「改憲策動」の”新しい陣立て”③~海外派兵のための「改憲」~ |   「生きる権利、生きる自由、いのち」が危ない!

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徳冨蘆花「謀叛論」を再発見してたら、
「ソクラテスの弁明」が、なぜ好きなのか、最近になって納得し始めた今日この頃です。

自由法曹団元団長の坂本修 弁護士による
改憲策動の危険性の内容を説いていた、

前回に引き続く形で、見ていただきます。
今回のテーマは、
海外派兵のための「改憲策動」”です。
―――――――――――――――
改憲策動の新しい陣立て

大きな問題は、
それで[2007年参議院選の自民党大敗で]は
改憲危機は去ったのか、ということです。
そうではないと思います。
向こう新しい陣立て新しい戦略によって
それを実現しようとしている
からです。

 箇条書きでいうと、
第一は
事実上の改憲を徹底してやり抜くという策動です。
たとえば自衛隊の装備訓練
アメリカとの軍事共同作戦
両軍の基地統合のすべてで、
海外侵略戦争をアメリカと一緒にやる準備
ずっと進めてきている

これは自公政権から民主党の連立政権になっても、
少しも変わっていません。


 二番目には、
解釈改憲立法改憲が進められようとしている
解釈改憲のいちばん大きな分かりやすい例は、
国会改革の一環として国会法を改正して、
内閣法制局長官に国会で答弁をできなくする
ということです。
内閣法制局長官が護憲派だと言いません
歴代の長官内閣の法律顧問的に、
自衛隊を持って違憲ではありません
安保条約も違憲ではありません

ここまでは大丈夫です

とずっと言ってきた。
つまり9条を侵害する側に立っていた
しかし長い間の私たちの運動も反映して
内閣法制局長官は、
海外における武装力の展開はできません
日本の自衛隊は海外行使はできません
集団的自衛権の行使もできないんです」と、
この一線だけはずっと守ってきました


湾岸戦争のとき小沢一郎さんが国会で
国連が認めている行為だから
自衛隊が出ていいはずだ
ということを執拗に追っていますが、
ガンとして内閣法制局長官は拒否しました
小沢一郎さんは(『日本改造計画』講談社、1993年)のなかでも論文のなかでも、
内閣の一員に過ぎない法制局長官が盾突くのは
「本来の権力のあり方からすれば、
無責任のそしりを免れない
」と、
怒りまくっています
小沢さんはその後、
内閣法制局の廃止法案を国会に提出しましたが、
失敗しました


 いま国会法改正によって
内閣法制局長官が国会で発言できないようにしてしまおうとしているのは、
国連の支持決定があるならば
現行憲法のもとでも

自衛隊を海外に派兵することができる

ドイツイギリスの軍隊と同じように
殺し殺されるような状況をいますぐにできる
という解釈
内閣として変えるためのたくらみ
です。
つまり集団的自衛権をみとめ
自衛隊恒久海外派兵法制定への道を開こう
としてのことです。


 では、改憲勢力の策動
事実上の改憲解釈改憲
それだけで済むのかというと
そうではありません


もういっぺん明文改憲の問題
立ち返らせてください。

自民党の新憲法草案を見ますと、
武力行使をしない戦力をもたない
交戦権を否定するという
憲法九条第二項
消すだけではなくて

自衛隊自衛軍とすると同時に
第一項の任務のほかに
国際平和と協調のために自衛軍を使う

と書いてある(草案九条の二第二項)。
第一項の任務というのは、
日本の国土日本の国民を守るという任務です。
その外にということは、
自衛軍として海外で戦争をすることを任務とするということです。
つまり、アメリカ軍と共同作戦でファルージャでの虐殺をするようなこと
憲法で認める国にしよう
というわけです。


 そういう海外派兵を強行するためには
戦死者を祀るために靖国神社がいる
そこで信教の自由の条文を変えて
社会的・習慣的に認められるものは
国が援助しようと構わないというふうにします

草案二〇条)。


 軍事裁判所を作るということも
自民党の憲法草案のなかにあります
草案七六条第三項)。
つまり国民救援会やみなさんが
被告弁護団を中心に裁判闘争を
するような法廷
じゃだめだ
というのです。
軍人裁判所軍人が裁判官になります
それだけではありません
憲法全文の平和生存権全部消して
そのうえで
日本国民一人ひとりに国を愛し守る責務があるということを

つまり国防の責務とか愛国心とかが

全文のなかに盛り込まれている
のです。


 それから国民の基本的な人権については、
公益公の秩序のために
基本的人権を使う責務がある
という文章を入れます(草案一二条一三条)。
自民党の解説書を読みましたが、
公の利益というのは国益であり、
公の秩序というのは国家の秩序であると
はっきり書いてあります


 以上を全部総合してみると、
どういう憲法になるのでしょうか。

改憲勢力企てているのは
憲法の改正の範囲をはるかに超えた
異質の憲法
をつくる

つまり”改憲を行なうということです。
その角度からみれば、
戦争をする国人権のない国
国民を国家に帰属させる国を作る
(※)、
つまり”国会改造をする
そのための改憲”を支配勢力
なお企んでいる
と見なければなりません。



小選挙区制歪めた民意


 そんなことをやろうと思っても
簡単にはいかない


どうやったらできるか

私は、そのために考えたのが、
いま浮上してきている
この比例定数削減だと思うのです。

もともと九四年に強行的に入れられた
小選挙区制
は、
民意を二大政党に集約して
政治改革を行なうためだと宣伝されました。
あのとき自民党を永久政権にするために
ということもよく言われましたけれども、
私はそうではなかったと思います

あれを強行したのは
非自民の細川内閣の時です。

自民党を
いつまでも政権につけておくというよりは

自民党がダメならば
他の政党に替わってもいい

ただしその二つの政党ともに憲法を変え

新自由主義路線を突っ走るものであるべき
で、
これにイエスと言わない政党
国会から抹殺していく
と。

それが小選挙区制策動の基本的な狙いだった
思います

 小沢さんは非常に鮮明にそのことを、
要旨次のように語っています。

 湾岸戦争のときに日本が出撃できなかった、
それで世界の恥さらしになった。
カネは出したかれど感謝されなかった。
ダイナミックな政治でなかったから
そうなったんだ

ではどうしたらいいのか。
それは「思想基本構想を同じくする
二つの政党によって
ダイナミックな政治を行うようにした方がいい
いかなる世の中であっても、
政府のやり方に反対だという国民は
二割ぐらいはいる

この二割に足を置いて反対する政党がある
その政党の言うことを、民主主義なんだから
大いに尊重して慎重に審議しろ
なんて言っていたのでは、
ダイナミックな政治はできない

だから、完全小選挙区制にして
多数決で全部決めるようにするのが一番いい
しかし一挙にそこまでいくのは抵抗があるだろうから
一部比例を入れたものにしたらいい

 こうして作られたのが
九四年の小選挙区制(小選挙区・比例代表併立制)です。
最初に法案として出されたときは二五〇対二五〇、
最後のどんでん返しのときに三〇〇対三〇〇。
それが二〇〇〇年には比例をさらに削って、
三〇〇対一八〇にしました。
現行の小選挙区制
そういうふうにして作られたものです。

 一九九三年小選挙区制について
朝日新聞」一斉にキャンペーンを始めました
そのときに
自由法曹団はあまりにもおかしいというので、
何度も意見書を出したのですが、
弾劾とか告発ではなくて、
かなり冷静に分析したものを持って
主要メディアに行きました

朝日新聞はちゃんと別室を用意してくれまして、
三人の中枢幹部と一時間以上討論しました。
朝日新聞その二年前だったと思いますが、
中選挙区制のもとでも自民党は
もはや政権を維持できない状態である

政権交代は必然だ
という両面見開きの記事を書いていました。

 かつては小選挙区制民意を曲げる
と言っていた
のに、
なんでこんなふうに変わったのか・・・
(引用者中略)
 小選挙区制が通ってから たった一人だけ、メディアの自分たちの記事は
間違いだったんじゃないか、
不当に国民を煽ったんじゃないかという、
署名入りの記事を書いた人がいます。
「毎日新聞」の長崎さんという方です。
でもこうした人は本当に例外でした。
参議院で否決されたときのメディアは
本当にひどかった。
断固としてやれみんな社説で書いた
(以下省略)
――――――――――――――――――
(『議員定数削減NO!』 P.26-32



自民党
による『新憲法草案』という”改憲憲法”の内容の紹介を見ると、
その内容は、「全体主義国家」や「軍国主義」、
そして「1984」の世界を連想するのは、
ボクだけでしょうか?

しかし、そうした自民党(自公連立政権)による、
新自由主義>や<格差不公平税制>の内容の政権運営を、長らく続ければ、
”格差貧困”が発生するが、
政府は無視して政権運営を続けるのでは、
そうした政権運営が、国民のために行なわれたものではないことに気づき、嫌気がさすだろう。

そうして国民が、
ほかの政党に縋(すが)るようになってもいいように、
もう一つの有力政党も
改憲的」で「新自由主義」ものであれば構わず、
そのためにこそ「小選挙区制」が、
マスコミによるキャンペーン”の追い風を受けて
導入されたはずである、
という坂本修 弁護士による叙述が出てきました。

自民党の一方で、
小沢一郎
氏は、「憲法9条」や「改憲」について
体どういう捉え方をしているのか
手持ちの本のうちで探してみると、
中田安彦『日本再占領』のなかで、
つぎのように、小沢氏の<自衛隊観>や
部隊観>についての記述がされてありました。

小沢一郎氏の世界観を「国連中心主義」として、
つぎのように書いています。
―――――――――――――――――
 ”小沢一郎の世界観は、
日本が自立した国家として、国際社会の一員として
国際連合の平和維持活動にも参加する
というものである。
日本はアメリカとも世界中のどの国とも対等であるという前提に立つ。(引用者中略)
ただ、小沢は憲法9条を極めて高く評価しており、
この9条規定に接触しないように、
自衛隊が海外で武力行使を含む平和維持活動
を行なう場合には、
自衛隊を分隊し、警察・消防などのメンバーも加えた
「国連待機部隊」を創設するべきである
と考えている。
 もともと小沢は自民党の大物政治家であり、
当初はアメリカの期待も大きかった。
だが、小沢は自民党を割って、
自らの政党を作った人間である。
(引用者中略)
 その小沢は朝日新聞のインタビューで
次のようにコメントをしている。
この時期、日本は
自民党の最後の長期政権となった小泉政権であり、
2001年9月11日の「同時多発テロ」の報復として
米軍が行なった軍事行動に日本が
どのような支援を行なうべきか
という議論が行なわれていた。

(引用者中略)
「政府の憲法解釈に立てば自衛隊派兵は全くの憲法違反だ。
実態として何の役にも立っていない。最初に言ったように、
世界人類の共生の追求こそが日本の役割だ。
もちろん、いざという時の力の行使の決意、決断は
持っていなければならないが」
――で、憲法改正はやはり必要と?
はい
――9条はどうします?
「自衛権国連憲章にもある通り、個別、集団的両方を持っている。
しかし、9条はその行使を抑制している
日本の過去の歴史だけでなく、人類の歴史を生かした条項だと
私は解釈している
ただ、9条には国際社会への貢献を明示したほうがいいだろう
(「朝日新聞」2001年11月1日)

このように、小沢の外交・安全保障は、
国連憲章の理念を実現するべきというものである
ことがわかる。
(引用者中略)
 小沢は自由党を民主党に合流させた数カ月後の
2004年3月に、民主党の社会党系グループにいた
横路孝弘・・・と安全保障上の政策協定を結んでいる。
この際に、自衛隊と別組織で、
国連の平和維持活動に参加する「国連待機部隊」を
創設し、多国籍軍への参加を容認することなどを
柱にした「日本の安全保障・国際協力の基本原則」
を作成した。
 
 この中では、「自衛隊は憲法9条に基づき、
専守防衛に徹し

国権の発動による武力行使はしないことを
日本の永遠の国是とする
」と一番に掲げ、
国連軍は将来創設された場合には
国連待機部隊の一部を提供
」するとし、
それまでは「国連安保理、総会の決議の基づく
強制措置を伴う多国籍軍に参加
」する
と取り決めている。
参加の有無、携帯、規模は国が主体的に判断する
としている。
 
この小沢の考え方は、
主著『日本改造計画』(講談社)で1993年に
すでに打ち出していたものだった。

(引用者中略)

 ・・・国連主義の考え方は小沢のオリジナルではない。
 この考えは国連を利用した多国籍間協調主義である。
これと類似した考えは、ブッシュ政権のネオコン派が掲げた「ユニラテラリズム」が支配的な意見になるまでは、同政権のコリン・パウエル国務長官によって提唱されていた。
(引用者中略)
  ・・・小沢の考えは、鳩山の友愛思想ほどには
当初からアメリカに警戒されていたわけではない。
そのことを、小沢の『日本改造計画』が、
アメリカでは当時、一定の評価を得ていたことが
裏付けている。
(引用者中略)
  ところが、・・・・90年代後半のアメリカ国内の外交論議は、クリントン政権ノテロ対策の弱腰を批判するネオコン派によってリードされていく。
911事件を機に、国連主義は「社交辞令」としての
意義ほどしかなくなっていく。
小沢の世界観を、もはやアメリカは
受け入れられなくなったのである。
そして、小沢の側も、国連中心主義を掲げながらも
日本独自の路線を構築する方向へと変化してゆく
 その象徴となるのが、2009年2月24日の
日米同盟は第7艦隊だけで十分である」とする
小沢の発言であったが、こ0れは「日本独立宣言
でもある。
――――――――――――――――
(中田安彦『日本再占領』 P.151ー157)

さて高樹は、
二つの叙述を引用させていただきました。

何故こうした煩わしいことをしたのか、と言いますと、
坂元修 弁護士の意見に心当たりがある一方で、
しかし、坂本弁護士による叙述・文章だけを引用できない疑問が、心に残っているからです。

とくにボクは、先週、
TPP>や<原発・核利権構造>や<消費税をはじめ不公平格差税制>の正体や実態を、
なぜマスコミは、国民に伝えることはないのか、
マスコミについて調べさせてもらっていて、
マスコミは、政府財界アメリカ
また巨大広告代理店からの”圧力を受けて
「世論操作」や「扇動する」という”受動的な立場であるばかりでなくマスコミ言論自体も、
政治を左右させたり、働きかける積極的な側面をもっていることを、
個人的には、最近になって知ることになりました。


そういう事もあって、ボクは、
つぎのようなギモンを抱えながら
上記のような格好で、
ふたつの叙述を引用してました。


そのギモンというのが、


〇民主党が2009年の衆議院選挙で大勝して
政権交代を起こす前は
たしか麻生政権への批判が激しく
なぜ<民主党>大勝の追い風となるような
メディア報道が、なぜ行なわれていたのか?


〇 陰謀論的な見方をすれば、
「格差」が起こっても構わない
自公連立政権による政権運営では見限られるので、
バトンタッチ/政権交代は許されるが、

国民新党>と<社民党>との連立政権を組む、小沢一郎鳩山由紀夫が党首の政権運営は
許されなかったのか?
(陸山会事件については、2006年に『週刊現代』記事、
2008年東京高裁裁判所での判決、
2010年の東京地検特捜部による小沢秘書逮捕など)

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%99%B8%E5%B1%B1%E4%BC%9A%E4%BA%8B%E4%BB%B6
(最初から、二人を降ろさせるつもりだったのか?)
――<社民党>や<共産党>、<新党日本>、
亀井静香さん、<みどりの風>や<新党きずな>など、
庶民や弱者を助ける政党が、政権交代を果たしても、
マスコミなどのバッシングは、避けられないのか?――

鳩山政権では、
労働者派遣法の抜本改正」への姿勢
亀井靜香氏を起用しての「郵政民営化の見直し
・対日要求を受ける窓口である
日米規制改革委員会の廃止
が行なわれている。


がしかし、その一方で、



<財界>や<アメリカ>が要望する
小選挙区制の完全化」を、
マスコミ言論後押ししてきた。


〇民意を圧殺する「議員定数削減」について、
この前も、たしか小沢一郎代表が、
肯定的な発言をしていたはず。


〇国民の生活が第一も、
「自由貿易に基本的に賛成」

安倍政権時
圧勝した自民党の議席を背景に、
民主党の中軸も合意して
共同提案で国民投票法を作ろうという動きがあったが、その中軸とは、誰々なのか?

小沢一郎氏は、憲法9条を、
”人類の歴史を生かした条項”とし、
あくまで”憲法9条に基づき、専守防衛に徹し、
国権の発動による武力行使はしないことを、
日本永遠の国是”とするが、
しかし、自衛隊とは別組織で、多国籍軍への参加を容認する「国連待機部隊」(武力行使を含む平和維持活動の創設も内容にふくむ基本原則を、2004年に作成していて、
海外派兵法
の理由づけとして、
国際平和と強調の為に”「自衛軍」を、
公益国家のために使うとする、

自民党の「新憲法草案草案九条の二、第二項が、脳裏をよぎる――海外進出の企業を、日本の軍隊に守らせる要望は、<経済同友会>など財界から、1990年代から出ている――。
〇そして、
”国際社会への貢献を明示するため”に、
9条の憲法改正は必要だ
という小沢氏は記事で答えている。


ボクは、過去記事で、
<TPP>反対政党での合従連衡で臨まないと
<TPP>を実現させてしまう従米勢力に、
やられてしまうのではないか、
と書いたことを忘れてはいません。


ただし、不安点ネガティブ面を隠して
都合のよい情報側面だけ伝えるのは、
フェアではなく、不健全だと思われたので、
書かせていただきました。

私は、「維新の会」や「みんなの党」や「公明党」は勿論、
「自民党」に断固反対する腹に決まりましたが、
「国民の生活が第一」に対しては、
支持も否定も出来きれない状態にあります。

でも、「軍国化」や
「格差」や「雇用融解」の世界、
庶民や中小零細企業や個人事業者が
野垂れ死にしようが構わず、
TPPなど「グローバル化」や「対米従属」、
「原発や核権力構造」
を是とする政党への投票だけは、
どうか御止め下さいますよう、
お願い申しあげます。

関連記事

【補足】<関連記事>改憲策動の新しい陣立て~海外派兵のための「改憲」~

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
外資系企業献金に群がる 自民 公明 民主
禁止原則に大穴 政治資金規正法改悪
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik4/2006-12-10/2006121003_01_0.html
(2006年12月10日(日)「しんぶん赤旗」
 
 国会の会期末(十五日)が迫る中で、自民、公明、民主各党が外資系企業からの献金規制を撤廃する政治資金規正法改悪案を成立させようとしています衆院で二時間の審議で通過させた自公民は、参院でもわずかの審議で十一日に倫理選挙特別委員会で採決する構えです。
しかし、法案の中身も狙いも重大な問題があります。

外資が政治に影響力


 現行の政治資金規正法は、株式の50%以上を外国人や外資が保有する株式会社の献金を禁止しています(二二条の五)。それは「日本の政治や選挙が外国の勢力によって影響を受けることを未然に防止するため」(総務省自治行政局選挙部)です。今回の改悪案は、(1)日本国内の法人(2)株式上場が連続五年以上――の二条件を満たせば外資系企業でも献金できるようにするものです。

 もともと企業献金は、企業の利益を実現するための「わいろ」という性格を持っています。いま外国人の株式保有比率(二〇〇五年度)は26・7%と過去最高(東証などによる株式分布状況調査)。二〇〇七年五月からは外国企業が自社株を対価にして、日本の子会社を通じて日本企業を買収できるようになります

 外資が金の力で日本の政治に影響力を強めたら、憲法に定められた国民主権や国の主権が揺るぎかねません。改悪案は「外国の影響力排除の原則に大穴を開ける大改悪です

 改悪案を提出した自民党は「厳しい上場基準が課せられ、市場による監視が徹底している」(加藤勝信議員、一日の衆院倫理選挙特別委員会)などと説明しています。

 しかし、上場基準は、株を購入する投資家を保護するために、企業の収益性や経営の健全性などの観点から要件を定めたもの。外国人株主の影響力排除にとって何の担保にもなりません。「外国から影響を受けている会社の性格が突然変わることはない。変わったのは、株式が50%以上を超えている外資企業から献金を受けてもいいとの立場になった提案者」(日本共産党の佐々木憲昭議員)なのです。

 改悪案は、国民の税金を山分けする政党助成金はそのままに、将来的には禁止する方向だとしたはずの企業・団体献金をさらに拡大するものです。

収支、公開期間を限定


 今回の改悪案はもう一つ、重大な問題をはらんでいます。政党や政治団体が毎年提出する政治資金収支報告書や、添付する領収書の写しなどについて、法案で決める「公開日」以前に情報公開請求をしても、開示しないことにするという点です。
(引用者中略)
 添付される領収書の写しなどは「要旨の公開」には含まれず、情報公開請求をしないと開示されません。この開示時期が限定されれば、主権者である国民にとって、政治資金の使いみちを検証できる期間が限定されることになります。

財界の狙い 政策“丸ごと買収”

 外資系企業の献金禁止を撤廃する考えが
出てきた背景に何があるのか。


 日本経団連の役員企業の外資による株式保有は近年、飛躍的に増加しています。会長の御手洗冨士夫氏が所属するキヤノンも外資比率が50%前後で推移。そこで献金の障害となる規制を撤廃しようとなったのです。

 日本経団連は、法人税減税や規制緩和など手前勝手な財界要求を政党につきつけその忠誠ぶりを評価”して、会員企業が献金をする“政党通信簿方式をとっています。いわば政党、政策の丸ごと買収です

 おりしも政府税制調査会が大企業向けの七千億円の減税を答申し、法人税の実効税率の引き下げも検討するとしたばかり。日本経団連は、自民、民主両党との「政策を語る会」で、実効税率の引き下げを露骨に求めていました。御手洗会長は、「企業が行う政党への献金も社会貢献の一つだ。こうした思いやりを、私は愛国心と呼びたい」(五月二十四日)とのべる厚かましさです。

献金減の台所事情

 財界要求に忠実にこたえたのが自民、民主の「二大政党」です自民党は改悪案を国会に提出
民主党も「企業の政治寄付が制限されるのは、
基本的におかしな話だ

経済界の要望にこたえられるよう努力したい

鳩山由紀夫幹事長)と応じました。

(引用者中略)

 外国人持ち株比率上位企業(%)

 1 東京スター銀行 77.92
 2 日本オラクル  76.51
 3 中外製薬    73.65
 4 パシフィックゴルフループイン 
ターナショナルホールディングス 72.56
 5 宮越商事 67.63
 6 西友 67.47
 7 日産自動車 66.80
 8 デンセイ・ラムダ 65.12
 9 トレンドマイクロ 65.04
 10 昭和シェル石油 62.46
 11 ボッシュ 62.21
 12 ビーピー・カストロール 60.43
 13 オリックス 59.27
 14 ヤマダ電機 55.99
 15 日東電工 55.91
 16 日本たばこ産業 54.75
 17 アサツー ディ・ケイ 54.53
 18 HOYA 54.32
 19 クレディセゾン 54.10
 20 武富士 53.44
 21 ローム 51.68
 22 旭テック 51.34
 23 富士写真フイルム 51.15
 24 キヤノン 51.01
 25 ドン・キホーテ 50.62
 26 ソニー 50.29
 27 花王 50.11
 28 東京エレクトロン 49.92
 29 日本綜合地所 49.68
 30 SMC 49.40

 全国証券取引所「2005年度株式分布状況調査」から作成


―――――――――――――――――――――――――――――――――――
外資の政治献金解禁
政治資金規正法改悪案可決 
質疑わずか2時間
 衆院委

(2006年12月2日(土)「しんぶん赤旗」)
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik4/2006-12-02/2006120202_02_0.html

 外資企業による政治献金を解禁する政治資金規正法改悪案が一日、衆院政治倫理委員会で自民、公明、民主、国民新各党の賛成多数で可決されました。日本共産党の佐々木憲昭議員は「国家主権にかかわる原則を百八十度転換する内容。今必要なのは企業・団体献金の禁止だ」と反対しました。

 前国会で一度も審議されず継続審議となっていましたが、
この日、二時間余りの質疑を行っただけで採決されました

(引用者中略)
最後に、外資比率が50%を超えるキヤノンの御手洗冨士夫会長が日本経団連会長に就いたことを挙げ、「カネで政治に影響を与えたい経団連の思惑と、献金元が減って困っている自民党、民主党の思惑が一致したということ。この重大改悪をわずか二時間の質疑で採決することに、厳しく抗議する」と述べました。

解説
国政に外国が影響力

 
(引用者中略)
外資企業献金を解禁する背景には、献金を通じて政治への影響力強化を狙う日本経団連の意向があります

(引用者中略)
 法案を提出した自民党については、経団連の政策「通信簿」が「企業の政治寄付については経団連と考えが一致し…政治資金規正法案を提出し、成立に向け努力した」と「評価」しています。

 巨大な資金力を持つ大企業の献金は、主権者・国民の意思で進めるべき政策決定過程を大きくゆがめるもので、国民の基本的権利を侵害するものです。
(以下省略)
 (安川崇)