だいぶ前の話ですが。
自損事故で入庫したお客さん。
まだ大学生で、若いのです。
運転の未熟さもあったかもしれませんが、事故を起こしてしまった事への責任感があまり感じられないんです。
・・・
私が中学生の頃、峠で走り屋の真似事をしていて事故を起こした人のレスキューに、父と二人で向かったのです。
車は斜面に乗り上げていて、自力での脱出は不可能な状態だったのです。
下手すると仰向けに倒れてしまう位の危険な角度でした。
現場には父と私、事故を起こしてしまった若者とそのお父様の4人がいました。
お父様はカッカと怒っていて、
若者はふてくされている。
そんな状況でした。
父は車にロープをかけると、もう一台の車でけん引して、無事自走可能な所まで引っ張り、救助したのです。
自走可能な事を確認すると、父はふてくされている若者をいきなり怒鳴りつけ、数分に渡って説教したのです。
若者はふてくされつつも、うなだれてただ聞くしかありません。
悪いのは他ならぬ自分なんですから。
・・・
あれから30年以上の月日が流れ、私も自損事故を起こした若者と向き合う立場になったんです。
私は父とは違い、怒鳴りつけたりはしませんが、ガッツリと釘を刺すのです。
「今回ケガ人が出なかったのは本当に幸いでしたね。
自分がケガするのはいいんです。治療すれば治りますから。
車がキズつくのはいいんです。修理すれば直りますから。
そういうのはカネでカタがつくんです。
でも誰かをケガさせてしまったらどうなりますか?
一生足を引きずらなくてはならない。
一生顔に残るケガをさせてしまった。
そういうのはカネでカタがつかないですよね。
これから結婚した、子供が生まれた、と幸せを感じる瞬間がくると思うけれども、ケガさせてしまった相手の事を思い出すと、心から幸せを感じる事ができなくなってしまう。
人生これからスタートという時に、楽しめなくなったらもったいないですね。
だから気をつけて下さい。」
自損事故を起こしたお客さんも、事の重大さをわかってもらえたようで、神妙な面持ちで聞いてくれて、最後は笑顔で帰られました。
こういう釘の刺し方もありかと。
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