”問題の所在は、
国家が規制緩和政策を推進する一方で、
経済や都市政策の領域から撤退した結果、
貧富の格差が拡大し、
労働条件や社会環境が
大きく不安定化したことにある。
しかし、これについては、
口に出すことも憚られるのである。
(引用者中略)
「都市暴力」や「増加の一途」と呼ばれるものが、
じつはメディアと政治家が、
社会問題をセキュリティー問題に置き換える目的で
作り出したものであることは、
すぐに明らかになっただろう。”
(『貧困という監獄』 邦訳P.64-65)
とは、カリフォルニア大学バークレー校の
ロイック・ヴァカン社会学部教授の指摘であります。
「新自由主義」政策と
「ゼロ・トレランス(非寛容)」政策下での
「刑罰政策」との”相関性”について、
これまで記して参りましたが、
「刑罰」分野については、
今回が、”まとめ”の回というつもりでいます。
さて、
”社会問題をセキュリティー問題に置き換える”
とは、具体的に、どういう事なのでしょうか。
”不安定雇用や社会保障の削減の結果、
引き起こされた生存権の危機と
それに伴う治安の悪化を抑え込むために、
司法制度や刑務所に頼ろうとする傾向は、
ヨーロッパでも至るところで見られる。
そしてネオリベラリズムのイデオロギーと、
その影響を受けた政策が
雇用や司法の領域に浸透するにつれ、
この傾向は
フランスでも はっきりと現われるようになった。
(中略)
アメリカと同様にフランスでも、
1970年代半ばに、
従来の社会福祉および監獄政策の流れに
ストップがかかり、
まもなく逆流がはじまった。
その背景には、
生産と雇用のモデルの大きな変容がある
――たとえば、
労働市場の二極化、
失業の大幅な増加、
不安定雇用の拡大などである。
これに対応して、
さまざまな社会政策が
打ち出されるようになった。
その中には、
最も絶望的な状況を緩和することを
目指したものもあれば、
労働力を流動化するために
導入されたものもある。
こうした社会構造の変容にともない、
国内の監獄システムも大きく再編された。
以来、
刑務所の囚人数は増加の一途を辿っている。”
(邦訳 P.99-101)
その事から・・・・
”ゲオルグ・ルシェとオットー・キルシュハイマー
の先駆的な研究にしたがえば、
労働市場の悪化と囚人数の増加との間には、
緊密で明白な相関関係が存在している・・・”
(P.105)
という。
「刑罰制度」が、
<囚人>を”更生”させたり”社会復帰”させる、
という従来の方針は止めて、
<政府>による「新自由主義」政策が
必然的に生み出す<犠牲者たち>を、
<刑務所/監獄>に収容するばかりでなく、
”市場原理主義化”されてしまっている「社会構造」の
需要/ニーズに、あたかも応えるが如く・・・・
”アメリカでもフランスでも、
刑罰制度の再編は、
労働市場の再編を補完し、支える形で
同時進行している。
刑務所は、
新しい労働市場の縁において
失業者を吸収すると同時に、
この劣悪な労働市場に
使い捨て労働力を供給する排水口の役割を
果たしているのである。”(P.104)
それが、ここ最近の記事で見てきた
”過酷で劣悪”ながらも、
”不平を言わず、賃上げもストライキもない”のに、
”超々低賃金”な「囚人労働者」の事でした。
そうした「刑罰制度」や「監獄」は、
何のために機能しているものかというと、
”[フランスの]犯罪学者ティエリー・ゴドゥロワは、
「刑罰制度が再編された背景には、
増大する若者層の管理」の問題があった
と指摘する。
すなわち、
「就学と就労のはざまで待機する若者層を管理」する
と同時に、
「サービス部門の発達と生産部門の再編により、
不安定で流動的な労働力を
必要とするようになった産業界」に、
低賃金で、不平を言わない大量の労働力を
確保する目的があった
というのである。
こうして懲罰制度の再編成により、
「処罰の圧力に晒(さら)されるようになったのは、
厳密な意味での”危険な階級”ではなく、
労働市場において周縁化された層
(とりわけ若者と外国人)だった。
これらの人々に残された選択肢は、
不安定な労働市場に組み込まれることを
受け入れるか、
あるいは、とくに再犯の場合には、
刑務所に入れられるか
だった」”(P.103)
”したがって、
いま誕生しつつあるのは、
一部の犯罪学者や受刑者の擁護運動の活動家が
指摘するような「刑務所‐産業複合体」ではなく、
「刑務所=福祉の商業複合体」
である。
(引用者中略)
その使命は、
新しい経済秩序に
逆らう人々を監視・支配し、
必要に応じて処罰し、
取り締まることだ。”
(同書 P.97)
「新自由主義」政策を補完すべく、
<ネオコン(新保守)のシンクタンク>や
<ネオコン御用学者>が、
「社会保障の充実」を否定して、
「劣悪な労働に義務として従事させる」言説を
議論展開することで、
「福祉」の意味合いを
変質化させてしまうのであるが、
その変質化されてしまった「福祉」というものは、
「市場原理主義」世界に、
もっと具体的に言えば、
<グローバル大企業>が喜ぶ帰結をもたらす
「福祉」であることから、
「刑務所‐産業複合体」という指摘では不十分で、
「福祉制度」すらも、
いまや”市場主義のために機能する”
「刑務所=福祉の商業複合体」というべき在り様
にある、という事なりそうです。
そうだとすれば、
”貧しき者は罰せよ”という「刑罰政策」の下での、
その機能ぶりや本分を見ると、
この「刑務所」という存在を、
「刑務所」と呼ぶよりも、
むしろ、もっと適切な表現があるように思います。
それは、
「強制収容所」だと。
というのも、
ナチスドイツ時代の「強制収容所」は、
イデオロギーや政策的都合や為政者の都合で、
一般的な市民ユダヤ人や
政治犯(当時の政府のやり方に反発する者)などが
理不尽に強制収容された
というように、
ナチスドイツの政策都合の「犠牲者」が、
収容所に収容されていったからです。
また太平洋戦争における、
<アメリカ国内の日本人や日系アメリカ人>も、
<彼ら>には罪がないのに、
為政的都合で
「強制収容所」に収容されました。
それと同様に、
いま現在のアメリカの刑務所に
<”収監”される人々>も、
「新自由主義」政策と、
その新自由主義政策を補完すべく機能する
「ゼロ・トレランス」政策という、
”政府による政策の犠牲者”
と言えるからです。
最後は、
ロイック・ヴァカン教授の指摘文の引用で、
今回の記事、
そして「新自由主義」政策と「ゼロ・トレランス」政策
との相関性についての内容の記事を、
締めくくりたいと思います。
”ボディ=ジャンドロの
『治安の悪化に直面する都市』は、
社会(そして経済)の領域から
国家が撤退する[民営化]のを承認する一方で、
フランス資本主義の近代化のために
犠牲にされた旧労働者街において
刑罰国家が強化されることを、
まさに正当化する役目を果たしているのである。
(引用者中略)
この本は
「都市暴力」という現象を分析しているのではなく、
失業、
不完全雇用、
非正規雇用の一般化などによって
引き起こされた秩序の乱れを、
刑罰制度の強化によって押さえ込む
という政治的な役割をみずから実践している
のである。
一般に
「ワシントン・コンセンサス」とは、
国際金融機関[IMF]が
債務国に対し、
支援の条件として押しつける
一連の「構造調整」プログラムを指す。
またより広い意味では、
過去20年の間に
すべての先進資本主義国で
大成功を収めたネオリベ政策、
すなわち、
財政緊縮、
減税、
公的支出の削減、
民営化、
資本の特権の強化、
金融市場取引の即時開放、
雇用の流動化、
社会保障の削減なども指す。
だが今後は、
「ワシントン・コンセンサス」の
概念を
さらに拡大し、
ネオリベ政策の
当然の結果として生じた
生存権の危機と
治安の悪化、
そして
貧困を管理する刑罰制度も
加える必要がある。”
(同書 P.67)
つまり、ロイック・ヴァカン教授によれば、
IMFによる「構造調整プログラム」ばかりでなく、
「構造調整プログラム」と
同じ悲惨な未来をもたらす
「新自由主義」政策も、
そして「新自由主義」政策の補完品である
”貧しきは罰せよ!”
という「ゼロ・トレランス」政策も、
「ワシントン・コンセンサス」の範疇(はんちゅう)
の中に
入れるべきだ、というのでした。
追伸、
ニューヨーク大学のネオコンの政治学者である
ローレンス・ミードは、
「貧困と人間性に関する議論」のなかで、
つぎのような不気味な発言をしています。
「貧困の主な原因が
社会的障壁よりも
貧乏人自身の行動にあるのなら、
変えるべきなのは、
その行動であって、
社会ではない。
そして何よりも
婚外妊娠を思いとどまらせたり、
就労率を引き上げたりすることが
重要なのだ・・・。
(引用者中略)
給付金を与えたり、放置したりすることではなく、
彼らの生活を指導することなのだ(・・・)。
国家は
公的秩序の維持のために、
正しい振舞い方を
市民に直接指導する必要がある。
そして、違反行為を処罰したり、
徴兵しなければならない。」”
(ロイック・ヴァカン『貧困という監獄』 邦訳P.41-42)
ローレンス・ミードの発言が怪しい事については、
いまさら言う必要は無いでしょう。
<参考記事>
〇 <ALEC>が 民営刑務所業界と結託して、囚人労働による組合労働者の置き換えを画策
〇 ピエール・ブルデュー「新自由主義は”エイズのようなもの”/征服の武器だ」(『私物化される世界』)
〇 「日本版プラン・メキシコへの道」シリーズ記事一覧~「貧困」と「監獄」と「軍隊」と~
〇 ジェーン・ケルシー教授、1998年からの警鐘!(1998年と、何も変わっていない手法)
〇 ”レプリカント化”に追い込まれていく人類!?
〇 政府が、あなたのお子様やお孫さんを、傭兵産業(民間企業)や海外派兵に、刈り取っていくための方法
〇 「改憲策動」の”新しい陣立て”③~海外派兵のための「改憲」~
〇 <自民党/維新の会/みんなの党>「9条改憲」および「軍事ファシズムへの回帰」!?
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※ かがみ妹さんのブログより転載。
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