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平野幸夫のブログ

ギリシャ語を語源とする「クロニクル」という
言葉があります。年代記、編年史とも訳されま
す。2014年からの独自の編年記として綴りま
す。






抑え切れない「幼児的凶暴性」を
さらけ出した。先週の衆参両院の
予算委員会で、野党から不都合な
質問を受けた安倍晋三首相が質問
中に的外れのヤジを飛ばし審議中
断する場面が何度もあった。いず
れの委員長からも戒められたのに
、改めようとせず居直る始末であ
る。反対意見に耳を傾けるどころ
か相手を罵倒、中傷する行為を繰
り返す。さらに地元の支持者ら「
身内」を多数招待、税金で飲み食
いさせた「桜を見る会」は、公選
法の利益誘導の疑いが濃厚にな

った。今国会の最大焦点はまた

「首相の資質」と「国政私物化」

なってきた。



先週8日の参院予算委員会のテレ
ビ中継を見ていて、首相のだだっ
子のような振る舞いに「まったく
懲りていない」と言葉を失うほど
だった。立憲民主党の杉尾秀哉議
員が放送番組への安倍政権への不
当な政治介入を高市早苗総務省に
ただし始めた時、安倍首相が座っ
たまま杉尾議員を指さし「共産党
」とヤジを飛ばしたのである。す
ぐに杉尾議員が「何ですか。私は
立憲民主党です」と激高したのは
当然だった。


杉尾議員の会派を知っている首相
がわざわざ間違えて質問中にヤジ
を飛ばしたのは、最も痛い点を衝
かれたからだろう。感情を抑え切
れず出たように映った。自分がい
つも野党を非難する時使う「レッ
テル貼りはやめて」を。自分こそ
が率先して言っているシーンだっ
た。わずか2日前の衆議院予算委
では、立憲の今井議員に加計学園
に関する文科省文書に萩生田光一
文科相の名前があったことを追及
した時、首相のヤジで審議が中断
していた。


この場面も見ていたが、首相のヤ
ジは文書を「あなたが作ったので
は」と中傷していた。その表情の
キレ具合に、驚かされた。既に安
倍政権になって20回以上も不規則
発言をして注意されていた首相に
は何の学習効果もなく。むしろ異
様さがエスカレートしている。


そんないわれなき攻撃を受けた今
井、杉尾両議員がすぐさま反論し
審議中断を求めたのは当然だ。し
かし、棚橋泰文予算委員長と金子
原二郎参院予算委員長は野党の抗
議時間を審議時間に加え中断をし
なかった。二人はすぐ横にいる安
倍首相に直接注意もできず、後に
官房副長官を通じて「慎むよう」
と伝えるだけだった。特に棚橋委
員長の首相べったりの運営ぶりは
明らかに公平さを欠いた。


首相自らデマを口にして平然とし
て居直り、謝罪もしない。二人の
野党議員は「これ以上質問できな
い」と即刻席を立つべきだった。
国権の最高機関を侮蔑するに等し
い首相の行為のひどさを広く有権
者に、もっと強い調子でアピール
すべきだろう。


杉尾議員の質問の後、田村智子(
共産)が追及した首相開催の「桜
を見る会」(4月13日、新宿御苑
)の実体は首相の「国政私物化」
を濃厚に思わせる内容だった。首
相の地元(山口県)の支持者ら8
50人が前夜都内で前夜祭を催し
首相夫妻があいさつ。翌日貸し切
りバスで「桜を見る会」に参加、
高級酒、バーベキュー、スイーツ
など飲み食いしたという。



この会の会計はすべて税金で出費
され、毎日新聞によると2014年
が1万3700人、3005万円だっ

たのが、今年は人数が約5000人

も増え。来年度予算は5730万円

を要求している。内閣府は首相の

地元からの招待者名簿を破棄し
たという。首相の「税金を使った
お友だちへの選挙対策」ではない
か。公選法の供応買収に相当しそ
うだ。これも「身びいき」を抑え
ら切れず権力を行使してしまう「
幼児性」の表れだろう。共産に続
き、玉木国民民主代表は「追及す
る」としており、他の野党も一体
となって公益を損なう「私物化」
の実態を明らかにすべきだ。


   【2019・11・11】


(写真は「桜を見る会の安倍首相
、4月13日新宿御苑で。毎日新聞

から


大学入学共通テスト英語民間試験
の延期は安倍晋三首相の政治責任
である。なぜなら一部の教育産業
だけが巨利をえる制度導入を決め
たのは、首相設置の教育再生実行
会議の提言から発しているからだ
。特にこの欠陥だらけの枠組みを
導入した下村博文元文科相は罪深
い。教育現場からの抗議の声を無
視し続けた柴山昌彦、萩生田光一
ら歴代文科相らがそれに次ぐ。「
身の丈に合わせて」と言っ放った
た「萩生田発言」ばかりがクロー
ズアップされたが、格差社会を加
速させる政権の政策が根底にあり
、学生や教師ら教育現場を大混乱
に落とし続ける事態を深刻に受け
止めなければならない。


今回の失態がさらに重大化する直
前の8月の埼玉知事選で自民系候
補に応援に来た柴山昌彦文科相に
若者が「柴山やめろ。民間試験撤
廃」とやじを飛ばした。すぐ若者
は埼玉県警の警官に取り押さえら
れた。7月の参院選中から札幌、
滋賀などで首相にやじを発した聴
衆が警察に相次いで排除された経
緯があり、柴山文科相は後に「や
じの権利はない」と言い放ったの
である。その時改めて表現の自由
さえ奪う政権の体質が改めて露呈
していたのである。


もし仮に、この時の若者の声を真
摯に受け止め見直していたら、こ
の問題が政権を揺るがす事態にま
でならなかった。それができなか
ったのは、文科省が安倍政権の目
玉の政策の一つだったため、試験
会場や日程さえ定まらないまま推
進させようとしたからだ。こんな
重大な欠陥を知っていながら文科
省担当部局をつぶったのは、黙ら
ざるをえなかったためである。



下村元文科相は暴力団関係者や学
習塾経営会社から違法献金や事務
所の無償提供を受けていた疑惑が
相次いで発覚、文科相を事実上更
迭された。その後も加計学園から
200万円の違法献金を受けてい
たことも明るみになり、「教育利
権のドン」という異名までつけら
れたことがある。この時も「後で
説明する」と言いながら、今だに
無視したままだ。6日からの国会
で野党が萩生田文科相と並んで政
治責任を問うとしているのは、下
村氏と今回の実施団体7社と癒着
があったとみているからだ。1下村
元文科省の政治資金団体「博友会
」の献金の流れを徹底的に調査す
る必要があるのではないか。最近
だけでも受験産業などかr約90
0万円の献金を受けていたことが
判明している。


試験日程や会場まで決まっていな
いのに、ごり押ししようとし、併
せて導入された共通テストの国語
、数学の記述式問題を採点する一
部の業者には受験料とは別に採点
費用として1社61億円もの委託料
が払われる仕組みだ。さらに参考
書発売収入などを加えると、「業
者丸儲け」だらけの受験制度であ
る。新聞の解説記事には「文科省
、甘かった見通し」「対応後手に
」などの見出しが付けられている
が、文科省の担当部局がこんな事
態を想定していなかったはずがな
い。安倍首相側近の下村元文科相
の発案政策に欠陥があっても黙り
込むしかなかったのである。


今回の試験には「読む・聞く・話
す・書く」の4技能を評価するた
めという大義名分が掲げられてい
る。しかし、テストの内容は各社
バラバラで採点基準も公平性が確
保されていない。民間業者の信用
性も怪しく、記述式テストでは受
験生が自己採点も出来ない。



そもそも高校の授業で4技能をア
ップさせる授業をしないのに生徒
に受験だけを強いることは「教育
の放棄」と非難されても仕方ない
。大学側も無責任である。民間業
者の採点を十分チェックもせず、
共通テストの採点に組み入れるこ
となど許されることでない。



教育の機会均等さえ理解せず格差
を広げる「身の丈発言」は言語道
断である。それを撤回した萩生田
文科相は即刻辞任すべきだ。ふて
ぶてしく居直る姿は安倍首相の庇
護があるからだろう。国会での責
任追及はこんな「ポンコツ大臣」
を輩出させた首相本人に向けられ
なければならない。受験生50万人
もを「人質」に取り私利を目論ん
だ今回の問題は「モリカケ」以上
の悪辣さである。


    【2019・11・6】


閣僚の辞任が止まらない。菅原一
秀経産相に続き、河井克行法相が
辞任した。いずれも、週刊文春が
スクープ報道した有権者への金品
ばらまきや運動員への過大報酬支
払いなどのスキャンダルが原因だ
。秘書ら身内からの内部告発を思
わす記事だが、以前から両氏の周
辺では様々な疑惑が公然と語られ
ていたという。「文春砲」だけに
なぜスクープが集中するのか。本
来なら選挙や政権取材は新聞メデ
ィアが手厚く記者を配置している
はずだ。不正をキャッチできない
感度の悪さに暗然とする。記者が
政府を監視する番犬ではなく愛玩
犬に堕してしまっている表れでは
ないか。新聞ジャーナリズムの機
能不全は深刻だ。


9月の内閣改造直後から、複数の
閣僚の資質が地元を中心に問題視
されていた。田中和徳復興相は暴
力団稲川会系の関連会社にパーテ
ィ券を購入してもらっていた。国
家公安委員長を兼ねる武田良太防
災相も元暴力団関係者から政治資
金パーティの代金が支払われてい
た。竹本直一IT相も元暴力団幹
部と一緒の写真が広く流布された
。まだほかにも西村康稔経財相は
米国のカジノ事業者の関係者から
政治資金を受けていた。文春は既
にこの男の買春乱交パーティを既
に報じている。


こんな薄汚れた顔ぶればかりで国
政が動いていると思うと、反吐が
出そうになる。欠陥だらけの英語
民間試験に「身の丈に合わせて勝
負を」と発言した萩生田光一文科
相は安倍首相の最側近である。毎
回「任命責任は私にある」との弁
明を繰り返すだけで、何の責任も
とっていない。これだけドミノ辞
任や暴言が続くと、内閣総辞職を
迫られてのおかしくない。


しかし、新聞メディアは政権の腐
敗体質を真正面からただす論評は
皆無だ。社説などで「説明責任を
果たせ」などと書いても、政権中
枢は何の痛痒も感じないはずだ。
新聞には読者の「知る権利」に応
える義務があるが、それに応えて
いない。けさの朝日新聞川柳欄に
こんな句が載っていた。

「文春砲だけが頼りの知る権利」

     (広島県 久保哲)


今こそ新聞にしかできない調査報
道を駆使する時だ。今年の新聞協
会賞を受賞した「関電の原発還流
マネー」のスクープを放った共同
通信は絶賛に値するが、政権を根
底から揺さぶるかもしれないこの
特報に続く記事が他社を含めてま
だ出ていない。全国の原発再稼働
を左右するという視点が希薄であ
る。それを象徴するように気迫に
欠ける続報を朝日新聞が先日日掲
載していた。


「関電の第三者委、真相迫れるか
」という見出しにあ然としてしま
った。第三者委の直近の動きや顔
ぶれを追ってはいたが「名ばかり
」の第三者委が核心に迫るはずは
ない。「真相に迫る」役割をジャ
ーナリズムが託されているいう自
覚もない。過去の企業犯罪で大半
の第三者委が果たしたのは、先送
りと隠蔽である。関電の場合、但
木敬一委員長は元検事総長の肩書
で大和証券グループに天下りした
経歴もあり、お飾りにすぎないの
は明白だ。国のエネルギー政策の
根幹に関わる疑惑が身内の調査だ
けで解明できるはずもない。


還流マネーから安倍首相に近い稲
田朋美元防衛相や世耕弘成前経産
相に流れていたことも判明。新聞
の調査報道が衝くべき核心は原発
マネー全体の流れだ。腐敗した閣
僚の首さえ取れない新聞メディア
にそれができるとは思えないが、
せめて巨悪を追う気概や意地を捨
てず取材してほしい。


             【2019・11・1】

 



今最もチケットが取りにくいとさ
れる講談師、神田松之丞が一昨日
夜、大阪松竹座での独演会で圧巻
の語りを聞かせた。得意の「赤穂
義士伝」のうち堀部安兵衛にまつ
わる三席は硬軟とりまぜて人物像
を浮かび上がらせ、まるで討ち入
りのあった元禄時代に生きている
ような感覚にさせた。会場はざっ
と三分の二が女性客で、改めて伝
統芸能の新たなスター誕生を思わ
せた。




羽織姿の松之丞は普段芝居にしか
使わない花道を通って現れた。少
しばつが悪そうな表情で、「一期
一会で、来年は分からずもう二度
ないかもしれません」と客の期待
感を盛り上げるように枕を切り出
した。約300ある演目の中から
選んだのは「赤穂義士伝」。「春
から夏は怪談、秋から冬は討ち入
りが常」と説明、「今夜語る3席
も『別れ』が底に流れています」
と語りながら「安兵衛駆け付け」
に入った。



飲んだくれの安兵衛は高田馬場で
叔父が果たし合いで卑怯な相手に
殺されと聞き、仇討に駆け付ける
。講談を聞いたことがない人でも
この場面を知っている人気の演目
。松之丞は張り扇を調子よく叩き
ながら小気味よく語った。約10
00の客席はせき一つ響かず、松
之亟の声量が圧倒し、全体を支配
しているようであった。



上方の講談師はさぞくやしがって
いることだろう。歌舞伎を演じる
劇場をたった一人の東京の講談師
が満席にさせることなど想像だに
しなかったのではないか。旭堂一
門に知り合いもいるが、松之丞の
ような若手で実力のある講談師は
知らない。今回の独演会がきっと
上方に奮起を促すきっかけになる
ことだろう。



先日、テレビ「徹子の部屋」に出
演した松之丞は「高校2年の時、
ラジオで三遊亭円生の落語『御神
酒徳利』を聞いて感銘を受けた」
と明かしていた。写実を重んじる
講談と比べ、落語の噺家は情感を
大事にする。松之丞の語りに味わ
いと幅を感じるには、落語の人情
噺の世界も描けるからだろう。


2席目の「安兵衛婿入り」は婿舅
のひょうきんなやりとりを小気味
よく語り、客席をほのぼのとした
気分にさせた。そしてトリの「荒
川十太夫」は一転、重厚な空気を
演出しながら、切腹後7年後の大
名主従の厚い交情を通して、安兵
衛の死後が語られた。満場の拍手
を受けた汗びっしょりの松之丞は
満足そうな表情で深々と頭を下げ
ていた。


松之丞はいよいよ来年2月、正式
に真打ちに昇進、講談界の大名跡
「6代目神田伯山」を36歳で襲名
する。ますますチケットが取りに
くくなりそうだが、東京の寄席だ
けではなく、全国で公演し新たな
ファンを獲得して欲しい。本人が
本音が聴けるから好きというラジ
オにも多く出演してもらいたい。
そして、得意とする連続物を長く
聴きたい。



   【2019・10・27】


 (写真はパンフレットから)

 

憲法の政教分離の原則を忘れて、
テレビ各局は朝から皇室神道に基
づく「賢所大前の儀」など天皇家
の私的行事の映像をたれ流す。憲
法上の国事行事として行う「即位
の礼」との区別もできていない。
見ている側に知らずしらずのうち
に「皇国史観」を刷り込む。秋篠
宮が憲法と宗教行事の関係を危惧
、改めるよう求めたことを考えよ
うともせず、どの局も政府と一体
となった画一報道である。午後に
は安倍晋三首相のかけ声によって
「天皇陛下万歳」が三唱される。
55万人への恩赦を合わせて、戦前
の天皇制国家回帰の「危うい時代
」の足音が一段と近づいてきた。



時を合わせたように、政府は中東
のホルムズ海峡周辺への海上自衛
隊派遣の検討を発表した。情報収
集が目的と言うが、過去に例がな
く根拠法律とされる防衛相設置法
にも明白な条文がない。安倍政権
が「得意技」でもある憲法骨抜き
の振る舞いだ。何より疑問なのは
もしかしたら自衛隊員の血が流れ
るかもしれないという重大な政治
判断が開会中の国会で審議もされ
ず、強行されようとしていること
だ。



即位に合わせて閣議決定された大
規模な恩赦も国会審議がないまま
、政令で施行される。天皇即位を
政治利用した「善政」の演出が狙
いとみられる、「時代錯誤」の批
判が高く、当初法務省内部でも「
合理性がない」と反対する声があ
ったが、官邸が押し切ったとされ
る。犯罪などで罪が決定した者が
明確な基準もなく赦されることは
社会不安につながりかねない。中
でも看過できないのは、選挙違反
などで罪が問われた公職選挙法違
反の被告が大量に含まれることだ


例え罰金刑でもそれが許されれば
、当事者にとってどれだけありが
たいことか。政府がその氏名、量
刑、罪状を明らかにすることもな
く、罪を犯した人物がまた公然と
活動できるようになる。近代民主
主義国家にそぐわないこんな政治
判断は時代錯誤であり、欧米では
廃止や縮小に向かう。安倍政権は
そんな時代の流れに抗して、「悪
者の復権」で支持者拡大を増やす
算段を持っているように映る。


専制国家の支配者が施す恩赦は近
代国家にそぐわない「超法規的措
置」の一つでもある。かつて侵略
国家「満州国」の法体系を作成す
るなどして東条内閣の閣僚となり
、A級戦犯として逮捕された安倍
氏首相の祖父岸信介は東京裁判で
戦争遂行の中枢責任を問われた。
、しかし東条英機が絞首刑になっ
た翌日、なぜか不起訴となり釈放
された。後に岸が米国CIAから
の資金提供を受け、米国の諜報エ
ージェントとなったという現代史
研究家の報告をみると、「岸信介
CIA工作員説」に納得させられ
る部分もある。後に首相に復権し
た祖父岸信介から「超法規措置」
行使のメリットをDNAとしてを
受け継いでいるから、恩赦決定に
躊躇しないのかもしれない。



象徴天皇制を無視して政権が大規
模な皇室賛美の即位関連行事を盛
り上げようとするのは、国民に戦
前の天皇制中心の国家主義的な価
値観を浸透させる政治的願望から
だ。それにメディアが無自覚に加
わっている。無残にも戦地で「天
皇陛下万歳」と叫びながら命を落
とした兵士や家族の無念さを思い
起こすと、安倍首相による「天皇
陛下万歳三唱」の声など聞きたく
ない。


   【2019・10・22】



あまり期待していなかった参院の
質疑は久しぶりに見応えがあった
。舌鋒鋭く安倍晋三首相ら閣僚に
切り込んだ国民民主の森ゆうこ氏
は国家戦略特区ワーキンググルー
プ(WG)の業者選定過程の不審
点をただし、安倍首相が慌てふた
めく場面があった。加計学園の新
獣医学部選定にWGが関わってい
たのに、内閣府が今月、唐突にそ
の一部表現を削除していたことが
判明したのである。昨年の首相説
明と齟齬をきたしたための工作と
みられ、ますます身びいき選考の
疑いが強まってきた。政権は追及
から逃げ切ったつもりだろうが、
火種が消えるどころか、強まって
いる。


首相以下閣僚が野党の質問にたじ
たじする場面は森氏と蓮舫議員の
時が多く、いずれも疑惑の本質を
衝いていた。統一会派を組んだ立
憲と国民民主などが同じ質問をせ
ず、効率よく連動させ、目に見え
る成果として出た。二人が浮かび
上がらせたのは、安倍政権による
「権力の私物化」である。


森氏は今年夏、毎日新聞がスクー
プした原英史WG座長代理の疑惑
を取り上げた。原氏が特区参入希
望の事業提案者に指南したり、省
庁へのヒアリングを隠ぺいしてい
た問題を取り上げ、WGの役割を
ただした。首相は昨年の衆院予算
委で「民間がWGを形成し主導、
選定も行われている」と自身の関
与を否定する答弁をしていた。


しかし、今年の夏になって八田達
夫WG座長名で「WGは審査・選
定はしない」との真逆の内容を官
邸のホームページに掲載したので
ある。首相自身の関与を薄めるた
めの偽装の一つと見られる。


森氏が昨年答弁にあるWG関与の
矛盾を安倍首相にただすと、首相
は「WGではなく分科会や諮問会
議などで決める」と唐突に陳謝し
た。しかし、「頭隠して尻隠さず
」で、森氏に「分科会は原氏もメ
ンバー」と指摘されてしまった。
加計学園選定も事実上安倍首相に
近い原氏が選定に関与していたこ
とが再び浮かび上がった格好だ。
火種は、何かのきっかけで再び燃
え上がる予感がわく。



それを、思わせるのが蓮舫議員が
取り上げた沖縄の基地跡地に関す
る懇談会にお笑いの吉本興業の大
崎洋会長が入っていた疑惑である
。この事業には国が設立したクー
ルジャパン機構から100億円も
が投資され、大きな利権が生じる
。蓮舫議員が「大崎会長がなぜ入
っているのか」と質問すると、首
相は沖縄国際映画祭などの実績を
挙げ、「昨年のG20サミットでも
私が吉本の舞台に上がり交通規制
への協力を呼びかけ、さまざま協
力してもらった」などと答弁した。



国会中継のこの質疑をみて、思わ
ずのけぞって失笑してしまった。
沖縄振興と吉本のお笑いの舞台が
どんな関係があるのか。誰も答え
られないはずだ。大阪の市民もび
っくりだろう。吉本の舞台で首相
が呼びかけたから、協力したわけ
でない。こんな珍答弁をする首相
の頭の中をのぞいてみたくなる。
自分と親しい人物や組織だけに巨
利をもたらす事業に参加させる振
る舞いは、まだ「モリカケ」に懲
りていない驕りの表れだろう。蓮
舫氏の質問は時間切れになってし
まったが、もっと深く掘り下げる
必要がある。



ネット上では安倍首相支持者と見
らネトウヨらから二人の女性議員
を中傷する投稿が多くみられる。
昨日は森氏の質問通告の内容が官
僚を通して、首相支持の大学教授
に流れた。教授はネット放送で森氏

を攻撃、国会でも問題になった。そ
れだけ、「モリカケ」が依然政権
の致命傷になりかねないという証
左であることを示している。


 

               【2019・10・17】

 





戦争が心優しき人々の平穏な生活
をどん底に落とす実相を描きなが
ら、再生への人々の希望を感じさ
せ、ありふれた日常の大切さを感
じさせる。そんな英国映画「ガン
ジー島の読書会の秘密」はミステ
リー仕立てでありながら人間賛歌
をうたう傑作だ。今年の洋画ベス
ト1に挙げたい。そして毎日涙を
流しながら観るテレビ朝日のドラ
マ「すらぎの刻(とき)~道」(
倉本聰脚本、BS朝日で再放送)
に通じる反戦への呼びかけがある
。両作品は、ファシズムの足音が
高まる危うい時代の今だからこそ
、多くの若者に特に観てもらいた
い。


上映期間前からずっと「ガンジー
島の読書会の秘密」という題名が
気になっていたが、そのままにな
っていた。上映が始まり、しばら
く経ってから制作スタッフを確か
めたら、プロデューサーは何とあ
の英印合作の名作「マリーゴール
ド・ホテルで会いましょう」と同
じだった。それで躊躇なく映画館
に足が向いた。


ストーリーの舞台は英国領であり
ながら、戦時中ドイツに占領され
ていたチャネル諸島のカンジー島
。若い女性作家が、戦時中に島で
ずっと島民による読書会が開かれ
ていたのを知って、ルポ記事を書
こうと取材を思い立ち終戦直後、
ロンドンから島に訪れるところか
ら映画が始まる。


ところが、読書会を主宰していた
若い女性の姿はなく、メンバーの
誰もが心を閉ざし、重大な秘密を
かかえているようだった。作家は
一人一人への取材を通じ、ドイツ
軍の占領下で起きた島の悲劇の一
コマ一コマを解き明かしていった


やがて浮かび上がる悲劇の数々と
癒えない心の傷。それに打ちひし
がれる作家。それでも真実を自ら
探し当て、メンバーと深く理解で
きるようになる。そして、再生に
向けて、手を携え合う。エンディ
ングは人間賛歌に包まれ、誰をも
ハートウォーミングにさせる。あ
の「マリーゴールドホテルで会い
ましょう」とその続編と同じよう
な幸せな気分になった。制作陣の
術中にはまったと感じながらも、
それがうれしい。そしてガンジー
島の景色の何と美しいことか。以
前訪れた北海道・礼文島の海岸美
を思い出し、旅情をかりたてられ
た。


一方、テレビドラマ「やすらぎの
刻」は戦中から戦後のかけた山梨
県の山村が舞台。平穏な生活を続
けていた農家の家族が戦争で引き
裂かれ、犠牲になりながらも悲し
みを乗り越えていくストーリーだ
。満蒙開拓団に参加した村民の悲
劇、戦争忌避者の災禍、戦時国家
で起きる人権蹂躙や弾圧などを丹
な念な資料に基いてリアルに描く
。中島みゆきの「離郷の歌」が
バックに流れ出すと、よく涙が止
まらなくなる。戦争を知らない世
代に「戦争はありふれた日常から
しのびよってくる」という真実を
知ってほしい。



今も倉本脚本の最高傑作を毎日観
賞できる喜びを感じる。時々設定
舞台を変えた「やすらぎの郷」の
登場メンバーらが、長く放送業界
で我が物顔に振る舞い続けるビー
トたけしとそのお笑い軍団を見立
てコテンパンにやっつけるシーン
は痛快だった。自分も常々たけし
がニュースを分かったように茶化
すことを腹立たしく思っていた。
倉本氏は別のインタビューで、た
けしのことを「まったく評価しま
せん」と語っていたのを思い出し
た。キー局も地方局もお笑い芸人
を登場させ、安易な情報番組を制
作していることへの倉本氏の痛烈
な抗議が込められていた。そのシ
ーンを思わず手をたたきながらみ
てしまった。テレビ放送の劣化が
総白痴化に拍車をかける。


   【2019・10・12】


(写真は映画のパンフレットから)


米国の政治学者、ローレンス・ブ
リットが今世紀初めに論考した初
期ファシズムの14の兆候の一つに
に「マスメディアのコントロール
」がある。NHKの「かんぽ報道
」にクレームをつけ、日本郵政の
鈴木康雄上級副社長が取材方法に
「まるで暴力団」とどう喝した。
政権幹部に近い人物が政権の威光
を背景に不都合な事実を視聴者に
知らさないように介入したのはま
さに「メディアコントロール」に
相当する。それに屈して謝罪した
NHK会長の行為は番組制作現場
への重大な背信である。もはや「
公共放送」を名乗る資格はなく、
批判をしない宣伝だけの「プロパ
ガンダ放送局」に名前を変えたら
どうか。



今回の介入の不当さが極めて
深いのは、表現の自由を侵害し
、国民の「知る権利」を棄損させ
ているからだ。放送法は経営委が
個別番組に介入するのを禁止して
いる。昨年4月に放送された「ク
ローズアップ現代」はかんぽ生命
保険の「押し売り」や「詐欺まが
い商法」を報道、注意喚起してい
た。後に長門正貢社長が釈明した
ように何らクレームをつけられる
ような内容でなかった。



本来なら、かんぽ保険の販売担当

者に、「どう喝指導」までして不
正がまかり通っていた日本郵政は
組織点検し不正販売を改めるべき
なのに、それを隠蔽し、NHKに
続編の放送中止まで求めていたの
である。その陣頭に立ったのが放
送法を所管する総務省の事務次官
から天下りした鈴木副社長である
。鈴木副社長は菅義偉官房長官が
総務相だった時の時の側近で、そ
の経歴を強調し、続編の放送を延
期する判断をした上田良一NHK
会長に謝意を伝える文書まで送っ
ていた。


事務次官だった鈴木副社長は当然
放送法の内容を知っていたはずだ
。それを無視するかのように経営
英委員会に圧力をかけて会長に放
送中止の指示を出させたのは、N
HKが屈すると分かっていたから
だ。唯々諾々としたがった経営委
メンバーと上田会長は高い公益性
を持つべき経営倫理感を喪失して
いる。


判明分だけでの約18万人にものぼ
る被害者を出した不当販売は「郵
政民営化」の名の下に、職員に過
酷なノルマを与え続けた組織の悲
しい末路である。そして米国の保
険会社に多大な利益を与える国策
の破たんでもある。そんな「国家
的詐欺行為」に等しい経営を謝罪
もせず、取材方法を「まるで暴力
団」と居直っている鈴木副社長は
国会での証人喚問で、経緯をただ
さなければならない。「上級」と
いう肩書をつけさせ次期社長を狙
う驕りが伝わってくる。その行為
は「下級」以下だ。NHK内部で
は安易に「取材が十分でなかった
」と謝罪文を送った上田会長にも
強い批判がわきあがっているとい
う。


NHKでは森友学園をめぐる財務
省の文書改ざんの経緯をスクープ
した記者が記者活動を止めさせら
れ、やがて退職に追い込まれた。
そんな不当人事に関わったのが安
倍政権に近い政治部長出身の報道
局幹部である。安倍政権がモリカ
ケ事件から逃げ切ろうとする今、
政権寄り報道が一段と顕著になっ
ている。


先の日米貿易交渉で日本が得るも
のが何もなっかった内容なのに、
論評を十分せず、「ウィン、ウィ
ンだった」と誇示する安倍首相の
会見をたれ流し続けた。NHKの
政治ニュースは常に懐疑的視線を
投げかけて見なければ、事実がど
うか分からない。そんな中、「ク
ローズアップ現代」にはまだ記者
が現場で格闘している姿が目に浮
かぶ数少ない番組の一つだ。


今回の介入の不当さをもっと視聴
者にアピールするため、安倍首相
の意向に沿う人物ばかりが選ばれ
ている経営委のメンバーの発言を
公表させ、議事録でチエックさせ
る契機にしなければならない。心
あるNHK職員よ、声を上げよう


       【2019・10・7】


薄汚れた「原発マネー」を長きに
わたって貪り続けた20人もの関西
電力経営者ら。その心根の卑しさ
に慄然とする。福井県高浜町の元
助役から判明分だけで3・2億円
もポケットに入れていた会長、社
長らはこともあろうに「一時預か
っていただけ」と開き直った。修
正申告させた金沢国税局は所得税
を追徴した。そんな悪質な事案の
通報を受けているはずの検察当局
は何をしているのか。特別背任、
会社法違反の立件が難しいという
見方もあるが、検察は被害者は電
力料金を支払っている利用者とい
う観点から、まず悪質な所得税違
反容疑で立件し、あらゆる刑事罰
を与えるため迅速に動くべきであ
る。


岩根茂樹社長は記者会見で「私的
に受け取った金を自分の個人口座
に入れた」と認めながらも「儀礼
の範囲内をのぞいて返却した」と
釈明しその詳細を明らかにしなか
った。そんな子供だましの説明が
通らなかったから税務調査を受け
たわけで、あわてて返さざるを得
なかったというのは、後ろめたい
金で、犯罪に問われるのをおそれ
たからというのが素直な見方だろ
う。もらった金に符丁が付いてい
るわけでもなく、ばれたから仕方
なく懐に入れた金を支払っただけ
である。


それにしても、「原発還流マネー
」がこれほど巨額にのぼり、経営
者らを「総汚染」させていた事件
の構図と大胆さに驚かされる。福
島第一原発の事故以来、耐震安全
対策費が重なり、元助役が役員を
していた地元の建設会社は10年足
らずで6倍の30億円に急成長した
という。元々は関電が利用者から
徴収した電力料金から支払われ金
が、まわりり回って経営者らにキ
ックバックされたのである。史上
最悪の原発事故につけ込んで、ふ
くれ上がった事故防止対策費を貪
ったのだ。まさに経営者らのハイ
エナのごとき所業である。


この事件の悪性が高いのは電力料
金と言う公共料金を私服を肥やす
「打ち出の小づち」にしていたこ
とだ。会社犯罪に詳しい専門家は
、会社法違反に該当する可能性を
指摘する。会社法967条には会
社役員と監査役の「収賄罪」が規
定されている。


その条文には「その職務に関連し
、不正の請託をうけて、財産上の
利益を収受し、またはその要求も
しくは約束をしたときは、5年以
下の懲役または500万円以下の
罰金に処する」とある。一見今回
の事件にあてはまりそうだが、元
助役が役員だった関連会社に岩根
社長らが個別に格別の便宜をはか
る「不正の請託」があったかを立
証しなければならない。一方で裏
金をもらった役員らの引継ぎや口
裏合わせの詳細が分かれば、個人
の利得のため会社に損害を与えた
時に適用される特別背任に問われ
てもおかしくない。ただ元助役が
既に死亡しているだけに、口裏合
わせの裏付けは難しそうだ。



しかし、これまで何度も脱税事件
を取材した経験から言えばさらな
る所得税法違反による強制捜査は
可能と思われる。岩根社長らは既
に修正申告に応じているというが
、悪質な所得隠しに適用される重
加算税などの追徴課税を受けてい
れば、単なる申告漏れでなく、明
白な所得税法違反の刑事事件に該
当する。脱税金額が発表分だけな
のかかも疑わしい。金沢国税局は
当然検察当局に課税通報が届いて
いるはずである。経営者倫理を喪
失した関電幹部らが高浜町にとど
まらず、美浜、大飯各町の原発関
連会社からも「還流マネー」を受
け取っていた疑いが出てもおかし
くない。今後検察と税務当局のや
る気次第で例を見ない「原発マネ
ー」をめぐる深い闇の一端を白日
の下にさらすことができるはずだ
。依然、原発再稼働を目論む「ハ
イエナ経営者」には厳罰を与えな
ければならない。



      【2019・10・1】


世界の気候変動に「セクシーに取
り組む」と発言、海外メディアか
ら失笑をかった小泉進次郎環境相
が「中身スカスカ」の本性を次々
さらけし続けている。批判されて
も、釈明するどころか開き直る始
末だ。組閣前、憲法9条について
「建前でしょう」と、安倍晋三首
相の「9条改憲」に露骨に賛意を
示した。そんな最近の言動ぶりは
、自らの打算で態度を豹変させる
人格が垣間見える。きっと自分が
演じる進歩的政治家像が虚像であ
ると自らが暴露しているのに気付
いてないのではないか。


「セクシー発言」は米国ニューヨ
ークでの国連気候行動サミットの
非公開会合後の記者会見で飛び出
した。そばにいたのは、ずっと前
から同じ表現をしていた女性の前
枠組み条約事務局長で、環境相は
発言後媚びるように、にやついた
顔を向けていた。まねて使っただ
けかもしれないが、ロイターなど
が疑問視、「詳細が分からない」
と報じたのは当然だろう。


セクシー発言以上に恥をさらした
のは、同じ会見で海外メディアか
ら脱炭素に聞かれ「減らす」と答
え、「どうして」と突っ込まれる
と長い沈黙の後、「先週大臣にな
ったばかりで、職員と話し合って
いる」と言い訳をしてしまった。
国連のサミットという晴れ舞台に
出るには周到な準備が必要なのに
、自国の政策も理解もせず参加し
たのが丸わかりで、その無知な振
る舞いに開いた口がふさがらない


日本政府は脱炭素どころか、石炭
利用を続ける方針である。各地の
電力会社は石炭火力発電所の新増
設計画を進め、国も支援している
。そんな根幹のエネルギー政策も
変えずに、のこのこと国際舞台に
出てしまった熟慮のなさぶりであ
る。世界的取り組みに背く日本の
環境相が厳しい質問を浴びるのは
事前に予想されたはずだ。言葉に
詰まって長く沈黙してしまい、困
惑の表情を浮かべた環境相に同情
に余地はない。英語のスピーチだ
けで乗り切れると思っていたら、
浅墓としか言いようがない。


この人気政治家が信用できないの
は、失態をみせても謝らないこと
だ。後刻「セクシー発言」の真意
を聞かれ、「説明することはセク
シーでない」と説明を拒絶した。
連日のステーキ店通いに「大量の
飼料が環境に多大な負荷を与える
牛肉を人前で食べてはしゃぐのは
控えるべき」と批判が出ると、「
私が食べることでそういう意識が
重要であることが注目される」と
開き直ってしまった。


一方でスェーデンの環境活動家、
グレタ・トゥーベリさんは国連総
会で居並ぶ世界のリーダー約19
0人を前に、「あなたたちは空虚
な言葉で私の夢を奪った」と各国
の気候変動の取り組みをとがめた
。その後に続けたスピーチは感動
的で世界に感動を与えた。


「私たちはあなたたちの裏切りに
気づき始めて始めている。私たち
を見捨てる道を選ぶなら、絶対に
許さない」


「普段と同じようにやっていたら
解決できるとか、きっと技術が解
決してくれるだとか、よくそんな
ふりができますね」


激烈な調子の言葉はどれも胸に突
き刺さってくる。各紙1面トップ
に掲載された16歳のグレタさんが
トランプ大統領に向けた射ぬくよ
うな鋭い視線を放つ写真に、こち
らにも目が向けられているように
感じ、思わずたじろいで背筋がの
びた。


人気だけが先行し、外遊先で軽口
をたたいた環境相とヨットで大西
洋を4800キロ横断してきた少
女の覚悟の差の何とかけはなれて
いることか。


       【2019・9・26】