政治から身を引いたはずの橋下徹
・元大阪府知事がテレビで言いた
い放題だ。一線を画してきたはず
のTBSまでもが朝から深夜まで
ニュース番組に出演させ、その思
い付きばかりの虚言を有り難る始
末である。「維新政治」が大阪に
もたらした荒廃を検証もせず、今
も「ヒーロー扱い」するテレビ界
の大罪にみえる。新型コロナウィ
ルスへの政府のもたつきに比べ素
早い政策決定が注目されている吉
村洋文大阪府知事だが、中韓を敵
視するその「極右体質」は「安倍
政治」と根は同一である。テレビ
がもてはやす目先の動きに惑わさ
れず、その導こうとする先に警戒
感を高めたい。
先週末、TBSの番組に出演した
橋下氏は発熱後、すぐに高熱でも
ないのにPCR検査を受けたこと
を安住紳一郎キャスターに聞かれ
、ろうばいしてしまう失態を見せ
た。「なかなか検査は受けられな
いと言われますが橋下さん、受け
る経緯はどうだったんですか。や
っぱり元知事だから優先されるみ
たいなことがあったんですか」と
聞かれた橋下氏は「それはね、安
住さん生放送だからやめてくださ
い。みんな思っていることなんで
すから」と困惑しながら答えた。
やましいことがないなら、素直に
経緯を語れば良いのに、それがで
きなかった。推して知るべしであ
る。「検査難民」と言われる中、
軽症なのに割り込んで口を利いて
もらったとしたら、ニュースを偉
そうに語る資格はないはずだ。今
朝も「アサちゃん」で「死者が出
ても経済を動かすしかない。それ
が政治」とコロナ禍で苦しむ患者
に見向こうともせず、早くも自粛
緩和をアピールしていた。感染爆
発の実体に無知の虚言にしか聞こ
えない。
「お金をどんどん刷ればいい」、
「(国会議員の歳費20%カットは
)髪と爪を切っただけ。50%カッ
トだ」……。一見どれも耳触りは
よいが、「敵を作って熱狂をあお
る」のがいつもの手口だ。政府を
批判したようで、裏では定期的に
安倍晋三首相や菅義偉官房長官と
食事をして手をにぎり合っている
。またメディアの寵児になりつつ
ある今、心の中でほくそ笑んでい
ることだろう。
政権末期の症状を見せ始めた安倍
政権が行き詰まるか、てこ入れを
図るとしたら、格好の位置に立っ
た。「安倍退陣」があるとしたら
、その後の「橋下かつぎ」を予測
できないことはない。それだけ安
倍首相には都合の良い人物である
。何より自分に代わって、熱望す
る改憲を実現してくれるかもしれ
ないと期待してもおかしくない。
原発利権に群がった関西電力の経
営陣に松井一郎維新代表が社外取
締役に橋下氏起用を提案した。関
電は拒否したが、維新にとって関
電はまた絶好の「標的」になった
ように見える。しかし、それは表
層的見方に過ぎない。橋下氏はけ
っして反原発ではない。福島第一
原発の事故の直後、国内の全原発
が止まった時、関電の大飯原発再
稼働に橋下氏が当初反対しながら
一夜で豹変、再稼働を容認した経
緯が忘れられない。
この時「橋下政治」の本性を見た
思いになった。平気で政治スタン
スを自分に都合よくコロコロ変え
る。言い訳をするならまだ可愛げ
もあるが、開き直るからたちが悪
い。「大阪都構想」の住民投票で
敗れ、「政治から身を引く」と公
言いながら、今はテレビに出まく
り、政治的発言を繰り返す。引退
どころか政界復帰の野望がちらつ
く。これまで何度、発言を翻した
ことか。数えきれないほどだ。朝
の番組で夏目三久キャスターが橋
下氏に席捲されてしまい「番組が
破たんしてしまいます」と呑気に
持ち上げている場合ではない。
分断と破壊が真骨頂の「維新政治
」。コロナ禍で吉村知事の評価が
高まっているが、橋下知事時代に
保健所と職員が大幅に削減された
ことも忘れてはならない。声高な
発言や目立つ動きには必ず裏があ
る。
【2020・4・21】