F9の雑記帳 -85ページ目

「骨を撫でる」




 三国美千子「骨を撫でる」(『新潮』2021年2月号所収)を読みました。
 目次には「『いかれころ』の世界を突き詰めた野心作」と書かれていますが、僕はそれ程でもないなと思いました。
 主人公の女性の難病に罹ってしまった母親、借金を重ねてしまう弟を筆頭に   様々な人物が登場するものの、言葉遣いも強烈ではなかったですし、母親が弟に甘いがゆえに起こる展開も(読んでいて興味深かったものの)極端に起伏があるものではなかったですし…。
 ただ、読んでいて旧家は大変だなあと思いました。
 あと、市会議員に当選した主人公の同級生が主人公に言った台詞(46頁)は読んで少し感動しました。

『すべての雑貨』



 三品輝起『すべての雑貨』(夏葉社)を読み終えました。
 僕は夏葉社の本が以前から好きで(感想は書いていませんが、まだ何冊か購入して持っております。)、この本も刊行(2017年4月)当時購入していたものの、相変わらずの積ん読状態にしてしまっていたのを今回引っ張り出し、尾鷲市のアパートの部屋に持ってきて読んだのですが、正直な所早く読んでしまわないといけなかったなと思いました。
 何故かと言うと、題名の通り、雑貨と関連した事柄を中心に書かれた29の文章(3部構成)はどれも面白く、「雑貨化の波は全方向に進んでいる」(38頁)等の言葉や文章の内容の多くは納得できましたし、(「漏れかっこいい」等に書かれている)工藤冬里との関係や(「悲しき熱帯魚」や「最後のレゴたちの国で」に書かれている)著者自身の思い出も楽しく読んだのですが、自分の中でなかなか熱気が高まらず、僕自身の読書態度が文章の面白さをかなり削っているなと感じたからです。
 またしても書いてしまいますが、鉄は熱いうちに打てと言う諺は言い得て妙ですね。
 ああ、早く積ん読状態を解消しなければ…。

 附記 この火曜日にスマートフォンのディスプレイの表示がおかしくなったので、機種変更しました。
 細かく確認せず操作しているので、写真の大きさ等が以前と違うかもしれません。

「したたる落果」




 小佐野彈「したたる落果」(『文學界』2021年1月号所収)を読みました。
 最初、語り手の主人公ジンちゃん(名字は“尾添”)の語りと他者との話し方が違うのに面喰らいましたが(彼のセクシュアリティが途中で分かるのはどうなのだろうか…。)、この小説の中で描かれている現在の恋人である「日本の大手美容サロンの海外事業責任者として台湾に送られてから二年半が経つ」(80頁)セグちゃん(名前は“ヒロト”、セグウェイを移動手段の一つとしている。)や、「三十路の会」で主人公と知り合った「大手商社の交通インフラプロジェクト担当として駐在している」(66頁)ダイスケ等の登場人物との関係や交流の描写を通じて、コロナ禍の台湾の状況を書いてあるのが勉強になるなと感じなからも、ある種の“青春小説”を読んだなと思いました。
 ただ、(兎に角北上する最後も含めて)既読感がある箇所があり、何だか残念な気がしました。