SNS上でまた政府のコロナ政策
が炎上する気配だ。「ちょっ、ち
ょっと!」。検事長定年延長法案
に異議をとなえた女優、小泉今日
子が今度は新たに「アベノマスク
」8000万枚を配布することに
待ったをかける投稿に支持が拡大
している。新型コロナウイルスの
感染者拡大に拍車をかける「Go
Toトラベル」の強行と併せ一度
決めたらどんなに批判が出ても「
引き返せぬ政府」。改めて露呈し
たその体質に怒りが収まらない。
「アベノマスク」事業の事業計画
を特報した朝日新聞の報道によれ
ば、配付、発注済みの布マスクは
2億8700万枚にのぼり、今後
介護施設や保育所などに向け、新
たに約8000万枚が配られると
いう。504億円の事業予算が計
上されたが、入札もなく伊藤忠商
事など数社と随意契約を結んでい
た。カビや虫が混入し、回収騒ぎ
になったが、事務費だけで約10
7億円が支払われる。
報道各社の世論調査では約7割以
上の人が、「小さすぎる」「不潔
」などを理由に「使わない」と答
え、安倍政権の「コロナ失政」の
象徴になっていた事業だが、まだ
懲りずに配り続ける予定だ。安倍
晋三首相以外、官僚や与党議員で
このマスクをつけている姿をほと
んど見かけることがないのが不評
の証しだ。我が家でも、多くの世
帯と同じように送られたマスク入
り郵便袋の封も開いていないまま
だ。それでも一度決めたらどんな
批判を受けても必ず突き進むとい
う安倍政権の体質は、「さらなる
難局ならどんな間違った判断をす
るのか」と考えさせ、空恐ろしく
なる。
こんな強権体質は「安倍官邸」が
今春ホームページ上に説明した三
権分立の説明図にも表れていた。
民主主義の根幹をなす機能だが、
何と主権者である国民に、行政機
関である内閣が縛るような矢印が
向けられていた。本来は世論など
で国民が内閣を監視する機能が説
明されるべきで、矢印は国民から
内閣に向けて描かなければならな
い。
先月、野党から追及された官邸は
あわてて訂正した。内閣広報室は
「三権分立図に公式見解はなく、
作成当時の意図は分からないが、
一般的な図を載せた方が理解しや
すい」と苦しい釈明をしている。
こんな中学生でも知っている機能
の解釈を真逆にねじ曲げたのは、
安倍首相が国会で「私が立法府の
長ですから」と答えたことに符合
する。ここでも「官邸官僚」の「
忖度」が読み取れる。そして政権
全体から漂う空気は、「驕慢」と
「専横」である。驕り高ぶって人
を見下し、勝手気ままに振る舞う
ことは民主主義社会なら許されな
い。しかし、それがまかり通って
いる現状を見れば、憂えてばかり
おれない。依然と続く「コロナ失
政」に断固「NO」の声を上げ続
けたい。
ドイツの哲学者、ニーチェの今こ
そかみしめたい言葉がある。
「車に轢かれる危険が最も大きい
のは、1台目の車をうまくよけた
直後だ。同じように、仕事におい
て日常生活においても、問題やト
ラブルをうまく処理して安心から
気をゆるめたときこそ、次の危険
が迫っている可能性が高い」(「
人間的な、あまりに人間的な」白
取春彦編訳から)
コロナの感染拡大の第一波から第
二波を迎えた我々に、自覚を促す
ようだ。
【2020・7・29】