レイプもみ消し官僚のご褒美 | 平野幸夫のブログ

平野幸夫のブログ

ギリシャ語を語源とする「クロニクル」という
言葉があります。年代記、編年史とも訳されま
す。2014年からの独自の編年記として綴りま
す。


官邸の露骨な論功行賞人事である
。全国28万人の警察官のトップに
次ぐ警察庁次長に、伊藤詩織さん
レイプ事件をもみ消した中村格(
同庁官房長)が明日発令される。
安倍晋三首相と親しい元TBS支
局長、山口敬之氏が民事の賠償訴
訟で敗訴したのも無視、山口氏へ
の逮捕状執行を止めた人物がナン
バー2に就き、長官にも王手をか
けた悪辣ぶりだ。もう警察権力の
公正な執行などあり得ない国家に
成り果てたという思いが募る。20
日からの国会で野党は中村次長を
喚問し、「官邸ポリス」らの不正
な権力行使を糾弾すべきである。


中村次長は昨年5月、池袋で暴走
による母子死亡事故を起こした元
通産官僚の飯塚幸三被告への逮捕
状執行を止めたとされる。それは
当時官房長だった中村氏と安倍首
相の信任が厚い北村滋内閣情報官
(現国家安全保障局長)と共に、
自分の管轄外の現場に現れ、検証
中の警官に詳細な指示を与えてい
た姿が目撃されているからである
。これまでの事例では暴走運転手
は現行犯逮捕されるのが通例なの
に飯塚被告は逮捕されないままだ
った。飯塚被告は安倍首相が重用
経産官僚と知り合いだったことか
ら、ネット上で批判が高まり「上
級国民」という流行語まで生まれ
た。権力者への度を超えた「忖度
」や腐敗がはびこる社会に抗議す
る投稿が拡散した。


中村次長は伊藤さんレイプ事件で
の逮捕状執行を「自分が止めた」
と堂々と公言した。しかし、伊藤
さん自身による取材には全力疾走
で逃げたあさましい人物である。
後に伊藤さんは「人生で警官を追
いかけることがあるとは思わなか
った」と慨嘆させた。


今回の人事を報じた主要な全国紙
の記事には、中村次長に焦点をあ
てた記事は見受けない。民事で伊
藤さんが勝訴し、当時の警察の捜
査が事実上、裁判所から否定され
たことを合わせると、逮捕状執行
見送りを決めた中村氏が失態を指
弾されて当然である。少なくとも
昇進させないという自制さえ働か
なかった。もはや法治国家をも疑
わせる。どこまでも「官邸の下僕
」のように動く官僚のあさましい
振る舞いに歯止めがなくなった。


「桜を見る会」のスキャンダルで
も公文書が改ざん・廃棄され、公
選法や政治資金規正法の疑いが強
まってもまったく捜査の気配も検
察も同じである。カジノ汚職で一
国会議員だけを逮捕しただけで、
他に業者から数百万円を受け取っ
た元防衛相ら5人は立件もされな
いという。カジノ汚職は「桜」か
ら目をそらすための目くらましだ
ったのではないかという思いを強
くする。


検察・警察官僚全体が官邸の意向
を上目遣いばかりする「ヒラメ官
僚」だらけになってしまったのは
、すべての人事を握る「内閣人事
局」による差配が極度に強まった
せいである。かつては警察庁長官
が警察のトップでであり、退任し
た後官邸に入るのは稀有だったが
、今は競って官邸に媚びる。先日
宮内庁長官に栄転した西村泰彦元
警視総監も官邸の内閣危機管理監
に採用され、その後宮内庁次長に
栄転した。この人事は安倍首相が
現天皇への目付役として送り込ん
だとされる。



首相が最も重用する北村滋局長も
警備畑の官房総括審議官から官邸
入り、内閣情報官としてレイプ事
件もみ消しにも関与した。キャリ
ア官僚の不祥事や弱みを握り「官
邸のアイヒマン」としてその存在
が恐れられている。今回の中村次
長の昇格は一連の「官邸ポリス」
の権限強化である。内務・警察官
僚が暗躍し独裁国家に導いた「ナ
チス・ドイツ」と一段と似通って
きて、また悪寒が走る。


       【2020・1・16】