「五輪ありき」の幻想捨てよ | 平野幸夫のブログ

平野幸夫のブログ

ギリシャ語を語源とする「クロニクル」という
言葉があります。年代記、編年史とも訳されま
す。2014年からの独自の編年記として綴りま
す。


たった1円も新型コロナウィルス
対策費が計上されていない国の新
年度予算執行がスタートした。首
都では感染爆発寸前というのに、
あまりの政府の無策ぶりに各界か
ら怒りの声が高まっている。安倍
晋三首相は「五輪延期」を手柄話
のように語るが、コロナ対策では
何の具体的数字を示せない。こん
な有様が異様に映るのか、海外メ
ディアから手厳しい論評が届く。
「コロナ終息」の確たる見通しも
なく「五輪ありき」優先で動く政
府が、困窮する人々を亡国の道に
導くように映る。


米国全国紙USAトゥデー電子版
は五輪延期の新たな日程決定に「
無神経の極みだ」とIOCなどを
非難した。このコラムニストは「
世界中が疫病と死と絶望に包まれ
ている時に、なぜ日程を発表をす
る必要があるのか。せめて暗いト
ンネルを抜けて光が見える時まで
待てなかったのか」と大きな疑問
を投げかけていて、大きくうなず
いた。


どうして来年7月に開催できると
判断できたのか、何も根拠が示さ
れていない。安倍首相は「コロナ
に勝利した大会に」と空疎な言葉
を並べただけだった。コロナの感
染拡大はその勢いを増すばかりで
、米国だけでも今後10万人から20
万人の死者が出るという専門家の
推定が出た。ニューヨークは医療
崩壊寸前だ。南半球でも感染が拡
大、特に医療事情が悪いアフリカ
に懸念が強まる。


「早くても感染の終息まで18カ月
以上かかる」という専門家の見方
もある。まだピークを迎えていな
い地域を見ただけでも、来年7月
は困難と分かる。安倍首相が来年
9月の自民党総裁選挙の政治日程
を優先して、性急に来夏開催をバ
ッハIOC会長に迫った疑いが募
る。ここでも「我欲」が透けて見
える。



今朝の毎日新聞運動面によると、
「再延期」の可能性を聞かれた五
輪組織委幹部が心情を明かしてい
た。「(再延期)の話が出るとい
うことは事態が収束していないと
いうこと。そうなれば、とても五
輪なんてできないだろう」と述べ
ていた。


また朝日新聞のインタビューを受
けた森喜郎組織委会長は「2年延
ばした方がいいのでは」と安倍首
相に投げかけたら、首相は「ワク
チンができる。大丈夫です」と応
じたと明かし、「2021年に賭
けたと感じた」と述べている。も
しワクチンができても、世界中に
行き渡るのが1年と見るのは安易
すぎる。首相は「総裁4選」とい
うギャンブルに世界を引き込んだ
ことになり、その罪を歴史に残す
ことになるのではないか。


首都圏の感染拡大は深刻で、東京
では1日の感染者数が三桁に迫り
、もはや外出自粛呼びかけだけで
は不十分な状況になってきた。も
し緊急事態宣言を出すなら、休業
補償とセットでなければ、失業者
があふれ出す。宣言は保障とセッ
トでなければならない。今さらな
がら、新年度予算に休業補償を含
むコロナ対策費を入れなかった無
策に怒りがわきあがる。


これから新年度予算に補正予算を
計上しても、執行は早くて二か月
後という。この間に大都市で感染
爆発したら、ニューヨークのよう
に都市機能が停止し企業倒産が激
増する。海外に学ぶ例がありなが
ら五輪にかまけて後手後手をふみ
、経済対策を先送りし続けるこの
政権に、「コロナ救済」を期待す
るのは無理である。


    【2020・4・1】