黒川弘務・東京高検検事長
が辞めても、安倍政権によ
る検察支配の目論見が収ま
ることはない。必ず第二、
第三の「黒川」を担ごうと
するはずだ。性懲りもなく
菅義偉官房長官は検察庁法
改定案の成立を目指すと明
言している。安倍晋三は支
持率急落後、黒川氏の定年
延長は「法務省提案」だっ
たと言い逃れた。しかし、
それを示す内部文書は皆無
で、嘘は明白である。今こ
そ廃案にさせなければ、ま
た策謀をこらして成立を目
指すのは必至だろう。
「正邪」の区別も出来ず、
権力者に擦り寄った朝日、
産経の記者らの頭の中には
権力の監視などみじんもな
かったのではないか。最近
のメディアの劣化を象徴し
ている。何より首相が法を
曲げてまで担いだ人物のい
かがわしさを浮き彫りにし
た「黒川辞任」劇である。
「火事場泥棒、未遂に終わ
りましたねー謀検事」(京
都・狼藉者、20日朝日川柳
欄)
こちらの皮肉を効かせた句
には、思わず手をたたいた
が、法案の今国会成立断念
を喜んでばかりおれない。
なぜなら政権幹部らが秋の
臨時国会での審議を明言し
たからだ。
安倍首相は強い批判を感じ
てか、露骨に責任逃れをし
始めた。ネットラジオの番
組で黒川氏の定年延長につ
いて「法務省の提案による
もの」と言い張った。とこ
ろが、今年初め、閣議決定
の唐突さを国会で追及され
たとき、それまでの人事院
見解に反し、法務省内や人
事院と協議した公文書は一
切なかった。森まさ子法相
が野党質問に窮し、「口頭
で決済した」とごまかそう
としたのである。強弁ばか
りが際立ち、早々と「口頭
決済」が流行語大賞の候補
に挙げられる始末だった。
安倍首相は今後「法務省提
案」がどんな内容だったの
か国会で示す義務がある。
もし仮に文書がないことが
分かったら、堂々と虚偽事
実を公言していたことにな
り、内閣総辞職に追い込ま
れても仕方ない。それを避
けようと、また口裏合わせ
に走って文書を捏造するか
もしれない。この内閣は首
相の保身のためなら平気で
犯罪行為に手を染めさせる
からだ。
後半国会は、黒川検事長の
定年を延長させた安倍首相
の任命責任を徹底的に問い
ただすのが急務である。新
型コロナウィルスに関する
二次補正予算案も不備だら
けだ。年末までに倒産件数
が1万件にのぼる試算が出
た。野党には退陣を迫る気
迫が求められている。
一方、この検察庁定年延長
に賛成した吉村洋文大阪市
長の言動にも警戒が必要だ
。連日テレビ局をハシゴ出
演している吉村市長は「内
閣が検察官の人事権を持つ
べきと」と発言した。検察
官が「準司法官」という認
識を持ってない浅薄さにあ
きれ返る。図に乗って「安
倍補完勢力」である維新の
本性をむき出しにし始めた
のである。
【2020・5・21】