「旅する練習」

乗代雄介「旅する練習」(『群像』2020年12月号所収)を(暇に飽かして)読みました。もっとも、明日も時間はあるのですが…。
主人公の小説家の私と中学受験を終えたばかりのサッカー少女の姪が、千葉県の我孫子市から鹿島アントラーズの本拠地を目指す旅についての小説なのですが、以前何作か読んだ乗代雄介の小説とかなり感じが違うなと思いました。
以前の乗代雄介の小説であれば語りの内容の豊富さが目立ってしまいがちだったと思うのですが、主人公の姪(亜美(アビ))と(途中から旅に加わる)服飾メーカーの内定をもらったと言う那須高みどり(小説の後半で重大な決断をする)の人物造形と彼女達の描写が暖かくて、僕にとっては新鮮でした。コロナ禍の状況もしっかり書かれていますし、第164回芥川賞候補作となったのも分かる気がします。
しかし、(主人公が小説家の設定だから当然かもしれませんが)植物や水鳥等にについて即座に語れ文章に綴れる、更に近代文学や鹿島アントラーズについて語れ、それらが的確で魅力的と言うのは不勉強な僕からすれば凄いなと思いました…。
『洪水』

フィリップ・フォレスト『洪水』(澤田直・小黒昌文訳、河出書房新社)を読み終えました。
僕は作者について殆ど何も知らず、図書館の新着図書の棚にあったので借りてきて読んだのですが、余り乗れませんでした。
「それはまるで伝染病だった。」と言う一文から始まり、「ヨーロッパでもっとも古くもっとも大きい都市のひとつ」での生活、ピアニストの女性と雄弁に語る男性との交流と失踪、そして「洪水」、「破局(カタストロフ)」…、印象的な場面は多かったのに、語りが静かだからだったからでしょうか。一息ついてから読み出すまでにかなり時間を空けたりしたからでしょうか。
しかし、「Est enim magnum chaos」(実のところ、そこにあるのは大いなる虚空なのだ)と言う言葉の示すものは深いですね…。
『きらめく共和国』

アンドレス・バルバ『きらめく共和国』(宇野和美訳、東京創元社)を読み終えました。
僕は作者について何も知りませんでしたが、巻末の「訳者あとがき」によると、作者は「二〇一七年にエラルデ小説賞を受賞」(173頁)したとの事でしたので、近所の図書館から借りてきて、昨日読み始めて今日読み終わりました。
内容については写真を観ていただければ分かると思いますが、個人的には主人公達が「路上の子どもたちサンクリストバルで命を落とした三十二人の子どもたち」(5頁)の隠れていた場所について誤解していたと分かった場面を読んで驚き、もし当時別の行動を取っていたら悲劇的な結末を迎えずにすんだかもしれない(←小説である上にどこまで行っても結果論に違いない訳ですが。)と思うとやるせない気分になりました。
まあ、登場人物達が小説の上での行動と反対の行動をしたとしても、結果は同じかもしれませんが…。
