F9の雑記帳 -9ページ目

『トピーカ・スクール』



 ベン・ラーナー『トピーカ・スクール』(川野太郎訳、明庭社)を読みました。
 ディベートの名手であるアダム・ゴードンの語りを中心に、母ジェーンや父ジョナサンの過去の出来事の描写を中心にした語り、そしてアダムの同級生のダレンの語り(転校生が故に待ち構えていたのかも知れない事件の描写を中心とした)語りが挿入される形でこの小説は進むのですが、個々の語りの部分は読んでいて分かるものの、各々の語りの関係性が掴みにくく、読んでいる間は凄くしんどいなと思う瞬間が沢山あり、読むのを放棄したかったです。
 ただ、巻末の「訳者あとがき」と白岩英樹による「解説」を読んだら、頭の中にかかっていた霧が晴れた感じがして気分が晴れました。
 ですので、この小説を読むなら、巻末の「訳者あとがき」と「解説」を読んだ後に読み始めると理解しやすいかもしれません…。

「背番号10のヘッドスライディング」




 乗代雄介「背番号10のヘッドスライディング」(『群像』2025年9月号所収)を読みました。
 この小説では、マンションの共同のごみ置き場ですれ違った少年がごみとして捨てていった紙粘土の人形を見たことで、主人公がかつて在籍していた少年野球チーム「南町シェットランド・シープドッグス」を思い出し、3人の同級生(シュウヘイ、セッキー、リーマン)との思い出が主に書かれているのですが、主人公の語り口があまり感情的ではなく淡々としているからでしょうか、読んでいる間はエピソードの数々の面白さを素直に味わう事ができて(全体的に)良かったなと思いました。
 ただ、チーム名の由来、シュウヘイやセッキーのものに比べて割に多いリーマンに関する思い出、何だか良く分からない監督についての思い出…、小説の長さに合わせたエピソードの量ではありますが、最後の最後で思わずひっくり返りそうにはなりました。
 卒団式で送られている紙粘土で作られた人形が、まさかそんなものだとは…。

『マンスフィールド・パーク(下)』




 ジェイン・オースティン『マンスフィールド・パーク(下)』(新井潤美・宮丸裕二訳、岩波文庫)を読みました。
 この本には、第3巻(全17章)と(ドイツ人の劇作家アウグスト・フォン・コツェブーによる『愛の子ども』をイングランド人の劇作家で小説家、批評家でもあるエリザベス・インチボールド)が英語に翻案したと言う)戯曲『恋人たちの誓い』が付録として収録されています。
 以下、感想(めいたもの)を以下に書いておきます。

 ◯

 第3巻には、主人公ファニー・プライスが凄く嫌がっているヘンリー・クローフォドとの結婚を巡る圧力やその他様々な出来事と、ある男女二組の行動(と書いておきますが、こんな事態はそうそうないのではないでしょうか?)によって状況が一変してしまう様子が中心に描かれているのですが、こんな展開になるとは本当に考えてなかったので、正直吃驚しました。
 「あのファニーがもう一つか二つきっかけがあれば、牙城が崩れるかもしれない、まずい…。」と思いハラハラしながら読んでいたのに、予想外の展開が待っていたので、読んだ時は思わず天を仰いでしまいました。
 そして、エドマンドとファニーに与えられた結末には納得できはしたものの、個人的にはもう少し早い時期にそうなってもいいように思いました。

 ◯

 『恋人たちの誓い』は、読んでいて詰まらなかったです。
 巻末の解説でエリザベス・インチボールドや『恋人たちの誓い』について触れられているのですが、個人的にはどうにも駄目でした…。

 ◯

 そして、またしても最後になってしまいましたが、巻末の50頁程は作品と作者についての解説となっていますが、作品の理解に物凄く役立つなと感じました。