文春砲の独走許す新聞の劣化 | 平野幸夫のブログ

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ギリシャ語を語源とする「クロニクル」という
言葉があります。年代記、編年史とも訳されま
す。2014年からの独自の編年記として綴りま
す。


閣僚の辞任が止まらない。菅原一
秀経産相に続き、河井克行法相が
辞任した。いずれも、週刊文春が
スクープ報道した有権者への金品
ばらまきや運動員への過大報酬支
払いなどのスキャンダルが原因だ
。秘書ら身内からの内部告発を思
わす記事だが、以前から両氏の周
辺では様々な疑惑が公然と語られ
ていたという。「文春砲」だけに
なぜスクープが集中するのか。本
来なら選挙や政権取材は新聞メデ
ィアが手厚く記者を配置している
はずだ。不正をキャッチできない
感度の悪さに暗然とする。記者が
政府を監視する番犬ではなく愛玩
犬に堕してしまっている表れでは
ないか。新聞ジャーナリズムの機
能不全は深刻だ。


9月の内閣改造直後から、複数の
閣僚の資質が地元を中心に問題視
されていた。田中和徳復興相は暴
力団稲川会系の関連会社にパーテ
ィ券を購入してもらっていた。国
家公安委員長を兼ねる武田良太防
災相も元暴力団関係者から政治資
金パーティの代金が支払われてい
た。竹本直一IT相も元暴力団幹
部と一緒の写真が広く流布された
。まだほかにも西村康稔経財相は
米国のカジノ事業者の関係者から
政治資金を受けていた。文春は既
にこの男の買春乱交パーティを既
に報じている。


こんな薄汚れた顔ぶればかりで国
政が動いていると思うと、反吐が
出そうになる。欠陥だらけの英語
民間試験に「身の丈に合わせて勝
負を」と発言した萩生田光一文科
相は安倍首相の最側近である。毎
回「任命責任は私にある」との弁
明を繰り返すだけで、何の責任も
とっていない。これだけドミノ辞
任や暴言が続くと、内閣総辞職を
迫られてのおかしくない。


しかし、新聞メディアは政権の腐
敗体質を真正面からただす論評は
皆無だ。社説などで「説明責任を
果たせ」などと書いても、政権中
枢は何の痛痒も感じないはずだ。
新聞には読者の「知る権利」に応
える義務があるが、それに応えて
いない。けさの朝日新聞川柳欄に
こんな句が載っていた。

「文春砲だけが頼りの知る権利」

     (広島県 久保哲)


今こそ新聞にしかできない調査報
道を駆使する時だ。今年の新聞協
会賞を受賞した「関電の原発還流
マネー」のスクープを放った共同
通信は絶賛に値するが、政権を根
底から揺さぶるかもしれないこの
特報に続く記事が他社を含めてま
だ出ていない。全国の原発再稼働
を左右するという視点が希薄であ
る。それを象徴するように気迫に
欠ける続報を朝日新聞が先日日掲
載していた。


「関電の第三者委、真相迫れるか
」という見出しにあ然としてしま
った。第三者委の直近の動きや顔
ぶれを追ってはいたが「名ばかり
」の第三者委が核心に迫るはずは
ない。「真相に迫る」役割をジャ
ーナリズムが託されているいう自
覚もない。過去の企業犯罪で大半
の第三者委が果たしたのは、先送
りと隠蔽である。関電の場合、但
木敬一委員長は元検事総長の肩書
で大和証券グループに天下りした
経歴もあり、お飾りにすぎないの
は明白だ。国のエネルギー政策の
根幹に関わる疑惑が身内の調査だ
けで解明できるはずもない。


還流マネーから安倍首相に近い稲
田朋美元防衛相や世耕弘成前経産
相に流れていたことも判明。新聞
の調査報道が衝くべき核心は原発
マネー全体の流れだ。腐敗した閣
僚の首さえ取れない新聞メディア
にそれができるとは思えないが、
せめて巨悪を追う気概や意地を捨
てず取材してほしい。


             【2019・11・1】