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平野幸夫のブログ

ギリシャ語を語源とする「クロニクル」という
言葉があります。年代記、編年史とも訳されま
す。2014年からの独自の編年記として綴りま
す。


看板政策の実現は5年先……。菅
義偉首相は行政デジタル化工程
表の達成を指示した。口先だけの
切迫感のなさに、思わず耳を疑っ
た。ほかにも行革目安箱、携帯電
話料金値下げ、地銀再編成と次々
とぶち上げ「やっている素振り」
ばかりを見せつけるが、ちまちま
として、どれも期限が明確でない
。何より「どんな国にしたいのか
」という理念も伝わらない。それ
なのに、手放しで内閣支持率74%
(読売調査)を与えてしまう有権
者らの政治意識の低さに暗然とし
てしまう。


「理念はないから語れない」。永
田町では、早くもひそひそと「ス
カスカ総理」の異名までつけられ
たという。ぶら下り会見にもまと
もに応じず、自分の都合の良い時
だけ、木で鼻をくくったような素
っ気ない一言を放ち、記者の問い
かけに背を向ける。その速さだけ
は安倍晋三前首相より上だ。立ち
去った壁の向こうでほくそ笑む姿
が見えるようだ。「ジャパンライ
フ事件」が再燃、「モリ・カケ・
サクラ」スキャンダルに目が向く
が、相変わらず真相究明に蓋をし
続ける菅政権。これまでと変わら
ないどころか一段と陰湿化するだ
ろう。


なぜなら警察・検察のトップに再
び自分の意に沿う小此木彦三郎国
家公安委員長、上川陽子法相を据
えたからだ。上川法相はかつて林
真琴検事総長を東京高検検事長に
起用する人事を覆し、安倍政権の
意に沿う黒川弘務事務次官を起用
した張本人であるからだ。警察・
検察を膝下にした菅政権は今まで
以上に「秘密警察化」が強まった


今週米国タイム紙で世界で最も影
響を与えた100人に選出された
伊藤詩織さんの事件では、北村滋
国家安全保障局長が内閣情報官当
時、事件のもみ消しに深く関わっ
た。山口敬之元TBS局長による
伊藤さんへの準強姦容疑を裁判所
が認め、逮捕状の執行を認め、警
視庁品川署員らが空港での逮捕し
ようとしたところ、当時警視庁刑
事部長だった中村格現警察庁次長
がストップをかけたのである。北
村局長の上司だった菅首相がこの
経緯を知らないはずはない。「官
邸のアイヒマン」と呼ばれる北村
氏は一段と重用され、新聞の「首
相日々」をみると、毎日のように
菅首相と顔を合わせていつ事が分
かる。菅官房長官当時、中村次長
は秘書官を務め「菅の懐刀」と呼
ばれる側近中の側近だったことは
広く知られる。


伊藤さん事件の握りつぶしを「私
が決裁した」と公言した中村次長
はこのままでは警察庁長官に就任
する。まさに「秘密警察国家」の
完成ではないか。タイム誌の伊藤
さん選出によって、再びこの事件
が見直さなければ、日本の警察は
「世界の恥さらし」になる。野党
も再度菅政権の攻め処にすべきだ
。最高権力者の側近による犯罪で
人生を狂わされた若い女性が泣き
寝入りしてしまう不幸。権勢をほ
こる連中の罪深さを思い知らさな
ければならない。


国会審議中に「ワニの画像」に見
入ったり、福島瑞穂社民党代表に
「黙れ、ばばぁ」と中傷投稿をし
た平井卓也IT担当相がデジタル
庁設置の最高責任者に起用され

た。「ブラックジョークだ」という批
判がでたのも当然だ。以前のIT
相当時、何もしてなかった証しで
はないか。河野太郎行革相も連日
「ハンコをなくす」と意気込むが
、声高に叫ぶより「黙ってさっさ
とやれ」と言いたくなる。パフォ
ーマンスだけの表層報道のだまさ
れてはならない。この政権の本性
は「悪事継承専念内閣」なのであ
る。


       【2020・9・26】



絵画を見てこんなに哀切な気持ち
が募ったことはなかった。神戸・
六甲アイランドの「神戸ゆかりの
美術館」で開催中の特別展「無言
館 遺された絵画からのメッセー
ジ」で展示された絵画には戦地に
散ってしまった画学生らの故郷や
愛する人々の深い思いが込められ
ていた。以前から行きたかった長
野県上田市にある美術館「無言館
」の絵が見られるといい、心待ち
にしていた。戦没画学生が絵の一
枚一枚を通して、きな臭くなった
今の時代に生きる自分が叱咤され
ているような気分にもなった。


亡くなる直前の菅原文太さんがテ
レビのニュース番組で右傾化する
政治を憂いながらこの美術館を紹
介していたのを見て以来、ずっと
「無言館」の絵を観覧したい気持
ちを持ち続けていた。それが今回
の特別展で実現した。ずっと約1
30点の絵の存在感に圧倒され通
しだった。遠い戦地で没した画学
生らは文字でメッセージは残して
いないが、画布の隅々に望郷、家
族への深い思い込めていたのが分
かる。


無言館館主の窪島誠一郎氏が19
97年に綴った鎮魂の言葉が紹介
されており、胸に迫る。


「遠い見知らぬ異国で死んだ画学
生よ私はあなたを知らない。知っ
ているのはあなたが残したたった
一枚の絵だ。その絵に刻まれたか
けがえのないあなたの生命の時間
に問いかけたい。どうか許してほ
しい50年を生きた私たちの誰もが
これまで一度としてあなたの絵の
せつない叫びに耳を傾けなかった
ことを」


東京美術学校(現東京藝大)や帝
国美術学校(現多摩美、武蔵美)
の俊英だった画学生らは絵筆を銃
にかえて戦地に出征していった。
そしてその死の直前に遺した作品
はどれも命を燃やすような鮮烈な
印象を与える。故郷の風景、最愛
の家族、夢などを描いた画学生か
ら高い精神性と品格を感じさせる
。中でも、愛する妹が肺結核で死
んだ知らせを戦地で聞き、慟哭し
た興梠武の「編み物をする夫人」
や浜辺の花を見つめる女性を屏風
絵で描いた田中兵部の作品などが
目を特に引いた。



コロナ禍でなかなか外出もできず
、久しぶりの美術展だったが、命
の大切さとはかなさ、戦争の醜悪
さを教えてくれた貴重な機会にな
った。心の中で反戦の思いを募ら
せ、画学生らに合掌した。まだ見
てない彼らの作品が約600点も
収蔵されているという上田の「無
言館」も訪れてみたい。神戸の特
別展は11月29日まで。


   【2020・9・21】



(写真は興梠武の作品のポスタ

ー、田中兵部の屏風絵の順)




「コロナ対策優先」という言葉が
白々しく聞こえる。きょうスター
トする菅義偉政権の官房長官に加
藤勝信前厚労相が起用され、言葉
を失うほど驚いた。1月以来のコ
ロナ対応では、受診基準を「37・
5度以上4日間」と設定した結果
、感染拡大を招いてしまった最大
の責任者であるからだ。この条件
によって入院もできず、亡くなっ
た人も多いのに、後日姑息にも「
4日間基準は誤解だった」と責任
転嫁した。こんな人物にオープン
で丁寧な説明など期待できるはず
もない。これからの記者会見でも
菅前長官のように、「指摘はあた
らない」「問題ない」と連発し「
ですから…」言い負かそうする場
面が今から見えるようだ。


霞ケ関官僚の間で加藤新長官は「
答弁に破たんがなく安定している
」という高い評価が寄せられる。
しかし、記者からは「質問に丁寧
に答えようとせず、ずるさばかり
が目立つ」と信頼度は低い。官僚
出身で常に「事実を隠す」習癖が
こびりついている印象がぬぐえな
い。


「ライス加藤」という異名まで付
けられている。質問をかわし、聞
いてないことを答える「ご飯論法
」による答弁を率先してきた。国
会の政府答弁に定着させたという
批判が高い。「今朝ご飯食べまし
たか」と聞かれ、パンの朝食をと
っていても「食べていない」と嘘
を平気で言えるのは、「ご飯」で
はないからと平然と言えるのが「
ご飯論法」である。聞かれた相手
に真摯に向かい合う誠実さに欠け
、昨年の「統計国会」は虚偽答弁
を連発して悪名を高めたのは忘れ
難い。


そんな加藤厚労相は今年に入って
も反省もなく、コロナでも終始不
誠実な対応し、多くの患者や遺族
の怒りをかった。「37・5度以上
4日間」基準が「そう受け取った
方の誤解だった」と言い放ったの
である。PCR検査も受けられず
、受診ができないコロナ感染者が
自宅で亡くなってしまったケース
が頻発し国会でも野党が追及した
。女優の岡江久美子さんが死亡し
たケースはこの「37・5度以上4
日間」基準による犠牲者の一人で
もあろう。他にどれだけの多くの
人が感染後も自宅療養で重病化し
てしまい、死亡したか。厚労省の
誤った基準設定による被害は国家
賠償訴訟に発展する可能性すらあ
るのだ。失態続きの安倍政権末期
のコロナ対応の「戦犯」の一人で
ある。政権自らそれを認めるかの
ように、加藤厚労相を表に立たさ
なくして、西村康稔経財相をコロ
ナ担当にしたではないか。


その加藤前厚労相が今後は臆面も
なく「政権の顔」として毎日、記
者会見に臨む。加藤長官の口癖は
「ですから……」である。自分の
言葉の過ちを問われてもいつも「
上から目線」で、相手を言い負か
そうとする。今から「ですから長
官」の姿が目に浮かぶ。物言いに
人間的な味わいもなく、「一緒に
飲みたくない政治家」として有名
だ。仮に事実の説明に間違いがあ
っても、絶対認めようとしないの
ではないか。保身第一の言動が嫌
われているから、党内からも期待
は高まらない。


誰かが菅新政権を「安倍なき首な
し政権」と呼んだ。再任、横滑り
、「滞留処理」ばかりが目立ち、
清新さをまるで感じさせないから
だろう。菅首相自身に高邁な政治
理念がなく、以前から口にしてい
た「携帯電話値下げ」「ダム事前
放流」「デジタル庁」など小手先
の政策のオンパレードだ。これま
でそれらもほとんど成果をあげて
いない。いずれも新担当大臣に丸
投げしたかのような印象だ。



混迷期に世界観や今後の国家像を
まるで語れないリーダーを抱く不
幸を思わざるをえない。新首相は
雪深い故郷、秋田湯沢から上京、
立身出世した物語を自ら仕立てあ
げたが、実は裕福な豪農の長男で
ある。上京後は信頼してきた人物
を裏切り続けた経歴が明らかにな
った。2年前の真冬に秋田・秋ノ
宮でしばらく滞留した経験がある
が、新首相の自慢話は一切聞こえ
てこなかった。


    【2020・9・16】


「すごい。やる、と言ったことは
やる」。吉村洋文・大阪府知事が
9日、菅義偉官房長官に歯の浮く
ような賛辞を送り、菅政権の誕生
が待ちきれないように、新政権に
協力する意向を鮮明にした。11月
1日投票の「大阪都構想住民投票
」に新政権の協力を、見返りに期
待する底意が見え隠れする。閣僚
らから早くも衆院早期解散見通し
の発言が続く中、秋の政局は維新
が与党の補完勢力としての役割を
どれだけ果たすのかも重要な焦点
だ。「うがい薬のコロナ抑制効果
」のフェイク発言などで支持が急
落した吉村知事の焦りも垣間見え
る。


吉村知事の「菅賛辞」は菅氏が総
裁選で公約の一つとしてアピール
した「デジタル庁」設置について
であった。菅氏が以前ぶち上げた
携帯料金下げでは、まったく実現
していないのに、吉村市長はどう
して「やると言ったらやる」と言
えるのか。根拠も中身も示さして
いない。最近の吉村知事の言動は
空疎さばかりが目立つ。


コロナの感染拡大初期、吉村知事
の打つ手が国や東京都より、一見
スピーディーに見え、支持率が高
まったが、それも一瞬だった。う
がい薬だけでなく外出規制効果な
どでも一部の研究者の発表を過大
評価したり、外出基準を緩和した
りしたため、第2波は東京都以上
の感染拡大率を招いてしまった。
感染患者受け入れベッド数もひっ
迫し始めた。ようやく府民は目が
覚め始めたのではないか。


維新が掲げる大阪都構想の最大の
問題点は、新たに設置される4区
ともに15年間も収支不足が続くと
いう甘い財政試算にある。東京都
が法人税など豊富な自主財源があ
るのに比べて、地方交付税に頼っ
ているのが現実で、これが制度変
更で受けられなくなると、新たな
特別区の財政は成り立たなくなる
。地下鉄「大阪メトロ」の税収を
あてるというが、コロナの影響で
今春の営業収益(4月から6月)
は62億円の大赤字で、業績回復の
目途も立っていない。5年前、住
民投票で否決された時以上に財政
基盤は悪化しているのである。


吉村知事や松井一郎大阪市長の思
惑は自分たちと格別親しい菅氏の
ることではないか。さらに、菅新
政権が進める「カジノ構想」に全
面協力の、共に「カジノ利権」の
果実を貪ることにあるとみられる


以前、ラジオの報道番組で当時大
阪府知事だった松井一郎氏にギャ
ンブル依存症患者の増加など問題
点を聞いたことがあったが、松井
氏は、「菅官房長官に会って政府
としての協力を得られた」と何度
も繰り返すだけで、「菅頼み」一
辺倒で、まともな答えは得られな
かった。


菅氏もその後地元横浜市で、林文
子市長の背後でカジノ構想に肩入
れしている。カジノは住民の心身
を蝕む弊害が指摘されており、住
民投票で林市長のリコールを求め
る署名運動も始まった。



新たに誕生した合流新党「立憲民
主党」は菅新政権への対立軸の一

つに「カジノ反対」を掲げており
、近いとされる衆院選挙での重要
争点に浮上しそうだ。選挙戦に入
る前から、吉村市長や松井知事は
さかんに菅氏にエールを送り、野
党をけん制している。過大な「菅
賛辞」の裏でうごめく維新幹部の
思惑に今まで以上に目を凝らした
い。既にIR汚職に見られたよう
な「利権政治」をめぐる攻防は始
まっているのである。


      【2020・9・11】


歌舞伎の世界では、黒子は闇の中
の「無」として存在しないと約束
事が課せられている。普段は役者
の背後にいて目障りにならぬよう
に小さく隠れるように動くが、そ
の黒子がまるで主役のように立ち
回る。そんな鼻白む自民党総裁選
である。優勢の菅義偉氏はもう首
相になったような物言いをし始め
た。看過できないのは、官邸保有
文書の適正保存を約束せず、「森
友・加計・桜」の「アベスキャン
ダル」を隠蔽する気配が強まって
いるからだ。「悪事も継承」が新
政権の本性ではないのか。


まるで消化試合の様相を強める総
裁選の余裕からか、テレビ各局の
ニュース番組をはしご出演する菅
氏の表情を凝視すると、その傲慢
さと政治理念のなさが明白になっ
てくる。1昨日、JNNの「ニュ
ース23」に出た菅氏は、政府批判
が強まったコロナ対策について「
間違っていなかった」と強弁した
。「国民の声は『コロナを収束さ
せてほしい』という期待です」と
言い切ったが、愚策ばかりの政策
しか打ち出せなかった政府に、そ
んな期待をする人がいるとも思え
ない。


安倍首相辞意表明の1カ月前、毎
日新聞の伊藤智永記者は政治コラ
ム「時の在りか」で政権の実体を
「もう菅政権になっている」と書
いて、注目を集めた。その後の推
移はその評論通りに動いている。
伊藤記者は今朝の同じコラムでも
、首相の座を狙っていた菅氏のあ
くなき執念を表出させた。昨秋安
倍政権の行き詰まりをみた菅氏が
政権取りに向け、いったん電撃辞
任を目論んでいたことを紹介して
いる。一連の菅氏の言動をこう描
写した。


「『安倍離れ』から『安倍継承』へ
機敏に看板を差し替えた何食わぬ
顔こそ、菅氏の真骨頂である」


安倍内閣支持率が辞意表明後、一
挙に20・9ポイントも跳ね上がっ
たことに、大いに驚かされた。こ
の国の古い政治風土が何も変わっ
ていないことを実感するしかない
が、伊藤記者が「ケンカ師」と称
する菅氏が、この機につけ込み解
散を狙うのは間違いない。自民大
敗がない限り、来年も総裁再選は
確実で本格政権の姿もみえてくる
が、国政私物化を重ね罪深い「安
倍政治」の共同正犯が、手練手管
を使い、そのままトップに居座っ
て良いはずはない。


菅氏は「自助・共助・公助」と取
ってつけたようなスローガンを語
り始めたが、政策の中身がなく、
空疎な文句にしか聞こえない。そ
こには高邁な政治理念の欠片もう
かがえない。有権者の意識変革が
なければ、これまでの「モラル無
き政治」はより加速するだろう。
力なき野党の再結集にも批判が高
まるが、もしこのままずっと政権
交代がなければ、1党支配の専制
政治が腐敗するのは、戦後の政治
史がも示している。



冒頭の歌舞伎の世界では、巨悪の
人を連想させる「黒幕」という言
葉もある。陰から糸をひいて人物
と「黒」に重ねた芝居用語だが、
今回の総裁選という舞台では、党
員選挙を一夜で少なくする密謀を
駆使し、「菅首相」の流れを作っ
た二階俊博幹事長がさしずめ今回
の「黒幕」だろう。コロナの感染
拡大中、強引に「GoToトラベ

ル」キャンペーンを推進した菅氏
の背後には全国旅行業協会の会長
の二階俊博自民党幹事長の差金が
あったと強く推察させる。いち早
く「菅支持」を打ち出した二階氏
が今後「キングメーカー」として
、自派のポスト増を公然と要求し
てくるのは必定だ。あくなき利益
誘導だけで結びついた二人が支配
する政治に期待できるものは何も
ない。


    【2020・9・5】


安倍晋三首相の辞任表明前にこの
ブログで予想した通り、菅義偉官
房長官の野望が実現する気配にな
った。自民党の各派閥議員は新た
な権力の中心に近づこうと、「菅
支持」に雪崩を打つような流れだ
。辞任直後は「アベ政治」の害毒
が少しは減ずるかと思わせたが、
それは空しい期待だった。なぜな
ら「政権の継承」が菅次期政権の
キーワードであるからだ。何も変
わらないどころか、これまで以上
に世論を無視した政権運営になる
のではないか。


まだ新政権が誕生もしてないのに
、そう悲観的に考えるのは、菅氏
のこれまでの言動が強くそう推察
させるからである。安倍首相と一
心同体になって政権運営を行って
きた菅氏は、すべての政策につい
て陰に陽に関わってきた。そして
、記者会見では、常に「息を吐く
ように」嘘を口にしてきた。権力
を私物化してきた「森友、加計、
桜」では自らスキャンダルの隠蔽
に積極的に関与した。


記憶に新しいのは、加計学園の国
家戦略特区指定にあたって、文科
省から見つかった「首相指示」を
思わす内部文書を「怪文書の類」
と切り捨てた。後に文科省内部の
公文書だったことも発覚した。長
く事実を隠蔽しながら、記者の質
問を誤誘導し続けた。核心を突い
た問いかけにも「あたらない」「
指摘は正しくない」と言い続けた
。よく表情も変えずに嘘がつけつ
ものだと感心するほどだった。メ
ディアに間違った事実を公言する
ことは、問責されるべき行為だ。
歴代の官房長官でこれだけ報道の
自由を踏みにじった人物はいない


今年日本アカデミー賞を取った映
画「新聞記者」は官邸の暗部を描
いているが、続編のドキュメンタ
リー映画「i新聞記者」では、東

京新聞の望月衣塑子記者の質問を
徹底的に排除するシーンが実写で
描かれ、生々しい。まだ見てない
方には、ぜひにとお勧めする。誰
もが最も首相にしてはならない「
酷薄な人物」と思うだろう。


その経歴も、親しい人を裏切り続
けた背信行為ばかりが浮かび上が
る。暴力団山口組の田岡一雄三代
目組長と深い付き合いがあり、「
横浜のドン」と言われた藤木幸太
郎氏の世話になっていた菅氏は小
此木彦三郎の衆院議員の選挙を手
伝い、やがて小此木氏の恩人を裏
切って市議選挙に当選した。その
後、小此木氏の息子の地盤を強引
に奪い、衆院議員になったことは
地元ではよく知られる。


加藤紘一議員の派閥に一時所属し
ていたが、「加藤の乱」で敗れる
と、反加藤に転じ堀内派に所属す
る変わり身の早さを見せた。その
後、竹中平蔵総務相の下で副総務
相にのし上がった。強権的政治手
法を露わにしたのは、電波行政を
思う通りに動かそうと、NHKの
国際放送の編集権に介入した。


2016年、NHKのクローズア
ップ現代のニュースキャスター、
国谷裕子さんを降板させたのも、
菅長官の下にいた杉田和博官房副
長官が当時の板野祐璽放送総局長
を動かせていたからである。安倍
政権下の言論封殺の中心的役割は
常に電波行政の弱みを知り尽くし
た菅長官が担っていた。


生殺与奪の権利を握られているメ
ディアが菅長官の自民党総裁選の
出馬をはやし立てる光景は滑稽に
さえ見える。今まで以上に政治記
者らが安倍首相以上に「菅首相」
におもねり、隷属してしまう場面
が危惧される。8年近く民主主義
と報道の自由を根幹から崩した「
アベ政治」とその陰で暗躍した菅
氏のこれまでの言動をろくに検証
もせず、次期首相予想にうつつを
抜かす、メディア。その姿は背後
にしのびよる「大蛇」の危険に気
づかない憐れな「カエル」のよう
にさえ見えてしまう。


    【2020・8・31】


連続在任歴代1位になったその日
、安倍晋三首相は退陣予想記事一
色の報道に見舞われた。早くも後
継には菅義偉官房長官が最有力さ
れているという観測記事も並ぶ。
政治部記者もそんな「提灯記事」
を書き続ける。今問われるべきは
、7年10カ月にもわたってこの国
を壊し続けた「アベ政治」の罪で
はないのか。「森友、加計、桜」
に代表される国政私物化は首相の
病気によって消え去るわけではな
い。有権者が求めているのは、首
相がだらだらと居座れないように
、失政の全貌を明らかにする検証
記事である。


昨朝の毎日新聞政治欄のトップ記
事に、各紙の官邸記者らが安倍政
権に向き合うスタンスが露骨に表
れていた。「『有終の美』に悩む
首相」という大見出しを掲げ、「
どのように飾るかー。それが政権
運営の焦点になっている」と結ん
でいるが、言葉の使い方を知らな
い駄文に暗然とする。初めから「
美」などあったのか。集団的自衛
権の行使を盛り込み憲法違反の安
保法案には有権者の7割が反対し
ていた。二度にわたって消費増税
を強行、コロナ以前から景気の失
速を招いていたのも明白になった
。通した法案を一つ一つ中身をみ
れば、首相に近い一部の人たちば
かりが厚遇され、格差社会の進行
を加速させるばかりだった。


外交も見通しのない空疎な発言を
繰り返した。拉致被害者の家族を
裏切り、擦り寄ったプーチン露大
統領から北方4島返還について何
の言質も得られていない。それど
ころか基地にミサイル基地まで置
かれる始末だ。就任前からまるで
幇間のように持ち上げたトランプ
米大統領からは兵器を爆買いさせ
られ属国扱いされた状態が続く。


本来なら「アベ政治」をリセット
するための解散総選挙がスジだろ
うが、コロナと弱小野党のせいで
でそれも期待しにくい。こんな閉
塞状況につけ込んで、陰湿な野望
を表し始めたのが、菅長官である


次期首相候補の期待度が低いのは
、記者の前であからさまな嘘をつ
き続け、陰湿なイメージがぬぐえ
ないからだ。首相の異変にも昨日
になっても「毎日お目にかかって
いるが(健康状態は)変わらない
」とごまかし続けた。記者らから
「ガースー」と呼ばれ、息を吐く
ように嘘を連発することで知られ
る。核心を突く質問にも「問題は
ない」「指摘はあたらない」と返
すのが常で、事実に真摯に向き合
う姿勢は皆無だ。虚偽答弁をする
とき、すぐ顔に出たり攻撃的にな
る首相に比べ、鉄面皮ぶりが際立
つ。人気がないのは当然だろう。


若い頃、秋田から上京後、横浜の
暴力団事務所に出入りしていたこ
とはよく知られている。いつの間
にか横浜市議選の手伝いをするよ
うになって、議員に転身、世話に
なった人物を裏切る背信行為を重
ねたという証言もあった。その後
国会議員にのし上がった経歴から
は、政治理念はうかがえす、ひた
すら権謀術数をくりかえす政治家
像しかうかがえない。こんな人物
が首相候補に挙げられることが異
様である。


感染拡大を招いた「GoToトラ
ベル」キャンペーンも成果を強弁
した。仮に「菅首相」が実現する
ようなら、「アベ政治」以上にス
キャンダルまみれになるのではな
いか。昨年、党内で有力なグルー
プを作ろうと自ら推薦した河井克
行前法相、菅原一秀前経産相はい
ずれも東京地検の強制捜査を受け
た人物である。「人を見る目のな
さ」が明らかであり、かばった菅
長官自身にも同じ陰湿な体質を持
っているのではないかと疑いが高
まる。


こんな菅長官に、官邸記者らは問
い詰めることも出来ず、いつまで
都合よくあしらわれるのだろうか
。政権末期のあがきを幕引きにす
る気概はないのか。


    【2020・8・26】

うつろな目にやせ細ったドス黒い
顔。歩行も弱々しく、声もまった
く覇気がない。東京・慶応病院か
ら車に乗り込んだ17日の安倍晋三
首相は病人の姿そのものだった。
側近から「追加検診だった」「休
ませてあげたい」との声が上がる
が、どの画像も深刻な症状を隠せ
ない。新型コロナウイルスの国内
感染者がついに6万人に達し、1
日の感染者数が連日1千人以上が
続き欧州に迫る。それでも政府か
らは有効な防止策が発信されない
。100年に1度のパンデミック
に手をこまねいている今を「無政
府状態」と指摘しても過言でない
。「ポスト安倍」を口にする以前
に内閣総辞職を急がせないと、取
り返しがつかなくなる。



児玉龍彦・東大教授が先月国会で
「来月は目を覆う事態になりかね
ない」と警告した通りの惨状だ。
7月の死者数が39人だったが、今
月に入ってわずか2週間で60人以
上と2倍を超えそうだ。政府が「
重症者は少ない」と釈明していた
が、重症者は急増、医療体制が児
玉教授の指摘通りひっ迫してきた
。その深刻さは全国に緊急事態宣
言を発した4月17日をはるかに上
回る。


感染増加に拍車をかける「GoT
oトラベル」キャンペーンも政府
は見直そうとしない。利用客によ
る感染者が各地で確認され、特に
沖縄は深刻である。病床確保の目
途がたたず、支援を求める玉城デ
ニー知事の悲痛な声が上がる。先
月「沖縄県には何度も(病床確保
を)呼びかけていた」と突き放し
、放置し続けた菅義偉官房長官の
酷薄ぶりが改めて際立つ。



旅行業界の族議員として、二階俊
博自民幹事長と一緒にキャンペー
ンの旗振りをした菅長官には、批
判が強まっても、誰も逆らえない
。今官僚らが「もう菅政権ですよ
」と打ち明けたことを、毎日新聞
の専門記者がコラムに書き、病気
と支持率の急落でやる気を失った
首相が政権運営を菅長官に任せた
そのリアルさが話題になっている
。首相からの事実上の奪権が成っ
た様相だ。一時は河井克行前法相
ら側近らのスキャンダルによって
「ポスト安倍」の有力候補から脱
落した菅長官だったが、また再浮
上した形だ。


菅長官は首相の検診を「夏休みの
一環として人間ドッグの追加検査
に行った」と説明したが、健診結
果を明かさない。首相が病気でな
いなら明白に否定すべきだが、そ
れもできない。安倍側近議員らが
「休ませてあげたい」と声を上げ
、国会を開かず会見もしない状態
が菅長官には好都合だろう。事実
上、自分が首相代理として振る舞
うことができ、「もし内閣総辞職
になっても、そのまま次期首相に
指名される好機」と考えても不思
議はない。民主主義の正当な手続
きを経ないで権力を手にする邪悪
な目論見を看過してはならない。


それにしても、機能不全に陥った
政府と与党内から内閣総辞職によ
る立て直しを求める声が表立って
上がらないのはなぜか。きっと当
初、政治日程に上がっていた9月
の内閣改造まで表立った動きは見
せたくないという大方の与党議員
の本音があるからだろう。そこに
は、難局に立ち向かう政治家とし
ての気概の欠片も見えてこない。


ICUに入った患者を重症者とカ
ウントせず深刻さを低く見せ続け
た東京都の対応も政府に劣らない
姑息ぶりだ。暑さボケで国や自治
体の無策と隠蔽体質をこのまま見
過ごしていると、身近な生活のリ
スクはさらに高まる。油断せず、
保身ばかりに走る国や自治体のト
ップの言動を監視し続けたい。


     【2020・8・21】


「臆病者の顔は逃げる者の後ろ姿
だ」。米国の政治ドラマ「ハウス
・オブ・カード」で大統領が敵対
する政治家に発した台詞だ。安倍
晋三首相は5年前、米国議会でわ
ざわざこのドラマを引き合いに演
説した。広島原爆の日にまぎれて
アリバイ作りの記者会見をした首
相に、この台詞を投げかけたくな
った。その二日前、吉村洋文大阪
府知事もうがい薬の効能を過度に
うたい、馬脚を表した。新型コロ
ナウイルス感染者数が過去最高と
激増しつつある今、資質を欠くリ
ーダーしかいない不幸を思う。



国会と記者会見から逃げていた首
相が唐突に会見に応じた。原爆の
日の式典を終え、広島空港に向か
う間にわざわざ設定したのは、「
コロナ失政」を問う質問をできる
だけ避けたい目論見が見えていた
。それなのに、記者会見を受けた
内閣記者会がいかに政権に迎合し
てしているかも明らかだった。案
の定、首相会見は中身がなく、官
僚作成の作文を読むだけだった。
追加質問も「時間切れ」を宣告さ
れてしまい、首相が壇上を降りよ
うとした朝日新聞の記者がさらな
る質問をしようとしたら、官邸報
道室の職員に腕をつかまれ制止さ
れたという。


その画像はまだ出てないが、朝日
新聞が正式に抗議したのは、十分
根拠があるからだろう。かつて、
腕力をつかって質問封じをした首
相会見は聞いたことがない。事実
なら厳しく処分されるべきである
。8日の朝日の川柳欄にこんな句
が載った。


「殿中でござると吉良を逃がす奴
」(大阪府 浜田竜哉)


思わず「お主できるな」と言いた
くなる秀句だ。しかし、菅義偉官
房長官は「腕をつかむことはして
いない」と制止を否定した。それ
でも「細部は真実を表す」という
言葉を思い浮かべる。政権の強権
体質の一端が露わになったのでな
いか。新聞労連が「報道の自由」
や「知る権利」を侵害する許し難
い行為と、抗議声明を出したのは
当然である。


佐藤政権最末期に佐藤栄作首相に
「新聞は嫌いだ」と言われ、新聞
記者らは会見場から退出。佐藤首
相はテレビカメラにだけに顔を向
けて演説した異様なシーンがよみ
がえってくる。安倍首相の思考に
も「新聞嫌い」が染みついている
ようだ。その本音には、コロナ対
応で目ぼしい成果もあげられず、
無策ばかりが目立つ後ろめたさが
あると推測される。首相は「以前
より、重症者が少ない」と言い訳
にするが、その数も急増し始め、
東京だけでなく沖縄、愛知などは
「感染爆発」に近い状態で、医療
崩壊が一段と危惧される。


お盆前の国全体を覆うこんな重苦
しい空気の中、吉村府知事が「ウ
ソのようなホントの話」と発した
言葉はあまりに罪作りだった。ニ
ュースで流れた時、洗面所に置い
ていたポピドンヨード液を手に取
ったほどだ。使用期限が過ぎてい
たので使わずに済んだが、危うく
信じるところだった。治験数も少
なく、効能も怪しいことがすぐに
分かったが、怒りが募った。記者
会見では、わざわざ薬品各社のう
がい薬を9本も並べる演出を凝ら
し、消費者を薬局に走らせた。吉
村知事は確かに「コロナに効く」
と言ったのに翌日、批判が出ると
「誤解がある」と開き直った。府
歯科保険医協会は「うがい薬が市
場から消え治療に支障をきたして
いる」と抗議を表明した。



ラジオ番組で過去2回、吉村知事
と討論したことがあるが、弁護士
にふさわしくない軽薄な発言も目
立った。コロナでは「やっている
感」をアピールしただけだ。大阪
も過去最高の感染者数になったの
が無策ぶり示している。口だけの
ポピュリストらに、自分の大事な
命と安全を託すわけにはいかない

「コロナに夏休みはない」と警告
した東京都医師会長の言葉をかみ
しめ、空虚な言動を繰り返すリー
ダーらに懐疑的な視線を投げかけ
、身を守りたい。


   【2020・8・8】


(都合で次回は21日に掲載します)


「予兆を早く見つけ対策をとるべ
き」。先週末の新型コロナ感染症
対策分科会で尾身茂会長は感染急
増について、こんな空疎な発言す
るばかりだった。この分科会では
感染状況を示す指標作りさえも先
送りし、具体策を示さなかった。
批判が強い「GoToトラベル」
についても、「判断を延ばすよう
提言したが、採用されなかった」
と釈明。どれも政府方針に従うだ
けの御用学者の面目躍如で、学者
の良心の欠片もうかがえない妄言
を繰り返す。無策の政府に「お墨
付きを与える集団」に堕しており
、罪深い。


西村康稔コロナ担当相の口癖は「
専門家の方々のご意見をお伺いし
て、方針を示したい」である。し
かし、その分科会では、いつも冒
頭に政府方針が示され、ほぼ原案
通り了承されるのが常である。「
GoTo」についても、尾身会長
は「そう拙速に結論を出さない方
がいい」と伝えたというが、まっ
たく聞き入れなかったと弁明する
始末だ。会長と称するなら、なぜ
堂々と知見を基に堂々と主張し議
論をまとめないのか。政府方針に
おもねるだけなら、そんな分科会
はお飾りにすぎず、無用である。


分科会は東京や大阪の現状を「感
染漸増」と4段階の第2段階に評
価した。誰が見ても、感染者数の
多さは少なくとも第3段階の「感
染急増」に過小評価した。もしか
したら第4段階の「感染爆発」か
もしれない数字の右肩上がりに、
あまりの危機感のなさである。全
国の1日の当たりの感染者数は5
日連続で千人以上を記録。地方都
市にも急拡大、自分の住む兵庫県
は2日、過去2番目の60人が確認
され、ひたひたと身近に迫る危機
感を実感する。


先月16日の参院予算委で児玉龍彦
東大名誉教授が涙目になって「来
月になったら目を覆うことになる
」と予想した通りの推移である。
東京、大阪の繁華街に広がる「エ
ピセンター(感染震源地)」への
児玉名誉教授の警告も軽視され、
小池百合子、吉村洋文知事も手を
こまねくだけで、いずれも過去最
多の感染者数に達した。


こんな国や自治体の無策に、御用
学者のおもねりが重なり、悲惨な
状況が近づいてきた。その危機感
から東京都医師会の尾崎治夫会長
が「国会を開いて法的拘束力のあ
る補償を伴う休業補償を行うべき
」と勇気ある提言をした。その表
情は怒りに満ちてあふれ、「コロ
ナに夏休みはありません」との言
葉に大きくうなずかされた。


1月半も国会と記者会見から逃げ
回る安倍晋三首相に聞かせたい医
療現場の悲鳴でもある。憲法53条
に基ずく国会開会要求も野党から
出されたが、無視する構えで、側
近には秋の臨時国会も開かない意
向だという。いつまで「アベ専制
」を許すのか。「コロナ亡国」の
道をひた走っているように見えて
仕方ない。


高まる政府批判にあわててか、西
村担当相はお盆休みの移動を「慎
重に考えないといけない」と言い
始め、週内に分科会から意見を聞
くと語った。「GoTo」で旅行
を勧めておきながら、その逆の移
動制限を口にする無神経さに言葉
も出ない。「無症状の若い人から
感染が広がる可能性がある」と分
かったような指摘をしたが、語る
に落ちるとはこのことだ。「Go
To」こそ感染拡大の規模が大き
いはずである。先にキャンペーン
の延期か中止を決めてから、言っ
てくれ。


中国の古典・後漢書に「疾風に勁
草を知る」という言葉がある。強
い草は疾風が吹き荒れて叩かれて
もまっすぐ立とうとする姿を人に
例えて、困難や逆境に出会った時
、初めてその人間の真価が発揮さ
れることを教える。児玉名誉教授
や尾崎会長がこの時代の「勁草」
に見える。逆に強風で地べたには
いつくばる弱い草は安倍首相、小
池、吉村両知事や尾身会長らかも
しれない。


           【2020・8・3】