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平野幸夫のブログ

ギリシャ語を語源とする「クロニクル」という
言葉があります。年代記、編年史とも訳されま
す。2014年からの独自の編年記として綴りま
す。


中身のない空疎な首相会見だった
。新型肺炎コロナウィルスの感染
拡大に全国一斉休校を唐突に要請
した安倍晋三首相の会見は政権の
無策ぶりを改めてさらけ出す結果
になった。学校、家庭にとどまら
ず社会全体に大混乱を及ぼしてい
る今回の首相判断は、専門家の意
見も聞かないまま科学的根拠もな
く下されたことが2日の国会質疑
でも明白になった。「桜」「検事
長定年延長」など一連の「私物化
」で崖っぷちに立った首相が失政
隠しの目くらましの手を打ったと
いう疑念が募る。本来なら根拠を
ただすべき会見が取材される側の
一方的な演説の場に変えられてし
まった。会見の主催者である内閣
記者会は十分な質問も果たさず、
打ち切りに手を貸した。視聴者や
読者への背信を重ねた自覚もうか
がえない。その罪状は重い。


記者の挙手が続いている中で、逃
げるように会見場を後にした安倍
首相の表情は脅えているように顔
が歪んでみえた。科学的根拠のな
い一斉休校の判断の根拠をたださ
れるのがよっぽど嫌だったのだろ
う。それでも、国民各層に異例の
負担を強いる一斉休校が最善の危
機回避策と考えたのなら、たとえ
稚拙であっても真摯に言葉を尽く
して理解を求めるのが本来の指導
者の姿である。それができないの
は、堂々と語れない邪悪な目論見
が働いていたからではないか。当
初異議を申し立てた萩生田光一文
科相を振り切り、菅義偉官房長官
と相談もしなかったのは、自分の
保身からの独断だったことを示し
ている。各社の世論調査で軒並み
支持率が下がったことへの焦りも
読み取れた。


国民生活が一変してしまう政治判
断を打ち出し、リーダーシップを
発揮すれば、皆の目がそちらに向
いてしまう。そんな頭の中が読み
取れる。それを裏付けるように、
その後の教育、生活、財政支援が
まったく語られなかった。週明け
になってようやく検査・医療体制
の改善策が担当相から説明された
が、小出しで物足りないものばか
りだった。特に陰性・陽性を判定
するPCR検査は10日までにわず
か600件しか増やさないひどい
内容だった。事態の悪化を呼びか
けながら検査数を増やさないのは
、政府全体で検査を抑制し感染者
数を増やさない意図が働いている
としか思えない。現状は感染の疑
いのある患者は検査も受けられず
一般病院に診療に出向くことも禁
じられている。まさに患者見殺し
につながる体制がまかり通ってい
るのだ。


専門家の知見も知らず、「私の責
任で」と一斉休校の判断を下した
安倍首相はどこまで自分の判断の
影響を自覚しているのか。いつも
以上の「やったふりして逃げ回る
」姿を見て、また暗然となった。


首相会見は質問が続いているのに
、司会役の長谷川栄一内閣広報官
が「時間の関係で打ち切らせてい
ただきます」と説明、打ち切られ
た。何か勘違いしているのではな
いか。会見は内閣記者会の主催で
ある。広報官に打ち切る権利など
ないはずで、首相といえども会見
に出席したのであれば、最後まで
質問に答える義務がある。メディ
ア側が経産官僚から起用された広
報官に仕切りを任せているのは、
自殺行為である。会見の運営権を
取り戻さない限り、権力の監視に
つながる質問などできるはずはな
い。


予定調和の質疑に応じている記者
らに、心ある有権者から「翼賛メ
ディア」という批判が高まってい
る。フリーランスの記者の質問が
封じられたのなら、一緒に首相に
抗議し、続けさせるべきだった。
それができないのは、「リーク情
報」をエサのようにもらって、記
者クラブの既得権益に甘んじてい
るからだ。失政がもたらした国難
とも言うべき時、記者らの後姿に
有権者が「公正な政治」を期待す
る熱い視線が注がれていることを
、一人でも思い起こして欲しい。



    【2020・3・3】


政府の水際作戦の失敗で新型肺炎
コロナウィルスの感染拡大を招い
てしまった国難である。昨日の衆
院予算委で、さらなる失態を重ね
続ける安倍政権の機能不全ぶりを
見せつけられた。加藤勝信厚労相
が「1日3800件可能」と説明
していた陽性・陰性を判断するP
CR検査が1日平均たった約90
0件にとどまっていたことが判明
。37・5度以上の熱が4日間続い
た人しか受けられない厚労省の基
本指針がネックだ。全国の保健所
では初期症状の疑いのある人が診
断を断られるケースが多発してい
る。「検査難民」という言葉まで
生まれ、政府全体の機能不全が症
状の悪化や重篤化を招いている。
感染者数を増やしたくないという
政権の意図を読み取ってか官僚ら
も不作為を重ねている。


感染拡大を防止するためには疑い
のある患者の初期診断が大事で、
それで初めて隔離・入院などの判
断がつくのは医療の専門家でなく
ても分かることだ。しかし厚労省
の指針は重症者発生防止にばかり
に重点が置かれ、検査件数を増や
し初期症状の患者数の把握に対応
していない。高齢者と基礎疾患の
ある人に対して病院に行かず電話
で診察を受けるよう求める異常さ
に言葉を失う。厚生官僚が他人事
のように机上で作成した作文がま
かり通っている。大半の感染症の
専門家も疑問の声を上げる。


一般企業に対しても職員の休暇奨
励やテレワーク、時差出勤の推進
などを呼びかけるだけで、企業の
救済にも何の具体策もない。政府
の財政措置は今年度の予備費から
わずか153億円支出するにすぎ
ない。国会で審議中の今年度予算
案を大幅に組み替える必要がある
のに、野党ペースの審議を恐れて
か28日の衆院通過を強行しようと
している。


昨日の衆院予算委の集中審議で立
憲の枝野幸男代表が声を強めて緊
急対策の必要性を訴えていたが、
納得しながら聞き入った。「厚労
省に押し付けて、政府を挙げてや
っている感覚が足りない」と批判
した通りだ。


東日本大震災時、民主党政権は原
発事故対応を含めて当初5兆円の
財政出動をした記憶にあるが、今
後の経済打撃の拡大は必至で、あ
まりの落差と少額ぶりに絶句する
。他のアジア諸国との落差も際立
つ。香港では市民一人当たり14万
円支給したといい、シンガポール
でも約5000億円支出する緊急
財政措置を発動した。数字の桁の
違いは、その国の指導者の真剣度
の違いではないか。感染が拡大し
始めた昨週、連夜美食三昧を重ね
た安倍首相以下の現閣僚らに、こ
のまま事態収拾を任せられないと
いう思いが募る。そんな有権者の
思いは内閣支持率にも表れ始めた
。不支持が支持を10ポイントを上
回った政府寄りの産経・フジの世
論調査が示している。急落にあわ
ててか、自公幹部はまだ新年度予
算案が成立してもいないのに、補
正予算案編成を口にし始めた。


しかし、「新年度の補正ではなく
、本予算組み換えが先だろう」と
言いたくなるような先送りではな
いか。国挙げての危機対応は政府
への信頼が前提である。それが昨
日の国会審議を見ても、「桜」「
検事長定年延長」でも安倍首相は
誰が見ても虚偽答弁を繰り返して
、恥じる気配もない。日本の感染
拡大を見てついに重鎮のIOC委
員から五輪開催判断について「5
月末が期限」という重大発言が飛
び出した。


判断ミスを繰り返し、封じ込めに
失敗した今回の感染拡大は政権に
よる「人災」ではないか。このま
ま収束できなければ、内外から「
五輪中止論」が強まっても何らお
かしくない。


            【2020・2・27】

 

「正確に答弁しろ」。検事長の定
年延長について連立与党の公明党
の北側一雄副代表が「つい間違え
た」とそれまでの国会答弁を撤回
した人事院の松尾恵美子給与局長
を叱ってみせた。国家公務員法の
適用解釈を政権に都合の良いよう
に唐突に変更した安倍晋三首相の
国会答弁に合わせただけの醜態を
まるで下僕のように叱り飛ばした
のである。「桜を見る会」前夜祭
の明細書の発行を認めたANAホ
テルも急に黙り込んだ。新型肺炎
ウィルスに気をとられているうち
に、不都合なことをなかったもの
にする「アベ政治」の害毒がこの
国の人と組織全体を蝕んでいる。


「検察にユダ」と呼ばれる黒川弘
務東京高検検事長の今夏検事総長
就任の道を開いた今回の定年延長
は「事実上の指揮権発動」と批判
が日増しに高まっている。強行さ
れれば、権力犯罪の摘発は今まで
以上に難しくなり、司法が行政に
従属してしまい、三権分立そのも
のが脅かされる。危険性は想像以
上に高い。なぜなら指揮権発動は
個別事件の立件で判断されるが、
政権の意向を忖度する検事総長で
あれば、権力犯罪を捜査するどこ
ろか、批判的な野党やメディアに
強権の矛先が向かいかねない。そ
うなれば、もう政府の暴走や腐敗
を防ぐことができず、民主主義が
崩壊する。


その兆候は一段と顕著になってき
ている。昨夏の参院選で演説して
いた安倍首相を野次った聴衆が札
幌、滋賀などで警察に相次いで身
柄拘束された。安倍首相側近の「
官邸ポリス」と呼ばれる警察官僚
の指示だったとされるが、検察の
トップが膝下に入れば、政権にと
ってこんな心強いことはない。


組織の憂慮すべき事態を検察は許
すのか。さすがに、異論も出始め
た。20日の朝日新聞記事によれば
、全国の高検、地検のトップが集
まる法務省での「検察長官会同」
で、中部地方の検事正が「検察は
不偏不党でやってきた。政権との
関係で疑念の目が向けられている
。このままでは検察の信頼性が疑
われる。もっと丁寧に説明した方
が良い」と発言したという。勇気
ある発言だが、「モリカケ」の立
件見送りをみれば、検察全体への
信頼性はもう以前から失われてい
た。ずるずると権力犯罪を見逃す
自堕落な組織になっていた。


ではこの流れを止めるため検察が
できることは何か。現政権の腐敗
を事件として捜査・起訴すること
以外にない。端緒はいくらでもあ
る。以前から述べているように首
相の「桜を見る会」は政治資金規
正法、公職選挙法違反容疑は明白
である。しかし黒川検事長が側用
人のように目を光らせているせい
か強制捜査する気配もない。首相
が国会で堂々と虚偽答弁できるの
はそんな安心感があるからだろう
。昨秋政権に勇退を迫られながら
もはね返したとされる稲田伸夫検
事総長が最後の気骨を示すのを望
みたい。


立憲の辻元清美議員に前夜祭の明
細書や領収書の発行を明解に認め
たANAホテルも幹部が自民党に
呼びつけられ、態度を豹変させた
。当初同じコメントしていた毎日
、朝日以外のメディアの取材も拒
絶し始めた。政権の「口封じ」圧
力に応ぜざるをえなくなったとみ
られる。ネット上でも安倍首相を
崖っぷちに追い込む「勇気ある対
応」と賞賛されたのがウソのよう
だ。辻元氏との窓口になり、誠実
に回答をした広報担当者の悔しさ
はいかばかりだろうか。


人格さえも破壊する害毒は前言を
翻した松尾局長の顔から読み取れ
た。強い力で虚偽答弁を強いられ
たこの女性官僚の顔は悔しさから
かずっと歪み放しだった。これに
追い討ちをかけるような北側副代
表の捨て台詞も看過できない。


安保法制で安倍首相に擦り寄って
解釈改憲を許した5年前の自分の
姿を鏡に映して見てもらいたい。
「アベ政治」が輩出するのはこん
な「変節漢」ばかりだ。


   【2020・2・22】

 

次期検事総長人事で、法解釈まで
変えてごり押しする安倍政権。ま
た初期ファシズムの兆候の一つ「
身びいきの横行と腐敗」が露わに
なった。そんな時、安倍晋三首相
の親友、加計孝太郎氏が経営する
加計学園獣医学部(愛媛県今治市
)が目玉にした特待枠の来年度合
格者がゼロになった。同学部新設
にこれまでに約190億円もの税
金がつぎ込まれたが、看板倒れ状
態だ。親しい人物だけを厚遇する
首相の「国家私物化」がまた際立
った。改めて国会で追及し、さら
なる血税投入をストップさせなけ
ればならない。


内閣支持率が41%に急落し、不支
持が46%と5?上回った(共同通
信調査)。新型肺炎の水際作戦に
失敗、市中感染を招いてしまった
大失態を考えると、さらに落ち込
むだろう。先週末、政府の対策会
議に出席した首相はわずか8分だ
けいて、日経新聞社長らとの宴席
に出向き、美食三昧で3時間も過
ごした。国難と言うべき時に何と
いう振る舞いか。百田尚樹氏ら熱
烈な「アベ支持者」らも離れ始め
た。「悪政の連鎖」に今さらなが
ら「『モリカケ』で退陣させてお
くべきだった」という思いが募る。


毎日新聞の14日付け記事によると
、四国の獣医師を増やす目的を掲
げ開学の目玉にしていた同学園新
獣医学部の特別枠20人(推薦16人
、センター試験4人)は年間10
0万円もの授業料が免除されるが
、18年度以来、合格者は一ケタに
とどまり、20年度はついにゼロに
なったという。志願者もたった4
人で、四国で活躍する獣医師を育
てるどころでない、悲惨な状態だ
。特別枠の志願者は3年間でたっ
た16人、合格者もわずか5人と尻
すぼみ状態に陥っている。


さらに新獣医学部は背信を重ねて
いる。安倍政権が新設の名目にし
た国家戦略特区の「人獣共通感染
症対策」の成果をまったく上げて
いないことも判明した。7日の衆
院予算委員会で立憲民主の阿部知
子議員が「新型肺炎でどんな活動
をしているか」と萩生田光一文科
相に質問したところ「今後、シン
ポジウムにおいて情報発信、啓発
活動を行う」とまるで中身のない
答えしか返らなかったのである。


申請時「バイオハザード研究のた
め巨額の設備投資が必要」として
いたのに、そのための機器購入も
不十分と指摘され、「国の補助金
受給だけが狙い」と批判された。
現状はその汚名を返上できていな
い。「中身スカスカ」なのに加計
学園だけ潤う。これでは「血税を
返せ」という声が高まるのは必至
だろう。2年前から予想された危
惧が現実になったとも言える。


2年前、鳥インフルエンザ研究の
研究が進み施設も充実していた京
都産業大を除外して国家戦略特区
になった経過が不自然で、安倍首
相肝いりの認可だったという疑い
はこれで一段と鮮明になった。立
憲の辻元清美議員は先日、「モリ
カケ」「桜」を挙げ、「鯛の頭は
腐っているのではないか」と追及
したが、首相は逆切れし、「罵詈
雑言だ」と品性のかけらもない野
次を飛ばした。2年前の自らの国
会答弁を思い起こしたら、そんな
捨て台詞は吐けなかったはずだ。


親友の新獣医学部新設計画を首相
は「内閣府への申請後も知らなか
った。認可され始めて知った」と
誰も信じないようなうその答弁を
繰り返した。愛媛県文書でそれが
ばれたてしまった後も、野党が特
区プロジェクトの審査資料を要求
しても、提出せず隠蔽し続けてい
る。不都合な公文書を改ざん、廃
棄する不正がずっと繰り返されて
いる。「桜」でさらにその悪性が
さらに高まっている。



首相は不本意ながら野次の釈明を
するとされるが、これだけ嘘を重
ねても懲りない人物がたとえ表面
的に謝ってみせても、それを本心
と信用する人は少ないだろう。中
国の古典「書経」に「畏れざれば
、畏れに入る」という為政者を戒
める言葉がある。「つつしみ、お
そるべきことを知らなければ、お
そるべき運命に陥る」と意味であ
る。驕(おご)る首相に投げかけ
たい。


    【2020・2・17】

 


もう逃げ場がなく崖っぷちに立た
された安倍内閣の支持率が上がっ
た。1月のNHK世論調査の支持
から2月は1ポイント上がって44
%になった。国会での「桜を見る
会」の追及で安倍晋三首相の「国
政私物化」が鮮明になったにもか
かわらずである。その原因は新型
肺炎一色のメディアの画一・過熱
報道にある。テレビは朝から深夜
まで「列島総汚染」と勘違いさせ
るように報道、危機感をあおり続
ける。その一方で国会で「桜」を
取り上げ続ける野党の追及を申し
訳程度に伝えるだけだ。権力の不
正を監視する機能を忘れた報道が
安倍政権の延命を手助けしている


安倍首相は新型肺炎騒ぎを最大限
に政治利用している。側近は「緊
急事態条項を設けた緊急事態条項
が必要」とまで口にするほどだ。
その一方で、横浜港に入港したク
ルーズ客船では毎日感染者が2桁
増になっているのに、「全数検査
」や「全員下船」などの政治決断
もできない。まるで事態が悪化す
る方がそれだけ「桜」に目が向か
なくなるのを目論んでいるように
も見える。首相は危機管理をして
いる姿を見せようと、都合の良い
時だけぶら下がり会見に応じてい
る。


武漢で死亡した日本人に対する悔
やみの言葉は、まだ死因が最終的
に確認される以前で、別のよこし
まな意図さえ感じさせた。いつも
のようにぶら下り会見では言いた
いことだけ言って、踵を返し満足
に質問に応じようとしない。テレ
ビ画面は不都合な事実について、
聞かれたくないそんな浅ましい心
情まで映し出していた。



中国以外でこれほど感染者が広が
ったのは、政府が初期対応を誤っ
た結果ではないか。クルーズ客船
の乗客の要望をくみ取らず、乗員
や検疫官まで感染してしまったの
はコロナウィルスに汚染された狭
い船内に閉じ込めたままで、病弱
な乗船客を客室から出させないの
は人権侵害ではないか。国、県な
どどこが責任をもって対応してい
るのか分からない。後手後手に回
っているのは、政府の司令塔が機
能していない表れだ。記者会見す
る厚労省幹部の「検討中」の言葉
の羅列はトップが何も政治決断で
きないからだろう。


「桜」で首相は「私の事務所のこ
となので総務大臣に答弁させます
」と意味不明の言葉でかわそうと
した。自ら判断できないのは、官
僚の作文を何度も何度も読み上げ
るだけなのは、人間の資質に欠け
るからだろう。不都合な事実を突
きつけられると、「レッテル貼り
」「嘘つき」などと逆上してしま
い、自省がきかない。


先日の衆院予算員会で、立憲の小
川淳也議員が「レッテルはすぐ剥
がせられますよ。証拠になる書類
をだせば、すぐはがれます」と言
い返された。安倍首相は反論もで
きず押し黙って困惑する場面があ
った。小川議員の見事な切り返し
は今国会を象徴する場面だったが
、NHKの7時のニュースではい
つものようにカットされていた。
世論調査の「支持できない理由」
で一番多いのが「人柄が信頼でき
ない」が49%と、「政策に期待で
きない」の25%の二倍近いのは視
聴者が首相の人間的欠陥を遅まき
ながらも実感し始めた兆しかもし
れない。



来年度予算案の本格審議が始まっ
た国会では、新型肺炎対策をめぐ
る質疑一色にすべきではない。新
たに権力犯罪の摘発をできなくす
る東京高検検事長の定年延長も浮
上した。この事実上の「指揮権発
動」が「検察官の定年延長はでき
ない」というこれまでの政府答弁
と整合性がないことを追及し、撤
回させなければ、司法の独立性が
脅かされる。民主主義国家の非常
事態に陥る。「桜」で政権存続の
瀬戸際に立たされた安倍首相の大
半の有権者が納得していない答弁
の矛盾点を合わせ、新たな証拠と
証言でさらに「アベ政治」の専横
をストップさせる使命が野党にあ
る。

    
    【2020・2・12】


きっと戦後政治史の大汚点として
記録されるだろう。きょう定年退
職する予定だった東京高検の黒川
弘務検事長(62)について、政府が
異例の定年延長を決め、今夏検事
総長に就かせる人事である。黒川
検事長は「安倍政権の番犬」と言
われるほど権力犯罪の揉みつぶし
を続けた人物だ。今回の人事は事
実上の「指揮権発動」で三権分立
を壊す裏技を使った司法介入であ
る。「桜スキャンダル」で安倍晋
三首相が公選法違反や政治資金規
正法違反で立件される可能性もな
くなる。それどころか、政権与党
による他の権力犯罪が捜査もでき
なくなってしまう。民主主義の根
幹を壊すこんな大罪に「桜」を上
回る指弾の声を上げなければなら
ない。


誕生日の1週間前に駆け込みで閣
議決定するような、こんな姑息な
裏技を誰が思いついたのか。逃げ
場がなく「桜」で追い詰められた
安倍首相に法務・検察内部から知
恵を出したとしか思えない。検察
官の定年延長は前例がない。黒川
検事長が退職した後、トップの稲
田伸夫検事長が8月に勇退すれば
、後任は林真琴名古屋高検検事長
が就くのが既定路線だった。林真
琴氏はカジノ汚職摘発など政界捜
査に意欲的な森本宏特捜部長への
信頼も厚く、「検察復権」を担う
と期待されていた。安倍政権が林
ー森本ラインを恐れていたのは司

法記者らの一致した見方だった。



3日の衆院予算委員会で、森雅子
法相は定年延長の理由を問われ「
重大かつ複雑、困難な事件の捜査
、公判に対応するため」と答弁し
た。検察庁法に定年延長の規定は
ないが、検事総長だけが63歳を超
えて勤務するのが慣行だった。森
法相は今回の適用法津を国家公務
員法とし、黒川氏を「定年延長で
きる」と答えた。まさに姑息な裏
技を使った事実上の「指揮権発動
」と言える。


安倍首相の叔父、佐藤栄作元首相
は自由党幹事長時代の1954年
、造船疑獄捜査で収賄容疑で逮捕
状を請求された。この時犬養健法
相は吉田茂首相の要請を受け、指
揮権を発動し逮捕状の執行を拒否
、捜査は挫折してしまった。正当
に捜査が続行していれば、佐藤氏
は以後の政治生命を絶たれていた
可能性が高い。検察が政権に屈し
た屈辱の事件として知られる。



今回の異例人事の悪性が一段と高
いのは、もう一事件にとどまらず
権力犯罪全般の「捜査封印」につ
ながるからである。安倍首相、菅
義偉官房長官に近い黒川検事長は
これまでにも、小渕優子氏、下村
博文、甘利明氏ら政権与党議員、
閣僚らの政治資金規正法違反事件
の立件見送りに関与、「モリカケ
」でも文書改ざん不起訴などに暗
躍したとされる。特捜OBらから
は「検察のユダ」のほか政権の「
門番」「番犬」などの蔑称で呼ば
れるほどだ。


かつて田中角栄元首相を逮捕し日
本最強といわれた東京地検特捜部
の栄光も地に堕ちたも同然である
。この結末を招いたのは、検察自
身かもしれない。当然、捜査に乗
り出すべき権力犯罪に、「保身大
事」に摘発に躊躇し続けた。「桜
」でも特捜部が内閣府と安倍晋三
事務所を公選法と政治資金規正法
で捜索すれば、一連の証拠文書は
すぐ見つかり立件はたやすいのに
、それをしようとしない。異形の
黒川検事長が検事総長に栄達する
のは政権のせいだけにはできない
はずだ。弱体化した検察に政権が
容赦なく手を突っ込んでよい姿を
見せてしまったからだろう。その
の深い自省なくして復権はない。



ロッキード事件当時「初めに5億
円ありき」などの名文句を残し後
に「ミスター検察」と呼ばれた伊
藤栄樹元検事総長は特捜検察の使
命を問われ、「巨悪の退治です。
検察は国民が退治して欲しいと思
っている巨悪の順に捕まえる。…
…検察官は『遠山の金さん』のよ
うな素朴な正義感を持ち続けなけ
ればなりません」と語った。(山
本祐司著『続東京地検特捜部』か
ら)


「汚れた桜」に「秋霜烈日」のバ
ッジが泣いている。


             【2020・2・7】


「桜」一色になった衆参両院予算
委を最も象徴する場面が昨日の質
疑終了後にあった。立憲の蓮舫氏
が怒りに満ちた表情で「委員長の
許しを得た」として異例の再質問
を始めた。大塚幸寛内閣府官房長
がいつにない殊勝な表情で何度も
前日の虚偽答弁を謝罪させられた
のである。安倍晋三首相への特別
な計らいをごまかしたのがばれた
末の醜態だった。内閣府だけでな
く、霞が関官僚が政権の「下僕」
に成り下がっていることを思わす
見苦しい言動が絶えない。首相に
よる「国家の私物化」がもたらす
害毒が国の中枢組織を蝕み、腐臭
を放ちつ続ける惨状にまた慄然と
した。


大塚官房長は「モリカケ」国会の
佐川宣寿氏と同じ役回りを演じて
いる自覚があるのだろう。「虚偽
答弁しても政権が守ってくれる」
という「成功体験」を持っている
せいか、終始野党議員の質問を鼻
で笑う不遜な素振りが目立ってい
た。しかし、いつまでもそれがま
かり通り続けるはずもなく、つい
に破綻してしまった。


蓮舫議員から29日「桜を見る会」
の首相推薦の締切日を聞かれた大
塚官房長は首相だけ特別に扱って
いたことを否定していた。しかし
、野党の追及チームへのこれまで
の説明と違い、整合性がとれなく
なってしまった。そして、ついに
首相事務所が自ら決めた締切日の
8日前が首相推薦の締切り日だっ
たことを認めざるを得なくなった
のだ。これを特別扱いでないと言
い張れるはずもない。


一連の質疑で、安倍首相が「桜を
見る会」を利用して地元や自民党
やその支持者らを供応していたの
はもはや隠しようがなくなった。
それを否定する首相の弁解には何
一つ物証や、第三者の証言がない
。野党質問に決定打はなかったが
、得られた資料を駆使して、理詰
めで全容解明を迫る気迫が感じら
れた。


中でも立憲の小川淳也、石垣のり
子、共産の山添拓の各議員はいず
れも質問の仕方に清新さがあった

「何を取り繕っても首相という職
権を利用し、選挙区の有権者に無
料で飲食を提供した史上最大の買
収事件だ」


こう締めくくった1年生議員の石
垣のり子氏に喝采を送りたくなっ
たほどだ。これほど端的に今回の
私物化を言い表している言葉はな
い。


山添氏は与党文書を入手し、会の
参加応募者への文書に「招待名簿
は情報公開法に基づいて開示の対
象になる」との文言が入っていた
ことを暴露した。あわてる大塚官
房長の表情がその衝撃度を表して
いた。名簿を破棄し、「個人情報
」を理由に再調査に応じない根拠
が一挙に崩れた。これでもう名簿
を公開するための障害はなくなっ
たことになる。メディアの扱いは
同じ山添氏の質問に菅長官が「内
閣府の判断で廃棄した」と責任転
嫁した方を大きく扱っていたが、
今後の影響力を考えると価値判断
を誤っている。「開示対象になる
」という文書暴露はそれほどのク
リーンヒットであった。


衆院質疑では小川淳也氏がこれま
での首相答弁の矛盾を詳細に調査
し、理詰めで首相を追及した。首
相の容疑を財政法違反、公職選挙
法違反、公文書管理法違反にあた
ると喝破、そのあまりの気迫にた
じろいでか首相は明解に反論でき
ず困り果てた表情がクローズアッ
プされた。「痛快」「必見」「フ
レッシユ」などの賛辞が投稿され
たのがよく分かる。立憲は野党統
一ができない狭量な枝野幸男代表
に代わって小川氏を党首にしたら
どうかとさえ思わせた。


安倍首相を総辞職に追い込むまで
には至らなかったが、政権に有効
なジャブを繰り出せた序盤国会で
はなかったか。政府は新型肺炎騒
ぎを誇張して追及をかわそうとす
るだろうが、この騒ぎにごまかさ
れてはならない。通常国会はこれ
からが本番である。二階俊博幹事
長は「桜は散った」と「安倍4選
」をにおわせた。野党には「桜は
これから咲かせる」の気概を期待
したい。


   【2020・1・31】


次回は都合で2月7日に掲載し

ます)







中国の古い伝説に「贔(ひき)」
と呼ぶ生物がいたという。龍が生
んだ九つの神獣のうち一つで、大
きな荷物を背負うその姿は石柱の
土台の形相としてよく彫られた。
贔屓(ひいき)とも書かれ、日本
の諺「贔屓の引き倒し」の由来で
もある。贔を引っ張ると上の石柱
が倒れる意味だ。河井案里参院議
員に選挙前、自民党本部から1億
5千万円もの資金が交付されたこ
とが判明した公選法違反事件は
まさにその諺にあたりそうだ。気
に入った人物だけを厚遇する「ア
ベ政治」のブラックボックスがま
た明るみになって、「えこ贔屓政
治」が極まった。政党交付金の源
は血税。一連の不正の被害者は納
税者である有権者だ。それを忘れ
てはならない。そして虚仮(こけ
)にされ、石柱が倒れる様を他の
自民党員は黙って見過ごすのか。



案里議員への異例の巨額交付が明
るみになった後の下村博文・自民
党選挙対策委員長の困惑ぶりが衝
撃度を表している。「ちょっと想
像を超えている。接戦で厳しいと
ころには相場より上乗せすること
があるが、桁が違って驚いている
」。自身が加計学園からの政治資
金疑惑に答えないまま、「その口
が言うか」という思いも募るが、
知らぬうちにトップダウンで巨額
交付が決められた恨み節にも聞こ
える。そんな権限があるのは、党
総裁である安倍晋三首相しか考え
られない。


案里議員と1議席を争っていた溝
手顕正・元防災担当相はずっと首
相批判を繰り返し、いわば首相の
「天敵」とも言われた。「溝手憎
し」で案里議員陣営に異常な肩入
れをしたと見られ、溝手陣営は1
0分の一の1500万円しか交付
されなかった。文春報道によれば
安倍事務所から秘書4人も応援さ
せて、名刺を医師会など有力団体
を回ったという。事実上「安倍対
溝手」の戦いに、溝手氏が所属す
る岸田文雄宏池会会長は手を拱く
しかなかった。「背いたものを徹
底的に叩きのめす」という首相の
凶暴性がよく出ている。


案里議員の違法な買収事件の種は
首相自身が種をまいたように見え
る。野党の代表質問に何も答えら
れなかったのは、「案里引き立て
」が隠しようがなかったからだろ
う。


性懲りもなく公文書の破棄・改ざ
んが続く「桜を見る会」ではさら
に新事実が判明した。会参加者の
うち首相推薦を含む「政治家枠」
の人数が2018年に前年より約
2000人も増えていたのである


26日付けの毎日新聞は背景に「安
倍対林(元文科相)」になった下
関市長選挙の代理戦争があった事
情を詳しくルポ記事で紹介してい
る。林派の現職市長に対抗して自
分の元秘書を擁立し当選させた。
年末には安倍派の市議が林派の市
議に暴行、傷害容疑で書類送検ま
でされていた。この市議は不起訴
処分になったが、中間派の自民党
関係者は「下関で安倍派に逆らう
と生きていけない。ファシズムで
すよ」と声をひそめて証言してい
た。


翌年の「桜を見る会」には、市長
選の論功行賞で首相の地元支援者
を大量に招待されていた、それが
2000人も増えていた事情と見
られる。「公的行事の私物化」と
いう批判が一段と高まるのは必至
だ。


「身びいきの横行と腐敗」「はび
こる不正選挙」。米国の政治学者
であるローレンス・ブリットが指
摘した「初期ファシズムの兆候14
」は「アベ政治」にすべて当ては
まるが、この二つの特徴は特に現
在進行形で表れている。


    【2020・1・26】


絶頂の背後に転落が待っている。
そんな予感をさせる安倍晋三首相
の施政方針演説だった。五輪頼り
の「夢」や「希望」ばかりを語り
、「桜を見る会」に一切触れなか
ったのは、自身の責任は逃れよう
がないという心の内の表れではな
かったか。東京・歌舞伎座で先日
観た初春芝居「醍醐の花見」は権
力者・太閤の栄華を極めた花見を
描いていた。大詰めで太閤がよろ
めく場面があり、豊臣家の滅亡が
近いことを予感させる巧みな演出
は、ふとスキャンダルまみれの安
倍首相が両手を広げて「桜」には
しゃぐシーンに重なった。反省さ
え口にできないほど追い詰められ
ている首相が最も嫌がる予算委員
会がようやく始まる。野党は想定
問答を超えた追及で、専横が極ま
る舞台から引き下ろす使命がある


年が改まって内閣支持率がつかの
間4、5ポイント上がったのに気
を良くしてか首相演説では「桜」
だけでなく「カジノ汚職」議員を
任命した責任にも触れなかった。
それでいて各社の世論調査でカジ
ノ反対がどれも約6割以上になっ
ていることを気にしてか、整備地
域を選ぶ基本方針の先送りを決め
た。野党の廃止法案への共感の広
がりをおそれて、支持率をこれ以
上落とさないよう懸命になってい
る。通常国会での法案提出はこれ
までの最低の52本にとどまる。「
首をすくめて」追及の嵐がすぎる
のをひたすら待つ気配が漂う。



臨時国会中に雲隠れして久々に顔
を見せた菅原一秀、河井克之、案
里氏が口を揃えて「捜査に支障を
きたしてはならない」という理由
で説明を拒否したように、安倍首
相は「桜」の追及にも「刑事告発
中なので」と逃げようとするのが
、今から想像できる。それでも野
党が新事実も示さず漫然と臨時国
会時のような追及をしても、また
逃げ切りを許してしまうだろう。


そんな愚を繰り返さないために、
野党質問には首相を公職選挙法違
反、政治資金規正法違反の容疑者
と見立てるぐらいの気概が大事で
ある。前夜祭を催したホテルニュ
ーオータニのパーティ会計文書や
担当社員の証言をどれだけ集めら
れるかにかかっている。また廃棄
されたとされる招待客リストにつ
いても、内閣府の内部文書か改ざ
んに関わった官僚の内部告発も待
たれる。それには、追及本部メン
バー同士の詳細な打ち合わせが不
可欠である。「モリ・カケ」追及時の
ように与党は関係官僚の参考人招
致さえも多数をバックに拒否する
のは目に見えている。事前の調査
で、材料をかき集め与党に真相究
明に反対できないよう迫らなけけ
ればならない。


「内閣人事局」人事で締め付けら
れて反感を抱くまともな職員もい
るはずだ。日頃の野党議員のネッ
トワークを駆使し、「憂国の士」
に接する努力なくして告発は期待
できない。


ビル・エモット元英エコノミスト
編集長が毎日新聞のコラム(19日
付け)で今年を展望、ボルトン前
米大統領補佐官の握っている証拠
がトランプ氏に打撃を与えるかも
しれない鍵を握る人物と指摘して
いた。同じように霞ケ関にも理不
尽にも罷免されたり、冷や飯を食
わされている官僚もいるはずだ。
これからの予算委ではそんキーマ
ンの発掘によって得た材料に基ず
く想定を超えた質問が期待される

          【2020・1・21】


官邸の露骨な論功行賞人事である
。全国28万人の警察官のトップに
次ぐ警察庁次長に、伊藤詩織さん
レイプ事件をもみ消した中村格(
同庁官房長)が明日発令される。
安倍晋三首相と親しい元TBS支
局長、山口敬之氏が民事の賠償訴
訟で敗訴したのも無視、山口氏へ
の逮捕状執行を止めた人物がナン
バー2に就き、長官にも王手をか
けた悪辣ぶりだ。もう警察権力の
公正な執行などあり得ない国家に
成り果てたという思いが募る。20
日からの国会で野党は中村次長を
喚問し、「官邸ポリス」らの不正
な権力行使を糾弾すべきである。


中村次長は昨年5月、池袋で暴走
による母子死亡事故を起こした元
通産官僚の飯塚幸三被告への逮捕
状執行を止めたとされる。それは
当時官房長だった中村氏と安倍首
相の信任が厚い北村滋内閣情報官
(現国家安全保障局長)と共に、
自分の管轄外の現場に現れ、検証
中の警官に詳細な指示を与えてい
た姿が目撃されているからである
。これまでの事例では暴走運転手
は現行犯逮捕されるのが通例なの
に飯塚被告は逮捕されないままだ
った。飯塚被告は安倍首相が重用
経産官僚と知り合いだったことか
ら、ネット上で批判が高まり「上
級国民」という流行語まで生まれ
た。権力者への度を超えた「忖度
」や腐敗がはびこる社会に抗議す
る投稿が拡散した。


中村次長は伊藤さんレイプ事件で
の逮捕状執行を「自分が止めた」
と堂々と公言した。しかし、伊藤
さん自身による取材には全力疾走
で逃げたあさましい人物である。
後に伊藤さんは「人生で警官を追
いかけることがあるとは思わなか
った」と慨嘆させた。


今回の人事を報じた主要な全国紙
の記事には、中村次長に焦点をあ
てた記事は見受けない。民事で伊
藤さんが勝訴し、当時の警察の捜
査が事実上、裁判所から否定され
たことを合わせると、逮捕状執行
見送りを決めた中村氏が失態を指
弾されて当然である。少なくとも
昇進させないという自制さえ働か
なかった。もはや法治国家をも疑
わせる。どこまでも「官邸の下僕
」のように動く官僚のあさましい
振る舞いに歯止めがなくなった。


「桜を見る会」のスキャンダルで
も公文書が改ざん・廃棄され、公
選法や政治資金規正法の疑いが強
まってもまったく捜査の気配も検
察も同じである。カジノ汚職で一
国会議員だけを逮捕しただけで、
他に業者から数百万円を受け取っ
た元防衛相ら5人は立件もされな
いという。カジノ汚職は「桜」か
ら目をそらすための目くらましだ
ったのではないかという思いを強
くする。


検察・警察官僚全体が官邸の意向
を上目遣いばかりする「ヒラメ官
僚」だらけになってしまったのは
、すべての人事を握る「内閣人事
局」による差配が極度に強まった
せいである。かつては警察庁長官
が警察のトップでであり、退任し
た後官邸に入るのは稀有だったが
、今は競って官邸に媚びる。先日
宮内庁長官に栄転した西村泰彦元
警視総監も官邸の内閣危機管理監
に採用され、その後宮内庁次長に
栄転した。この人事は安倍首相が
現天皇への目付役として送り込ん
だとされる。



首相が最も重用する北村滋局長も
警備畑の官房総括審議官から官邸
入り、内閣情報官としてレイプ事
件もみ消しにも関与した。キャリ
ア官僚の不祥事や弱みを握り「官
邸のアイヒマン」としてその存在
が恐れられている。今回の中村次
長の昇格は一連の「官邸ポリス」
の権限強化である。内務・警察官
僚が暗躍し独裁国家に導いた「ナ
チス・ドイツ」と一段と似通って
きて、また悪寒が走る。


       【2020・1・16】