看板政策の実現は5年先……。菅
義偉首相は行政デジタル化工程
表の達成を指示した。口先だけの
切迫感のなさに、思わず耳を疑っ
た。ほかにも行革目安箱、携帯電
話料金値下げ、地銀再編成と次々
とぶち上げ「やっている素振り」
ばかりを見せつけるが、ちまちま
として、どれも期限が明確でない
。何より「どんな国にしたいのか
」という理念も伝わらない。それ
なのに、手放しで内閣支持率74%
(読売調査)を与えてしまう有権
者らの政治意識の低さに暗然とし
てしまう。
「理念はないから語れない」。永
田町では、早くもひそひそと「ス
カスカ総理」の異名までつけられ
たという。ぶら下り会見にもまと
もに応じず、自分の都合の良い時
だけ、木で鼻をくくったような素
っ気ない一言を放ち、記者の問い
かけに背を向ける。その速さだけ
は安倍晋三前首相より上だ。立ち
去った壁の向こうでほくそ笑む姿
が見えるようだ。「ジャパンライ
フ事件」が再燃、「モリ・カケ・
サクラ」スキャンダルに目が向く
が、相変わらず真相究明に蓋をし
続ける菅政権。これまでと変わら
ないどころか一段と陰湿化するだ
ろう。
なぜなら警察・検察のトップに再
び自分の意に沿う小此木彦三郎国
家公安委員長、上川陽子法相を据
えたからだ。上川法相はかつて林
真琴検事総長を東京高検検事長に
起用する人事を覆し、安倍政権の
意に沿う黒川弘務事務次官を起用
した張本人であるからだ。警察・
検察を膝下にした菅政権は今まで
以上に「秘密警察化」が強まった
。
今週米国タイム紙で世界で最も影
響を与えた100人に選出された
伊藤詩織さんの事件では、北村滋
国家安全保障局長が内閣情報官当
時、事件のもみ消しに深く関わっ
た。山口敬之元TBS局長による
伊藤さんへの準強姦容疑を裁判所
が認め、逮捕状の執行を認め、警
視庁品川署員らが空港での逮捕し
ようとしたところ、当時警視庁刑
事部長だった中村格現警察庁次長
がストップをかけたのである。北
村局長の上司だった菅首相がこの
経緯を知らないはずはない。「官
邸のアイヒマン」と呼ばれる北村
氏は一段と重用され、新聞の「首
相日々」をみると、毎日のように
菅首相と顔を合わせていつ事が分
かる。菅官房長官当時、中村次長
は秘書官を務め「菅の懐刀」と呼
ばれる側近中の側近だったことは
広く知られる。
伊藤さん事件の握りつぶしを「私
が決裁した」と公言した中村次長
はこのままでは警察庁長官に就任
する。まさに「秘密警察国家」の
完成ではないか。タイム誌の伊藤
さん選出によって、再びこの事件
が見直さなければ、日本の警察は
「世界の恥さらし」になる。野党
も再度菅政権の攻め処にすべきだ
。最高権力者の側近による犯罪で
人生を狂わされた若い女性が泣き
寝入りしてしまう不幸。権勢をほ
こる連中の罪深さを思い知らさな
ければならない。
国会審議中に「ワニの画像」に見
入ったり、福島瑞穂社民党代表に
「黙れ、ばばぁ」と中傷投稿をし
た平井卓也IT担当相がデジタル
庁設置の最高責任者に起用され
た。「ブラックジョークだ」という批
判がでたのも当然だ。以前のIT
相当時、何もしてなかった証しで
はないか。河野太郎行革相も連日
「ハンコをなくす」と意気込むが
、声高に叫ぶより「黙ってさっさ
とやれ」と言いたくなる。パフォ
ーマンスだけの表層報道のだまさ
れてはならない。この政権の本性
は「悪事継承専念内閣」なのであ
る。
【2020・9・26】

