「命のオール」自分で操ろう | 平野幸夫のブログ

平野幸夫のブログ

ギリシャ語を語源とする「クロニクル」という
言葉があります。年代記、編年史とも訳されま
す。2014年からの独自の編年記として綴りま
す。


「おまえが消えて喜ぶものにおま
えのオールをまかせるな」……中
島みゆきの「宙船(そらふね)」
の歌詞の一節が何度も頭の中をよ
ぎる。新型コロナウィルスの「感
染爆発」寸前の事態を招いてしま
った政府はあす7日にも特措法に
基ずく緊急事態宣言を出す見通し
だ。感染者数を増やさないためP
CR検査件数を絞ってしまった結
果、市中感染を拡大した大失態

をも隠してしまい、人権を制限す

る強制措置も伴う。その底意を深

く読み取らなければ翻弄される。
「宙船」の一節はそんな自覚を呼
びかけるメッセージにも聞こえる
。今一人一人に求められることは
、政府発の情報を懐疑的に見て、
自分の判断で「オール」を操るこ
とではないか。


訪日米国人に米国大使館が4日、
帰国準備を呼びかけた。その理由
として大使館は「日本政府がウィ
ルスの検査を十分行わないと決め
たことにより、感染率を正確に把
握することに難しくなったため」
としている。さらに「数週間後に
日本の医療システムが今までのよ
うに機能していることを予測する
のは難しい」と警告した。最大の
同盟国からも安倍政権のコロナ対
応がまったく信用されていないこ
とが改めて明白になった。


もう二か月以上も前からPCR検
査が受けられない「検査難民」が
指摘されていたのに、それが解消
するどころか、検査件数はほとん
ど増えなかった。海外メディアに
よると人口100万人当たりの検
査件数は欧米各国が軒並み1万人
を超え、韓国でも約8000人に
なっているのに、日本はわずか約
270人にとどまっている。医学
界内部からも早急に改善を求める
声が上がっているのに、事態は変
わっていない。検査を抑え感染者
数を増やさないという指示が政権
中枢から発せられてしか思えない
。あすにも出されるという緊急事
態宣言も東京都内の1日の感染者
が2日連続で三桁にのぼったため
追い込まれ、出さざるを得なくな
ったためだろう。


スピード感もなければ、事態の正
確な認識もできていない。安倍晋
三首相が先週末、誇らしげに布製
のマスク2枚を全世帯に配ると政
府の連絡会議で発言したのはその
典型だ。ウィルスを防ぐことがで
きないマスクの配付に約200億
円も支出するとは、あきれて言葉
もでない。ほかに多くの人が安心
できる政策を打ち出すことができ
ないためだ。案の定、すぐに袋叩
きのコメントが集中した。翌日、
首相は布製マスクをはずし、サー
ジカルマスクに変えていた。どこ
まで浅墓なのだろう。


側近である今井尚哉補佐官の「マ
スク配付で不安はぱっと消えます
よ」というささやきを首相が受け
入れたことが伝えられた。事実で
あれば、想像力もなく度し難いほ
どの危機感のなさである。2か月
前、菅義偉官房長官が「6億枚を
調達する」と言い切った。長い列
を作り、衛生用品売り場に並ぶ人
らに、どう釈明するのか。


ごまかし続きの果てが、緊急事態
宣言につながる。本来は補償策と
セットであるべきだが、収入半減
の一部世帯に30万円を支給し、子
育て世帯に1人1万円給付ぐらい
で全世帯への救済策は見送られる
。消費減税なども含め財務省が渋
っているのが原因とみられ、「モ
リカケ」や「桜」で「霞ケ関」全
体にに負い目のある安倍首相は官
僚の反対を押し切ることができな
い。


戦後最大の国難に最もふさわしく
ない人物がトップにいる不幸をつ
くづく思ってしまう。税金は困窮
の時にこそ使われべきなのに、そ
れをしない政府。作家の島田雅彦
さんが毎日新聞(3日夕刊)で「
自分の金でもないのに給付金を出
し渋る。市民の生命を危険にさら
しかねない政府を批判し、改善を
求めることこそが積極的な自己防
衛につながる」と呼びかけた。冒
頭の「宙船」にはこんな歌詞もあ
る。


「船は傷み、すべての水夫が恐れ
をなして逃げ去ってもその船をこ
いでゆけ おまえの手でこいでゆ
け」


そうだ、今こそ「オール」をしっ
かり握って船の向かう先を変えよ
う。

          【2020・4・6】