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平野幸夫のブログ

ギリシャ語を語源とする「クロニクル」という
言葉があります。年代記、編年史とも訳されま
す。2014年からの独自の編年記として綴りま
す。

 


「いった何時まで先延ばしにする
のか」。年が明けても合流をめぐ
り結論が出せない立憲民主と国民
民主の党首会談にうんざりする。
昨年末には「年内を目指す」と言
っていた枝野幸男、玉木雄一郎両
氏は一致点を見いだせない。「桜
」「カジノ汚職」「自衛隊中東出
兵」……政権交代が起きてもおか
しくない失態続きの政権の延命を
許し続けるのは、大同団結に導け
ない二人の執行力不足と狭量さに
も起因する。こんな言葉がある。

「政(まつりごと)を成すは人に
在り」(中庸)


政治は人物如何という根本を改め
て思い知らされる。


また合意に至らなかった10日の党
首会談は、来週の再会談に持ち越
した。「新党は名乗らない」とい
う枝野代表に、党内をまとめきれ
ない玉木代表は「9月先延ばし」
を口にする始末だ。この間、野党
が一本化して政権に対峙できる勢
力を示すことができていたら、随
分政局の展開は変わってきたはず
である。


20日から通常国会が開会しても、
国会の勢力図が変わらないままで
は、本来崖っぷちに立たされてい
るはずの安倍首相を追い詰めるこ
とは難しい。糾弾するベクトルの
変化とパワーアップを図らなけれ
ば、同じ繰り返しになる。内閣支
持率が不支持を下回り始めた今が
最大の好機であるはずなのに二人
にその自覚が見えず。外向きに何
のメッセージも発しない密室会談
は不信感を強めるだけだ。


特に玉木代表はまったく党内を掌
握してないことをさらけし続けて
いる。参院に一部が合流に反発し
ているというが、原発ゼロに政策
転換できない電力系組合出身の議
員は原発利権に固執しているだけ
で、新たな路線に沿えないなら出
てもらうよう説得したら良い。自
身が新たな路線を作る気概がない
まま、何回会談を重ねても同じだ
。落ちるところまで落ちて1%に
もならない国民民主の支持率を考
えると、立憲路線に乗るしか生き
残りの道はないようにみえる。


民進党分裂時、小池百合子氏に擦
り寄った戦犯の前原誠司氏らが新
たな党に入る資格などないのでは
ないのか。むしろ細野豪志議員の
ように自民党に行ってもらうほう
がすっきりするだろう。政治の常
である合従連衡にも大きな潮流を
見誤っては勢力拡大は図れない。


同じことが枝野代表にもあてはま
る。党首会談で玉木代表を追い詰
めているだけのように見える。民
進分裂時に排除されたうらみつら
みをまだ引きずっているように見
えて仕方ない。昨年の参院選では
その前の衆院選に比べて300万
票も減らしたのは、「れいわ」支
持激増などをもたらした新たな波
を吸収できなかったせいである。
相変わらず「党名は変えない」な
どと吸収に固執するから他の野党
からの賛同も広がらない。


「安倍政権打倒」という一点でま
とまり、大同団結を目指すのが野
党第一党党首の役割ではないのか
。こんな好機はまたとないはずだ
。ゆるやかな連合でも選挙協力で
も良い。


そして新たな価値観を掲げて野党
が一本化して政権に向かいあう構
図を作り上げることが重要だ。戦
後政治に例をみないほど「政治の
私物化」と汚職がまかり通るこの
国の政治。現政権に終止符を打た
せるための冷徹な戦略を立てる知
恵を募る時である。新たな政治的
要求をスローガンに掲げて勢力を
急拡大したドイツの緑の党は二大
政党に失望した若者を中心に支持
を集める。「温暖化排出ガス抑制
」などの政策が共感を広げ、メル
ケル首相率いる中道与党を支持率
で上回るほどだ。大いに参考にす
べきだろう。


          【2020・1・11】

 

「真実は細部に宿る」。取材の基
礎を教え込まれた新人時代、よく
先輩から言われた言葉だ。確かに
、ささいなことにじっと目を凝ら
して、全体が見えたことも多かっ
た。正月の新聞各紙の「首相動静
」短信を見て改めて、この言葉を
思い出した。カルロス・ゴーン被
告のレバノン逃亡、米軍によるイ
ラン司令官爆殺、疑惑が深まるカ
ジノ汚職……とビッグニュースが
続く中、政府は何のメッセージも
発しない。それどころか、首相は
連日ゴルフに興じ、年末から実に
4ラウンドを回る始末である。夜
は以前安倍昭恵夫人から「男たち
の悪だくみ」とネット投稿された
仲間と美食三昧だ。大事なことで
も見て見ぬふりするそんなトップ
を批判もしないメディアも相変わ
らず劣化が進行中だ。


かつて正月の新聞の政治欄には、
自民党の長期政権のトップらが話
題の本を大量に買い込む姿が伝え
られたものだが安倍首相になって
からは思索に時間をすごす様子は
皆無に等しい。ゴルフ三昧は幼児
が遊びをせがんで聞き分けができ
なくようにも見える。


ラウンド相手は「モリカケ」当時
昭恵夫人が「悪だくみ」と投稿し
た仲間内の経済人らだけに限られ
ている。そんなトップが弛緩した
様子をさらす中、年頭の発生した
イラン司令官爆殺事件は中東の緊
張を一気に戦争前夜の様相に変え
世界を震撼させている。来月早々
、政府が決定した中東への自衛隊
員派遣のリスクも一挙に高まった
。最も危険なホルムズ海峡には派
遣しないとはいえ、周辺海域は事
態がエスカレートすれば、同盟国
艦船が巻き込まれてもおかしくな
い。派遣先のオマーン湾など三海
域は一段とリスクが高まっている
のに、政府は見直そうともしない


米軍の支援という本質を隠し「調
査・研究」目的と糊塗しても、隊
員と家族の不安は高まるばかりだ
ろう。不測の事態を避けるために
も中止を検討すべきだろう。野党
も20日の通常国会開会を待たず、
閉会中審査でも是非をめぐる審議
を求める時ではないか。野党再編
も相変わらずまた先送りされる情
勢だ。「合流」か「吸収」かなど
面子にこだわる時でなく早く一つ
になって、中東への自衛隊派遣を
阻止するのが急務であるはずだ。


万一攻撃を受けた時、調査・研究
のため軍事行動はとれず、自衛の
ための武器使用も限定的だ。派遣
隊員の家族の不安は察するにあま
りある。安倍首相がトランプ米大
統領のご機嫌をとるだけで決まっ
た「大義なき派遣」は明白だ。首
相の知性も節度も感じられない正
月の振る舞いを、家族はきっと苦
々しく感じていることだろう。


一方、「バクチ」を「IR」とごまかさ
ず、「カジノ汚職」と呼ぶべき元
国交副大臣の贈収賄は新たに5人
の名前が飛び出した。現金授受は
否定しているが、中国系のカジノ
運営会社の関係者との面会は認め
ている。今後東京地検による捜査
の展開によっては「大疑獄」に発
展する可能性もある。もはや「I
R関連法」も廃案を含め見直すべ
きだ。



他にもカルロス・ゴーン被告の逃
亡についても入出国業務がすり抜
けられたわけで、国の大失態と言
えるだろう。政府から釈明のコメ
ントも出ないのもおかしい。日産
の利権を数百億円も貪り尽くした
ゴーン被告の身柄をどう取り戻の
かも司法全体で取り組まなけけれ
ば、法治国家と言えまい。


昨年、死亡した緒方貞子・元国連
難民高等弁務官は世界平和を「イ
リュージョン(幻想)だ」と喝破
した。最重要な出来事にも見て見
ぬふりする今の政権に当てはめた
くなる。まったく政治が機能しな
いこの国は「イリュージョン(幻
想)国家」でないのか。


   【2020・1・6】

 


「日本が世界の真ん中で輝いた年
になったのではないか」。もう戯
言にしか聞こえず「はぁ、どこが
」と聞き返したくなった。1年を
振り返る「報道写真展」を見て、
安倍晋三首相が述べた感想である
。政権の腐臭が漂い続ける年の瀬
に、また決定的な新事実が明らか
になった。首相自身が「領収書を
発行した」と説明していた「桜を
見る会」前夜祭を巡って、首相の
地元の参加者に、「会費を払わな
かった」と証言する人が多数いる
ことが発覚したのである。これは
首相自身が公職選挙法の買収、供
応を問われるが必至の重大な事態
である。写真展での空虚な言葉は
、「心ここにあらず」という焦り
を隠したかったからか。


政権は一段と崖っぷちに追い込ま
れた。今回の地元からの証言は無
所属の下関市議が3人の女性参加
者とのヒアリングで「5000円
は払っていない」「連れて行って
くれた人に5000円を払ったが
領収書はもらっていない」という
証言があったことを明したという
。安倍首相は国会で「受付で安倍
事務所の職員が会費を集金したと
いう答弁しており、参加者の新た
な証言は集金や領収書発行そのも
のが事実でなかったことを裏付け
る。


それ以前に5000円という会費
が通常価格(最低でも1万1千円
)をはるかに下回る。それがホテ
ルからの値引きで、首相側がその
見返りに他の宴会使用などの便宜
を与えていたら、贈収賄事件に発
展してもおかしくない。潔白を証
したいなら、首相はもう明細書を
明らかにするしか納得させられな
い。それが出来ないなら、通常国
会はサンドバック状態のように打
たれ続けるに違いない。


「桜を見る会」では、毎日新聞報
道(14日付)によってさらなる疑
惑が浮上した。昨年の「桜を見る
会」前日、都内で開いた自民党の
都道府県会議員の出席者に翌日の
「桜を見る会」への出席希望者を
募っていたことが分かった。党内
では5カ月後に迫っていた総裁選
への票固めと見られていたという
。例年京都、福島、滋賀では党府
県連所属の全府県義が招待されて
いたことも判明。与党の総裁選の
票固めに税金が使われた露骨な「
私物化」である。血税が「安倍首
相支持者ら」によって好き勝手に
使われていたことに、もっと有権
者の怒りを募らせるべきではない
のか。


窮地にさらに追い討ちをかけるの
が伊藤詩織さん事件とかんぽ不正
をめぐる事務次官の情報漏えいで
ある。漏えい先のかんぽ生命上級
副社長は、菅義偉官房長官が総務
相だった当時の秘書官で政権の隠
蔽体質を具現したような人物なの
である。副社長はNHKの取材を
「暴力団のような行為」と因縁を
つけて続報を止めた。


高市早苗総務相は今になって次官
を更迭してみせたが、「暴力団発
言」から一カ月も過ぎており、N
HKの前会長を辞めさせて安倍首
相に近い現会長を押し込んだこと
と矛盾した振る舞いであろう。今
回の次官更迭は、一見正当な強権
発動のように見せるが、裏ではさ
らなる「NHK支配」の底意が透
けてみえる。それは高市総務相は
「放送法4条」の「公平中立な報
道」の条項を盾に取り、安倍政権
批判を「偏向報道」として放送局
免許を取り上げることをにおわせ
てろ露骨な圧力をかけた「安倍側
近」であるからだ。


「報道写真展」で首相を取り囲ん
だ記者らは、次々明らかになった
新事実をを問いただすべきだった
。安倍内閣の支持率はついに38%
に落ちて、不支持は42%と大幅に
上回った(24日付朝日新聞世論調

査)。有権者がようやく政治の惨状

を直視するようになった。


  【2019・12・24】


(次回は年明けの1月6日に掲載
予定です。今年もご愛読有難うご
ざいました)

 

遅まきながら内閣不支持が支持を
逆転した(共同世論調査)。臨時
国会を閉会した後も「桜を見る会
」の疑惑は深まる一方で、萩生田
光一文科相はついに大学入学共通
テストで導入予定だった国語と数
学の記述式も撤回する事態に追い
込まれた。失政続きに森友学園ご
み情報不開示違法判決や安倍首相
御用記者へのレイプ認定判決が相
次いだ。一段と政権の腐臭が極ま
る事態なのにメディアの論調が延
命を許している。もう堂々と沖縄
の二紙のように安倍晋三首相に退
陣を迫るべきではないのか。


本来なら野党第1党の立憲民主が
「安倍退陣」を求める院外統一行
動を展開すべきなのに、期限を設
けない国民民主との合流ばかりに
うつつを抜かし、高まる有権者の
批判をいかせない体たらくだ。「
桜を見る会」をめぐる疑惑は「ジ
ャパンライフ」による戦後最大の
マルチ詐欺事件に安倍首相自身が
手を貸した疑いが強まった。まさ
に悪性が疑獄レベルまで高まった
事態なのである。枝野幸男立憲民
主代表らは深刻さを見誤っている
。攻める時に機会を逃せば、相手
はほくそ笑んで逃げ延びるだけだ
。民主主義社会の存亡がかかると
もいうべき時に、手を拱くなら野
党第1党を名乗る資格はない。


政権が窮している空気を微妙に読
んだのか、司法がまともな判断を
出し始めた。大阪高裁の森友学園
ごみ情報不開示違法判決は事実上
、立件を見送った財務省の売却文
書改ざんについての大阪地検の判
断を真正面から批判する中身だっ
た。安価な売却を「適正な対価な
く国有財産を譲渡したのではない
かという疑いが生じうるのだから
、価格の客観性を確保するために
売買代金額と同等に重要な情報。
公表すべき要請は高い」と踏み込
み国に予想外の全額を命じたので
ある。不起訴判断をした当時の検
察幹部が真っ青になってもおかし
くない内容である。不開示の罰則
が甘いこの国の情報公開制度の欠
陥を根本から問いただしていると
受け止めたい。


「総理」という本(幻冬舎)で安
倍首相を絶賛し「太鼓持ち」とも
呼ばれた山口敬之氏による伊藤詩
織さんレイプ事件での民事賠償訴
訟でも、東京地裁が明確に「合意
ない性行為」と認定した。山口氏
は伊藤さんが意識回復後に拒絶し
ても体を抑えつけ続けた」と不法
行為を認めた。警視庁高輪署が逮
捕状を取った正当性が裏付けられ
た格好だ。逮捕状の執行を止めた
当時警視庁刑事部長だった中村格
氏はその後警察庁ナンバー3の官
房長まで栄転、次期長官の有力候
補にまで昇進を果たした。


この間の経過は週刊新潮が詳細に
報じている。それによると、山口
氏は事件後、当時官邸にいた北村
滋内閣情報官に相談していた。北
村情報官から指示をあおぐファッ
クスが誤って週刊新潮に送付され
たことからばれてしまった。北村
氏の警察人脈に連なっていたのが
中村格氏なのである。北村氏は安
倍首相が最も長く会う人物として
知られ、今年9月国家安全保障局
長(NSC)に大抜擢された。そ
の権勢は「官邸のアイヒマン」と
呼ばれ恐れられている。伊藤さん
の事件は北村ー中村ラインで潰さ
れた疑いが強い。山口氏の控訴は
「官邸ポリス」と呼ばれる連中の
関与を白日の下にさらす結末をも
たらすかもしれない。官邸では和
泉洋人首相補佐官と厚労省の女性
審議官の二人による「公費使用京
都不倫旅行」が週刊文春に報じら
れたばかりだ。


安倍政権による「権力の私物化」
がとどまるところを知らない事態
である。今朝の毎日新聞で仲地博
・前沖縄大学長は、沖縄の二紙が
「疑惑を晴らせぬなら辞任を」(
琉球新報)「疑問に答えなければ
、首相を続ける資格はない」と主
張していることを紹介している。
全国紙はそこまで論調を展開でき
ていない。「許されぬ政権の居直
り」(朝日19日社説)と言うより
もはや「辞任を」と明確に迫るべ
きではないのか。首相が生ぬるい
批判に耳を傾けないことを多くの
読者は知っている。


            【2019・12・19】


国会を閉じたとたん、政府がシニ
ア層を痛撃する医療政策を打ち出
した。22年度から75歳以上の後期
高齢者医療費の窓口負担を2割に
引き上げる方針を示した。批判、
反発の強い政策は国会審議をしな
いまま既成事実化する安倍政権の
常套手段である。年間7兆円の年
金支給もマクロ経済スライドと呼
ぶ抑制策で減らし続ける。富める
者はより豊かに、弱気貧しき者は
ますます苦しくなる政策に一段と
拍車がかかる。消費増税後、経済
の停滞を示す数字が次々明らかに
なり、多くの人が将来に不安を募
らせる年の瀬である。


昨日決まった与党の2020年税制改
正大綱でも、企業を優遇し個人に
負担増を強いる傾向が顕著だ。企
業が利益から税金、配当を引いた
うえで積み立てた内部留保は6年
連続で過去最高を記録し、446
億円にふくれ上がっている。さら
に来年度は投資増進税制で優遇、
投資額の15%を法人税から控除す
ることを決めた。これは安倍晋三
首相の意向を受けて大幅に控除を
増やしたという。


企業ばかりが儲けても、設備投資
は伸びず、社員の給料には還元さ
れていないのが現実だ。企業がど
れだけ潤っても、個人消費に回ら
なければ、経済が好転することは
ない。景気全体は10月からの消費
増税によって最悪の展開をみせて
いる。経済指標は軒並み10%以上
のダウンを示す数字が続出、景気
後退の深刻さが浮かび上がってい
る。


政府参与だった藤井聡京都大大学
院教授でさえ「リーマンショック
7個分の打撃をもたらす」と警告
。安倍首相の「2兆円の対策によ
って万全を期す」という発言に「
10~15兆円の補正予算が必要」と
首相発言を「ウソ」と反論し、「
日本経済の破滅」まで口にしてい
る。


13日発表された日銀短観による大
企業の指数は4期連続でマイナス
になり、6年前の深刻なデフレ景
気に舞い戻った悲惨な状況だ。実
は消費増税以前から、アベノミク
スの破たんを示す数字が随所で示
されていた。今年に入って実質賃
金は7カ月連続でマイナス。労働
生産性は先進7カ国中、最下位。
2018年の平均賃金はOECD(経
済協力開発機構)加盟国の中で17
位。世界競争力ランキングは30位
まで落ち込んでいた。



もはや「先進国」と呼べないほど
の凋落ぶりなのである。株価だけ
をGPIF(年金積立金管理運用
法人)などを使ってつり上げて景
気回復をうたう空虚な「アベノミ
クスの内実」に多くの人が気が付
くべきではないか。



「桜を見る会」疑惑は公金を使っ
た首相自身の公選法違反などの政
治腐敗が次々露呈、首相以下政府
の説明に7割以上の国民が不信感
を増幅させている。一方で経済で
も行き詰まり、声が届きにくい弱
者に一段としわ寄せが強まってい
る。


医療費の窓口負担を2倍にするよ
う高齢者に迫りながら、政府がう
たう「全世代型社会保障」に応じ
て「人生100年時代戦略本部」
を立ち上げた与党の無神経ぶりも
腹立たしい。懐に手を突っ込んで
「長生きしろ」は、ブラックジョ
ークにしか映らない。


   【2019・12・13】


「丁寧に説明して理解を得たい」
。中東海域への自衛隊派遣につい
て、政府幹部からまたこんな言葉
が発せられた。イランへの強硬姿
勢を強めるトランプ米国大統領に
追従する危うい自衛隊員の派遣に
ついての説明だが、誰がそれを信
じるのか。「安保法案」「モリカ
ケ」「サクラ」……と安倍晋三首
相はその都度、同じ殊勝な言葉で
批判に答えたが、それが実現する
ことは一切なかった。それどころ
か、国会を閉じ、一方的に都合の
良い閣議決定で野党やメディアの
追及をかわしてきた。「丁寧」と
口にするばするほど、疑念を強め
るのである。


今回の自衛隊の中東派遣は唐突だ
った。米国主導の「有志連合」に
は参加国が少なく、日本は派遣の
大義もないため、仕方なく調査・
研究目的にして国会審議をしない
で協力するのが狙いだ。しかし、
こんな姑息で法的根拠のない自衛
隊艦船と隊員の派遣は不測の事態
に巻き込まれない保障はない。期
限の決めないそんな危うい派遣に
、自衛隊内部でも疑問視声が上が
っているのは当然だろう。


しかし。国会閉会中で、野党の追
及をうけない安倍首相は反対を無
視して強行するのは必至だ。それ
どころか今月中に来日するという
イランのロウハニ大統領との会談
を利用、外交成果を誇示して「桜
スキャンダル」を払しょくする目
論見さえ透けてみえてくる。



それにしても、こんな逃げ切りを
許す野党の稚拙な国会戦術が腹立
たしい。ジャパンライフとの癒着
や参加者名簿廃棄などで政府批判
が高まった先週、こともあろうに
予算委員会審議に応じない首相に
助け舟を出すように、一問一答の
ない参院本会議の代表質問に応じ
てしまった。


案の定、首相は官僚が作成した中
身のない答弁書を読むだけだった
。与党幹部は「十分説明した」と
野党の国会延期要求と応じなかっ
た。「40日の延長要求は奇手」と
自賛しても相手にされるわけがな
い。もっと以前に予算員会開催を
しないなら、全委員会の審議ス
トップに踏み切るべきだった。自
衛隊の中東派遣も当然国会審議を
要求、姑息な調査・研究目的とい
う危うい派遣に反対の声が強まる
はずだった。


国会閉会を許してしまう野党が今
後目指すべきは、「桜を見る会」
参加者名簿の調査とホテルニュー
オータニでの前夜祭の経費明細の
入手に全力を挙げることだ。数十
人もで編成した追及チームを実際
に機能させるために知恵を出し合
ってもらいたい。もちろんメディ
アの調査報道も不可欠だ。


政府に都合の悪い公文書がすべて
改ざん・破棄されるという異常な
事態を何としてでも改めさせなけ
れば、もうこの国を民主主義国家
と呼べない危機感を共有して動か
なければ、いつか来た破滅の道が
まっている。


もうその不気味な兆候も露骨に表
れ始めた。京都府警では男性巡査
が特殊事件の放置を「上司に知ら
れたくなかった」と被害届や供述
調書を署内のシュレッダーで破棄
した事件が発覚した。一警察署の
不祥事ではなく、公務員全体にモ
ラル無き公文書管理がまかり通っ
ていることを想像させる。血税を
貪って私物化した首相らによる「
桜スキャンダル」の解明と責任追
及は公務員全体の綱紀粛正とセッ
トで進めなければならない。


   【2019・12・8】


「思考ができなくなると、平凡な
人間が残虐行為に走るのです」。
ナチスドイツに迫害されたユダヤ
人哲学者、ハンナ・アーレントを
描いた映画で、彼女が学生への講
義で発した言葉である。彼女はア
イマン裁判を傍聴し、世界最大の
悪は動機もなく悪魔的な意図もな
い平凡な人間が行う悪と考え「悪
の凡庸さ」と名付けて世に問うた
。それを実感させられ姿が重なる
のが、この日本の「首相の犯罪」
の隠蔽に手を貸す霞が関の官僚ら
である。「桜を見る会」の参加者
名簿を破棄して恥じない振る舞い
は、ユダヤ人虐殺を「命令に従っ
ただけ」と弁明したアイヒマンと
無思考は同じではないか。


「桜を見る会」の内実が次々明る
みになり、「安倍政治」のとどま
らない腐敗ぶりがさらけ出ている
。公金を使った後援会員の大量接
待、暴力団関係者やマルチ商法経
営者らの多数参加、前夜祭でのモ
ラルなき供応、暴力団関係者やマ
ルチ商法経営者らを多数招待……
。内閣府官房長以下のキャリアた
ちは野党追及の矢面に立たされ、
必死で安倍晋三首相や菅義偉官房
長官の代わって弁明している。し
かし、その説明が次々破たん、招
待者名簿を破棄したという笑いた
くなるような稚拙な説明は疑念を
強めるばかりである。


首相がこの疑惑を一挙に晴らした
いなら二つのことを決断して国会
の予算委員会に出席して説明でき
れば幕を下ろすことができるので
ある。一つは破棄したという参加
者名簿をパソコン上での復元を命
じ公表すること。もう一つはホテ
ルニューオータニに前夜祭の会計
明細書を提出させること。これさ
えできれば、首相にとって「良い
正月」が迎えられるだろう。


しかし、ここまで頑強に拒否して
いるのは、二つの物証が表に出れ
ば、その時点で即、内閣総辞職に
なることを知っているからと断言
できる。もし仮に、内閣府のキャ
リアの誰かが事実を内部告発でき
れば、賞賛されるのは間違いない
。残念ながら、今の日本の政治風
土ではそんな人物は「裏切者」扱
いされスポイルされる。それでも
どこかで勇気ある公僕の出現に期
待したい。それが叶うかどうかは
初期ファシズムの兆候が顕著にな
りつつあるこの国が公正な社会へ
とまだ引き返すことができるどう
かの分かれ目になる。


映画でアーレントはアイヒマンを
「人間の大切な質を放棄しました
。それは思考する能力です。その
結果モラルまで判断不能になりま
した。……『思考の嵐』がもたら
すものは知識ではありません」と
強調した。そして「善悪を区別す
る能力であり、美醜を見分ける力
です。私が望むのは、考えること
で人間が強くなることです。危機
的状況になっても考え抜くことで
破滅に至らぬよう」と訴えた。


珠玉の言葉に思え、よく心に刻む
。目に見えぬ力をおそれ、倫理を
失いつつある霞が関の官僚らに投
げかけたいメッセージだ。彼らが
覚醒しない限り、一連の「桜スキ
ャンダル」の全貌が明らかになる
ことはなく、さらに破滅への道に
進む。


  【2019・12・1】


(都合により、次回は8日に掲載

します)


今年の流行語大賞候補に「シュレ
ッダー隠し」を追加申請をしたら
どうか。そんな皮肉も言いたくな
るような「桜を見る会」の公文書
隠しである。疑惑の数々に内閣府
官房長らは子供だましのような釈
明をする。彼らに「安倍晋三首相
のまるで下僕のように見られ、恥
ずかしくないのか」と聞きたい。
自己保身から矜持までを失わせて
しまうこの政権の罪深さをみる。
しかし、攻め手に工夫がない野党
は、早くも年明けの通常国会での
追及を口にし始めた。そんな悠長
さではまた首相の逃げ切りを許し
てしまう。他の法案審議を人質に
とってでも集中審議を求めるべき
時である。



宮本徹衆院議員(共産)から「桜
を見る会」の参加人数や経費など
の資料要求が出された今年5月9
日、内閣府は「その日に名簿をシ
ュレッダーにかけ廃棄した」と説
明した。そんな偶然があろうはず
もなく、誰が見ても説得力は皆無
だ。、シュレッダーは1時間に11
万枚を裁断できる高性能機だった
ことが判明。内閣府のその場逃れ
の言い繕いは破たんしてしまった
。虚偽答弁は明白で、犯罪的です
らある。時の政権の意向で勝手に
公文書が廃棄されてしまうと、国
家で何があったか分からず、民主
主義国家の根幹が揺らぐ。この1
点だけでも強権的な専制国家の様
相を表す。


「あったものをなかったものにす
る」のはこの政権の得意技だ。国
家の私物化は私人であるはずの安
倍昭恵夫人が懇意にする食品会社
「ジェーシー・コムサ」が201
4年から桜を見る会の招待客への
飲食物を一括提供をしていること
も分かった。同社の社長一家と安
倍夫妻は家族ぐるみの付き合いと
いい、何度も食事を共にしている
ことも明らかになった。受注は競
争入札でなく、1社だけの応募で
決まった。「モリカケ」と同じよ
うに「お友達優遇」だったのであ
る。


「会の私物化」を裏付ける物証や
証言は相次いでいる。安倍首相に
直接疑問点を問いたださなければ
ならない。その場は国会の予算委
員会での集中審議が最もふさわし
い。政府与党が頑強にその開催を
拒むのは、首相が釈明できず「ぼ
こぼこの火だるま状態」になって
しまうからだろう。だからこそ疑
惑は熱いうちに解明しなければな
らない。


野党第1党の立憲民主の安住淳国
体委員長は1月の通常国会での本
格追及を宣言したが、そんな言葉
は早過ぎる。政府与党の幹部らは
「しめた」と思ったはずだ。12月
9日で臨時国会が終了すれば、年
明けの通常国会の開会を出来るだ
け遅らせば良いと考えるだろう。
その頃になれば有権者の関心は低
くなり、「早く予算案の通過を」
と声を高めることができる。先延
ばしは政権の思う壺なのである。


そんな判断ミスをしている野党は
早急に戦術を見直すべきだ。今の
うちに他の法案審議をストップさ
せて、予算員会開催を必ず実現さ
せるべきだろう。内閣支持率は各
社軒並みダウンし始めた。共同通
信は5・4ポイント減って48・7
%。与党寄りの日経でさえ7ポイ
ントも大幅に減って50%。逆に不
支持率との差は10ポイントに近づ
いてきた。国会で安倍首相が答弁
に窮する姿を見たら、支持と不支
持が逆転するのは明白だ。そうな
ると、内閣総辞職か年明けの破れ
かぶれ解散の可能性が浮上する。


野党に求められのは政権打倒の覚
悟ではないのか。あちこちで腐臭
を放ち、ひどい病状に手が付けら
れなくなったこの国を救い、リセ
ットさせるために一致した行動が
最重要だ。


    【2019・11・26】

 






「事務所にも後援会にも入金もな
く領収書も発行してもない」。8
50人もの夕食会を有名大ホテル
で開いた安倍晋三首相は臆面もな
く説明した。それを問いただすこ
ともできない官邸記者クラブのメ
ンバー。それどころか首相の国会
答弁が破たんした20日夜には官邸
記者クラブのキャップらが首相を
囲み高級中華を食す始末である。
どちらを向いて仕事をしているの
か。「知る権利」の行使を有権者
から託された自覚もない記者の姿
をみて、先日全国公開された映画
「i新聞記者ドキュメント」が追
った望月衣塑子記者(東京新聞)
を苦しめる「内なる敵」に映った
。事実を隠し続ける政権に立ち向
かうシーンの数々の背後の垣間見
えるのは、「保身」や「忖度」に
まみれた「身内」の取材妨害の罪
深さである。


官房長官会見で何度も質問を重ね
て菅義偉長官から答えを引き出そ
うとする望月記者の取材手法を実
はずっと懐疑的に見ていた。自分
の調査報道経験からみると、新聞
記者は紙面掲載ができるまで取材
の精度を最大限高めるのが重要で
、十分な裏付けがあれば、記事を
当局が認めるかどうかは事後的に
すぎないと思っている。望月記者
は相手に認めさせることだけにエ
ネルギーをかけ過ぎ、と批判的に
見ていた。


この夏望月記者をモデルにして反
響を呼んだ映画「新聞記者」の続
編の今回の映画もそんな視点から
見始めた。しかし、菅長官とのや
りとりばかりがクローズアップさ
れていた望月記者の日常の取材活
動を丹念に追った森達也監督のリ
アルな映像はそんな危惧を吹っ飛
ばしてくれた。地道に多方面への
取材を精力的に重ねる彼女の姿に
深い共感を覚えさせられた。不当
な権力行使によって苦境を強いら
れる弱い名もない人に代わって、
その不当さをアピールする記事を
書き続ける姿を見て、その背中を
押したい気分さえ募ってきた。


森監督が特に浮かび上がらせた望
月記者の主な取材テーマは「辺野
古新基地建設」「伊藤詩織さん準
強姦事件」「森友・加計学園事件
」である。当事者へのインタビュ
ウー取材に基づいた菅長官への質
問は根拠があり、政府にとって不
都合な部分を的確に衝いていた。
冷笑を浮かべながら質問に答えな
い菅長官の表情からその都度卑劣
な権力者の驕りを垣間見せた。ド
キュメンタリー映像の特性を駆使
して見事だった。


森監督の意図通り、観客はこの国
のメディアの病理を感じたのでは
ないか。「出る杭」を打つように
後ろ向きの指示を与える上司、官
邸広報室の度を越した質問妨害を
容認している官邸記者クラブの同
業他社のメンバー。フリーランサ
ーの記者を入れない排他的なクラ
ブ……。そんないびつな取材現場
の数々は、政治記者らが特権階級
意識にまみれて劣化していること
を示す。政治取材で異端視される
社会部所属の望月記者が開けよう
とする既得権益の岩盤は厚い。そ
れでも心ある他社の記者らのサポ
ートを受けながら前進しようとす
る姿を応援したくなる。理不尽な
ことへの強い怒りが根底にあるか
らだ。


それにしても、血税を使って地元
の支援者らを花見で飲み食いさせ
た安倍首相が官邸でぶら下がり会
見で済まそうとすることに、抗議
もできずわずか数分のぶら下がり
に群がる若い政治記者に眉をひそ
めさせられ通しだ。全員今回の映
画を見て、わが身を恥じるのでは
ないか。政治をこれほど劣化させ
てしまったのは、ジャーナリズム
が権力監視機能を十分果たせなく
なったせいでもあることを強く実
感させられた。


   【2019・11・21】


(写真は望月衣塑子記者、「i新
聞記者ドキュメント」のパンフ
レットから)

 


野党にはすべての審議をストップ
させる覚悟が求められている。安
倍晋三首相が地元支持者ら850
人に税金を使って飲み食いさせた
「桜を見る会」はどんなに釈明し
ても「公金の私物化」は隠しよう
がない。公職選挙法の供応買収を
明白に示す文書や証言が複数ある
からだ。首相は国会の集中審議に
応じず、異例のぶら下がり会見だ
けで済ます魂胆だろうが、野党や
メディアには、「身びいき政治」に
今度こそ幕を引く決意が重要だ



15日午後からの官邸での首相が異
例の取材に応じ、「桜を見る会」
の前夜のホテルニューオータニで
の後援会の食事会の経費は「参加
者の負担だった」と説明したが、
それを示す何の文書も示さなかっ
た。参加者への「5000円」の
領収書は安倍晋三事務所の担当者
が渡し、金は事務所が管理してい
た。集約した総額も分からず、ホ
テルから会あての全体の領収書も
示されないままだ。事務所が関与
してないなら、なぜ地元の募集文
書のタイトルに「安倍事務所ツァ
ー」とはっきりタイトルが付けら
れていたのか。官邸の記者らはな
ぜそこを質問しなかったのか。首
相夫妻の食事代は払ったのか、会
に呼ばれ6曲も歌った女性シャン
ソン歌手への謝礼は誰からどれだ
け支払われたのか……など詳細に
ただすべきだった。


新米の首相番記者が目立つ官邸記
者クラブもなめられたものだ。首
相は「国会に呼ばれたら、応じる
」と殊勝な振る舞いをしたが、与
党は集中審議を拒否しており、多
数で押し切る目算が透けて見える
。このままメディアの続報から新
事実が出なかったり、支持率が顕
著に下がらなかったら、「モリカ
ケ」と同様、臭いものに蓋をして
逃げ切ろうとするだろう。野党の
資料請求が出たその日に「桜を見
る会」の招待者名簿が廃棄された
のもその象徴的表れである。民主
主義社会で起きてはならないこと
が政権擁護のためにまかり通って
いる。


それにしても、会に参加した地元
有権者らが何の資格もないのに税
金を使った酒食を貪る姿の何とあ
さましいことか。同じように首相
を取り囲み、はしゃぐ多くの芸能
人にも幻滅させられた。石阪浩二
、由紀さおり……好ましく思って
いた人物も並び、その節操のなさ
にあきれてしまう。



来月9日までの国会会期末まで残
された時間は少ない。政府与党は
米国を利するだけで得るものが何
もなかった日米貿易協定を19日に
衆院を通過させ、参院でも審議に
入る見通しで時間切れ発効がもう
目に見えている。自民党内でさえ
「酪農畜産農家に大打撃を与える
恐れがある」という危惧が根強い
のに、米国の顔色ばかりをうかが
うこの政権は一顧だにしようとし
ない。


仮に「桜を見る会」の疑惑が晴れ
ず、今以上に「えこひいき政治」
に世論の反発が強まれば、首相は
来年の通常国会冒頭から解散に打
って出るかもしれない。それだけ
この疑惑は隠蔽できない致命傷で
あるからだ。首相の心境を推測す
ると「絶対国会で火だるまになり
たくない」という一心ではないか
。昨日のぶら下がりでの表情には
、憔悴ぶりが色濃く出ていた。最
悪の場合「内閣総辞職」という字
も頭に浮かんでいたかもしれない
。一言発するだけで、身をひるが
えすいつもの高飛車な態度ではな
く、「これで分かってほしい」と
いう懇願が顔にじみ出ていた。そ
れだけ追いつめられている。この
7年間で最も危うい崖っぷち状態
と言えるだろう。



今こそ野党が一致団結しておかな
いと、また政府の分断工作を許す
かもしれない。倒閣への強い覚悟
が必要だ。加速する専制政治を阻
止するためのまさに正念場である
。この攻防は一部の富める者だけ
が好き勝手に振る舞う社会と、公
正な政治を主張する人たちが中心
をなす社会の闘いでもある。


   【2019・11・16】