神々の土地④ ’17年・宙組・宝塚 「ラスプーチンの史実」 | To TAKARAZUKA once a month at leastー観劇・備忘録

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①あすかさん ②おはなさま 

テーマ:
ミュージカル・プレイ『神々の土地』~ロマノフたちの黄昏~
作・演出/上田 久美子

平成29年9月17日 宙組・宝塚大劇場  11時公演・1階11列下手側S席 / 15時公演・2階2列サブセンター上手側S席

肝心の人が抜けてました(笑)

○ 史実をまとめてみる

グリゴリー・エフィモヴィチ・ラスプーチンGrigorii Efimovich Rasputin (1869年1月9日~1916年12月30日(ユリウス暦12月17日)) 帝政ロシア末期の祈祷僧
奇怪な逸話に彩られた生涯、怪異な容貌から怪僧・怪物などと形容される。ロシア帝国崩壊の一因をつくり、歴史的な人物評はきわめて低い反面、その特異なキャラクターから映画や小説など大衆向けフィクションの悪役として非常に人気が高く、彼を題材にした多くの通俗小説や映画が製作されている。

1869年1月9日、シベリアの寒村ポクロフスコエ村の農夫の第5子として生まれた。
1892年、唐突に父や妻に「巡礼に出る」と言い残して村を出奔。一説では、野良仕事をしているとき生神女マリヤの啓示を受けたといわれている。出奔後ヴェルコチュヤの修道院で数か月過ごし、村に戻って来た時には熱心な修行僧になっていた。

1903年、再び村を離れ巡礼の旅に出かけたラスプーチンは、訪れたサンクトペテルブルクで、人々に病気治療を施して、信者を増やし「神の人」と称されるようになった。やがて、神秘主義に傾倒するミリツァ大公妃とアナスタシア大公妃の姉妹から寵愛を受けるようになったラスプーチンは、二人の紹介で1905年11月1日にロシア皇帝ニコライ2世とアレクサンドラ皇后に謁見した。1907年4月にはエカテリーナ宮殿に呼び出され、血友病患者であったアレクセイ皇太子の治療に当たった。彼が祈祷を捧げると、翌日にはアレクセイの症状が改善したため、ラスプーチンは皇帝夫妻から絶大な信頼を勝ち取り、「我らの友」「聖なる男」と呼ばれるようになった。
さらに、ラスプーチンはアレクサンドラはじめ宮中の貴婦人や、宮廷貴族の子女から熱烈な信仰を集めるようになった。彼が女性たちの盲目的支持を得たのは、彼の巨根と超人的な精力によるという噂が当時から流布していた。一方、貴族たちは、ラスプーチンが皇帝夫妻に容易に謁見できることに対して、次第に嫉妬心を抱くようになっていった。

1914年、第一次世界大戦が勃発し、ロシアは連合国として参戦した。当初の予想に反し、戦争は長期化し、東部戦線では150万人以上のロシア兵が戦死。ロシア国内では食糧が不足し、価格が高騰。国民の間にはロマノフ朝への不満が募り、その矛先は敵国ドイツ帝国出身のアレクサンドラ皇后と、彼女の側近として国政に介入するグリゴリー・ラスプーチンに集中した。

ロシア屈指の大貴族フェリックス・ユスポフは、ロマノフ朝の権威を回復するためラスプーチンの暗殺を計画し、友人であるロシア大公ドミトリー・パヴロヴィチも嬉々としてその計画に参加した。
ユスポフは、まずラスプーチンを油断させるため、治療の名目で数か月間ラスプーチンの元に通い、信頼関係を築いた。そして、美貌の妻として評判だったイリナ・アレクサンドロヴナに引き合わせることをほのめかしてラスプーチンを招待。1916年12月30日(ユリウス暦12月17日)午前1時、ユスポフの居城モイカ宮殿の地下の部屋に招き入れた。上階には暗殺メンバーのドミトリー大公、右翼政治家ウラジーミル・プリシケヴィチ、連隊将校セルゲイ・スホーチンらが待機していた。
ユスポフは、毒(シアン化合物)を盛ったケーキと紅茶をラスプーチンにとらせたが、彼は平然としており、ユスポフを驚愕させた。さらに、ユスポフは、ラスプーチンに毒入りのマデイラワインを3杯飲ませたが、依然として様子は変わらなかった。午前2時半頃、ユスポフは上階に行き、ドミトリー大公からリボルバーを受け取り、部屋に戻ると、背後からラスプーチンに向かって2発発砲。銃弾はラスプーチンの心臓と肺を貫通し、ラスプーチンは床に倒れ込んだ。
しかし、死んだと思われたラスプーチンは突然起き上がり、ユスポフに襲いかかった。驚愕して階段を駆け上がり中庭に逃げ出したユスポフを、ラスプーチンはさらに追いかけたが、騒ぎを聞いて駆け付けたプリシケヴィチに拳銃で右腹部を撃たれた。それでも起き上がったものの、ユスポフに激しく殴打され、雪の上に倒れ込んだところを、額を撃ち抜かれ絶命した。

事件の報告を受けたアレクサンドラ皇后は直ちに捜査を命じ、ユスポフとドミトリーをセルゲイ宮殿に軟禁した。皇后は、直ちに二人を処刑しようとしたが、最終的に思い留まり、ニコライ2世の命令でユスポフは自領ベルゴロドに、ドミトリーは前線勤務の形でイランに追放された。

それからわずか3ヵ月後、2月革命の大混乱の中、1917年3月15日(ユリウス暦3月2日)、ニコライ2世は退位。皇太子ではなく、弟のミハイル・アレクサンドロヴィチ大公に皇位を譲ったが、大公は即位を拒否し、ここにロマノフ朝ロシア帝国は滅んだ。
その5日後、ニコライはアレクサンドロフスキー宮殿に監禁され、同年8月、アレクサンドラや5人の子供(オリガ、タチアナ、マリア、アナスタシア、アレクセイ)とともにシベリア西部のトボリスクに流され、さらに十月革命後、ウラル地方エカテリンブルクのイパチェフ館に監禁された。
そして、1918年7月18日未明、レーニンの命を受けた革命軍により、ニコライ2世と家族全員は同館で銃殺された。


○ 怪物?
シアン化合物、所謂青酸カリ (のそれなりの量) を飲んで死なない人間はいませんし、もちろん、銃弾が心臓を貫通して、生きている人間もいませんから、Wikiにも書いてあるように、ユスポフがバッタものをつかまされたか何かでしょうし、銃弾は心臓をそれていたのでしょう。
それでも、その場の凄まじい様子が浮かんできますね。銃弾を胸部に受け、死んだとばかり思って近づいたところ、いきなり飛び起きて、襲いかかられたのですから、しかもラスプーチンは、身長193㎝の偉丈夫 (ユスポフの身長は分かりませんでしたが、ラスプーチンよりは小柄だったようです。ちなみに、ニコライ2世は170㎝でした)、ユスポフはパニック状態となったことでしょう。暗殺についてユスポフの証言が一貫しないのは、パニックに陥ったために、記憶が曖昧になっているせいかもしれませんね。


○ もう一人の主役

さて、改めて史実を調べてみると、随分と改変がなされていることが分かります。大体、主犯が違いますものね。
それでも、なお歴史の大きな流れに変化はなく、架空ではあっても、ひょっとしたらありえたかもしれない、もう一つの
「ロマノフたちの黄昏」
が描かれているようにも思えます (この辺は、『NOBUNAGA』とちょっと似ている点ですね)

そして、どなたがご覧になっても、この舞台で、(悪夢に出てきそうな程? (笑)) 最もインパクトが強烈な人物は間違いなく

① 愛月 ひかる(93期・20番 「あい」「ちゃんさん」)  ラスプーチン【宗教家、呪術師】  ☆☆☆☆ / 人物設定 ☆☆☆☆☆

でしょう。でも、インパクトだけでなく、この作品を、歴史絵巻として俯瞰すれば、主役はこの人物なのかもしれませんね。ある意味、物語の流れを決定づけている
「もう一人の主役」
ひょっとして、最も史実に近い人物設定なのかもしれませんが、それなのに、この存在は単なる人間ではなく、一種の歴史的意思のような抽象的な存在にも感じられました。ある意味、
“トート”
の存在性に近いのかもしれませんね。

あいちゃんの役作りも良いものでしたが、この人物に、ここまでのインパクトを持たせ得たのは、役作りの見事さと言うよりも、むしろ
“ウエクミ先生の手腕”
なのでしょう。「あいちゃん」は、どうしても発声がやや甘いのですが、そんな不満は全く感じなかった。
ラスプーチンの登場シーン全て、極端に忘れっぽい私でも(笑)、鮮烈なイメージが残っているのが何よりの証明でしょう。
そして、↑の史実を調べてみて、なおさら、その
“物語作りの才能”
に舌を巻いています。

「あいちゃん」は、何かこういった濃い役じゃないと物足りない存在になってきている感がありますね。
次は、エロール...。キャラ的にはいけそう...。でも、すごーく難しい楽曲揃いだったような...。初演は、あの「オサさん」だからこそ、余裕の歌いぶりでしたが。あいちゃんは、どこまで歌えるのかな? 
キキちゃんがきて、宙組のこれからを考える上でも、とても気になる公演ですね。


○ 大事な役どころ

「聖痴愚」という言葉自体、宝塚の世界に現れるのが不思議な感じがします。「佯狂者」とも呼ばれるんですね。ロシア語では、юро́дивый,英語では、yurodivy or "holy fool for Christ"

② 花音 舞(90期・5番 「きゃのん」)  ロフチナ夫人【ラスプーチンの狂信者、聖痴愚[ユロージヴァヤ]】  ☆☆☆
③ 瀬戸花 まり(96期・9番 「せとぅー」「せっちゃん」)  ゴロヴィナ嬢【ラスプーチンの狂信者、聖痴愚[ユロージヴァヤ]】  ☆☆☆☆


声の力と言う点では、少し○い所のある「あいプーチン」をカバーして余りあるこのお二人。
ちょっと凄すぎて、普通の娘役さんに戻れないほど?(笑) 
特に、「せっちゃん」の良く通る迫力VOICEは会場中に響き渡り、常の世ならざるものが現出していました。


○ あまりに濃密な傑作で、まだまだ書くことがありそうですが、東京公演前に、あまりネタバレもしたくないので (いや、すでにかなりしちゃったかな?)、続きは、東京公演を観てからにしたいと思います (とか言いつつ、もう書くことないような気も...(笑))

rasupu-tin
(こわそーー)

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