まるで推理小説のような官僚のア
リバイ崩しだった。24日の衆院経
産委員会で前田泰弘中小企業庁長
官の米国での公務出張が実態はカ
ラ出張だったことが浮かび上がっ
た。安倍首相が逃げた閉会中審査
で次々明るみになる「経産・電通
スキャンダル」。「公僕」どころ
か「公」の意識にも欠け、民間業
者と一緒に利権を漁る官僚を、元
経産OBの古賀茂明氏は「チャラ
男」と呼ぶ。批判がやまぬ電通へ
の丸投げは、収まるどころか「G
oToキャンペーン」や「家賃支
援給付金」に拡大する始末だ。国
家に巣くうシロアリにも似て「チ
ャラ男」たちが国の屋台骨をしゃ
ぶり尽す。
先週国会が閉じられたが、かろう
じてコロナ関連の巨額予算をめぐ
り野党の追及が続く。その中で印
象的だったのが昨日の笠井亮議員
(共産)の前田長官への質疑だっ
た。3年前の米国テキサスへの出
張日程をただした時、「見本市を
視察したか」を問われた前田長官
は「見本市は回っています」と答
えた。笠井議員は「見られるはず
はない。前田氏は始まる前日に空
港をたっている」と矛盾を突いた
。「一体何をしていたのか。前田
ハウスで電通関係者と意見交換し
ており、事は経産省と電通の癒着
疑惑だ」と指弾した。
たまらず前田長官は「勘違いして
いた」と答弁を撤回したのである
。それでも梶山弘志経産相は「調
べさせる」と引き取るだけだった
。事実なら公務と称して、テキサ
スで飲み食いするだけの「カラ出
張」だったのではないか。前田長
官の相手をしていたのが、今回持
続化給付金事業のトンネル組織だ
った「サービスデザイン推進協議
会」幹部の元電通社員だった。
世を欺く行為が海の向こうでも公
然と行われていたのは、腐敗の根
深さをうかがわす。なぜ経産官僚
だけが優遇されるのか。安倍首相
側近の経産出身の今井尚哉首相補
佐官や官邸で省庁間の調整を担当
する内閣官房事務局長代理補の肩
書を持つ新原浩朗経産相産業政策
局長らが電通への委託事業の構図
を描いたとされる。いわば安倍首
相側近主導の中抜きだったと言え
よう。そのコマの一つだったのが
、前田長官だったのである。これ
では経産相が厳正な処分などでき
るわけがない。
彼らを「チャラ男」と喝破した古
賀氏は雑誌「アエラ」で「198
0年以降、経産省の産業政策は失
敗続き。日本の産業は世界に遅れ
、日本株式会社の先導役だった経
産省には何もきたいされなくなっ
た。失業寸前の経産省は毎年新し
い事業を立ち上げ、中身がなくて
も、何とか立派に見せて予算を確
保する」と述べ、今では空疎な「
プレミアムフライデー」「クール
ジャパン」などで頓挫したのは記
憶に新しい。そして「チャラ男」
たちを支えたのが、お祭り屋の電
通だったと言い切り、安倍首相と
経産省の関係は、「チャラ男」と
電通の関係と相似形といい、同省
OBならではの説得力があった。
閉会中審査では河井克行前法相夫
妻による公選法違反(買収)事件
が取り上げられ、立憲の大串博志
議員が「自民党からの1億5千万
円が原資となって違法な資金提供
が行われたのでは」と追及しよう
としたところ、自民議員が「コロ
ナではない」と絶叫に近いかん高
い声を上げ、ストップさせた。河
井事件だけは審議させないという
首相の指令が徹底していることを
思わせた。
血税が買収資金になったという疑
惑の全容解明には、検察による自
民党本部への捜索と衆議院での首
相出席の予算員会集中審議が不可
欠だ。首相が逃げれば逃げるほど
内閣支持率が下落すれば、もう解
散風を吹かすわけにはいかなくな
るはずだ。
【2020・6・25】