「利他主義」の政治取り戻そう | 平野幸夫のブログ

平野幸夫のブログ

ギリシャ語を語源とする「クロニクル」という
言葉があります。年代記、編年史とも訳されま
す。2014年からの独自の編年記として綴りま
す。

 


「患者の搬送を100件断られた
」。テレビ映像で、東京・江戸川
区の医者が憤っていた。新型コロ
ナウィルスの疑いのある患者が診
療を何度も断られる深刻なケース
が急増している。「真実は細部に
宿る」という視点でみれば、都内
の救急医療はもう崩壊寸前だ。国
がPCR検査を怠ったツケが一挙
に押し寄せ、市中感染の拡大が止
められなくなった。しかし、一部
の学者の意見だけを聞いてもたら
した惨状への政府の反省もない。
安倍内閣の支持率が急落すると、
今度は臆面もなく払わないと言っ
ていた「1人10万円支給」を口に
し始めた。やってるふりだけの「
1強政治」を他者のために生きる
という「利他主義」に基づく政治
を取り戻さなければならない。


配付が始まった「アベノマスク」
の評判が散々だ。「小さい」「防
菌効果もない」……。側近補佐官
の思い付きに飛びついた首相がま
た星野源の映像に並べる「アベノ
コラボ」のパフォーパンスもネッ
トで炎上状態である。世論調査で
は共同通信だけでなく、安倍政権
のプロパガンダ報道をたれ流す読
売、フジ・産経でさえ不支持率が
支持を上回った。


高まる緊急経済対策の追加要請に
首相は「1人10万円支給」に「方
向性をもってよく検討する」と言
い始めた。窮地に追い込まれても
なお決断できず、意味不明の言葉
しか発せられないのは、トップと
しての資質の欠如としか言いよう
がない。首相がすがる取り巻きの
補佐官らも上目遣いの「ヒラメ官
僚」ばかりだ。政権運営の主導権
を取り戻したい思惑から、まんま
と二階俊博幹事長につけ込まれた
格好だ。首相はわずか三日前の衆
院本会議で個別支給を「やらない
」と否定したばかり。人々の真の
窮状を見誤るという政権の大失態
にもなりそうだ。


世界のパンデミックという深刻な
危機に、米国のトランプ大統領以
外の多くのリーダーは自国民の心
に響く言葉を発している。ところ
が安倍首相からそんな言葉を聞い
たことがない。外出自粛要請でも
感染学者が示した基準「最低8割
以上」をねじ曲げ、勝手に「最低
7割、できれば8割」と口にした
。いつも「専門家の知見」を言い
ながら、大事な時に自分に都合の
良いように変えてしまう。今「そ
の1割の差が取り返しのつかない
事態をもたらす」という批判が高
まっている。もしかしたら、自分
の安易な発言が、さらに多くの死
者をもたらすかもしれないという
恐れや想像力もない。その存在そ
のものが「悪」ではないか。


与党では緊急事態条項を強化する
改憲の動きが目立ち始めた。今回
の「コロナ危機」は地球上の人々
が持つ多くの価値観を変えてしま
う。この大転換期に世界の著名学
者が示唆に富む発言をしている。

「コロナは民主主義を殺す」

こう警告するのはイスラエルの歴
史学者で「サピエンス全史」の著
書で知られるユヴァル・ノア・ハ
ラリ氏だ。危機を声高に叫ぶリー
ダーに権力が集中する「コロナ独
裁国」を生む危うさを指摘する。
日本でも安倍政権が行き詰まると
、野党を抱き込む「大連立」が取
りざたされる局面が来るかもしれ
ない。これにメディアコントロー
ルが進むと、さらに間違いがチェ
ックされなくなる。ハラリ氏はこ
うもアピールする。


「民主主義は政府が間違いをする
とき、それをただすこと。今こそ
『他者のために生きる』という、
人間の本質に向かわなければなら
ない。協力は競争よりも価値があ
る」


政治がおかしな道を選択するとき
こそ、かみしめたい言葉だ。


     【2020・4・16】