「まったく的外れだ」。臆面もな
く同じ答弁を繰り返していた安倍
晋三首相が急に語気を強めた。9
日の衆院予算委員会で、電通の中
抜き疑惑を立憲の大串博志議員が
「モリカケ」を引き合いに「権力
に近い人が優遇される」と質問し
た瞬間だった。痛いところをつか
れた首相がよく見せる振る舞いで
、それだけ的を射た質問だったこ
とが分かる。この質疑では、3月
と4月に経産省が「事前ヒアリン
グ」と称して電通の担当者を同席
していたことが判明した。この会
合が実質的に官製談合だった疑い
が濃厚になった。給付を「命綱」
と心待ちにする事業者への重大な
背信行為ではないか。
官製談合とは、国や自治体による
事業などの発注の際の競争入札で
公務員が談合に関与し不公平な形
で落札業者が決まることことを指
す。2003年に施行された官製
談合防止法では、予定価格などの
を秘密を職員が漏らせば、大臣や
首長は関与職員に損害賠償を求め
なければならないとされる。9日
の質疑で電通が優遇された経緯の
一部が浮かび上がった。
経産省が3月30日と4月2日に開
いた事前ヒアリングには今回中抜
きした「サービスデザイン推進協
議会」と一緒に電通の担当者が対
面で説明を受けた。今回競争相手
のコンサルタント会社には遅れて
電話でヒアリング、3日に面接し
ていた。明らかに不公平な扱いで
、なぜかランク下位評価のサ推進
協が落札した。
経産省が優遇した物証まで発覚し
た。入札が4月8日に公告され14
日に実施されたのに、サ推進協は
何と6日に今回事業のオンライン
アカウントと既に取得していたの
である。これが事業の公式アカウ
ントとして使用されている。アル
ファベットと記号がすべて一致し
ているのは官製談合を示す「動か
ぬ証拠」である。経産省の「既に
事業は広く知られていた。一致し
てもおかしくない」との釈明に誰
が納得するだろう。今後、法曹、
市民団体から告発を受け、刑事事
件に発展してもおかしくない。
空いた口がふさがらなかった質疑
がもう一つあった。同じ大串議員
がサ推進協の委託外注先の全体像
を知ったのはいつかと梶山弘志経
産相にただすと、梶山経産相は「
8日(きのう)」と答えたのであ
る。委託、再委託、再々委託先を
知らなかったことを恥じない。そ
れは電通への「丸投げ」を自ら自
供したのと同じだ。
まだある。梶山経産相は電通から
595億円の外注を受けた電通の
子会社「電通ライブ」に残る委託
金額をいったん「179億円」と
説明しておきながら、すぐに「約
8000万円」と訂正した。「計
算漏れ」を理由にしているが、あ
まりの落差に驚く。この事業では
5月1日の申し込み初日に申請し
た約1万もの事業者が未給付状態
だ。待たされる理由も説明されて
ない。困窮者を救うための給付が
忘れ去られている。
血税をまるで「ヒル」のように吸
い取る電通の悪辣ぶりに憤怒を覚
えるほどだ。税金のムダ遣いはと
どまるところがない。「コロナ予
算」の名に乗じて、既存事業に分
捕ろうという省庁も目立つ。「G
oToキャンペーン」には「強盗
」の語呂合わせが使われたように
、約1・7兆円が不急の旅行、イ
ベント需要拡大に充てられている
。環境省による「国立公園などへ
の誘客とWi-Fi整備」に30億
円など、関係省庁が焼け太りする
だけの予算計上には「今じゃない
だろう」と叫びたくなる。
このままでは、17日に国会が閉会
になり、野党やメディアの監視が
届きにくくなる。内閣支持率が急
落し20%台に落ちた安倍首相の逃
げ切りを許してはならない。あの
検察庁定年延長を押しとどめたよ
うな世論の盛り上がり次第かもし
れない。SNSでは「#国会を閉
じるな」のメッセージが拡散し始
めた。もう一度、大きなムーブメ
ントに期待したい。
【2020・6・10】