私たちは、呑みこまれつつある

という事であります。


21世紀の徴兵制
」および「奴隷労働制」や
その「奴隷労働一般社会化」を実現する
社会工学」というべきものは

いままで見てきたように、
たとえば
ワシントン・コンセンサス」の中身や「TPP
格差貧困化の不公平税制」や「構造改革」や
規制緩和」など、
雇用融解や「雇用不安定化をもたらす
政策や措置や要素と言えるのではないでしょうか?


(完)


追伸、
以上見てきた事を振り返ると、
<原発反対者>に対して、
”左翼”とか”非国民”とヤジる<悲しい人々>
の中には、
「原発利権をシノギとする人々」も
混ざっているのではないか?



<参考記事>


 疲労困憊したおじさんのブログ

〇 ”レプリカント化”に追い込まれていく人類!?

〇 「日本版プラン・メキシコへの道」シリーズ記事一覧~「貧困」と「監獄」と「軍隊」と~

〇 橋下市長「核廃絶無理、日本は平和ぼけ」/”TPP公約化「素晴らしい」”

――――――――――――――――――――

〇 都知事選立候補者の宇都宮健児氏「反貧困」「脱原発」「人にやさしい東京をつくる会」


という事は、<自民党>のお偉い方
多くの<原発労働者>を、これからも
”被曝漬け”にし続ける
という事ですよね。