平野幸夫のブログ -24ページ目

平野幸夫のブログ

ギリシャ語を語源とする「クロニクル」という
言葉があります。年代記、編年史とも訳されま
す。2014年からの独自の編年記として綴りま
す。


あまりに唐突で看過できない発言
である。福島第一原発の汚染水処
理について「科学的根拠を示して
海洋放出すべきだ」と述べた大阪
市の松井一郎市長(日本維新の会
代表)の発言である。その科学的
根拠が何を指すのかも示さず、大
阪湾での処理水受け入れを示唆し
た。処理水にはトリチウムが含ま
れ、その毒性も未解明のままで、
国内外から強い反発が出たのは当
然だ。瀬戸内沿岸で生まれ、今も
隣県に住む身であり、生まれ育っ
た海域には格別の愛着がある。知
性に欠けた愚かな政治判断で故郷
の海まで汚されてしまいかねない
。自ら体を張ってでも蛮行を阻止
したくなる強い衝動がわく。


思い出すのは、福島の事故直後か
ら毎日放送ラジオ番組「たねまき
ジャーナル」で解説してもらった
元京都大原子炉実験所助教の小出
裕章さんのトリチウムについての
説明である。


「(トリチウムは)水素ですので
、一度環境に放出してしまうと、
回収の方法すらないのです。なぜ
なら水素は水になっています。ど
んなにきれいにしても、水そのも
のですから取り除くことができな
いのです」


「人間というのは水がないと、生
きられませんので、必ず体に取り
込んでしまいます。細胞の中にも
どこにも入ってきますし、有機物
に化合すると、DNAの一部にな
ってしまうというようなものです
。ですから放射線の毒性だけでは
ない、別の毒性もあるだろうと考
えられています」


(いずれも同氏著『騙されたあな
たにも責任がある 脱原発の真実
』から引用)


今こそ、毒性が未解明な物質が知
らぬ間に体に入ってくるかもしれ
ないという想像力を多くの人が駆
り立てる時だ。韓国政府の報道官
が福島の汚染水について「世界中
に恐怖や不安を増大させている。
海洋放出するなら、日本の国内問
題だけでない。世界全体の海洋環
境に影響を与えかねない深刻な国
際問題だ」という非難した。


政府の意向をくんだ松井市長発言
に菅義偉官房長官は韓国の主張に
「事実関係や科学的根拠にもとづ
かず、いわれのない風評被害を及
ぼしかねない」と反論した。科学
的根拠に欠けるのはどちらか自問
したらどうか。安倍政権が対立を
あおる相手にも非難する絶好の口
実を与えてしまった松井発言は外
交失態でもあろう。


明解な根拠もなく「風評被害」と
言い切る方が理性を欠く。深刻な
原子力事故災害を単なる願望で片
付けてはならない。つらくても真
摯に実体に向かい合い最善の道を
探る姿勢こそ重要なのである。


福島の漁業関係者も前環境相の海
洋放出発言に怒りを募らせた。「
福島で放出できない汚染水をなぜ
大阪に放出しなければならないの
か」。大阪市政記者らはそんなス
トレートな疑問を松井市長にぶつ
け続けなければならない。松井市
長は「風評被害を抑え込むのが政
治家だ」と居直っているという。
大阪府漁連が緊急抗議文を出し、
大阪湾放出の撤回を求めたのは当
然だ。危機意識を持つ多くの府民
、市民に協力を求め、反対運動を
展開してもらいたい。瀬戸内沿岸
の漁業関係者からも広く支援の輪
が寄せられるはずだ。


小出さんがその著書の最後で、弱
い立場の人が虐げられ続ける原発
事故への言葉が胸に迫る。


「私たち一人ひとりがどう立ち向
かうかという、それだけのことで
しかありません」


   【2019・9・21】




まだ1回分残った青春18切符を利
用して神戸から福井県の三方湖
に出かけた。近所の顔見知りから
「バイク仲間と食べたウナギが最
高の味だった」と聞いたのがきっ
かけだった。JR湖西線から乗り
換えた小浜線沿いの夏から秋への
景色は棚田が黄金色に彩られてい
た。期待していた鰻重の味も焼き
加減が絶妙で、うまみが口の中に
溶け込んできた。ラムサール条約
の重要湿地登録の三方湖では、バ
ードウオッチングや淡水魚観察も
楽しめ、充実した若狭紀行になっ
た。






朝10時、芦屋で乗り換えたJR敦
賀行の新快速電車は9月に入った
せいなのか、思ったよりすいてい
た。窓際に座り、未読の松本清張
の文庫本「溺れ谷」を読みだすと
、約半世紀以上の作品と思えない
ほど今日性があり、人間の欲望と
政治の腐敗を描いたストーリーに
引き込まれていた。京都を過ぎ、
ふと気が付くと、琵琶湖沿いの近
江舞子で棚田が比良山系のふもと
まで黄金色に波打ち、その豊穣な
景色にしばらく見入った。






2時間で新幹線駅建設中の敦賀駅
に到着、小浜線の普通電車に乗り
換えた。単線の鉄路を走ると、青
い日本海の海が見えてきた。降り
た三方駅は、予想に反してスタイ
リシュな駅舎だった。さっそく近
くの鰻料理店「魚三」に向かった
。周囲は「ウナギ街道」と呼ばれ
るほど、鰻料理専門店が立ち並ぶ
。事前に味がよく良心的な値段と
聞いていた「魚三」は期待以上の
味で、少し贅沢な気分にさせてく
れた。どちらかと言うと、裂いて
蒸す関東風が好みだが、こちらは
関西風の焼き方で皮が香ばしく、
しかもふっくらと仕上っていた。
たれも甘くも辛くもなく、うまみ
がご飯に溶け込んで最高の味だっ
た。



あまりのおいしさに「二代目」と
いう主人に礼を言い、店を出ると
、外は35度を超える炎天で、その
まま帰りたくなった。それでも気
を取り直し湖に向かって歩き始め
た。昼のビールが効いてきたのか
汗が止まらない。全身がびっしょ
りになりながら歩く。途中湖畔へ
の道を尋ねた別の鰻料理店前で、
出入りの女性が見かねたのか、軽
乗用車に乗せてくれた。「地獄に
仏です」と感謝しながら「神戸か
らです」と言うと、自分が住んで
いる近くに友人がいるとなどと気
さくに話してくれた。すぐに三方
湖に面した「福井県自然観察棟」
に着いた。親切が有り難かった。




冷房が効いた室内には望遠鏡が並
び、親子連れがバードウォッチン
グに夢中の様子だった。大きな水
槽には湖に生息する銀ブナ、カワ
ムツが泳いでいた。ウナギもじっ
とこちらをにらみつける。思わず
「仲間を食したのを知っているの
か」と一瞬後ろめたい気分になっ
った。でも「食べたのは養殖、自
然鰻は高価で手が出なかったよ」
と心の中でつぶやく。その後、望
遠鏡で湖面を見ると、川草の間に
合鴨や黒いカワウが心地良さそう
に優雅に泳いでいた。






自然観察棟の里山里海相談員の女
性から「また冬にも来てください
」と案内された。冬は渡り鳥の数
が圧倒的に多い。絶滅危惧種のオ
オワシやオジロワシの飛び立つ雪
景色を見たくなった。







帰りの車窓は、夕暮れの残照が

射し込み、読み残した本の活字を

追った。そしてまだ7時にならない
うちに、神戸に帰着。リフレッシ
ュ気分になりながら、今回行けな
かった残り水月、菅、久々、日向
の4湖に厳冬の季節に訪れたい気
持ちが募った。その時は若狭出身
の作家である水上勉のミステリー
を持って出かけたい。


       【2019・9・16】



(写真は自然観察棟から見た三方湖

、琵琶湖沿いの棚田、小浜線の電車

、「魚三」と鰻重、自然観察棟、水槽

のウナギ、ギンフナ、合鴨、カワウの

順)

 




内閣改造前夜に政権中枢から五月
雨のようにリークされた組閣名簿
。それをはしゃぐように数分ごと
に速報するテレビ映像。そこに総
括や批判は一切なく、ジャーナリ
ズムはもう死んだも同然だった。
その顔ぶれの中で、何より驚いた
のは加計学園新獣医学部新設に暗
躍した萩生田光一氏がこともあろ
うに、文科相に名を連ねていたこ
とだ。テレビ各局の報道番組に介
入した中心人物であり、総務相と
して再入閣する高市早苗氏と共に
、政府寄りにする放送法の改正な
ど一段の言論弾圧が危惧される。
人気だけが先行し「政権ペット化
」した小泉進次郎氏の入閣も含め
て、虚飾と「モリカケ隠し」の邪
悪な意図が読み取れ暗然とする。



疑惑が晴れない加計学園の獣医

学部新設に萩生田氏は深く関わ

った。内閣府と文科省の間に立ち

元政務官として自ら「新設は総理

の意向」と書いた文書が文科省職
員の内部告発によって明らかにさ
れ国会で追及された。当初、加計
孝太郎同学園理事長を「よく知ら
ない」と親密ぶりを否定していた
。ところが、落選中、加計学園系
の千葉科学大学の客員教授として
報酬をもらったり、安倍晋三首相
の河口湖畔の別荘でのバーベキュ
ーパーティで、首相を交え加計氏
と親密そうにビールを飲みながら
談笑する姿が残っており、言い逃
れできなくなってしまった。


一昨年秋の総選挙で勝利し、みそ
ぎは終わったとしてまた安倍側近
として表舞台に復帰、今春にダブ
ル選挙の観測球をあげるなど、自
省なき振る舞いが目立っていた。
その人物を、文科相に起用するの
は、依然残る同省内部の火種を消
すためだろう。内部告発に関わっ
た同省職員は転任を強いられ、今
も萩生田氏に強く反感を抱く職員
がいること聞かされる。今回の萩
生田氏起用は、当面逃げ切れたこ
との論功行賞と、首相がまだ徹底
的な火消しに神経質になっている
ことを示している。


政権から中傷され続けた前川喜平
元文科事務次官はさっそく「ひど
いことになるだろう」と危惧し、
萩生田氏の議員会館の部屋には大
きな教育勅語の掛け軸がかかって
いたことを明した。教室に極右思
想教育を持ち込むため文科行政が
ねじ曲げられる危険性が高まって
いる。


ほかは国防軍創設をアピールする
衛藤晟一特命相、TPPを体を張
って阻止すると言いながら豹変し
た江藤拓農水相ら世襲議員が目立
ち、極右思想の日本会議メンバー
も少なくない。反対意見に耳を傾
けない「ミニ・アベシンゾウ」型
の取り巻き閣僚の多さに、隣国は
ますます警戒感を募らせるはずだ


メディアが中身もないのにもては
やす小泉進次郎氏の入閣に、今後
は離れていく人は少なくなさそう
だ。背信と利権漁りに人望なし。
総裁選で石破茂氏寄りと見られ、
少しは政権批判をしていたのに、
最後は旗色を明らかにしなかった
。石破氏が負けると、最近は菅義
偉官房長官にすり寄って官邸で異
例の結婚報告、話題をふりまくぐ
らいしかなかった。安倍首相から
徹底的に干された石破氏に比べて
、信念さえ曲げる最近の姿は好対
照だ。



メディアはいい加減、進次郎氏を
もてはやすのを止めるべきだ。御
用コメンテーターらは「環境相に
なって、プラステックゴミをなく
すため国際的な舞台での活躍が期
待される」(田崎史郎氏)などと
期待するが、これまで中身がなく
空虚な言葉を並べるだけの進次郎
氏がパフォーマンスばかりを演出
するのは目に見えている。進次郎
氏がテレビに映ると、テレビ番組
制作の無思考ぶりにへきへきする
。すぐにチャンネルを変えること
にしているが、今後ますますその
頻度が多くなりそうだ。


         【2019・9・11】


(写真は以前にも使った安倍晋三

首相の河口湖畔の別荘で、加計

孝太郎氏をはさんで談笑する萩

生田氏の姿=中央。本人が投稿

したこの写真が交友を示す動かぬ

証拠になった)







連日テレビの番組欄で朝から夜ま
で並ぶ「玉ネギ男」という語句。
韓国の法相候補の複数のスキャン
ダルをどの局もパネルを使って、
競うように過剰報道を繰り返す。
まだ刑事被告人にもなっていない
人物を悪しざまに人権無視し、視
聴者に隣国への優越感を増幅させ
る。安倍政権の支持率が6ポイン
トもアップ(日経世論調査)し、
ほくそ笑む首相の姿が目に浮かぶ
。「韓国なんて要らない」と大見
出しで特集した週刊誌は、横溢す
る韓国蔑視の表れであろう。政権
のプロパガンダ化したメディアは
もうはるかに危険水位を超え、政
治権力にひれ伏し続ける。


「外に敵を作って熱狂をかり立て
、内なる矛盾を隠す」。戦前、対
中戦争になったキーワードがある
。「暴支膺懲」。近衛文麿首相が
演説で使ったこの言葉は「暴虐な
支邦を懲らしめる」という意味で
当時支邦とさげすんだ中国への侵
略戦争を拡大するきっかけになっ
た。「支」を「韓」に置き換えれ
ば時代が逆戻りしたような気にさ
せられる。自ら植民地化し収奪し
た統治時代を忘れたかのように、
経済で打撃を与える愚策によって
双方の反感が高まり続ける。終わ
りも見えない。


対韓制裁がブーメランのように日
本の経済に打撃を与え始めた。韓
国からの航空便は半数以下に減便
、韓国収入の激減が地方経済に多
大な影響を落とし始めた。しかし
、それについて政府の地域経済へ
の救済策はなく、知らぬ顔を決め
込んでいる。


そんなメディアが連日伝える「玉
ネギ男」のスキャンダルは伝えら
れる通りだとしても、日本人の生
活に何の影響もない。文在寅政権
の不人気ぶりに視聴者が隣国を見
下し「それみろ」と快哉を叫ぶ気
分を高める意図しかうかがえない
。その背後には安倍政権の専制政
治を隠す目論見が透けて見える。


メディアが今伝えるべきは、安倍
政権が覆い隠す不祥事ではないか
。最近だけでも、外国人労働者在
留資格認定をめぐる口利き疑惑で
利得を受けた上野宏史前厚生労働
政務官の口利き疑惑、遅らせた公
的年金の財政検証、内閣法制局幹
部による製薬会社への法案漏えい
……など枚挙にいとまがないほど
だ。それなのに、政府与党は約3
カ月間も開かせず、閉会中審査に
も応じない。不都合な事実を国民
に目隠しするのは憲法軽視に他な
らない。


与党は首相の外交日程が詰まって
いることを理由に挙げるが、国権
の最高機関をないがしろにする釈
明で正当な説明になっていない。
まるで国会審議から逃げるように
映る安倍首相の外交成果に見るべ
きことがうかがえない。隣国との
緊張関係を高め、対米関係もトラ
ンプ大統領の下僕のような振る舞
いばかりで、国益を損ね続ける。
言い値で買わされるイージスアシ
ョアやステルス戦闘機などによっ
て来年度の概算要求で防衛費は過
去最大の5・3兆円に膨れ上がっ
た。24回にもなった日ロ首脳交渉
もプーチン大統領から得た成果は
なく、4島返還どころか2島まで
も怪しくなっている。


それでもまだ北方領土の一部が戻
るように報じ続ける随行記者団の
報じる記事。まるで戦争中の大本
営発表のように虚偽だらけで罪深
く、レポートする特派員の顔から
はその自覚もうかがえず、聞く方
が恥かしくなる。


彼らや「嫌韓報道」にうつつを抜
かす記者らに改めてイギリスの作
家、バーナード・ショーの言葉を
投げかけたい。ジャーナリストが
国籍という属性にとらわれず人間
の原点に戻って考え、観念のうえ
で国籍の離脱を実現させる警句だ


「人類から愛国心を叩きださなけ
れば、けっして平穏な世界は訪れ
ない」


    【2019・9・6】


「安倍一強政治」がついに閣僚の
演説への抗議も許さなくなった。
与野党が伯仲した先日の埼玉知事
選で、応援演説をした柴山昌彦文
科相に「英語の民間試験撤廃」と
声を上げた大学生が埼玉県警の警
官に排除された。札幌、滋賀に続
く政治への抗議する人の相次ぐ拘
束はまるで治安維持法が復活した
ような気にさせる。目をアジアに
転じれば、香港では若者が体を張
って中国の専制政治を阻止しよう
としたり、韓国では文在寅大統領
側近のスキャンダルに検察の強制
捜査が入った。マレーシアでは消
費税にあたる物品サービス税を1
年前に廃止、経済が急回復した。
異論に耳をかたむけない専制政
治が加速する日本の政治が見習い
たいアジアの知恵と勇気であろう


政治を紙つぶてのように諧謔する
川柳はよく的を射る。


モリカケを思えば韓国はまともな

(清水方子作、朝日新聞30日川柳欄)


「森友、加計」捜査を終結させて
しまい、財務省文書改ざんを指揮
した幹部を英国公使に異例栄転さ
せてしまう安倍政権に比べて、少
なくとも検察が忖度せずまともに
機能している。韓国の方がましと
いう句意に同感する。


柴山文科相に抗議して声を上げ、
拘束された男子大学生は、民間試
験から離脱表明した企業が相次ぎ
、入試が混乱することへの危機感
から署名運動までしていた。本来
なら真摯に聞いて、声を生かすの
が政治のはずだ。有為な青年を打
ちのめす。この国が知らず知らず
のうちにとんでもない方向に走り
だしている表れだ。抗議の声を封
じる全国的な警察権力行使は「官
邸ポリス」と呼ばれる警察官僚か
ら発せられていると見るべきだろ
う。一連の動きはそれに符合し、
基本的人権さえ踏みにじる権力行
使を政権に韓国を非難する資格な
どないはずだ。


何度も現地で取材した経験ある立
場からも香港の勇気ある若者らに
も、賞賛を送りたい。民主、独立
の精神がいかに大事かを教えてく
れる。今は政治、経済の中心であ
る香港島が抗議の中心になってい
るが、対岸の九龍半島全体の居住
区域までに広がれば、国境近くの
深圳から人民解放軍が鎮圧に動き
出す恐れもある。その時の「香港
動乱」で多くの若者の血が流れる
事態が心配されてならない。日本
の若者にぜひ学んでほしいのはど
んな時も「権力行使を懐疑的に見
る」視点である。



さて、月が替わりいよいよ消費増
税が迫ってきた。既定路線のよう
に受け取られているが、このまま
導入されれば、生活が大打撃を受
けるのは必至だ。今一度、反対の
声を強めるときだろう。そんな時
に、注目すべき動きがあった。消
費税廃止を訴える「れいわ」の山
本太郎代表と「増税凍結」を求め
る立憲民主の若手議員らが先月末
、マレーシアを一緒に訪問した。
劇的な再登場をしたマハテール首
相はかつて「ルックイースト」と
言って日本の経済成長をモデルに
同国の繁栄さえた人物だが、昨年
思い切って6%からゼロにして消
費税を廃止、今年の経済成長を4
・3~4・8%と見込むまで復活
させた。個人消費と民間投資が廃
止によって旺盛になった。山本代
表らはぜひ視察の成果を生かして
もらいたい。


カナダも減税に踏み切り、同様の
道を歩み始めた。英国では既に10
年前に減税し、景気を回復させた
。いわば、マレーシアの英断は改
めて世界的な評価を受け始めた。
今、この国の「内なる矛盾を隠す
ための外敵作り」の「嫌韓政権」
にだまされないためにも、目をア
ジアに広く転じて、危機を脱する
ための知恵と不正に敢然と立ち向
かう勇気を見習いたい。


    【2019・9・1】


保守の権化のような人から上がっ
た怒りに思わず手をたたいた。「
山下ふ頭をバクチ場にはしない」
。こう言ってカジノ誘致に踏み切
った林文子横浜市長に反対する姿
勢を明確にした藤木幸夫横浜港運
協会会長。唐突な林市長の声明の
背後にある策謀に敢然と体を張っ
て立ち向かい、カジノが人間性を
破壊する怖さを強調した姿勢が多
くの共感を呼んでいる。


国の推進施策に、最近これほどは
っきり異議をを唱えた経済人を知
らない。カジノの本質を見事に言
いあてた23日の会見だった。藤木
会長は林市長の豹変ぶりに「顔に
泥を塗られた」と強い調子で非難
。「泥を塗らせた人がいるのは、
はっきり分かっている」とも述べ
記者らを驚かせた。林市長を背後
で操るのは菅義偉官房長官かと問
われた藤木会長は否定もせず「そ
う思うのはあんたの勝手だが、菅
さんは安倍さんの腰巾着。安倍さ
んは米国の腰巾着。安倍さんも菅
さんもトランプさんの鼻息をうか
がってさびしいな」。年配の保守
支持者らしい言い回しで、本質を
見抜いて味わい深い。


その言葉通り、トランプ大統領の
ビジネス仲間である米カジノ最大
手の「ラスベガス・サンズ」がす
ぐに横浜進出を表明、合わせて大
阪撤退を明らかにした。これまで
日本のメディアではほとんど紹介
されなかったが、度重なる日米首
脳会談でトランプ大統領が「ラス
ベガス・サンズ」などの大手の日
本進出を推進してくれるよう安倍
首相に直接依頼していたのである
。米国メディアもこのやりとりを
記事にしており、それを踏まえて
の藤木会長の発言である。カジノ
推進は米国の言ううがままに従い
、政権安泰を保証してもらうため
の「安倍案件」なのである。藤木
会長は二階俊博自民党幹事長と

親しい関係にあり、表裏を見抜か

れているだけに安倍、菅両氏は

きっと苦虫をかみつぶしている

はずだ。


今回、また林市長の「操り人形ぶ
り」が露呈してしまった。林文子
の政治家や実業家としての資質を
ずっと疑問に感じてきた。BMW
東京代表、日産のディーラー社長
からダイエー会長として再建を任
されたが、これまでほとんど実績
も示せず、結局ダイエーをも消滅
させてしまった。それなのに、ぬ
けぬけと横浜市長に担がれ、まん
まと当選してしまった。3選を目
指した前回市長選で「カジノは白
紙」と言った時から、「怪しい」
とにらんでいたが、その通りにな
った。この時、今は立憲民主党の
山尾志桜里議員が林市長を支持し
、野党候補支持者から「裏切りだ
」と批判された。山尾議員はその
時の不明を大いに恥じるべきであ
ろう。


カジノを統合型リゾート(IR)
と言い変えるが所詮は「バクチ場
」である。藤木会長は仮に強制執
行されても、黒沢明監督の「蜘蛛
巣城」のように寝泊り、体を張っ
た抗戦すると言い切った。そして
カジノは人を「秒殺」「瞬殺」し
てしまうと、その怖さを自分の言
葉で警告した。どんな学者や政治
家の言葉より、ずしんと心に響く。


最も惨めなのは、「ラスベガス・
サンズ」に逃げられた大阪だろう
。吉村洋文大阪府知事は菅官房長
官との関係を誇示し「大阪がトッ
プランナー」と胸を張っていた。
「大阪万博」の実体が「カジノ万
博」であることに改めて目が向け
られる。米国の進出カジノに負担
を目論んでいた地下鉄延伸の費用
の捻出などが政治責任として浮上
しそうである。大阪の住民には「
94%がカジノに反対」と意見集約
した横浜市民のような反対姿勢は
期待できないのか。な意見を期待
できないのか。そして大阪の経済
人から藤木会長のように地元の人
の生活を思う発言が出ないのが、
さびしい限りだ。大阪の在野精神
はどこに行った。


    【2019・8・26】


テレビは昼夜「あおり運転男」の
異常行動ばかりを流し、他の大事
なニュースを報じない。一方で隣
国韓国に対する輸出規制が世論調
査で6割もの支持を得ている。「
外に敵を作り反感をあおって、内
なる矛盾を隠す」。古今東西、行
き詰まった為政者が使った常套手
段が繰り返される。まさに現政権
の目論見通りだろう。しかし「嫌
韓」がブーメランのように地域経
済が深刻な打撃としてはね返って
いる。ナショナリズムをあおる政
権がひたすら国益を損ない続け、
地域を疲弊させている現状を直視
しなければならない。



格安航空路線だけでなく、ついに
大手の大韓航空が日本路線の大幅
縮小に踏み切った。既に福岡、佐
賀、長崎など九州を中心に韓国か
らの観光客が激減、旅館・ホテル
業界が前年より3割も収入が減っ
たという窮状が伝えられた。この
動きは全国に波及、さらに地域経
済の衰退に拍車をかけそうである


韓国の世論調査で「今年は日本に
行かない」と答えた回答が81・8
%にのぼったという。昨年、来日
した韓国人旅行客は史上最多の7
50万人に達したが、このまま激
減し続けるのは必至だ。なぜこれ
ほどまでに一気に「反日感情」が
高まってしまったのか。徴用工と
従軍慰安婦という恥ずべき歴史の
記憶に真摯に向かい合わなかった
ことと、韓国政府がそれを口実に
過度に政治利用したせいである。
両政府によって双方のナショナリ
ズムがあおられ、お互いが傷つい
ている愚かな構図であるを認識し
ておきたい。


これまで何度か取材で韓国を訪れ
たことがあるが、その中で忘れら
れない光景がある。韓国・慶尚南
道の晋州(チンジュ)市の公園を
歩いていた時、近くの川、南江沿
いの小さな祠に線香を持った女性
らの列が続いていた。聞けば、あ
る16世紀末に文禄・慶長の役で
その地を侵略してきた加藤清正の
配下の武将毛谷村六助と抱き合い
心中をした妓生・論介(ノンゲ)
の功績を讃える祠だった。官吏だ
った夫の戦死後、官妓になりすま
した論介は宴席から酔った六助を
誘い出し、川のほとりで六助に抱
きついて一緒に身を投げたという
。川岸にはその忠節を讃える「義
巌」と呼ぶ岩場まで残る。論介は
今も英雄として讃えられ、祠に供
花を絶えることがない。


この悲話は侵略された側の国の民
が数百年たってもその恥辱を忘れ
ないないことを教える。まして、
日本に併合され、創氏改名で名前
まで奪われた苦難と恥辱をわずか
100年余で忘れるはずもない。
朝鮮民族の命と富を収奪した罪状
に真摯に向き合わない安倍晋三首
相がその歴史を忘れたかのように
新たに繰り出した輸出規制など認
めないのは当然だろう。経産省は
輸出規制を安全保障上必要と強調
するが、過去日本製の部品材料が
どう北朝鮮に流出して軍事転用さ
れたのか一切説明できていない。
これに韓国国民が納得できる方が
おかしい。


韓国政府も国際条約締結を無視す
る振る舞いであるのも確かだ。ナ
ショナリズムがなぜ高まるのか。
気鋭の国際政治学者、遠藤乾・北
海道大教授はこう分析する。


一つには自らの存在に対する深い
不安がある。これは支えのなくな
った近代人に特有の情動である。
……生活に余裕がなく理性の声を
聞く能力に乏しい貧民や快楽に溺
れる富者と異なり、寛容や友情と
いった美徳を発揮し、知恵や能力
を磨く最適なポジションである中
間層が希薄になり分断されれば、
粗野な情動、例えば排外ナショナ
リズムに直結する可能性が高い。
(毎日新聞オピニオン欄)


グローバル化を賛美する小泉、安
倍政権によって格差社会が進行、
崩壊してしまったこの国の中間層
。長い目で見れば「他者を憎悪す
る風潮」を減じるためにも、中間
層の再構築が政治の最大テーマ

かもしれない。


    【2019・8・21】

 

予想通りの政権へのすり寄りだ。
首相官邸で公私混同の結婚報告を
した小泉進次郎衆院議員があから
さまに改憲を口にし始めた。月刊
文春の対談で戦力保持を禁じた憲
法9条2項を「こんなの建前だし
、国際社会でも通用しない」と批
判、「改憲すべき」とアピールし
た。自分が支持し「安倍改憲」に
懐疑的な石破茂元自民党幹事長に
さえ背を向ける豹変ぶりだ。確固
とした政治信条がなくその場限り
の巧言を駆使するだけの政治家、
と早くからその本性を見抜いてい
ていたタレント、マツコ・デラッ
クスの的確な人物評にも改めてう
なずく。


7年前、ある放送で「(進次郎氏
を)大っ嫌いです。血へど吐くほ
ど嫌いです」と発言したマツコは
その理由を聞かれ、「何をしてく
れたのよこのガキが。今の時節柄
みたいのをちゃんとリサーチして
てさ、何をきかれたらこう答える
のがちゃんとできているのよ。そ
れだけの男よ。気持ち悪い、だま
されたらだめよ」と言い放ってい
た。



言葉は上品ではないが、何の政治
実績もない世襲議員をもてはやす
メディアの風潮に乗らず、進次郎
氏の本性を分かりやすく見事に言
い当てていた。常々、マイノリテ
ィーゆえ見える世の中の異様さを
忌憚なく指摘するのに賛同するこ
とが多い。その後、マツコの言葉
通り、進次郎氏は何の実績もあげ
ていない。昨日は、靖国神社に参

拝した後、メディアから逃げるよう

に立ち去った。


今回の官邸での結婚報告に批判が
出ると「あれは記者会見ではない
」と釈明。少しは負い目があるの
か「横須賀は会見だった」と意味
の分からぬ説明をした。つくづく
浅薄な人物だ。横須賀のぶら下が
りで、目立つ赤い服にに着替えた
滝川クリステルと並んだ姿に、マ
ツコなら「何をお色直ししてんの
よ」と毒舌を吐いたかもしれない


進次郎氏はそれでも、メディアの
「入閣待望論」に気を良くしてか
、次々と先輩政治家と対談、「若
手のホープ」を演出する。よく吟
味すると、危うくて、見識を疑う
ことばかりだ。憲法9条を「あん
なの建前」と侮蔑する姿勢こそが
憲法遵守義務のある国会議員の適
格性を根本から疑わさせる。9条
があったからこそ、米国からの朝
鮮戦争出兵やベトナム派兵を断る
ことができたその歴史的評価もで
きていない。それでいて自身で憲
法をどう変えたいのか道筋を示し
たこともない。今はただ、自身の
出世のため9条を変える「安倍改
憲」に乗るようにしか見えない。


一昨日の毎日新聞の谷垣禎一前総
裁との対談記事で進次郎氏は「れ
いわ」「N国」などの新勢力につ
いて「ああ、自分たちが聞けてい
ない声がまだあるなあ」と分断の
芽を感じたと述べていた。「自民
党の長期政権の間にコミュニケー
ションができていなかった人たち
がいる。その声を政治につなげて
いけるだろうか」と自問していた



一見、もっともらしい発言だが、
「声を聞く」と上から目線から脱
することもなく、長きにわたる自
民党政治そのものが強者の論理で
深刻な分断をもたらし、自身もそ
の大きな責任を負っている自覚が
ない。いつのまにか先輩議員らの
せいにして、自分の潔白性を強調
するばかりである。これに比べ、
谷垣氏は「れいわは論点を整理し
た、。一つは消費税廃止。大きな
政府を目指して所得を再分配する
んだと」と真正面から新たな動き
を具体的な問題提起と受け止めて
いた。



適格性も論じることもなく軽薄に
復興大臣、官房副長官などと進次
郎氏の入閣観測記事を報じ続ける
メディアは、まんまと進次郎氏を
「ペット扱い」して人気浮揚をは
かる政権に見事にコントロールさ
れているように映る。マツコの言
葉をもう一度口にしたくなる。



「だまされちゃだめよ。みんな」


       【2019・8・16】

 

異様としか言いようがない小泉進
次郎・衆院議員の結婚報告である
。なぜ、政治権力行使の中枢であ
る首相官邸でなければならなかっ
たのか。冒頭「私事で恐縮ですが
……」と本人が釈明しなければな
らないほど、場違いだったぶら下

り会見は一言も政治的メッセージ
がなかった。人気だけが先行、政
治的実績がない政治家の私事を、
まるで国家的慶事のように伝える
テレビメディアの劣化ぶりに改め
て愕然とさせられる。


空疎な「進次郎人気」を見せられ
るたびに、いつも戦前のドイツで
ナチスから迫害を受けた著名な劇
作家、ベルトルト・ブレヒトの言葉

を思い出す。


「英雄のいない時代は不幸だが、
英雄を必要とする時代はもっと不
幸だ」


かつてヒトラー登場時、民衆が熱
狂的に支持し、やがて国が破滅し
た扇情政治の実相を言いあてた。
どの時代も人気政治家を一歩引い
て見なければならないと、警戒心
を高めさせてくれる言葉である。


確かに老練な既存政治家の中で、
進次郎氏が明解に自分の言葉を発
し、異彩を放つ。しかし、注意深
く耳を傾けると、表面的な「つか
みの言葉」ばかりが目立ち、実際
にどう政治を変えるのか、具体的
に伝わるものがない。本人が尊敬
するという父の純一郎氏による「
ワンフレーズ・ポリティックス」
の言葉通り、声高に「郵政民営化
」だけをあおって首相の座に就い
た手法をまねているようにも映る


「安倍一強政治」の中、党内から
進次郎氏が局面を変えてくれると
期待され、本人も「改革」や「転
換」をよく口にする。しかし、そ
のほとんどが言葉だけで終わって
いることを見逃すわけにはいかな
い。先の自民党総裁選では石破茂
元幹事長側につくと見られていた
が、最終局面まで旗色を明らかに
せず、期待外れに終わった。この
時「腰砕け進次郎」という罵声ま
で聞こえてきた。


復興政務官や、現在の党厚生部会
長としても、目に見える実績は皆
無だ。今年に入っても「統計不正
」や「年金2000万円不足」で
も批判が高まる政権をかばうだけ
で、党の部会長として厳しい注文
をつけることなかった。参院選で
は「人寄せ進次郎」の異名が付け
られたが、接戦の新潟や東北の選
挙区で与党候補の応援演説に駆け
まわったが、結局与党は惨敗した


その演説もよく聞くと、地元の方
言を使った主婦や高齢者への呼び
かけばかりで、抽象的で空疎さば
かりが目立ち、その限界を見せつ
けた。昨日の官邸でも「政治の世
界は戦場だ。警戒心を解かず、い
つもよろい着たまま寝ている環境
がずっと続いてきた」と泣きを入
れて「彼女といると、無防備でい
いんだと思えた」とはにかんだ。
一方で、安倍晋三首相や菅義偉官
房長官から祝福を受けたことを誇
った。


その場面を見ながら、公務でない
私的な結婚報告ならホテルかどこ
かでやってくれと、言いたくなっ
た。安倍首相がどんなに権力を私
物化しているとはいえ、官邸は国
民共有の公共空間である。官邸記
者らも「私事なら他で会見をやっ
てくれ」とぶらさがり会見などに
応じるべきでなかった。報道機関
としての節度も失って、二人には
しゃぎながら群がる場面が情けな
く仕方なかった。本人たちは「お
色直し」をして地元の横須賀市で
再び会見を開いたが、それだけで
済んでいたはずだ。


わざわざ官邸に出向いてあいさつ
したことに、権力中枢から庇護を
受け続け、将来首相に就きたい

襲議員夫妻の打算と野望を強く感

じた方も多いはずだ。


         【2019・8・8】


(次回は都合で16日に掲載します)


かんぽ生命保険の不正販売が底な
しの様相だ。その多くは契約内容
を十分説明もせず、高齢者らから
保険料を故意に二重払いさせるな
どの手口が長年常態化していた。
被害は判明分だけでも18万件にの
ぼり、今後全契約者2000万人
の3000万件対象の追加調査で
さらに拡大するのは必至だ。自公
政権が推進した「小泉郵政改革」
による営利至上主義が弱者を食い
物にした「国家的詐欺」であった
ことを見せつけた。刑事事件と立
件するだけでなく、米国の金融・
保険会社がこの国の高齢者の資産
を貪ることに門戸を開いた政治責
任も厳しく問われなければならな
い。


「疑問を持ち始めたのは最近だ」
。全国2万4000局の郵便局を
束ねる日本郵便の横山邦男社長は
先月10日の記者会見でこう釈明し
たが、社員らの証言で、それがま
ったく虚偽だったことが分かった
。日本郵政の長門正貢社長も「お
客様のサインをいただいている案
件ばかり。法に反するルール違反
をやったとは、考えていない」と
居直った。31日に記者会見した長
門社長らはそろって辞任を否定し
たが、それで収まるはずもない。
戦後例を見ない公的組織による巨
大詐欺商法を見て見ぬふりをして
きた。監督官庁の金融庁の怠慢は
も民営化を時の政権が錦の御旗に
していたことが発している。


以前からずっと「小泉郵政改革」
に疑問を持ち友人、知人らに「一
利用者として民営化のメリットを
感じたことがあるか」と聞いてき
たが、具体的に利便性があがった
と肯定的に応えてくれたのはゼロ
だった。民営化後、郵便業務と金
融業務の職員が所属部門が違った
ため窓口でお互い助け合いするこ
ともなく、ぎすぎすとした局の雰
囲気をいぶかしく思うことが多か
った。


2015年ころには、年賀状のノ
ルマ販売を強いられた局員が「自
爆営業」によって何千枚も自腹負
担したという実態が次々明るみに
なった。正月前、寒風に吹きさら
されながらテントの下で年賀状を
販売する郵便局員に同情したもの
だ。この時も会社ぐるみのノルマ
販売を組織全体で見直すこともな
く、それどころか対象が保険商品
や投資信託に拡大していた。以後
日本郵政は政権と米国からの外圧
を受け、アフラック社などの保険
商品を最優先に売ってきた。そし
て営業社員の基本給を1割もカッ
トし、そんな保険商品を売る社員
の営業手当を増やした。高齢者ら
をだます手口は、手当を減らされ
た社員が生活を守るため次々二重
契約などに手を染めて常態化して
いったのが構図である。


こんな詐欺商法を強いた経営者ら
が責任をとらないのは、現政権の
対米協力路線に沿う実績を上げて
いるという自負があるからだ。た
かをくくっている心中が見えるよ
うだ。3社が秋まで追加調査の内
容を明らかにせず、金融庁もすぐ
に動かないのは、政権に政治責任
が直撃しないよう先延ばしするた
めだ。


「小泉郵政改革」の末路ともいう
べき今回の巨大商法の被害者は21
万人にものぼる日本郵政傘下の全
社員でもある。中村克彦・みずほ
証券シニアテクニカルアナリスト
は毎日新聞の取材に「ノルマのな
い『自然体』なら売上高は数十%
落ちるのではないか。かんぽ生命
だけでなく日本郵政の経営にも大
きな影響が出る可能性がある」と
予測している。経営者は4月のか
んぽ生命株一部売却時、すでに不
正を把握していた疑いも強い。そ
の場合、背任事件や株主代表訴訟
に発展してもおかしくはない。野
党やメディアは米国に言われるま
ま高齢者の金融資産を狙うことに
手を貸す「郵政民営化」の政治責
任を小泉内閣以後に立ち戻って明
らかにすべきである。


           【2019・8・3】